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2018年2月26日 (月)

ゲージ場の量子論(32)

「ゲージ場の量子論(31)」からの続きです。
 

※ 4重項機構とユニタリ性 

いよいよ,本題の物理的S行列のユニタリ性を証明します。 

摂動論に依らず一般的に証明するため, 

BRS変換性: 

[,χ]=-iγ,{,γ}0, 

[,χ]=-iγ,{,γ}0, 

{,γ~}=β,[,β]0, 

{,γ~}=β,[,β]0, 

および,次の計量構造を持ったBRS4重項:
Φk(χk,βk,γk,γ~k)は何種類あってもいい, 

とします。

これらの種類の違いは,Φk(χk,βk,γk,γ~k)における 

添字:kで,全て区別されると考えます。
 

基本的仮定は,先述したように「BRS1重項粒子は全て正定値 

計量を持つ」ということです。
 

しかし,全状態空間:は種々な4重項粒子モードの存在により, 

負ノルム状態を多々含んでいます。 

しかし,今から,次の命題の成立することを示します。 

「Q|Phys>=0 を満たす状態;|Phys>の集合である, 

物理的部分空間:phys{|Phys}には,BRS4重項粒子は, 

常に零ノルムの組み合わせでしか現われない」こと,それ故, 

physは半正定値計量を持つ」こと,を証明します。
 

つまり,現実の世界では,BRS4重項粒子は有限確率では 

観測されず,常に相互作用の中だけに閉じ込められている, 

というわけです。これを4重項機構と呼びます。
 

まず.全状態空間:の中でBRS4重項粒子を全然含まず, 

BRS1重項粒子だけから成る部分空間をphysとします。
 

BRS1重項粒子の生成,消滅演算子を,一般にaα,β 

書き,これが,[α,β]=δαβ,または{α,β}=δαβ 

の対角正計量を持つとすれば, physへの射影演算子:(0), 

(0)=Σ=[(1/!)

(α1α2..αm|0><0|αm..α2α1)] 

で与えられます。
 

[α,β]=δαβ,または{α,β}=δαβによって明らかに 

physは正定値計量です。
 

すなわち,|f>∈に対して,(0)|f>∈physですが, 

常に,|(0)|f>|2=<f|(0) (0)|f> ≧0 です。
 

次に,BRS4重項粒子をトータルでn個,BRS1重項粒子 

を任意個含むような状態から成る部分空間を,-4重項粒子 

セクターと呼びます。このとき,0 -セクターはphysです。
 

このn-4重項粒子セクターへの射影演算子をP()とすると, 

これは,BRS4重項粒子の生成,消滅演算子をΦk,Φl,および, 

その計量の逆演算子;η-1klを用いて 

()(1/!)(Φk1 .Φkn(0)η-1k11..η-1knn Φtn..Φ1) 

で与えられます。
 

この表式は漸化式として帰納的に 

()(1/)Φk(n1)η-1kl Φ(n≧1)と書けます。
 

これを陽に書けば計量の逆演算子η-1kl を求めて,

具体的に,()(1/) 

[-βk(n1)χk-χk(n1)βk-ωklβk(n1)βl  

iγk(n1)γ~kiγ~k(n1)γk] です。

これらの射影演算子:()(n=0,1,2,..)は明らかに, 

互いに直交しており,全体で完全です。 

()()= P()()=δnm(),()=P(), 

Σn=0()1 です。
 

さて,以下,帰納法により,n=1,2...に対して, 

) [,(n-1)]0 

) (){,()} 

()=-(1/)[γ~k(n1)χk(1/2)ωklγ~k(n1)β: h.c ] 

が成立することが示せます。 

(h.cHelmite共役量を意味します。)
 

[証明]:まず,n=1のとき,BRS1重項粒子の生成,消滅演算子: 

k,kについて [,k][,k]0 ですから 

(0)=Σ=[(1/!)

(α1α2..αm|0><0|αm..α2α1)] 

より,明らかに,[,(0)]0  です。
 

さらに,(1)=-[γ~k(0)χk(1/2)ωklγ~k(0)β:  

+χk(0)γ~k(1/2)ωklβl(0)γ~k ] より. 

{,(1)}=-[β(0)χkiγ~k(0)γk 

(1/2)ωklβk(0)β: iγk(0)γ~k 

+χk(0)βk(1/2)ωlkβl(0)βk ] 

=P(1) です。
 

そしてn=N-1のときに, 

) [,(n-1)]0 

) (){,()} 

()=-(1/)[γ~k(n1)χk(1/2)ωklγ~k(n1)β: h.c ] 

が成立する,と仮定すれば.まず,  

(N-1){,(N-1)}とQ20 から, 

[,(N-1)][,{,(N-1)}]0 

は自明です。
 

次に,先に示した式: 

{,(1)}=-[β(0)χkiγ~k(0)γk 

(1/2)ωklβk(0)β: iγk(0)γ~k 

+χk(0)βk(1/2)ωlkβl(0)βk ] 

において右辺のP(0)をP(N-1)に置き換えると 

左辺のR(1)もR()に置き換えられるので, 

{,()}=P()が確かに成立します。
 

[証明終わり]
 

n≧1のとき,()のP(){,()}となることが 

特に重要で,これから直ちに,|f>=0.|g>=0 

を満たす任意の|f>,|g>∈physに対して, 

<f|()|g>=0 (n≧1)の成立することが従います。

これから次のことがいえます。
 

任意の物理的状態: |f>∈physをBRS4重項粒子 

を含まない成分,1個だけ含む成分,2個含む成分,.. 

というような直和に直交分解します。 

|f>=P(0)|f>+Σn=1()|f>です。
 

ところがBRS4重項粒子を,n≧1個含む成分:()|f> 

,上に示した任意の|f>,|g>∈physに対し,<f|()|g>=0 

という性質から,|P()|f>|2=<f|() ()|f> 

=<f|()|f>=0 .つまり零ノルム状態です。
 

|f>のノルムはBRS4重項粒子を含まずBRS1重項粒子 

のみから成る成分:(0)|f>によって決まります。 

<f|f>=<f|(0)|f>=|P(0)|f>|20 です。
 

すなわち.BRS1重項粒子のみが張る空間:physの正定値性の仮定 

の下で,物理的部分空間;physは半正定値計量を持ちます。
 

よって.前節の最初の定理の仮定()の成立が示されたので,これで 

物理的S行列:physがユニタリであることが証明されました。
 

ここで,いくつかの注意を述べておきます。
 

) |f>=P(0)|f>+Σn=1()|f>において,|f>をincoming  

漸近場で構成された状態:|f;in>とし,()outgoing漸近場の 

生成・消滅演算子で表わした射影演算子にとれば.|f;in>の分解: 

out(0)|f;in>+Σn=1out()|f;in>は.初期状態:|f;in 

が散乱後にout状態基底で,どのようになっているか?  

を直接,示すものです。

そのとき,n≧1のPout()|;in>は,散乱後にBRS4重項粒子が 

1個以上生成された状態を表わし,上述の証明はそれが全て零ノルム 

状態であることを述べているわけです。
 

これをn=2 のときに,より陽な形で見てみます。
 

物理的初期状態:|;in>∈physのFPゴースト数:FP 

ゼロの場合を考えます。

散乱後,BRS4重項粒子を含まない空間:physへの射影演算子: 

out(0),out(0)=Σα|α;out><α;out|と書くことにします。
 

散乱後にBRS4重項粒子を2個含む状態:out(2)|;in>は, 

out(2)|;in 

=Σα,k,l[(1/2)|βk,βl,α;out><α,χl,χk;out|;in 

|βk,χl,α;out><α,βl,χk;out|;in 

(1/2)|χk,χl,α;out><α,βl,βk;out|;in 

|γ~k,γl,α;out><α,γ~l,γkout|;in] 

と書けます。 

ただし, |βkχl|α;out>=|βk,χl,α;out etc.. 

と記し,簡単のためにωklに比例する項は省略しました。
 

この一般形では,out状態の展開係数=S行列要素: 

<α,Φl,Φk;out|;in>の間の関係について,まだ. 

何も述べていません。
 

しかし,既に示したように, 

out(2)|;in>={,out(2)}|;in>=Qout(2)|;in 

の形に掛けること,具体的には, 

out2|;in>=Q,out2|;in>=Σα,k,l 

[(1/2),γ~outβout|α;out><α,χl,χk;out|;in 

(1/2)γ~outχl|α;out><α,βl,χk;out|;in 

(1/2)χoutkγ~outl|α;out><α,βl,βk;out|;in 

..] と書けることがわかります。
 

この右辺の形は散乱後のout状態が,全て零ノルムであることが明白 

な形:|;out>にまとめられることを意味します。つまり, 

<*;out||;out>=<*;out|2|;out>=0 

です。
 

さらに,out(2)|;in>の前の表式と,上の表式が等しいことは 

右辺の比較から以下のWT恒等式を含意しているのがわかります。 

<α,βl,βk;out|;in>=0,  

<α,βl,χk;out|;in>=-i<α,γ~l,γk;out|;in 

などです。
 

(n)に対するP(){,()}, 

()=-(1/)[γ~k(n1)χk(1/2)ωklγ~k(n1)β: h.c ] 

の表式は,それ故,BRS4重項粒子が3個以上生成される過程に 

対しても,こうした無数のWT恒等式を含意すると同時に,それら 

が零ノルム状態の組み合わせにまとまるということを最も効果的 

に表現しています。
 

)物理的状態:|f>∈physのノルムは,BRS1重項粒子のみから 

成る第1成分:(0)|f>∈physで決まるので,BRS1重項モード  

を物理的モードと呼ぶのは正しいことです。
 

しかしながら,この物理的モードのみで張られた空間:phys自体は 

時間発展に対して不変でないことに留意すべきです、 

つまり,iinphys=Pin(0)phys≠Pout(0)physnoutphys です。
 

すなわち,たとえ,BRS4重項粒子を全然含まない初期状態: 

|α;in>∈physが出発点であっても,散乱後にはFPゴースト 

対生成のようなプロセスによって,一般にゼロでない4重項粒子 

を含む成分:out(n)|α;in(n≧1)が現われます。
 

また,零質量ベクトル場の横波状態の定義は,もちろん3次元縦 

ベクトルの向き,つまりLorentz座標系に依存するもので,それ故, 

その横波モードがBRSi重項モードに入っている場合には, 

physLorentz不変でさえないことに注意が必要です。
 

これに反し,|Phys>で定義されるphys{|Phys},および, 

その零ノルム部分空間:0Lorentz不変で,かつ,時間発展 

に対しても不変です。
 

そうして,|f>=P(0)|f>+Σn=1()|f>と分解され, 

|P()|f>|2=<f|() ()|f>=<f|()|f>=0  

<f|f>=<f|(0)|f>=|P(0)|f>|20 なる性質 

を持つことから.physphys /0 asphys (=P(0)as) 

(asin,or out)という同型対応があることが示されます。
 

つまり,asphysの元は,時間発展不変,かつ,Lorentz不変な 

physの元=同値類:|^>の1つの代表元です。
 

ついでに,(n){,()}と書けることから,0に対して 

興味深い関係式:0=Σ=1()phys =Qが従うこと 

に注意しておきます。以下はこれの証明です。
 

[証明] 0の元は全てのphysの元と直交するため.当然, 

phys=P(0)=P(0)physの元とも直交します。 

それ故.(0)0{0} です。
 

また, 20より,|*>∈phys,かつ, 

||*>|0より,0です。
 

一方,0=Σ=0(m) 0=Σn=1(n) 0⊂Σn=1(n)phys 

={,Σn=1(n)}phys⊂Q です。 

したがって,0=Σ=1()phys =QV  

を得ます。[証明終わり]
 

本節はここで終わりなので,今回はここまでにします。


(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

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