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2018年1月24日 (水)

ゲージ場の量子論(20)

ゲージ場の量子論(19)」からの続きです。
 

※秋には台風の中を通院した,悪い星の下に生まれた,雨男,雪男 

は2か月に1回だけの予約外来通院で,23日には雪で凍った道 

の上,苦労して病院に行って来ました。疲れる!まだ生きてる!!
 

§5-4 BRS対称性 

前節で得られた共変ゲージでの経路積分表式に基づき, 

非可換ゲージ理論は,t'Hooft(トフフト)を初めとする人々 

によりくり込み可能性やユニタリ性の証明,漸近的自由性 

の発見など,大きく発展させられました。
 

その発展が一息ついた頃,Becchi(ベッキ),Ronet(ルネ), 

Stora(ストラ)の3人は,前節のLagrangian密度:~がある 

奇妙な変換の下で不変であることに気付きました。
 

この変換はパラメータがGrassmann数であり,2回続けて行う 

とゼロになる(ベキ零世)という特殊な性質を持っているもので. 

今日,BRS変換と呼ばれています。
 

ゲージ理論の量子系のLagrangian密度:~のBRS対称性は 

非常に基本的なもので,歴史的には先行していたゲージ固定  

の方法.くり込み可能性,ユニタリ性の証明など,ゲージ理論  

の構造全般に関して,大変透徹した理解を与えます。

そこで,ここではそのような理論の歴史的順序を全く逆転して 

局所ゲージ不変な理論から出発して,まず,BRS変換を構成し  

次にそれに基づいてゲージ固定の手続きを行ない,量子論的な  

Lagrangian:を得るという順序で話をします。

すなわち,出発点は古典的な場のゲージ変換と,その下で不変 

な古典的Lagrangian:であって、前節のFadeev-popov 

ゲージ固定処方や量子化の知識を全く前提にしません。
 

むしろ,FPゴースト場:.~や中西-Lautrap(NL場): 

なるものは、第1ステップのBRS変換によって導入されます。
 

また,第2ステップは「BRS変換によるゲージ固定処方」も, 

実は元の,Fadeev-popovのそれより,ずっと一般的なものを 

与えることがわかります。
 

もちろん,歴史的にはFadeev-popovの仕事なくして;BRS 

変換の発見は有り得なかったわけではありますが。。。
 

※BRS変換の構成 

Yang-Mills場の古典論,すなわち,前節の古典的Lagrangian 

密度:(,φ)と場のゲージ変換を出発点としてBRS変換 

をどのように構成するか,その構成法を,やや天下り的に,  

与えることにします。
 

この構成法は,しかし,任意の局所ゲージ不変な系に対して 

適用できるもので,他の系への適用の仕方が明らかになる 

ような形で述べます。
 

) まず,元々のゲ^ジ不変なLagrangian密度:(,φ) 

に現われているゲージ場:μと物質場:φiに対して, 

BRS変換は,元の無限小ゲージ変換において,単に,その 

無限小変換パラメータ:θ()Grassmann数パラメータ: 

λとFPゴーストがc()の積で置き換えて, 

θ() → λc() とすれば得られます。
 

すなわち,δφ()=-igλc()()ijφ(), 

δμ()=λ{μ()-gfabcμ()()} 

=λDμ() です。
 

この天下り的構成法では,θ() → λc()の手続き 

でFPゴースト場は導入されるので,その)個数や添字は, 

一般に局所ゲージ変換パラメータのそれに等しいことに 

なります。
 

(※普通,変換パラメータ:θ()は可換なc-数なので, 

θ() → λc()でλがGrassmann数なら,それは 

()Grassman 奇の量であることを意味します。
 

変換パラメータ自身がGrassmann数である超対称性ゲージ  

変換の場合は,逆にFPゴースト場:()Grassmann  

偶の量となります。)
 

Grassmannn:λはBRS変換の大局的(xに依らない) 

変換パラメータです。

 この変換パラメータ:λを省いた形のBRS変換:  

δ,つまりδ=λδもしばしな有用であり,これは,  

行列記法:()=c(),μ()=Aμ()

を使ってδΦ(x)=-ig(x)φ(x),  

δμ()=∂μ()i[(),μ()]  

で与えられます。
 

Grassmannn:λをはずしたので,δは演算規則として 

Grassmannn奇の量(Fermion)を跳び越すとき()符号 

を出します。
 

すなわち,δ(FG)()G+()|{δ
 

)()の続きで,導入されたFPゴースト場;() 

のBRS変換は,物質場:φiやゲージ場:μの上での2回 

BRS変換がゼロになるように決めます。
 

すなわち,φiやAμの上でベキ零性:δ20 が成り立つことを要請 

します。
 

物質場:φの上でのベキ零性の要求は,0δ(δφ) 

=-δ(icφ)=-i{(δ)φcδφ} 

=-i{(δ)+c(i)}φ
 

任意の物質場;φに対してこれが成立するので 

FPゴースト場のBRS変換は, 

δ()=-i2() です。
 

これを()=c(),の成分c()で表示すれば, 

が反交換量なので, 

2(1/2)[, ] (i/2)abcより, 

δ()(1/2)abc()() となります。
 

)上では物質場の上でのベキ零性:δ2φ0 から, 

δ()=-i2()を導きましたが,これによって, 

ゲージ場の上でのベキ零性:δ2μ0 も自動的に 

満たされていることを確かめることができます。
 

(20-1):何故なら,δμ=∂μi[,μ] 

なのでδ(δμ)=∂μδμ 

i{(δ)μ(-c(δμ)(δμ)(δ)μ} 

μδμ-∂μ(i2)=-i{(μ)c+c(μ)} 

0 です。(20-1終わり※)
 

もう1つ確認すべき,自明でない点はFPゴーストcの変換則: 

δc=-i2から,ゴースト自身の上でのベキ零性:δ20 

が満たされるかどうか?ということです。
 

しかし,幸い,これは次のように容易に確かめることができます。 

すなわち,δc=-i2より,δ(δ)=-iδ(cc) 

=-i{(δ)c-(δ)c=(i)2{2c-cc2}0  

です。
 

)最後に,FPゴースト場:()11個に対応して 

反ゴースト場:~()を導入して,そのBRS変換として 

NL場:()のi倍を定義します。
 

すなわち,δ~()=i()です。
 

さらにδ2~0 を要請すれば,NL場:() 

BRS変換が δ()0 と決まるので,ベキ零性: 

δ20 が新しい場:~,の上でも成立すること 

になります。
 

以上がBRS変換の構成法の全てです。この構成法により 

明らかにBRS変換は,常にベキ零性:δ20 を示します。
 

Lagrangian段階でのゲージ固定処方 

BRS変換が構成されると,ゲージ不変な古典場のLagrangian: 

(,φ)に対して,次のように非常に簡単で,かつ一般的な 

ゲージ固定の処方を与えることができます。
 

まず,ゴースト場:に-1,反ゴースト場:~に+1を付与 

する加法的量子数;FPを定義して,これをゴースト数と 

呼ぶことにします。(※したがって,ccとc~cは,それぞれ, 

ゴースト数:FPが,-20です。)
 

次に,ースト数がゼロであるような場の関数:(,φ,,~) 

をゲージ変換パラメータ:θと同じ数だけ任意に選んで設定します。
 

そして,GF+FP=-iδ(~)と定義しこれを(ゲージ固定項, 

Fadeev-popov)として,元のゲージ不変なLagrangian: 

(,φ)に加えます。これが,,与えたBRS変換に基づくゲージ 

固定処方の全てです。
 

関数:はゲージ固定関数(gauge fixing function)と呼ばれます。 

.全く任意といっても,もちろんゲージを完全に固定するもの, 

という制限があります。
 

こうして,元のゲージ不変なLagrangianにゲージ固定項, 

Fadeev-popov項を加えたもの: 

~(,φ,,~)(,φ)GF+FP(,φ,,~) 

が量子論におけるLagrangianとなります。
 

ゲージ固定というからには,この~では,局所ゲージ不変性は 

全て失われていて,もはや第1類拘束条件を1つも導かない, 

というようなFの選択でなければなりません。
 

1つの例として,ゲージ固定関数を,=∂μμ(α/2) 

(αはゲージパラメータ)と取ってみます。
 

そうすると,BRS変換則によって 

GF+FP=-iδ[~{μμ(α/2)}] 

=B{μμ(α/2)}i~(μμ) 

=B(μμ)(α/2)i~μμ 

となり,結局,前節の(GFFP)を再現しました。
 

一般にゲージ固定関数:がFPゴーストを全然含まない 

場合,GF+FP=-iδ(~)δがc~にかかる部分 

とFにかかる部分が,それぞれ,ゲージ固定項:GF 

対応するFPゴースト項:FPとを与えることになります。
 

GF=Ba(,φ,), 

FP=-i~δ{a(,φ,} です。
 

以上の手続きが前々節の最後の第1類拘束系の取り扱いの 

2番目の方式よして挙げた 

Lagrangian段階でのゲージ固定処方」の一般の系の場合 

の処方です。
 

BRS変換の構成と,それに基づくゲージ固定処方に関して 

重要な注意をいくつか述べておきます。
 

) BRS変換:δはゲージ固定を行う前に決められており. 

ゲージ固定条件には依存しません。
 

)ゲージ固定項:GFと対応するFPゴースト項:FP 

両者を一まとめにして,GF+FPδ()の形をしている 

ので,そのBRS不変性はδのベキ零性から明白です。
 

δGF+FPδ{δ()}0 です。
 

一方,元のゲージ場:μと物質場:φiに対するBRS変換は, 

θ()=λ()を変換パラメータとする特殊なゲージ 

変換に過ぎない,ことから,ゲージ不変な(,φ) 

明らかにBRS不変です。
 

(※ 関数:fに対するBRS変換とは,fがf→f+δfと 

変換されることを意味するのでfがBRS不変であることは 

δf=0 と同値です。)
 

従って,上の手順で得られる量子力学系の全Lagrangian 

~(,φ,,~)(,φ)GF+FP(,φ,,~) 

は自動的にBRS不変です。 

つまり,δ~δ(,φ)δGF+FP0で す。
 

すなわち, GF+FPを加えたことによって(,φ)の持って 

いた局所的ゲージ不変性は完全に消えたのですが,代わりに, 

得られた~は大局的なBRS不変性を持つことになります。
 

しかも,元々あった場:μとφiに関してはBRS変換は 

特殊な形のゲージ変換なので,この意味で「BRS不変性は 

量子力学系のゲージ不変性である。」ということができます。
 

(20-2):ゲージ固定の意味 

BRS変換:δのパラメータ:λc()を単なるθ() 

に戻したときの普通のゲージ変換を,δθと書けば,ゲージ不変 

(,φ)については相変わらずδθ(,φ)0 です。
 

しかし,一般に.ゴースト場についてδθは効かない,とすれば. 

δθGF+FPδθGF0 なので,~GF+FPにおいて 

,確かにゲージ不変性は完全に消えてなくなります。 

(20-2終わり※)
 

)今の処方ではゲージ固定関数:,FPゴースト場:やc~ 

を含んでいてもいいはずです。 

しかし,そうした場合には,GF+FP=-iδ(~),ゴースト 

の4次の相互作用:~~ccをも含むことになります。
 

ところが前節のFadeev-Popovの処方では,FPゴーストは 

Fadeev-Popov行列式をGauss積分の書き換えるトリックでのみ 

現われるので,そうした相互作用項は決して出てきません。
 

それ故,今のゲージ固定処方の方が前節のFadeev-Popovの処方 

より,かなり一般的にされたものであるといえます。
 

元のLagrangianに加える「ゲージ固定項+FPゴースト項」 

としてGF+FPδ()の形を採用するのは上記の()とは 

別の重要な意味がありますが,それは次節で述べる予定です。
 

 この節は,ここで終わりで切りがいいので,今日はここまで 

にします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

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