記事リバイバル⑧-2(原子核のα崩壊の理論[Ⅱ])
※続きの再掲載リバイバル記事です。やはり,HTMLではなくテキストを編集し直すと文字サイズなどが化けてしまいがちです。。
以前,ときどき,「お前の記事は参考文献と書いてるけど実は,その参考書の丸写しに過ぎないじゃないか。。」との批判めいたコメントがありましたが,その本を読み丸写しだとわかる程度の方であれば別に私の記事を読む必要はないでしょう。
私の勉強法は坊主の写経のごとくノートに書き写しながら(外国語なら翻訳して),躓いて理解できないときは自分なりに行間を埋めてゆくというモノで,その履歴ノートを「自己満足的に」ブログ=日記としてまとめたツモリの備忘録であり。。。他者を啓蒙してあげようとかの教師的な意図は無いですから。。
元本を自力でスラスラ読める方なら私の拙い記事を参照して頂く必要は無いでしょうね。
自然科学の解説文というのは,オリジナルな発明や発見で無い限り,所詮はパクリにすぎないですから。。。※
さて前記事の続きです。
動径波動関数:u(r)(特にuf(r))を具体的に求めるために1次元のSchroedinger方程式に対してWKB近似(準古典近似)を行ないます。
まず,波動方程式:[-hc2/(2m)](d2u/dr2)+[V(r)-E]= 0 において,V(r)=Eを満たすrをrEと名付けます。
こうすれば,V(r)は減少関数ですから,r<rEではV(r)>E,r>rEではV(r)<Eです。
そこで,r<rE の部分を領域Ⅰとして,
κ(r)≡(1/hc)[2m{V(r)-E}]1/2と定義すると,
これはこの領域Ⅰでは常に正の実数で,
波動方程式は,d2u/dr2-κ(r)2=0 です。
同様にr>rE の部分を領域Ⅱとして,
k(r)=(1/hc)[2m{E-V(r)}]1/2と定義すると,
これはこの領域Ⅱでは常に正の実数で,
波動方程式は,d2u/dr2+k(r)2=0 です。
さて,まず領域Ⅱ:謂ゆる振動的領域においてWKB近似を実行します。
平面波の拡張として,u(r)≡eiS(r)とおくことでS(r)を定義すると
波動方程式d2u/dr2-κ(r)2=0 は,
(dS/dr)2+id2S/dr2=-k(r)2となります。
これを積分すると,形式的に
S(r)=±∫[k(r')2+id2S/dr'2]1/2dr'を得ます。
ここで,第1近似としてこの式の右辺の被積分関数で項d2S/dr2を無視すると,S(r)~S1(r)=±∫k(r')dr'となります。
さらに,d2S1/dr2=±dk/drですから,第2近似として
S(r)~S2(r)=±∫[k(r')2±idk(r')/dr']1/2dr'
(複号同順)を得ます。
この第2近似のS2(r)をS(r)と同一視する近似を採用します。
これをWKB近似といいます。
この近似が正当化されるためには,S2(r)~S1(r)が成立することが必要かつ十分な条件です。
そのためには,|dk/dr|<<k(r)2であることが必要です。
u(r)≡eiS(r)を1次元の波と考えると,λ(r)=2π/k(r)は局所的な波長を意味しますから,この条件は|dλ/dr|<<1です。
あるいは,V(r)が有意な変化をする距離をdとすると,λ(x)<<dという条件に相当します。
いずれにしろ,|dk/dr|<<k(r)2が散乱現象を"準古典近似=WKB近似で表現してもよい"ための条件になります。
|dk/dr|<<k2の条件下では,さらに
[k2±idk/dr]1/2~k[1±i(dk/dr)/(2k2)]と近似できるので,
S2(r)~±∫k(r')dr'+(i/2)ln[k(r)] となります。
以上から,振動的な領域ⅡでのWKB近似解は,
uⅡ(r)=eiS(r)=[k(r)]-1/2exp[±i∫k(r')dr']
となります。
ここで積分の下限をrE に固定します。
方程式が線形なので一般解は線形結合で表わすことができて,
uⅡ(r)=AⅡ[k(r)]-1/2cos [ξ2(r)+φ]
と書くことができます。
ξ2(r)は,ξ2(r)≡∫rErk(r')dr'で定義されています。
次に指数的な領域Ⅰについて,やはりu(r)≡eiS(r)とおくことにより
S(r)を定義すると,
ほとんど同様な方法によって,
uⅠ(r)=eiS(r)=[κ(r)]-1/2exp[±∫κ(r')dr']
を得ることができます。
そこで要求される条件として第Ⅰ領域でrの減少する向きに減衰する解を取ると,uⅠ(r)=AⅠ[κ(r)]-1/2exp[-ξ1(r)]となります。
ξ1(r)はξ1(r)≡∫rrEκ(r')dr'で定義されています。
そして,この近似が成立する条件も|dκ/dr|<<κ(r)2です。
あとはuⅠ(r)とuⅡ(r)がr=rEで滑らかに連結するように全ての不定定数を決めればいいわけです。
ところが,r=rEではκ=k=0 なので,そもそもWKB近似が成立する条件は完全に崩れてしまうため,この近似では単に接続させるだけではまずいわけです。
そこでこの折り返し部分で狭い領域Ⅲを考え,その領域では近似的にV(r)を負の傾きを持ちr=rEでEを通る直線で近似します。
つまり,V(r)~E[1-a(r-rE)] (a>0 )ですね。
これを解くにはベキ級数解を仮定して係数を比較する手法を用いる必要があるわけで,結局このV(r)に対する動径波動関数u(r)として,厳密には特殊関数の1つであるある種のBessel関数が得られることになります。
これを示すためには長たらしい計算の連鎖が必要なのですが,ここでは省略します。
これは,先に直線近似を仮定しましたが,近似は別に直線でなければならないという明確な理由はなく他の近似をしてもかまわない,という意味で,"本質的でない特別な近似手法に関して真面目に論じる必要はないだろう。"と考えたのがその理由です。
WKB近似の本質は既に述べたと考えられるので,計算結果だけ書くと,
規格化の曖昧さがあるので,AⅠとAⅡはその比だけが決まって
AⅡ=2AⅠ,また位相の方はφ=-π/4 と決定されます。
結果をまとめると,uⅠ(r)=A[κ(r)]-1/2exp[-∫rrEκ(r')dr'] (r<rE),uⅡ(r)=2A[k(r)]-1/2cos[∫rErκk(r')dr'-π/4] (r>rE)です。
最後に,規格化条件∫|uf|2dr=ρf(E)から,uf(r)=uⅡ(r)として定数Aを定めることにします。
娘核の重心を中心として十分大きい半径R∞を持つ球をとり,その球面上ではuf(R∞)=uⅡ(R∞)= 0 になると仮定します。
r≦R∞ではV2(r) ~ 0 なので,k(r) ~ (2mE/hc)1/2=k(一定),uf(r) ~ 2Ak1/2cos[k(r-rE)-π/4]となります。
束縛されていないα粒子のエネルギーEはE=hc2k2/(2m)ですから,
状態密度はρ(E)=dn/dE=(dn/dk)(dk/dE)dE
=[m/(hc2k)](dn/dk)です。
2Ak1/2cos(kR∞+δ)=0 (ただしδ=-krE-π/4 )より,
kR∞+δ=(n+1/2)π(nは整数)となるはずですから,
dn/dk=R∞/πが得られ,ρ(E)=(mR∞)/(πhc2k)
となります。
そこで,∫rER∞κ|uf|2dr=ρf(E)で,
uf(r)=2Ak1/2cos(kr+δ),ρf(E)=(mR∞)/(πhc2k)
を代入することから,結局,A=[m/(2πhc2)]1/2が得られます。
一方,ui(r)の方はV1(r)=-V0(r<R),V1(r)=VR(r≧R)から
直接に解いて,ui(r)=Bsin(k0r) (r<R),
ui(r)=Cexp[-κ0(r-R)](r≧R)
で与えられます。
ここで,k0=(1/hc)[2m(E+V0)]1/2,および,
κ0=(1/hc)[2m(VR-E)]1/2です。
定数B,Cについては,r=Rで滑らかに連結する条件と規格化条件から定まりますが,ここではそれを決めることは省略します。
r=R 付近での動径波動関数として終状態:uf(r)
=[m/(2πhc2)]1/2[κ(r)]-1/2exp[-∫rrEκκ(r')dr'](r<rE),
始状態:ui(r)
=C exp[-κ0(r-R)](r≧R) の両方が得られました。
これらを実際に,
w=[(2π/hc){hc2/(2m)}2|(duf*/dr)ui-uf*(dui/dr)|2]r=Rに代入してα崩壊の崩壊確率wを計算します。
ここで,duf*/drの計算に際して[κ(r)]-1/2のrによる変動は指数関数の変動に比べごく小さいので,それを無視し,
κ(r)としてκ(R)=κ0=(1/hc)[2m(VR-E)]1/2(一定)を用いることにします。
このとき,w=C2hcκ0P,P=exp[-2∫κ(r')dr']=exp[-(2/hc)∫RrEκ{2m(2Ze2/r'-E)}1/2dr']となります。
右辺の積分は初等的に実行可能で,
(2/hc)∫RrE{2m(2Ze2/r'-E)}1/2dr'=
[(32mZ2e4)/(h2E)]1/2{cos-1(R/rE)-(R/rE)-(R/rE)2}1/2}]
となります。
rE>>Rなので,右辺の{cos-1(R/rE)-(R/rE)-(R/rE)2}1/2を[π/2-(R/rE)1/2]で近似します。
2Ze2/rE=Eより,rE=2Ze2/Eですから,結局,
P=exp[-{2πe2(2m)1/2/hc}(Z/√E)+(4e√m/hc)(ZR)1/2]
となります。
半減期と崩壊確率の関係は,
T1/2=ln2/w=ln2/(C2hcκ0P)ですから,
logT1/2=-logP+const となります。
これから,logT1/2=a[Z/(√E)]+bと書けることがわかります。
この式のパラメータは,a=[2πe2(2m)1/2/hc](loge)>0 etc.と陽に表わすこともできますから,結局「Geiger-Nuttallの法則」が理論的に示されたことになります。
参考文献;八木浩輔著「原子核と放射」(朝倉現代物理学講座)
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