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2019年1月14日 (月)

記事リバイバル⑧の1(原子核のα崩壊の理論[Ⅰ])

※前回の記事リバイバル⑦とと前後しますが,「原子核のα崩壊」を量子論の「トンネル効果」と見なしてWKB近似を用いて解いたG.Gamow(ガモフ)の仕事を紹介した2006年の10/4と,10/5の過去記事を再掲載しておきます。※ 

原子番号が (Z+2)の放射性核のα崩壊による半減期を T1/2とし,その崩壊で放出されるα粒子のエネルギーをEとすると,これは 

 logT1/2=a[Z/(√E)]+b  

 という関係式でうまく表現されることが知られています。 

    

(※α粒子はヘリウムの原子核:24Heなのでα崩壊により原子番号(Z+2)の放射性核になります。)

これはガイガーヌッタル(Geiger-Nittal)の法則と呼ばれています。

(なお,ここでのlogは常用対数であり自然対数lnではありません。) 

 このGeiger-Nuttallの法則を説明した有名なジョージ・ガモフ 

(George Gamow)のα崩壊の理論は,量子力学に特有のトンネル効果 

という現象を応用した理論です。
 

 これは,定常的な理論で説明されることも多いようですが, 

ここでは量子遷移を中心とした非定常的な理論とWKB近似に 

よって理論を展開したいと考えます。
 

(※注:WKB近似とは,Wentzel,Kramers,Brillouinによる近似法で 

別名:準古典近似とも呼ばれています。※)
 

 まず,hをPlank定数とし,hc(h/2π)とします。
 

 α崩壊は初期状態:|i>=ψiから終状態:|f>=ψfへの量子遷移であると考えて,崩壊過程に時間を含む摂動論を適用することにします。
 

 摂動論によれば,摂動HamiltonianをH'とするとき, 

 最低次の遷移確率wは,黄金律(Golden rule)として有名な式: 

 w=(2π/c)|<f|H'|i>|2ρf(E)で与えられます。
 

 ここで,<f|H'|i>は<f|H'|i>≡∫ψf*H'ψi3xなる 

H'の行列要素で,ρf(E)は終状態fのエネルギー状態密度です。

 以下,簡単のため,α粒子の軌道角運動量がゼロのS波のみを 

考えることにします。
 

 すると定常状態の波動関数は動径rだけの関数になるので, 

 ψ()=[1/(4π)]1/2u(r)/rと置くと規格化は, 

 1=∫|ψ|24πr2dr=∫|u|2drと書けます。

 

 

 

 そしてH'もrだけの関数であるとすると, 

 <f|H'|i>=∫ψf*H'ψi3x=∫uf*H'uidr 

 と書けます。
 

 さらにuiはそのままでufのみ, 

 ψf()(ρf(E))1/2=[1/(4π)]1/2f(r)/rのように, 

 ∫|uf|2dr=ρf(E)と規格化しておけば, 

 黄金律はw=(2π/c)|∫uf*H'uidr|2と簡単になります。
 

 原子核の半径(有効レンジ)をRとし,核力とクーロン斥力の合成されたポテンシャルV(r)を,V(r)=V1(r)=-V0(r≦R);(V0>0), 

 V(r)=V2(r)=2Ze2/r(r≧R)とモデル化します。 

 (MKS単位では係数4πε0が面倒なので,c.g.s.単位を取ります。)

"α粒子=ヘリウム原子核"の質量をmとすると,Schroedinger方程式は, 

 rの1次元方程式となって, 

 [-c2/(2m)](d2u/dr2)+(V(r)-E)=0 です。
 

 これは,u=ui,V(r)=V1(r),E=Eiと置けば, 

 r≦Rにおける束縛状態ui(r)の満たす方程式になり, 

 u=uf,V(r)=V2(r),E=Efと置けば, 

 r≧Rにおける散乱状態uf(r)の満たす方程式となります。
 

 そして,核力で束縛されている入射α粒子のクーロン障壁によって受ける摂動H'は明らかにH'(r)=V(r)-V1(r)と書けます。
 

 これはr≦Rではゼロであり,r≧Rでは(V2(r)-V1(r)) 

ですから,第1近似の崩壊確率は 

w=(2π/c)|∫Rf*(V2-V1)uidr|2  

 となります。
 

 この崩壊確率wを求める式の積分で,VはSchroedinger方程式 

から,a(r)ua=Eaa+[c2/(2m)](d2a/dr2) 

(a=i,f or 1,2 )となるので,これを代入します。
 

 Ef=Eiであることに注意し,積分を行う際にuのrによる2階導関数を部分積分によって消去して,r=∞ではuもdu/drも消えることを用いると次の表式が得られます。
 

 すなわち,崩壊確率w=(2π/c)|∫Rf*(V2-V1)uidr|2は, 

w=[(2π/c){c2/(2m)}2|(duf*/dr)ui-uf*(dui/dr)|2]r=Rと表現されます。
 

 このことから,ui(r)とuf(r)の動径rが核半径R付近にある,

つまりr~Rのときのそれらの関数形を求めることが非常に重要になります。 (つづく)

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