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2018年1月22日 (月)

ゲージ場の量子論(19)

体は不自由ですが,ある意味,他にやることなくてヒマなので, 

こればかりに集中してやや急ピッチですが, 

「ゲージ場の量子論(18)」から,§53ゲージ場の量子化 

(経路積分型式)の続きです。

Faddev-Popov行列式 

前回最後に,ゲージ固定条件導入方式で得た非共変 

Coulombゲージでの遷移振幅の経路積分表示式: 

T=∫φΨΨΠ{Πδ(())} 

Π(Det)exp{i∫d4(,φ)} において
 

作用積分:[,φ]=∫d4(,φ), 

ゲージ変換:μ() θμ() 

(i/)(θ())μ-1(θ())+U(θ())μ-1(θ()) 

φ() φθ()=U(θ())φ() 

の下で不変です。
 

ここでは,θ()はゲージ変換群:Gの元: θ()∈Gで,(θ()) 

,そのユニタリ表現と考えます。ある関数の組: (μ,φ)が上記 

ゲージ変換でつながる全ての(θμ,φθ),θを動かすにつれて, 

関数空間において,ある軌跡を描きますが,それをゲージ軌跡 

(gauge orbit)と呼びます。
 

作用積分: [,φ]は1つのゲージ軌跡に載る全ての関数:(θμ,φθ) 

に対して,同一の値を与えるので,上述の経路積分表式で.δ関数因子: 

Π{Πδ(())}Π(Det)が存在しなければ, 

あらゆる(μ,φ)にわたる経路積分:φから.ゲージ変換: 

θ()の関数自由度分だけ,∞重に数え過ぎが生じます。
 

つまり,無限大の因子:|∫Πdθ()||θ|を含んでしまうこと 

になります。Coulombゲージのδ関数:{Πδ(())},各ゲージ 

軌跡上の関数から代表元を選ぶ役割をしていて,この無限大因子の出現 

を防いでいる意味があります。
 

しかし,これは当然で,そもそもゲージ固定条件というのは,ゲージ軌跡 

方向の運動を強制的に固定するもので,関数空間内でゲージ軌跡を 

横断するあらゆる超曲面が横たわる角度日夜積分の非一様性を補償 

するものであると推量されます。
 

このように考えると,ゲージ固定条件として,例えば, 

相対論的に共変な,μμ=f,行列記法で∂μμ 

を採用してもいいはずです。
 

ここでfは全く任意に決めたc-数関数です。
 

このゲージ固定条件を理論に取り入れるために,Faddev-Popov 

(ファデーエフ・ポポフ)に従って,次の量を定義します。
 

すなわち,Δ-1[,]=∫θΠ,δ(μθμ()())  

です。ただし,Δ[,],,fの汎関数です。
 

経路積分測度:Dθ=Πx∫dθ()の各点xにおけるdθは群G上 

の不変測度と呼ばれるもので,∀θ'∈Gに対して,dθ=d(θθ') 

=d(θ'θ)を満たします。 

(※実際に後で必要になるのは,dθのθが単位元の近傍のときの 

表式だけで,陽な表式は,そのときに与えます。) 

(※dθは右不変,左不変なハール(Haar)測度で,xでの1次元積分 

なら,(dx/),または,Πdgij(det)-n etc.のようなものです。
 

したがって, Dθ=D(θθ')=D(θ(θ), 

特にD(θ-1)=Dθです。 

例えば,∫f()dx/x=∫f()(0)/(0) 

=∫f(0-1)dx/xであり,∫f(1/)dx/x=∫f()dy/ 

です。y=1/,dy/y=d(1/)/(1/)です。)
 

この測度の不変性から直ちに,:Δ[,]のゲージ不変性: 

Δ[θ,]=Δ[,]が従います。
 

Δ-1[,]=∫θΠ,δ(μθμ()())の両辺に 

Δ[,]を掛けて1としたものを,遷移振幅の表式に掛けます。
 

Ψ,ΨやΠ,δを省略して,Tは 

T=∫φδ(())Δ[]exp{i[,φ]} 

θδ(μθμ()())Δ[,]
 

ただし,DetMの関数依存性を考慮して,Det=Δ[] 

としました。
 

[,φ],Δ[,]のゲージ不変性から 

T=∫θ∫φδ()Δ[]exp{i[θ,φθ]} 

δ(μθμ)Δ[θ,]
 

ここで.積分変数を(μ,φ)から(A'μ,φ')(θμ,φθ) 

変数変換します。
 

このとき,経路積分測度はゲージ不変です。 

A'=,φ'=φです。
 

(19-1): A'=,φ'=φを証明します。 

A'=Det(δA'μ/ΔAν) 

det[δμνδ3(){δab-gfabcθ()}]
 

ところで,超行列Mに対してln(det)=Tr(ln), 

or detM=exp[r(ln)]です。
 

M=exp(εX)1+εX+O(ε2)なら,r(ln)=εTr() 

 detM=det[1+εX+O(ε2)] exp[εTr()]
 

A'=det(∂A'μ/∂Aν) 

det[δμνδ3(){δab-gfabcθ()}] 

exp[4∫d4[-gfaacθ()δ4(0)]A=A です。
 

一方,φ'= Det(δφ'/Δφ)φ 

det[δ3(){δiki()ikθ()}]φ 

exp[ig∫d4[r()θ()δ4(0)]φ です。
 

がU(1)群の生成子1でないならTr ()0 です。
 

GがU(1)を部分群としてを含む場合でも.φとφの変換は, 

φ→[1i()θ]φ,,φ[1-+i()θ]φ 

φは実はφφですからそれらのTのつくるトータル 

のトレースはゼロで,結局,φ'=φを得ます。 

(19-1終わり※)
 

A'=,φ'=φと,さらに,A'θ-1を用います。 

そして変換後に(A'μ,φ')prime記号をはずして(μ,φ) 

記号にすると,T=∫θ∫φδ(θ-1)Δ[θ-1] 

δ(μμ)Δ[,]exp{i[,φθ]} です。
 

ただし,不変測度の性質D(θ-1)=Dθをも用いました。
 

さて,ここでΔ[,]の評価を行います。 

この式には,δ(μμ)因子があるので,μμ 

満たすAμの近傍のみで評価すれば十分です。
 

つまり,Δ-1[,]=∫θΠ,δ(μθμ()()) 

の定義において,Gの単位元θ=1の近傍のみがθに効いて 

きます。
 

単位元の近傍では,θ=1igθ() 

(θ)μ()μ()(μθ)()
 

また,不変底度:θは.r () =Nδab なる直交基底 

をとる群Gでは,θ=Π{Πdθ()}×(定数)で与える 

ことができます。
 

(19-2):空間Gの次元をMとするとM次元多様体の各点Pに 

おける体積要素は,その点でのdθ1…,dθ.,..,dθによって, 

dV()=dθ1dθ..dθ=Πあ=1dθ() です。
 

単位元の近傍の元をθ0(δθ)exp{Σa=1δθ}と書き, 

任意の元:θ1(θ)exp{Σa=1δθ}を左 から掛けたとき, 

dVがどのように変わるかを見ます。
 

θ1・θ0exp[{Σa=1θ'(θ,δθ)} 

exp{Σa=1θ}exp{Σb=1δθ} です。
 

両辺をδθで偏微分すると. θ0はθ=1の近傍なので, 

Σa=1{(∂θ'/∂θ)}=Tを得ます。
 

それ故,これの右からを掛けてトレースを取ると, 

∂θ'/∂θ=Nδbcです。
 

したがって,dV'=dθ'1dθ' 

det(∂θ/∂θ)dθ1dθ=dV
 

結局, Πa=1dθは不変測度であり,これを定数倍 

したものも不変測度です。(注19-2終わり※)
 

したがって, 

Δ-1[,]=∫θΠ,δ(μθμ()()) 

=∫(Πa=1dθ) Π,δ(μμθ()) 

Det-1(μμ) と書けます。
 

(※何故なら,∫δ()det(-1)δ(0) 

det-1()δ(0) です。)
 

すなわち,Δは4次元関数の汎関数行列式:  

Δ[,]Det,であり,abxy=∂μμ 

=∂{δabμ-gfacbμ()}δ4(x-y) 

です。
 

結局,μμfなので,式からfは消えて,Δ[,] 

は実はfには依存しないという結果を得たことが重要です。
 

そして,Δ[,]DetNと行列式に表わせるので,これを 

Fadeev-Popovの行列式と呼びます。
 

ところで,このΔ[,]Det, 

abxy=∂{δabμ-gfacbμ()}δ4(x-y) 

の形を見ると,これは前回定義した,DetM=Δ[]. 

abxy()=∇x{δab+gfacb(,)}δ3(-y) 

との類似性が歴然としています。
 

そこで,Δ-1[,]=∫θΠ,δ(μθμ()())と同様, 

Coulomゲージでも,Δ-1[]=∫θΠ,δ(∇Aθ()) 

と定義すると,やはり不変測度θがあって,それに対しゲージ不変性: 

Δ[θ]=Δ[]が従うことがわかり,単位元の近傍で 

(θ)μ()μ()(μθ)()と同様, 

(θ)()()(θ)()と変換すること 

からΔ[]=ΠtDetM=ΠtΔ[] が示せます。
 

Δ-1[]=ΠtDet-1(-∂)=ですから 

T=∫θ∫φδ()Δ[] 

δ(μμ)Δ[,]exp{i[,φ]} 

における∫θΠ,δ()Δ[]の部分は実は1 

等しいことがわかりました。
 

結局,T=∫φΨΨΠ,δ(μμa) 

(Det)exp{i[,φ]} が得られます。
 

出発点のTの表式と比較すると,相対論的に共変でない 

CoulombゲージのΠ,δ(())Πt(Det),相対論的 

に共変なδ(μμ()a())(Det)に置き換えること 

に成功したことになります。
 

上述の式変形の途中では始.終状態の波動関数:Ψ,Ψ 

を省略していたので明確ではなかったのですが,それらの 

波動関数自身もゲージ不変なときにのみ,これらの導出は, 

正当化される手続きです。
 

しかし,物理的状態はゲージ変換で不変,または,せいぜい 

ユニタリ変換を受けるだけなので,物理的状態間の遷移振幅 

に関する限り,この最終表式:T=∫φΨΨ 

Π,δ(μμa)(Det)exp{i[,φ]},他のゲージ 

と等価な正しい情報を与えることになり,理論的には,それだけ 

で十分です。
 

Fadeev-popovゴースト
 

T=∫φΨΨ 

Π,δ(μμa)(Det)exp{i[,φ]} 

もう少し摂動計算に便利な形に書き換えることを考えます。
 

遷移振幅Tは最終状態がゲージ不変である限り,元のCoulomb 

ゲージの表式と同じ値を示し,実はc数関数:()には全く 

依存しないことを先に述べました。
 

それ故,例えば,次のGauss関数の積分で与えられる定数: 

ξ=∫exp i[∫d{{1/(2α)()()}} 

の表式の両辺に掛けて,さらにξ-1を掛け,積分変数の順序 

を交換し,δ(μμa)の中のf,上のξを与える 

積分変数:と同一視することも許されます。
 

つまり,T=ξ-1φfΨΨ(Det) 

exp{i[,φ]}Π,δ(μμ()a()) 

exp i[∫d{{1/(2α)()()}} です。
 

すると,T=ξ-1φΨΨ(Det) 

exp i∫d[(,φ){1/(2α)}(μμ) 2} 

となります。 

(※ξ-1は摂動の真空泡で割ると相殺されて消えます。)
 

この段階で出現した,{1/(2α)}(μμ) 2}QED 

の場合にゲージ固定項として既知のFermi項の形です。
 

勝手な定数αは,ゲージパラメータと呼ばれます。
 

ただ,ここでは可換群:(1)に基づくQEDとは異なり, 

Fadeev-popov行列式:DetNが現われるのが重要です。
 

ξの代わりに,新変数:()を導入した形では 

1=∫DBexp i[∫d4{(α/2))}] 

を挿入します。 

(※何故なら,右辺=∫DBδ()exp i[∫d4{(α/2)} 

]1 です。)
 

T=∫φΨΨ(Det) 

exp i∫d[(,φ)+Bμμ(α/2)] 

となります。
 

1=∫DBexp i[∫d4{(α/2))}] 

において右辺で∫DBを先に実行すれば, 

1=ξ-1exp i[∫d{{1/(2α)}}が得られる 

ので先の操作と等価です。
 

しかし,()は他の場:μ(),φ()と同様,経路積分される 

補助的な場の役割をしており,以下の議論でも,有用な役割を果たす 

ので以下では, 

1=∫DBexp i[∫d4{(α/2))}] 

を挿入する方法を採用します。
 

()QEDの共変な正準型式をつくった際に,その重要性 

を指摘した人の名をとって,中西-Lautrap,略してNL場と 

呼ばれています。
 

Fadeev-popov行列式:DetNの部分をさらに摂動論で扱いやすく 

するために2種の実Grassmann 変数:() ,~() 

導入し,Δ[,]Det,abxy=∂μμ 

=∂{δabμ-gfacbμ()}δ4(x-y) 

を用いると,Fadeev-popov行列式:DetNは, 

 DetN=∫DcDc~expi[∫dx{i~()(μμ)()}] 

=∫DcDc~expi[∫dx{i~()μμ()}] 

μ()=∂μ()-gfabcμ()() 

と書き直せます。
 

()が普通の実変数なら右辺のGauss積分はDet-1 

となってしまうのでGrassmann 変数でなければなりません。
 

DetN=∫~expi[∫dx{i~()μμ()}] 

の右辺は,() ,~()があたかも粒子場であって指数部 

がその作用積分であるような形になっています。
 

運動項は通常のスカラー場と同様なc~□cの形をしており, 

-gfabcμ(μ)の項はAμとの相互作用を与えます。
 

しかし,このスカラー場c() ,~()Grassmann  

なのでFermi統計に従うという奇妙なものです。
 

このような奇妙な粒子の存在は,まず,FeynmanYang-Mills 

1ループグラフのユニタリ性のために,必要であることに気付き 

続いて,De Wittが任意の高次ループグラフに対して一般化した 

のですが,それを経路積分で初めて系統的に導入した人の名を 

とって,Fadeev-popovゴースト(ghost),略してFPゴースト 

と呼びます。
 

まとめると遷移振幅は,結局, 

T=∫~φΨΨ(Det) 

exp i[∫dL~ (,,,~,φ)

ただし,L~ (,,,~,φ) 

(,φ)+LGF(.)FP(,~,) 

GF(.)=B(α/2)a , 

FP(,~,)i~μμ 

で与えられることになります。
 

量子論の全Lagrangian,元のゲージ不変なLagrangian: 

にゲージ固定項:GFFadeev-popov;FPを加えたもの 

になります。
 

遷移振幅がT=∫~φΨΨ(Det) 

exp i[∫dL~]で与えられることから,共変ゲージにおける 

Green関数の生成汎関数;[]の経路積分表式は 

[]=∫~φΨΨ(Det) 

exp i[∫d(L~ φ)], で与えられることが 

わかります。ここで,φJaμaμ+Jiφi+J~ 

+J~~+Ja です。
 

。ただし,一般にGreen関数,それ故Z[]はゲージ不変な量 

ではなく,採用しているゲージに依存します。上述の物理的状態 

間の遷移振幅:Tの場合,のように,他のゲージとの等価性が 

示せるのは,Green関数の含む物理的情報,例えば,S行列の値 

などに関してのみです。
 

今日はここまでにします。 

次回は新節のBRS対称性に入ります。

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

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