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2018年2月20日 (火)

ゲージ場の量子論(30)

「ゲージ場の量子論(29)」からの続き: 

§5.8 物理的S行列のユニタリ性の続きです。
 

※ 摂動論における漸近場のBRS変換 

Green関数のWT恒等式: 

0=<0|[iεQ,exp(ii・Φi)]|0 

=<0|{(iiεδΦi)exp(ii・Φi)}|0>から,質量殻上 

S行列のWT恒等式: 

:K:<0|{(iεaijΦj)exp(ii・Φi)}|0|j=0 0 

を導いた手続きが, 

前節に,摂動レベルでの4点Green関数のWT恒等式 

-<0|(ψα()ψ~β()iν()i()|0 

=<0|(igc()ψα()ψ~β()ν()~()|0 

-<0|(ψα()igψ~β()b()()~()|0 

+<0|(ψα()ψ~β()ν()~()|0 

に対して, 

LSZ公式<1..mout|1..nin  

=Πi=1m「[{i∫d4ii*m(i)i}Πj=1

[{i∫d4ii(j)j} 

0|(φ(x1..φ()|φ(1.).φ(n))|0 }] 

(x=□+μ2)によるS行列を対象とした議論の一般化に 

相当している,という注意に関連して,
 

形式的摂動論に現われる漸近場: 

0→±∞のとき,μ()→Z31/2asμ(), 

(ψ(),ψ~()) →Z21/2(ψas(),ψ~as()), 

((),~()) →Z~31/2(as(),~as()) 

のBRS変換を上記の方法で決定します。
 

これらがS行列WT恒等式から,ただちに導かれること 

を示します。
 

3,~3,.. 0|{μ()ν()}|0 

(1/i)δab[(μν-pμν/2){1/{2(2)} 

+α(μν/4)}, 

.. 0|{()~()}|0 

(1/i)δab[(i)/{2(2)}} 

のF-1(2),-1(2)をp2­0 

のまわりでTaylor展開した, 

-1(2)=Z3{1+Kp2+O(4)}, 

-1(2)=Z^3+O(2)} 

で定義される定数でした。
 

また,2,.. 0|{ψ()ψ~()}|0|離散的極部分 

i2 /(-m)で与えられるものでした。
 

くり込まれていないHeisenberg場のBRS変換は定義により, 

[iλQ,μ()]=λDμ() 

 [iλQ,ψ()]=-igλc()ψ(). 

[iλQ,ψ~()]=-igλc()ψ~(). 

[iλQ,()](/2)λ|()×()} 

[iλQ,~()]iλB(), 

[iλQ,()]0 で与えられます。 

(λはGrassmann数パラメータ)
 

これらの式から、漸近場のBRS変換則を得るには,左右 

両辺,特に右辺の"複合Heisenberg場"の漸近的極限, 

すなわち,離散的極部分を調べればいいです。
 

摂動論では展開の任意の(有限)次数において,結合状態 

(bound state)は現われず,
 

また,漸近場は,0→±∞のとき,μ()→Z31/2asμ(), 

(ψ(),ψ~()) → Z21/2(ψas(),ψ~as()), 

((),~()) → Z~31/2(as(),~as())で与えた 

asμ(),ψas(),ψ~as() as(),~as() 

が全てです。
 

そこで, [iλQ,ψ()]=-igλc()ψ(). 

[iλQ,ψ~()]=-igλc()ψ~()の右辺 

の"複合Heisenberg場" 

()ψ(),()ψ~()はFPゴースト 

:FP=+1Fermion:±1を同時に持つ演算子 

を意味しますが,そのようなチャネルには1粒子の 

「漸近場=離散的極部分」は存在せず, 

,結局,0→±∞で,()ψ() 0, 

()ψ~() 0 が結論されるため, 

[iλQ,ψas()]0, [iλQ,ψ~as()]0 を得ます。
 

よってDirac粒子の漸近場はBRS不変です。
 

同様に,(()×())a=fabc()()のチャネル 

はFPゴースト数:FP=+2の量子数を持ち,対応する1粒子 

漸近場が存在しないので,[iλQ,s()] 0 が従います。
 

また,[iλQ,μ()]=λDμ()の右辺の演算子; 

μ()=∂c()-g{μ()×()},Lorentz 

不変な4元ベクトルで,FPゴースト数:FP=+1の量子数 

を運びますが,FP=+1の漸近場はLorentzスカラーの  

as()のみですから, 

0→±∞で,Dμ() → Y1/2μas() 

1/2=Z~31/2{1+ω(0)}の形を取ります。

くり込み定数:1/2のうち,~31/2はDμas(のうちの∂μas 

部分のみの寄与です。残りのω~(0)=Z~31/2ω(0)の部分は留数 

()=A()|2=m2付近の説明から理解されるように,5.17 

Feynmanグラフ(側のゴースト2点関数の足を切ったもの) 

の寄与ω~(2)のゴースト極:20での値として計算される 

ものです。


 

ところが,実はこの複雑なくりこみ定数:1/2はFPゴースト 

場のくりこみ定数:3~1/2の逆数であることが, 

「ゲージ場の量子論(24)」で与えた次のWT恒等式 

から従います。
 

すなわち,..0|{μ()~()}|0 

=F..(i)0|{μ()()}|0 

iδabμ/2 です。よって,最右辺の極:20を持つ 

項が,重み1で出現しており,最左辺のc~() 

3~1/2~as()なる漸近形を持つくり込まれたHeisenberg 

場なのでDμ() → Y1/2μas(),1/23~1/21 

を意味するからです。
 

同じ,WT恒等式からNL場:()のくり込み定数:1/2 

.ゲージ場:μ()のくり込み定数:31/2の逆数であった 

という論議を思い起こさせます。
 

そこで,μ(),()の漸近形は,0 → ±∞で 

μ() → Z3~-1/2μs(),() → Z3-1/2s() 

となり,[iλQ,sμ()](33~)-1/2λ∂μs(), 

[iλQ,~s()](33~)-1/2iλBs() 

を得ます。
 

WT恒等式のおかげで右辺のくりこみ因子が(33~)-1/2 

と共通になっています。この定数因子は(33~)1/2 

新たにQと定義すれば吸収できます。
 

または,FPゴースト場のスケール変換不変性から 

c'asexp(ρ)as,~'asexp(-ρ)~as, 

exp(ρ)(33~)-1/2とした,c' as,c~' as 

を改めて漸近場:c as,c~ asに取っても吸収できます。
 

とにかく,どちらかを採用して,以後定数因子:(33~)-1/2 

は落とします。
 

かくして摂動論における漸近場のBRS変換が全て 

決まりました。[iλQ,sμ()]=λ∂μs() 

 [iλQ,ψs()][iλQ,ψ~s ()]0. 

[iλQ,s()][iλQ,s()]0 

[iλQ,~s()]iλBs() です。
 

これを,各モードの生成・消滅演算子に対する変換則 

に直しておきます。 

まず,[iλQ,sμ()]=λ∂μs()の右辺の 

μs()がスカラー波の微分で本質的に縦波ベクトル: 

iμexp(±ikx)のモードしか含んでないことから,左辺:  

sμ()の中のε(σ)μ(),ε(σ)μ()の係数:(,σ), 

(,σ),について 

2つの横波モード,スカラーモードはBRS変換で 

右辺には現われません。つまり,これらはBRS不変です。
 

[,(,±)]0, [,(,)]0 です。
 

残りの縦波モード:(,),その偏極平面波:()k,μ() 

,スカラー場平面波:k()の微分:μk()と一致する 

ように規格化され作られていたことでc(),()μ() 

展開式から,[i,(,)]=c()となることが 

わかります。
 

また,as()=-∂μasμ()(Feynmanゲージ:α1) 

のモード展開式に注意すれば, 

[,~()]=B()=-a(,)を得ます。
 

さらに,[iλQ,ψs()][iλQ,ψ~s ()]0

から,{,(,)}{,(,)}0, 

[iλQ,s()]0より,{,()}0 です。
 

(,),(,)Dirac粒子,反粒子の消滅演算子 

です。
 

ここで与えたのは消滅演算子に対するBRS変換ですが, 

生成演算子に対するBRS変換は,Hermire共役を取れば 

得られます。
 

これら変換則を眺めると,摂動論で現われる粒子モードは,, 

結局,BRS変換で非自明な変換をする系列: 

(,) → -i() 0 ,(,) i() 0 , 

~() → -a(,) 0 ,(,) → -a(,) 0 

のモードと,自明なBRS変換をする,すなわち,BRS不変なモード: 

(,±),(,) (,) 0, 

(,±),(,) (,) 0 とに分離している 

ことがわかります。
 

一旦,漸近場のモードのBRS変換則を見出せば,あらゆる 

S行列WT恒等式は,ほとんど自明な形で導くことができます。
 

自明なBRS変換をするモード,つまりゲージ場の横波モード 

Ditac粒子,反粒子モードは正定値計量を持ちますが, 

これらのモードのみで構成される状態; 

|α>=a(1,±)..(i,±)(1,1)..(m,m) 

(1,1)..(,n)|0>は明らかに,全てのモード 

がQと可換でQ|0>=0 ですから,|α>=0 を満たす 

ため,常に物理的状態であり,|α>∈physです。
 

それ故,この状態;|α>を与えるモードを物理的モード  

と呼びます。ここまでは,漸近場の生成・消滅演算子に一切  

as or in,outの添字を省略していましたが,もちろん, inout 

の2種類があり,どちらも同じ形のBRS変換性(および,BRS  

とは異なる,あらゆる保存電荷の変換性)を満たします。
 

Incoming場の生成演算子で作られた物理的状態: 

|α;in>=ain(1,±)..in(i,±)

in(1,1)..in(m,m) 

in(1,1)..in(,n)|0> からoutgoing場のそれ, 

|β;out>=aout(1',±)..out(',±) 

out(1',1')..out(m',m') 

out(1',1')..out(',n')|0> へのS行列要素: 

<βout|αin>に関しては,それらの物理的モードがBRS不変 

なので,何の制限もありません。
 

しかし,非自明なBRS変換をするモード,つまりゲージ場の 

縦波,スカラー波,および,FPゴースト,反ゴーストの4つの

モードの関与するS行列に対しては,BRS不変性が 

S行列WT恒等式の形で強い制限を与えます。
 

この4つのモードが,正に問題の不定計量をもたらす厄介者 

の非物理的モードである,ことを思い起こします。
 

しかしながら,丁度,この非物理的モードの挙動だけをBRS 

不変性がうまくコントロールします。
 

実際, |α;in,|β;out>が先に示したように物理的な 

in,outモードだけで作られた任意の状態とすれば, 

|α;in>=<β;out|0 なので,明らかに, 

0=<β;out|{,Φ1,out(1)..Φ,out() 

Φ1in(1)..Φ,in()}}|α;in 

の恒等式が任意の非物理的モードの漸近場の消滅演算子 

Φi,as()=aas(,),as(,),as(), ~as(), 

および,生成演算子: 

Φi,as()=aas(,),as(,),as(),~as() 

に対して成立します。
 

この恒等式は,あらゆるS行列WT恒等式をGreen関数を 

経由しないで直接与えるものです。例えばm=2,n=0, 

Φi(1)=c~(1),Φ2(2)=a(2,)と取れば, 

0=<β;out|{,~out(1)out(2,)}|α;in 

=<β;out|{,~out(1)}out(2,)|α;in 

-<β;out|~out(1){,out(2,)}|α;in 

=<β;out|[-aout(1,)out(2,) 

i~out(1)out(2)]|α;in>を得ます。
 

これは確かに,「ゲージ場の量子論(28)」で与えた 

WT恒等式: 0|(1,)(2,)|α> 

i0|c~(1)(2)|α> 

の一般化になっています。
 

本節はこれで終わりです。切りもいいので,今回は 

ここまでにします。


(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

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