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2017年12月10日 (日)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(11)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

前回は,非線型表現のLagrangianを考察し,対称性の群G 

が部分群Hへと破れるとき,破れた生成子の空間(G―H) 

対応して出現するNGボソン場:πの自然なLagrangian密度 

=fπ2r{α⊥μ(π)2}=で与えられ,これは(/) 

既約対称空間の場合や,/H=U()×U()/() 

(半単純群)の場合には, 

=Tr{(μπ)2}(3π2)-1r{(μπ[π,[π,μπ]])} 

と書けることを示して終わりました。
 

ただし,αμ(π)(i)ξ(π)-1μξ(π),α⊥μ(π) 

,これのに直交する()空間に属する部分です。
 

今回は,まず,NGボソン場が物質場と相互作用する場合を 

考えます。
 

物質場をχ()とすると,これは破れていない部分群:Hの 

線形表現の表現空間のベクトルに属していて,この表現は 

自由に既約分解できます。
 

χ()は既約表現の1:ρ0の空間に属するとします。
 

すると,h∈Hに対してχ() → χ'()=ρ0()χ() 

と変換されます。
 

g∈Gに対しては,/Hの1つの代表元;ξ(π)(G―H) 

ξ(π) →ξ'(π)=gξ(π)-1(π,)と変換するのに対応 

して,χ() → χ'()=ρ0[(π,)]χ()と変換される 

と定義します。
 

Gの線形既約表現:ρを任意に取れたとし,ρ()のgをHの元 

hに限定すれば,ρはHの表現としては可約(完全可約) 

既約成分:ρiに直和分解されます。 

(※Gの一般には可約な線形表現を既約分解するとき,対応する 

表現空間の既約分解での各既約成分,つまり各既約表現は量子数 

の異なる各粒子場に対応します。)
 

そこで,このH-既約な成分として先のρ0を含むようなGの 

既約表現:ρを任意に持ってきます。
 

∀h∈Hに対して,ρ()=ρ0()+ρ1()+ρ2().. 

と直和分解されます。

ρ()は表現行列としては,ρ0(),ρ1(),ρ2().を小行列 

細胞の対角成分とする細胞対角行列となります。
 

これに対応して物質場を,χ()の代わりに, 

χ^()[χ(),0,0,,..]で定義して,表現ρの次元と同じ 

個数成分の縦ベクトルとします。
 

そうすれば,ψ()=ρ(ξ(π))χ^()で定義されるψ() 

はGの下で線形に変換します。
 

実際,ψとχの定義から,g∈Gに対して 

ψ() → ψ'()=ρ(ξ(π'))χ^'() 

=ρ(gξ(π)-1(π,)){ρ0((π,))χ}^() 

=ρ()ρ(ξ(π))ρ(-1(π,))ρ((π,))χ^() 

=ρ()ψ() です。
 

つまり,g∈Gに対して,ψはψ() →ρ()ψ()と変換し, 

ρはGの1つの線形表現でしたから,この変換は線形です。
 

そこで,ψ()は線形基底.元の場:χ()は非線型基底と 

呼ばれます。
 

例えば物質場:χ()Dirac場の場合,NGボソン場:π 

との相互作用項をπの微分の最低次(1次)のものに限れば, 

最も一般的なLagrangian密度は,=ψ~iγμμψ-mψ~ψ 

{1-g(i)}ψ~γμσ[ξ(π)α(i)μ(π)ξ-1(π)]ψ です。
 

ψ()=ρ(ξ(π))χ^()ですから,結局, 

=χ~iγμ{μiσ0(α//μ(π))}χ-mχ~χ 

-Σi=1n(i)χ~γμσ[α(i)μ(π)]χ 

です。
 

(i)はG/HのH-既約成分の数:nだけある任意定数で, 

カイラル対称性の場合は,Goldberger-Treimanの関係式に 

現われる軸性チャージの値:(20)に対応します。
 

ただし,群Gの線形表現:ρの微分表現としてLie代数: 

表現をσ,部分群:Hの線形表現:ρ0の微分表現としてLie代数 

の表現をσ0としています。
 

h∈Hに対してρ()=ρ0()+Σi=1nρi()なる既約分解が 

なされ,ρ()χ^()=ρ0()χ()です。
 

(11-1):何故なら,まず,ξα⊥μ(π)ξ-1G です。 

これは,αμ(π)(i)ξ-1μξ,ξ=exp{iπ/i}より,  

ξα⊥μ(π)ξ-1(i)(μξ)ξ-1=∂μπ+O(π2)∈G  

であることから,以前の論旨と同様に明らかです。
 

そして,ψ()=ρ(ξ(π))χ^()より, 

ψ~()=χ^~()ρ(ξ(π))=χ^~()ρ-1(ξ (π) 

また,μψ=ρ(ξ(π))μχ^+ρ(μξ)χ^ です。 

故に, まず,-mψ~ψ=-mχ~χです。
 

そして,ψ~iγμμψ 

=χ^~iγμ{μ+ρ(ξ-1(π))ρ(μξ)}χ^ 

=χ^~iγμ{μiρ(αμ)}χ^ です。
 

ところが,ρ(ξα(i)μξ-1)=ρ(ξ)ρ(α(i)⊥μ)ρ(ξ-1) 

であり,αμ=α//μ+Σi=1nα(i)μ と直和分解して. 

α//μ,かつ,Σi=1nα(i)μ() です。
 

ρはGの線形表現なので. 

ρ(αμ)ψ=ρ(αμ)ρ(ξ)χ^ 

[ρ(α//μ)+ρ(Σi=1nα(i)μ)]ρ(ξ)χ^ 

=ρ0(α//μ)ρ(ξ)χ^+Σi=1nρi(α(i)μ)ρ(ξ)χ^ 

ですから, 

ψ~iγμμψ+Σi=1nψ~γμσ[ξα(i)μξ-1]ψ 

=χ^~iγμμχ^-χ^~γμρ(αμ)χ^ 

+Σi=1nχ^~γμρ(α (i)⊥μ)χ^ 

=χ^~iγμμχ^-χ^~γμρ0(α//μ)χ^ 

=χ~iγμ{μiσ0(α//μ)}χ を得ます。 

(11-1終わり※)
 

次は,少しの間ゲージ場との結合を考察してみます。
 

ここまでは,時空座標xに依らない大局的変換のみを 

考えてきました。しかし,群Gの全て,または部分群I⊂G 

を局所的変換に昇格させてみます。 

つまり,Iをゲージ変換群にします。
 

ゲージ群:Iのゲージ場:μ()=Viμ()iをNGボソン 

に結合させます。ただし,iはIの生成子です。
 

その方法は簡単であり,単にMauler-Cartan形式:αμ(π) 

おいて,μをI-共変な微分;μに置換するだけです。
 

すなわち,α^μ(π)(i)ξ-1(π)μξ(π) 

μξ(π)=∂μξ(π)+ieVμ()ξ(π)とします。
 

そして,先述の論議の全ての式でのαμ(π)をα^μ(π) 

に置き換えます。
 

そうすれば,例えば,先の群GがHへと破れたLagrangian 密度: 

=Σi=1ni2r{α(i)⊥μ(π)2},ゲージ群IがHへと破れた 

ときのそれ:=Σi=1ni2r{α^(i)⊥μ(π)2}に置き換えること 

()の生成子に対応した成分:iμの質量項が得られます。
 

これは次節で論議する予定の「Higgs現象」です。 

ここではこれ以上のゲージ場の論議はpending 

しておきます。
 

さて,次には多様体:/Hの座標としてのNGボソン場という 

意味付けを考えます。つまり,一般的に言えば,NGボソン場の 

変数はG-不変な計量を持つ商多様体:/Hをパラメータ化する 

座標と考えることができます。
 

こう考えるときには,ξ(π)exp(iπaa)で与えた標準的な 

NG場の変数:πa.単にG/Hの1つの座標の取り方に過ぎず, 

{πa}11に対応する, 

φα=fα(π)(α=1,2,..,dimG-dim)で与えられる如何なる 

変数:{φα}も等しくG/Hの座標として用いられ得ます。
 

このとき,Maurer-Cartan形式の直交成分:α⊥μ(π),以前に 

書き下したα⊥μ(π)=Xaμπa(πについて2次以上の項) 

と同様,α⊥μ(π)=Xaaαμφα..の形となり, 

NGボソンのLagrangian密度;=Σi=1ni2r{α(i)⊥μ(π)2} 

,=gαβ(φ)μφαμφβ 

αβ(φ)(1/2)Σi=1ni2aα(φ)aβ(φ) と書けます。
 

この最後の形を見るとgαβ(φ),明らかに多様体:/Hの計量 

テンソルと同定できます。また,この計量テンソルは一意的でなく 

n個の任意パラメータfi2を持つことが示されています。
 

こうして,先に述べたように非線型表現から多様体内の粒子の 

自由落下測地線を与える自然なLagrangian密度が得られるという 

結論を示すことができました。
 

さらに,S行列がこうした場の変数の取り方に依存しないことをも 

示しておきます。
 

同じ1つの系のLagrangianでも,それは上述のように場の変数の 

取り方次第で違った関数形を散ります。すなわち, 

(π)((φ))~(φ) etc.です。
 

そこで,当然ながらn次のGreen関数: 

(.π)a1,..an(1,..,n)=<0|[πa1(1)..πan(n)]|0 

(.φ)α1,..αn(1,..,n)=<0|[φα1(1)..φαn(n)]|0 

も互いに異なります。
 

しかし,今の非線型表現Lagrangianの場合に限らず,全く一般的に, 

「S行列は如何なる場の変数を選んで計算しても同じである。」 

ということを示すことができます。 

これを「亀淵-O'Raifeartaigh-Salamの定理」 

(カメフチ・オラファティ・サラームの定理)と呼びます。
 

ここで,“如何なるという言葉には以下に述べるような制限 

があります。
 

証明は,物理的S行列のゲージ固定非依存性の証明と本質的 

には同じです。
 

元の変数πと新しい変数φとはφα=fα(π)なる変数変換で 

結び付いているので,~(φ)を用いて計算されるφ場の 

Green関数: (.φ)α1,..αn(1,..,n) 

=<0|[φα1(1)..φαn(n)]|0>は,明らかに, 

(.φ)α1,..αn(1,..,n) 

=<0|[α1{π(1)}..αn{π(n)}]|0 

=G(.(π))α1,..αn(1,..,n) なる等式を満たします。
 

この最右辺は,(π)=L~((π))に基づくn系の複合場 

α{π()}Green関数です。
 

一般に関数:α(π)はπについてベキ展開可能です。 

φα=fα(π)=Cα1aπa+Cα2abπaπb+Cα3abcπaπbπ.. 

ここでは,係数:1,2,3,..は全て,微分を含まない定数 

と考えておきます。(※そうした変換を点変換といいます。)
 

φ系でS行列を計算するにはLSZの公式に従って,(.φ) 

のn本の外線の足のそれぞれに,Klein-Gordon演算子: 

(i)(2-m2)を掛けてp2=m2とおきます。 

(外線の足がNGボソンの場合は,20です。)
 

ところが,(.φ)はπ系で計算した複合場のGreen関数:  

(.(π))に等しいので,この質量殻上に置く手続きで 

生き残るn系のFeynmanグラフは,6.8のようなn本の 

複合場の足:α(π)の取手のそれぞれが,結局

π-伝播関数の1本線に帰着するもののみです。
 

6.8の中に現われるfα(π)からπa1体への遷移グラフ  

の中身,展開:φα=fα(π)=Cα1aπa+Cα2abπaπb  

+Cα3abcπaπbπ+に対応した図6.9で与えられます。

 
 

S行列に関係するのは,1粒子極の留数のみですから,結局,  

6.9の遷移グラフの全体的効果は,次の置き換えに等価です。

すなわち, φα=fα(π) (1/2)αaπaです。 

ここで,(1/2)αa=Cα1a+Cα2cdγcd2a(2-m2) 

+Cα3cdcπγcdc3a(2-m2)..,です。

ただし,γ2(2),γ3(2)等は図6.9のグラフで

定義される関数です。
 

同じ手続きを2点関数に対して行えば,: 2=m2の近傍で 

0|(φαφβ)|0>=<0|{α(π)β(π)}|0 

(1/2)αa(1/2)βb0|(πaπb)|0>が得られます。
 

そこで元の場:πaが正しく規格化された場であったとすれば, 

(1/2)αa,φ場のくりこみ定数行列に等しいことがわかります。
 

それ故,φ系のS行列を計算するとき,先のLSZの手続きの他に 

同時にZ1/2の逆行列を掛ける必要があるので,結局, 

φα=fα(π) (1/2)αaπa  

(1/2)αa=Cα1a+Cα2cdγcd2a(2-m2)

+Cα3cdcπγcdc3a(2-m2) 

の置き換え規則は,φ系のS行列がπ系のS行列に等しいことを 

証明するものです。
 

この証明が成り立つための唯一の制限は,行列Z1/2が逆行列を 

持つこと,つまりdet(1/2)0です。
 

ループを含まないツリーグラフのレベルではZ1/2=C1なので, 

これは,行列:α1aが正則であれ,というものです。
 

また,上では微分のない点変換に限定しましたが,点変換 

でなくC1が運動量の関数であってもdet(1/2)0であれば, 

問題ないです。
 

今日はここまでにします。次回は「Higgs現象」に入る予定です。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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