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2018年3月

2018年3月28日 (水)

「星の銀貨」グリム童話 無料名作紹介1(楠山正雄訳)

また思い付きで,もう著作権が無く無料公開されているものを 

他のHPから転載しました。 

「星の銀貨」 テーマは無償の慈愛です。

むかし、むかし、小さい女の子がありました。 

この子には、おとうさんもおかあさんもありませんでした。 

たいへんびんぼうでしたから、しまいには、もう住むにも 

へやはないし、もうねるにも寝床がないようになって、とうとう 

おしまいには、からだにつけたもののほかは、手にもったパン 

ひとかけきりで、それもなさけぶかい人がめぐんでくれたものでした。

 
 でも、この子は、心のすなおな、信心のあつい子でありました。 

それでも、こんなにして世の中からまるで見すてられてしまって 

いるので、この子は、やさしい神さまのお力にだけすがって、 

ひとりぼっち、野原の上をあるいて行きました。

  すると、そこへ、びんぼうらしい男が出て来て、 

 「ねえ、なにかたべるものをおくれ。おなかがすいてたまらないよ。」 

と、いいました。女の子は、もっていたパンひとかけのこらず、 

その男にやってしまいました。そして、 

 「どうぞ神さまのおめぐみのありますように。」と、いのってやって、 

またあるきだしました。

  すると、こんどは、こどもがひとり泣きながらやって来て、 

 「あたい、あたまがさむくて、こおりそうなの。なにかかぶるもの 

ちょうだい。」と、いいました。  そこで、女の子は、かぶっていた 

ずきんをぬいで、子どもにやりました。

 
 それから、女の子がまたすこし行くと、こんど出て来たこどもは、 

着物一枚着ずにふるえていました。そこで、じぶんの上着を 

ぬいで着せてやりました。

  それからまたすこし行くと、こんど出てきたこどもは、スカート 

がほしいというので、女の子はそれもぬいで、やりました。

 
 そのうち、女の子はある森にたどり着きました。もうくらくなって 

いましたが、また、もうひとりこどもが出て来て、肌着をねだりました。 

あくまで心のすなおな女の子は、 

(もうまっくらになっているからだれにもみられやしないでしょう。 

いいわ、肌着もぬいであげることにしましょう。)と、おもって、 

とうとう肌着までぬいで、やってしまいました。

 
  さて、それまでしてやって、それこそ、ないといって、きれいさっぱり 

なくなってしまったとき、たちまち、たかい空の上から、お星さまが  

ばらばらおちて来ました。  

しかも、それがまったくの、ちかちかと白銀色をした、ターレル銀貨  

でありました。そのうえ、ついいましがた、肌着をぬいでやってしまった  

ばかりなのに、女の子は、いつのまにか新しい肌着をきていて、 

しかもそれは、この上なくしなやかな麻の肌着でありました。

  女の子は、銀貨をひろいあつめて、それで一しょうゆたかにくらしました。
 

※ 底本:「世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人」小峰書店
   1949(昭和24)年220日初版発行

 
   1949(昭和24)年12304版発行
「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
 
入力:大久保ゆう
 
校正:浅原庸子
2004
616日作成
2005
1112日修正
 
青空文庫作成ファイル:
 
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

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2018年3月27日 (火)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(15)

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(14) 

からの続きです。 

Higgs現象の項の続きです。
 

§6.6  Higgs現象逆定理とカラー閉じ込め
 

カラー電荷:に対応する大局的ゲージ不変性が自発的 

に破れたときには,現われるNGボソンは非物理的粒子 

となり,かつ,ゲージ場:μは有質量ベクトル粒子: 

μを記述するようになるというのが前節で示した 

Higgs現象のカラーSUU(3)群版です。
 

しかし,この主張の後半部:「有質量ベクトル粒子が 

現われる。」という部分は摂動論の枠内での議論であり, 

また,模型に依存する話です。
 

ところが,この命題の逆に関しては,摂動論にも模型の詳細 

にも依らず,かなり一般的主張をすることができます。
 

すなわち,系の動力学がある「条件」を満たせば,逆命題: 

「ゲージ場:μが有質量になれば,カラー電荷 Q 

大局的不変性は自発的に破れている。」が成立することを 

示せます。
 

しかも,このときの「条件」が満たされない場合という 

のが,「クォークグルオンなどカラーを持った粒子が 

一般に物理的粒子としては現われない。」というカラー 

閉じ込め(color-confinement)が実現している相,に対応 

していることが示せます。
 

Higgs現象の逆定理

ここでは,カラー対称性(大局的ゲージ不変性)を尊重する 

通常の共変ゲージを取ったLagrangian:~を持つような 

一般的非可換ゲージ理論を考察します。
 

~=-(1/4)μνaμνmatter(φ,μφ)GFFP, 

GF=-(μ)μ(α/2), 

FP=-i(μ~)μa  です。
 

このときカラー対称性(大局的G=SU(3)不変性) 

に対応するMoetherカレント:μ 

μ(ν×νμ)+jμ(ν×) 

i(~×Dμ)a  で与えられ,
 

これがMaxwel方程式と呼ばれる方理式: 

gJμ=∂ννμ{,μ~} 

を満たすことが重要です。
 

ただし,μは物質場のカレントで,μ 

-g-1(matter/∂Aaμ)

=-i{matter/(μφi)}(φ) 

です。
 

Maxwell方程式に現われる3つの項は,別々に保存します。 

μμ=∂μ(ννμ)=∂μ{,μ~}0 

これは明らかです。
 

[対称性の自発的破れ」の最初の20178/29の記事: 

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(1)」 

で説明したことから,一般に,保存カレント:μ() 

から,電荷:Q=∫d30()が定義できるか 

どうか?について,次の諸条件が互いに等価である 

ことがわかっています。
 

() Q=∫d30()が無矛盾な演算子として存在する。 

() Qの対称性は自発的に破れていない:|0>=0 

()カレント:μ()は零質量1粒子スペクトルを含まない。 

つまり,任意の|(m=0)(零質量1粒子状態)に対して, 

0|μ()|(m=0)>=0 である。
 

です。
 

このことから問題としているカラー対称性の電荷: 

無矛盾(well defined)なものとして存在するかどうか?は, 

カレント:μが零質量1粒子スペクトルを含むかどうか? 

によって決まることがわかります。
 

実は,ゲージ理論の場合,上述のNoetherカレントJμの表式 

には,ほとんど常に零質量1粒子状態が含まれています。
 

まず,このことを示します。
 

20182/23の「ゲージ場の量子論(31)」では, 

ゲージ理論では常にゲージ群の添字aの各々で, 

必ず,零質量BRS4重項=素4重項が存在し, 

Heisenberg:μ,,μ,~の中に, 

0 → ±∞ において,μ() → ∂μχ().., 

() → β()..,μ() → ∂μγ().. 

~() → γ~()..,なる漸近場: 

(χ,β,γ,γ~)が存在する,という形で含まれる 

ことを示しました。
 

そして,これらのBRS変換性は, 

[i,χ()]=γ(),{i,γ~()}iβ() 

でした。
 

そうすれば,一般にMaxwel方程式: 

gJμ=∂ννμ{,μ~}Heisenferg演算子: 

μ~(),ある重みでBRS4重項メンバー:γ~() 

を含みます。そこで,0 → ±∞において,μ~()  

(1+u){μγ~()}..なる置き換えができます。
 

ここで,1=δ,μ~=∂μ~-g(μ×) 

の第:μ~からの寄与で,行列:は第2項からの 

寄与に対応しています。すなわち, 

-g(μ×)→ u{μγ~()}..,です。
 

行列:は具体的には 

.T <0|{μ()~()}|0>=iδabμ/2 

=F.T <0|{μγ()γ~()}|0 

ですが,これを考慮すれば, 

.T <0|[{μ()(ν×~)()}|0 

=-(μν-pμν/2)(2) であり 

これのp20 の極の留数u(0),それです。
 

このuはカラー対称性が自発的に破れていなければ 

対角的でu=uδの形に書けます。
 

[上の諸式の証明] φ{(ν×~)expi(φ)} 

を考えると,これは,もちろん定数ですから,,これをc~ 

で関数微分してもゼロです。
 

そこで,~→c~’=c~+δc~に対して 

φ'=φを仮定すれば, 

0=∫φ(δ/δc~){(ν×~)expi(φ)} 

=∫φ[{-μμ~()}{(ν×~)() 

+gfabcν()δ4(x-y)]expi(φ)より, 

0|[{μμ()(ν×~)()}|0 

=gfabcδ4(x-y)0|ν()|0>が従います。
 

そこで,Poincare'不変性とPμ|0>=0 により 

0|ν()|0>=<0|ν(0)|0>=C=一定 

ですから,C=0.つまり<0|ν()|0>=0 を得ます。
 

T積はT積を意味するので, 

μ0|[{μ()(ν×~)()}|0>=0
 

これは運動量p空間では, 

.. 0|[{μ()(ν×~)()}|0 

(μν-pμν/2)ab(2) 

と書けることを意味します。 

したがって,ab(2)=-u(2)とすれば 

.T <0|[{μ()(ν×~)()}|0 

=-(μν-pμν/2)(2) となります。 

(証明終わり)
 

 0 → ±∞で, 

μ~() (1+u){μγ~()}.., 

となる,という論議に戻ると, 

[i,χ()]=γ(),{i,γ~()}iβ() 

でしたが,これはγ~()がBRS親粒子であることを 

意味しており, 

{,μ()}(1+u){μβ()}. 

が従います。
 

そこで,Maxwell方程式:  

gJμ=∂ννμ{,μ~} 

{,μ()}には,実際に零質量の粒子: 

β()が重み(1+u)で効いていることが 

わかります。
 

Maxwell方程式が結び付けるHeisemberg演算子: 

μ,ννμ,{,μ~}は皆同じ量子数 

を持つ演算子ですから,{,μ()}に存在 

する零質量1粒子状態:μβ(),一般に 

(特殊な理由がない限り)μにも∂ννμにも 

ゼロでない重みで含まれます。
 

0 → ±∞で, 

μ() → v{μβ()}..,および, 

ννμ() → w{μβ()}..,と書けば 

Maxwell方程式は,係数行列が 

gv=w(1+u)を満たすことに等価です。
 

結局,カラー対称性が自発的に破れていなければ, 

NoetherカレントJμには,たまたま,, 

{,μ()}の寄与:(1+u),ννμ 

の寄与:が相殺しない限り,零質量状態:μβ 

が寄与することが示されました。
 

この事実は,カラー対称性が,ほとんど常に自発的に破れている 

ことを意味するのでしょうか? 

しかし,これは明らかに馬鹿げた結論です。
 

この難題(puzzle)を解く鍵は,既にずっと以前に述べたように 

Noetherカレントの定義の不定性にあります。
 

Noetherの定理で求めた保存カレント:μには常に,任意の局所的 

反対称テンソル:[μν]4次元発散:ν[μν]を付加 

してもよいという不定性が存在し, 

保存則:μ{μ+∂ν[μν]}0,電荷が元の変換 

の生成子になるという性質: 

∫d3i[0()+∂[0](),Φ()]=δΦ() 

も共に,不定項:ν[μν]の存在如何によらず成立する 

ということを思い起こします。
 

実際,上の式では積分:∫d3の前に交換関係を計算する 

形なので,[[0](),Φ()],x=yの近傍にのみ 

台を持つ空間全微分項であるため,∫d3によって寄与は 

ゼロです。
 

しかし,交換関係を取る前に3次元空間積分: 

Q=∫d3{j0()+∂[0]()}が存在して, 

無矛盾なQを与えるかどうか?という今の問題にとって 

∂f[0μν項は全くの不定項というわけではなくなります。
 

むしろ,上記積分値が存在して無矛盾になるようにf[0μν 

選ぶべし.という制限が付くことになります。
 

すなわち,「初めにとったカレントjμ()に零質量1粒子 

状態の寄与がある場合は,その1粒子状態の寄与を∂[μk] 

項が相殺するようなf[0ν]()を選択しなければならない。」 

という制限です。
 

この制限が満たされるf[0ν]であれば,これをどう選んでも 

Qには零質量1粒子状態は効きません。 

それ故,[μk]μ()の零質量1粒子状態を相殺 

できないような場合があれば,それが実際に対称性が 

自発的に破れる場合に相当するわけです。
 

カラー対称性の場合は,先に, 

μ(ν×νμ)+jμ(ν×) 

i(~×Dμ)a  で与えたNoetherカレント:μ 

は一般に,ννμ{,μ~}と同じく素4重項 

メンバーの零質量粒子:β()の寄与を,実際に 

μ → v{μβ}..,の形で含んでいます。
 

そこで,上の一般的議論から,もし,ある添字aのカラー対称性 

が本当に自発的破れを起こしていないのであれば,ある局所的 

反対称テンソル:[μν]()が存在して,ν[μν]()の中 

の零質量粒子:β()の寄与がJμ()の中のそれと相殺する 

はずです。
 

それ故,=∫d3{J0()+∂[0]() 

が無矛盾なカラー電荷演算子を与えることになります。
 

このことは,実際,例えば群Gの全てのカラー対称性が 

破れていない場合には係数行列が全て,=uδ, 

=vδ,=wδのように対角行列で, 

[μν]Yang-Mills場の場の強さ:νμに比例した 

形のf[μν]()=-ωFνμ(),ω=v/uに取って 

おけばいいです。
 

もちろん, これは-ωFνμでなくてもそれと同じ 

量子数を持った∂μν-∂νμ(μ×ν)など 

を使っても∂μβの寄与があるはずなので,適切な係数 

を掛けて相殺できるものなら,それでもいいです。
 

Higgs現象逆定理
 

[定理];det(+u)0の条件が成立する限り,群Gの 

ゲージ場:μ()のうち,その漸近場のベクトル粒子 

がゼロでない質量を得た(あるいは,より一般には零質量 

ベクトル粒子が無くなった)チャネルの分だけカラ-対称性 

は破れている。
 

[証明] ゲージ場:μ()のうち,零質量ベクトル漸近場 

が存在しないチャネルの群の添字をα,β,..存在するチャネル 

のそれをa^,^..でそれぞれ表わすことにします。
 

このとき,添字αのゲージ場:αμ()はx0 → ±∞で 

αμ() → ∂μχα()+Zαμ().. 

(αは係数)となります。
 

ただし,χα(),先に 

Heisenberg:μ,,μ,~の中に 

0 → ±∞ において,μ() → ∂μχ().., 

() → β()..,μ() → ∂μγ().., 

~() → γ~()..,なる漸近場:(χ,β,γ,γ~) 

が存在する。」 

と書いたときの零質量の素4重項メンバーであり, 

μ(),その他に存在するかもしれない有質量の 

ベクトル粒子固有状態のProca場であり,..,さらに 

存在するかもしれない,今の論議では無関係な有質量 

の漸近場を示しています。
 

ここで重要なのは素4重項メンバーχα()(それ故,その 

相棒のβα())スカラー粒子であるということです。
 

スカラー粒子のχα(),βα()から作られる反対称テンソル: 

μ(νχα)-∂ν(μχα)はゼロですから,これはFμν() 

であろうが,μν-∂νμ(μ×ν)であろうが, 

任意の反対称テンソル局所場:[μν]()に対し.決してその 

零質量漸近場として寄与できません。
 

そこで,修正Noetherカレントの不定項:ν[μν]()にも, 

そのようなスカラーのχα(),βα()は現われ得ません。
 

これに反して,もしも零質量のベクトル粒子漸近場が存在する 

チャネル:^μ()ならば,前にも少し述べたように,χ^() 

はスカラー場ではなく,^μ()の零質量ベクトル漸近場: 

^μ()の縦波モードです。 

このとき,^μ()のスカラーモードがβ^()です。 

そして(μ^μ=-αB^ etc.から) 

一般に,μ(ν^ν) ∝ □a^ν ∝ ∂μβ^となります。
 

そこで,^μ,α^μνのような反対称テンソル:α^[μν] 

に対し,0 → ±∞ の極限で, 

α^[μν] → c^(μ^ν-∂ν^μ)... (^は定係数) 

の形での寄与が可能となり,0 → ±∞ の極限で 

να^[μν] → c^{μ(ν^ν)-□a^μ}... 

=c^μβ^...のように,零質量素4重項状態:β^ 

寄与できることになります。
 

すなわち,任意の反対称テンソル場の発散: ν[μν] 

効き得る零質量1粒子β^,零質量ベクトル粒子:μ 

存在するチャネル:a=a^のみとなります。
 

零質量ベクトルが無くなったチャネル:a=αには零質量 

1粒子;βαは出現しません。
 

このことは特に場の強さ:αμνにも当てはまるため, 

α0であって,gvα=-(1+u)αとなり, 

de(1+u)0 の仮定から,α0となる独立な 

チャネルが零質量べクトルの無くなったチャネルの 

個数だけ存在することがわかります。
 

すなわち,このチャネルの個数をnとし,対応する 

NoetherカレントをJαμ(α=1,..)と書けば, 

0 → ±∞において, 

αμ()→vαβμββ()+vα^μβ^().. 

 de(αβ)0 ということです。
 

しかも,零質量の∂μββ(),任意の∂να^[μν]の中 

には現われ得ないので,この不定項でJαμ()の零質量項 

を相殺できません。.
 

そこで,結局,このn個のチャネルではカラー対称性が自発的 

に破れています。  (証明終わり) 

(↑※最後は少しクドかった,ですね。。。)
 

最後に,この定理に関わるコメントを二,三加えておきます。
 

()定理の結論にある対称性の自発的破れに対応するn個の 

チャネルは,0 → ±∞で零質量ベクトルが無くなり,例えば 

有質量ベクトル場が現われるような場合で,そのNGボソンは 

4重項メンバーのχα()です。
 

実際,[χα(),ββ()]iδαβ(x-y)より, 

0|[αμ(),χβ()]|0>=iδαβ(x-y)が従う 

ことからも納得できます。
 

例えば,SU(2)Higgs-Kibblle模型の例では.0 → ±∞で 

μ() → M-1a∂μχas ()+M-2b∂μas() 

+Z31/2asμ() ,χ () → Zπ1/2χas(), 

() → Z1/2as()=β()でした。 

(左辺の添字:HはHeisenberg場の意) 

そこで,χ ()= M-1aχas ()+M-2bBas() 

と同定できて,χ ()は確かにHiggs2重項のNG場成分 

であるχ ()の漸近場χas ()と本質的に同じです。
 

()定理の条件:det(1+u)0 QEDなど,可換群:[(1)] 

に基づくゲージ理論の場合,構造定数がfabc0ですから 

μ×0よりu=0となって恒等的に満たされます。
 

また,=O()=O()ですから,非可換ゲージ理論 

でも摂動論の枠内では常に満足されます。
 

()この定理にとっては,零質量ベクトル粒子の漸近場が 

無くなることだけが重要で,有質量ベクトル粒子の質量が群 

Gの多重項内で縮退していようが,いまいが,大局的ゲージ 

対称性は必ず破れているということを証明しています。
 

途中ですが,今日はここまでにします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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2018年3月24日 (土)

訃報!! 内田康夫さん。

推理小説家の巨匠内田康夫さんが去る3月13日敗血症のため,亡くなられたそうです。

享年83歳でした。

NHKニュース → 作家の内田康夫さん死去「内田康夫」の画像検索結果

ウン十年前,デビュー作「死者の木霊」(ししゃのこだま)を読んで以来,百冊以上もお世話になった軽井沢のセンセです。

 2006年11/9の過去記事:「思い出し泣き 」をも参照されたい。。

 

最後が数年前、NONブックで中原中也が題材の「汚れっちまった道」を買って,目が悪くて途中で挫折しています。

 サザエさん一家と同じく何十年たっても年をとらず,万年,刑事局長の弟のフリーライターで33歳独身のままの浅見光彦探偵活躍の殺人事件ばかりです。読み始めて3年くらいで私のほうが年齢を追い越してしまいました。

私には,竹村警部が主役のデビュー作が最高でした。

近年,明智光秀と天海僧正が主人公の歴史小説「地の日・天の海」を書かれた以外は推理小説 ばかり。。。B級小説として楽しめる入院の友でしたが。。。

お疲れ様でした。

 ご冥福をお祈りします。合掌!!

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2018年3月22日 (木)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(14)

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(13) 

からの続きです。
 

対称性の自発的破れと共に出現する零質量のNGボソンが, 

零質量のゲージ場と共に,Higgs粒子を伴なって有限質量を  

獲得する,というHiggs現象の続きです。

   宇宙ができたとき,1点からビッグバン開始した頃,宇宙を  

構成する全ての粒子は零質量であり,高温で高密度の火の玉, 

あるいはブラックホールのような点,といっても質量がない  

ので質量と等価な巨大なエネルギーの密度という形態です。

膨張と共に温度が下がってゆき、現在のように絶対約3度 

になるまでのいつかの時点で,空間に不均等性ができて, 

対称性が破れます。
 

高温の溶鉄が冷えて,偶然,ある不均等な方向にスピンが 

揃って磁気が生じるような固体金属中の自発的対称性の破れ 

に類似した作用で,宇宙にエントロピー増大に逆らう意味の 

特性が生まれますが。Higgsメカニズムもその一環です。
 

膨張で宇宙が冷えてゆく過程で質量を持つ粒子が出現し, 

宇宙の中に存在する物体質量の起源となったのでしょう。
 

人を含む生命の発生,進化もまた,完全に無秩序で対称な状態 

へと向かおうとする自然なエントロピー増大に逆らう対称性 

の破れ,部分的エントロピーの減少効果です。

  さて,本題です。

※SU(2) Higgs-Kibble模型 

ゲージ群が可換群U(1)の場合でなくとも本質的に同じ 

現象が起こります。ここでは最も簡単な非可換群の場合 

の例としてSU(2) Higgs-Kibble模型を見ておきます。
 

そのLagrangian,元のHiggs模型のφがSU(2)2重項 

の複素場:Φ=[φ1,φ2],電磁場;μがSU(2)3重項 

Yang-Mills:μ=Σ=13aμ(τa/2)(τa:Pauli行列) 

,それぞれ置き換えられたもので与えられます。
 

(1/4)μνaμν(μΦ)μΦ+μ2ΦΦ 

(λ/2)(ΦΦ)2 です。 

ただし,μν=∂μν-∂νμ-gfabcμν 

μΦ={μigAaμ(τa/2)}Φ です。
 

ΦはHiggs2重項と呼ばれます。 

Φ()[φ1,φ2] 

(1/2){v+ψ()iχ()τ}[0,1] 

(1/2)[-χ2()-iχ1(),v+ψ()+iχ3()] 

と置きます。ψ,χ[χ1,χ2,χ3]は実スカラー場とします。 

(※τ[τ1,τ2,τ3]Pauli行列です。 

ττ=δabiεabcτ0でが成立します。)
 

真空期待値は,0|ψ()|0>=<0|χ()|0>=0, 

であり,0|Φ()|0>=[0,/2]です。
 

 ΦΦ=(1/2)[-χ2+iχ1,v+ψ-iχ3] 

×[-χ2-iχ1,v+ψ+iχ3] 

(1/2){χ2+(v+ψ)2}
 

故に,μ2ΦΦ-(λ/2)(ΦΦ)2  

(μ2/2){2+ψ22vψ+χ2}

(λ/8){2+ψ22vψ+χ2}2 

=-(λ/8)(ψ+χ2)2(1/2)m√λ)ψ(ψ+χ2) 

(1/2)2ψ2+V0[/2)]です。
 

ただし,22μ2であり,0|Φ()|0>=[0,/2] 

でv/2(μ2/λ)1/2より,2λ=2μ2=m2なので 

μ2/2(λ/8)220,μ2/2(λ/8)42=-(1/2)2,  

かつ,vλ/2(2λ)1/2/2(1/2)m√λ です。
 

また.-V0[/2](1/2)μ22(λ/8)4 

です。
 

Φ=(1/2)(v+ψ-iχτ)[0,1]より, 

μΦ={μigAaμ(τa/2)}Φ 

(1/2){μψ-i(μχ)τ}[0,1] 

(1/2)(i/2)gτaaμ(v+ψ-iχτ)}[0,1]
 

故に,μΦ 

(1/2)[μψ-i(μχ)τ 

(1/2){gAaμ(v+ψ)τ}(1/2)gAaμχ 

(1/2)gεabcaμχτ][0,1]
 

(μΦ)μΦ=(1/2)(μψ)2(2/8)(μχ)2 

(1/2)(μχ)(μψ) 

(1/2){μχ(/2)μ(v+ψ)}2 

(/2)εabc(μχ)μτ 

(2/8){μ2χ2(μχ)2}
 

つまり,(μΦ)μΦ=(1/2)(μψ)2 

(/2)μ{χ(μψ)-ψ(μχ)χ×(μχ)} 

(1/2)(μχ-Mμ)2(/2)MAμ2ψ 

(2/8)μ2ψ2(2/8)μ2χ2です。
 

故に, 

=-(1/4)μνaμν(1/2)2(μ―M-1μχ)2 

(1/2){(μψ)2-m2ψ2} 

(/2)μ{χ(μψ)-ψ(μχ)χ×(μχ)} 

(1/2)m√λ)ψ(ψ+χ2)(/2)MAμ2ψ 

(2/8)μ2(ψ2χ2)(λ/8)(ψ+χ2)2 

+V0[/2)] です。
 

ただし,M=gv/2|μ|(g2/2λ)1/2 

としています。
 

このの表式は,/2をeと読みかえれば前のHiggs 

模型のそれと,ほぼ完全に類似しています。
 

類似が壊される唯一の項:(/2)μ{χ×(μχ)}, 

χの運動項:(1/2)(μχ)2と一緒にすれば, 

(1/2)(μχ)(μχ-gμ×χ)(1/2)(μχ)(μχ) 

と書けます。
 

この形は下のFPゴースト運動項との対応で興味深いです。
 

すなわち,Φのゲージ変換はδΦ=-igθ(τ/2)Φなので 

Φ=[φ1,φ2] (1/2)[-χ2-iχ1,v+ψ+iχ3] 

より,δΦ=[δφ1,δφ2]  

(1/2)[-δχ2-iδχ1,δψ+iδχ3]です。
 

そこで,δφ1=-(1/2)(δχ2+iδχ1) 

=-(1/2)(/2)[(v+ψ)θ2(χ3θ1-χ1θ3) 

i{(v+ψ)θ1(χ2θ3-χ3θ2)}]
 

δφ2(1/2)(δψ+iδχ3) 

=-(1/2)(/2)[χ1θ1+χ2θ2χ3θ3 

i{(v+ψ)θ3(χ1θ2-χ2θ1)}] となります。
 

つまり, 

δψ=(-g/2)χθ,δχ(/2){(v+ψ)θχ×θ} 

です。
 

ここで,θをθ()とした局所ゲージ変換; 

δΦ=-igθ()(τ/2)Φでθ()をFPゴースト場: 

()に置き換えることにより, 

δψ=[l,ψ](-g/2)χc, 

δχ[l,χ](/2){(v+ψ)χ×}を得ます。
 

そこでHiggs模型のRξゲージに対応するHiggs-Kibble 

模型でのRξゲージのGF+FPのlagrangian, 

RξGF+FP=-iδ[~{μμαχ(1/2)α}] 

(μμχ)(1/2)α2 

i~{μμ+αM2(/2)αMψ} 

i(/2)αM~(χ×) とします。
 

ただし,μ=∂μ-gμ× です。
 

この局所ゲージ固定段階では,大局的SU(2)ゲージ 

対称性を壊さない,普通の共変ゲージのGF+FP, 

上のRξGF+FPでM=0 としたもの: 

GF+FP=-iδ[~{μμ(1/2)α}] 

(μμ)(1/2)α2i~μμ 

となります。
 

共変ゲージのHiggs-Kibble模型では,真空期待値が 

0|Φ|0>=(/2)[0.1]となることで,大局的ゲージ 

変換群:G=SU(2)対称性が完全に破られることになり, 

dimG=3個のNGボソンが出現します。
 

そして,これが零質量のχ(χ1,χ2,χ3)場に対応します。
 

ψ,χのBRS変換性:δψ=[l,ψ](-g/2)χc, 

δχ[l,χ](/2){(v+ψ)χ×} 

はゲージ固定条件に依らず成立します。
 

さらに,δ~[l,~]iBも加えて,0→±∞ 

の極限をとれば, [l,ψas()]0, 

[l,χas()]=Ma-1as(), 

[l,~as()](3~-1)1/2as() 

となります。
 

何故なら,0→±∞で,~() → Z3~1/2~as(), 

() → Z1/2as() です。
 

そこでU(1)Higgs模型と同じく,(χas,as,~as,as) 

(3組の)BRS4重項となり,物理的空間:physでは 

有限確率で観測されない非物理的モードとなります。
 

物理的モードは質量MのProca:μμ-M-1χ-M-2 

の漸近場:asμと質量mのHiggs粒子場:ψasです。 

これらは,先のHiggs模型のケースと形式的に同じです。
 

元の大局的SU(2)不変性が完全に壊れているのに,壊れた後 

Lagrangian,まだゲージ場:AμやBRS4重項: 

(χas,as,~as,as)のそれぞれを,SU(2)3重項.つまり, 

a=1,2,3の3次元ベクトルとするようなSU(2)対称性を 

持つのは疑問に感じるかもしれません。
 

しかし,確かにこの対称性は存在しますが,これは元の大局的 

SU(2)対称性とは別物であることに注意。。。 

例えばχ=[χ1,χ2,χ3]と書いてO(3)=SU(2)のベクトル 

扱いができても,これはの大局的SU(2)不変性とは無関係 

です。
 

SU(2) Higgs-Kibble模型は,この点でかなり特殊で,実は 

元の大局的SU(2)以外に,もう1つの隠れたSU(2)対称性: 

SU(2)'を持っています。
 

まず,SU(2)の2表現は2表現と同値であり,Φ~iτ2Φ 

が元の2重項場:Φと同じSU(2)変換性を持ちます。 

そこで,SU(2)の基本2表現(2重項場):Φに対し,Φ~ 

SU(2)'の基本2表現(2重項場)とみなすことができます。
 

(14-1):Φ → {1igθ(τ/2)}Φ  

⇒ Φ {1igθ(τa*/2)}Φ* より, 

Φ~ iτ2{1igθ(τa*/2)}Φ 

iτ2Φigθ(τ2τa*τ2/2)iτ2Φです。 

結局,Φ~ {1igθ(τ/2)}Φ~ です。
 

何故なら.τ2τ2.1であり,τ1=τ1. 

τ2=-τ2.τ3=τ3より,τ2τa*τ2=-τ, 

であるからです。  (14-1終わり※)
 

この特殊性のため,Φ2×2行列のスカラー場: 

Φ[Φ~,Φ]を定義すれば,元のHiggs-Kibble 

Lagrangian:(1/4)μνaμν(μΦ)μΦ 

+μ2ΦΦ-(λ/2)(ΦΦ)2 は次のように書けます。
 

すなわち, 

=-(1/4)μνμν+Tr{(μΦ)μΦ+μ2ΦΦ} 

(λ/2){(1/2)r(ΦΦ)}2 です。
 

この形では,行列表現の場:Φ(), 

Φ() → Φ'()=UΦ()-1, 

(ただし,U∈SU(2),-1SU(2)') 

のSU(2)×SU(2)'変換に対して不変であること 

が明白です。
 

この隠れた方のSU(2)',custcdial symmetry 

呼ばれています。
 

Φが真空期待値:0|Φ|0>=(/2)[0.1]を持つ 

とき,0|Φ|0>=(/2)1となり,SU(2)もSU(2)' 

も共に自発的に破れますが,両者で等しい角度の変換を 

行うSU(2)対角は破れずに残ります。
 

先に見出した,残っているSU(2)対称性はこのSU(2)対角 

であると考えられます。
 

すなわちこの模型では, 

「大局的対称性は,G=SU(2)×SU(2)’~SO(4). 

そのうちのSU(2)がゲージ化されており,GがSU(2)対角 

へと自発的に破れている。」 

という命題の成立を示しています。
 

※一般の場合 

大局的対称性群がG=G1×G2×..(iは単純群,またはU(1)) 

となる一般の場合,その因子群Giのいくつかの直積で与えられる 

部分群:I=Gi1×Gi2×..だけが,ゲージ化されて(局所対称性を 

持って)いても,それはGの対称性とは矛盾しません。
 

この場合.Gが,ある部分群:Hに自発的に破れた,とすると, 

一般に,その包含関係は図6.10のようになると考えられ 

ます。このとき,今までの話から次のことが明らかです。


  「G-(I∩H)の部分の生成子に対応したNGボソンは 

物理的零質量粒子になり,I-(I∩H)の部分の生成子に 

対応したNGボソンは非物理的粒子となる。また,少なくとも 

摂動論の範囲ではI-(I∩H)のゲージボソンはNGボソン 

を吸収して有質量ベクトル場となり,(I∩H)のゲージボソン 

は零質量に留まる。」 
 (199932日読了)
 

(※ホーキングじゃないが,49歳から1968歳になっても 

ノートをひっくり返さなきゃわからないほど,頭が耄碌 

してないのは有り難いことです。)
 

途中ですが,今日は,ここまでにします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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2018年3月19日 (月)

なおみちゃん スゴイ!!

ハイチ出身ハーフの大坂なおみ選手がプロテニスツァーで初優勝!!

4大大会に次ぐマスタ-ズ1000のパリバオープンで,ATPランク44位の-大坂なおみが,自分より上のランクのシャラポワや現1位のハレブなどを撃破して優勝しました。 

日刊スポーツニュース →  大坂なおみ ツァ-初優勝「大坂なおみ」の画像検索結果

男子の錦織圭は,優勝回数は多いけれど,それはマスターズ500の大会までで,それより上のグレードの大会では準優勝どまりだったのに, 

なおみちゃん。。いきなり スゴイです。

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2018年3月17日 (土)

訃報!S・ホーキング博士

宇宙論を主とした研究論文で有名なS.ホーキング(Hawking)博士が亡くなられたそうです。

享年76歳でした。

ニュース → ホーキング死去76歳「ホーキング」の画像検索結果

筋委縮症(ALS)で,20代から車椅子で脳波のセンサーで意思表示をするという生活であると昔から聞いていました。

宇宙論は,唯一実証科学なのに,実験ができない考古学のようなもので数学に近いともいえます。

彼やペンローズ(Penrose)のような幾分哲学的な論議は私にとっても,かなり難しいものです。

理論物理学は数式という言語で翻訳てきない部分は難しいですね。

ご冥福をお祈りします。合掌!!

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対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(13)

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(12) 

からの続きです。
 

Higgs現象の共変ゲージでの理解 

まず,GF+FP=-iδ[~(μμ(1/2)αB)]

=B∂μμ(1/2)αB2i~□c 

という普通の共変ゲージの場合を見てみます。
 

(1/4)μν2(1/2)2{μ-M-1(μχ)}2 

(1/2)|(μψ)2-m2ψ2}eμ(χ∂μψ-ψ∂μχ) 

+eMAμ2ψ+(1/2)2μ2(ψ2+χ2) 

(1/2)m√λψ(ψ2+χ2)(λ/8)(ψ2+χ2)2 

-V0[/2]   

+B∂μμ(1/2)αB2i~□c です。
 

これのe~√λでの展開に対する摂動の0 

Lagrangian;0.M=evも0次とみなして, 

0(1/4)μν2(1/2)2{μ-M-1(μχ)}2 

(1/2)|(μψ)2-m2ψ2}  

+B∂μμ(1/2)αB2i~□c です。
 

ここで,μ=Aμ-M-1(μχ)-M-2(μ) 

とおけば,μν=∂μν-∂νμ=∂μν-∂νμ 

であり,(1/2)2μ2+B∂μμ 

(1/2)2|μ-M-1(μχ)}2 

(μ)|μ-M-1(μχ)}(1/2)-2(μ)2 

+B∂μμ ですが,
 

(μ)μ+B∂μμ=-∂μ(BAμ) 

(μ)(μχ)+B□χ=∂μ(B∂μχ) 

 (μ)2+B□B=∂μ(B∂μ).より, 

4次元発散項の寄与はゼロと見なして
 

(μ)μ+B∂μμ0 

-1(μ)(μχ)=-M-1B□χ 

(1/2)-2(μ)2=-(1/2)-2B□B 

とできます。
 

そこで,0(1/4)(μν-∂νμ)2(1/2)2μ2 

(1/2)|(μψ)2-m2ψ2}-M-1B□χ-(1/2)-2B□B 

(1/2)αB2i~□c と書けます。
 

Euler-Lagrange方程式を羅列すると: 

まず,μ{0/(μν)}-∂0/∂Uν0 から, 

-□Uν+∂ν(μμ)-M2ν0を得ますが,この 

両辺に左から∂νを掛けると∂νν0を得るため,
 

μ,(□+M2)μ0,かつ,μμ0を満たす 

モードの,質量MのProca場となります。
 

また,μ{0/(μψ)}-∂0/∂ψ=0 

から,ψは,(□+m2)ψ=0に従う質量:mの実スカラー場 

です。∂μ{0/(μ)}-∂0/∂B=0 からは, 

-1□χ+M-2□B-αB=0, 

μ{0/(μχ)}-∂0/∂χ=0 からは 

-1□B=0 を得ます。
 

同様にして,□c=□c~0 を得ます。
 

よって,Bとχのセクターの運動方程式は, 

□χ-αMB=0,かつ,□B=0 で与えられます。
 

それ故,Landauゲージ:α=0ではχもBも零質量 

スカラー場となります。このχがNG定理で要求される 

1自由度のNGボソンです、
 

これらB,χは自由場なのでそれ自身,くり込み定数を除いて 

漸近場に一致します。つまり,()=Z1/2as() 

χ()=Zπ1/2χas()です。
 

そして,Lagrangian0にM-1B□χの項:非物理的 

スカラー波モード:Bとχの交差項があることは,B粒子 

とχ粒子の計量が反対角であることを示しています。
 

(13-1):0にM-1B□χ=-M-1(μ)(μχ) 

あるので,χの正準共役は,πχ=∂0/(0χ)=M-10 

で与えらます。
 

それ故.[d(,),χ(,)]=Mδ3()であり,故に 

[as(),χas()]0,または,0|{as()χas()}|0 

0 を得ます。これはB,χが反対角計量のBRS2重項である 

ことを意味します。
 

Landauゲージ以外では,□χ≠0,2χ=0より,χは 

零質量のdipole場になります。この場合でも適当にχ 

の粒子モードが定義できて,単なる□χ=0 の粒子モード 

と本質的に変わらないことが示されます。 

(13-1終わり※)
 

また,FPゴースト:,|は零質量です。
 

摂動論においては,これらが漸近場の全てであり, 

高次項を考えてもくり込みの効果があるのみです。
 

すなわち,0→±∞において, 

μ() → Z31/2asμ()+M-1a∂μχas+M-2b∂μas 

ψ() → Z21/2ψas(),()→Z1/2as() 

χ() → Zπ1/2χas(),  

() → cas(),~() → c~as() です。
 

ただし,3,2,πはくり込み定数,,bも適切な定数です。
 

摂動の0次の0におけるM,mの値を予め全Green関数の 

運動量表示の極の位置にとっておき,ゲージパラメータαの値 

も適当なくり込まれたものとしておけば,漸近場:asμ,ψas,as, 

χas,全て,先述の自由場の運動方程式に従う規格化された場 

となります。
 

第5章のゲージ場の量子化で詳述したように,これら漸近場の  

BRS変換則は,Heisenberg場の変換則:[iλQ,Φ()] 

=λδΦ()のx0 → ±∞の極限を取って求めることが  

できます。
 

[i,μ()]=∂μ(), 0 → ±∞で 

[i,31/2asμ()+M-1a∂μχas+M-2b∂μas] 

=∂μas() ですが 

asμは質量MのProca場で,右辺の零質量FPゴーストcas 

とは1粒子極位置が異なるため,[i,asμ()]0 です。
 

また,[i,as()]0 ですから,[i,χas()]0  

が必要です。
 

そして,χasとcasは共に零質量ですから, 

[i,asμ()]0, 

[i,χas()]=Ma-1as(), 

[i,as()]0 と結論されます。
 

この結果,asμはBRS不変な物理的粒子となります。
 

最後の式は,Heisenberg場の段階で∂μ20 により 

()がQと可換だからです。
 

同様に, φ(){v+ψ()iχ()}/2, 

ゲージ変換は,δφ()=-ieθ()φ()より, 

δψ()=-eθ()χ(),δχ()=eθ(){v+ψ()} 

ですが。これのBRS版:θ()→c() ⇔ δ→δから,
 

[i,ψ()]=-ec()χ() [i,ψas()]0,  

そして,[i,χ()]=ec(){v+ψ()} 

[i,χas()](定数)×cas() を得ます。
 

[i,ψas()]0 は,複合場:()χ()のチャネル 

,摂動論の範囲では漸近場(1粒子極)がないからです。 

(※c()χ()は荷電共役偶で,ゴースト数:1という  

量子数を持ちますがそうした粒子は0には存在しません。
 

今の場合,()が自由場で相互作用しないので,これは  

自明です。)

したがって,ψasは物理的粒子であり,(物理的)Higgs粒子 

と呼ばれています。このψas(),前のユニタリゲージ 

ではρ()と記した場の漸近場と同じものです。
 

[i,χas()](定数)×cas() の定数はツリーレベル 

では,ev=Mですがループ効果の補正を受けて,既述の 

[i,χas()]=Ma-1as()のMa-1に一致するものです。
 

最後に. [i,()]0 [i,as()]0, 

 [iλQ,~()]=-iλB() 

 [i,~as()]=-iλZ1/2as()です。
 

以上のBRS変換則により,有質量のUasμ,ψasはBRS1重項 

の物理的粒子で,零質量の(χas,as)(~as,as),それぞれ, 

BRS2重項,合わせてBRS4重項の非物理的モードになる 

ことがわかりました。
 

結局,普通の共変ゲージではNG定理(南部Goldstoneの定理) 

の予言通り,零質量のNGボソン:χasが現われますがBRS 

4重項に属します。そこで,これは,前に一般的に証明した 

4重項機構により,|Phys>=0 で定義される物理的状態 

空間:physには有限な確率で現われることができません。
 

次に,ξゲージの場合を手短かに考察します。
 

この場合のゲージ固定項は,M=evで 

RξGF+FP=-iδ[~(μμ+αMχ+(1/2)αB)] 

=B(μμ+αMχ)(α/2)2 

i~(□+αM2+eαMψ)c です。
 

このとき,運動方程式:/∂B=0 から, 

μμ+αMχ+αB=0 より, 

αB=-(μμ+αMχ)です。
 

この場合,自由項Lagrangian, 

0Rξ(1/4)μν2(1/2)2{μ-M-1(μχ)}2 

(1/2)|(μψ)2-m2ψ2}   

+B(μμ+αMχ)(α/2)2 

i~(□+αM2)+eαMψ)c 
 

(1/4)μν2(1/2)2μ2(1/2)(μχ)2 

-MAμ(μχ)(1/2)|(μψ)2-m2ψ2} 

{1/(2α)}(μμ+αMχ)2i~(□+αM2)cより,
 

0Rξ(1/4)μν2(1/2)2μ2{1/(2α)}(μμ)2 

(1/2){(μχ)2-αM2χ2}(1/2)|(μψ)2-m2ψ2} 

i~(□+αM2)c と書けます。
 

ここで,MAμ(μχ)+M(μμ)=M∂μ(μχ) 

ゼロとして消去しました。また,自由項Lagrangianということ 

から,ゲージ固定項の中の相互作用項:ieαMc~cψを除外 

しました。
 

今度の形では,NGボソン場:χはαM2の2乗質量を持つ 

ようになったことに注意します。
 

つまり,α≠0 では零質量のNGボソンは出現しません。 

しかし,これはNG定理に反しているわけではありません。
 

何故なら,ξゲージはゲージ固定項の中に複素場:φの特定 

成分χをαMχの形で含むため,既に固定項を加えただけの 

段階で(大局的)(1)対称性は破れているからです。
 

そして,このRξゲージの場合の0Rξでも, 

[i,χ()]=ec(){v+ψ()} 

[i,χas()](定数)×cas(), および 

[iλQ,~()]=-iλB() 

 [i,~as()]=-iλZ1/2as()はゲージ 

によらず,前と同じなので,χas,as,~as,as 

共通の2乗質量:αM2を持ったBRS4重項となります。
 

Bを消去した形なのに,asというのは. 

B=-(1/α)(μμ+αMχ)の右辺の含む漸近場 

という意味です。
 

実際,μが2乗質量:αM2のBasやχasを含むことは 

0から決まるAμの伝播関数を計算してみれば,わかります。

 つまり,.T <0|(μν)|0 

[μν(2-M2)-pμν(1-α-1)] -1  

{μν(1-α)μν/(2-αM2)}/(2-M2)  

(μν-pμν/2)/(2-M2) 

(μν/2)/(2-αM2)  

です。

(13-2):0Rξの上でのAμの運動方程式は 

μ{0Rξ/(μν)}-∂0Rξ/∂Aν0 より 

(□+M2)ν(1-α-1)ν(νν)0 です。
 

iΔFμν()=<0|{μ()ν(0)}|0>と置けば2 

Green関数の定義から,これは方程式; 

{(□+M2)gμρ(1-α-1)νρ}ΔFρν()=gμνδ4() 

を満たすべきです。
 

この方程式を運動量p空間にFourier変換すれば 

{(-p2+M2)gμρ(1-α-1)νρ}ΔFρν()=gμν=δμν 

ΔFμν()=-{(2-M2)gμν(1-α-1)νν}-1です。
 

それ故, . i0|(μν)|0>=-ΔFμν() 

{μν(2-M2)-pμν(1-α-1)} -1です。
 

右辺={μν-K(2)μν}/(2-M2)と置けると 

仮定して,こうしてみると 

{μρ(2-M2)-pμρ(1-α-1)} 

[{ρν-K(2)ρν}/(2-M2)] =gμν
 

故に,μν-K(2)μν 

-pμν(1-α-1)/(2-M2) 

+pμν{2(2)(1-α-1)}/(2-M2) 

=gμνです。
 

-K(2)(2-M2)(1-α-1){2(2)(1-α-1)} 

0, 故に,(2-p2α-1)(2)(1-α-1) 

したがって,(2)(1-α)/(2-αM2) です。
 

. i0|(μν)|0 

{μν(2-M2)-pμν(1-α-1)} -1 

{μν-K(2)μν}/(2-M2) 

{μν(1-α)μν/(2-αM2)}/(2-M2)
 

結局,. i0|(μν)|0 

(μν-pμν/2)/(2-M2)

(μν/2)/(2-αM2) 

を得ます。(13-2終わり※)
 

最後の表式:. i0|(μν)|0 

(μν-pμν/2)/(2-M2) 

(μν/2)/(2-αM2) を見れば,右辺第1項が 

質量MのProca場の伝播関数で,それと共に,確かに 

スカラー部分:(νν)に相当して,μνに比例する項 

があり,これにはp2の極:αM2が現われています。
 

したがって,ξゲージでも,通常の共変ゲージと同じく, 

χas,as,~as,asがBRS4重項となって観測されず, 

質量MのProca:asμと質量mのHiggs粒子:ψasのみが 

物理的粒子となりことがわかります。
 

もしも,ξゲージでゲージパラメータ:αを無限に大きく 

するとBRS4重項とに属するの場:χas,as,~as,as 

無限大質量を持つことになって,形式的には全てのFeynman 

グラフから抜け落ちます。
 

この形式的極限:χas,as,~as,as0,ξゲージの 

Lagrangian密度が初め論じたユニタリゲージのLagrangian 

に帰着することは注意に値します。
 

実際の摂動計算はα=1のRξゲージが最も簡単で, 

その場合,ゲージ場の伝播関数は 

.T <0|(μν)|0>=(i)μν/(2-M2) 

となります。
 

これはRξゲージ以前に,t'Hooftにより,初めて 

与えられたので,t'Hooft-Feynman ゲージと呼ばれて 

います。
 

今日は,ここまでにします。 

次回はHiggs-Kibble模型から入る予定です。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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2018年3月12日 (月)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(12)

久しぶりに,「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ) 

の続きです。
 

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(11) 

201712/27にアップして以来,「ゲージ場の量子論(15) 

から「ゲージ場の量子論(34)」まで,BRS変換と,それを 

用いた実際のゲージ場の共変的量子化手法の紹介に寄道を 

していました。ほぼ,3か月間。。。
 

ゲージ固定手法等の必要な知識が揃ったので,Higgs現象の項 

から,参考書第Ⅱ巻(6)の対称性の自発的破れの議論を 

継続再開します。
 

ここまでの詳細は,1弾の 

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(1)」を2017 

8/25にアップしてから,201712/27にアップの第11弾までを 

参照してください。
 

物質場のゲージ変換(位相変換)exp(igθ)で定義 

するか, exp(igθ)で定義するか,に関して,記事に 

よっては差があるかもしれませんが違うのは符号だけなので 

どちらかに統合して読み換えてください。
 

§6.5 Higgs現象
 

素粒子論は,少なくともPoincare'不変性(並進,および, 

Lorentz不変性)を満たす理論ですから,対称性の自発的破れ 

が起これば「南部-Goldstoneの定理」は常に適用できる 

と思われます。
 

しかし,現実において厳密に零質量の粒子として観測されて 

いる素粒子は光子とニュートリノ()しか存在しません。 

(発見されていません。)
 

光子や(未発見の)重力子(graviton)などは,ゲージ場として 

記述される,とされています。確かに,光子,重力子は,それぞれ 

ベクトル粒子,テンソル粒子であり,対称性の自発的破れに伴う 

NGボソンとして理解されています。
 

しかし,ニュートリノについては,スピノル対称性(超対称性) 

に対応するNGフェルミオンと考えると,「低エネルギー定理」 

の予言と矛盾することが確かめられており,NGフェルミオン 

ではなさそうです。(※事実,最近では零質量でもない,と確認 

されているようです。)
 

近似的に零質量の"粒子としてはπ中間子が存在します。

実際,南部-JonaLasinoが素粒子論において初めて対称性の 

自発的破れの概念を提唱し,NGボソンであると指摘 

したのは,π中間子です。
 

事実,π中間子が近似的カイラル対称性の自発的破れに対応 

するNGボソンであることは,その後の1960年代の10年間 

にカレント代数,低エネルギー定理などの多くの成功により 

確かめられ,強い相互作用の解明に多くの寄与をしました。
 

では,この零質量NGボソンの希少性は,対称性の自発歴破れ 

,現実には比較的稀な現象であることを意味しているので 

しょうか?
 

答は否です。実は,「ゲージ理論の場合には対称性の自発歴破れ 

と観測される零質量NGボソンの間に11対応が成立しない。」 

というのが真なのです。
 

ゲージ理論において,共変ゲージの場合には,もちろん, 

対称性が自発的に破れれば,零質量NG粒子が出現しますが, 

「南部-Goldstoneの定理」は,そのNG粒子が正定値な計量 

を持った物理的粒子であること,を主張していません。
 

そして,もしも,それが不定計量を持ち,BRS不変でない 

モードであれば,物理的状態空間;physでは観測されません。
 

他方,Coulombゲージ:0 や時間的軸性ゲージ:00, 

などの非共変ゲージの場合は,正定値計量ですから粒子は観測 

にかかりますが,今度は「南部-Goldstoneの定理」に要求 

される明白なLorentz共変性の仮定が,元から破れているため, 

必ずしも対称性の自発的破れに伴ってNG粒子が出現するとは 

限らないからです。
 

こうした可能性は,Higgs-Kibbleらにより初めて指摘されました。
 

Higgs模型
 

このことを,具体的に示す最も簡単な模型は「Goldstone模型」 

のU(1)対称性をゲージ化して,電磁場を導入する「Higgs模型」 

です。
 

その出発点となるLagrangian密度は, 

(1/4)μνμν(μφ)μφ+μ2φφ 

(λ/2)(φφ)2 です。

ただし,μν=∂μν-∂νμ, 

μφ=(μieAμ)φ です。
 

このとき,単純な「Go;dstone模型」と同様,ここでも, 

ツリーグラフレベルで, 

0|φ()|0>=v/2(μ2/λ)1/2 

となって,ゼロでない真空期待値を生じます。
 

便宜上,複素場φ()のシフトを,以前の, 

φ(){v+ψ()iχ()}/2, 

(ψ(),χ()は真空期待値がゼロの実スカラー場) 

とは少し変更して,極分解(polar decomposition) 

と呼ばれる次の形に取ります。
 

すなわち,φ(){v+ρ()}exp{iπ()/}/2, 

です。(ρ()は真空期待値がゼロの実スカラー場)
 

位相部分:exp{iπ()/},/Hの非線型表現の 

NGボソン場パラメータ化として, 

ξ(π)exp{iπ()/};π()=Σa()πa()a 

としたξ(π),今のG/H=U(1)/{1}に対応するもの 

です。
 

このとき,φの運動項は, 

μφ=(μieAμ)[{v+ρ()}exp{iπ()/}]/2 

exp(iπ/)/2 [μi{μ-∂μπ/(ev)}](v+ρ)}] 

なので,(μφ)[μi{μ-∂μπ/(ev)}](v+ρ)} 

×exp{iπ()/}/2であり,μφ={exp(iπ/)/2} 

×[μi{μ-∂μπ/(ev)}](v+ρ)}]です。
 

それ故,(μφ)μφ=(1/2)μρ∂μρ 

(1/2)2(ρ+v)2{μ-∂μπ/(ev)}{μ-∂μπ/(ev)} 

です。
 

そこで,φφ=(1/2)(ρ+v)2より, 

μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

(μ2/2)(ρ+v)2(λ/8)(ρ+v)4 

(μ2/2)ρ2(μ2/2)2+μ2vρ 

(λ/8)(ρ44vρ362ρ243ρ+v4) 

(μ2/23λv2/)ρ2(λ/8)ρ4(λv/2)ρ3 

(μ2v-λv3/2)ρ-V0[/2]
 

ただし,-V0[/2](1/2)μ22(λ/8)4 

です。
 

v=(2μ2/λ)1/2|μ|(2/λ)1/2なら,μ2v-λv3/20 

,μ2/23λv2/4=-μ2より,22μ2=λv2とし, 

M=ev=|μ|(22/λ)1/2とおけば,
 

(1/4)μν2 

(1/2)2{(1+eρ/)2{μ-M-1(μπ)}2 

(1/2)|(μρ)2-m2ρ2}-m√λρ3(λ/8)ρ4 

-V0[/2] です。
 

さらに,μ=Aμ-M-1(μπ)と定義します。 

すると,μν=∂μν-∂νμなので, 

(1/4)(μν-∂νμ)2(1/2)2μ2(1+eρ/)2 

(ρ場の項)となり,π()は完全に姿を消します。
 

しかもベクトル場:μは質量:Mを獲得しています。
 

これをHiggs現象(Higgs-Mechanism)といいます。
 

この現象をもう少し詳しく見てみます。
 

まず,φ=(v+ρ)exp(iπ/)/2 (v+ρ)/2, 

および,μ → Aμ-M-1μπ=Uμの変数変換はゲージ 

パラメータ:θ(),-数の場;-1π()と置いた. 

"q-数ゲージ変換”になっていることに注意します。
 

すなわち,零質量のベクトル場:μがNGボソン場:πを 

吸収して質量Mを持つベクトル場(Proca):μになった 

のです。 

((1/4)(μν-∂νμ)2(1/2)2μ2 

で記述される有質量ベクトル場をProca場と呼びます。)
 

ここで,電磁相互作用を切ったとき,つまり,e=0としたとき: 

e≠0の物理的粒子の自由度の収支を勘定すれば,次のように 

なっています。
 

M=evですが,e=0では,零質量のAμ(2自由度),零質量 

のπ(1自由度),零質量のρ(1自由度)であったのが,e≠0 

では,質量MのUμ(3自由度),質量mのρ(1自由度)となって 

います。
 

スピンが1の物理的モードは零質量のときはHelicityが±1 

の2自由度しかないですが,質量を得ると静止系も存在して 

モードが1,0,1の3自由度になることで,不足している 

自由度は,NGボソン場:πにより供給されます。
 

e≠0では,は既にゲージ不変ではなくρ()やUμ() 

謂わゆるゲージが固定された場です。
 

それ故,ρやUμのみで表わされたLagrangian密度は,ある種 

のゲージ固定化がなされたものであり,通常,それをユニタリ 

ゲージと呼びます。
 

ユニタリゲージは理論の物理的内容が明白でよいのです 

Proca場の伝播関数:(μν-kμν/2)/(2-M2) 

紫外部:k→∞での挙動が悪いため,理論がくりこみ不可能 

です。
 

そこで,くりこみ可能な共変げ-ジの同じ理論に考え直します、

※くり込み可能共変ゲージ
 

複素場;φのパラメータ化として,上の極分解の代わりに, 

先に「Goldstone模型」で取った分解を用います。
 

すなわち,φ(){v+ψ()iχ()}/2とします。
 

このとき,μφ=(μieAμ)(v+ψ+iχ)/2 

[μψ-i{eAμ(v+ψ)+∂μχ}+eAμχ]/2 

(μφ)[μψ+i{eAμ(v+ψ)+∂μχ} 

+eAμχ]/2より,

(μφ)μφ2(1/2)[(μψ+eAμχ)(μψ+eAμχ) 

{eAμ(v+ψ)+∂μχ}{eAμ(v+ψ)+∂μχ}] 

(1/2)(μψ2)2eμ(χ∂μψ-ψ∂μχ) 

(1/2)2μ2χ2(1/2)2μ2ψ2

(1/2)2(μ+M-1μχ)2+eMAμψ(μ-M-1μχ)

です。
 

一方,φφ=(1/2)(v+ψ)2(1/2)χ2 

(1/2)(ψ2+χ2)+vψ+(1/2)2より, 

(φφ)2(1/4)(ψ2+χ2)2+v2ψ2(1/4)4 

(1/2)2(ψ2+χ2)+vψ(ψ2+χ2)+v3ψ 

です。
 

μ2=λv2/2,22μ2ですから,v=m/√λ 

,λv=m√λであり,μ2(λ/2)30, 

(λ/2)2ψ2=-(1/2)2ψ2 です。
 

それ故,μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

=-(1/2)2ψ2(1/2)m√λψ(ψ2+χ2) 

(λ/8)(ψ2+χ2)2―V0[/2] を得ます。
 

ただし,-V0[/2](1/2)μ22(λ/8)4) 

です。
 

そこで,Lagrangian密度は, 

(1/4)μν2(1/2)2{μ-M-1(μχ)}2 

(1/2)|(μψ)2-m2ψ2}eμ(χ∂μψ-ψ∂μχ) 

+eMAμ2ψ+(1/2)2μ2(ψ2+χ2) 

(1/2)m√λψ(ψ2+χ2)(λ/8)(ψ2+χ2)2 

-V0[/2] と書けます。
 

この時点では,ゲージ固定がなされていないので, 

ゲージ固定処方に従って,この0, 

GF+FP=-iδ[~(μμ(1/2)αB)] 

=B∂μμ(α/2)2i~μμ 

を付加したものを改めてとします。 

これは普通の共変ゲージ条件です。
 

この可換群:()に基づくHiggs模型では,この共変 

ゲージの場合,FPゴースト:,~は全くの自由場 

となりますから,必ずしも導入の必要はありません。
 

上のGF+FP=-iδ[~(μμ(1/2)αB)] 

=B∂μμ(α/2)αB2i~μμ 

とは別の,ξゲージと呼ばれる便利な共変ゲージ 

があります。
 

まず,Lagrangian密度:0の第2項にゲージ場:μ 

とNGボソン場;χの遷移項:MAμμχがある 

ことに注意します。
 

遷移項があると場の混合が起こり面倒ですから, 

ゲージ固定項をうまくとって,これを相殺すること 

を考えます。
 

複素場:φ()のゲージ変換:δφ=-ieθ()φ(), 

φ(){v+ψ()iχ()}/2 により, 

成分場:ψ(),χ()に対して,δψ=-ieθ()χ(), 

δχ=-ieθ(){v+ψ()}と分解されます。
 

ところが,BRS変換:δはこの式でθ() → c() 

とするものです。
 

ゲ-ジ固定項を次のようにとります。 

RξGF+FP=-iδ[~(μμ+αMχ+(1/2)αB)] 

=B(μμ+αMχ)(α/2)2 

i~(□+αM2+eαMψ)c とします。
 

最後の変形では,ev=Mを用いました。
 

NL場:BをGauss経路積分,または運動方程式を 

用いて消去します。 0 RξGF+FP=に 

対する運動方程式:/∂B=∂μμ+αMχ+αB 

0 から,B=-(1/α)(μμ+αMχ)より, 

RξGF+FP=-{1/(2α)}(μμ+αMχ)2 

i~(□+αM2)c+ieαMc~cψ  

となります。
 

そこで,μとχの交差項:Mχ(μμ)が現われるため, 

これと,0の遷移項:MAμμχと合わせて,全微分項 

4次元発散項:M∂μ(χAμ)=MAμμχ+M∂μ(χAμ) 

となって作用積分では,これらは落ちることになります。
 

このRξゲージでは,たとえ可換群U(1)の場合でも 

FPゴーストがc~cψの相互作用項を持つので,もはや 

落とすことはできない,というデメリットはありますが。。
 

途中ですが,今日はここまでにします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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2018年3月 8日 (木)

ゲージ場の量子論(34)(完了)

「ゲージ場の量子論(33)」からの続きです。 

このシr-ズ記事は,これが最後です。
 

§5-11物理的S行列のゲージ固定非依存性 

理論のBRS不変性は,一方では既に示したように物理的S行列 

のユニタリ性を保証しており,同時に,他方では理論の物理的内容 

がゲージ固定条件の選び方に依らない,ということを保証します。
 

物理的内容とは,特に散乱理論の枠内では物理的S行列,それ 

以外では観測可能量の期待値などです。
 

※Green関数のゲージ固定依存性 

まず,LSZ公式でS表列を計算するのに必要なGreen関数が, 

どのようにゲージ固定条件に依存しているのかを明らかに 

します。ゲージ場,物質場からFPゴースト場まで,全ての 

Heisenberg場をまとめてΦi()と記すことにすれば, 

任意のGreen関数は,()(1,..,)=<0|{Φ1Φ2..Φ}|0 

=N∫DΦ{Φ1Φ2..Φexpi[Φ]} で与えられます。
 

作用積分:[Φ]には,ゲージ固定項,およびFPゴースト項も 

含まれており,それらは,iδ(~)なる形を持ちます。∫d4GF+FP=∫d4{iδ(~)}です。 

はゲージ固定関数で,先の議論で採用したクラスの共変ゲージ 

では,=∂μμ(1/2)αBでした。
 

今ゲージ固定関数を, からF+ΔFに無限小だけ変化させた 

とすると作用積分:[Φ]の変化は, 

ΔS=∫d4{iδ(~ΔF)}=∫d4{,~ΔF} 

です。
 

したがってGreen関数の変化は,Δexpi[Φ]=ΔSexpi[Φ]より, 

ΔG()=<0|{{,~ΔF}Φ1Φ2..Φ}|0 

=Σj=1n()Sj0|{(~ΔF)Φ1..Φj-1(δΦj)Φj+1..Φ}|0 

ただし,

j=Σi=1j-1|i|であり,~ΔFは∫d4{~()ΔF() 

の略記です。
 

これはFeynmanグラフでは図5.18のように表わされます。
 

ただし,2項の図は,Φjがゲージ場:μのときのみ 

現われるもので,δμ=∂μ-g(μ×) 

μの寄与を示しています。
 

特に2点関数:(2)の場合の図は図5.19となります。
 

この場合,BRS変換を受けていない方の脚の2点関数 

を陽に取り出して描きました。例えば,5.192番目 

の図では,aから右は1の足に関しては1粒子既約グラフ 

です。2点より先のc~ΔF頂点を含んだ点2までの 

グラフの寄与を運動量表示でΔζj(2)と書くことに 

します。
 

種類jの場の2点関数:j(2)(2)は質量殻近傍でのくりこみ 

定数をZjとしてGj(2)(2) i j/(2-mj2)の形をとるため, 

ゲージ関数がF+ΔFの理論の2点Green関数:j(2)+ΔGj(2) 

,5.19より,質量殻近傍で, 

(j(2)+ΔGj(2))(2) i( j2jΔζj)/(2-mj2) 

で与えられます。 

ただし,Δζj,2=mj2におけるΔζj(2)です。
 

jΔζj2が掛かっているのは,5.192つの図が同じ 

寄与を与えるからです。
 

{ j1/2(1+Δζj)}2=Z j2jΔζj)+O(Δζj2)を考慮する 

,がF+ΔFに変わったときHeisenberg場のくり込み; 

Φj=Z1/2ΦjRenの因子が,1/2 → Z1/2(1+Δζj)と変化 

したことを意味します。
 

上では,Δζj(2) のp2=mj2での値が存在する,と仮定 

しましたが,実は発散する場合もあります。 

例えば,物質場:φjの場合,δφj=-i()jkφは普通 

FPゴースト数:FP=と,物質場φの運ぶ何らかの保存量子数 

を同時に持つ複合Heisenberg場ですから,新たな結合状態が 

作られない限り,Δζj(2)は粒子の極を持たず問題ないです。
 

しかし,例えば,対称性が自発的に破れたような場合には,物質場 

のある成分:φは真空と同じ量子数しか持たないということが 

あります。
 

そのような場合,複合場:δφj=-i()jkφがFP 

ゴースト1粒子状態とつながり,Δζj(2)はFPゴースト 

質量殻:2=mFP2の近傍で, 

Δζj(2) ~ Δζ~(1i3~)ω~(1)/(2-mFP2) 

のように挙動します。ただし,Δζ~,ω~は図5.20に示した, 

それぞれの部分グラフの振幅:Δζ~(2),ω~(2) 

2=mFP2における値です。
 

ここで1つ重要な点は,φj粒子の質量:はFPゴーストの 

質量:FPに一致しなければならないことです。 

つまり,=mFPです。
 

何故なら,:φjのBRS変換;[i,φj()]δφj() 

の右辺の複合Heisenberg:δφj(),5.20の点b 

より右の部分のグラフ(2点関数<0|{~δφj}|0>に相当) 

にFPゴースト1粒子極を持つことから,0→±∞の極限で, 

ゴースト漸近場:as()になります。 

0→±∞でδφj() → Z3~1/2ω~as()です。
 

そこで,[i,φj()]δφj()の両辺が無矛盾である 

ためには,左辺のφj()もまた,必ず,右辺のcas()と同じ 

質量:FPの漸近場:φjas()を持たねばなりません。
 

すなわち, 

0→±∞の極限で,[i,φjas()]=Z3~1/2ω~as() 

を得ます。この式は,(φjas,as)がBRS2重項を成すこと 

を示しています。
 

このような場合には,ゲージ固定関数がF+ΔFになった 

理論でのφj場の2点Green関数が,質量殻:2=mj2=mFP2 

の近傍で,(j(2)+ΔGj(2))(2) 

  i{ j/(2-mj2)}{123~ω~Δζ~/(2-mj2)} 

なる挙動をすることになります。
 

ここで,無限小補正項:ΔGj(2)2次の極を持つということは 

φj2乗質量:j2,j2 → mj2+Δmj2,Δmj2=Z3~ω~Δζ~ 

だけシフトすること,を意味します。 

(※何故なら,i{ j/(2-mj2)}{123~ω~Δζ~/(2-mj2)} 

i{ j/(2-mj2)}/{123~ω~Δζ~/(2-mj2)} 

i j/(2-mj223~ω~Δζ~) であるからです。)
 

このようにゲージ固定条件を変化させたときに質量が変化する 

のは,BRS4重項粒子=非物理的モードのみである.という点 

が重要です。
 

対称性が自発的に破れた場合に相当する上の例では,確かにφj 

粒子は「素FPゴースト粒子」:asとBRS2重項を組んで 

いました。一般にも,ある粒子;φjの質量がゲージ固定の変化で 

ずれるためには,ΔGj(2)2次の極,したがって,5.19 

Δζj(2)1次の極が現われる必要があります。
 

上の例では,このΔζj(2)の極は図5.20の「素FPゴースト」 

の極で供給されましたが,一般には必ずしもそうではなく,新たな 

結合状態による極であってもいいです。
 

しかし,とにかくΔζj(2)に極が出るということは,複合Heisenberg 

:δφjに漸近場が現われることを意味し,そのことはBRS変換: 

[i,φj()]δφj()の整合性からφj粒子とδφjチャネル 

の結合状態粒子が2重項粒子になること,を意味します。 

よって,次の重要な結論に到達します。
 

「BRS1重項粒子の質量は,ゲージ固定条件を変えても変化

しない。」 (※非可換ゲージ理論では1重項粒子はゲージ場:

μの横波モードと物質場で与えられ,他方,2重項(4重項)

粒子はAμの縦波・スカラーモード,FPゴースト,反ゴースト

で与えられました。)

5.19では,場がゲージ場:μδμ(非斉次項+∂μ) 

グラフを省略しましたが,項∂μ{-g(μ×c)}も共に図5.20 

の形のFPゴースト1粒子の極のグラフを持ちます。
 

しかし,それらは,0|(μν)|0>のpμν項にのみ寄与 

するため,物理的横波モード(1重項)部分に間しては質量は変化せず, 

くり込み定数が,1/2 → Z1/2(1+Δζj)で示されるだけずれる 

という先述の議論は,このゲージ場の場合には正しいです。
 

※物理的S行列のゲージ固定非依存性 

くり込まれたHeisenberg場のGreen関数から,S行列 

を得るには,LSZの公式で与えたように, Green関数の 

各外線jに,運動量表示でKlein-Gordon演算子:ij(2) 

(i)(2-μj2),または,Dirac演算子:(i)j() 

(i)(-mj)を掛けた後,運動量pを質量殻上に置き, 

次の適切な偏極波動関数を掛ければいいです。
 

すなわち,{(2π)32j}-1/2εj(j)を掛けるのですが, 

この値は,具体的には,{(2π)32ω}-1/2ε(σ)μ(),または, 

{(2π)-3/p}1/2εu(,) etc. を意味します。 

しかし,今のように,くり込まれていないHeisenberg場の 

Green関数の場合は,さらにくり込み因子:j1/2で割る必要 

があります。すなわち,n外線粒子のSは, 

()=Πj=1[j-1/2{(2π)32j}-1/2εj(j)j(j2)]()|j2=mj2  

です。以下では外線が全てBRS1重項粒子の物理的S行列 

を考えます。
 

ゲージ固定関数をFからF+ΔFに無限小変化させたとき, 

上記S行列要素の変化)の源はG() の変化とZjの変化の両方 

です。
 

ΔS()

=Πj=1[j-1/2{(2π)32j}-1/2εj(j)j(j2)]ΔG()|j2=mj2  

-Σj=1{j-1/2(ΔZj )1/2}() です。
 

右辺第1項のΔG()には,5.18のグラフが効くのですが,この式 

では各外線kの脚に,元のΦk粒子と全く同じ質量の場所:k2=mk2 

1粒子極を持つグラフのみが,ゼロでない寄与で効き得ます。
 

しかも,ΔG()=<0|{{,~ΔF}Φ1Φ2..Φ}|0 

=Σj=1n()Sj0|{(~ΔF)Φ1..Φj-1(δΦj)Φj+1..Φ}|0 

において,BRS変換を受けた唯一の脚が物質場:Φj=φjなら 

δφjはFPゴースト場:とφjとの複合場ですから,一般に 

上式の(~ΔF)頂点とくっついた後,,元の粒子:φjに戻ると 

いう図5.21のタイプのグラフだけが,k2=mk21粒子極を 

作り得ます。
 

しかし,もしも,結合状態(束縛状態,or共鳴)ができるなら,φj 

に戻らないグラフでも粒子極が現われることがあります。でも, 

その場合は,(φjas,(δφj)as)がBRS2重項粒子となるため, 

今の外線が全て物理的1重項のS行列の議論からは除外 

されます。(※例えば,asoutなら外線のoutとの振幅は 

BRS2重項から1重項への遷移がないので,ゼロです。)
 

同様に,δΦjのΦjがゲージ場;μの場合は,δμチャネル 

でFPゴースト1粒子極が効く部分はpμに比例するため,それは 

物理的モードを取り出すS行列外線に掛かっている横波偏極の 

ベクトル因子:ε(±)μ()と直交し,με(±)μ()0 によって 

落ちます。
 

結局,5.21のグラフのみが効くことがわかりましたが, 

このグラフのδφj,~ΔFと結合する部分のグラフは 

φ粒子の2点関数の図5.19のΔζj部分と同じですから, 

より明らかに,ΔG()|極部分(Σ=1nΔζj)()です。
 

よって,ΔS()の式右辺に代入すると, 

ΔS()[Σ=1n(Δζj-Z-1/2ΔZ1/2)]() を得ます。 

ところが,1/2 → Z1/2(1+Δζj)よりΔZ1/2 =Z1/2Δζj) 

ですから,結局,ΔS()0 となります。
 

したがって,Green関数の段階での変化は物理的S行列では全て 

吸収,相殺されて,「物理的S行列はゲージ固定条件の取り方には 

一切影響を受けない。」ことが証明されました。
 

※観測可能量の期待値 

前節で定義した観測可能量Aの物理的状態での期待値がゲージ 

固定条件に依存しないことも同様に示すことができます。
 

まず,物理的状態としてBRS1重項モードのみで構成した任意 

incoming状態:|α;n>と,outgoing状態:|β;out>を取った 

場合の期待値:()=<β;out||α;n>を考察します。
 

Aは時間に関しては有限領域内の演算子としておきます。 

そうすれば,この量S()は単に「演算子Aを挿入された  

S行列要素」と見なせます。
 

そこで,前のS行列要素:(の式

(nはαとβの粒子数の和=外線数)

()=Πj=1[j-1/2{(2π)32j}-1/2εj(j)j(j2)]()|j2=mj2   

において,(),()をそれぞれ,(),()  

と置き変えた式が成立し,これを用います。

ただし,G() =<0|{AΦ1..Φn}|0.>です。 

(※便宜上AはBose演算子とします。
 

()でゲー^ジ固定関数がFからF+ΔFに変化したとき 

の変化は,ΔG() =<0|[{i,~ΔF}AΦ1..Φn]|0. 

=<0|{(~ΔF}[i,]Φ1..Φn}|0. 

+Σj=1()j 

0|{(~ΔF)[i,]Φ1..(δΦj)..Φ}|0. 

となります。
 

そして,()の変化:ΔS(),次式:  

ΔS() 

=Πj=1[j-1/2{(2π)32j}-1/2εj(j)j(j2)]ΔG()|j2=mj2   

-Σj=1{j-1/2(ΔZj )1/2}() 

において,ΔS(),ΔG()をそれぞれ,ΔS(),ΔG() 

に読み直すだけで得られます。

S行列のときの論議と同様,ΔG()において,j=1~nの場: 

ΦjBRS変換を受けた最後のn項の寄与は,物理的S行列の 

場合と同じく,場のくり込み定数の変化分と相殺されて消えます。
 

唯一の残る項から,

ΔS()=<0|{(~ΔF}[i,]Φ1..Φn}|0. 

i<β;out|{(~ΔF)[,]}|α;in 

i<β;out|[{,~ΔF}]|α;in>です。
 

第2行への変形では,|α;in>=Q|β;out>=0 

用いました。
 

最後の行はΔG() =<0|[{i,~ΔF}AΦ1..Φn]|0. 

LSZ操作を行ったもの: 

Πj=1[j-1/2{(2π)32j}-1/2εj(j)j(j2)] 

×<0|[{i,~ΔF}AΦ1..Φn]|0.>に一致するように 

見えますが,実は等しくないことに注意です。
 

等号が成立しないのは,LSZでは挿入されている演算子: 

~ΔF=∫d4xc~()ΔF()がx0→±∞まで伸びて 

いてGreen関数の1粒子の極の構造を変えるからです。
 

しかし,既にAが局所観測可能量なら[,]0なので, 

ΔS()i<β;out|{(~ΔF)[,]}|α;in 

から,ΔS()0であり,Aが局所的でない場合も, 

|α;in>=Q,|β;out>=0よりΔS()0  

が従います。
 

それ故,()=<β;out||α;n>の形の期待値は 

ゲージ固定条件の選択に依りません。
 

上では,|α;in,|β;out>は,BRS1重項モードだけで作った 

状態でしたが,これは一般のphysの状態でもいいです。 

それは,それぞれのゲージ条件内での観測可能量の期待値は, 

零ノルム状態ベクトル分だけ状態を変えても不変だからです。
 

また,()=<β;in|SA|α;n>とも書けて, physの状態: 

|α;n>から|β;in>へのS行列要素がゲージ固定条件に 

依らないから,期待値:<β;in||α;n>もゲージ固定条件に 

依らないと単純に述べることもできます。
 

さて,これで第5章が全て終わりました。これで第Ⅰ巻も終わりで 

6章の「対称性の自発的破れ」からは第Ⅱ巻です。
 

実際には最後に章末の演習問題があって,過去の参考ノートは自分 

なりの解答の羅列の後で,ノートのこの部分が終了しています。 

演習問題の中には重要なものもあり,それについては,このブログ 

記事では,ところどころ,本文への注として詳述したものもあります。
 

ノートでは,この部分については199923日深夜完了となって 

います。今から,19年前,49歳になったばかりで,ほぼプータローで 

講師アルバイトだけで食いつないでいた頃です。
 

貧乏でも,何らかのベンチャーなどで一攫千金的に金を得よう 

とかのスケベな気持ちは起きず,単に新聞等の求人での地道な 

就活をしながら,ただ,一文の得にもならない向学的好奇心だけ 

が旺盛でした。 


イマも相変わらず。。ビンボー症で。。

 

本シリーズは,これで終わります。 

6章以後は,本ブログでは既に 

「対称性の自発的破れとGldstne粒子」という記事シリーズで 

連載中でした。その途中で必要に迫られて寄り道をしただけの 

つもりだったのですが,長くかかってしまいました。
 

とりあえずPendingですが,寄り道からすぐ本道に戻るかも 

しれません。


(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

PS:もうすぐですね。桜。。。下は2015年4月2日の浜町公園です。

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2018年3月 5日 (月)

ゲージ場の量子論(33)

ゲージ場の量子論(32)」からの続きです。
 

※お化けは存在している? でも閉じ込められてて決して 

この世には出てこないし,どんな機器を使っても,人の五感 

では感知できないが,見えない舞台裏で暗躍して重要な役割を 

果たしているらしい。※
 

§5-10 観測可能量(observable)

状態空間:の物理的部分空間:physの中の零ノルムの 

状態:|χ>∈0,あらゆる物理的状態:|f>∈phys 

直交します。その事実から, 零ノルムのベクトル:|χ> 

を本質的に無視した空間:physphys /0の上で,全て 

の散乱過程を矛盾なく考察できるはずです。
 

しかしながら,物理において観測される量はS行列だけ 

ではありません。エネルギー。運動量や電磁場の強さ 

なども観測されなければなりません。
 

そこで,非可換ゲージ理論においては,どのような演算子 

が観測可能量(observable)なのか?ということが問題に 

なります。

※観測可能量 

まず,全ての散乱過程は,時間発展,Lorentz変換の下で不変な 

正定値Hilbert空間:physphys /0の上で矛盾なく定義 

できるものでなければなりません。
 

全ての演算子は,元々,全空間:の上の場の演算子ですから, 

のある演算子Aが,phys上でも矛盾なく定義できる,ということは 

Aは零ノルムベクトル:|χ>∈0 分の違いを感知しないもので 

あるはずです。
 

すなわち, 

()任意の|1,|2>∈phys ,および,任意の|χ1,|χ2>∈0, 

に対して,<f1+χ1||2+χ2>=<f1||2>なる性質を持つ, 

という要請を課すこと,が考えられます。
 

この要請:()を満たす演算子;Aを観測可能量と定義します。
 

観測可能量の演算子Aに対する要請として,()と同じくらい 

良さそうに思えるものとして. 

() phys phys, phys phys  

があります。
 

すなわち,「物理手的状態にA,またはAを演算しても物理的 

状態に留まれ」という要請です。任意の演算子は必ず,Hermite 

部分と反Hermite部分の和になりますが,以後,簡単のため, 

一般性を失うことなくAはHermite演算子であるとします。

そこでA=Aです。
 

要請()が満たされていると,任意の|f>∈physに対して 

|f>∈physが成り立ち,かつ,任意の|χ>∈0に対して 

は任意の|g>∈physと直交するから<χ||f>=0を得ます。
 

したがって,任意の|1,|2>∈phys 任意の|χ1,|χ2>∈0, 

に対して,<f1+χ1||2+χ2>=<f1||2>が成立して要請 

()が満たされます。() ()です。
 

一方,先の定理の一般的条件:()()からは,逆の() () 

は示すことができず,この意味で要請()の方が要請()より 

強いです。しかし,phys,|Phys>=0 を満たす{|Phys} 

で定義されている今の場合は,逆の() ()も証明できて, 

()()は等価です。
 

つまり,要請()は任意の|χ>∈0,任意の|f>∈phys 

ついて,<χ||f>=0 が成立することと等価なため, 

演算子Aが要請()を満たしていれば,任意の|Ψ>∈ 

対しQ|Ψ>∈0 なので,=Qより,任意の|f>∈phys 

に対して<Ψ||f>=0 が成立します。
 

|Ψ>∈にが任意での状態ベクトルであることから,これは, 

|f>=0を意味しますからA|f>∈phys となり, 

要請()が満たされます。
 

一般にAが時空のある有限領域のHeisenberg場の演算子 

の関数として定義されているとき,Aは局所的演算子 

(local operator)と呼ばれます。エネルギー・運動量演算子: 

μ,スカラー電荷:などの保存電荷:,これらは空間の 

無限領域で定義されているため,全て,局所的ではありません。
 

もしもAが局所演算子であるなら,Aはさらに 

()[,]0,または{,}0  

を満たすことがいえます。
 

つまり,真空:|0>は物理的状態なので要請()から, 

|0>=0です。 

そこで[,]|0>=0,または,{,}|0>=0 が従います。
 

ところが,「一般にOが局所的演算子なら,|0>であればO=0 

である。」という定理(Reeh-Schliederの定理)が存在します。 

(公理的場理論より) ,そして,Aが局所的演算子なら,[,], 

{,}も局所的演算子なので,()[,]0,または{,}0 

がいえます。(※ここで疑問なのはQ|0>=0, Aが局所的から, 

そもそも,A=0 ですが。。ということです。)
 

そして,()()ですから,要請()が最も強い要請ということに 

なりますが,Aが局所的演算子なら,()()は全て等価です。
 

※観測可能量のカラー電荷 

().「局所的観測可能量=BRS1重項演算子」であると 

述べているわけですが,そのような局所的観測可能量は,必ず, 

カラー1重項(color siblet)演算子でなければならない, 

いう興味深い事実を示すことができます。
 

その前に,用語の定義を2つ述べます。
 

)ある演算子Mについて|,}の形の演算子は,20 

より,明らかにBRS不変ですから,観測可能量ですが,物理的 

空間:physではゼロです。
 

つまり,任意の|f>,|g>∈physに対して<f||,}|g>=0 

なので,|,}は自明な観測可能量,あるいは,単に, 

零演算子(null operator)と呼ばれます。
 

)以前論じたカラーSU(3)対称性群の大局的ゲージ変換 

の生成子であるカラー電荷:はカラー対称性が自発的に 

破れていない限り無矛盾な演算子で,正確には, 

=∫d[0()-ω∂νν0()] 

で定義されます。
 

後の第6章で詳論しますが,ωはJμ()中の零質量の極の寄与 

,νν0()のそれと相殺されるように選ばれた定数です。 

(※付加項:{-ω∂νν0()}Noether定理からは決まらない 

カレント不定項∂ν[μν]の形をしています。)
 

さて,カラー電荷: 

=∫d[0()-ω∂νν0()],BRS不変です。
 

つまり,[,]i(1-gω)∫d[k{k0()×c()}] 

0 です。
 

(33-1):上式を証明します。 

[証明] [i,μν()] 

[i,(μν-∂νμ-gfabcμν)] 

=∂μδν-∂νδμ-gfabcδμν 

-gfabcμδν 

δμ=∂μ-gfabcμ=Dμa です。
 

故に, [i,μν()] 

=∂μν-∂νμ-gfabc(μ)ν 

-gfabcμν 

=-gfabcμ(ν)+gfabcν(μ) 

-gfabc(μ)ν-gfabcνν 

+g2abcbdeνμ 

+g2abccdeμν 

=-gfabc(μν-∂νμ-gfbdeνμ) 

を得ます。
 

つまり,[i,μν]=-gfabcνμです。
 

他方,以前,カラー回転に対して不変なLagrangian 

に基づくゲージ場の運動方程式が,Noetherカレント; 

μ()により,次のMaxwell方程式と呼ばれる 

方程式に書けるのを見たことを思い起こします。
 

ννμ+gJμ{,μ~} です。 

よって,μ=g-1[ννμ{,μ~}] 

と書けます。
 

それ故,μ-ω∂ννμ 

=g-1(1-gω)ννμ-g-1{,μ~} 

したがって,[i, μ-ω∂ννμ] 

=g-1(1-gω)ν[i,νμ]  

=-(1-gω)abcν(νμ) 

が得られます。
 

ところが,保存されるカラー電荷は, 

=∫d[0()-ω∂νν0()]ですから, 

[,]i(1-gω)abc∫dν(ν0) 

i(1-gω)abc∫dk(k0)です、
 

しかし,右辺は被積分関数が(0)3次元発散の形 

であり,(0)の無限遠での速やかなゼロへの減衰と, 

Gausssの積分定理から,結局,積分結果はゼロです。 

[証明終わり]
 

(33-1終わり※)
 

,カラー回転群の[,]iabcを満たす生成子 

を形成し,それ自身,時空全体で定義された非局所的観測可能量 

です。
 

そして,時空座標に依らないカラー回転(大局的ゲージ変換) 

不変な演算子:,つまり,全てのaについて[,]0 

満たす演算子:Oを「カラー1重項演算子」といいます。
 

[,]0なので,BRS電荷:自身がカラー1重項 

演算子の1つとなっています。
 

[,]0により,[,]0 を満たす局所的観測可能量: 

Aは,一般性を失うことなく,カラー対称性変換群の既約表現に 

属すると仮定できます。
 

 つまり,[,]0により,|Phys>=0のVphys自体 

がQを生成子とするカラー回転群の不変部分空間です。
 

そして,[,]0より,|Phys>がQ|Phys>=0 

を満たすので,|Phys>∈Vphysですから,集合:{|Phys} 

はカラー回転群の不変部分空間:physの部分空間です。
 

特に,この{|Phys}が量子数が一定の既約表現空間に 

属する,と仮定できます。
 

すなわち,[,]0より,とAが同時対角化が可能 

なので,の固有ベクトルをAの基底に取ることが可能 

であるからです。
 

そこで,がFPゴースト数:FPiの確定した演算子 

なので,Aは決まったFPゴースト数を持つとしていいです。
 

次の命題が成り立ちます。 

[命題Ⅰ]: 局所的観測可能量:Aは零演算子でない限り, 

カラー1重項演算子である。
 

[証明]:本題を証明する代わりに,対偶命題: 

「Aがカラー1重項でないなら,Aは零演算子である」 

を証明します。
 

まず,可換性:[,]0から,Aの属するカラー電荷: 

の既約表現:R=|i}(iは表現の基底を成す場の 

演算子)とすると,[,i]=-Taijjと書けます。 

(aは対称性群の生成子:の表現空間基底:|i} 

よる表現行列です。)
 

R=|i}のメンバー(基底):iは全て局所的観測可能量: 

つまり,[,i]0 を満たします。
 

何故なら,[,]0を満たす非局所的観測可能量 

ですから,前述のようにQの表現空間は,physの部分空間と 

考えていいわけですが,iはその空間の生成・消滅の 

局所演算子を意味するので,|0>=0,つまり, 

[,]|0>=0 であり,局所性から[,]0  

を得ます。

ここで.Maxwell方程式: 

gJμ=∂ννμ{,μ~}を用います。
 

両辺から,gω∂ννμを引くと. 

(1-gω)ννμ{,μ~} 

=g(μ-ω∂ννμ) であり, 

そして.=∫d3(0-ω∂νν0) 

です。
 

それ故,[,i](1-gω)∫d3ν[ν0,i] 

-∫d3[{,0~},i] 

=-[,∫d3[0~(),i]] です。
 

(33-2):何故なら,まず,Jacobi恒等式から, 

[[,0~],i]=-[[μ~,i],] 

[[i ],μ~] ですが 

仮定により,[i ]0 なので, 

[[,0~],i][,[0~,i]] 

です。
 

ところが,[{,0~},i][[,0~],i] 

2i0~20~i 

[[,0~],i]2[,[0~,i]] です。
 

以上から,  

[{,0~},i]=-[,[0~,i]] 

が得られます。 (33-2終わり※)
 

ここで,iが局所的であるが故,∫d3ν[ν0,i]0 

となること,を用いました。
 

[,i]=-[,∫d3[0~(),i]] 

,[,i]=-Taijjを代入し,さらにTai 

を掛けて添字:aとiで和を取れば, 

gC2()k[,Σa∈G∫d3[0~(),aii]] 

を得ます。
 

ただし,2()はゲージ群:(カラーSU(3))2次の

 

Casimir(カシミア)演算子のAiの属する既約表現:Rでの 

固有値です。 

つまり,2(),Σa∈Gaijaik=C2()δik で定義 

される定数です。
 

左辺のCasimir演算子行列は全てのGの生成子の表現行列: 

と交換します。つまり,Gの表現である全ての行列と交換する 

ため,Schurの穂題(シューアのレンマ)」によって一般にG 

の既約表現ごとに異なる定数を取る定数行列です。
 

このとき,次のことが成立します。 

「C2(),Aが属する既約表現が1重項表現でない限り 

ゼロではない。」という命題です。
 

(33-3):上の証明です。 

[証明]:|Ψ>はカラーQの固有値がゼロの任意の状態とします。 

すなわち,|Ψ>=0とします。
 

演算子としての Casimir operetor,2=Σa∈G 

与えられますから,[2,i]|Ψ>=[Σa∈G.i]|Ψ> 

=Σa∈G[.i]|Ψ>=-Σa∈Gijj|Ψ> 

=-Σa∈Gij[.j]|Ψ>=Σa∈Gijik|Ψ> 

=C2()δikk|Ψ>=C2()k|Ψ> です。
 

ところが,[.i]0であれば,[2,i]|Ψ>=0より, 

2()0は自明です。 

さもなければ,[2,i]0より上式からC2()0です。
 

したがって,結局,iがカラー1重項であること:[.i]0 

とC2()0 は同値です。[証明終わり]
 

(33-3終わり※)
 

gC2()k[,Σa∈G∫d3[0~(),aii]] 

であり,右辺は,|Phys>=0を満たす|Phys>の集合である 

physの上では零演算子=ゼロです。
 

上記のようにAkがカラー1重項であること:[,k]0  

2()0 が同値なので,これで,[,k]0 ⇔ Ak0  

なること,つまり,[命題Ⅰ]:「局所的観測可能江藤がカラー1重項 

でない限り,それは零演算子である。」ことが証明されました。 

[命題Ⅰの証明終わり]
 

もう1,興味あることは「局所的観測課魍魎は本当に局所的 

である。」という主張です。例えば,月の裏側上の場の演算子と地球上 

の場の演算子の積をとって初めて観測可能量となるようなものは 

ゼロ以外には存在しない。というようなことです。
 

まとめると,次の命題です。 

[命題Ⅱ]:互いに空間的(space-like)に離れた2つの有限時空領域: 

1とD2上のそれぞれのHeisenberg場で書かれた局所的演算子を 

それぞれ,{1i},{2j}とする。もし,A=Σij1i2jの形の局所的 

演算子が観測可能量であるならば,Aは零演算子を除いて既にD1 

だけで観測可能量になっている演算子とD2上だけで観測可能量に 

なっている演算子から成っている。
 

[証明]:BRS変換をδで表わすとA=Σij1i2jが観測可能量 

であるという仮定: δA=0 から, 

Σij(δ1i)2j=-Σij()|i|1i(δ2j) です。
 

BRS変換は時空の各点のHeisenberg場を,その点でのHeisenberg 

場に変える局所的変換であることを考慮し,この変換関係をD1上の 

演算子は単なる係数とみなして,2上の演算子間の関係式として 

見てみます。すると左辺の(δ1i)を係数とするO2jの線形結合 

,右辺のδ2ji|,2j}の線形結合に等しいという式になって 

いて,実はδ2j0です。
 

すなわち,左辺はD2上の演算子として零演算子であることを意味する 

ため,2上のある演算子:2jが存在して 

Σij(δ1i)2j=Σij(δ1i)(δ2j)と書けます。
 

そこで,演算子AをA=A~+Σij()|i|δ(1i 2j), 

~=Σij1i2j-Σij()|i|δ(1i 2j)と書き直します。
 

Σij()|i|δ(1i 2j)は本当の全領域上での零演算子です。
 

そして.~は実際にD1上の観測可能量と,2上の観測可能量 

だけで表現されています。これを示すために,BRS変換:δ 

を形式的にD1上の演算子のみを変換するδ1,2上の演算子 

のみを変換するδ22つの部分に分けて,δδ1δ2 

書きます。
 

求める命題Ⅱの証明はA~δ1でも, δ2でも不変であること 

を示せば十分です。実際,δ1~=Σij(δ1i)2j 

-Σij(δ1i)(δ2j)0,かつ,δ2~=Σij()|i|1i(δ2j) 

+Σij(δ1i)(δ2j)0 です。 

ここで,{δi,δj}0 (,j=1,2)を用いました。
 

つまり,非局所的演算子積は零演算子という意味しか 

ありません。 [証明終わり]
 

※局所ゲージ不変量 

以上の命題から,結局,局所的観測可能量は自明なもの=零演算子 

を除けば,時空の各点でBRS1重項,かつ,カラー1重項の演算子 

のみから構成されていることがわかりました。
 

局所的観測可能量は(有限個の例外を除いて)ゲージ場;μ 

物質場:φiのみで書かれる局所ゲージ不変量で尽くされる, 

ことがわかります。
 

ここでは証明抜きで結果のみを定理の形で述べておきます。

[定理]Heisenberg場の多項式で与えられる局所的観測可能量=BRS 

不変な局所演算子:Aは次の形を持つ。
 

)Aの持つFPゴースト数:FPが負ならばAは零演算子である。 

すなわち,このとき,ある演算子:MによりA=[,]と書ける。 

)Aの持つFPゴースト数がゼロならば, 

A=Fゲージ不変(μ, φi)[,]と書ける。 

ただし,ゲージ不変,ゲージ場;μと物質場:φiのみから成る 

局所ゲージ不変な多項式である。 

)Aの持つFPゴースト数が正ならば 

A=P[i();ゲージ不変(μ, φi)][,]と書ける。
 

ただし,Pは.局所ゲージ不変関数 Fゲージ不変を係数とするIi() 

の多項式である。
 

そして,i()は同一時空点上のFPゴースト場:のみの微分 

を含まないカラー1重項多項式であり,各時空点ごとに有限個しか 

ない。
 

定理の最後にいうFPゴースト場:のみのカラー1重項多項式; 

i()の形を,ゲージ群Gが簡単な場合を例にとって与えておきます。
 

1) Gが1次元可換群:(1)のとき, 

この場合は,ゴースト場;cに添字がなくIi(),唯一で 

FP1のI1()=cしかない。
 

2) GがdimG=nの単純群(Gと{1}以外に正規部分群がない)のとき、 

をGの基本表現の生成子の表現行列として,C=Σa∈Gaなる 

行列とします。この場合,r20なので, FP1,2を持つカラー 

1重項多項式;i()は存在しません。ゼロにならない最初の演算子 

i(), FP3のTr3 ∝ fabcです。
 

FP=4は,r40よりIi()は存在せず, 

FP=5は,r5∝ dabc(c×c)(c×c)c です。 

ただし,dabc=Tr()です。 

同様にして,FP=nは,det(abc) ∝ ε1..n1..n 

etc.です。
 

この有限個のゴースト場多項式:i(),BRS不変でありながら 

通常のゲージ不変量でも零演算子でもない,局所的観測可能量の 

「例外」を与えるものです。
 

(33-4):元々,カラー自由度は基本粒子クォ-ク:qのFermi 

統計性の要求から導入されたものです。
 

バリオンはqqqのクォーク3体結合で与えられますが,例えば 

スピンが3/2の粒子(πp共鳴のΔ++=pppなど)のスピン 

波動関数は3体個々個のスピンが全て↑か,全て↓の対称で軌道 

もs波のフレーバーも同じなら完全対称状態です。
 

これは,個々のクォ-ク:qがスピン1/2Fermi粒子で交換反対称 

でありべきという統計的要請から,他に完全反対称のカラー波動関数 

因子が必要でした。3体の完全反対称のカラー波動関数は{εijk1 

1重項波動関数だけです。3×3×31251です。
 

ちなみに,中間子;qq~の場合は,3×3*181重項は{δij1 

の対称関数です。 (33-4終わりl※)
 

本節はここで終わりなので,今回はここまでにします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

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