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2018年3月 8日 (木)

ゲージ場の量子論(34)(完了)

「ゲージ場の量子論(33)」からの続きです。 

このシr-ズ記事は,これが最後です。
 

§5-11物理的S行列のゲージ固定非依存性 

理論のBRS不変性は,一方では既に示したように物理的S行列 

のユニタリ性を保証しており,同時に,他方では理論の物理的内容 

がゲージ固定条件の選び方に依らない,ということを保証します。
 

物理的内容とは,特に散乱理論の枠内では物理的S行列,それ 

以外では観測可能量の期待値などです。
 

※Green関数のゲージ固定依存性 

まず,LSZ公式でS表列を計算するのに必要なGreen関数が, 

どのようにゲージ固定条件に依存しているのかを明らかに 

します。ゲージ場,物質場からFPゴースト場まで,全ての 

Heisenberg場をまとめてΦi()と記すことにすれば, 

任意のGreen関数は,()(1,..,)=<0|{Φ1Φ2..Φ}|0 

=N∫DΦ{Φ1Φ2..Φexpi[Φ]} で与えられます。
 

作用積分:[Φ]には,ゲージ固定項,およびFPゴースト項も 

含まれており,それらは,iδ(~)なる形を持ちます。∫d4GF+FP=∫d4{iδ(~)}です。 

はゲージ固定関数で,先の議論で採用したクラスの共変ゲージ 

では,=∂μμ(1/2)αBでした。
 

今ゲージ固定関数を, からF+ΔFに無限小だけ変化させた 

とすると作用積分:[Φ]の変化は, 

ΔS=∫d4{iδ(~ΔF)}=∫d4{,~ΔF} 

です。
 

したがってGreen関数の変化は,Δexpi[Φ]=ΔSexpi[Φ]より, 

ΔG()=<0|{{,~ΔF}Φ1Φ2..Φ}|0 

=Σj=1n()Sj0|{(~ΔF)Φ1..Φj-1(δΦj)Φj+1..Φ}|0 

ただし,

j=Σi=1j-1|i|であり,~ΔFは∫d4{~()ΔF() 

の略記です。
 

これはFeynmanグラフでは図5.18のように表わされます。
 

ただし,2項の図は,Φjがゲージ場:μのときのみ 

現われるもので,δμ=∂μ-g(μ×) 

μの寄与を示しています。
 

特に2点関数:(2)の場合の図は図5.19となります。
 

この場合,BRS変換を受けていない方の脚の2点関数 

を陽に取り出して描きました。例えば,5.192番目 

の図では,aから右は1の足に関しては1粒子既約グラフ 

です。2点より先のc~ΔF頂点を含んだ点2までの 

グラフの寄与を運動量表示でΔζj(2)と書くことに 

します。
 

種類jの場の2点関数:j(2)(2)は質量殻近傍でのくりこみ 

定数をZjとしてGj(2)(2) i j/(2-mj2)の形をとるため, 

ゲージ関数がF+ΔFの理論の2点Green関数:j(2)+ΔGj(2) 

,5.19より,質量殻近傍で, 

(j(2)+ΔGj(2))(2) i( j2jΔζj)/(2-mj2) 

で与えられます。 

ただし,Δζj,2=mj2におけるΔζj(2)です。
 

jΔζj2が掛かっているのは,5.192つの図が同じ 

寄与を与えるからです。
 

{ j1/2(1+Δζj)}2=Z j2jΔζj)+O(Δζj2)を考慮する 

,がF+ΔFに変わったときHeisenberg場のくり込み; 

Φj=Z1/2ΦjRenの因子が,1/2 → Z1/2(1+Δζj)と変化 

したことを意味します。
 

上では,Δζj(2) のp2=mj2での値が存在する,と仮定 

しましたが,実は発散する場合もあります。 

例えば,物質場:φjの場合,δφj=-i()jkφは普通 

FPゴースト数:FP=と,物質場φの運ぶ何らかの保存量子数 

を同時に持つ複合Heisenberg場ですから,新たな結合状態が 

作られない限り,Δζj(2)は粒子の極を持たず問題ないです。
 

しかし,例えば,対称性が自発的に破れたような場合には,物質場 

のある成分:φは真空と同じ量子数しか持たないということが 

あります。
 

そのような場合,複合場:δφj=-i()jkφがFP 

ゴースト1粒子状態とつながり,Δζj(2)はFPゴースト 

質量殻:2=mFP2の近傍で, 

Δζj(2) ~ Δζ~(1i3~)ω~(1)/(2-mFP2) 

のように挙動します。ただし,Δζ~,ω~は図5.20に示した, 

それぞれの部分グラフの振幅:Δζ~(2),ω~(2) 

2=mFP2における値です。
 

ここで1つ重要な点は,φj粒子の質量:はFPゴーストの 

質量:FPに一致しなければならないことです。 

つまり,=mFPです。
 

何故なら,:φjのBRS変換;[i,φj()]δφj() 

の右辺の複合Heisenberg:δφj(),5.20の点b 

より右の部分のグラフ(2点関数<0|{~δφj}|0>に相当) 

にFPゴースト1粒子極を持つことから,0→±∞の極限で, 

ゴースト漸近場:as()になります。 

0→±∞でδφj() → Z3~1/2ω~as()です。
 

そこで,[i,φj()]δφj()の両辺が無矛盾である 

ためには,左辺のφj()もまた,必ず,右辺のcas()と同じ 

質量:FPの漸近場:φjas()を持たねばなりません。
 

すなわち, 

0→±∞の極限で,[i,φjas()]=Z3~1/2ω~as() 

を得ます。この式は,(φjas,as)がBRS2重項を成すこと 

を示しています。
 

このような場合には,ゲージ固定関数がF+ΔFになった 

理論でのφj場の2点Green関数が,質量殻:2=mj2=mFP2 

の近傍で,(j(2)+ΔGj(2))(2) 

  i{ j/(2-mj2)}{123~ω~Δζ~/(2-mj2)} 

なる挙動をすることになります。
 

ここで,無限小補正項:ΔGj(2)2次の極を持つということは 

φj2乗質量:j2,j2 → mj2+Δmj2,Δmj2=Z3~ω~Δζ~ 

だけシフトすること,を意味します。 

(※何故なら,i{ j/(2-mj2)}{123~ω~Δζ~/(2-mj2)} 

i{ j/(2-mj2)}/{123~ω~Δζ~/(2-mj2)} 

i j/(2-mj223~ω~Δζ~) であるからです。)
 

このようにゲージ固定条件を変化させたときに質量が変化する 

のは,BRS4重項粒子=非物理的モードのみである.という点 

が重要です。
 

対称性が自発的に破れた場合に相当する上の例では,確かにφj 

粒子は「素FPゴースト粒子」:asとBRS2重項を組んで 

いました。一般にも,ある粒子;φjの質量がゲージ固定の変化で 

ずれるためには,ΔGj(2)2次の極,したがって,5.19 

Δζj(2)1次の極が現われる必要があります。
 

上の例では,このΔζj(2)の極は図5.20の「素FPゴースト」 

の極で供給されましたが,一般には必ずしもそうではなく,新たな 

結合状態による極であってもいいです。
 

しかし,とにかくΔζj(2)に極が出るということは,複合Heisenberg 

:δφjに漸近場が現われることを意味し,そのことはBRS変換: 

[i,φj()]δφj()の整合性からφj粒子とδφjチャネル 

の結合状態粒子が2重項粒子になること,を意味します。 

よって,次の重要な結論に到達します。
 

「BRS1重項粒子の質量は,ゲージ固定条件を変えても変化

しない。」 (※非可換ゲージ理論では1重項粒子はゲージ場:

μの横波モードと物質場で与えられ,他方,2重項(4重項)

粒子はAμの縦波・スカラーモード,FPゴースト,反ゴースト

で与えられました。)

5.19では,場がゲージ場:μδμ(非斉次項+∂μ) 

グラフを省略しましたが,項∂μ{-g(μ×c)}も共に図5.20 

の形のFPゴースト1粒子の極のグラフを持ちます。
 

しかし,それらは,0|(μν)|0>のpμν項にのみ寄与 

するため,物理的横波モード(1重項)部分に間しては質量は変化せず, 

くり込み定数が,1/2 → Z1/2(1+Δζj)で示されるだけずれる 

という先述の議論は,このゲージ場の場合には正しいです。
 

※物理的S行列のゲージ固定非依存性 

くり込まれたHeisenberg場のGreen関数から,S行列 

を得るには,LSZの公式で与えたように, Green関数の 

各外線jに,運動量表示でKlein-Gordon演算子:ij(2) 

(i)(2-μj2),または,Dirac演算子:(i)j() 

(i)(-mj)を掛けた後,運動量pを質量殻上に置き, 

次の適切な偏極波動関数を掛ければいいです。
 

すなわち,{(2π)32j}-1/2εj(j)を掛けるのですが, 

この値は,具体的には,{(2π)32ω}-1/2ε(σ)μ(),または, 

{(2π)-3/p}1/2εu(,) etc. を意味します。 

しかし,今のように,くり込まれていないHeisenberg場の 

Green関数の場合は,さらにくり込み因子:j1/2で割る必要 

があります。すなわち,n外線粒子のSは, 

()=Πj=1[j-1/2{(2π)32j}-1/2εj(j)j(j2)]()|j2=mj2  

です。以下では外線が全てBRS1重項粒子の物理的S行列 

を考えます。
 

ゲージ固定関数をFからF+ΔFに無限小変化させたとき, 

上記S行列要素の変化)の源はG() の変化とZjの変化の両方 

です。
 

ΔS()

=Πj=1[j-1/2{(2π)32j}-1/2εj(j)j(j2)]ΔG()|j2=mj2  

-Σj=1{j-1/2(ΔZj )1/2}() です。
 

右辺第1項のΔG()には,5.18のグラフが効くのですが,この式 

では各外線kの脚に,元のΦk粒子と全く同じ質量の場所:k2=mk2 

1粒子極を持つグラフのみが,ゼロでない寄与で効き得ます。
 

しかも,ΔG()=<0|{{,~ΔF}Φ1Φ2..Φ}|0 

=Σj=1n()Sj0|{(~ΔF)Φ1..Φj-1(δΦj)Φj+1..Φ}|0 

において,BRS変換を受けた唯一の脚が物質場:Φj=φjなら 

δφjはFPゴースト場:とφjとの複合場ですから,一般に 

上式の(~ΔF)頂点とくっついた後,,元の粒子:φjに戻ると 

いう図5.21のタイプのグラフだけが,k2=mk21粒子極を 

作り得ます。
 

しかし,もしも,結合状態(束縛状態,or共鳴)ができるなら,φj 

に戻らないグラフでも粒子極が現われることがあります。でも, 

その場合は,(φjas,(δφj)as)がBRS2重項粒子となるため, 

今の外線が全て物理的1重項のS行列の議論からは除外 

されます。(※例えば,asoutなら外線のoutとの振幅は 

BRS2重項から1重項への遷移がないので,ゼロです。)
 

同様に,δΦjのΦjがゲージ場;μの場合は,δμチャネル 

でFPゴースト1粒子極が効く部分はpμに比例するため,それは 

物理的モードを取り出すS行列外線に掛かっている横波偏極の 

ベクトル因子:ε(±)μ()と直交し,με(±)μ()0 によって 

落ちます。
 

結局,5.21のグラフのみが効くことがわかりましたが, 

このグラフのδφj,~ΔFと結合する部分のグラフは 

φ粒子の2点関数の図5.19のΔζj部分と同じですから, 

より明らかに,ΔG()|極部分(Σ=1nΔζj)()です。
 

よって,ΔS()の式右辺に代入すると, 

ΔS()[Σ=1n(Δζj-Z-1/2ΔZ1/2)]() を得ます。 

ところが,1/2 → Z1/2(1+Δζj)よりΔZ1/2 =Z1/2Δζj) 

ですから,結局,ΔS()0 となります。
 

したがって,Green関数の段階での変化は物理的S行列では全て 

吸収,相殺されて,「物理的S行列はゲージ固定条件の取り方には 

一切影響を受けない。」ことが証明されました。
 

※観測可能量の期待値 

前節で定義した観測可能量Aの物理的状態での期待値がゲージ 

固定条件に依存しないことも同様に示すことができます。
 

まず,物理的状態としてBRS1重項モードのみで構成した任意 

incoming状態:|α;n>と,outgoing状態:|β;out>を取った 

場合の期待値:()=<β;out||α;n>を考察します。
 

Aは時間に関しては有限領域内の演算子としておきます。 

そうすれば,この量S()は単に「演算子Aを挿入された  

S行列要素」と見なせます。
 

そこで,前のS行列要素:(の式

(nはαとβの粒子数の和=外線数)

()=Πj=1[j-1/2{(2π)32j}-1/2εj(j)j(j2)]()|j2=mj2   

において,(),()をそれぞれ,(),()  

と置き変えた式が成立し,これを用います。

ただし,G() =<0|{AΦ1..Φn}|0.>です。 

(※便宜上AはBose演算子とします。
 

()でゲー^ジ固定関数がFからF+ΔFに変化したとき 

の変化は,ΔG() =<0|[{i,~ΔF}AΦ1..Φn]|0. 

=<0|{(~ΔF}[i,]Φ1..Φn}|0. 

+Σj=1()j 

0|{(~ΔF)[i,]Φ1..(δΦj)..Φ}|0. 

となります。
 

そして,()の変化:ΔS(),次式:  

ΔS() 

=Πj=1[j-1/2{(2π)32j}-1/2εj(j)j(j2)]ΔG()|j2=mj2   

-Σj=1{j-1/2(ΔZj )1/2}() 

において,ΔS(),ΔG()をそれぞれ,ΔS(),ΔG() 

に読み直すだけで得られます。

S行列のときの論議と同様,ΔG()において,j=1~nの場: 

ΦjBRS変換を受けた最後のn項の寄与は,物理的S行列の 

場合と同じく,場のくり込み定数の変化分と相殺されて消えます。
 

唯一の残る項から,

ΔS()=<0|{(~ΔF}[i,]Φ1..Φn}|0. 

i<β;out|{(~ΔF)[,]}|α;in 

i<β;out|[{,~ΔF}]|α;in>です。
 

第2行への変形では,|α;in>=Q|β;out>=0 

用いました。
 

最後の行はΔG() =<0|[{i,~ΔF}AΦ1..Φn]|0. 

LSZ操作を行ったもの: 

Πj=1[j-1/2{(2π)32j}-1/2εj(j)j(j2)] 

×<0|[{i,~ΔF}AΦ1..Φn]|0.>に一致するように 

見えますが,実は等しくないことに注意です。
 

等号が成立しないのは,LSZでは挿入されている演算子: 

~ΔF=∫d4xc~()ΔF()がx0→±∞まで伸びて 

いてGreen関数の1粒子の極の構造を変えるからです。
 

しかし,既にAが局所観測可能量なら[,]0なので, 

ΔS()i<β;out|{(~ΔF)[,]}|α;in 

から,ΔS()0であり,Aが局所的でない場合も, 

|α;in>=Q,|β;out>=0よりΔS()0  

が従います。
 

それ故,()=<β;out||α;n>の形の期待値は 

ゲージ固定条件の選択に依りません。
 

上では,|α;in,|β;out>は,BRS1重項モードだけで作った 

状態でしたが,これは一般のphysの状態でもいいです。 

それは,それぞれのゲージ条件内での観測可能量の期待値は, 

零ノルム状態ベクトル分だけ状態を変えても不変だからです。
 

また,()=<β;in|SA|α;n>とも書けて, physの状態: 

|α;n>から|β;in>へのS行列要素がゲージ固定条件に 

依らないから,期待値:<β;in||α;n>もゲージ固定条件に 

依らないと単純に述べることもできます。
 

さて,これで第5章が全て終わりました。これで第Ⅰ巻も終わりで 

6章の「対称性の自発的破れ」からは第Ⅱ巻です。
 

実際には最後に章末の演習問題があって,過去の参考ノートは自分 

なりの解答の羅列の後で,ノートのこの部分が終了しています。 

演習問題の中には重要なものもあり,それについては,このブログ 

記事では,ところどころ,本文への注として詳述したものもあります。
 

ノートでは,この部分については199923日深夜完了となって 

います。今から,19年前,49歳になったばかりで,ほぼプータローで 

講師アルバイトだけで食いつないでいた頃です。
 

貧乏でも,何らかのベンチャーなどで一攫千金的に金を得よう 

とかのスケベな気持ちは起きず,単に新聞等の求人での地道な 

就活をしながら,ただ,一文の得にもならない向学的好奇心だけ 

が旺盛でした。 


イマも相変わらず。。ビンボー症で。。

 

本シリーズは,これで終わります。 

6章以後は,本ブログでは既に 

「対称性の自発的破れとGldstne粒子」という記事シリーズで 

連載中でした。その途中で必要に迫られて寄り道をしただけの 

つもりだったのですが,長くかかってしまいました。
 

とりあえずPendingですが,寄り道からすぐ本道に戻るかも 

しれません。


(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

PS:もうすぐですね。桜。。。下は2015年4月2日の浜町公園です。

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