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2018年1月28日 (日)

ゲージ場の量子論(22)

「ゲージ場の量子論(21)」からの続きです。
 

※BRS電荷 

まず.全系のLagrangian: ~を再掲します。これは. 

~=-(1/4)μνaμνmatter(φ,μφ) 

GFFP で与えられます。 

ただし.GF=-∂μμ(α/2), 

FP=- i(μ~)μa です。
 

既に述べたように,このLagrangian:~,BRS不変です。 

BRS変換:は変換パラメータがxμに依存しないGrassmann: 

λであったので,1つの大局的変換です。
 

よって,Noetherの定理によって,対応する保存カレント:μ 

と電荷(チャージ):=∫d30()が存在します。
 

Noetherカレント:μ,δ0 なので 

λJμ{~/(μν)}δν{~/(μφi)}δφ 

{~/(μ)}δ{~/(μ~ν)}δ~ 

で与えられます。ただし,δ=λδです。
 

つまり,λJμ{~/(μν)}(λDν) 

{~/(μφi)}{igλc(φ)i} 

{~/(μ)}{(λ/2)gfabc} 

{~/(μ~ν)}(iλB) です。
 

ここで変換パラメータλはGrassmann数で,符号に注意する 

ため,一時的にλを陽に書きました。
 

物質場のカレントの定義:μ=-g-1(matter/∂Aaμ) 

=-i{matter/(μφi)}(φ)i,運動方程式: 

ννμ-gjμ=∂μigfabcμ 

用いて上式の左側からλをはずします。
 

μ=-Fμν(ν-gfabcbν)+gjμ 

(μ-gfabcμ)a 

(i/2)gfabcμ~a, 

ここで,gjμ=-(νμν^-gfabcbνμν)-∂μ 

igfabcμc ですから, 

gjμ=-(νμν)(μ)より. 

μ=-Fμν(ν)(νμν) 

(μ)(μ)a(i/2)gfabcμ~a

です。
 

結局,μ==Ba(μ) (μ) 

(i/2)(μ~a)(c×c)-∂ν(μν) 

という簡単な表式を得ます。
 

ただし群の添字;aを持つ量:,に対して, 

(F×G)=fabcなる表現を用いました。
 

-∂(0ν)は表面積分で消えるため,この 

大局的対称性変換の保存電荷: , 

=∫d3{a(0) (0) 

(i/2)gfabc0~a}で与えられます。
/
 

この保存チャージはNoetherの定理の帰結で, 

Lagrangianを不変に保つ対称性変換の生成子に 

なります。
 

すなわち,[iλQ,Φ()]=λδΦ()です。 

ただし,ΦはAμ,φi,,~,のどれかを 

意味しδΦ,前節で与えたλを省いた全ての 

BRS変換を意味します。(※λはGrassmann;奇の数 

なので,Φ(によっては,λをはずずと左辺の交感子は 

反交換子になります。)
 

はBRS電荷,または,BRS演算子と呼ばれます。
 

一方,先に触れたFPゴースト数;FPもこの系の保存量です。 

ただ,普通のFermion数とは異なり,対応するのは~の位相 

変換ではばく,次のスケール変換の下での不変量です。 

() exp(ρ)(), 

~() exp(-ρ)~()(ρは実数パラメータ)
 

これはゴースト場:,~Hermite()であり, 

位相という概念は有り得ないからです。
 

この変換のNoetherカレントは, 

μ{~/(μ)} exp(ρ)

{∂L~/(μ~)}exp(-ρ) 

=-i(μ~)i~μ 

i{~μ(μ~)}であり,
 

保存電荷は,i∫d3{~0(0~)} 

です。これをFPゴースト電荷と呼ぶことにします。
 

これは確かに上記スケール変換の生成子になっています。 

[i,()]=c(),[l,~()]=-c~() 

これは自明です。
 

この交換関係からFPゴースト数演算子;FP, 

,のi倍と同定されます。NFPiです。 

興味深いことは, FPゴースト電荷:はBRS電荷:  

と同じくHermite()演算子であることです。 

=Q,および.=Qです。
 

それ故, FPゴースト数演算子:FPi,Hermite 

(純虚数)演算子であるにも関わらず,実数の固有値:が+1, 

~が-1,を持つ,ことを意味します。
 

このように奇妙なことが起こるのは,後で陽に示すように, 

FPゴーストの状態空間が,不定計量を持つからです。
 

=∫d3{a(0) (0) 

(i/2)gfabc0~a}であり, 

i∫d3{~0(0~)} 

ですから,これらは次のような簡単な代数を満たします。 

これはBRS代数と呼ばれます。
 

まず,.(1/2){, }=20 です。 

故に,Grassmann 奇です。 

また,[i,]=Q,[,]0, です。 

故に,Grassmann 偶です。
 

ΦがBose場のとき, 

δ2Φ={i.[i,Φ]} 

=-Q(Φ-ΦQ)(Φ-ΦQ) 

=-[2,Φ] であり,
 

ΦがFermi場のとき, 

δ2Φ=[i.{i,Φ}] 

=-Q(Φ+ΦQ)(Φ+ΦQ) 

=-[2,Φ]です。
 

そこで,いずれにしても,20,NRS変換の 

ベキ零性:δ20 を意味します。
 

このQ20 ,=∫d3{a(0) (0) 

(i/2)gfabc0~a}なる表式から直接示すこと 

もできます。
 

すなわち,2i2 

{i,∫d3[a(0)(0) 

(i/2)gfabc0~a]} 

=∫d3[a(δ0)(0)δ 

-∂0(δ~a)(i/2)(c×c)] です。
 

0δ0,δ20からδ00 です。
 

故に,.2i2=-∫d3[(0)δ 

+∂0(δ~a)(i/2)(c×c)] 

ところが,=-iδ~なので, 

(0)δ-i0 (δ~)(δ)です。
 

一方,(1/2)(c×c)δなので 

0(δ~a)(i/2)(c×c)i0(δ~a)(δ),
 

したがって,20 を得ました。
 

交換関係:[i,]=Q,および,[,]0,, 

単に電荷演算子: ,,FPゴースト数:FP 

値として,それぞれ+1,0を持つことを示しています。
 

最後にBRS変換のパラメータλが純虚数のGrassman 

であること:λ=-λであること,を注意しておきます。
 

実際,任意の演算子;OとGrassman:λの積:λOのHemite 

共役は,(λO)=Oλですから,λ=-λなら全ての場; 

ΦのHermite性が,BRS変換後のΦ'=Φ+λδΦに 

なっても保持されることが保証されます。
 

例えば,(λδμ)(λDμ)(μ)λ 

=-λμですから,-λ=λならλδμもAμ同様 

Hermiteになります。
 

※物理的状態を選ぶ補助条件 

一般に,ゲージ理論を共変ゲージで扱うと必ず,負ノルム 

を持つ粒子が現われます。例えば次節で説明しますが 

Feynmanゲージ(α=1)でのゲージ場:μ)の自由場 

(または漸近場)の生成・消滅演算子:a+μ().(), 

交換関係:[μ(),b+ν()]=-gμνδabδ3() 

を満たします。
 

Lorentz不変性から,右辺にMinkowski計量:μν 

diag(1.1,1,1)が出現しますが,これは時間成分 

(0成分)のゲージ粒子=添字aを省略した局所化形で 

0()|0>=∫d3()0()|0>で与えられる 

粒子状態が,負ノオルムを持つことを意味します。
 

すなわち,0|0()0()|0 

=∫d33()() 0|0()0()|0 

=-∫d3|()|0 となります。
 

さらに,今の非可換ゲージ理論ではFPゴーストが存在し, 

それらも負ノルムを含み,「スピンと統計の関係」を破る 

奇妙な粒子です。
 

これらの明らかに非物理的な粒子の出現することを禁止し, 

謂わゆる負の確率という困難が生じない,物理的に意味の 

ある理論を得るためには,全状態空間:の中から物理的状態: 

|Phys>をうまく選び出してやる必要があります。
 

可換群:(1)に基づくQEDの場合(Lagrangian,~で添字: 

を消し,abcをゼロとしてFPゴースト項も落としたもの 

で与えられる。)には,その昔,Gupta-Bleuler,Feynman 

ゲージのとき,補助条件:(μμ)()()|Phys>=0  

を置いて,物理的部分空間:Phys{|Phys}を定義し,全て 

うまくいくことを示しました。
 

ただし,(μμ)の肩の添字:(),μμの正振動数部分, 

つまり,消滅演算子部分を表わしています。
 

一方,中西とLautrap, Gupta-Bleuler条件: 

(μμ)()()|Phys>=0 ,()()|Phys>=0 という 

補助条件に置き換えるFeynmanゲージ以外でもうまくいくよう 

一般化しました。

NL場:()の満たす運動方程式:μμ+αB=0 

の関係からα=0Landauゲージ以外では,上記中西-Lautrap 

条件がGupta-Bleuler条件に等価であることがわかります。
 

しかしながら,:これらGB条件やNL条件は可換群の場合に 

しかうまくいきません。そもそも正振動数(消滅演算子)部分, 

負振動数(生成演算子)部分の分離というものは自由場の場合 

しかうまく定義できません。
 

一般の群の場合, ()の満たす運動方程式は, 

ννμ-gjμ=∂μigfabcμ 

および,μμ=Dμμ~0 から, 

μμigfabcμμ0 となります。
 

(22-1):μννμ0 は,νμのν,μについて 

の反対称性から明らかです。
 

また,jμ=-i(Dμφφ-φμφ)ですから 

μjμ0,かつ,μjμ0 です。
 

そこで計算によって直ちに, 

μμigfabcμμ0 が成立すること 

がわかります。
 

μjμ0,Noetherの定理により当然成立しなければ 

なりません。 

そして,局所ゲージ不変性が成立し,平坦な空間の微分が∂μ→ Dμ 

のように,多様体上の共変微分に変わっても.この保存するという 

性質は不変と思われますから,μjμ0,の成立は当然でしょう。 

(22-1終わり※)
 

(1)群の場合,abc0 でかつ添字:aがないので自由場 

の方程式は,□B()0 に帰着します。そのため正負振動数 

部分への分離が次のようにできます。
 

すなわち,()()=∫d3()(), 

()()=∫d3()() です。 

ただし,()B=exp(ikx)/{(2π)30}1/2,0=|| 

です。
 

しかし,一般の非可換群の場合には,(), 

μμigfabcμμ0 のように,複雑な 

相互作用の影響があり,上のような分離はできません。
 

それに,たとえ何らかの方法で正,負振動数部分を定義できた 

,としても,ある時刻で補助条件:()()|Phys>=0を設定 

したとき,続く時刻でもそれが成立していることが示せません。
 

すなわち,GB条件やNL条件は可換群以外の場合,時間発展 

とは整合しません。

しかし,驚くべきことに,一般の非可換ゲージ理論の場合にも  

物理的部分空間:Physを定義する補助条件を見出すことが  

できます。 

しかも,ある意味では可換群のそれより簡単な条件です。
 

それは,先に導入したBRS電荷:を用いて, 

|Phys>=0 ⇔ |Pys>∈Physとするわけです。
 

※これは九後・小嶋(1977)によって初めて提唱されました。 

T/Kugo,and I.Ojima Phys.Lett.Vol73B (1978)p.459 )
 

この条件はQがBRS変換の生成子であり,BRS変換が 

「量子的ゲージ変換」であることから,直観的に「物理的状態 

はゲージ不変である。」ことを意味しています。
 

途中ですが,続く話が長くなりそうなので, 

今日はここまでにします。

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

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