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2018年2月15日 (木)

ゲージ場の量子論(27)

「ゲージ場の量子論(26)」からの続きです。
 

§5-7 摂動論のFeynman則と簡単な計算 

補助条件:|Phys>=0 で指定される物理的部分空間: 

phys{|Phys}に限ったS行列;physがユニタリである 

ことを次節,および,次々節で,摂動論には依らず,かなり 

一般的に証明する予定です。
 

しかし,そのような一般論に入る前に,本節では摂動論の 

Feynman則を与え,少し具体的な振幅の計算をします。 

それはFeynmanグラフに慣れると同時に非可換ゲージ理論 

Fock空間の計量構造やWT恒等式の意味を理解する上で 

役に立つと思われます。
 

Feynman 

話を露わにすべく,既に考察した全系のLagrangian密度で, 

物質場の部分をDirac:ψにとって, 

~=-(1/4)μνaμν+ψ~{iγμ(μigAμ)―m}ψ 

(μ)μ(α/2)i(μ~)μ 

を以下で考察する対象の全系のLagrangian密度とします。
 

ゲージ固定項とFPゴースト項を既に含むこの~を「古典論」 

Lagrangian密度と見なして出発すれば,自明な第2類拘束条件: 

φ1=π0  0,φ2=π+A0 0しか出てきません。
 

それ故,遷移振幅;Tの位相空間経路積分表式は, 

T=∫ππψψππ~~ 

×Ψ~ΨΠ,[δ(π0)δ(π+A0)]exp[i∫d4 

{πaμμd+πdiψψd+πd

+π~~d}] 

となります。
 

ただし,det1/2|[φ1,φ2]P.B|因子は本質的には1に等しいこと 

を用いて落としました。
 

ここで,π0,πの積分を実行して,δ関数を落とし. 

さらにπ,π,π~積分も実行すれば, 

expの肩の被積分関数は丁度~になります。
 

したがって,Green関数の生成汎関数は 

[]=∫ψψ~~  

exp[i∫d4{~(,,ψ,ψ,,~)Φ}] 

と書けます。
 

ただし,Φ,Φ=Jaμμ+J+η~ψ 

+ηψ~+J~+J~c~a で与えられ,Fadeev-Popov 

の方法で求めた経路積分表式を再現します。
 

この表式により,直ちに第4章で行なったのと同様にして, 

摂動論のFeynman則を導くことができます。
 

利用の便宜のために,この非可換ゲージ理論における 

(運動量表示の)Feynman,特にFeynman伝播関数と 

頂点関数のグラフを表1にまとめておきます。


表1の頂点の最後のグラフの寄与は, 

2[eabecd(αγβδ-gαδβγ) 

+feacebd(αβγδ-gαδγβ) 

+feadebc(αβδγ-gαγδβ)] です。

1において,Dirac場やFPゴースト場につけてある  

矢印はψ~からψへc~からcへの方向を示し,運動量  

の向きとは無関係です。
 

ゲージ場の伝播関数の中のα,くり込まれたゲージ 

パラメータで,実際計算では,もっぱらFeynmanゲージ: 

α1を取ります。
 

(※事実.頂点関数の第1図,第2図でゲージ場の交換関係は 

Feynmanゲージで計算しているようです。)
 

また,頂点関数では運動量の向きは全て頂点から流出する 

方向に取りました。この場合,運動量がkの場のx依存性は 

exp(ikx),~の中の微分:μ(iμ)に同定されます。
 

外線に関しては,運動量表示のGreen関数:~(n)を計算 

するときは,表1の伝播関数を付与し,不変振幅:βα 

計算のときにはスカラー場には,{(2π)320}-1/2, 

Dirac場には,始状態には(2π)-3/2(/0)1/2(,), 

終状態には(2π)-3/2(/0)1/2~(,)etc., 

ベクトル場には{(2π)320}-1/ε(±)μ(), 

{(2π)320}-1/ε(±)μ()etc.を付与します。 

その他,ループ積分∫d4(2π)-4など,§4-6 

与えた規則を適用します。
 

ここで,ベクトル場:μの偏極状態の散乱振幅に関して, 

少し紛らわしい点の注意を与えておきます。
 

それはベクトル場の偏極ベクトル:ε(σ)μ()(σ=±,,) 

の間の内積η~στを与えたときに,縦波()-スカラー波() 

のセクターで反対角になっていることに由来するものです。
 

すなわち,このために,漸近場の消滅演算子:as(,σ) 

漸近場:asμ()から取り出す公式は, 

as(,σ)=η~στ(i)∫d3[(τ)μ()0asμ()] 

 =η~στ(i)∫d3[ε(τ)*μ(){exp(ikx)0asμ()} 

 ×{(2π)320}-1/2]となり,
 

したがって,LSZ公式は, 

<αout|out(,σ)|βin>-<αout|in(,σ)|βin 

=η~στ∫d4[(τ)μ() 

(i)<αout |-1/2μ()|βin] 

で与えられます。
 

これは,ket状態が<αout|out(,σ)で与えられる 

散乱過程の不変振幅;の計算でaout(,σ)粒子に相当 

する外線は,係数:{(2π)320}-1/2を除けば波動関数: 

η~στ(i)ε(τ)μ()を付与すべきことを意味します。
 

0||は ゲージ粒子のエネルギーで,ωとも書かれます。
 

特に,η~στはL-Sセクターで反対角になっているため, 

S行列要素との計算との間には見かけ上, 

<α|(,)|β> → ε()μ(), 

<α|(,)|β> → ε()μ()のような逆転 

が起こることになります。
 

にも関わらず,波動関数:ε()μ()で計算される, 

縦波()が出る散乱振幅, 

ε()μ()で計算されるものは,スカラー波()が出る 

散乱振幅と呼ぶことにします。
 

その理由は,不定計量の空間でのユニタリ性は行列で書くと, 

1粒子状態完全性として, 

∫d3(,σ)|0>η~στ0|(,τ)1 

のように,η~στを含むので, 

|0>を含む全ての状態:|..>を挟んだ完全性=ユニタリ性 

の表現で,初期状態が|β>の散乱状態:|β>の展開は 

|β>=∫d3[..+a(,)|..><..|(,)|β> 

+a(,)|..><..|(,)|β>+..]  

と書けるからです。
 

つまり,外線の1つがε()μ()で計算されるS行列 

要素;..|(,)|β>は,確かに縦波を含む 

終状態:(,)|..>になる散乱振幅を与えます。
 

FPゴースト,反ゴーストの場合も,上のような計量 

が示す反対角性と同様,見かけ上の逆転が生じます。 

|β>=∫d3[..+c()|..i..|~()|β> 

+c~()|..i..|()|β>+..] です。
 

※簡単な計算例 

さて1つの簡単な具体例として初期状態がDirac粒子と 

反粒子1個ずつの2体状態で,終状態がゲージ粒子の2体 

状態となる散乱過程を考えます。
 

この過程に効く最低次のFeynmanグラフは図5.2 

,,Cに示した3つです。
 

初期状態のDirac粒子と反粒子のスピノルを 

(1,1)=u,v~(2,2)=v~とし,終状態ゲージ場 

2粒子の偏極ベクトルを,ε(σ1)μ(1)=ε1μ, 

ε(σ2)μ(2)=ε2μと記し,表1のFeynman規則を適用すれば 

不変振幅:に対する図5.2のA,,Cの寄与は,それぞれ, 

次のようになります、
 

=ε1*με2*ν{(2π)-3{(2ω1)(2ω2)}-1/2(2π)-3{2/(21)1/2 

[~gTγν(11―m)-1gTγμ] 

=ε1*με2*ν{(2π)-3{(2ω1)(2ω2)}-1/2(2π)-3{2/(21)1/2 

[~gTγμ(12―m)-1gTγν] 

=ε1*με2*ν{(2π)-3{(2ω1)(2ω2)}-1/2(2π)-3{2/(21)1/2 

[gfabc{μν(1-k2)ρ+gνρ(122)μ 

+gρμ(21-k2)ν}(i)/(1+k2)2)(~gTcγρ)}] 

です。ただし,Feynmanゲージ;α1を取り,伝播関数中のiε 

を省略しました。なお,ωはゲージ粒子のエネルギー,EはFermi 

粒子のエネルギーです。
 

終状態ゲージ場が(物理的)横波状態の場合,これらの振幅の 

表式はこれ以上簡単にはなりません。
 

しかし,ここで,ε1*μが縦波状態:ε1*μ=ε()*μ(1)i1μ 

である場合を考えます。
 

まず,次の恒等式が成立することに注意します。 

(―m)-1(-m) -1(―m)-1(-m)-1 

この両辺に,右から(-m)(,)を掛け,その後pμを質量殻 

上にのせます。p2=m2であり(-m)(,)0 です。 

(―m)-1(,) =-u(,)を得ます。
 

同様に 

(―m)-1(-m)-1(―m)-1(k-p-m)-1 

の両辺に,左からv~(,)(-m)を掛け,その後 

-pμを質量殻上にのせます。v~(,)(-m)0 より,  

~(,)(-m)-1=v~(,)を得ます。
 

そこで,,および,の表式でε1*μi1μを代入すると, 

ε1*μγμiとなるので,係数: 

{(2π)-3{(2ω1)(2ω2)}-1/2(2π)-3{2/(21)1/2を省略 

すれば,それぞれ, 

~ -i2ε2*ν[~γν] および, 

B  i2ε2*ν[~γν] を得ます。
 

についても簡単化できますが,その前に,少し寄り道をして, 

これらの,の等式が,実は摂動最低次のWT恒等式の1つ 

になっていることに注意しておきます。
 

「ゲージ場の量子論(24)」では,WT恒等式が, 

0=<0|{i,(1(1)2(2).n())}|0 

=Σk1n()k0|(1(1)2(2),.δ(k).m()|0 

(=Σi=1-1||です。( ||はOの統計指数))  

なる恒等式で与えられることを見ました。
 

この式でn=3としO1=ψ,2=ψ~,3=c~とすると, 

0=<0|{i,(ψ()ψ~()~())}|0 

=<0|(δψ()ψ~()~()|0 

-<0|(ψ()δψ~()~()|0 

+<0|(ψ()ψ~()δ~()|0>です。
 

すなわち,0|(igcb()ψ()ψ~()~()|0 

-<0|(ψ()igψ~()b()~()|0 

+<0|(ψ()ψ~()i()|0>=0 

あるいは, 

0|(ψ()ψ~()i()|0 

=-<0|(b()(igT)ψ()ψ~()~()|0 

+<0|(ψ()ψ~()b()(igT)~()|0) 

なるWT恒等式になります。
 

ところが,この恒等式は,結合定数gに依らず成立するので 

gの各次数ごとに成立します。 

特にgの1次で両辺のGreen関数に効くFeynmanグラフ 

,5-3に示すものです。
 

これは,次のように読み取れます。 

i(iμ){(iμν)/2}i(―m)-1 

(igTγν)i(―m)-1 

=-{(1)/2}[(igT)i(―m)-1 

i(―m)-1(igT)] です。
 

(igT)を消去すると 

{(iν)/2}(―m)-1γν(―m)-1 

=-{(i)/2}[(―m)-1(―m)-1] 

となります。
 

これが前の恒等式: 

(―m)-1(-m)-1(―m)-1(-m)-1 

と同値なのは明らかです。
 

ここでGreen関数の内線,外線に伝播関数を用い, 

式B=-∂μμ (α1)を使いました。 

さらにBRS変換は,δψ=-igcψ,

δψ~=-igcψ~, 

δ~ψ=iとし,{i,Φ}δΦを用いました。
 

i(iμ){(iμν)/2}i(―m)-1(igTγν)i(―m)-1 

=-{(1)/2}[(igT)i(―m)-1i(―m)-1(igT)] 

で両辺に共通な伝播関数因子(1/2)を外に出したWT恒等式は, 

5.4のように描かれます。
 

そうすれば,~ -i2ε2*ν[~γν] , 

B  i2ε2*ν[~γν] のような片方のFerni粒子線 

が質量殻上の外線になっている場合のWT恒等式は,上図5.4の恒等式 

,(i)(-m)()などを掛けることによって得られ, 

5.5のA,Bのように表わせます。
 

この図5.5Feynmanグラフで表わしたWT恒等式を,直接, 

5.2のA,BのFeynmanグラフにおいて,ε*μi1μのときに 

適用すれば図5.6となります。
 

この図の右辺が,を直接.与えています。
 

これらの知見を得た後にを簡単化するのは容易です。 

すなわち,0=<0|{i,(1(1)2(2)..n())}|0 

=Σk1n()k0|(1(1)2(2).δ(k),.m()|0 

の一般的WT恒等式において,
 

n=3とし,1=Aν,2=Aρ,3=c~とした恒等式は 

0=<0|{i,(ν()ρ()~())}|0 

=<0|(ν()ρ()~()|0 

+<0|(ν()ρ()~()|0 

+<0|(ν()ρ()i()|0> となります。
 

つまり, -<0|(ν()ρ()i()|0 

=<0|(ν()ρ()~()|0 

+<0|(ν()ρ()~()|0> です。
 

これの.摂動の最低次:(1)Feynmanグラフは図5.7 

与えられます。
 

式に書き下すと, 

(i)(iμ){(i)/2}gfabc[μν(2k-p)ρ+gνρ(2p-k)μ 

+gρμ(-p-k)ν]{(1)/2}[i(p-k)ν{(1)/(p-k)2} 

(igfacb)(p-k)ν{(i)/2}(-gfbca)νρ{(i)/2} 

{(i)/(p-k)2}(igfbac)(-p)ν{(1)/2} 

{(i)/ (p-k)2}(-gfcba)ρν] です。
 

ただし,上では,表2に示す規則を使いました。


 

表2には,WT恒等式に現われるBRS変換により,生じる頂点,端点 

に成立するFeynman則をまとめておきました。
 

さらに,ゴースト伝播関数因子:(1/2を外し,左からε*νi(p-k)2 

を掛け,その後,(p-k)を質量殻上(p-k)20 に取れば,5.7 

極を持たない右辺第2項は落ちて,5.8を得ます。
 

この図5.8の恒等式を直接,ε1*μi1μのときのFeynman図である 

5.2のCに適用すれば,は図5.9のように表わされます。
 

すなわち,式で表わすと,1,2の規則を用いて, 

[(-ε22)gfcab2ρ{(1)/(1+k2)2} 

+ε2*ν(i)bac(-k1-k2)ν{(1)/(1+k2)2}i(1+k2)ρ 

+ε2*ν(-gfcba)ρν(1)]~gTγρuとなります。
 

ところが,5.9,または,上の表式の右辺第2項は,外線波動 

関数:,vのDirac方程式によってゼロになります。
 

(※何故なら,保存則:1-p2=k1+k2 より, 

(1+k2)ρ~γρ 

=v~(2+m)+v~(1-m)u=0 です。)
 

ここで重要な注意をしておきます。 

この式=カレント保存則は,実は図5.3のWT恒等式 

そのものです。(その2つのDirac場外線を両方共に 

質量殻上の波動関数にしたものです。)
 

このことは図5.9の第2項のゴースト端点因子が, 

.2からわかるように縦波ゲ―ジ場の波動関数と 

一致しているという重要な事実に基づきます。
 

この等式のために例えば図5.3右辺第2項Dirac場の線が 

たとえ質量殻上の波動関数でなく,内線の伝播関数として 

より大きなFeynmanグラフに含まれる場合でも図5.10 

ように,さらに続けてFeynmanグラフのWT恒等式を用いて 

変形できます。
 

これをさらに徹底すれば, Feynmanグラフの図形変形という 

手法だけで,より高次のWT恒等式を全て導くことも可能です。
 

このような図形的手法を「diagramの方法」と呼びます。
 

5.9に戻り,の右辺第2項が消えた後,右辺第3項も実は 

5.6で表わされる()と相殺して消えることが 

わかります。
 

これは生成子の表現行列:の満たすLie代数: 

[.]iabcのせいでFeynmanグラフで表示すると 

5.11の等式が成り立つからです。
 

したがって,結局,偏極ベクトル:ε1*μが縦波ベクトル: 

ε()*μ(1)i1μの場合,不変散乱振幅: 

,5.3の第1項のみとなり, 

=gfabc2ρ(ε22){1/(1+k2)2}~gTγρ 

で与えられることになります。
 

表2の最後に書いたように,ここで定義されている偏極ベクトル: 

ε(σ)μ()(σ=±L,),με(σ)μ()=δσSを満たすため, 

2番目のゲージ粒子が横波でも縦波でもこの振幅はゼロになる 

ことがわかります。
 

[(1)+v~(2)→ε()μ(1)+ε(±)μ(2)]0 , 

[(1)+v~(2)→ε()μ(1)+ε()μ(2)]0 です。
 

そして,唯一残るスカラー波:ε2μ=ε()μ(2)の場合 

因子:(ε22)(i)になり,上記振幅Mは図5.9右辺第1項 

のグラフからもわかるように,丁度,下5.12に示すように 

終状態がFPゴースト-反ゴーストのペアとなる過程の散乱振幅 

は規格化定数の係数を除いて, 

cc~=-igfabc2ρ{(i)/(1+k2)2}~gTγρ 

=-gfabc2ρ{1/(1+k2)2}~gTγρ 

i倍に等しいことがわかります。


 

よって,[(1)+v~(2)→ε()μ(1)+ε()μ(2)] 

i[(1)+v~(2)→c(1)+c~(2)]  

という散乱振幅の等式を得ます。
 

-Sセクターの反対角計量:η~στによる逆転現象に注意 

すると,これらの等式は次のようなS行列要素の関係式に 

書き直せます。
 

0|(1,)(2,±)|α>=0 

0|(1,)(2,)|α>=0 

0|(1,)(2,)|α> 

i0|c~(1)(2)S|α>
 

ここで,Dirac粒子-反粒子ペアの初期状態を|α> 

と書きました。
 

途中ですが,今回はここで終わります。


(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

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