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2018年3月27日 (火)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(15)

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(14) 

からの続きです。 

Higgs現象の項の続きです。
 

§6.6  Higgs現象逆定理とカラー閉じ込め
 

カラー電荷:に対応する大局的ゲージ不変性が自発的 

に破れたときには,現われるNGボソンは非物理的粒子 

となり,かつ,ゲージ場:μは有質量ベクトル粒子: 

μを記述するようになるというのが前節で示した 

Higgs現象のカラーSUU(3)群版です。
 

しかし,この主張の後半部:「有質量ベクトル粒子が 

現われる。」という部分は摂動論の枠内での議論であり, 

また,模型に依存する話です。
 

ところが,この命題の逆に関しては,摂動論にも模型の詳細 

にも依らず,かなり一般的主張をすることができます。
 

すなわち,系の動力学がある「条件」を満たせば,逆命題: 

「ゲージ場:μが有質量になれば,カラー電荷 Q 

大局的不変性は自発的に破れている。」が成立することを 

示せます。
 

しかも,このときの「条件」が満たされない場合という 

のが,「クォークグルオンなどカラーを持った粒子が 

一般に物理的粒子としては現われない。」というカラー 

閉じ込め(color-confinement)が実現している相,に対応 

していることが示せます。
 

Higgs現象の逆定理

ここでは,カラー対称性(大局的ゲージ不変性)を尊重する 

通常の共変ゲージを取ったLagrangian:~を持つような 

一般的非可換ゲージ理論を考察します。
 

~=-(1/4)μνaμνmatter(φ,μφ)GFFP, 

GF=-(μ)μ(α/2), 

FP=-i(μ~)μa  です。
 

このときカラー対称性(大局的G=SU(3)不変性) 

に対応するMoetherカレント:μ 

μ(ν×νμ)+jμ(ν×) 

i(~×Dμ)a  で与えられ,
 

これがMaxwel方程式と呼ばれる方理式: 

gJμ=∂ννμ{,μ~} 

を満たすことが重要です。
 

ただし,μは物質場のカレントで,μ 

-g-1(matter/∂Aaμ)

=-i{matter/(μφi)}(φ) 

です。
 

Maxwell方程式に現われる3つの項は,別々に保存します。 

μμ=∂μ(ννμ)=∂μ{,μ~}0 

これは明らかです。
 

[対称性の自発的破れ」の最初の20178/29の記事: 

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(1)」 

で説明したことから,一般に,保存カレント:μ() 

から,電荷:Q=∫d30()が定義できるか 

どうか?について,次の諸条件が互いに等価である 

ことがわかっています。
 

() Q=∫d30()が無矛盾な演算子として存在する。 

() Qの対称性は自発的に破れていない:|0>=0 

()カレント:μ()は零質量1粒子スペクトルを含まない。 

つまり,任意の|(m=0)(零質量1粒子状態)に対して, 

0|μ()|(m=0)>=0 である。
 

です。
 

このことから問題としているカラー対称性の電荷: 

無矛盾(well defined)なものとして存在するかどうか?は, 

カレント:μが零質量1粒子スペクトルを含むかどうか? 

によって決まることがわかります。
 

実は,ゲージ理論の場合,上述のNoetherカレントJμの表式 

には,ほとんど常に零質量1粒子状態が含まれています。
 

まず,このことを示します。
 

20182/23の「ゲージ場の量子論(31)」では, 

ゲージ理論では常にゲージ群の添字aの各々で, 

必ず,零質量BRS4重項=素4重項が存在し, 

Heisenberg:μ,,μ,~の中に, 

0 → ±∞ において,μ() → ∂μχ().., 

() → β()..,μ() → ∂μγ().. 

~() → γ~()..,なる漸近場: 

(χ,β,γ,γ~)が存在する,という形で含まれる 

ことを示しました。
 

そして,これらのBRS変換性は, 

[i,χ()]=γ(),{i,γ~()}iβ() 

でした。
 

そうすれば,一般にMaxwel方程式: 

gJμ=∂ννμ{,μ~}Heisenferg演算子: 

μ~(),ある重みでBRS4重項メンバー:γ~() 

を含みます。そこで,0 → ±∞において,μ~()  

(1+u){μγ~()}..なる置き換えができます。
 

ここで,1=δ,μ~=∂μ~-g(μ×) 

の第:μ~からの寄与で,行列:は第2項からの 

寄与に対応しています。すなわち, 

-g(μ×)→ u{μγ~()}..,です。
 

行列:は具体的には 

.T <0|{μ()~()}|0>=iδabμ/2 

=F.T <0|{μγ()γ~()}|0 

ですが,これを考慮すれば, 

.T <0|[{μ()(ν×~)()}|0 

=-(μν-pμν/2)(2) であり 

これのp20 の極の留数u(0),それです。
 

このuはカラー対称性が自発的に破れていなければ 

対角的でu=uδの形に書けます。
 

[上の諸式の証明] φ{(ν×~)expi(φ)} 

を考えると,これは,もちろん定数ですから,,これをc~ 

で関数微分してもゼロです。
 

そこで,~→c~’=c~+δc~に対して 

φ'=φを仮定すれば, 

0=∫φ(δ/δc~){(ν×~)expi(φ)} 

=∫φ[{-μμ~()}{(ν×~)() 

+gfabcν()δ4(x-y)]expi(φ)より, 

0|[{μμ()(ν×~)()}|0 

=gfabcδ4(x-y)0|ν()|0>が従います。
 

そこで,Poincare'不変性とPμ|0>=0 により 

0|ν()|0>=<0|ν(0)|0>=C=一定 

ですから,C=0.つまり<0|ν()|0>=0 を得ます。
 

T積はT積を意味するので, 

μ0|[{μ()(ν×~)()}|0>=0
 

これは運動量p空間では, 

.. 0|[{μ()(ν×~)()}|0 

(μν-pμν/2)ab(2) 

と書けることを意味します。 

したがって,ab(2)=-u(2)とすれば 

.T <0|[{μ()(ν×~)()}|0 

=-(μν-pμν/2)(2) となります。 

(証明終わり)
 

 0 → ±∞で, 

μ~() (1+u){μγ~()}.., 

となる,という論議に戻ると, 

[i,χ()]=γ(),{i,γ~()}iβ() 

でしたが,これはγ~()がBRS親粒子であることを 

意味しており, 

{,μ()}(1+u){μβ()}. 

が従います。
 

そこで,Maxwell方程式:  

gJμ=∂ννμ{,μ~} 

{,μ()}には,実際に零質量の粒子: 

β()が重み(1+u)で効いていることが 

わかります。
 

Maxwell方程式が結び付けるHeisemberg演算子: 

μ,ννμ,{,μ~}は皆同じ量子数 

を持つ演算子ですから,{,μ()}に存在 

する零質量1粒子状態:μβ(),一般に 

(特殊な理由がない限り)μにも∂ννμにも 

ゼロでない重みで含まれます。
 

0 → ±∞で, 

μ() → v{μβ()}..,および, 

ννμ() → w{μβ()}..,と書けば 

Maxwell方程式は,係数行列が 

gv=w(1+u)を満たすことに等価です。
 

結局,カラー対称性が自発的に破れていなければ, 

NoetherカレントJμには,たまたま,, 

{,μ()}の寄与:(1+u),ννμ 

の寄与:が相殺しない限り,零質量状態:μβ 

が寄与することが示されました。
 

この事実は,カラー対称性が,ほとんど常に自発的に破れている 

ことを意味するのでしょうか? 

しかし,これは明らかに馬鹿げた結論です。
 

この難題(puzzle)を解く鍵は,既にずっと以前に述べたように 

Noetherカレントの定義の不定性にあります。
 

Noetherの定理で求めた保存カレント:μには常に,任意の局所的 

反対称テンソル:[μν]4次元発散:ν[μν]を付加 

してもよいという不定性が存在し, 

保存則:μ{μ+∂ν[μν]}0,電荷が元の変換 

の生成子になるという性質: 

∫d3i[0()+∂[0](),Φ()]=δΦ() 

も共に,不定項:ν[μν]の存在如何によらず成立する 

ということを思い起こします。
 

実際,上の式では積分:∫d3の前に交換関係を計算する 

形なので,[[0](),Φ()],x=yの近傍にのみ 

台を持つ空間全微分項であるため,∫d3によって寄与は 

ゼロです。
 

しかし,交換関係を取る前に3次元空間積分: 

Q=∫d3{j0()+∂[0]()}が存在して, 

無矛盾なQを与えるかどうか?という今の問題にとって 

∂f[0μν項は全くの不定項というわけではなくなります。
 

むしろ,上記積分値が存在して無矛盾になるようにf[0μν 

選ぶべし.という制限が付くことになります。
 

すなわち,「初めにとったカレントjμ()に零質量1粒子 

状態の寄与がある場合は,その1粒子状態の寄与を∂[μk] 

項が相殺するようなf[0ν]()を選択しなければならない。」 

という制限です。
 

この制限が満たされるf[0ν]であれば,これをどう選んでも 

Qには零質量1粒子状態は効きません。 

それ故,[μk]μ()の零質量1粒子状態を相殺 

できないような場合があれば,それが実際に対称性が 

自発的に破れる場合に相当するわけです。
 

カラー対称性の場合は,先に, 

μ(ν×νμ)+jμ(ν×) 

i(~×Dμ)a  で与えたNoetherカレント:μ 

は一般に,ννμ{,μ~}と同じく素4重項 

メンバーの零質量粒子:β()の寄与を,実際に 

μ → v{μβ}..,の形で含んでいます。
 

そこで,上の一般的議論から,もし,ある添字aのカラー対称性 

が本当に自発的破れを起こしていないのであれば,ある局所的 

反対称テンソル:[μν]()が存在して,ν[μν]()の中 

の零質量粒子:β()の寄与がJμ()の中のそれと相殺する 

はずです。
 

それ故,=∫d3{J0()+∂[0]() 

が無矛盾なカラー電荷演算子を与えることになります。
 

このことは,実際,例えば群Gの全てのカラー対称性が 

破れていない場合には係数行列が全て,=uδ, 

=vδ,=wδのように対角行列で, 

[μν]Yang-Mills場の場の強さ:νμに比例した 

形のf[μν]()=-ωFνμ(),ω=v/uに取って 

おけばいいです。
 

もちろん, これは-ωFνμでなくてもそれと同じ 

量子数を持った∂μν-∂νμ(μ×ν)など 

を使っても∂μβの寄与があるはずなので,適切な係数 

を掛けて相殺できるものなら,それでもいいです。
 

Higgs現象逆定理
 

[定理];det(+u)0の条件が成立する限り,群Gの 

ゲージ場:μ()のうち,その漸近場のベクトル粒子 

がゼロでない質量を得た(あるいは,より一般には零質量 

ベクトル粒子が無くなった)チャネルの分だけカラ-対称性 

は破れている。
 

[証明] ゲージ場:μ()のうち,零質量ベクトル漸近場 

が存在しないチャネルの群の添字をα,β,..存在するチャネル 

のそれをa^,^..でそれぞれ表わすことにします。
 

このとき,添字αのゲージ場:αμ()はx0 → ±∞で 

αμ() → ∂μχα()+Zαμ().. 

(αは係数)となります。
 

ただし,χα(),先に 

Heisenberg:μ,,μ,~の中に 

0 → ±∞ において,μ() → ∂μχ().., 

() → β()..,μ() → ∂μγ().., 

~() → γ~()..,なる漸近場:(χ,β,γ,γ~) 

が存在する。」 

と書いたときの零質量の素4重項メンバーであり, 

μ(),その他に存在するかもしれない有質量の 

ベクトル粒子固有状態のProca場であり,..,さらに 

存在するかもしれない,今の論議では無関係な有質量 

の漸近場を示しています。
 

ここで重要なのは素4重項メンバーχα()(それ故,その 

相棒のβα())スカラー粒子であるということです。
 

スカラー粒子のχα(),βα()から作られる反対称テンソル: 

μ(νχα)-∂ν(μχα)はゼロですから,これはFμν() 

であろうが,μν-∂νμ(μ×ν)であろうが, 

任意の反対称テンソル局所場:[μν]()に対し.決してその 

零質量漸近場として寄与できません。
 

そこで,修正Noetherカレントの不定項:ν[μν]()にも, 

そのようなスカラーのχα(),βα()は現われ得ません。
 

これに反して,もしも零質量のベクトル粒子漸近場が存在する 

チャネル:^μ()ならば,前にも少し述べたように,χ^() 

はスカラー場ではなく,^μ()の零質量ベクトル漸近場: 

^μ()の縦波モードです。 

このとき,^μ()のスカラーモードがβ^()です。 

そして(μ^μ=-αB^ etc.から) 

一般に,μ(ν^ν) ∝ □a^ν ∝ ∂μβ^となります。
 

そこで,^μ,α^μνのような反対称テンソル:α^[μν] 

に対し,0 → ±∞ の極限で, 

α^[μν] → c^(μ^ν-∂ν^μ)... (^は定係数) 

の形での寄与が可能となり,0 → ±∞ の極限で 

να^[μν] → c^{μ(ν^ν)-□a^μ}... 

=c^μβ^...のように,零質量素4重項状態:β^ 

寄与できることになります。
 

すなわち,任意の反対称テンソル場の発散: ν[μν] 

効き得る零質量1粒子β^,零質量ベクトル粒子:μ 

存在するチャネル:a=a^のみとなります。
 

零質量ベクトルが無くなったチャネル:a=αには零質量 

1粒子;βαは出現しません。
 

このことは特に場の強さ:αμνにも当てはまるため, 

α0であって,gvα=-(1+u)αとなり, 

de(1+u)0 の仮定から,α0となる独立な 

チャネルが零質量べクトルの無くなったチャネルの 

個数だけ存在することがわかります。
 

すなわち,このチャネルの個数をnとし,対応する 

NoetherカレントをJαμ(α=1,..)と書けば, 

0 → ±∞において, 

αμ()→vαβμββ()+vα^μβ^().. 

 de(αβ)0 ということです。
 

しかも,零質量の∂μββ(),任意の∂να^[μν]の中 

には現われ得ないので,この不定項でJαμ()の零質量項 

を相殺できません。.
 

そこで,結局,このn個のチャネルではカラー対称性が自発的 

に破れています。  (証明終わり) 

(↑※最後は少しクドかった,ですね。。。)
 

最後に,この定理に関わるコメントを二,三加えておきます。
 

()定理の結論にある対称性の自発的破れに対応するn個の 

チャネルは,0 → ±∞で零質量ベクトルが無くなり,例えば 

有質量ベクトル場が現われるような場合で,そのNGボソンは 

4重項メンバーのχα()です。
 

実際,[χα(),ββ()]iδαβ(x-y)より, 

0|[αμ(),χβ()]|0>=iδαβ(x-y)が従う 

ことからも納得できます。
 

例えば,SU(2)Higgs-Kibblle模型の例では.0 → ±∞で 

μ() → M-1a∂μχas ()+M-2b∂μas() 

+Z31/2asμ() ,χ () → Zπ1/2χas(), 

() → Z1/2as()=β()でした。 

(左辺の添字:HはHeisenberg場の意) 

そこで,χ ()= M-1aχas ()+M-2bBas() 

と同定できて,χ ()は確かにHiggs2重項のNG場成分 

であるχ ()の漸近場χas ()と本質的に同じです。
 

()定理の条件:det(1+u)0 QEDなど,可換群:[(1)] 

に基づくゲージ理論の場合,構造定数がfabc0ですから 

μ×0よりu=0となって恒等的に満たされます。
 

また,=O()=O()ですから,非可換ゲージ理論 

でも摂動論の枠内では常に満足されます。
 

()この定理にとっては,零質量ベクトル粒子の漸近場が 

無くなることだけが重要で,有質量ベクトル粒子の質量が群 

Gの多重項内で縮退していようが,いまいが,大局的ゲージ 

対称性は必ず破れているということを証明しています。
 

途中ですが,今日はここまでにします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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