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2019年2月

2019年2月25日 (月)

くりこみ理論(次元正則化)(2)

くりこみ理論(次元正則化)の 続きです。
 

4次元時空のテンソル添字で縮約されず残っているものは, 

そのまま.抽象的にn次元時空の添字とみなしておきます。
 

計量テンソルgμνもそうです。縮約された場合はn次元の 

内積となり,特にgμμ=n..(14) です。
 

ただし,完全反対称テンソルは添字の個数が次元数nに等しい 

場合だけ定義できるものなので,一般の複素数nに自然に拡張 

することはできません。そこで4次元のεμνλσはn次元時空 

でも添字(μ,ν,λ.ρ)(0,1.2,3)の置換:σになってるとき 

のみゼロでなく,sgnσの値をとる定数テンソルであると定義 

しておきます。
 

Diracスピノルの複素n次元への拡張にはかなり任意性が 

ありますがここでは任意の偶数次元n=2kの場合に拡張し 

2n/2成分の既約SO(1.n-1)スピノルを考えます。
 

(※n=2kのとき,SO()はk個の2次元スピノル空間に 

分解されます。全体は2次元空間の直積です。例えばn=6 

k=3での基底は,[1.0]t×[1.0]t×[1.0]t etc.であり,合計 

で8=23個です。※)
 

このスピノルで定義されたガンマ行列は, 

{γμ,γν}2μν.(15)を満たす抽象的代数量であり,その 

トレース(対角和)Tr(γμγν)μνTr(1)=gμν2/2(16) 

という規約になります。
 

(※このTr(1)2/2という式について深く考える必要はなく 

n=4のときTr(1)4となるようなnの連続関数であれば 

いいです。※)
 

ここで,唯一の問題となるのは偶数n=2k次元のγ5=γ5 

行列です。これは,Γ5ik-1γ0γ1..γn-1 

{ik-1()n-1/!}εμ1μ2..μnγμ1γμ2..γμn(17)であり, 

完全反対称テンソルεμ1μ2..μnと同様 .複素n次元に拡張する 

ことはできません。そこで4次元のεμνλρの場合と同じく, 

γ5iγ0γ1γ2γ3.{(i)/4!}εμνλργμγνγλγρ(18) 

定義される決まった行列と考えることにします。
 

こうするとγ5はγ0,γ1,γ2,γ3とは反可換ですが他のγμとは 

可換という面倒な性質を持つことになります。
 

γ5やεμνλρを複素n次元に自然に拡張できないので,もしも 

ゲージ変換がγ5やεμνλρを含む場合,次元正則化でもゲージ 

不変性を壊します。これが後述するようなアノマリー(量子異常) 

に関係しています。
 

§7.2 1-loop計算と乗法的くりこみ 

本節では紫外発散がどのように現われるか?を見るため,具体的 

に1つの簡単な模型をとって1^loop計算を実行します。 

合わせて,現われる発散をどう処理するか? 謂わゆる乗法的 

くりこみ(multiplicative renormalization)の手続きについて 

説明します。
 

簡単な模型として,アイソスピンが1のスカラー場: 

φ(φ1,φ2,φ3)T,アイソスピンが1/2Dirac: 

ψ(ψ1,ψ2)Tから成る湯川相互作用系:Lagrangian密度 

がL=(1/2)(μφμφ-μ2φ2) 

ψ~(γμμ-m-gφτ)ψ(λ/8)(φ2)2 

で与えられるものを考えることにします。
 

Feynmanグラフにおいて,φの伝播関数は点線でψの伝播関数は 

矢印付きの実線で表わすことにします。
 

※下の図7.1,7.2Fermion(Dirac)の自己エネルギー 

のグラフです。


    図7.2では,左辺のFermionの2点Green関数(伝播関数): 

 iF'()=<0|[ψ()ψ(0)]|0>には図で灰色のblobで  

示した1PI(1粒子既約)なグラフ全体が図7.2右辺のように  

繰り返しの形で効きます。

しかし,運動量表示での左辺の総和:iF'(),7.1の左辺 

では,上述の自己エネルギーを図7.2と同じく灰色blob 

示していますが,これをiΣ()と記せば,7.2が簡単に 

表現されて,iF'()i(p-m)-1 

{i(p-m)-1}{iΣ()}{i(p-m)-1} 

{i(p-m)-1}{iΣ()} {i(p-m)-1}{iΣ()}

{i(p-m)-1}..i{p-m-Σ()}-1i{Γψ(2)()}-1

となります。
 

(2-1):最右辺のΓψ(2)()はψによる2点1PI頂点関数を 

示す記号です。頂点関数は2点の場合,特別に2点Green関数の 

逆数に一致します。 

つまり.Γψ(2)()=-{iF()}-1{iΣ()} 

i{p-m-Σ()} 

です。
 

久しぶりの記事で,これらの意味を再認識するために, 

少々長たらしいですが2017年9/7の過去記事: 

「対称性の自発的破れと南部-Goldston粒子(3)」から 

「ゲージ場の量子論」の第4章摂動論(経路積分) 

有効作用・有効ポテンシャルと頂点関数の定義や, 

それらの関係について記した(3-1)を再掲します。
 

(※以下再掲載記事開始)
 

(3-1):有効ポテンシャルの定義,意味については, 

本ブログの20149/21から20154/21までにアップした 

記事:「ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論) 

(1)(12)において摂動論を記述した後,有効作用,およ, 

有効ポテンシャルの項に入る予定でしたが,その直前で中断 

して,このシリーズ再開後は間の項目を飛ばして 

「ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論)(15) 

に進んでいました。
 

そこで,この記事シリーズから,適宜,必要事項を引用し,これに 

追加して説明します。
 

便宜上,(12)Grassmann 代数の知見と面倒な考察を要する 

Fermion場の話は考慮せず,(1) (11)Boson場のみから成る 

系で考えます。
 

まず,時間tを含むHeisenberg表示の初期()状態,終状態を, 

それぞれ,|φ,,|φ,|>として,その遷移振幅を, 

位相空間の積分:∫∫DπDφによる経路積分で表わすと, 

<φ,|φ,

=∫∫φ(,tI)=φI()φ(,tF)=φF()DπDφ 

×exp(i∫tItF[π()φ()(π(),φ())]) 

となります。
 

この式の右辺から,先に∫Dπだけを実行して,配位空間の積分: 

Dφのみによる積分表式にしたものは,Nを比例定数として, 

<φ,|φ, 

=N∫φ(,tI)φ()φ(,tF)φ()Dφ 

×exp[i∫tItF(φ,∂φ)] です。
 

次に,特にGreen関数の経路積分を考えます。
 

必ずしもφの固有状態ではない一般の状態を想定し初期状態 

|Ψ,,終状態を,|:Ψ,F>として, 

一般化されたN点Green関数を, 

()(,..,; Ψ,;Ψ,F) 

≡<Ψ,F|[φ()..φ()]|Ψ, 

/<Ψ,F|Ψ, 

=<Ψ,|exp(iF)[φ().φ()exp(i)]|Ψ 

/<Ψ|exp{i(F-t)}|Ψ> によって,定義します。
 

これを変形して,最終的にGreen関数の経路積分式として. 

()(,..,;Ψ,;Ψ,F) 

=NFIDφΨ[φ()] Ψ[φ()]φ()..φ() 

×exp[i∫tItF(φ,∂φ)] を得ます。
 

ここで,一般化されたGreen関数の生成汎関数:FI[]なるもの 

を次のように定義して導入します。
 

すなわち,FI[] 

=<Ψ,F||exp{i∫dxJ()φ()}| Ψ, 

/<Ψ,F|Ψ,> です。
 

FI[]をJでN階微分してJ=0 と置いたものが一般化された 

N点Green関数になります。 

つまり,[δFI[]/δJ()..δJ()]jJ(x1)..(xN)0 

=G()(,..,; Ψ,;Ψ,F) です。
 

実は,これが,FI[]がG()(,..,; Ψ,;Ψ,F) 

の生成汎関数である,という意味です。
 

そして,一般化されたGreen関数は,特に初期状態:|Ψ, 

終状態:|Ψ>が共に系の真空状態 |0>であるとしたとき, 

通常の意味のN点Green関数; 

()(,..,)=<0|(φ()..φ())0 

に一致します。
 

さて,話は重複するかもしれませんが, 

相互作用:int(φ)が存在して,Lagrangian密度, 

(φ,φ)(1/2)μφμφ(1/2)μ2φ2()int(φ) 

で与えられる実スカラー粒子の場:φ()を想定します。
 

この相互作用しているスカラー粒子のN点Green関数G(), 

()(1,..,N)=<0|(φ(1)φ(2)..φ()|0 

で与えられますが,これの生成汎関数を特にZ[]とします。
 

[],配位空間の経路積分によって 

[]=N∫Dφ exp[i∫d{(1/2)φ(□+μ2)φ+int(φ)

+Jφ}] 

=N∫Dφ exp[i{(1/2)φ*(□+μ2)φ+J*φ}]と書けます。
 

右辺の最後の式では,煩わしい∫dxという表現を省略するため, 

時空座標xの任意関数φI),ψ()に対して,内積とよばれる 

演算:φ*ψを,φ*ψ=∫dxφ()ψ()=ψ*φによって定義 

導入しました。
 

[],結局,[]=<exp[i∫d{int(φ)+J*φ}]0 

/exp[i∫d{int(φ)}0 なる式に表わせることが 

わかります。
 

ただし,任意のφの汎関数F(φ)について, 

(φ)0(exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔ*(δ/δφ)}*(φ))φ=0 

と定義しました。
 

(φ)0の意味はF(φ)に左から微分演算子: 

exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔ*(δ/δφ)} 

=Σk=0(1/k!)(1/2)k(δ/δφ)*iΔ*(δ/δφ)}を作用させ 

最後にφをゼロと置く操作です。
 

これは,exp[i∫d{int(φ)+J*φ}]0では, 

級数展開Σk=0(1/k!) )1/2)(δ/δφ)*iΔ*(δ/δφ)} 

1次ごとにexp[i∫d{int(φ)}]からφ()φ()のような 

φの対を1つ取り除き,代わりに自由場のFeynman伝播関数: 

iΔ(x-y)=<0|(φin()φin()|0> で置き換える 

という操作を示しています。
 

そして,係数(1/2)はxとyの交換の自由度2で割ることを意味  

します。また,自由場のFeynman伝播関数は,Fourier積分の形で  

Δ(x-y)=∫d4(2π)-4[exp{i(x―y)} 

/(2-m2iε)] なるものです。
 

生成関数における指数関数の級数展開は,  

[]=<exp[i∫{int(φ)+J*φ}]0  

/exp[i∫{int(φ)}0

=Σ=0(1/m!)∫d41..  

iint(1).. iint()exp(i*φ)0/(分母) 

となります。
 

右辺の級数展開は相互作用intに比べて,微小な摂動で 

あると考えたときの摂動展開級数そのものです。
 

(分母)=<exp[i∫{int(φ)}0の効果については,遷移 

要素の摂動計算に考慮すべきでないと考えられる真空泡グラフを 

(分子)から相殺して除去する操作に関わるものなので,本質的寄与 

をする(分子)の各項について具体的計算方法を考えます。
 

具体的には,< >0.まず.φの2個の積の場合,明らかに, 

φ(1)φ(2)0iΔ(1-x2)[φin(1in(2)]  

です。便宜上,iΔ(1-x2),Symbolic[φin(1in(2)] 

なる記号で表現しました。このように,φ(1),φ(2)の組を 

Feynman伝播関数 iΔ(1-x2)で置き換える操作を縮約 

(contraction)と呼びます。
 

以下.具体的に,経路積分による定式化を整理すれば,Feynman 

グラフによる通常の伝統的摂動論の計算法に一致することが 

示せることを記述しています。
 

Fermionへの一般化もできますが,今回これは省略します。
 

ここまでは既に記述した過去シリーズ記事の(1)(11) 

内容です。
 

ここから今回本題の「有効作用と有効ポテンシャル,」の 

話を追加します。
 

まず,Green関数の生成汎関数は, 

[]=<0|exp(iJ*φ)]|0 

=<exp[i∫{int(φ)+J*φ}]0 

/exp[i∫{int(φ)}0 

­­=N∫φexp[i{[φ]Jφ}]  

と表現されます。
 

このとき,[]exp{i[]}によって,[]を定義します。
 

proper連結グラフ(固有連結グラフ)とすると, 

[]expと表わせるので,i[]は連結固有Green関数 

の生成汎関数です。
 

一方,[]=S[φ]+Jφと表わしていますが,具体的には, 

Jφ=∫d4xΣiiφi(),であり,[φ]は作用積分の形で 

[φ]=∫d4(φ(),φ()) です。
 

ここで,有効作用;Γ[φ]をW[]から.汎関数のLegebdre変換: 

Γ[φ]=W[]Jφ によっ定義します。
 

ところで,δZ/δi 

(iδW/δi)Z=i0|φi()exp(iJ*φ)]|0>より, 

φ~i()(δW/δJi) 

0|φ()exp(iJ*φ)]|0/Zとおくと, 

φ~i(x)(δW/δi),()という外場が存在する 

ときの場:φ()の期待値を意味することがわかります。
 

Γ[φ]をJ()でなく,上記の期待値:φ~i()の関数: 

Γ[φ~]と考えると,()=δΓ[φ~]/δφ~i()です。
 

(※注:何故なら.WはJの関数と見ると,Wのφ~iによる微分は

δW/δφ~i=Σk(δJ/δφ~i)(δW/δJ) 

=Σk (δJ/δφ~i)φ~k であり, 

一方,δ(Jφ)/δφ~i(δJ/δφ~i)φ~+Jなので, 

δΓ/δφiδW/δφ~i-δ(Jφ)/δφ~i=-Ji 

となるからです。(注終わり※)
 

有効作用:Γ[φ~]が重要な理由の1つは,これが1PI 

(1粒子既約)な頂点関数:Γ()の生成汎関数になっている点: 

つまり,Γ[φ~]=Σn=0(1/!)∫d41..4n 

φ~i1(1)..φ~in(n)Γ()i1..in(1,..n) 

となっている点です。
 

ここで,[]に効くグラフで伝播関数の線を1本切ってグラフ 

が2つの部分に分離できるとき,その線を関節線と呼びます。 

伝播関数の線が外線のそれであれば常に関節線ですが,外線以外 

に関節線を持たないグラフを1PI(1粒子既約)なグラフ,内線 

にも関節線があるそれを1粒子可約なグラフと呼びます。
 

結局,Γ[φ~]は量子効果であるループグラフを除く単純な 

Treeレベルでは,cPlanck定数としたO(c)を除く近似 

で古典的作用積分:[φ~]=∫d4(φ~,∂φ~)に一致します。
 

この有効作用の物理歴意味をさらによく理解すべく,より特殊な 

場合を考えます。
 

外場Jと期待値φ~が共に時間x0=tに依存しない場合を 

考えると,この場合.時間並進不変性があるのでW[],Γ[φ~] 

の∫d4x表現から,無限大の時間因子:  

T=∫dx0がくくり出せます。
 

すなわち,[()=J()] =-w[()]∫dx0, 

Γ[φ~()=φ~()]=-E[φ~()]∫dx0  です。
 

さらに,Jとφ~が時空座標xに完全に依存しない定数の場合. 

[()=J]= =-w[]∫d4, 

Γ[φ~()=φ~]=-V[φ~]∫d4 です。
 

最後の,[φ~]はφ~の関数であり,有効ポテンシャルと 

呼ばれます。
 

3次元空間のの関数:φ~()の汎関数:[φ~()]には 

決まった名称はありませんが,[φ~]にならって 

有効エネルギーと呼んでおきます。
 

Jとφ~がt=x0に依存しないときを考えると, 

[]exp{i[]}exp{i[]} 

=<0| exp{i[]}0,ただし,[] 

-∫d3()φ~(), 

Hはエネルギーを意味するHamiltonianです。
 

つまり,期待値の関数としては, 

=∫d3{π~φ~(φ~,∂φ~)}, 

=-∫d3(φ~,∂φ~)=-Lです。
 

何故なら,φ~がt=x0に依存しないため, 

共役:π~=∂L/(0φ~)=∂0φ~ 

がゼロだからです。
 

そして,真空:|0>はエネルギーHの最低固有値状態 

(基底状態)でしたが,ここでも-iε処法を採用していると 

すれば,T=∫dx0=∞ の極限では,事実上, 

[]-∫d3()φ~()の基底状態:|0 

のみがexp{i[]}=<0| exp{i[]}0 

|0>に効きます。
 

それ故,T → ∞ではw[][]の基底状態の 

エネルギー固有値です。 

つまり,[] |0>=w[] |0>です。
 

他方,この)固有値問題は,量子力学の変分原理の問題と同じく, 

<Ψ|Ψ>=1,<Ψ|φ()|Ψ>=φ~()の下で,<Ψ||Ψ> 

を停留値にする停留解:|Ψ>を求める停留問題とみなすことが 

できます。すなわち,この,|Ψ>=E|Ψ>の解が, 

|Ψ>=|0,E=w[]を与えます。
 

したがって,場の理論で真空を探す問題では,予め並進不変性を 

考慮して,[φ()]に依存しないφ~の関数である有効 

ポテンシャル[φi~]の停留点を∂V[φ~]/∂φi~から 

求めればいいです。
 

結局,有効ポテンシャル:[φ~],場φi()の期待値がφi~ 

(定数)である条件下での基底状態のエネルギー密度と解釈され 

その最低の固有値に対応する状態が真空です。
 

※※  

有効作用:Γ[φ~]1粒子既約な頂点関数:Γ()の生成汎関数で 

あったことから従う有効ポテンシャル:[φ~]のもう1つの側面 

に注意します。
 

頂点関数:Γ()の運動量表示Γ~()を運動量保存のδ関数を外して 

定義します。 

∫d41..4n exp{i11..inn}

Γ()i1/..in(1,..,n) 

=Γ~() i1..in( (1,..,n)(2π)4δ4(1..+pn)

です。
 

Γ[φ]=Σn=0(1/!)∫d41..4nφi1(1)..φin(n) 

Γ()i1..in(1,..n)において, 

φi()=φ~i(定数)とし,[Φ]の定義式,および, 

(2π)4δ4(p=0)=∫d4 exp(ipx)|p=0を考慮して 

[φ~]=-Σn=0(1/!)φ~i1..φ~inΓ~()i1..in(0...,0) 

を得ます。
 

すなわち,有効ポテンシャル:[φ~]は運動量pi 

が全てゼロのときのn点頂点関数の生成関数 

という意味を持っています。
 

[]の経路積分表式: 

[]exp(i[])­­=N∫φexp[i{[φ]Jφ}] 

,Γ[φ~]=W[])­­Jφ=に代入して,自然単位にPlanck定数: 

cを復活させると, 

Γ[φ~](ic)ln[φexp{(i/c){[φ](φφ~)}] 

経路積分φの積分変数をφ → φ+φ~と変数置換し, 

-Ji()=δΓ/δφiを代入すれば,Γ[φ~] 

(ic)ln[φexp{(i/c){∫d4 

([φφ~](δΓ/δφ)φ)}] です。
 

ここで,[φφ~]をc-: φ~のまわりで量子場:φ() 

で展開すると,[φφ~][φ~](/∂φi)φi 

(1/2)φi|(iF)-1φ~}ijφjint[φ;φ~] です。
 

ここに,|(iF)-1φ~}ij,|(iF)-1φ~}ij 

(2[φφ~]/∂φi∂φj)|φ=0(2[φ~]/∂φ~i∂φ~j) 

で与えられます。
 

これは場:φの期待値がφ~であるような真空の上でのFeynman 

伝播関数の逆数であり,int[φ;φ~]φについて3次以上の 

φ~における相互作用項です
 

この[φφ~]の展開をΓ[φ~]の表式に代入すると, 

Γ[φ~]=∫d4[φ~]+Γ~[φ~] : 

Γ~[φ~](ic)lnφexp[(i/c){∫d4 

[(1/2)φi|(iF)-1φ~}ijφjint[φ;φ~](δΓ/δφ)φ}] 

です。
 

これで,うまい具合に有効作用Γ[φ~]から,古典的作用積分: 

[φ~]=∫d4[φ~]が分離されました。※※
 

(3-1終わり※)
 

(以上再掲載終了※)(2-1終わり※)
 

最初の予定外の過去記事を参照した注釈を書いたため,1記事  

としては長くなり過ぎたので,ほとんど過去の再掲載ですが  

今回はここまでにします。 

(参考文献)九後太一郎著「ゲージ場の量子論Ⅰ,Ⅱ」

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2019年2月 7日 (木)

くりこみ理論(次元正則化)(1)

※昨年は,私の勉強ノートからの覚書きシリーズ記事として 

「自発的対称性の破れと南部-Goldston粒子(20)」を入院中の病院 

からアップしたのを最後に,1990年代に九後汰一郎著(培風館) 

「ゲージ場の量子論」を詳読した内容の紹介・解説記事を中断し 

てましたが,新年(2019)に入り,9月の退院後に壊れたため新調 

してた中古PCで記事を作るツールのMS-Wordの環境が復活 

したので,これの続きを終えてから棺桶に入らないと永眠 

するにも寝覚めが悪そうです。
 

そこで,この書の第7章「くりこみ」の項目から記事を再開 

します。今回のノートは開始日が1997年3月20(47) 

なっています。以下,本文です。※ 

 

7章くりこみ(Renormalization) 

これまでは量子補正,すなわち,loopグラフの計算を行なわず, 

理論が整合的に存在するものとして議論を進めてきました。

 

しかし具体的にloopグラフを計算すると,とたんに紫外発散 

(ultraviolet-divergence)という問題が生じます。 

つまり,loop運動量の大きいところでの積分が発散するという困難 

に遭遇します。

 

この問題を処理するには,まず無限大というモノは直接扱う 

ことができないので,正則化(regularization)という手続きで, 

とにかくFeynmanグラフの積分が収束してwell-defined(無矛盾) 

になるようにします。

 

その次には,諸量を物理的粒子の質量や結合定数で書き直すという 

操作:くりこみ(renormarization)を行ない,くりこんだ後の量が 

正則化をはずした極限でも有限で無矛盾な量になること。。 

を証明します。
 

まず,正則化,特に次元正則化(dimensional-rgurarization)を 

説明します。
 

Pauli-Villar正則化  

Feynmanグラフのloop積分を有限にする方法としてわかりやすい

1つの例は被積分関数中の伝播関数(propagator)を次のように置き 

換えるものです。
 

すなわち,質量がmのBose(運動量k)については 

i/(2-m2iε)i/(2-m2iε)i/(2-Λ2iε)  

i(2-Λ2)/{(2-m2iε)(2-Λ2iε)} … () 

とします。ただしΛ2は十分大きくとっておきます。

 

これを行なうと伝播関数は,2>>Λ21/4のように挙動し, 

元の~1/2より急激に落ちるので積分の収束性が良くなります。

 

(1) の第2項の引き算項は,丁度質量Λを持った負計量粒子の 

伝播関数と見ることもできて,そのように見たときこの粒子 

の場をregulatorと呼びます。regulatorの質量Λは切断(cutoff) 

パラメータとも呼ばれます。

 

(1) の操作でも収束性が足りないときは,さらにregulatorを入れて 

2→∞でもっと速く落ちるようにします。

 

Fermionの場に対しても同様にやれます。 

このような正則化をPauli-Viller正則化といいます。

 

Guptaはこれを改良して可換ゲージ理論の場合のゲージ不変性を 

保つべく、荷電フェルミオンの質量mをloop内で一斉にΛに置き 

換えたモノを引くという方法を提案しました。 

これは「Bose統計に従うスピノルregulator」を導入することに 

相当します。

 

※次元正則化 

Pauli-Viller-Gupta正則化は直観的で計算も簡単でいいのですが 

難点は,非可換ゲージ理論のベクトル場に適用したとき,それ 

がゲージ不変性を壊すことにあります。
 

そこで,ここでは’tHooftVolteraにより提案された次元正則化 

を採用することにし,これを説明します。
 

次元正則化は時空の次元をnとし,解析接続によりこれを複素数に 

拡張します。この正則化の利点はゲージ不変性が次元に依らず 

成立するため,ゲージ不変性を壊さないことです。しかも被積分 

関数の伝播関数の数を増やさず,一般的な積分公式が得られるので 

具体的計算法としても有用なものです。

 

一般にFeynmanグラフの任意のloop積分は,通常の相互作用の場合 

1- loopで頂点(vertex)と伝播関数の数は同じで,それぞれ,(±i)

iが因子なので(±1)が掛かり,Fermionループなら全体として  

(-1)が掛かり,結局Feynmanパラメータ公式を適用すれば,  

∫dn(2π)-n[(μ,μν,..)/(22kp-m2iε)α](2)  

という形のものに帰着させることができます。
 

そこで,まず,最も簡単な式である

I=∫dn(2π)-n[/2-m2iε)α]..(3) 

を評価することから始めます。
 

ガンマ関数の積分表示: 

Γ(α)-α0exp(-st)α-1dt..(4) 

を用います。(0Reα<1

 

(※注1-1);ガンマ関数の定義はReα>0なるαに対して 

Γ(α)=∫0exp(-t)α-1dtです。そこで積分変数を 

t→t=stと置換すれば(4)が得られます。

 

ただしRes>0です。また,0Reα<1でなければならない 

のは,exp(-st)α-1exp{(Re)t} 

×tα-1[cos{(Im)t}isin{(Im)t}の∫0dtの積分が 

収束するために必要です。(1-1終わり※)
 

この(4)の表示自体は,Res>0,かつ,0Reα<1でのみ妥当な式 

ですが,この値域でさらにIms>0ならばtの積分路を複素平面上 

で時計回りに90度回転して虚軸に持っていくことができて, 

-α{iα/Γ(α)}0exp(ist)α-1dt..(5) 

と書き直せます。この表式になればRes>0の必要はなく 

Ims<0,Reα>0の領域で妥当な式となります。

 

そこでs=2-k2iεとおけば,Ims=-ε<0 の条件 

が成立するので,  

I=∫dn(2π)-n[/(22iε)α] 

∫dn(2π)-n(-s)-α 

{(i)α/Γ(α)}0dt 

[α-1∫dn(2π)-nexp{i(2-k2iε)}](6)  

です。
 

以前の第4章経路積分の項で用いたGaiss-Fresnelの積分公式: 

-∞dxexp(iax2/2){2π/(i)}1/2から, 

∫dkexp(itkj2){π/(i)}1/2, 

∫d0exp(itk02){π/(i)}1/2{π/(i)}1/2より 

∫dn(2π) -nexp(itk2)(1)1/2n/2(4πi)n/2です。
 

故に,{(i)α(1)1/2(4πi)n/2/Γ(α)} 

×∫dt[(α-n/21) exp{i(2iε)}]..(7)より, 

結局,I={(i)α+1/2(4π)n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)} 

×(2iε)(α-n/2) …(8)  を得ます。
 

ただし,収束にはRe(α-n/2)0が必要です。 

しかし,一旦(8)の表式が得られれば,これはnについての解析関数 

なので,任意の複素数次元nに拡張できる形です。
 

このとき元の運動量積分が発散していたという事情が解析接続(8) 

においては,次元nに関する極として表現されます。 

これが次元正則化の特徴です。
 

実際,ガンマ関数:Γ()はz=0,1,2,..に極を持ち, 

Γ()=Γ(z+1)/z …(9)ですから, 

Γ(ε)1/ε-γ+O(ε)(γはEuler定数~0.5772..)(10) 

が成立します。
 

(1-2):(10)式を証明します。 

まず,Γ(z+1)=Γ(1){Γ’()}w=1z+O(2) 

=zΓ()であり,Γ(1)1です。

 

そして,Γ()=∫0{exp(-t)z1}dtより、 

Γ’()0{exp(-t)w-1(ln)}dtですから, 

{Γ’()}w=1=∫0{exp(-t)(ln)}dt=-γです。
 

何故なら,本ブログの2003年の過去記事: 

「ガンマ関数とスターリングの公式」でも示したように, 

ガウスの公式: 

Γ()limn→∞[!/{(z+1)..(z+n)}] 

limn→∞[!/{Πk=0(z+k)}]が成立します。
 

そこで,lnΓ() 

limn→∞[lnn-ln(!)Σk=0ln(z+k)]です。
 

それ故,{lnΓ()}/dz=Γ’()/Γ() 

limn→∞[lnn-Σ{1/(z+k)}]と書けます。

 

それ故,Γ’()=∫0exp(-t)z-1(ln)dt 

limn→∞[lnn-Σk=0{1/(z+k){]Γ() 

ですから,{Γ’()}z=1=∫0exp(-t)(ln)dt 

limn→∞[11/21/3+・・+1/nln]を得ます。
 

ところが,limn→∞[11/21/3+・・+1/nln] 

は有限値に収束して,その極限値がオイラー(Eule)rの定数: 

γであることは,よく知られていますから上式の右辺は丁度 

(-γ)に一致するからです。
 

したがって,Γ(1+ε)=εΓ(ε)1-γε+O(ε2) 

であり,故に,Γ(ε)1/ε-γ+O(ε)が得られます。 

(証明終わり)(注1-2終わり※)
 

例えば,I=∫dn(2π)-n[/2-m2iε)α] 

がα=2のときn=4の次元では対数発散するという事情に 

対しα=2ですが時空の次元はn=42δ,δ=α-n/20 

であると仮定すれば, 

(8)の表式:{(i)α+1/2(4π)n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)} 

×(2iε)(α-n/2) において,Γ(α)=Γ(2)1であり, 

Γα-n/2)=Γ(δ)1/δ-γ+O(δ) 

2/(4-n) -γ+O(4-n) ですから, 

Γ(α-n/2)/Γ(α)2/(4-n) -γ+O(4-n)です。
 

さらに,εexp(εln)1+εln+O(ε2)より, 

(2iε)(α-n/2) (2iε)-δ  

1{(4-n)/2}ln(2-ε)+O(δ2) 

また,(4π)n/2(4π)2(4π)-δ 

(4π)2[1{(4-n)/2}ln(4π)+O(δ2)} 

と書けます。
 

よって,(8),I=(i)α+1/2(4π)2{1/δ-γ+O(δ)} 

{1-δln(4π)+O(δ2)}{1-δln(2-ε)+O(δ2) 

(i)α+1/2(4π)2{1/δ-γ+ln(4π)ln(2-ε)+O(δ)} 

を意味します。
 

結局,時空の次元がnで,α=2の場合には, 

I=(i)α+1/2(4π)2 

{2/(4-n)-γ+ln(4π)ln(2-ε)+O(n-4)}(11) 

なる評価式を得ます。
 

これは,(,α),n=42αに1/(4-n)の型の極を持つ 

ことを示していますが,γやln(4π)の定数は常に.この極の部分 

に付随して現われるため,ε~-12/(4-n)-γ+ln(4π).(12) 

として,この全体を無限大部分とみなすのが便利です。
 

※上はα=2を例として計算した結果ですが,くりこみ可能な 

積分式はゲージ対称性を考慮すると,結局,発散が高々対数発散 

である場合なのがわかっているため,次元正則化で現われる 

おける無限大は,すべてこの形で出現します。※
 

さて,(3),(8)のI=∫dn(2π)-n[/(2-m2iε)α] 

{(i)α+1/2(4π)n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)} 

×(2iε)(α-n/2) なる表現式において,

 

積分変数:kを(k-p)に置換し,かつ,2(2+m2) 

変更すると,(2-m2iε){(k-p)2(2+m2)iε} 

(22kp+m2iε)となります。
 

したがって,伝播関数分母の無限小虚部iεを略して 

∫dn(2π)-n[/(22kp-m2iε)α] 

{(i)α+1/2(4π)n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)} 

×(2+m2)(α-n/2)..(13) 

という,より一般的な式が得られます。
 

この(13)の両辺を(/∂pμ)微分することにより(2) 

∫dn(2π)-n[(μ,μν,..)/(22kp-m2iε)α] 

なる形の積分の公式を得ることができます。
 

途中ですが,新項目記事の導入部ということで今回は 

ここまでにします。

  ブログのテンプレートへのオン書きでない文書を投稿 

するのは久しぶりなので,うまくアップできるかな?
 

(参考文献)九後太一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

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2019年2月 1日 (金)

ハッピー・バースディ to me 誕生日です。

何とか69歳の誕生日を迎えました。 

1950年2月1日生まれ,新暦では五黄の寅ですが旧暦では正月前なので六白の丑,です。つまり,丑寅(ウシトラ)年=鬼年ですね。節分では豆をぶつけられる側です。 

数え年では元旦に古希(70歳)を迎えました。古来より希な年齢というわけですが,現在は70歳は全然希じゃないですがネ。 

若い頃はゲバラもキルケゴ-ルも40歳になる前に死んでるし,自分も神に愛された子なので40歳までには死ぬだろう。などと思い上がってましたが。。

ここまで生きると逆にまだまだ死にたく。ない。。と,しょっちゅう入院していても凡人らしく命が惜しくなってきましたが。。。

予告もなく死は突然来るんだろうなァ。。。

「冥土の旅の一里塚,めでたくもありめでたくもなし」(by 休和尚)ですかね。。

「憎まれっ子。。ヨルにハバカリ。。。」

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