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2018年5月28日 (月)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(20)

※16日から入院中ですが,ネットにアクセスが可能で,この 

項目はこれで終わる予定だったため,予め,病院まで 

持参していた参考ノートから原稿書きをしました。
 

さて,「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(19) 

から§6.7 Weinberg-Salam模型の続きです。
 

前回の最後では,小林・益川がクォーク2世代だけでは,模型に 

CPの破れを導入できないことに注目し,Ffが複素数となる 

自由度を得るために第3世代クォークの必要性を指摘した。 

というところで終わりました。
 

一般にクォークがn世代のときはqとq2n個あるため 

n×n複素行列:Ffのn2個の実パラメータ(22からn2個の 

ユニタリ条件:ΣFfFf=δffのn2を引いてn2) 

のうち,(2n-1)(とq2n個から全体の位相1を引く) 

は吸収できて,(22n+1)=(n-1)2個が残ります。
 

一方, n×n行列:Ffが実行列であれば,ユニタリ行列は回転の 

直交行列を意味し,その条件はΣFfFf=δff,これは 

{n+n(n-1)/2}個の独立条件なので,独立パラメータは

(n-1)/2個です。
 

以上から,n×n混合行列行列:Ffはn(n-1)/2の実回転角: 

θi(一般化Cabbibo)(n―1)(n-2)/2個の位相因子:δi 

(小林・益川位相)を含むことがわかります。
 

後者の位相因子:δirxp(iδj)が問題のCPを破る位相因子で, 

果たして,その個数はn=1,2ではゼロでn=33世代で初めて 

1個現われることになります。
 

小林・益川自身はCPの破れの起源として,このn×n混合行列 

の位相以外にも,例えばHiggs2重項を2種以上導入して,その間 

の相互作用項に位相を与える可能性も指摘しています。
 

※アノマリーの相殺

古典論の段階で存在するカレントの保存が量子論(loopグラフ) 

段階で成立しないことがあり,その現象を一般にアノマリー

(anomaly)(量子異常)と呼びます。
 

これは,くり込みなどの項目を論じた後の章で一般論として詳論 

する予定ですが,Weinberg-Salam模型に関わる部分だけを簡単に 

述べます。
 

Fermion場がカイラル(左手型,or 右手型)の場合には 

6.14に示した三角形のloopグラフがカイラルアノマリー 

を引き起こします。
 

ゲージ理論においては,ゲージ場の結合するカレントに,この 

アノマリーが存在すれば,ゲージ対称性,それ故,BRS対称性 

が壊され,S行列のユニタリ性,引いては理論のくり込み可能性 

まで成立しなくなります。
 

Weinberg-Salam模型は,正にカイラルFermionに結合するゲージ 

理論ですから,このアノマリーの危険性を孕んでいますが,実は, 

大変うまい具合にアノマリーへのレプトンの寄与とカラー 

3自由度のクォークの寄与が相殺します。
 

これを以下で説明します。
 

後章で示すように,一般に群Gのゲージ場Aμが表現T

属する左手型Fermion:Lと表現Tに属する右手型Fermin:

とに,int=Aμ(~γμL+R~γμ),結合

しているとき,ゲージ場:μ,ν,ρの3点頂点に対する

6.14のアノマリー,

abc=Tr[{,}]-Tr[{,}] 

=Tr(L-R)[{,}]に比例することがわかります。


 

今のWeinberg-Salam模型の場合,ゲージ場はSU(2)×U(1) 

(μ,μ)であり,AAA,AA,BB,BBBの4つの 

タイプのアノマリーを調べる必要があります。
 

μの結合する行列:は弱アイソスピンで,これは左手型の 

SU(2)-2重項の場合は(τ/2),右手型Fermionではゼロ 

です。また,μが結合するのは,弱超電荷:Yです。
 

そこで,AAAアノマリーはSU(2)×2重項ごとに. 

r[{τi,τ}τ]2δijr(τ)0に比例するので存在 

しません。
 

ABBタイプもTr(τ)0でTrもゼロですから 

r[YYτ]=Y2r(τ)0です。
 

AABアノマリーはTr(L-R)[{,}] 

(1/)r[{τi,τj}](δij/2)r() 

(δij/2)r( (Q-τ/2) (δij/2)r( ()
 

それ故,AABアノマリーは左手型Fermionの電荷の総和に 

比例します。
 

最後のBBBアノマリーは, 

r(L―R)(YYY)=Tr(L―R)[(Q-T)3] 

=Tr(L―R)()(3/4)r(Qττ)に比例します。
 

ところがTr(L―R)()は左手型Fermionと右手型Fermionの差 

,電荷は同じQについて左手型Fermionと右手型Fermion 

必ず,対で存在するので,相殺してゼロです。
 

そこでBBアノマリーもまた左手型Fermionの電荷の総和に 

比例します。
 

ここでレプトンの電荷は各世代ごとに 

(νe)+Q()=Q(νμ)+Q(μ)=Q(ντ)+Q(τ)=-1 

です。
 

一方,カラークォークの電荷は各世代ごとに 

3×{()+Q()}3×{()+Q()}

3×{()+Q()}3×(2/31/3)=+1です。
 

したがって,レプトンとクォークの寄与が相殺して.アノマリーは 

現われないことになります。
 

この相殺のために,クォークとレプトンの対応が常に成立している 

必要があります。発見されていないtクォークはこのためにも存在 

しなければなりません。(※実は,1995年に発見されました。)
 

このクォークとレプトンの対応やアノマリーの相殺は

Weinberg-Salam模型では全く偶然的なことに過ぎませんが,

クォークとレプトンの間により深い関係だあることを示唆

しています。このことがSU(5)SO(10)などのゲージ群

に基づく大統一理論(grand unified theory)への1つの大きな

動機になったのです。
 

※電荷の普遍性
 

Weinberg-Salam模型での電荷の普遍性(charge universality)

の問題に,こで触れておきます。
 

電荷の普遍性とは光子の荷電粒子との質量殻上での合定数が,

厳密に普遍的であるかどうか?いうことです。
 

例えば電子(またはμ粒子)の電荷は陽子の電荷=結合定数と

非常な高精度(逆符号で)一致していることが知られています。
 

この問題はU(1)群に基づくQEDの場合は,ほとんど自明でした。 

(1)群の場合はWT恒等式が非常に簡単で,それから直ちに,

荷電粒子:φiの裸の結合定数:i0(つまり,Lagtrangian

現われる結合定数)観測される質量殻上の結合定数:iとが

比例するという関係が容易に導かれます。
 

先に述べたWT恒等式: 

-<0|[ψi()ψ~j()i()]|0 

=<0|[(i)()()ikψ()ψ~j()~()|0 

+<0|[ψi()igψ()()()j~()|0
 

ここで,(1)ゲージの場合はg=e0,=Qなので, 

[,ψi]=-()ijψ=-qiψi,つまり()ijψ=qiψi
 

そこで,-<0|[ψi()ψ~j()i()]|0 

=-i0i0|[()ψi()ψ~j()~()|0 

i0i0|[ψi()ψ()()~()|0
 

これは,ψi,ψjの同次式ですから,これらは既にくり込まれた 

Heisenberg場としていいです。
 

さらに,BはF.T<0|[()μ()]|0>=kμ/2のみを

ゼロでない連結Green関数として持ち,

μ=Z31/2renμ ⇔ Arenμ=Z1-1/2μ 

より,左辺=(i3-1/2μ/2)i'(p-k)

(iΓrenμi)i'() 

となります。
 

一方,,~QEDでは自由場ですから, 

.T<0|[()~()]|0>=-1/2です。
 

故に,右辺=i0i(-1/2){i'()i'(p-k)}
 

よって, 

3-1/2μΓrenμi=e0i{i'-1()i'-1(p-k)} 

これと,光子の質量殻近傍ではS'-1()-m, 

Γrenμ ~ γμから,i=Z31/20iを得ます。 

(証明終わり)
 

つまり,i=Z31/2i0=Z31/20iです。
 

ここで,3は光子場のくり込み定数で,iは裸の結合定数: 

ei0ei0e0iで与えられる荷電粒子の生成演算子φ 

運ぶ電荷演算子Qの量子数です。 

すなわち,[,φ]=qiφです。
 

3,30は荷電粒子φiと無関係な定数なので 

i=Z31/20iは電荷の普遍性を証明しています。
 

すなわち,質量殻上の結合定数eiは量子数qiに普遍的 

比例定数で比例していること,特に量子数qiの荷電粒子 

は等しい質量殻上の結合定数を持つことを示しています。
 

ところが,Weinberg-Salam模型では,WT恒等式はかなり 

複雑になり,それを直接用いることによって,求めるべき 

比例関係:i(定数)×ei0(定数)×e0iを導く 

のは容易なことではありません。
 

事実,Landauゲージ(α=0)以外では,この方法での証明 

は過去に与えられていないようです。
 

そこで,ここでは"Maxwell方程式"を用いたより強力な 

証明法を紹介します。
 

この方法では,Weinberg-Salam模型のSU(2)×U(1) 

の大局的不変性を尊重する任意の共変的ゲージ: 

GF=-(μ)μ+(1/2)α0の下で 

i(定数)×ei0(定数)×e0iが証明できます。
 

ここで群の添字:aはU(1)に対応する0から, 

SU(2)に対応する1,2,3まで走るものとします。
 

したがって,0μ,Lゲージ場(1/4)(μν-∂νμ)2 

(1/4)(μν-∂νμ)2,μと記したU(1) 

ゲージ場を表わすとします。
 

ここで以前に与えた"Maxwell方程式"により, 

ννμ=gJμ{,μ~}(a=1,2,3) 

ν0νμ=g0μ{,μ~0}です。
 

SU(2)×U(1)対称性はU(1)EMへと自発的に 

破れているので最終的には唯一の電荷演算子, 

つまり電磁的電荷演算子:Qのみが無矛盾となります。
 

量子数の関係式:Q=T3+Y(※これは正確には粒子φiごと 

の量子数間の関係式:qi=τ3+yiであり,場の理論の 

演算子:,3,Yの関係式ではないことに注意,実際, 

自発的対称性の破れのために, 3,やYなどは無矛盾 

な演算子としては存在しないことに注意されたい。)
 

そうして,"Maxwell方程式"のa=3成分と0成分の 

次の線形結合を考えます。 

ννμ=e0(3μ+J0μ){,μ^μ}, 

νμ('3νμ+gF0νμ)/(2+g'2)1/2, 

^μ('μ~3+gDμ~0)/(2+g'2)1/2 

です。
 

ここでe0=gg'/(2+g'2)1/2は先には電磁結合定数: 

eと定義したものと同じですが,に現われる裸の結合定数 

であることを強調するためe0と記しました。
 

この線形結合: 

ννμ=e0(3μ+J0μ){,μ^μ}では 

実際,νμ,場についての線形な部分が, 

丁度,先にZμと同時に与えた電磁場: 

μ(gA3μ+g'0μ)/(2+g'2)1/2 

νA-∂μνに一致しており, (3μ+J0μ)は例えば 

物質場部分の電磁相互作用カレント(leptonμ+jquarkμ) 

に一致しています。
 

すなわち,形式的電荷演算子;∫d3(30+J00) 

正準交換関係を用いて,正しく電磁的電荷量子数:i 

をカウントする[,φ]=qiφを再現します。
 

しかしながら,既に詳述したように(30+J00)には, 

素4重項メンバーβ(a=3,0)のある線形結合βの 

零質量1粒子項:μβの寄与が存在するので,3次元 

積分の収束する無矛盾な電荷演算子Qとしては, 

Q=∫d3[(30+J00)-ω∂kk0] 

∫d3xJEM0としなければなりません。
 

k0はFνμ(,0)成分で,零質量電磁場:Aμを含んで 

いるので∂ννμ,上の零質量素4重項の1粒子状態; 

μβをある重みで含み,係数ωは(30+J00)の含む 

μβを丁度相殺するように選択されます。
 

(※このとき,ννμの含むβが,(30+J00)の含むβ3 

とβ0の線形結合:βと一致していることは,とにかく, 

電磁的量子数qiに対応するU(1)EM対称性が自発的破れ 

を起こさず残っているという仮定:つまり, 

Q=∫d3[(30+J00)-ω∂kk0] ∫d3xJEM0 

の形の(30+J00)を含む電荷が無矛盾なものとして存在 

するという仮定,から従う1つの必要条件です。)
 

ここでQ=∫d3xJEM0で定義されたカレント: 

EMμ(3μ+J0μ)-ω∂ννμを用いればMaxwell 

方程式は次の形になります。
 

すなわち,(1-e0ω)ννμ=e0EMμ|,^μ} 

です。この式を2つの任意の物理的1粒子状態:|i> 

|f>(phys)で挟めば, 

(1-e0ω)<f|ννμ()|i> 

=e0<f|EMμ()|i>を得ます。
 

ただし,|i>,|f>∈phys)より, 

<f||,^μ}|i>=0なることを用いました。
 

(1-e0ω)<f|ννμ()|i> 

=e0J<f|EMμ()|i>の両辺に∫d3exp(ikx) 

を掛けて計算し,μ0の極限を取ることを考えます。
 

NGボソンの低エネルギー定理と同様,μ0の極限で 

残るのはFνμチャネルの零質量1粒子,つまり,光子の 

つくる極部分だけです。
 

Heisenberg:νμ()に含まれる,くり込まれた光子の 

漸近場:asμ()の重みをYとすると,0→±∞で 

νμ()→Y{νasμ()-∂μasν()}.. 

です。ここでは無関係な質量を持つ粒子の漸近場の 

寄与である係数Yは, 

例えば2点関数:0|[νμ()ρσ()]|0>の 

20の留数から読み取れます。
 

νμ()→Y{νasμ()-∂μasν()}. 

,∫d4exp(ikx)0|[νμ()asρ()]|0 

=-Y(νμρ-kμνρ)/2を意味していること 

に注意すれば, 

limk→0∫d4x<f|ννμ()|i>(1-e0ω) 

=Y(1-e0ω)limf→pi(2π)4δ4(f-pi)fi(i+pf)ρ 

なることがわかります。ただし,くり込まれた光子とi, 

3点頂点:Γ(3)μfiが質量殻k20の近傍では, 

ifi(i+pf)μの形を取ることを用いました。

このefi,|i>,|f>が不変規格化された状態のとき, 

質量殻上光子の物理的結合定数です。
 

一方,右辺はμ=0成分を考えると,無矛盾な電荷演算子 

Qが,Q=∫d3[(30+J00)-ω∂kk0] ∫d3xJEM0 

で与えられること,および,Qが電荷量子数qをカウント 

することを用いて次式を導きます。
 

limk→0∫d4exp(i00)exp(ikx)0<f|EM0()|i> 

=∫dx00<f||i> 

=e0iδfilimf→pi (2π)4δ4(f-pi)2i0です。
 

ただし,i|i>の電荷量子数であり,不変規格化条件: 

<f|i>=(2π)32i0δ3(fi) 

(※ただし,∫dx02πδ(f0-pi0))を用いました。
 

limk→0∫d4exp(i00)exp(ikx)0<f|EM0()|i> 

=∫dx00<f||i> 

=e0iδfilimf→pi (2π)4δ4(f-pi)2pi0 

のμ=0成分と比較して,fi{(1-0ω)}-1δfi0i 

を得ます。
 

この式は質量殻上の光子の結合定数efiが荷電粒子の種類 

に関して対角的であると同時にY,ωやe0が明らかにiやf 

に依存しない定数なので,これは, 

求める電荷の普遍性:i(定数)×ei0(定数)×e0i 

証明しています。
 

この証明法のいいところは物理的粒子:|i>,|f>が上でQ 

が消えることを用いたステップです。
 

<f||,^μ}|i>=0は複雑なWT恒等式に埋もれた 

必要な情報を非常に簡潔に取り出していることに相当します。
 

また,QEDの場合でも,もちろん上の証明が成立しています。
 

その場合は,単にSU(2)部分を消去し,(1)部分を残せば 

いいです。(※つまり,g=0,=1,2,3μ0,かつ, 

→e0,0μ→jμ=ψ~γμψとすればいいです。)
 

そうすれば, 

ννμ=e0(3μ+J0μ){,μ^μ},通常の 

QEDMaxwell方程式:ννμ=e0μ+∂μ, 

(νμ=∂νμ-∂μμ,B={,~})となり,この場合, 

上で問題にした零質量粒子βはNL場:Bです。
 

容易にわかるように∂ννμはBをZ3μ,だけ含むため,

 

0μはBを(31)μBだけ含み,したがってからωを 

求めることができます。 

すなわち,QEDの場合,(1-e0ω)31,0ω=1-Z3-1 

です。このQEDの場合には,次の漸近式: 

νμ()→Y{νasμ()-∂μasν()}.. 

において,Y=Z31/2なので, 

fi{(1-0ω)}-1δfi0iはefi=qiδfi31/20 

となるわけです。
 

最後に,上の証明は荷電粒子:|i>,|f>がLagrangian 

に現われる素な場である,ということを全く仮定してない点に

注意します。
 

それ故,|i>や|f>は,クォーク3体結合状態である陽子 

でもよく,その光子結合定数e陽子|電子|と一致すること 

を証明しています。第6章の「対称性の自発的破れ」の項目 

はこれで終わりです。
 

そこで,今回はここまでです。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館) 

 

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114 . 場理論・QED」カテゴリの記事

コメント

ご無沙汰しています。お加減いかがですか?
TOSHIさんのmixiのアカウントが乗っ取られてるみたいで、サングラスの広告の変なメッセージが来てました。
確認された方がいいとおもいます。

投稿: 耕士 | 2018年6月11日 (月) 00時02分

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