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2017年11月20日 (月)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(9)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

さて,我々は一般相対性理論によって, 

我々の宇宙の4次元時空は擬Riemann多様体であり,その 

計量テンソル成分を(μν)とすると時空点の世界間隔:ds 

はds2=gμνdxμdxνで与えられること,
 

そして,時空を運動する粒子のLagrangian密度:, 

()=-ds=(μνdxμdxν)1/2として,作用:  

S=∫dxL()=-∫dsに対する作用原理: 

停留条件(最大固有時間)δS=0を満たすEuler-Lagrange  

方程式が時空内の粒子(質点)の運動を支配する測地線 

の方程式(自由落下)を与えることを知っています。

そこで,以下の論議の最終目的は次のとおりです。
 

例えば,カイラル群:G=U()×U()がH=U() 

へと自発的に破れた場合,商空間:/HをNGボソンの場: 

πa()を座標とする多様体と見なすことができます。
 

そして,多様体G/Hの座標は,πa()に限らず, 

φα=fα(π)(α=1,2,dim(/))のように, 

一般的ニ選ぶことができて,そのときの計量テンソル: 

αβ(φ) により,カイラルLagrangianの自然な形式 

として時空多様体標準のカイラル=gαβ(φ)μφαμφβ 

とできることを見るのが最終目的です。
 

そのため,NGボソンの場:πaによるG/Hの代表元: 

ξ(π),ξ(π)exp{i(Σaπaa)}, 

π()=Σaπa()a() で与えられ, 

さらに,πを崩壊定数としてスケール変換:  

π() → π()/π,を実行して, 

U=ξ2(π)exp{2iπ()/π}(から 

NGボソン場のカイラルLagrangian密度:カイラル 

カイラル=-(π2/)r(U∂μ)で与えられる 

ことがわかり,これが結局:=gαβ(φ)μφαμφβ 

となることを導くわけです。
 

以下はその手順の手さぐり作業と見なせます。
 

§6.4 非線形表現 

一般的に対称性がGからHへと破れた場合にNGボソンが自分 

自身,または他の物質場と,どういう相互作用をし得るのか?を 

対称性の要求から決める1方法として,非線形表現Lagrangian 

を構成する方法を述べます。
 

このLagrangianにおいて,NGボソン場の微分の次数が最も低い 

項は,任意パラメータなしで一意的に決まる,という事情があり, 

§6.3の「低エネルギー定理」に対応します。
 

さて,NGボソン非線形Lagrangianを求めます。
 

対称性が群Gから部分群Hへ破れた場合,既述したように 

Gの生成子:の全体,破れていない生成子:α 

と破れた生成子:aに分離します。
 

{の全体∈}{α,a}です。
 

ここで,r(αa)0 for ∀Sα,∀Xa, 

,α,aは最も簡単な基本表現の表現行列(Hermite行列) 

と理解しておきます。
 

基本表現以外の表現:ρの場合の表現行列は,これらと区別して 

ρ(),ρ(α),ρ(a)などと表わすことにします。
 

さらに規格化を,r(αβ)(1/2)δαβ, 

r(ab)(1/2)δab となるように取っておきます。
 

(9-1):N次のHermite行列:,Yの内積:(,) 

(,)=Tr(XY)で定義します。この定義は,実数上 

の線形空間での実数値内積であるための必要十分条件を 

全て満たす無矛盾な定義であることがわかります。
 

すなわち,XのN個の固有値をλ1,λ2,..λとすると, 

XがHermite行列なら,これらの固有値は全て実数であり 

Xは適切な正則行列Pによる相似変換:PXP-1により 

対角要素がλ1,λ2,..λのN次対角行列に相似変換可能です。

このとき,r(PXP-1)=Tr()=Σ=1Nλjです。
 

同様に,Yの固有値をσ1,σ2,..σとすると,これらも全て 

実数で.r(XY)=Σ=1Nλjσj です。 

したがって,(,)=Tr(XY)は常に実数です。
 

そこで,この定義は,実数上の線形空間での実数値内積 

であるための必要十分条件とされる次の条件を全て満足 

します。
 

,,Zを任意のHermite行列とすると, 

1.(,)=(,) (交換則) 

2. (X+Y,)=(,)(,) (分配則), 

3. ∀k∈Rに対して,(kX,)=k(,) 

4.(,)0, .(,)0 ⇒X=0  

が成立します。
 

ちょっと成立が怪しいのは,条件4だけですが,(,) 

=Tr(2)=Σ=1Nλj2 ですから,これも明らかにクリア 

されています。
 

そして,特に∀X,∀Yに対して常にTr[,]0です。
 

ここで,(,)=Tr(XY)0のとき,XとYは直交する 

といいます。
 

ユニタリ群:Gの生成子:{}の作る線形空間:, 

g∈Gに対して,g=exp(i)となるHermite演算子: 

X全体の集合で,GのLie(またはLie代数) 

と呼ばれます。これがM次元の線形空間を作るとき, 

その基底がM個の生成子の集合:{}A=1Mです。
 

N次元の表現空間では,gの表現,およおび,Xの表現は, 

それぞれ,N次のUnitary行列,および,Hermite行列  

となります。
 

ところで,Schmidtの直交化法により,任意の有限次元 

の内積が定義された線形空間の基底は,正規直交化する 

ことが可能です。そこで,例えば(,)=Tr() 

=δAB(,B=1,2..,)と規格化できます。
 

HがGの部分群であるとき,HのLie代数:はGの 

Lie代数:の直交空間,()の直交穂空間と 

なるようにとることができます。 (9-1終わり※)
 

さて,r(αβ)(1/2)δαβ,r(ab)(1/2)δab, 

なる規格化とTr(αa)0  によって, 

まず,r(α[β,a])=Tr ([α,β]a)0  

です。したがって,常に[α,a]() です。
 

つまり,[,]()ということになります。
 

(9-2):何故なら,[,]=ABC-ACB 

[,]C-[,AC],r([,AC])0 より, 

r([,])=Tr ([,])です。
 

そして,部分環(部分代数):は交換子[ , ]に対して 

閉じていて,[α,β]ですから, 

[α,β]=Σγγγと書けて,r (γa)0  

なので,r ([α,β]a)0 を得ます。  

(9-2終わり※)
 

一方,[a,b]()に属するとは限らず,一般には 

αとXaの線形結合で与えられますが,特にSαのみの 

線形結合で書ける場合,つまり,[,] 

の場合,商空間(oset space)(or 等質空間:homogeneous space) 

/(を法とする同値類の集合),対称空間(symmetry space) 

と呼ばれます。
 

商空間:/が対称空間であるとは要するに, 

の元Xに対する"パリティ変換"τ:G → G を, 

Y∈なら,τ()=Y, Y∈()なら,τ()=-Y 

で定義するとき,このτを実行しても代数()が不変である 

ことを意味します。(※数学では,この"パリティ変換":τ 

のことを対合的自己同型写像(involutive homomorphism) 

いうようです。)
 

(9-3):一般に,[a,b]=Σααα+Σaaa 

と書けます。故に,両辺に線形写像:τを実行すると, 

τ[a,b]=Σαατ(α)+Σaaτ(a)ですから, 

[a,b]=Σααα-Σaaa と書けます。
 

そこで,[a,b]=Σααα+Σaaa ,τで不変 

なら,それはΣααα-Σaaa=Σααα+Σaaa 

を意味します。
 

したがって,∀aについてda0 ですが,これは商空間: 

/が対称空間:[,]であること, 

同値です。つまり,[a,b]の作る空間:[,]  

が”パリティ変換”:τで不変なことと,/が対称空間で 

あること:[,]H は同値である, 

ということです。 (9-3終わり※)
 

環の商空間:/が対称空間である場合は,破れていない 

生成子=の元:αには偶(),破れた生成子=() 

の元:aには奇()のパリティを付与できる場合です。
 

((9-4);カイラル群:G=U()×U() 

H=U()へと破れた場合,H=U()のパリティは 

()(G-H)=U()のパリティは奇()であり, 

群としての商空間:/Hは群としての対称空間の例です。

(94終わり※)
 

ここまで見てきたように,NGボソンの個数は商空間:/ 

の次元;dim(/)dimdimに等しく,NGボソン場: 

πaは破れていない部分群Hの下で線形に変換します。
 

この事実は,NGボソン場:πa,商空間G/Hまたは/ 

座標に取るべきことを示唆しています。
 

そこで,ξ(π)を群Gの()商空間:/Hの代表元 

(representative)とし,次のように,NGボソン場:πa 

パラメータ化します。すなわち,ξ(π)exp{iπ()} 

π()=Σaπaaとします。
 

この時点で,NG場:πa()は質量次元がゼロの場です。?
 

(9-5):()剰余類(coset): 

gH={∈G|=gh:h∈H}をHを)法として 

同値類別した同値類と考え,これを元とする商集合が 

商群:/H={gH|g∈G}です。
 

そして,これの元:ξHを構成する全ての同値な元のうちの 

1つのξ∈Gを,ξHの代表元と呼びます。
 

ξ(π)exp{i(Σaπaa)}と書いて場:πaLie代数の元: 

π()=Σaπa()a()を構成するパラメータ 

と考えます。
 

ξ(π)(G-H)であり,これは破れた方の群:(G-H)の元 

に対応しています。Σaで線形和を取るXa()のaの 

個数は;dim(/)dimdimです。  

(9-5終わり※)
 

ξ(π)exp{i(Σaπaa)}に左から群Gの元gを掛けた 

gξ(π)もGの元ですから,/Hのある代表元ξ(π') 

Hのある元;hの積に一意的に分解できます。
 

すなわち,gξ(π)=ξ(π’)(π,)です。
 

(9-6):何故なら,G=∪g∈G(gH)よりgξ(π)∈G 

なら,あるξ'∈Gが存在してgξ(π)∈ξ'Hとなり, 

ξ'Hの代表元を,ξ(π')とすると,Hのある元;hに 

対して,gξ(π)=ξ(π')hと書けます。
 

そして,gξ(π)=ξ11=ξ22なら,ξ1~ξ2,つまり, 

ξ2∈ξ1 or ξ1H=ξ2Hです。
 

この意味で,gξ(π)=ξ(π')hという分解は一意的 

というのは,ξ1Hとξ2HがG/Hの同じ元で,gを掛けると 

分解がξ(π)Hからξ(π')Hに変わるという意味では, 

gξの分解は一意的という意味です。
 

(9-6終わり※)
 

そこで,NG場:π()のg∈Gによる変換(大局的変換) 

π()→π'(),ξ(π')=gξ(π)-1(π,)  

で与えられます。

ただし,ξ(π)exp{iπ()},ξ(π')exp{iπ'()} 

です。
 

写像Fを,()( ξ(π))=gξ(π)-1(π,)と定義 

すると,(21)(ξ(π))=g21ξ(π)-1(π,21) 

=g21ξ(π)-1(π,1)(π,1)-1(π,21) 

=g2(1)(π,1)-1(π,21)です。
 

故に,-1(π,21)=h(π,1)-1(π,21) 

=h-1(π1,2)∈Hとすれば,(21)=F(2)(1) 

が成立する,という意味でFは準同型写像です。
 

そこでFはGの1つの表現ですが,  

()(ξ(απ1+βπ2))=αF()( ξ(π1)) 

+βF()( ξ(π2))が成立しないので 

線形ではないです。
 

そこで,こうしたπによるGの表現を,非線型表現 

(non-linear representation)と呼びます。
 

しかし,g=h∈Hのときには予期されるように,これは 

線形な表現となります。
 

実際,まず,[,]()より, 

[α,a]()なので,hXa-1()です。
 

よって,h∈Hに対してhXa-1()なる変換は, 

{a} ()の準同型写像です。 

つまり,表現空間:()の上の部分群:Hの1つの表現 

であり,しかも,(αXa+βX)-1=αhXa-1+βhXb-1 

ですから,線形表現です。
 

そこで,表現:ξ(π')=gξ(π)-1(π,)でg=hと 

したξ(π')=hξ(π)-1(π,)の場合, 

特に h-1(π,)=hとする選択が可能で,このとき, 

ξ(π')=hξ(π)-1,再び,/Hの代表元となり, 

これは線形表現です。
 

そして,ξ(π')=hξ(π)-1,π'= hπh-1に同値 

でありπに関しても線形です。
 

この表現を,ρ()(π)=hπh-1 (π=Σaπaa  or  

ρ()(a)=hXa-1のように表わせば,この表現:ρは, 

一般には可約な,群Hの表現空間:()の上での線形表現 

,()の基底:{a}を表現ρの表現空間の基底とも 

呼びます。
 

特に,基底:{a}によって表現変換を展開し, 

ρ()(a)=hXa-1=Σbρab()と書けば,ρab() 

はρの表現行列の行列要素を示しています。
 

{a}{a1}|a2}..|an}と直和分割できて 

各々の{ak}の春空間が任意のh∈Hについての変換:ρ() 

の下で不変部分空間になるなら,表現:ρは既約表現の直和 

=完全可約表現となります。
 

π()=Σaπa()aを与えるNGボソン場の座標: 

{πa()},{a}の既約分解:{a1},|a2},..,|an} 

に対応して{πa1()},{πa2()},.. πan()}と分解され, 

各H-既約なセクター:{πaj()}に属する成分:πaj(), 

そのセクターの中で表現:ρにより,πaj=Σbiρjajbi()πbi 

なる線形変換を受けます。
 

()の全ての生成子系:{a}がH-既約なとき,すなわち, 

{a}{a1}|a2}..|an}でn=1の場合,商空間: 

/Hは既約である,といわれます。
 

まず,簡単のため,Gが単純群であるとき,つまり,Gと{1} 

以外には正規部分群を持たない場合,を考えます。
 

非線型表現のLagrangianにおいて基本的役割を果たす量 

,ξ(π)∈G/Hから作られる次の1形式(1次微分形式) 

です。
 

すなわち,α(π)(i)ξ(π)-1dξ(π),または,もっと 

陽に成分で,α=αμdxμ,dξ=∂μξdxμ と書けば, 

αμ(π)(i)ξ(π)-1μξ(π)です。 

(※これは,数学ではマウレ-・カルタン形式 

(Maurer-Cartan form)と呼ばれます。)
 

途中ですが,今日はここまでにします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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