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2018年4月28日 (土)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(19)

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(18) 

から§6.7 Weinberg-Salam模型の続きです。
 

※クォークの結合 

何百と存在するハドロン(Hadron=バリオン(Baryon:重粒子) 

とメソン(Meson:中間子))に関しては,それらをqqqやqq~ 

の結合状態として実現している基本構成子:クォーク(quark) 

:()を用いてLagrangian密度を書きます。
 

クォーク場:(),強い相互作用(QCD:量子色力学: 

:Quantum Color Dynamics)のカラーSU(3)以外にそれと 

直交する自由度:フレイバー(Flavor)の添字fを持っています。
 

以下では,カラー添字は省略します。
 

クォークのフレイバーの種類として,質量の順に軽い方から, 

(up),(down),(dtrange),(charm),(bottom)の5種 

が既に観測されており,後にわかる理由によって,もう1つ 

(top)があると考えられています。
 

これら6種のクォークの電荷は,eを単位として, 

,,tのq(F=1,2,3),Q=2/3,,,bのq 

(f=1,2,3)が Q=-1/3を与えられ,Q=2/3 

Q=-1/3の2系列に分けられます。
 

Q=2/3の系列を上系列(upper quarks)と呼んでq 

で表わし.Q=-1/3の系列を下系列(lower quarks) 

と呼んでqで表わすことにします。
 

これらのクォークの左手型成分はSU(2)-2重項, 

右手型成分はSU(2)-1重項とし,弱超電荷Yは,公式: 

Q=T3+Yで決めてSU(2)×U(1)の多重項を得ます。
 

[,d'],[,s'], [,b'] 

(Y=1/6),=u,=c,=t(Y=2/3), 

=d,=s,=b(Y=-1/3)です。
 

そこで,クォークもレプトンと同じく3世代構造 

になります。
 

レプトンと異なるのはSU(2)-2重項,の下成分;  

'=(d',s',b')(F=1,2,3),質量固有状態:  

(,,)(f=1,2,3),必ずしも一致せず, 

一般にユニタリ回転を受けてq'=Σf=13Ff 

となる点です。

このユニタリ回転Uの存在は.まだ3種のクォークu,, 

しか知られていなかった1960年代にまずCabbiboが導入 

したもので,続いて1970年に, 

Glashow-Illiopoulpus-Miani(GIM)が第4のクォ-クcを 

導入しクォーク2世代を完結させて

 と書きました。
 

回転角θCabbibo(Cabbibo angle)と呼ばれ,実験値 

ではsinθ0.22 です。
 

(※私が大学院に入学した1974年には(J/ψ)と呼ばれる新粒子 

が発見されましたが,当時は,正体が不明の未知の粒子でした。 

後にこれが,(charmクォークを含むメソンであると判明した 

のでした。私の論文では,8重項グルノンの1つか?という予想

がありました。。)
 

さらに1973,小林-益川はCP不変性の破れを説明する 

ために第3世代:,bの存在を予言し,上の2×2行列の 

Uを3×3行列としたユニタリ回転に拡張しました。
 

この3×3行列:Uは小林-益川混合行列と呼ばれ, 

その1つのパラメータの取り方は.次で与えられます。
 

ただし,icosθi,isinθi(i=1,2,3)です。
 

この行列は実験的には対角成分が支配的です。
 

[,'],[,'], [,'] 

のSU(2)-2重項においては, SU(2)-2重項,の上成分 

(3=1/2)が丁度上系列クォーク(質量固有状態):,, 

となるように取りましたが,この3つの線形結合に 

取り直せば下成分(3=1/2)が丁度下系列クォーク: 

,,bに一致するようにもできます。
 

[,']=UFf]=UFf[fF'F',] 

=UFfと書けて,は下系列対角なSU(2)-2重項です。
 

さて, 

[,'],[,'], [,'] 

=u,=c,=t,=d,=s,=b 

を用いて,クォーク部分のLagrangianを書くと. 

kinquark=ΣF[~iγμ{μ(i/6)'μ 

(i/2)(τAμ)]+ΣF{~iγμ{μ(2i/3)'μ}} 

+Σ[~iγμ{μ(i/3)'μ}].
 

nmassquark=-Σ{(~Φ)+R~(Φ)} 

 -Σ{(~Φ~)+R~(Φ~)} 

となります。
 

ただし,Fは上系列クォーク:,,tを,fは下系列クォーク: 

,,bを表わしています。
 

また,μQCDのグルオン(guluon:膠粒子):μを用いた 

カラーSU(3)の共変微分: 

つまり,μq={μicμ(λ/2)}qです。
 

nmassquarkの右辺第2項に現われるΦ~,レプトン部分の質量項: 

nmasslepton=Σj=e,μ,τ(-fj){(~Φ)+R~(Φ)} 

でのHiggs:Φに対して,Φ~iτ2Φで与えられ,真空期待値は 

0|Φ|0>=[0,/2,0]に対して,0|Φ~|0>=[/2,0] 

です。これは上系列クォークに質量を与えるためです。
 

ここでも,レプトンの場合と同じ関係式:=√2/ 

=gm/(2)が成立し、Higgs場との湯川結合定数:, 

はクォークの質量:,に比例します。
 

ゲージ場との相互作用項も,レプトンの場合と同じく 

int=-{/(22)}(μμ+Wμμ+) 

-eAμemμ(/cosθ)μμ で与えられます。
 

ここでの荷電カレント:μはクォーク部分を意味し, 

μ=Jquarkμ=Σ,~Ffγμ(1-γ5)f です。
 

また,電磁相互作用カレント:emμ, 

emμ=Jquarkemμ(2/3)(~γμu+c~γμc+t~γμ) 

(1/3) (~γμd+s~γμs+b~γμ)です。
 

Zボソンの結合する中性カレント:μ, 

ZμquqrkZμ(3) quqrkμsin2θquarkemμであり 

(3) quqrkμ=Σ{~γμ(τ3/2)} 

=Σ(1/4)[~γμ(1-γ5) 

-Σ,Ff{~fFγμ(1-γ5)Ff'}] 

(1/4){Σ~γμ(1-γ5)-Σ~γμ(1-γ5)} 

です。
 

GIM機構 

荷電カレント:quarkμ=Σ,~Ffγμ(1-γ5)f  

おいては,SU(2)-2重項にクォーク混合(mixing)がある反映 

として混合行列UFfが現われています。
 

話を簡単かつ明確にするため,混合行列が次 

で与えられるクォーク2世代しかない場合,を考える 

ことにすれば
 

(2世代)μ(~cosθ+s~sinθ)γμ(1-γ5) 

(-d~sinθ+s~cosθ)γμ(1-γ5)c となります。
 

混合行列は対角成分が支配的(cosθ>>sinθ)ですから, 

同一世代的遷移(Cabbibo favered process):u⇔d,c⇔s 

が主で,世代間遷移(Cabbibo suppressed process):u⇔s, 

c⇔dは相対的に少ないです。
 

しかし,たとえ因子sinθが微小とはいえ,世代間遷移が 

存在することが重要です。例えば(us~)結合状態である 

中間子は,-d~sinθγμ(1-γ5)cの項を通してのみ 

崩壊できるのです。
 

これに対し,中性カレント:Zμでは,クォ-ク混合の効果は 

消えて,フレイバーについて対角的なことが重要です。 

つまり,(2世代)Zμ(3) (2世代)μsin2θ(2世代)emμ 

(3)(2世代)μ(1/4){Σ~γμ(1-γ5) 

-Σ~γμ(1-γ5)} 

(2世代)emμ(2/3)(~γμu+c~γμ) 

(1/3)(~γμd+s~γμ)です。
 

これは,混合行列の積:ΣfFFf,Uのユニタリ性から 

δff'になるからです。
 

ところが,もしもクォークがu,,sの3種しかなかったらどう 

でしょうか? 
 

その場合は,cがないのでSU(2)-2重項はLしか無く, 

そこで,ΣfFFfのFはF=uのみなので,δff'には 

なりません。
 

すなわち,(3) (2世代)μ=Σ{~γμ(τ3/2)}  

(1/4)[~γμ(1-γ5)(~cosθ+s~sinθ) 

γμ(1-γ5)(cosθ+ssinθ) となり,特に, 

(1/4)cosθsinθ{~γμ(1-γ5)+h.} 

項はフレイバーについて対角的ではなく,フレイバーを 

変える中性カレント(Flavor changing neutral current) 

略してFCNC呼ばれます。
 

このようなFCNCがあれば,例えば(ds~-sd~)結合状態の  

 0中間子の崩壊過程K:0 → μ++μ-が,主崩壊モードである 

0 → π+e+ν, 0 → π+μ+νμと同程度  

の確率で起こるはずです。
 

しかし.実験によると,この崩壊過程の分岐比(branching ratio:  

全崩壊確率中に占める割合)の値は,(0 → μ+μ)  

(7.3±0.4)×10-9と極めて小さいです。
 

したがって.このようなFCNCtreeレベルでは存在禁止で 

あるはずです。
 

このため,GIM,当時未発見のcクォークを導入して,  

2世代分のSU(2)-2重項を作り,それぞれ'FCNCの寄与が  

相殺するようにしたのです。すなわち,f≠fに対しては  

ΣfFFf'0 となるようにしました。
 

このような相殺の機構をGIM機構と呼びます。
 

この機構は,クォークが何世代存在しても同様ですから,3世代目 

の下系列のbクォークが発見された今は,bの関係するFCNC 

相殺するため,(この参考文献著書発行当時は未発見だった)上系列  

のtクォークの存在が必要とされるわけです。
 

0 → μ+μの分岐比が完全にゼロではなく, 

B=(7.3±0.4)×10-9の値を取るということは,GIM機構  

を持つゲージ理論を支持する証拠になっています。
 

つまり,0 → μ+μの過程はtreeレベルでなく,6.13  

のような1-ループ(1-loop)グラフが寄与しています。
 

uを媒介とするs~u~u~dには係数sinθcosθ,cの媒介  

では,~c~c~dで係数は-cosθsinθ,符号が違うので  

uとcの質量の2乗差が効いてきます。
 

すなわち,その過程の振幅:,大雑把に計算して, 

{4/2}{(22)/ 2}sinθcosθ 

~α(2/ 2)sinθ×Gとなりますが,これは主崩壊モード  

の通常の振幅:sinθに比べて,因子α(2/ 2)  

(1/137)(2/ 2)0.3×10-4だけ小さく,確率はその2 

10-9に比例するので,分岐比:B=(7.3±0.4)×10-9をうまく  

再現しているからです。
 

CPの破れ  

弱い相互作用は,例えば荷電カレントがV-A型なのでパリティ 

を最大限に破っています。
 

このの破れは,Weinberg-Salam模型ではFermi粒子のカイラル  

(左手型,右手型)成分を基本的な場として扱っているため,うまく  

取り入れられています。
 

ところが,弱い相互作用では,さらにCP不変性も破れています。
 

例えば,CP=-1の長寿命モードK0中間子:0 CP=+1 

2π状態にも崩壊します。
 

0の添字Lはlongtime(長寿命)のLですが,=-1,

=+1です。 

一方,2πはπ+πでもπ0+π0でも=+1,内部パリティは  

(1)2=+1ですが,0 のスピンはゼロなので,その崩壊  

過程では2πはl=0 の軌道s状態にあるはずですから,結果  

CP=+1となりCPは破れています。
 

CPの破れが,Weinberg-Salam模型で起こるためには,  

そのLagrangianの結合定数のどれかが実数ではなく,複素数 

である必要があります。
 

ゲージ場部分やHiggs場の自己相互作用部分(Higgs2重項が  

1種類だけならHermite性からこれは起こり得ません。
 

Higgs場とクォークやレプトンとの湯川相互作用部分もFermion  

場の定義を取り直せば結合定数:,f,を全て実数()  

に取れるので.CPは破れません。
 

nmasslepton=Σj=e,μ,τ(-fj){(~Φ)+R~(Φ)} 

,nmassquark=-Σ{(~Φ)+R~(Φ)} 

 -Σ{(~Φ~)+R~(Φ~)}では,既にこうした 

操作を実行して湯川結合定数を,Fermionの種類について対角的な 

実数,かつ,正の量にした形を与えたので,実は常にそうできること 

,ここで示しておきます。
 

(証明):クォーク・セクター:nmassquarkに限定して話をすると,  

SU(2)-2重項の左手型クォーク場:i,SU(2)-1重項の  

右手型上系列クォーク場:Iと右手型下系列クォーク場:i  

とが,n世代分(i=1,..,)存在する場合,そのHiggs-2重項  

Φとの湯川相互作用項の最も一般的な形は  

= -Σi,j=1{ij(~iΦ)j+gij(~iΦ~)j 

+h.} です。ただし,ij,およびgijは一般に複素数の 

湯川結合定数であり,それぞれ,2個あります。
 

まず,任意のn次複素行列:Mはユニタリ行列U,Vを用いて対角化 

できる。つまり,UMVが対角成分:λ1,..,λが全て実数,かつ 

正の対角行列になるようにできる。という 

「特異値標準形の定理」の成立することが知られています。
 

そこで,湯川結合定数:(ij),および,(ij),それぞれ,n次  

の複素行列とみなせば,それぞれ2個のユニタリ行列で対角化

できます。つまり,Σijiijj=fδFF',および,  

Σijiijjf'=fδffとできるユニタリ行列:  

,,,が存在します。f,は正の実数です。
 

初めのクォーク場:i,I,iの代わりにそれらをユニタリ変換  

した次の場,=ΣUii,=ΣUii, =ΣVii

=ΣViiを用いれば,  

= -Σi,j=1{ij(~iΦ)j 

+gij(~iΦ~)j+h.},標準形である 

nmassquark=-Σ{(~Φ)+R~(Φ)}  

 -Σ{(~Φ~)+R~(Φ~)}に帰着します。  

(証明終わり)
 

,,,をL=UFfのUFfと比較すれば  

Ff(下+)Ff

と書けて,小林・益川行列:UFfは,

湯川結合定数行列をそれぞれ対角化する上系列

ユニタリ行列と下系列ユニタリ行列のずれから

生ずることが明らかです。
 

一旦,nmassquarkのような標準形に書けば,湯川相互作用が 

CP不変性破らないことは直ちにわかります。

実際, Higgs場Φのt’Hooftパラメトリゼーション: 

Φ()(1/2){v+ψ()iχ()τ}[0,1] 

(1/2)[-χ2()-iχ1(),v+ψ()+iχ3()] 

(ψ,χ[χ1,χ2,χ3]は実スカラー場)において, 

χ()0に取るユニタリ・ゲージでは,(※このゲージ以外では 

非物理的Higgs:χが残っており,χの関わる湯川相互作用 

,Ffが複素数のとき,CPを破ります。しかし,これは次に 

論じる荷電カレント相互作用と本質的に一体の効果です。)
 

ΦはΦ()(1/2) [01,v+ψ()]となり, 

これを代入すれば,標準形の湯川相互作用は, 

nmassquark=-{Σ(+fψ/2)~}(f → F) 

となります。(j=f/2)
 

これは,クォーク質量項と実結合定数の湯川相互作用:~qψ 

を与え,明らかにCP不変です。
 

それ故,Weinberg-Salam模型でCP不変性の破れを起こす唯一の 

可能性はクォーク場の荷電カレント相互作用部分: 

(/22){μ~γμ(1-γ5)Ff+h.}の結合定数: 

gUFfが複素数,つまり,混合行列UFfが複素数になることです。
 

(19-1):まず,CPμ(,)-1-1=Wμ(-x,)です。 

CP(,)-1-1=C(γ0)~(-x,)=Cq+T(-x,) 

故に,CP(,)-1-1=q(-x,)
 

そこで,CP{~γμ(1-γ5)(,)}-1-1 

=qγ0γμ(1-γ5)Cq(,) 

=-q~γμ(1-γ5)Cq(,) 

何故ならFermionについては,荷電共役行列:Cが 

あって,γμC=C-1γμC=-γμ,γ5C=γ5=γ5 

を満たします。そして,γ0γμγ0=γμです。
 

よって,{μ~γμ(1-γ5)Ff+h.}の第1項は 

CP変換でWμ~γμ(1-γ5)Ff(,) 

変わりますが,一方,2:.cの-,tでの式は, 

μ~γμ(1-γ5)Ff(,)ですから, 

(,).Ffが実でないなら,CP変換で(,) 

に変わらないため,CPが破れることになります。 

(19-1終わり※)
 

ところが,定義が示すように混合行列:Ffは左手型クォークの 

上系列場qのSU(2)-2重項の相棒(下成分)の下系列場 

との相対的関係を与えるものですから,場の位相と(従って 

F'も共通に)場の位相を取り直す自由度を使えば行列要素; 

Ffの位相も変えることができます。
 

例えば,クォークが2世代のときは.Ffは2×2ユニタリ行列 

で元来4つの複素数要素=8自由度から4つのユニタリ性条件 

で4実パラメータの自由度なので,,,,sの4つの位相を 

使えば413個を吸収できます。(1を引くのは全体にかかる 

共通位相を除外したからです。)
 

そこで,残る1実パラメータをCabbibo角θとして,Ffを実数 

に取れて2世代では,CPの破れを導入できません。
 

小林-益川は,このことに初めて注目し,Ffが複素数と 

なる自由度を得るために第3世代クォークの必要性を 

指摘したのです。
 

途中ですが,今回はここまでにします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)


PS:小林・益川は2008年南部先生と共にノーベル物理学賞

を受けました。私,1975年か1976年に小林先生の集中講義

を受けた記憶ありますが,当時は浅学のため,内容は理解

できていませんでしたね。(猫にコンバンワ!です。)

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