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2017年11月13日 (月)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(8)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

前回は,1つの核子:Nが1つの軟NGボソン:πを放出する 

過程に対応して,軸性カレントAμ()を運動量がpiとpf 

の核子状態で挟んだ行列要素: 

<N(f)|μ()|(i)>=Mμ()exp(iqx) 

(q=pi-pf)を考察し, 

Goldbwrger-Treimanの関係式」と呼ばれる最も簡単な, 

「低エネルギ^定理」を見出しました。,
 

今回は軟NGボソンの2体過程を考察します。
 

任意個数の軟NGボゾン(soft NG-Boson)の関与する 

過程に対しても「低エネルギー定理」を導くことができ 

ますが,その最も簡単な例として,2つの軟NGボソン 

の弾性衝突過程:πi(i)+πa() → πf(f)+πb() 

の散乱振幅を考察します。
 

ただし,軟らかい(oft)ボソンとは,低エネルギー,つまり, 

振動数が小さくてゼロに近い,または,波長が無限大に近い 

Bose粒子を意味します。
 

予め,目的を明示しない論議では,何の計算をしているのか? 

が不明で,モチベーションの持ち方に影響すると思われるので 

まず,結論から述べることにします。
 

2つのNGボソンの2体弾性衝突の過程: 

πi(i)+πa() → πf(f)+πb()では,全てのπは 

質量がゼロの質量殻上:i2=pf2=q2=k20 にあるため, 

4元運動量保存則から散乱のs,,u チャンネルの 

値は,s=(i+q)22iq=2kpf, 

t=(i-pf)2 =-2if=-2kq, 

u=(i-q)2=-2iq=-2kpf  

で定義されます。
 

この散乱での不変散乱振幅:, 

[πi(i)+πa() → πf(f)+πb()] 

=-(1/π2)(1/2)[(iabc)(ibci)(k+q)(i+pf) 

(2π2)-1(u-s)ibcabc となることがわかり, 

Bose対称性から,これは 

[πi(i)+πa() → πf(f)+πb()] 

 (3π2)-1{(u-s)ifccab (s-t)ibccfa  

(t-u)iaccbf } と書けます。
 

これが求める軟NGボソンの2体衝突の振幅に対する 

「低エネルギー定理」を与えるというのが結論です。
 

これを示すため,まず,核子:Nと軟NGボソン:πの弾性 

散乱:(i)+πa() → N(f)+πb()のS波部分 

の振幅を考えます。
 

関係する行列要素は,(外線付き2点Green関数) 

<N(f)|[aμ()bν()]|(i)>です。
 

これに∂μνを作用させ,軸性カレントの保存則: 

xμμ0,yνbν0 を用いると,次式を得ます。
 

μν<N(f)|{aμ()bν()}|(i) 

(1/2){μδ(0-y0)

<N(f)|[bν(),aμ()]|(i) 

+∂yνδ(0-y0)<N(f)|[aμ(),bν()]|(i)} 

です。
 

(8-1):何故なら,Bose粒子に対するT積の定義から, 

[aμ()bν()]=θ(0-y0)aμ()bν() 

+θ(0-x0)bν()aμ() です。
 

そこで,μ[aμ()bν()] 

=δ(0-y0)aμ()bν()

-δ(0-x0)bν()aμ() 

=δ(0-y0) [aμ(),bν()] です。
 

同様に,ν[aμ()bν()] 

=-δ(0-y0)aμ()bν()

+δ(0-x0)bν()aμ() 

=-δ(0-y0) [aμ(),bν()] 

=δ(0-y0)[bν(),aμ()] です。
 

それ故,μν[aμ()bν()] 

(1/2){μδ(0-y0)[bν(),aμ()] 

+∂νδ(0-y0)[aμ(),bν()]} 

を得ます。   (8-1終わり※)
 

再掲: 

μν<N(f)|{aμ()bν()}|(i) 

(1/2){μδ(0-y0)

<N(f)|[bν(),aμ()]|(i) 

+∂yνδ(0-y0)<N(f)|[aμ(),bν()]|(i)} 

の両辺に,∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky)を施し, 

,kを相対的に同じオーダーに保ちつつ,ゼロに近づけます。
 

すると,lim q,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky)

 

μν<N(f)|{aμ()bν()}|(i) 

(1/2)limq,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky) 

{iμ<N(f)|∫d4[5b(0),aμ()]|(i) 

iν<N(f)|∫d4[5a(0),ν()]|(i)} 

 を得ます。
 

ただし,(qk),qk ~ q2~k2程度のq、kについて 

無視すべき,2次以上の無限小項を意味します。
 

そして,[5,μ()]iabcμ()から,  

<N(f)|∫d4[5b(0),aμ()]|(i) 

ia∫d4x<N(f)|μ()|(i) 

ですが,

ベクトルカレント:μ()の核子による行列要素: 

<N(f)| μ()|(i)>は,  

そのLorentz不変性,()対称性,および保存則の要請 

μμ0 から,一般に次の形に書けるとわかります。

すなわち,<N(f)| μ()|(i) 

=u~()c{γμ1(2)iσμνν2(2)/(2)} 

(i)exp(ipx);p=pf-pi,かつ,1(20)1 

です。
 

(8-2): μHermite,不変性,から 

,Lorentz変換でベクトル変換性を持つ量としての 

行列要素:<N(f)| μ()|(i)>は, 

γμ,( f+pi)μ,iσμν ,および,(f-pi)ν 

の実数のスカラー係数倍の線形結合形で与えられる 

と考えられます。
 

しかも,(f+pi)μ, iσμν(f-pi)νで表わす 

ことができます。
 

それ故,<N(f)|μ()|(i) 

=u~()c{γμ1(2)iσμνν2(2)/(2)} 

(i)exp(ipx) なる形に書けます。
 

この右辺にpμを掛けると, 

~()c{1(2)iσμνμν2(2)/(2)} 

(i)exp(ipx)

=u~()c(i)1(2)exp(ipx) 

0 となり,この形なら無条件でベクトルカレント保存: 

μμ0 が反映されます。
 

さらに,<N(f)|μ()|(i) 

=u~()c{γμ1(2)iσμνν2(2)/(2)} 

(i)exp(ipx) において, 

μ=0 として両辺に∫d3xを施すと, 

<N(f)|(0)|(i) 

=u~()c{γ01(2)iσμνν2(2)/(2)} 

(i)exp(i00)(2π)3δ3() となります。
 

この等式は,p=pi-pf0でも成立するので, 

f=piを代入すると, 

<N(i)||(i) 

=u(i)c (i)δ3(0)1(0) です。
 

c,()変換群の生成子としてのチャージQ 

核子状態:|(i)>による行列表現に他ならないので, 

状態のスピノル部分の規格化:(i)(i)1 

考慮するとF1(0)1 を得ます。 (8-2終わり※)
 

したがって, 

limq,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky) 

μν<N(f)|{aμ()bν()}|(i) 

(1/2)limq,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky) 

({iμ<N(f)|∫d4[5b(0),aμ()]|(i) 

iν<N(f)|∫d4[5a(0),ν()]|(i)} 

+O(qk))
 
 

の右辺に,<N(f)|∫d4[5b(0),aμ()]|(i) 

ibac∫d4exp(ipx)~()c{γμ1(2) 

iσμνν2(2)/(2)}(i),および, 

<N(f)|∫d4[5a(0),ν()]|(i) 

iabc∫d4exp(ipy)~()c{γμ1(2) 

iσμνμ2(2)/(2)}(i)を代入すると.
 

式の右辺 

limq,k0 (iabc)(1/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q) 

(i)(μ+kμ)[~()c{γμ1(2) 

iσμνν2(2)/(2)}(i)+O(qk)] 

(abc/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q) 

[~()c()1(2)(i)+O(qk)] 

を得ます。
 

一方,左辺の行列要素: 

<N(f)|{aμ()bν()}|(i)>に寄与する 

Feynmanグラフは,軟NGボソンの極限:,k→0 で 

特異性(Singularity)を持つ最も効くグラフは, 

先のNGボソン1体過程のときの図6.6と同じ書き方で, 

6.7(),(),()のタイプに分類できます。


()のグラフは,NGボソンの極:1/2,1/2の特異性 

が明らかですが, 

(),()のタイプのグラフの核子1粒子の 

中間状態の伝播関数も,i,fが質量殻:i2=pf2=m2 

の上の運動量なので,例えば,{(i+q)2-m2}-1 

{2iq+O(2)}-1の特異性を持つことに注意して 

おきます。
 

先には,(6.6()の寄与), 

0|μ()|πb()(i/2)abfi() 

ただし,abfi()=gπNN~(f)γ5(i) 

0|μ()|πb() 

=<0|πμπas,a()|πb() 

iπδabμexp(iqx) で与えられ,
 

結局,(6.6()の寄与) 

~fππNN~(f)aγ5(i)(μ/2)exp(iqx) 

となり,()のグラフはh(2)=fππNN/2の寄与に 

相当します。 

そして軸性カレント:μ()の保存の要請:μμ0 

,核子状態で挟んだ行列要素: 

<N(f)|μ()|(i)>=Mμ()exp(iqx) 

に適用すれば,0=qμμ() 

=u~(){γ5(2)+q2γ5(2)}(i)  

となります。 と書きました。

これと同様に,π-N散乱での図6.7()のグラフの寄与は, 

( -fπ2)[(i)+πa() → N(f)+πb()] 

×(2π)4δ4(f+k-pi-q) 

となります。
 

(8-3):6.7()の斜線部は2点Green関数を核子状態 

で挟んだ行列要素に2つのNGボソンの足が付いたものです。
 

NGボソンの足の寄与は

|(i/2)(iπμ)}{(i/2)(iπν)} 

ですが,これに∂μν=qμνを掛けると,Green関数から 

S行列要素を導くLSZのNGボソン外線除去の因子: 

(i/2)(1/2)の他の部分は散乱のS行列要素×(-fπ2)の寄与 

となるのは明らかです。 (8-3終わり※)
 

6.7(),()のグラフは,S波のπ-N散乱振幅にはO(qk) 

の寄与しかせず,今考えているオーダーでは,これらは無視して 

落とすことができます。
 

何故なら,(),()のグラフの寄与をそれぞれ,,Cと 

記せばBの上グラフは図6.6()を2個,Cの上グラフ 

は図6.6()1個含みます。
 

先に,6.6()と図6.6()の和にqμを掛けて縮約して 

q→0とするとゼロ,つまりO(2)でしたから,B+2 

=O(qk)と考えられます。
 

そこで(B+C)の代わりに-Cを考察しC=O(qk) 

示せば十分です。
 

6.7()の上ラフと下グラフの和を具体的に書けば, 

C={~(f)γ5(i+m)γ5(i)}/(2i) 

{~(f)γ5(i+m)γ5(i)}/(2i) 

[~(f){2(i)-2mkq}/(2i) 

{2(i)-2mkq}/(2i)](i) 

なる形です。
 

そこで,k~qなら,相殺して確かにC=O()=Q(qk) 

です。;(qq=q20,kk=k20,i(i) 

=m(i) などを用いました。)
 

したがってS波のπ-N散乱振幅においては, 

(iabc/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q)(i) 

[~()(c) fi()1(2)(i)+O(qk)]20 

=-fπ2[(i)+πa() → N(f)+πa()] 

×(2π)4δ4(f+k-pi-q)  

のように式の左辺と右辺が等置できます。
 

ここで,1(20)1であり,この等式を散乱の重心系 

(CM系):q=-pi,k=-pfで考察すると, 

i,k→0では,i~pfであり, 

~()()(i)=-2N となるため,
 

結局,[(i)+πa() → N(f)+πb()]. 

(abc /π2)(c)fiq+O(2)が得られます。
 

これが,S波のπ-N散乱振幅に対する「低エネルギー定理」 

ですが,これが最終目的ではなく軟NGボソン;πの 

π-π弾性散乱の「低エネルギー定理」に向かいます。
 

さて,標的粒子を核子:Nの代わりにNGボソン:πとして, 

軟NGボソン同士の弾性散乱: 

πi(i)+πa() → πf(f)+πb()を考えます。
 

この場合,行列要素: 

<N(f)|{aμ()bν()}|(i)>は, 

<πf(f)|{aμ()bν()}|πi(i)>に変わります 

,6.7().()に相当するものは相変わらず効きません。
 

その理由は,核子が標的の場合よりも簡単で,NGボソン:π 

は擬スカラー粒子なので,パリティの保存の要請から図6.7 

()の核子線をπに変えた3π頂点は禁止され,また,() 

の<π|aμ|π>の寄与も禁止となって消えるからです。
 

一方,π-N過程でのGreen関数の発散微分: 

limq,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky) 

μν<N(f)|{aμ()bν()}|(i) 

(1/2) limq,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky) 

({iμ<N(f)|∫d4[5b(0),aμ()]|(i) 

iν<N(f)|∫d4[5a(0),ν()]|(i)} 

+O(qk)) は,[5a(0),μ()]iabccμ() 

であり,<N(f)|cμ()|(i) 

=u~()c{γμ1(2)

iσμνν2(2)/(2)}(i); 

1(2)0)1,p=pi-pfと表わせるので,
 

(iabc/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q)(i) 

[~()c()1(2)(i)+O(qk)] 

でしたが,
 

Nをπに変えると,ベクトルカレントの行列要素は 

<πf(f)|cμ()]|πi(i) 

ifci(i)(i+pf)(2)exp(ipx), 

(0)1,p=pf-piなる形になります。
 

何故なら,πを表現空間とする変換群の随伴表現 

では,(c) fiifci であるからです。
 

π-N散乱での, 

(iabc/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q)(i) 

[~()(c) fi()1(2)(i)+O(qk)]20 

=-fπ2[(i)+πa() → N(f)+πa()] 

×(2π)4δ4(f+k-pi-q) であった等置式は.
 

π-π散乱では, 

(iabc/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q)(i) 

fci(q+k)(i+pf){(2) +O(qk)}20 

=-fπ2[πi(i)+πa() →πf(f)+πb()] 

×(2π)4δ4(f+k-pi-q) となり,
 

[πi(i)+πa() →πf(f)+πb()] 

=-(2π2)-1[abcbci(k+q)(i+pf) 

(2π2)-1(u-s)ibcabc  

となることがわかります。
 

何故なら,最初に示したように, 

s=(i+q)22iq=2kpf, 

t=(i-pf)2 =-2if=-2kq, 

u=(i-q)2=-2iq=-2kpf であり,
 

さらに;i+q=pf+kにより, 

u-s=-2(i+pf)=-2(i+pf) 

=-(k+q)(i+pf) であるからです。
 

Bose対称性より,これから, 

[πi(i)+πa() → πf(f)+πa()] 

 (3π2)-1{(u-s)ifccab (s-t)ibccfa  

(t-u)iaccbf}+O(s、st,..) を得ます。
 

これで,求める軟NGボソン;πのπ-π弾性散乱の 

「低エネルギー定理」を証明できたので,ここまで 

にします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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