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2018年3月12日 (月)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(12)

久しぶりに,「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ) 

の続きです。
 

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(11) 

201712/27にアップして以来,「ゲージ場の量子論(15) 

から「ゲージ場の量子論(34)」まで,BRS変換と,それを 

用いた実際のゲージ場の共変的量子化手法の紹介に寄道を 

していました。ほぼ,3か月間。。。
 

ゲージ固定手法等の必要な知識が揃ったので,Higgs現象の項 

から,参考書第Ⅱ巻(6)の対称性の自発的破れの議論を 

継続再開します。
 

ここまでの詳細は,1弾の 

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(1)」を2017 

8/25にアップしてから,201712/27にアップの第11弾までを 

参照してください。
 

物質場のゲージ変換(位相変換)exp(igθ)で定義 

するか, exp(igθ)で定義するか,に関して,記事に 

よっては差があるかもしれませんが違うのは符号だけなので 

どちらかに統合して読み換えてください。
 

§6.5 Higgs現象
 

素粒子論は,少なくともPoincare'不変性(並進,および, 

Lorentz不変性)を満たす理論ですから,対称性の自発的破れ 

が起これば「南部-Goldstoneの定理」は常に適用できる 

と思われます。
 

しかし,現実において厳密に零質量の粒子として観測されて 

いる素粒子は光子とニュートリノ()しか存在しません。 

(発見されていません。)
 

光子や(未発見の)重力子(graviton)などは,ゲージ場として 

記述される,とされています。確かに,光子,重力子は,それぞれ 

ベクトル粒子,テンソル粒子であり,対称性の自発的破れに伴う 

NGボソンとして理解されています。
 

しかし,ニュートリノについては,スピノル対称性(超対称性) 

に対応するNGフェルミオンと考えると,「低エネルギー定理」 

の予言と矛盾することが確かめられており,NGフェルミオン 

ではなさそうです。(※事実,最近では零質量でもない,と確認 

されているようです。)
 

近似的に零質量の"粒子としてはπ中間子が存在します。

実際,南部-JonaLasinoが素粒子論において初めて対称性の 

自発的破れの概念を提唱し,NGボソンであると指摘 

したのは,π中間子です。
 

事実,π中間子が近似的カイラル対称性の自発的破れに対応 

するNGボソンであることは,その後の1960年代の10年間 

にカレント代数,低エネルギー定理などの多くの成功により 

確かめられ,強い相互作用の解明に多くの寄与をしました。
 

では,この零質量NGボソンの希少性は,対称性の自発歴破れ 

,現実には比較的稀な現象であることを意味しているので 

しょうか?
 

答は否です。実は,「ゲージ理論の場合には対称性の自発歴破れ 

と観測される零質量NGボソンの間に11対応が成立しない。」 

というのが真なのです。
 

ゲージ理論において,共変ゲージの場合には,もちろん, 

対称性が自発的に破れれば,零質量NG粒子が出現しますが, 

「南部-Goldstoneの定理」は,そのNG粒子が正定値な計量 

を持った物理的粒子であること,を主張していません。
 

そして,もしも,それが不定計量を持ち,BRS不変でない 

モードであれば,物理的状態空間;physでは観測されません。
 

他方,Coulombゲージ:0 や時間的軸性ゲージ:00, 

などの非共変ゲージの場合は,正定値計量ですから粒子は観測 

にかかりますが,今度は「南部-Goldstoneの定理」に要求 

される明白なLorentz共変性の仮定が,元から破れているため, 

必ずしも対称性の自発的破れに伴ってNG粒子が出現するとは 

限らないからです。
 

こうした可能性は,Higgs-Kibbleらにより初めて指摘されました。
 

Higgs模型
 

このことを,具体的に示す最も簡単な模型は「Goldstone模型」 

のU(1)対称性をゲージ化して,電磁場を導入する「Higgs模型」 

です。
 

その出発点となるLagrangian密度は, 

(1/4)μνμν(μφ)μφ+μ2φφ 

(λ/2)(φφ)2 です。

ただし,μν=∂μν-∂νμ, 

μφ=(μieAμ)φ です。
 

このとき,単純な「Go;dstone模型」と同様,ここでも, 

ツリーグラフレベルで, 

0|φ()|0>=v/2(μ2/λ)1/2 

となって,ゼロでない真空期待値を生じます。
 

便宜上,複素場φ()のシフトを,以前の, 

φ(){v+ψ()iχ()}/2, 

(ψ(),χ()は真空期待値がゼロの実スカラー場) 

とは少し変更して,極分解(polar decomposition) 

と呼ばれる次の形に取ります。
 

すなわち,φ(){v+ρ()}exp{iπ()/}/2, 

です。(ρ()は真空期待値がゼロの実スカラー場)
 

位相部分:exp{iπ()/},/Hの非線型表現の 

NGボソン場パラメータ化として, 

ξ(π)exp{iπ()/};π()=Σa()πa()a 

としたξ(π),今のG/H=U(1)/{1}に対応するもの 

です。
 

このとき,φの運動項は, 

μφ=(μieAμ)[{v+ρ()}exp{iπ()/}]/2 

exp(iπ/)/2 [μi{μ-∂μπ/(ev)}](v+ρ)}] 

なので,(μφ)[μi{μ-∂μπ/(ev)}](v+ρ)} 

×exp{iπ()/}/2であり,μφ={exp(iπ/)/2} 

×[μi{μ-∂μπ/(ev)}](v+ρ)}]です。
 

それ故,(μφ)μφ=(1/2)μρ∂μρ 

(1/2)2(ρ+v)2{μ-∂μπ/(ev)}{μ-∂μπ/(ev)} 

です。
 

そこで,φφ=(1/2)(ρ+v)2より, 

μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

(μ2/2)(ρ+v)2(λ/8)(ρ+v)4 

(μ2/2)ρ2(μ2/2)2+μ2vρ 

(λ/8)(ρ44vρ362ρ243ρ+v4) 

(μ2/23λv2/)ρ2(λ/8)ρ4(λv/2)ρ3 

(μ2v-λv3/2)ρ-V0[/2]
 

ただし,-V0[/2](1/2)μ22(λ/8)4 

です。
 

v=(2μ2/λ)1/2|μ|(2/λ)1/2なら,μ2v-λv3/20 

,μ2/23λv2/4=-μ2より,22μ2=λv2とし, 

M=ev=|μ|(22/λ)1/2とおけば,
 

(1/4)μν2 

(1/2)2{(1+eρ/)2{μ-M-1(μπ)}2 

(1/2)|(μρ)2-m2ρ2}-m√λρ3(λ/8)ρ4 

-V0[/2] です。
 

さらに,μ=Aμ-M-1(μπ)と定義します。 

すると,μν=∂μν-∂νμなので, 

(1/4)(μν-∂νμ)2(1/2)2μ2(1+eρ/)2 

(ρ場の項)となり,π()は完全に姿を消します。
 

しかもベクトル場:μは質量:Mを獲得しています。
 

これをHiggs現象(Higgs-Mechanism)といいます。
 

この現象をもう少し詳しく見てみます。
 

まず,φ=(v+ρ)exp(iπ/)/2 (v+ρ)/2, 

および,μ → Aμ-M-1μπ=Uμの変数変換はゲージ 

パラメータ:θ(),-数の場;-1π()と置いた. 

"q-数ゲージ変換”になっていることに注意します。
 

すなわち,零質量のベクトル場:μがNGボソン場:πを 

吸収して質量Mを持つベクトル場(Proca):μになった 

のです。 

((1/4)(μν-∂νμ)2(1/2)2μ2 

で記述される有質量ベクトル場をProca場と呼びます。)
 

ここで,電磁相互作用を切ったとき,つまり,e=0としたとき: 

e≠0の物理的粒子の自由度の収支を勘定すれば,次のように 

なっています。
 

M=evですが,e=0では,零質量のAμ(2自由度),零質量 

のπ(1自由度),零質量のρ(1自由度)であったのが,e≠0 

では,質量MのUμ(3自由度),質量mのρ(1自由度)となって 

います。
 

スピンが1の物理的モードは零質量のときはHelicityが±1 

の2自由度しかないですが,質量を得ると静止系も存在して 

モードが1,0,1の3自由度になることで,不足している 

自由度は,NGボソン場:πにより供給されます。
 

e≠0では,は既にゲージ不変ではなくρ()やUμ() 

謂わゆるゲージが固定された場です。
 

それ故,ρやUμのみで表わされたLagrangian密度は,ある種 

のゲージ固定化がなされたものであり,通常,それをユニタリ 

ゲージと呼びます。
 

ユニタリゲージは理論の物理的内容が明白でよいのです 

Proca場の伝播関数:(μν-kμν/2)/(2-M2) 

紫外部:k→∞での挙動が悪いため,理論がくりこみ不可能 

です。
 

そこで,くりこみ可能な共変げ-ジの同じ理論に考え直します、

※くり込み可能共変ゲージ
 

複素場;φのパラメータ化として,上の極分解の代わりに, 

先に「Goldstone模型」で取った分解を用います。
 

すなわち,φ(){v+ψ()iχ()}/2とします。
 

このとき,μφ=(μieAμ)(v+ψ+iχ)/2 

[μψ-i{eAμ(v+ψ)+∂μχ}+eAμχ]/2 

(μφ)[μψ+i{eAμ(v+ψ)+∂μχ} 

+eAμχ]/2より,

(μφ)μφ2(1/2)[(μψ+eAμχ)(μψ+eAμχ) 

{eAμ(v+ψ)+∂μχ}{eAμ(v+ψ)+∂μχ}] 

(1/2)(μψ2)2eμ(χ∂μψ-ψ∂μχ) 

(1/2)2μ2χ2(1/2)2μ2ψ2

(1/2)2(μ+M-1μχ)2+eMAμψ(μ-M-1μχ)

です。
 

一方,φφ=(1/2)(v+ψ)2(1/2)χ2 

(1/2)(ψ2+χ2)+vψ+(1/2)2より, 

(φφ)2(1/4)(ψ2+χ2)2+v2ψ2(1/4)4 

(1/2)2(ψ2+χ2)+vψ(ψ2+χ2)+v3ψ 

です。
 

μ2=λv2/2,22μ2ですから,v=m/√λ 

,λv=m√λであり,μ2(λ/2)30, 

(λ/2)2ψ2=-(1/2)2ψ2 です。
 

それ故,μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

=-(1/2)2ψ2(1/2)m√λψ(ψ2+χ2) 

(λ/8)(ψ2+χ2)2―V0[/2] を得ます。
 

ただし,-V0[/2](1/2)μ22(λ/8)4) 

です。
 

そこで,Lagrangian密度は, 

(1/4)μν2(1/2)2{μ-M-1(μχ)}2 

(1/2)|(μψ)2-m2ψ2}eμ(χ∂μψ-ψ∂μχ) 

+eMAμ2ψ+(1/2)2μ2(ψ2+χ2) 

(1/2)m√λψ(ψ2+χ2)(λ/8)(ψ2+χ2)2 

-V0[/2] と書けます。
 

この時点では,ゲージ固定がなされていないので, 

ゲージ固定処方に従って,この0, 

GF+FP=-iδ[~(μμ(1/2)αB)] 

=B∂μμ(α/2)2i~μμ 

を付加したものを改めてとします。 

これは普通の共変ゲージ条件です。
 

この可換群:()に基づくHiggs模型では,この共変 

ゲージの場合,FPゴースト:,~は全くの自由場 

となりますから,必ずしも導入の必要はありません。
 

上のGF+FP=-iδ[~(μμ(1/2)αB)] 

=B∂μμ(α/2)αB2i~μμ 

とは別の,ξゲージと呼ばれる便利な共変ゲージ 

があります。
 

まず,Lagrangian密度:0の第2項にゲージ場:μ 

とNGボソン場;χの遷移項:MAμμχがある 

ことに注意します。
 

遷移項があると場の混合が起こり面倒ですから, 

ゲージ固定項をうまくとって,これを相殺すること 

を考えます。
 

複素場:φ()のゲージ変換:δφ=-ieθ()φ(), 

φ(){v+ψ()iχ()}/2 により, 

成分場:ψ(),χ()に対して,δψ=-ieθ()χ(), 

δχ=-ieθ(){v+ψ()}と分解されます。
 

ところが,BRS変換:δはこの式でθ() → c() 

とするものです。
 

ゲ-ジ固定項を次のようにとります。 

RξGF+FP=-iδ[~(μμ+αMχ+(1/2)αB)] 

=B(μμ+αMχ)(α/2)2 

i~(□+αM2+eαMψ)c とします。
 

最後の変形では,ev=Mを用いました。
 

NL場:BをGauss経路積分,または運動方程式を 

用いて消去します。 0 RξGF+FP=に 

対する運動方程式:/∂B=∂μμ+αMχ+αB 

0 から,B=-(1/α)(μμ+αMχ)より, 

RξGF+FP=-{1/(2α)}(μμ+αMχ)2 

i~(□+αM2)c+ieαMc~cψ  

となります。
 

そこで,μとχの交差項:Mχ(μμ)が現われるため, 

これと,0の遷移項:MAμμχと合わせて,全微分項 

4次元発散項:M∂μ(χAμ)=MAμμχ+M∂μ(χAμ) 

となって作用積分では,これらは落ちることになります。
 

このRξゲージでは,たとえ可換群U(1)の場合でも 

FPゴーストがc~cψの相互作用項を持つので,もはや 

落とすことはできない,というデメリットはありますが。。
 

途中ですが,今日はここまでにします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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