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2018年10月29日 (月)

記事リバイバル⑤(量子通信(続::神はサイコロ遊びをなさる))

※ リバイバル記事第5弾!!同じ日にアップした前記事の続きです。

量子コンピュータの話をしたので,ついでに量子通信の可能性について述べておきましょう。

一般に情報の伝達速度は最高でも真空中での"電波=電磁波"の速さでしかない,つまり光速以上の速さでは意味のある物や事は伝わらないというのが現代の常識です。

光速を超える速さの粒子としては,かつてオーストラリアの学生だったか?が,後にタキオン(tachyon)と名付けられた超光速粒子を発見したというニュースがあったらしいです。

 

しかし,それを追検証しようと当時の人々が努力したにも関わらず,結局再び観測することはできず,結局,幻の粒子とされたという経緯があったと聞きます。

タキオンというのは,日本では競馬の馬の名前にもなりましたが,もしそうした粒子が存在すれば,それは虚数質量を持ち,決して止まることはできず必ず光速以上の速度を持っていて,加速しようとエネルギーを与えると逆に減速してしまうという奇妙な粒子(ロバ粒子?)です。

 

それに,虚数質量というのは物理的にはどういう意味なのかもわかっていません。

かつて,日本で唯一?のハードSFの作家であり遅筆で有名な堀晃(ほりあきら)氏の短編小説集で「太陽風交点」とか「恐怖省」とかというのを読みました。

 

その中ではよくタキオン通信というのが描かれていて,担当者はその通信をした代償として記憶喪失になる,というのがありました。

 

実際,タキオンがあると"巨視的因果律=結果は必ず原因よりも後に起こる。"という自然現象の基本原理が破れてしまうので記憶喪失というのはよくできた設定だと思います。

一方,量子通信というのは,別にタキオンを利用するわけではなく(そもそもそんなものは今のところ存在が確認されていません。),量子力学の非局所性(non-locality)を利用するものです。

つまり,量子テレポーテーションという言葉もあるように,量子力学では2つ以上の場所に同時に存在できるわけです。

 

しかし,これは相対論にも反することで先に述べた巨視的因果律にも違反します。

 

かつて,アインシュタイン(A.Einstein)らは「EPRのパラドックス(Einstein-Podolski-Rosen paradox)」という思考実験を提示し,量子論の一般的解釈は相対論(特に因果律)に矛盾するから間違っている,と主張しました。

これについては,記号論理学で成り立つベルの不等式(Bell's inequality)が,"量子論的なブール代数=量子論理"では破れるということがわかっていたのですが,そのことを実際に実験で確かめることで決着が付きました。

 

それは1980年代に実施されたアスペ(Aspect)の実験などの種々の実験の結果でした。この結果,アインシュタインらの主張が斥けられて彼らの敗北という結果になったわけです。

 

やはり,神はサイコロ遊びをなさる。(God does play dice.)というのが正しかったのですね。

量子論では2つの場所に同時に存在できるわけです。

 

粒子といえども完全に粒子ではなくて拡がりのある波(wave)でもあるわけですから,これは決して不思議ではなく,同じ1つの波の一部がそれぞれ確率的に東京と大阪に同時にあっても不思議ではないわけです。

 

極端にいえば,ハイゼンベルク(Heisenberg)の不確定性原理により,"速度の確定した1つの波=平面波"であれば同一の確率で全宇宙のあらゆるところに同時に行き渡っているということになります

量子論の方程式であるシュレーディンガー方程式(Schrödinger equation)は自由粒子の場合には,いわゆる古典的拡散方程式の時間という実数パラメータを純虚数時間に置き換えれば得られるものです。

 

そもそも拡散方程式は,放物型の偏微分方程式であるということもあって,解は波(波動)とはならず,拡散現象は相対論を破る非局所的な解をもたらす方程式です。

 

つまり,拡散は光速よりも速く影響が瞬時に伝わるという定式化になっています。(アメリカ大陸の西海岸で大地震が起きると,タイムラグもなく即座に日本の海岸で津波が起きるというような方程式です。)

この拡散方程式の時間を虚数にして得られるものがシュレーディンガー方程式ですから,その解が非局所的でテレポーテーションが可能なことを示し,巨視的因果律を破るものであるとしても不思議ではないわけです。

 

しかし,虚数を入れたため放物型方程式なのに解は波動になります。

 

シュレーディンガー方程式を特殊相対論と結合したディラック方程式(Dirac equation)においても状況は同じです。

 

ただ解である波動関数,あるいは確率波は直接観測にかかる量ではないので,その意味では因果律を破るとは言えないかもしれません。

相対論を含む現代の量子論では,巨視的因果律は破れても微視的因果律は破れてはいません。

 

後者は"空間的(space-like)に離れた2時空点における物理量の交換関係はゼロである,つまり物理的に無関係である。"というものです。

 

空間的に離れた2時空点というのは,光速信号でつなぐことが不可能な2つの事象(出来事)のことです。

だから,情報伝達が可能であるかどうか?という意味では量子論の非局所性は実用的ではないのではないか?

 

(つまり,たとえ東京と大阪のように離れていても相関(EPR相関)のある情報であっても,それとは別に東京で得た情報を即座に大阪に伝えられる実用的手段がないなら個々独立に情報を得るのと同じで,一方で得た情報を超光速で情報を知らない他方に伝えるという意味はない。)

 

と私は思っていたのですが,量子コンピュータと同じくそうした問題はクリアされる道があるらしいということです。

 

ただ,それについては,私はまだ上に述べてきた認識があるくらいで十分な知識を仕入れているわけではありません。

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