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2018年2月23日 (金)

ゲージ場の量子論(31)

「ゲージ場の量子論(30)」からの続きです。 

物理的S行列のユニタリ性の論議に入ります。

§5.9 物理的S行列のユニタリ性  

(BRS代数と4重項機構)  

本節ではBRS代数の表現という立場から,あらゆる  

可能な漸近場を分類し,摂動論に依らない形で物理的  

S行列のユニタリ性の証明を完結します。

※BRS代数の表現 

前回最後では形式的摂動論に現われる漸近場のモードを 

分析しましたが,そもそも漸近場が保存電荷:Qの下で線形 

に変換することは,「漸近場の1粒子状態は保存電荷:Qの 

なす代数の表現になる、」ことを意味することに気付きます。
 

すなわち,どういう漸近場が現われ得るか.という問題は摂動論 

を超えて,単に種々の保存電荷:Qのなす代数を考えるだけで 

多くが規定されます。
 

したがって,BRS変換の下で,どのような変換を受ける漸近場 

が可能か?は,BRS電荷:とFPゴースト電荷:のなす代数: 

(1/2)|,}=Q20,[i.]=Q.[.]0 

によって決定されます。
 

この代数をBRS代数と呼びます。
 

,,共にエネルギー・運動量:μ,角運動量:μν,スカラー 

電荷;などの他の保存電荷と可換なので,漸近場の粒子状態は, 

それらの保存量子数が同時に指定されたBRS代数の既約表現 

として分類できます。
 

BRS代数の既約表現は,のベキ零性:20 のため.極めて 

簡単で高々2次元表現です。
 

(31-1):この2次元表現という言い方は私には適切ではない 

と感じます。QLie代数とするLie:exp(iλQ)に対して 

|αi>=0 なる{|αi}で張られる不変部分空間:1とその 

補空間:2とを,それぞれ1次元空間と考えるなら, exp(iλQ) 

の表現行列は2×2行列で,確かに2次元ですが。。。
 

(31-1終わり※)
 

したがって,既約表現としての分類は1重項か,2重項です。 

)BRS 1重項(singlet) 

漸近場の1粒子状態を,そのFPゴースt数;FPi 

,他のエネルギー・運動量,スピンなどの量子数を総称した 

ものをkとして,|,N>と記すことにします。
 

このとき,状態:|,N>がQ|,N>=0を満たし,かつ 

|,N>=Q|χ>と×ような|χ>が存在しない場合, 

この|,N>をBRS 1重項と呼びます。
 

)BRS 2重項(doublet) 1粒子状態:|,N>が 

|,N>=0 を満たさなかったら,[i.]=Q 

より,i|,N>=(N+1)|,N>なので, 

|,N>≠0 は,ゴースト数が(N+1)の状態で, 

|,N+1>=Q|,N>≠0 と書けます。
 

そして, |,N>,|,N+1>がBRS代数の2重項 

の基底を与えます。 

|,N+1>=Q2|,N>=0なので,変換: 

これ以上の状態は生み出しません。
 

BRS変換系列は,|,N> → |,N+1> → 0 です。
 

一般に2重項の中の|,N>をBRS親(parent)状態, 

|,N+1>をBRS子供(daughter)状態と呼ぶことに 

します。BRS子供状態はQのベキ零性から,もはや 

BRS変換を受けません。Q|,N+1>=0 です。
 

BRS2重項があれば,必ず,もう1,その相棒となる 

BRS2重項が存在することが次のように示されます。
 

まず,BRS子供状態は零ノルムです。何故なら 

<k,N+1|,N+1>=<k,|2|,N>=0です。
 

そこで,子供状態:|,N+1>には, 必ず, 

ある相棒状態:|,(N+1)>が存在して,内積として, 

<k,(N+1)|,N+1>≠0 が満たされねばなりません。
 

何故なら,|,N+1>との内積がゼロでない状態が全く存在 

しないなら,そもそも,|,N+1>は如何なるGreen関数にも 

極を作り得ず,その存在すら認識されないはずだからです。
 

そこで,少なくとも1つは<χ|,N+1>≠0となる|χ> 

が存在します。
 

この|χ>は,μのようなHermite保存量については, 

|,N+1>と同じ量子数kを,HermiteなFPゴースト数: 

FPについては,|,N+1>と逆符号の-(N+1)を運ぶ状態 

でなければなりません。
 

(31-2):|χ>=|k',N'> と書き,  

μ|k',>=pμ'|k’,,  

FP|k',N'>=i|k',N'>  

=N'|k',N'> とします。

すると,  

<k',N'|μ|,N+1>=pμ<k',N'|,N+1 

=pμ'<k',N'|,N+1>で<k',N'|,N+1>≠0  

ですから,μ'=pμ を得ます。

その他のHermite()量子数についても同様ですから,k'=kです。
 

一方,i|k',N'>=N'|k',N'>より, 

<k',N'|i=<k',N'|(-N') です。 

それ故,<k',N'|i|,N+1>=(N+1)<k',N'|,N+1 

(-N')<k',N'|,N+1> です。
 

故に,<k',N'|,N+1>≠0より,N'=-(N+1)を得ます。 

|χ>=|,(N+1)> です。(31-2終わり※)
 

規格化をして<k,(N+1)|,N+1>=1と固定して 

おきます。
 

ここで重要な点は,|,(N+1)>が,別のBRS2重項 

の親状態になっていることです。
 

何故なら,|,(N+1)>をBRS変換した状態: 

|,-N>=Q||,(N+1)>がゼロでないことが 

次のWT恒等式からわかるからです。
 

すなわち, 

<k,,|,-N>=<k,,||,(N+1) 

=<k,N+1|,(N+1)>=1 です。
 

かくして,BRS2重項は,常に2組対になって現われること 

がわかりました。
 

BRS変換系列は,|,N> → |,N+1> → 0 , 

および,|,(N+1)> → |,-N> → 0 であり, 

ゼロでない内積の対は,|,N>()|,-N>(子供), 

|,N+1(子供)|,(N+1)()です。
 

このような内積で対をなす2組のBRS2重項表現はBRS代数 

の表現として基本的なもので,2組をまとめてBRS4重項(quartet) 

と呼びます。
 

以上から,BRSの表現は,()で定めたBRS1重項と,上のBRS 

4重項=「BRS2重項の対」しかないことが示されました。
 

これは,摂動論に依らない議論であり,非可換ゲージ理論に現われる 

漸近場は,それが「素粒子」の場であろうが,結合状態(束縛状態, 

または共鳴状態)の場であろうが,何であっても,この表現のどちらか 

に対応します。
 

前節最後に述べた摂動論に現われる漸近場を見てとると,確かに, 

BRS変換系列から,ゲージ場の縦波,スカラー波,FPゴースト, 

反ゴーストの4つのモードがBRS4重項表現に, ゲージ場の横波 

モードとDirac粒子,反粒子がBRS1重項表現に,それぞれ属して 

いることがわかります。
 

次に漸近場の計量構造について考えます。 

まず,BRS1重項モードに関しては,そのBRS不変性は,その計量 

については何の意味も呈しません。
 

しかも,そのBRS1重項状態:|k,N>1重項を作る生成演算子 

をaとして|k,N>1重項=a|0>とすれば,[,] 

{,}0 (Fermi粒子なら,{,}{,}0) 

が従うため,このモードは真空に何個掛かっても,|Phys>=0 

で指定される物理的部分空間:physにのみ自由に出現する状態 

です。
 

したがって,理論が物理的に無矛盾であるためには,これらの 

「BRS1重項モード状態は全て正定値計量を持つ」必要が

あります。
 

[k,l]=δkl,または,{k,l}=δkl です。 

(※上では,,lが離散量子数として離散表記しましたが,連続な3次元 

ベクトルの場合なら[(),()]=δ3(),または, 

{(),()}=δ3() です。)
 

全く一般的な議論を展開している際には,これは仮定,あるいは, 

規定,要請です。
 

しかし,ここまで論じてきた非可換ゲージ理論 

の形式的摂動論の場合は,BRS1重項モードの横波モード, 

Dirac粒子,反粒子は全て,確かに正定値計量を持っていました。
 

「BRS1重項モードが正定値計量である。」という仮定(要請) 

,特にBRS1重項の1粒子状態:|k,N>1重項はFPゴースト 

:FP=Nがゼロの状態しかないという仮定を含んでいることに 

気付きます。
 

つまり,もしN≠0のBRS1重項状態:|,N>があったとすると, 

<k,|,N>=0 です。 

(※何故なら,<k,|i|,N>=N<k,|,N> 

(-N)<k,|,N>なので,N≠0 なら<k,|,N>=0 

です。)
 

よって,先のBRS2重項状態と同様,N≠0なら相棒状態: 

|,-N>が存在して<k,-N|,N>=1ですが,|,-N>が 

2重項なら|,N>も2重項になるため,これも1重項です。
 

|,N>=σk|0,|,-N>=σ~k|0>でσk,σ~k 

定義すれば,[,σk]=[.σk][,σ~k][.σ~k]0, 

[σk,σ~l][σ~k,σl]=δklですが,このような 

反対角交換関係はFPゴースト,反ゴーストの場合同様, 

必ず,負計量の状態を含むことになります。
 

例えば,|1>=(σk-σ~k)|0,|2>=σkσ~k|0>などは 

負ノルム状態です。
 

したがって,「BRS1重項モードが正定値計量である。」という仮定 

,「BRS1重項状態にはFPゴースト数:FP=Nがゼロの状態 

しかない。」ということを含んでいます。
 

※BRS4重項状態の計量構造 

BRS4重項に属する粒子の計量構造は全く一般的にBRS不変性 

だけから完全に決定されます。
 

BRS4重項の各1粒子状態の生成・消滅演算子を, 

|.N>=χ|0.|.-N>=β|0.  

i|.N+1>=γ|0.|.(N+1)>=γ~|0, 

および,,そのHermte共役で導入します。
 

BRS4重項に属する2つのBRS親状態: |,N>, 

|,(N+1)>のうち,どちらかは偶数のFPゴースト数 

を持つので,以下,一般性を失うことなくNを偶数 

とします。
 

FPゴーストは(Bose統計に従う)Fermi粒子なので, 

χ.βのモードがBoson,γ.γ~のモードはFermion 

です。(※もしもBRS4重項がDirac粒子など純正Fermi 

粒子奇数個の結合状態なら統計が逆になりますが,その場合 

はNを奇数にして常にχ.βのモードがBosonとなる 

ようにします。)
 

 BRS変換性,|,N> → |,N+1> → 0 , 

および,|,(N+1)> → |,-N> → 0 から, 

[,χ]=-iγ,{,γ}0, 

[,χ]=-iγ,{,γ}0, 

{,γ~}=β,[,β]0, 

{,γ~}=β,[,β]0, です。
 

さらに内積のWT恒等式:1=<k,N+1|,(N+1) 

=<k,||,(N+1)>=<k,|,-N>1から, 

[χ,βl]=-i{γ,γ~l}=δklです。
 

FPゴースト数が互いに逆符号の状態間以外は,内積がゼロ 

のため,次の交換関係,反交換関係はゼロです。 

すなわち, 

[χ,γl][χ,γ~l][β,γl][β,γ~l]0, 

{γ,γl}{γ~,γ~l}0 です。 

(Nが偶数なので-(N+1)0です。)
 

また,BRS子供状態は零ノルムであるため, 

[β,βl]0 です。
 

これら以外の唯一の組み合わせは,[χk,χl]ですが.これは 

BRS不変性からは決まらず 

,一般的に[χk,χl]=ωklと置くことにします。
 

これらの交換関係をまとめるとBRS4重項モード, 

Φk(χk,βk,γk,γ~k)は次の計量構造を持つことがわかります。 

(ただし,Fermionの消滅,生成演算子:γk,γ~k,γk,γ~k, 

の交換関係:[ , ],反交換関係:{ , }に読み換えます;)
 

以上は,摂動論に依らない議論で,全く一般的なものですが 

,摂動論のBRS4重項も,もちろん,この計量構造を持って 

います。その場合のモード対応は, 

(χk,βk,γk,γ~k)((,),(),(),~()) 

です。
 

※素4重項 

ここで寄り道になりますが,非可換ゲージ理論には 

(共変ゲージである限り)物質場の詳細や摂動論に依らず, 

群Gの添字:aの各々に対して,1組ずつBRS4重項が 

常に存在することがいえること,についてコメントして 

おきます。
 

この4重項は,(elementary)(結合状態でない)FPゴースト: 

~をメンバーに含むので,素4重項と呼びます。
 

(χk,βk,γk,γ~k)((,),(),(),~()) 

,この素4重項の摂動論における現われ方の1例です。
 

この事実は,WT恒等式: 

.. 0|{μ()~()}|0 

=F.. (i)0|{μ()()}|0 

iδabμ/2  から従います。
 

この伝播関数(2点Green関数)に対するWT恒等式は,20 

極を持つので,μ,~.μ,の各Heisenberg場の演算子 

に零質量の漸近場が存在することを示しています。
 

すなわち,0 → ±∞ において,  

μ() → ∂μχ().. ,() → β().., 

μ() → ∂μγ()...,~() → γ~().... 

で定義される例質量の漸近場: χ,β,γ,γ~が存在します。
 

..と書いたのは,これら以外にも,20 の極と無関係な漸近場 

が存在するかもしれないからです。例えば,第1式でのχ() 

縦波モード:Z31/2(,)であり,..は残る横波,スカラー

モードに対応します。
 

各添字:aの漸近場:(χ,β,γ,γ~),BRS4重項になって 

いることはHeisenberg場のBRS変換則から得られます。 

[i.χ()]=γ(),{i.γ~()}iβ(), 

さらに,20から, 

{i.γ()}0,,[i.β()]0 ですから 

明らかです。
 

これらの()交換関係に関してもWT恒等式から,, 

{γ().γ~()}=-i[χ(),β()] 

=-δab(x-y)
 

WT恒等式:0|[()()]|0  

=<0|{,[()~()]}|0 >=0 

FPゴースト数保存から. 

[β().β()]{γ().γ()} 

{γ~().γ~()}0 が導かれます。
 

後述する「対称性の自発的破れたゲージ理論」では4重項 

のメンバー:χ,もはやゲージ場の縦波モードではなく, 

非物理的Higgsモードになります。
 

また,摂動論の枠外では,複合Heisenberg:μ 

チャネルに現われる4重項メンバー::γ,必ずしも 

Heisenberg:の漸近場と同一のものとは限らない 

ことを注意しておきます。
 

途中ですが,今回はここまでにします。


(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

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