「ゲージ場の量子論(32)」からの続きです。
※お化けは存在している? でも閉じ込められてて決して
この世には出てこないし,どんな機器を使っても,人の五感
では感知できないが,見えない舞台裏で暗躍して重要な役割を
果たしているらしい。※
§5-10 観測可能量(observable)
状態空間:Vの物理的部分空間:Vphysの中の零ノルムの
状態:|χ>∈V0は,あらゆる物理的状態:|f>∈Vphysと
直交します。その事実から, 零ノルムのベクトル:|χ>
を本質的に無視した空間:Hphys=Vphys /V0の上で,全て
の散乱過程を矛盾なく考察できるはずです。
しかしながら,物理において観測される量はS行列だけ
ではありません。エネルギー。運動量や電磁場の強さ
なども観測されなければなりません。
そこで,非可換ゲージ理論においては,どのような演算子
が観測可能量(observable)なのか?ということが問題に
なります。
※観測可能量
まず,全ての散乱過程は,時間発展,Lorentz変換の下で不変な
正定値Hilbert空間:Hphys=Vphys /V0の上で矛盾なく定義
できるものでなければなりません。
全ての演算子は,元々,全空間:Vの上の場の演算子ですから,V上
のある演算子Aが,Hphys上でも矛盾なく定義できる,ということは
Aは零ノルムベクトル:|χ>∈V0 分の違いを感知しないもので
あるはずです。
すなわち,
(Ⅰ)任意の|f1>,|f2>∈Vphys ,および,任意の|χ1>,|χ2>∈V0,
に対して,<f1+χ1|A|f2+χ2>=<f1|A|f2>なる性質を持つ,
という要請を課すこと,が考えられます。
この要請:(Ⅰ)を満たす演算子;Aを観測可能量と定義します。
観測可能量の演算子Aに対する要請として,(Ⅰ)と同じくらい
良さそうに思えるものとして.
(Ⅱ) AVphys ⊂Vphys, A+Vphys ⊂Vphys
があります。
すなわち,「物理手的状態にA,またはA+を演算しても物理的
状態に留まれ」という要請です。任意の演算子は必ず,Hermite
部分と反Hermite部分の和になりますが,以後,簡単のため,
一般性を失うことなくAはHermite演算子であるとします。
そこでA+=Aです。
要請(Ⅱ)が満たされていると,任意の|f>∈Vphysに対して
A|f>∈Vphysが成り立ち,かつ,任意の|χ>∈V0に対して
は任意の|g>∈Vphysと直交するから<χ|A|f>=0を得ます。
したがって,任意の|f1>,|f2>∈Vphys 任意の|χ1>,|χ2>∈V0,
に対して,<f1+χ1|A|f2+χ2>=<f1|A|f2>が成立して要請
(Ⅰ)が満たされます。(Ⅱ) ⇒(Ⅰ)です。
一方,先の定理の一般的条件:(ⅰ)~(ⅲ)からは,逆の(Ⅰ) ⇒(Ⅱ)
は示すことができず,この意味で要請(Ⅱ)の方が要請(Ⅰ)より
強いです。しかし,Vphysが,QB|Phys>=0 を満たす{|Phys>}
で定義されている今の場合は,逆の(Ⅰ) ⇒(Ⅱ)も証明できて,
(Ⅰ)と(Ⅱ)は等価です。
つまり,要請(Ⅰ)は任意の|χ>∈V0,任意の|f>∈Vphysに
ついて,<χ|A|f>=0 が成立することと等価なため,
演算子Aが要請(Ⅰ)を満たしていれば,任意の|Ψ>∈Vに
対しQB|Ψ>∈V0 なので,QB+=QBより,任意の|f>∈Vphys
に対して<Ψ|QBA|f>=0 が成立します。
|Ψ>∈Vにが任意での状態ベクトルであることから,これは,
QBA|f>=0を意味しますからA|f>∈Vphys となり,
要請(Ⅱ)が満たされます。
一般にAが時空のある有限領域のHeisenberg場の演算子
の関数として定義されているとき,Aは局所的演算子
(local operator)と呼ばれます。エネルギー・運動量演算子:
Pμや,スカラー電荷:Qaなどの保存電荷:,これらは空間の
無限領域で定義されているため,全て,局所的ではありません。
もしもAが局所演算子であるなら,Aはさらに
(Ⅲ)[QB,A]=0,または{QB,A}=0
を満たすことがいえます。
つまり,真空:|0>は物理的状態なので要請(Ⅱ)から,
QBA|0>=0です。
そこで[QB,A]|0>=0,または,{QB,A}|0>=0 が従います。
ところが,「一般にOが局所的演算子なら,O|0>であればO=0
である。」という定理(Reeh-Schliederの定理)が存在します。
(公理的場理論より) ,そして,Aが局所的演算子なら,[QB,A],
{QB,A}も局所的演算子なので,(Ⅲ)[QB,A]=0,または{QB,A}=0
がいえます。(※ここで疑問なのはQBA|0>=0, QBAが局所的から,
そもそも,QBA=0 ですが。。ということです。)
そして,(Ⅲ)⇒(Ⅱ)ですから,要請(Ⅲ)が最も強い要請ということに
なりますが,Aが局所的演算子なら,(Ⅰ)~(Ⅲ)は全て等価です。
※観測可能量のカラー電荷
(Ⅲ)は.「局所的観測可能量=BRS1重項演算子」であると
述べているわけですが,そのような局所的観測可能量は,必ず,
カラー1重項(color siblet)演算子でなければならない,と
いう興味深い事実を示すことができます。
その前に,用語の定義を2つ述べます。
ⅰ)ある演算子Mについて|QB,M}の形の演算子は,QB2=0
より,明らかにBRS不変ですから,観測可能量ですが,物理的
空間:Vphysではゼロです。
つまり,任意の|f>,|g>∈Vphysに対して<f||QB,M}|g>=0
なので,|QB,M}は自明な観測可能量,あるいは,単に,
零演算子(null operator)と呼ばれます。
ⅱ)以前論じたカラーSU(3)対称性群の大局的ゲージ変換
の生成子であるカラー電荷:Qaはカラー対称性が自発的に
破れていない限り無矛盾な演算子で,正確には,
Qa=∫d3x[Ja0(x)-ω∂νFaν0(x)]
で定義されます。
後の第6章で詳論しますが,ωはJaμ(x)中の零質量の極の寄与
が,∂νFaν0(x)のそれと相殺されるように選ばれた定数です。
(※付加項:{-ω∂νFaν0(x)}はNoether定理からは決まらない
カレント不定項∂νf[μν]の形をしています。)
さて,カラー電荷:
Qa=∫d3x[Ja0(x)-ω∂νFaν0(x)]は,BRS不変です。
つまり,[QB,Qa]=i(1-gω)∫d3x[∂k{Fk0(x)×c(x)}a]
=0 です。
※(注33-1):上式を証明します。
[証明] [iQB,Faμν(x)]
=[iQB,(∂μAaν-∂νAaμ-gfabcAbμAcν)]
=∂μδBAaν-∂νδBAaμ-gfabcδBAbμAcν
-gfabcAbμδBAcν
δBAaμ=∂μca-gfabcAbμcc=Dμca です。
故に, [iQB,Faμν(x)]
=∂μDνca-∂νDμca-gfabc(Dμcb)Acν
-gfabcAbμDνcc
=-gfabc∂μ(Abνcc)+gfabc∂ν(Abμcc)
-gfabc(∂μcb)Acν-gfabcAbν∂νcc
+g2fabcfbdeAcνAdμce
+g2fabcfcdeAbμAdνca
=-gfabc(∂μAbν-∂νAbμ-gfbdeAcνAdμ)cc
を得ます。
つまり,[iQB,Faμν]=-gfabcFaνμccです。
他方,以前,カラー回転に対して不変なLagrangian
に基づくゲージ場の運動方程式が,Noetherカレント;
Jaμ(x)により,次のMaxwell方程式と呼ばれる
方程式に書けるのを見たことを思い起こします。
∂νFaνμ+gJaμ={QB,Dμc~a} です。
よって,Jaμ=g-1[∂νFaνμ-{QB,Dμc~a}]
と書けます。
それ故,Jaμ-ω∂νFaνμ
=g-1(1-gω)∂νFaνμ-g-1{QB,Dμc~a}
したがって,[iQB, Jaμ-ω∂νFaνμ]
=g-1(1-gω)∂ν[iQB,Faνμ]
=-(1-gω)fabc∂ν(Faνμcc)
が得られます。
ところが,保存されるカラー電荷は,
Qa=∫d3x[Ja0(x)-ω∂νFaν0(x)]ですから,
[QB,Qa]=i(1-gω)fabc∫d3x∂ν(Faν0cc)
=i(1-gω)fabc∫d3x∂k(Fak0cc)です、
しかし,右辺は被積分関数が(Fak0cc)の3次元発散の形
であり,(Fak0cc)の無限遠での速やかなゼロへの減衰と,
Gausssの積分定理から,結局,積分結果はゼロです。
[証明終わり]
(注33-1終わり※)
Qaは,カラー回転群の[Qa,Qb]=ifabcQcを満たす生成子
を形成し,それ自身,時空全体で定義された非局所的観測可能量
です。
そして,時空座標に依らないカラー回転(大局的ゲージ変換)で
不変な演算子:O,つまり,全てのaについて[Qa,O]=0を
満たす演算子:Oを「カラー1重項演算子」といいます。
[QB,Qa]=0なので,BRS電荷:QB自身がカラー1重項
演算子の1つとなっています。
[QB,Qa]=0により,[QB,A]=0 を満たす局所的観測可能量:
Aは,一般性を失うことなく,カラー対称性変換群の既約表現に
属すると仮定できます。
つまり,[QB,Qa]=0により,QB|Phys>=0のVphys自体
がQaを生成子とするカラー回転群の不変部分空間です。
そして,[QB,A]=0より,A|Phys>がQBA|Phys>=0
を満たすので,A|Phys>∈Vphysですから,集合:{A|Phys>}
はカラー回転群の不変部分空間:Vphysの部分空間です。
特に,この{A|Phys>}が量子数が一定の既約表現空間に
属する,と仮定できます。
すなわち,[QB,A]=0より,QBとAが同時対角化が可能
なので,QBの固有ベクトルをAの基底に取ることが可能
であるからです。
そこで,QBがFPゴースト数:NFP=iQcの確定した演算子
なので,Aは決まったFPゴースト数を持つとしていいです。
次の命題が成り立ちます。
[命題Ⅰ]: 局所的観測可能量:Aは零演算子でない限り,
カラー1重項演算子である。
[証明]:本題を証明する代わりに,対偶命題:
「Aがカラー1重項でないなら,Aは零演算子である」
を証明します。
まず,可換性:[Qa,QB]=0から,Aの属するカラー電荷:
Qaの既約表現:R=|Ai}(Aiは表現の基底を成す場の
演算子)とすると,[Qa,Ai]=-TaijAjと書けます。
(Taは対称性群の生成子:Xaの表現空間基底:|Ai}に
よる表現行列です。)
R=|Ai}のメンバー(基底):Aiは全て局所的観測可能量:
つまり,[QB,Ai]=0 を満たします。
何故なら,Qaが[QB,Qa]=0を満たす非局所的観測可能量
ですから,前述のようにQaの表現空間は,Vphysの部分空間と
考えていいわけですが,Aiはその空間の生成・消滅の
局所演算子を意味するので,QBA|0>=0,つまり,
[QB,A]|0>=0 であり,局所性から[QB,A]=0
を得ます。
ここで.Maxwell方程式:
gJaμ=∂νFaνμ-{QB,Dμc~a}を用います。
両辺から,gω∂νFaνμを引くと.
(1-gω)∂νFaνμ-{QB,Dμc~a}
=g(Jaμ-ω∂νFaνμ) であり,
そして.Qa=∫d3x(Ja0-ω∂νFaν0)
です。
それ故,g[Qa,Ai]=(1-gω)∫d3x∂ν[Faν0,Ai]
-∫d3x[{QB,D0c~a},Ai]
=-[QB,∫d3x[D0c~a(x),Ai]] です。
※(注33-2):何故なら,まず,Jacobi恒等式から,
[[QB,D0c~a],Ai]=-[[Dμc~a,Ai],QB]
-[[Ai QB],Dμc~a] ですが
仮定により,[Ai QB]=0 なので,
[[QB,D0c~a],Ai]=[QB,[D0c~a,Ai]]
です。
ところが,[{QB,D0c~a},Ai]=[[QB,D0c~a],Ai]
-2AiQBD0c~a+2D0c~aQBAi
=[[QB,D0c~a],Ai]-2[QB,[D0c~a,Ai]] です。
以上から,
[{QB,D0c~a},Ai]=-[QB,[D0c~a,Ai]]
が得られます。 (注33-2終わり※)
ここで,Aiが局所的であるが故,∫d3x∂ν[Faν0,Ai]=0
となること,を用いました。
g[Qa,Ai]=-[QB,∫d3x[D0c~a(x),Ai]]
に,[Qa,Ai]=-TaijAjを代入し,さらにTaki
を掛けて添字:aとiで和を取れば,
gC2(R)Ak=[QB,Σa∈G∫d3x[D0c~a(x),TakiAi]]
を得ます。
ただし,C2(R)はゲージ群:G(カラーSU(3))の2次の
Casimir(カシミア)演算子のAiの属する既約表現:Rでの
固有値です。
つまり,C2(R)は,Σa∈GTaijTaik=C2(R)δik で定義
される定数です。
左辺のCasimir演算子行列は全てのGの生成子の表現行列:Ta
と交換します。つまり,Gの表現である全ての行列と交換する
ため,「Schurの穂題(シューアのレンマ)」によって一般にG
の既約表現ごとに異なる定数を取る定数行列です。
このとき,次のことが成立します。
「C2(R)は,Aが属する既約表現が1重項表現でない限り
ゼロではない。」という命題です。
※(注33-3):上の証明です。
[証明]:|Ψ>はカラーQaの固有値がゼロの任意の状態とします。
すなわち,Qa|Ψ>=0とします。
演算子としての Casimir operetorは,F2=Σa∈GQaQaで
与えられますから,[F2,Ai]|Ψ>=[Σa∈GQaQa.Ai]|Ψ>
=Σa∈GQa[Qa.Ai]|Ψ>=-Σa∈GQaTaijAj|Ψ>
=-Σa∈GTaij[Qa.Aj]|Ψ>=Σa∈GTaijTaikAk|Ψ>
=C2(R)δikAk|Ψ>=C2(R)Ak|Ψ> です。
ところが,[Qa.Ai]=0であれば,[F2,Ai]|Ψ>=0より,
C2(R)=0は自明です。
さもなければ,[F2,Ai]≠0より上式からC2(R)≠0です。
したがって,結局,Aiがカラー1重項であること:[Qa.Ai]=0
とC2(R)=0 は同値です。[証明終わり]
(注33-3終わり※)
gC2(R)Ak=[QB,Σa∈G∫d3x[D0c~a(x),TakiAi]]
であり,右辺は,QB|Phys>=0を満たす|Phys>の集合である
Vphysの上では零演算子=ゼロです。
上記のようにAkがカラー1重項であること:[Qa,Ak]=0 と
C2(R)=0 が同値なので,これで,[Qa,Ak]≠0 ⇔ Ak=0
なること,つまり,[命題Ⅰ]:「局所的観測可能江藤がカラー1重項
でない限り,それは零演算子である。」ことが証明されました。
[命題Ⅰの証明終わり]
もう1つ,興味あることは「局所的観測課魍魎は本当に局所的
である。」という主張です。例えば,月の裏側上の場の演算子と地球上
の場の演算子の積をとって初めて観測可能量となるようなものは
ゼロ以外には存在しない。というようなことです。
まとめると,次の命題です。
[命題Ⅱ]:互いに空間的(space-like)に離れた2つの有限時空領域:
D1とD2上のそれぞれのHeisenberg場で書かれた局所的演算子を
それぞれ,{O1i},{O2j}とする。もし,A=ΣijO1iO2jの形の局所的
演算子が観測可能量であるならば,Aは零演算子を除いて既にD1上
だけで観測可能量になっている演算子とD2上だけで観測可能量に
なっている演算子から成っている。
[証明]:BRS変換をδBで表わすとA=ΣijO1iO2jが観測可能量
であるという仮定: δBA=0 から,
Σij(δBO1i)O2j=-Σij(-)|i|O1i(δBO2j) です。
BRS変換は時空の各点のHeisenberg場を,その点でのHeisenberg
場に変える局所的変換であることを考慮し,この変換関係をD1上の
演算子は単なる係数とみなして,D2上の演算子間の関係式として
見てみます。すると左辺の(δBO1i)を係数とするO2jの線形結合
が,右辺のδBO2j=i|QB,O2j}の線形結合に等しいという式になって
いて,実はδBO2j=0です。
すなわち,左辺はD2上の演算子として零演算子であることを意味する
ため,D2上のある演算子:M2jが存在して
Σij(δBO1i)O2j=Σij(δBO1i)(δB M2j)と書けます。
そこで,演算子AをA=A~+Σij(-)|i|δB(O1i M2j),
A~=ΣijO1iO2j-Σij(-)|i|δB(O1i M2j)と書き直します。
Σij(-)|i|δB(O1i M2j)は本当の全領域上での零演算子です。
そして.A~は実際にD1上の観測可能量と,D2上の観測可能量
だけで表現されています。これを示すために,BRS変換:δB
を形式的にD1上の演算子のみを変換するδB1と,D2上の演算子
のみを変換するδB2の2つの部分に分けて,δB=δB1+δB2と
書きます。
求める命題Ⅱの証明はA~がδB1でも, δB2でも不変であること
を示せば十分です。実際,δB1A~=Σij(δBO1i)O2j
-Σij(δBO1i)(δB M2j)=0,かつ,δB2A~=Σij(-)|i|O1i(δBO2j)
+Σij(δBO1i)(δB M2j)=0 です。
ここで,{δBi,δBj}=0 (i,j=1,2)を用いました。
つまり,非局所的演算子積は零演算子という意味しか
ありません。 [証明終わり]
※局所ゲージ不変量
以上の命題から,結局,局所的観測可能量は自明なもの=零演算子
を除けば,時空の各点でBRS1重項,かつ,カラー1重項の演算子
のみから構成されていることがわかりました。
局所的観測可能量は(有限個の例外を除いて)ゲージ場;Aaμと
物質場:φiのみで書かれる局所ゲージ不変量で尽くされる,
ことがわかります。
ここでは証明抜きで結果のみを定理の形で述べておきます。
[定理]Heisenberg場の多項式で与えられる局所的観測可能量=BRS
不変な局所演算子:Aは次の形を持つ。
ⅰ)Aの持つFPゴースト数:NFPが負ならばAは零演算子である。
すなわち,このとき,ある演算子:MによりA=[QB,M]と書ける。
ⅱ)Aの持つFPゴースト数がゼロならば,
A=Fゲージ不変(Aaμ, φi)+[QB,M]と書ける。
ただし,Fゲージ不変は,ゲージ場;Aaμと物質場:φiのみから成る
局所ゲージ不変な多項式である。
ⅲ)Aの持つFPゴースト数が正ならば
A=P[Ii(c);Fゲージ不変(Aaμ, φi)]+[QB,M]と書ける。
ただし,Pは.局所ゲージ不変関数 Fゲージ不変を係数とするIi(c)
の多項式である。
そして,Ii(c)は同一時空点上のFPゴースト場:caのみの微分
を含まないカラー1重項多項式であり,各時空点ごとに有限個しか
ない。
定理の最後にいうFPゴースト場:caのみのカラー1重項多項式;
Ii(c)の形を,ゲージ群Gが簡単な場合を例にとって与えておきます。
1) Gが1次元可換群:U(1)のとき,
この場合は,ゴースト場;cに添字がなくIi(c)は,唯一で
NFP=1のI1(c)=cしかない。
2) GがdimG=nの単純群(Gと{1}以外に正規部分群がない)のとき、
TaをGの基本表現の生成子の表現行列として,C=Σa∈GcaTaなる
行列とします。この場合,TrC2=0なので, NFP=1,2を持つカラー
1重項多項式;Ii(c)は存在しません。ゼロにならない最初の演算子
Ii(c)は, NFP=3のTrC3 ∝ fabccacbccです。
NFP=4は,TrC4=0よりIi(c)は存在せず,
NFP=5は,TrC5∝ dabc(c×c)a(c×c)bcc です。
ただし,dabc=Tr(TaTbTc)です。
同様にして,NFP=nは,det(fabccb) ∝ εa1..anca1..can
etc.です。
この有限個のゴースト場多項式:Ii(c)が,BRS不変でありながら
通常のゲージ不変量でも零演算子でもない,局所的観測可能量の
「例外」を与えるものです。
※(注33-4):元々,カラー自由度は基本粒子クォ-ク:qのFermi
統計性の要求から導入されたものです。
バリオンはqqqのクォーク3体結合で与えられますが,例えば
スピンが3/2の粒子(πp共鳴のΔ++=pppなど)のスピン
波動関数は3体個々個のスピンが全て↑か,全て↓の対称で軌道
もs波のフレーバーも同じなら完全対称状態です。
これは,個々のクォ-ク:qがスピン1/2のFermi粒子で交換反対称
でありべきという統計的要請から,他に完全反対称のカラー波動関数
因子が必要でした。3体の完全反対称のカラー波動関数は{εijk1の
1重項波動関数だけです。3×3×3=1+2+5の1です。
ちなみに,中間子;qq~の場合は,3×3*=1+8で1重項は{δij1
の対称関数です。 (注33-4終わりl※)
本節はここで終わりなので,今回はここまでにします。
(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)
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