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2017年11月27日 (月)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(10)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

§6.4 非線形表現の続きです。
 

前回は,非線型表現のLagrangianにおいて基本的役割を 

果たす量は,ξ(π)∈G/Hから作られる次の1形式 

(1次微分形式)です。
 

すなわち,α(π)(i)ξ(π)-1dξ(π),または,もっと 

陽に成分で,α=αμdxμ,dξ=∂μξdxμ として, 

αμ(π)(i)ξ(π)-1μξ(π)です。 

(※これは,数学ではマウレ-・カルタン形式 

(Maurer-Cartan form)と呼ばれます。)
 

と書いて終わりました。
 

ここからは今回の記事です。
 

まず,α(π),群:GのLie代数:に属するので,その基底:  

{}{α,a()}で展開できます。
 

(10-1):α(π)(i)ξ(π)-1dξ(π),ξ(π)exp(iπ),  

故に,詳細は後述しますが,α(π)exp(iπ)dπexp(iπ)  

=dπ+(i)1/2!)[π,dπ] 

(i)2(1/3!)[π,[π,dπ]]..であり, 

右辺∈()です。 

(10-1終わり※)

そこで,α(π)に属する成分:α//()に属する 

成分:αに分けて,それぞれを,に平行な成分, に直交 

する成分と呼びます。
 

αμ(π)=α//μ(π)+α⊥μ(π)  

α//μ(π)=α//αμα2r[ααμ(π)]α  

α⊥μ(π)=αaμa2r[aαμ(π)]a ()
 

Maurer-Cartan形式:αμ(π)のg∈Gによる変換は,  

ξ(π)の変換則から,αμ(π) → αμ(π')  

=h(π,)αμ(π)-1(π,)

(-i)(π,)μ-1(π,) となります。

(※gは時空座標xには依らない大局的変換です、  

よって∂μg=0 です。※)
 

(10-2):何故なら

ξ(π) → ξ(π')=gξ(π)-1(π,) なので,  

(i)ξ(π)-1μξ(π) → ξ(π')μξ(π)  

(i)(π,)ξ(π)-1-1μ{gξ(π)-1(π,) (π)}  

(i)-1(π,)ξ(π)-1μξ(π)μξ(π)(π,)  

(-i)(π,)μ-1(π,)
 

(10-2終わり※)
 

そして,非斉次項: h∂μ-1に属するので,  

α//μ(π) → α//μ(π')  

=h(π,)α//μ(π)-1(π,)

(-i)(π,)μ-1(π,)
 

α⊥μ(π) → α/⊥μ(π')

=h(π,)α/⊥μ(π)-1(π,) です。
 

すなわち,直交成分:α⊥μ(π)だけが斉次変換します。

()の基底である破れた生成子:{a}は先述したように, 

一般にHの可約な表現により,表現空間:()の基底は 

{a}{a1}|a2}..|an}と既約分解されます。
 

そのため,()に属するαμ(π)の直交成分:α⊥μ(π) 

n個の既約成分に分割されます。 

α⊥μ(i)(π)=α⊥μai)(π)ai2r[aiαμ(π)]ai 

(i=1,2,..,) です。ここで,慣例通り,簡単のため省略した 

Σaiの添字ai,既約セクター:{ai}の上のみを走る和を 

意味します。
 

分解された既約成分:α⊥μ(i)(π),各々独立に変換されて, 

α⊥μ(i)(π)→ α/⊥μ(i)(π')=h(π,)α/⊥μ(i(π)-1(π,) 

または, α/⊥μai(π')=ρ(i)aibi((π,))α⊥μbiπ) 

と変換します。
 

したがって,NGボソン場のみから作られる,微分次数が 

最低次(2)のG-不変な最も一般的なLagrangian密度は, 

=Σi=1ni2r[{α⊥μ(i(π))2] 

で与えられることがわかります。
 

よって,()-既約成分の数:nだけの任意定数 

i2を含みます。
 

この任意定数:iは次元が+1の量であることがわかります。 

この定数:iは先に定義したNGボソンの崩壊定数(結合定数): 

πのことで,i番目の-既約セクターのNGボソン:πai() 

対応するものなのでfπ(i)とでも書くべき量です。
 

このことを見るために,まず,Maurer-Cartan形式:αμ(π) 

π()=πa()aで陽に表わすべく,次の式に注意します。 

αμ(π)(i)exp(iπ)μ{exp(iπ)} 

=∂μπ+(i/2!)[π,μπ]

{(i)2/3!}[π,[π, μπ]]..
 

(10-3): exp(iπ)[exp{i(π+Δπ)exp(iπ)]/Δxμ 

[exp(iπ)exp{i(π+Δπ)}1]/Δxμです。
 

ここで,()exp(xA)exp(xB)とおくと, 

dF/dx=Aexp(xA)exp(xB)exp(xA)exp(xB) 

{A+exp(xA)exp(-xA)}() 

{A+B+(1/2!)[,]x+(1/3!)[,[,]]2..}() 

です。F(0)1より積分してx=1と置くと,  

(1)exp()exp() 

exp|A+B+(1/2!)[,](1/3!)[,[,]]..} 

です。
 

故にexp(iπ)exp{i(π+Δπ)} 

exp|iΔπ+(1/2!)[π,Δπ](i)(1/3!)[π,[π,Δπ]]..}
 

limΔx→0([exp(iπ)exp{i(π+Δπ)}1]/Δxμ) 

iμπ+(1/2!)[π,μπ](i)(1/3!)[π,[π,μπ]]. 

が得られます。
 

ここで,200610/23の本ブログの過去記事: 

「量子力学の交換関係の問題(その2)」を参照しました。
 

これは短いので全文を再掲載・引用します。
 

(※以下は再掲載記事です。)
 

今回も量子力学の交換関係の問題を解きます。
 

「線形演算子:,Bが,[,[,]]0 ,または, 

[,[,]]0 を満足するとき, 

expexpB=exp(A+B+[,]/2) 

が成立することを証明せよ。」という問題です。
 

続いて解答です。 [,[,]]0 と仮定し,関数f() 

()exp(xA)exp(xB)で定義します。 

このとき,もちろんf(0)1です。
 

()をxで微分すると, 

df/dx=Aexp(xA)exp(xB)exp(xA)exp(xB) 

{A+exp(xA)exp(-xA)}() 

と書くことができます。
 

そこで,今度はg()exp(xA)exp(-xA)という 

関数:()を考えます。
 

すると,まずg(0)=B です。次にxで微分すると 

dg/dx=exp(xA)[,]exp(-xA)ですから, 

x=0 とおいて,'(0)[,]です。
 

さらに微分すると, 

2/dx2exp(xA)[,[,]] exp(-xA) 

より,"(0)[,[,]] を得ます。
 

結局,帰納的に考えると, 

()exp(xA)exp(-xA), 

()=B+[,]x+[,[,]]2/2! 

[,[,[,]]]3/3!..Maclaurin展開される 

ことになります。
 

そして,特にx=1とおくと, 

(1)expA・Bexp(-A) =B+[,][,[,]]/2! 

[,[,[,]]]/3!.. が成立します。
 

しかし,問題の解答としては,これは余談です。
 

ところで,仮定より[,[,]]0ですから, 

この場合にはg()exp(xA)exp(-xA) 

=B+[,]xとなります。
 

したがって,df/dx={A+B+[,]}() です。
 

(0)1という条件下でこの線形微分方程式を解くと, 

解は一意的でf()exp{(A+B)x+[,]2/2) 

となります。
 

これにx=1を代入すると, 

(1)expexpB=exp(A+B+[,]/2) 

が得られます。
 

一方,[,[,]]0 のときは, 

df/dx=exp(xA)exp(xB)exp(xA)exp(xB) 

=f(){exp(-xB)exp(xB)+B}  

と書けます。
 

そして,[,[,]]0 なら{exp(-xB)exp(xB) 

=A+[,]xなので, 

df/dx=f(){A+B+[,]}となり, 

同様にして同じ結果が得られます。(再掲載終了※)
 

ここで問題としているF()exp(xA)exp(xB) 

2006年の過去記事の問題における()exp(xA)exp(xB) 

の違いは,前者では[,[,]]0,または,[,[,]]0  

を仮定していないので,より一般的問題への拡張 

となっていることです。 (10-3終わり※)
 

αμ(π)(i)exp(iπ)μ{exp(iπ)}  

=∂μπ+(i/2!)[π,μπ]

{(i)2/3!}[π,[π, μπ]].. の右辺第1項が

μπなので, 

α⊥μ(π)=Xaiμπai()(πについて2次以上の項)   

となることがわかります。
 

それ故,NGボソン場:πai()Lagrangian密度:

=Σi=1ni2r[{α⊥μ(i(π))2]において規格化された 

運動項(1/2)(μπaiμπai)を持ち,かつ正しい場の 

次元:dimπai=+1を持つように,変数πai()の再定義 

をします。すなわち,πai()→ πai()/iとします。
 

(10-4):次元=単位の話を復習します。 

自然単位c=h=1を採用しているので,1[]=LT-1 

よりL=Tですから,エネルギー:の単位は[]=ML2-2 

=Mであり,単位は質量と同じです。
 

そこで,Planck定数:hの単位が,エネルギー×時刻=MT 

と読めますから,結局:T=L=M-1で全ての単位はMだけ 

で表わすことができて,これを質量次元といいます。
 

例えば,LをLagrangian,HをHamiltonianとすると. 

[][]=Mであり,その密度の単位は,ML-3=M4 

です。それ故,[]=M4です。
 

そしてφがスカラー場なら自由粒子の系では, 

(1/2)μφ∂μφ―μ2φ2なので[φ]=Mです。 

これをdimφ=+1とも書きます。
 

他方,g=exp(iπ)∈Gは,ψ() 

ψ→ ψ'=gΨ=exp(iπ)ψに変換させる位相変換なの 

[π]1でありNGボソン場の質量次元はゼロです。
 

α⊥μ(π)=Xaiμπai()(πについて2次以上の項) 

より[α⊥μ(π)]=Mですから,[]=M4 

=Σi=1ni2r[{α⊥μ(i(π))2]から[i]=Mを得ます。
 

そこで,πai()→ πai()/iなるスケール変換で 

[πai()]=M,or dimπai()=+1を得ます。 

(10-4終わり※)
 

そうすれば,ξ(π) → ξ(π')=gξ(π)-1(π,) 

というπのg∈Gによる変換則から,gが破れた生成子:ai方向 

の無限小変換:g=rxp(iθaiai)1iθaiaiのときには, 

ξ(π)exp(iπ/i) → ξ(π')exp{i(π+δπ)/i} 

(1iθaiai) exp(iπ/i)-1(π,) です。
 

この変換ではπai()の変換:π'ai- πai=δπaiのみが, 

πについて0次の項を持ち. 

δπai=fiθai(πについて1次以上の項) です。
 

よってXai方向の変換に対するNoetherカレントは, 

aiμ()(i){/(μπai)}{(ii)+O(π)} 

=fi(μπai)(πについて2次以上の項)の形になるため, 

iは確かにπaiの崩壊係数を意味することがわかります。
 

/Hの既約な対称空間の場合,つまり,[,] 

で既約な場合,展開:αμ(π)=∂μπ+(i/2!)[π,μπ] 

{(i)2/3!}[π,[π, μπ]]..において, 

πの偶数次の部分がα//μ(π)で奇数次の部分が, 

α//μ(π)()となって分離されます。
 

さらに,()が既約空間:つまり, 

{a}{a1}|a2}..|an}の直和分割がn=1ですから 

Lagrangian密度:=Σi=1ni2r[{α⊥μ(i(π))2], 

π→π/iでfi=fπとして, 

=Tr{(μπ+{(iπ)-2/3!}[π,[π, μπ]]..)2} 

=Tr{(μπ)2}(3π2)-1r{(μπ[π,[π, μπ]])} 

.. となります。
 

ここまで,Gは単純群であるとして,非自明な部分群の直和では 

表わせない直既約群である,と仮定しましたが,単純群でない 

場合ても本質的には同様です。
 

例として,前述したカイラル群;G=U()×U()の対称性 

,H=U()にまで破れる場合を考えます。
 

このとき,Gは半単純群です。 

つまり,Gの部分群は,自明な正規部分群:,{1}を除き, 

全て非可換群です。
 

g∈Gは,∈U()とg∈U()の組:(,)であり, 

チャージ:a=Qa+Qaに対応する破れていない生成子は, 

(a,a),チャージ:5a=-Qa+Qaに対応する破れた 

生成子は,(-Ta,a)で与えられ,それ故,部分群:H=U() 

,(,)の形の元から成っています。
 

そこで,ξ(π),αμ(π),α//μ(π),α⊥μ(π)に対応する量は, 

まず,ξ(π):π∈()については, 

(exp(iπaa/π),exp(iπaa/π)) 

(ξ-1(π), ξ(π))です。
 

αμ(π),α//μ(π),α⊥μ(π)については, 

(i)(ξ-1(π),ξ(π))-1μ(ξ-1(π),ξ (π)) 

(i)(ξ(π)μξ-1(π),ξ-1(π)μξ(π)) 

(α//μ(π)-α⊥μ(π),α//μ(π)+α⊥μ(π)), 

最後の式は,α//μ(π),α⊥μ(π)の定義でもあります。
 

α//μ(π)(2i)-1[ξ-1(π)μξ(π)+ξ(π)μξ-1(π)] 

α⊥μ(π)(2i)-1[ξ(π)μξ-1(π)-ξ-1(π)μξ(π)] 

(2i)-1ξ(π)(-1μ)ξ-1(π) です。
 

ただし,U=ξ2(π)exp(2iπ/π)なる変数を導入 

しました。また,この場合,/Hは既約で,1つしかない崩壊定数 

πで予めNGボソン場を規格化しておきました。
 

ξ(π) → ξ(π')=gξ(π)-1(π,)に相当する 

(,)∈Gによるの変換則は,(ξ-1(π),ξ(π)) 

(ξ-1(π'),ξ(π'))(,)(ξ-1(π),ξ(π)) 

((π,,),(π,,)-1 

(ξ-1(π)-1(π,,,ξ(π),

ξ(π)-1(π,,)) 

です。
 

この場合,両辺で右元を左元で割ったものを計算すれば, 

U=ξ2(π)→ U'=ξ2(π')=gξ2(π)-1, 

つまり,U→ U’=gUg-1 です。
 

-不変,カイラル不変なLagrangian密度は,一意的に, 

カイラル=fπ2r{α⊥μ(π)2}(π2/4)r{(U∂μ)2} 

となります。
 

α⊥μ(π)(2i)-1[ξ(π)μξ-1(π)-ξ-1(π)μξ(π)] 

,αμ(π)(i)ξ(π)μξ-1(π)の展開におけるπの 

奇数次項を表わしていることは明らかですから,カイラル 

既約対称な(/)の場合のLagrangian密度: 

=Tr{(μπ)2}(3π2)-1r{(μπ[π,[π,μπ]])} 

と同じ式になることがわかります。
 

今日はここまでにします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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