ゲージ場の量子論(24)
「ゲージ場の量子論(23)」からの続きです。
※ 将来のために計画を立て我慢したり,節約して蓄えろ,とか,
将来などないと思っている高齢の障害者ジジイには,もはや
聞こえない話です。
新約聖書には「愚か者よ。お前は今夜召される。」
と主が叱咤した話があります。私にもイエスの言葉が聞こえそうです。
「朝に道をきかば夕に死すとも可なり」(孔子?) とか。。
「柔肌の熱き血潮に触れもみで淋しからずや,道を説く君」
(与謝野晶子) とか。。。
※ FP共役変換と反BRS対称性
ゲージ固定条件:∂μAaμ+αBa=0でLandauゲージ:
α=0を採用した場合,∂μAaμ= 0ですから,FPゴーストと
反ゴーストの運動方程式:∂μDμca=Dμ∂μc~a=0 は同じ
形:∂μDμca=∂μDμc~a=0 になります。
(※何故なら,∂μAaμ= 0 なので,
Dμc~a=∂μc~a-gfabcAbμc~c
より,∂μDμc~a=∂μ∂μc~a-gfabcAbμ∂μc~c
=Dμ∂μc~aとなり.∂μとDμが交換するからです。)
そこで,caとc~aの入れ換えに対する対称性があると予想
されます。
実際α=0の場合,LGF+LFP
=-∂μBaAaμ- i(∂μc~a)Dμca
=∂μB~aAaμ+ i(∂μca)Dμc~a と書けます。
ここでB~aはBa+B~a=-ig(c×c)aで定義されます。
それ故,LandauゲージのLagrangianは,
CFP:ca → c~a,c~a → ca,Ba → B~a
という変換に対して明らかに不変です。ただし,ゲージ場:
Aaμと物質場:φlは,変換されないとします。
この変換をFP共役変換と呼びます。
そしてBRS電荷:QBのFP共役変換:CFPQBCFP-1を
Q~Bと記し,反BRS電荷と呼びます。
Q~Bの引き起こす変換を,[iλQ~B,Φ]=λδ~BΦとすると,
[iλQ~B,Aaμ]=CFP[iλQB,Aaμ]CFP-1
=λCFP(Dμca)CFP-1=λDμc~a=λδ~BAaμ
と書けます。そして,このδ~Bを反BRS変換と呼びます。
δ~BAaμ=Dμc~a,δ~Bφi=-igc~a(Ta)ijφj ,
δ~Bca=iB~a, δ~Bc~a=(g/2)(c~×c~)a
となります。δ~BB~a=0 も明らかです。
Landauゲージの場合,この反BRS変換がLagrangian:
L~の不変性を与えることは明らかです。
Landauゲージ(α=0)のLGF+LFP
=-(∂μBa)Aaμ- i(∂μc~a)(Dμca)
は,LGF+LFP=δBδ~B{(i/2)AaμAaμ}
とも書けます。
※(注24-1):何故なら,
まず,δ~B{(i/2)AaμAaμ}=i(Dμc~a)Aaμ
=i{(∂μc~a)Aaμ-gfabcAbμccAaμ}
=i(∂μc~a)Aaμ です。
故に, δBδ~B{(i/2)AaμAaμ}=iδB{(∂μc~a)Aaμ}
=i{(i∂μBa)Aaμ}-i(∂μc~a)(Dμca)
=-(∂μBa)Aaμ- i(∂μc~a)(Dμca)
=(LGF+LFP)α=0 を得ます。(注24-1終わり※)
しかしながら,大変興味深いことに,実はLandauゲージ
でなくても任意のαで,L^の反BRS不変性が成立する
ことがわかります。これを示しましょう。
まず,δ~BBa=-g(B×c~)a です。
※(注24-2):証明です。
まず,Ba+B~a =-ig(c×c~)a ですから,
δ~BBa=-{δ~BB~a +igδ~B(c×c~)a}
=-ig{(δ~Bc×c~)a- (c×δ~Bc~)a}
=-ig[(iB~×c~)a- {c×(g/2)(c~×c~)}a]
=g[{-B-ig(c×c~)}×c~]a
+ig{c×(g/2)(c~×c~)}a
=-g(B×c~)a
-ig[g{(c×c~)×c~}a-(g/2){c×(c~×c~)}a]
ところが,{(c×c~)×c~}a=fabc(c×c~)bc~c
=fabcfbdecdc~ec~c です。
他方, {c×(c~×c~)}a=fabccb(c~×c~)c
=fabcfcdecbc~dc~e
=fadbfbeccdc~ec~c です。
結局, {c×(c~×c~)}a=2fabcfbdecdc~ec~c
以上から, δ~BBa=-g(B×c~)aを得ます。
(注24-2終わり※):
したがって,δ~B(Baca)=-g(B×c~)aca+Ba(iB~a)
=-gBa(c×c~)a+iBa{-Ba-ig(c×c~)a{
つまり,δ~B(Baca)=-iBaBa または,
BaBa =iδ~B(Baca) が得られます。
そこで,(α/2)BaBa=δ~B({(αi/2)Baca}であり
ベキ零性:(δ~B)2=0 が成立するため,δ~B({(α/2)BaBa}
=0 となり,項(α/2)BaBaが反BRS不変ですから,αがゼロ
でなく任意でもα=0 と同じくL^が不変であるとわかります。
δ~Bのベキ零性は,
[iλ1Q~B,[ iλ2Q~B,Φ]]=λ1λ2 (δ~B)2Φ
=CFP[iλ1QB,[ iλ2QB,Φ]]CFP-1=CFPλ1λ2 δB2ΦCF—1
=0 から従います。
反BRS変換まで含めた拡大BRS代数は,
{QB,QB}=2QB2=0, {Q~B,Q~B}=2Q~B2=0,
{QB,Q~B}=0,
また,[iQc,QB]=-QB,[iQc,Q~B]=-Q~B,
[Qc,QBc]=0 です。
{QB,Q~B}=0,はBRS変換と反BRS変換の反可換性:
δBδ~B=-δ~BδBと等価です。
これは直接確認することもできます。
本質的議論では,BRS変換か反BRS変換の一方だけ
で十分です。それ故,これ以降では,もっぱらBRS変換
のみを考えて議論を進めます。
§5-6 Ward-高橋恒等式。および,自由場の量子化と漸近場
ゲージ理論において,どのような漸近場が現われるのか.摂動論
的仮定の下で調べます。そのため,まずゲージ(BRS)不変性
から従う摂動から任意次数で成立する,Ward-高橋恒等式から
始めます。
※ Ward-高橋恒等式
一般にゲージ不変性に限らず,ある対称性が存在すると,種々
のGreen関数,頂点関数等の間に,いろいろな関係式が成立
します。このような関係式を一般にWard-高橋恒等式,
略してWT恒等式と呼びます。
ゲージ不変性に関わるGreen関数に関わるWT恒等式は,
全てBRS演算子:QBを用いて,次のように簡単に与える
ことができます。
すなわち,Ok(x)を任意の場(または,その多項式)の演算子
として,真空のBRS不変性: QB{0>=0を用いると,
0=<0|{QB,T(Ok(x1),Ok(x2),..,Om(xn))}|0>
=Σk=1n(-)Sk
<0|T(Ok(x1),Ok(x2),..δBOk(xk),..Om(xn)|0>
なる恒等式を得ます。
ただし,Sk=Σi=1k-1|i|です。( |i|はOiの統計指数)
1粒子既約な(1PI)頂点関数,または,その生成汎関数
に対するWT恒等式を得るには,次のようにします。
まず,全ての場:ΦLとそのBRS変換;δBΦI(に対して
外場(external
source)を導入します。
S[J,K]=∫d4x[JaμAaμ+Jiφi+J~acca+Jac~c~a
+JaBBa+KaμDμca-iKicag(Ta)ijφj
+(1/2)Kacg(c×c)a] です。
ここで,場は全てHeisenberg場であり,J~ac,Jac~,Kaμ
はGrassmann数,Jaμ,JaBi,Kacは普通の数です。
物質場についてはφiがBose粒子場なら,KiはGrassmann数,
Jiは普通の数で,φiがfermi粒子場なら逆です。
BRS変換された量:δBΦLは既にBRS不変なので.
{iQB,Dμca}={iQB,cag(Ta)ijφj}
={iQB,(c×c)a}=0 です。
そこで,0=<0|{iQB, TexpiS[J,K]|0>
=i∫d4x<0|T[JaμDμca-(-)|i|Jicag(Ta)ijφj
-(1/2)J~ac(c×c)a-iJac~Ba]TexpiS[J,K]|0>
が成立します、|i|は(Jiの統計指数)=(Φiの統計指数)です。
摂動論の項目では,外場:Jを与えてGteem関数の生成汎関数を
Z[J]とし,Z[J]=exp(iW[J])によって得られる,連結Green
関数の生成汎関数:W[J,K],および頂点関数に対する生成汎関数
Γ[Φ,K]を考察しましたが,同様に,,
exp(iW[J,K]=<0|TexpiS[J,K]|0>,
Γ[Φ,K]=W[J,K]-JI・ΦI,
ΦI(x)=(δ/δJI(x))W[J,K]
=<0|T{ΦI(x)expiS[J,K]}|0>/<0|TexpiS[J,K]|0>,
によって.これらを定義します。
ただし,ここでは JIは,Jaμ,Ji, J~ac,Jac~,JaBの全て
を意味します。
一般的記号として,ΦI(x)
=<0|T{ΦI(x)expiS[J,K]}|0>/<0|TexpiS[J,K]|0>
で定義されるΓの引数:ΦIは,c-数(期待値)であり,対応する
Heusenberg場:ΦI=Aaμ,φi, ca,c~a,Baと同じ記号で
表わしますが.混同しないよう注意を要します。
上のΓ[Φ,K]=W[J,K]-JI・ΦIの右辺,および,以下に
おいてドット(dot)・は,積分記号:∫d4xの省略とします。
そうすれば,恒等式: 0=<0|{iQB,TexpiS[J,K]|0>
=i∫d4x<0|T[JaμDμca-(-)|i|Jicag(Ta)ijφj
-(1/2)J~ac(c×c)a-iJac~Ba]TexpiS[J,K]|0>
は, [Jaμ({δ/δKaμ)+(-){i{Jl(δ/δKi)
-J~ac(δ/δKac)-Jac~(δ/δJaB)}W[J,K]=0
と書き直せます。
Γ[Φ,K]=W[J,K]-JI・ΦI,のLegendre変換から.従う,
ΦI(x)=(δ/δJI(x))W[J,K]
=<0|T{ΦI(x)expiS[J,K]}|0>/<0|TexpiS[J,K]|0>,
に双対な関係式:(δ/δΦI(x))Γ[Φ,K]=-(-)|I|JI(x),
および,(δ/δKI(x))ΓW[Φ,K]=(δ/δKI(x))Γ[Φ,K]
を用いると,先の恒等式は,次のように書き直されます。
すなわち,
(δΓ/δAaμ)(δΓ/δKaμ)+(δΓ/δφi)(δΓ/δKi)
-(δΓ/δca)(δΓ/δKac)+i(δΓ/δc~a)Ba=0
と書けます。
これが,(1PI)頂点関数の生成汎関数:Γに対するWT恒等式
です。tだし,Grassmann数による微分は全て左微分です。
ΓのNL場:Baや反ゴースト場:c~aへの依存性は,特殊で
運動方程式:∂μAaμ+αBa=0,∂μDμca=Dμ∂μc~a=0
より従う次の恒等式を満たします。
δΓ/δBa=∂μAaμ+αBa,
∂μ(δΓ/δKaμ)+iδΓ/δc~a=0
※(注24-4):上記の証明です。
まず,証明すべき式のAaμ,Ba, c~aetc.は場の演算子
ではなく,c-数であることに注意します。
[O,[O,S]]=0なら,[O,exp(iS)]=[O,S]exp(iS)
なので,∂μ<0|T{Aaμ(x)expiS[J,K]}|0>
=i∫d4yδ(x0-y0)
×<0{T[Aa0(x),JbB(y)Bb(y)]expiS[J,K]}|0>
+<0|T{∂μAaμ(x)expiS[J,K]}|0>
=<0|T{-JaB(x)+∂μAaμ(x)expiS[J,K]}|0>
です。両辺に,<0|T{αBa(x)expiS[J,K]}|0>
を加えて,<0|T{expiS[J,K]}|0>で割ると,
<0|T{expiS[J,K]}|0>は∂μで微分してもゼロなので
期待値の意味で∂μAaμ+αBa=-JaB(x)を得ます。
そして,JaB(x)=-δΓ/δBaより
δΓ/δBa=∂μAaμ+αBaです。
次に, ∂μ<0|T{Dμca(x)expiS[J,K]}|0>
=i∫d4yδ(x0-y0)
×<0{[D0ca(x),S[J,K]y]expiS[J,K]}|0>
+<0|T{∂μDμcaexpiS[J,K]}|0>です。
iD0ca=πac~よりD0ca=-iπac~ですから,D0caと
同時刻に(反)交換しないのは外場項の中ではc~のみで,
{D0ca(x,t),c~b(y,t)}=δabδ3(x-y)です。
c~aに対応する外場Jac~はGrassmann数なので,
∂μ<0|T{Dμca(x)expiS[J,K]}|0>
=i∫d4yδ(x0-y0)
×<0{[D0ca(x),Jbc~ c~b(y)]expiS[J,K]}|0>
+<0|T{∂μDμcaexpiS[J,K]}|0>
=<0|T{-Jac~(x)+∂μDμcaexpiS[J,K]}|0>
故に,両辺を<0|T{expiS[J,K]}|0>で割って期待値の
意味で,-∂μ(δW/δKaμ)=-Jac~(x)です。(左辺は右微分)
∂μ(δΓ/δKaμ)=-iδΓ/δc~a (左辺は左微分)
すなわち, ∂μ(δΓ/δKaμ)+iδΓ/δc~a=0
を得ます。
(注24-4終わり※)
Γに対するWT恒等式,と上記2つの恒等式は,後のゲージ理論
のくり込み可能性の議論において特に重要な役割を果たします。
ユニタリ性(unitarity)に関連して大切なGreen関数の
WT恒等式は,δB(Bac~b)=BaδBc~b)=i(BaBb)より,
{QB,Bac~b}=BaBb.,つまり,
<0|T[Ba(x)Bb(y)]|0>=<0|{QB,T[Ba(x)cb(y)]}|0>
=0 です。
また,δB(Aaμc~b)=iAaμBb+(Dμca)c~bより
{QB,T[Aaμ(x)cb(y)]}
=T[Aaμ(x)Bb(y)]-iT[(Dμca(x))c~b(y)]
<0|T[Aaμ(x)Bb(y)]|0>
=i<0|T[(Dμca(x))c~b(y)]|0> です。
一方,運動方程式∂μDμca=0、および,反交換関係
{D0ca(x,t),c~b(y,t)}=δabδ3(x―y) から,
∂xμ<0|T[Dμca(x)c~b(y)]|0>
=δ(x0-y0)<0|{D0ca(x,t),c~b(y,t)}|0>
+<0{T[∂μDμca(x)c~b(y)]|0>
=δabδ4(x-y) を得ます。
したがって,先にで求めた恒等式:
<0|T[Aaμ(x)Bb(y)]|0>
=i<0|T[(Dμca(x))c~b(y)]|0>と合わせて,
F.T.<0|T{Dμca(x)c~b(y)}|0>=iδabpμ/p2
F.T.<0|T{Aaμ(x)Bb(y)}|0>=-δabpμ/p2
が得られます。
ただしF.T.はFourier変換;∫d4xexp{ip(x-y)}
を演算することを意味します。
例えば∂xμは 部分積分により,(-ipμ)となるからです。
これらはゲージ理論に,どんな物質場が温まれていようと常に
成立する厳密な恒等式であり,Aaμ,Ba,Dμca.c~aの
チャネルには,必ず,零質量の粒子(漸近場)が存在することを
表わしています。
今日はここまでにします。
(参考文献):九後汰一郎
著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)
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