くりこみ理論(次元正則化)(2)
くりこみ理論(次元正則化)の
4次元時空のテンソル添字で縮約されず残っているものは,
そのまま.抽象的にn次元時空の添字とみなしておきます。
計量テンソルgμνもそうです。縮約された場合はn次元の
内積となり,特にgμμ=n..(14) です。
ただし,完全反対称テンソルは添字の個数が次元数nに等しい
場合だけ定義できるものなので,一般の複素数nに自然に拡張
することはできません。そこで4次元のεμνλσはn次元時空
でも添字(μ,ν,λ.ρ)が(0,1.2,3)の置換:σになってるとき
のみゼロでなく,sgnσの値をとる定数テンソルであると定義
しておきます。
Diracスピノルの複素n次元への拡張にはかなり任意性が
ありますがここでは任意の偶数次元n=2kの場合に拡張し
2n/2成分の既約SO(1.n-1)スピノルを考えます。
(※n=2kのとき,SO(n)はk個の2次元スピノル空間に
分解されます。全体は2次元空間の直積です。例えばn=6
k=3での基底は,[1.0]t×[1.0]t×[1.0]t etc.であり,合計
で8=23個です。※)
このスピノルで定義されたガンマ行列は,
{γμ,γν}+=2gμν.(15)を満たす抽象的代数量であり,その
トレース(対角和)はTr(γμγν)+=gμνTr(1)=gμν2n/2(16)
という規約になります。
(※このTr(1)=2n/2という式について深く考える必要はなく
n=4のときTr(1)=4となるようなnの連続関数であれば
いいです。※)
ここで,唯一の問題となるのは偶数n=2k次元のγ5=γ5の
行列です。これは,Γ5=ik-1γ0γ1..γn-1
={ik-1(-)n-1/n!}εμ1μ2..μnγμ1γμ2..γμn(17)であり,
完全反対称テンソルεμ1μ2..μnと同様 .複素n次元に拡張する
ことはできません。そこで4次元のεμνλρの場合と同じく,
γ5=iγ0γ1γ2γ3.={(-i)/4!}εμνλργμγνγλγρ(18)で
定義される決まった行列と考えることにします。
こうするとγ5はγ0,γ1,γ2,γ3とは反可換ですが他のγμとは
可換という面倒な性質を持つことになります。
γ5やεμνλρを複素n次元に自然に拡張できないので,もしも
ゲージ変換がγ5やεμνλρを含む場合,次元正則化でもゲージ
不変性を壊します。これが後述するようなアノマリー(量子異常)
に関係しています。
§7.2 1-loop計算と乗法的くりこみ
本節では紫外発散がどのように現われるか?を見るため,具体的
に1つの簡単な模型をとって1^loop計算を実行します。
合わせて,現われる発散をどう処理するか? 謂わゆる乗法的
くりこみ(multiplicative renormalization)の手続きについて
説明します。
簡単な模型として,アイソスピンが1のスカラー場:
φ=(φ1,φ2,φ3)Tと,アイソスピンが1/2のDirac場:
ψ=(ψ1,ψ2)Tから成る湯川相互作用系:Lagrangian密度
がL=(1/2)(∂μφ∂μφ-μ2φ2)
+ψ~(γμ∂μ-m-gφτ)ψ-(λ/8)(φ2)2
で与えられるものを考えることにします。
Feynmanグラフにおいて,φの伝播関数は点線でψの伝播関数は
矢印付きの実線で表わすことにします。
※下の図7.1,図7.2はFermion(Dirac場)の自己エネルギー
のグラフです。
図7.2では,左辺のFermionの2点Green関数(伝播関数):
iSF'(x)=<0|T[ψ(x)ψ(0)]|0>には図で灰色のblobで
示した1PI(1粒子既約)なグラフ全体が図7.2右辺のように
繰り返しの形で効きます。
しかし,運動量表示での左辺の総和:iSF'(p)は,図7.1の左辺
では,上述の自己エネルギーを図7.2と同じく灰色blobで
示していますが,これを-iΣ(p)と記せば,図7.2が簡単に
表現されて,iSF'(p)=i(p-m)-1
+{i(p-m)-1}{-iΣ(p)}{i(p-m)-1}
+{i(p-m)-1}{-iΣ(p)} {i(p-m)-1}{-iΣ(p)}
{i(p-m)-1}+..=i{p-m-Σ(p)}-1=i{Γψ(2)(p)}-1
となります。
※(注2-1):最右辺のΓψ(2)(p)はψによる2点1PI頂点関数を
示す記号です。頂点関数は2点の場合,特別に2点Green関数の
逆数に一致します。
つまり.Γψ(2)(p)=-{iSF(p)}-1+{-iΣ(p)}
=i{p-m-Σ(p)}
です。
久しぶりの記事で,これらの意味を再認識するために,
少々長たらしいですが2017年9/7の過去記事:
「対称性の自発的破れと南部-Goldston粒子(3)」から
「ゲージ場の量子論」の第4章摂動論(経路積分)の
有効作用・有効ポテンシャルと頂点関数の定義や,
それらの関係について記した(注3-1)を再掲します。
(※以下再掲載記事開始)
※(注3-1):有効ポテンシャルの定義,意味については,
本ブログの2014年9/21から2015年4/21までにアップした
記事:「ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論)」
(1)~(12)において摂動論を記述した後,有効作用,および,
有効ポテンシャルの項に入る予定でしたが,その直前で中断
して,このシリーズ再開後は間の項目を飛ばして
「ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論)(15)」
に進んでいました。
そこで,この記事シリーズから,適宜,必要事項を引用し,これに
追加して説明します。
便宜上,(12)のGrassmann 代数の知見と面倒な考察を要する
Fermion場の話は考慮せず,(1) ~ (11)のBoson場のみから成る
系で考えます。
まず,時間tを含むHeisenberg表示の初期(始)状態,終状態を,
それぞれ,|φI,tI>,|φF,tF|>として,その遷移振幅を,
位相空間の積分:∫∫DπDφによる経路積分で表わすと,
<φF,tF|φI,tI>
=∫∫φ(x,tI)=φI(x)φ(x,tF)=φF(x)DπDφ
×exp(i∫tItFd4x[π(x)φd(x)-H(π(x),φ(x))])
となります。
この式の右辺から,先に∫Dπだけを実行して,配位空間の積分:
∫Dφのみによる積分表式にしたものは,Nを比例定数として,
<φF,tF|φI,tI>
=N∫φ(x,tI)=φI(x)φ(x,tF)=φF(x)Dφ
×exp[i∫tItFd4xL(φ,∂φ)] です。
次に,特にGreen関数の経路積分を考えます。
必ずしもφの固有状態ではない一般の状態を想定し初期状態
を|ΨI,tI>,終状態を,|:ΨF,tF>として,
一般化されたN点Green関数を,
G(N)(x1,..,xN; ΨI,tI;ΨF,tF)
≡<ΨF,tF|T[φ(x1)..φ(xN)]|ΨI,tI>
/<ΨF,tF|ΨI,tI>
=<ΨF,|exp(-iHtF)T[φ(x1).φ(xN)exp(iHtI)]|ΨI>
/<ΨF|exp{-iH(tF-tI)}|ΨI> によって,定義します。
これを変形して,最終的にGreen関数の経路積分式として.
G(N)(x1,..,xN;ΨI,tI;ΨF,tF)
=NFI∫DφΨF*[φ(xF)] ΨI[φ(xF)]φ(x1)..φ(xN)
×exp[i∫tItFd4xL(φ,∂φ)] を得ます。
ここで,一般化されたGreen関数の生成汎関数:ZFI[J]なるもの
を次のように定義して導入します。
すなわち,ZFI[J]
=<ΨF,tF||Texp{i∫d4xJ(x)φ(x)}| ΨI,tI>
/<ΨF,tF|ΨI,tI> です。
ZFI[J]をJでN階微分してJ=0 と置いたものが一般化された
N点Green関数になります。
つまり,[δNZFI[J]/δJ(x1)..δJ(xN)]jJ(x1)=..J(xN)=0
=G(N)(x1,..,xN; ΨI,tI;ΨF,tF) です。
実は,これが,ZFI[J]がG(N)(x1,..,xN; ΨI,tI;ΨF,tF)
の生成汎関数である,という意味です。
そして,一般化されたGreen関数は,特に初期状態:|ΨI>,
終状態:|ΨF>が共に系の真空状態 |0>であるとしたとき,
通常の意味のN点Green関数;
G(N)(x1,..,xN)=<0|T(φ(x1)..φ(xN))0>
に一致します。
さて,話は重複するかもしれませんが,
相互作用:Lint(φ)が存在して,Lagrangian密度Lが,
L(φ,∂φ)=(1/2)∂μφ∂μφ-(1/2)μ2φ2(x)+Lint(φ)
で与えられる実スカラー粒子の場:φ(x)を想定します。
この相互作用しているスカラー粒子のN点Green関数G(N)は,
G(N)(x1,..,xN)=<0|T(φ(x1)φ(x2)..φ(xN)|0>
で与えられますが,これの生成汎関数を特にZ[J]とします。
Z[J]は,配位空間の経路積分によって
Z[J]=N∫Dφ exp[i∫d4x{(-1/2)φ(□+μ2)φ+Lint(φ)
+Jφ}]
=N∫Dφ exp[i{(-1/2)φ*(□+μ2)φ+J*φ}]と書けます。
右辺の最後の式では,煩わしい∫d4xという表現を省略するため,
時空座標xの任意関数φIx),ψ(x)に対して,内積とよばれる
演算:φ*ψを,φ*ψ=∫d4xφ(x)ψ(x)=ψ*φによって定義
導入しました。
Z[J]は,結局,Z[J]=<exp[i∫d4x{Lint(φ)+J*φ}]>0
/<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0 なる式に表わせることが
わかります。
ただし,任意のφの汎関数F(φ)について,
<F(φ)>0=(exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔF*(δ/δφ)}*F(φ))φ=0
と定義しました。
<F(φ)>0の意味はF(φ)に左から微分演算子:
exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔF*(δ/δφ)}
=Σk=0∞(1/k!)(1/2)k(δ/δφ)*iΔF*(δ/δφ)}kを作用させ
最後にφをゼロと置く操作です。
これは,<exp[i∫d4x{Lint(φ)+J*φ}]>0では,
級数展開Σk=0∞(1/k!) )1/2)k(δ/δφ)*iΔF*(δ/δφ)}kの
1次ごとにexp[i∫d4x{Lint(φ)}]からφ(x)φ(y)のような
φの対を1つ取り除き,代わりに自由場のFeynman伝播関数:
iΔF(x-y)=<0|TT(φin(x)φin(y)|0> で置き換える
という操作を示しています。
そして,係数(1/2)はxとyの交換の自由度2で割ることを意味
します。また,自由場のFeynman伝播関数は,Fourier積分の形で
ΔF(x-y)=∫d4k(2π)-4[exp{-ik(x―y)}
/(k2-m2+iε)] なるものです。
生成関数における指数関数の級数展開は,
Z[J]=<exp[i∫d4x{Lint(φ)+J*φ}]>0
/<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0
=Σm=0∞(1/m!)∫d4y1..d4ym
<iLint(y1).. iLint(ym)exp(iJ*φ)>0/(分母)
となります。
右辺の級数展開は相互作用LintがLに比べて,微小な摂動で
あると考えたときの摂動展開級数そのものです。
(分母)=<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0の効果については,遷移
要素の摂動計算に考慮すべきでないと考えられる真空泡グラフを
(分子)から相殺して除去する操作に関わるものなので,本質的寄与
をする(分子)の各項について具体的計算方法を考えます。
具体的には,< >0は.まず.φの2個の積の場合,明らかに,
<φ(x1)φ(x2)>0=iΔF(x1-x2)=[φin(x1)φin(x2)]
です。便宜上,iΔF(x1-x2)を,Symbolicに[φin(x1)φin(x2)]
なる記号で表現しました。このように,φ(x1),φ(x2)の組を
Feynman伝播関数 iΔF(x1-x2)で置き換える操作を縮約
(contraction)と呼びます。
以下.具体的に,経路積分による定式化を整理すれば,Feynman
グラフによる通常の伝統的摂動論の計算法に一致することが
示せることを記述しています。
Fermionへの一般化もできますが,今回これは省略します。
ここまでは既に記述した過去シリーズ記事の(1)~(11)の
内容です。
ここから今回本題の「有効作用と有効ポテンシャル,」の
話を追加します。
まず,Green関数の生成汎関数は,
Z[J]=<0|Texp(iJ*φ)]|0>
=<exp[i∫d4x{Lint(φ)+J*φ}]>0
/<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0
=N∫Dφexp[i{S[φ]+Jφ}]
と表現されます。
このとき,Z[J]=exp{iW[J]}によって,W[J]を定義します。
Pをproper連結グラフ(固有連結グラフ)とすると,
Z[J]=expPと表わせるので,iW[J]は連結固有Green関数
の生成汎関数です。
一方,W[J]=S[φ]+Jφと表わしていますが,具体的には,
Jφ=∫d4xΣiJiφi(x),であり,S[φ]は作用積分の形で
S[φ]=∫d4xL(φ(x),∂φ(x)) です。
ここで,有効作用;Γ[φ]をW[J]から.汎関数のLegebdre変換:
Γ[φ]=W[J]-Jφ によって定義します。
ところで,δZ/δJi
=(iδW/δJi)Z=i<0|φi(x)Texp(iJ*φ)]|0>より,
φ~i(x)=(δW/δJi)
=<0|φi(x)Texp(iJ*φ)]|0>/Zとおくと,
φ~i(x)=(δW/δJi)は,J(x)という外場が存在する
ときの場:φi(x)の期待値を意味することがわかります。
Γ[φ]をJi(x)でなく,上記の期待値:φ~i(x)の関数:
Γ[φ~]と考えると,Ji(x)=δΓ[φ~]/δφ~i(x)です。
(※注:何故なら.WはJの関数と見ると,Wのφ~iによる微分は
δW/δφ~i=Σk(δJk/δφ~i)(δW/δJk)
=Σk (δJk/δφ~i)φ~k であり,
一方,δ(Jφ)/δφ~i=(δJk/δφ~i)φ~k+Jiなので,
δΓ/δφi=δW/δφ~i-δ(Jφ)/δφ~i=-Ji
となるからです。(注終わり※)
有効作用:Γ[φ~]が重要な理由の1つは,これが1PI
(1粒子既約)な頂点関数:Γ(n)の生成汎関数になっている点:
つまり,Γ[φ~]=Σn=0∞(1/n!)∫d4x1..d4xn
φ~i1(x1)..φ~in(xn)Γ(n)i1..in(x1,..xn)
となっている点です。
ここで,W[J]に効くグラフで伝播関数の線を1本切ってグラフ
が2つの部分に分離できるとき,その線を関節線と呼びます。
伝播関数の線が外線のそれであれば常に関節線ですが,外線以外
に関節線を持たないグラフを1PI(1粒子既約)なグラフ,内線
にも関節線があるそれを1粒子可約なグラフと呼びます。
結局,Γ[φ~]は量子効果であるループグラフを除く単純な
Treeレベルでは,hcをPlanck定数としたO(hc)を除く近似
で古典的作用積分:S[φ~]=∫d4xL(φ~,∂φ~)に一致します。
この有効作用の物理歴意味をさらによく理解すべく,より特殊な
場合を考えます。
外場Jと期待値φ~が共に時間x0=tに依存しない場合を
考えると,この場合.時間並進不変性があるのでW[J],Γ[φ~]
の∫d4x表現から,無限大の時間因子:
T=∫dx0がくくり出せます。
すなわち,W[J(x)=J(x)] =-w[J(x)]∫dx0,
Γ[φ~(x)=φ~(x)]=-E[φ~(x)]∫dx0 です。
さらに,Jとφ~が時空座標xに完全に依存しない定数の場合.
W[J(x)=J]= =-w[J]∫d4x,
Γ[φ~(x)=φ~]=-V[φ~]∫d4x です。
最後の,V[φ~]はφ~の関数であり,有効ポテンシャルと
呼ばれます。
3次元空間のxの関数:φ~(x)の汎関数:E[φ~(x)]には
決まった名称はありませんが,V[φ~]にならって
有効エネルギーと呼んでおきます。
Jとφ~がt=x0に依存しないときを考えると,
Z[J]=exp{iW[J]}=exp{-iw[J]T}
=<0| exp{-iH[J]T}|0>,ただし,H[J]
=H-∫d3xJ(x)φ~(x)で,
Hはエネルギーを意味するHamiltonianです。
つまり,期待値の関数としては,
H=∫d3x{π~φ~-L(φ~,∂φ~)},
=-∫d3xL(φ~,∂φ~)=-Lです。
何故なら,φ~がt=x0に依存しないため,
共役:π~=∂L/∂(∂0φ~)=∂0φ~
がゼロだからです。
そして,真空:|0>はエネルギーHの最低固有値状態
(基底状態)でしたが,ここでも-iε処法を採用していると
すれば,T=∫dx0=∞ の極限では,事実上,
H[J]=H-∫d3xJ(x)φ~(x)の基底状態:|0J>
のみがexp{-iw[J]T}=<0| exp{-iH[J]T}0>
の|0>に効きます。
それ故,T → ∞ではw[J]はH[J]の基底状態の
エネルギー固有値です。
つまり,H[J] |0J>=w[J] |0J>です。
他方,この)固有値問題は,量子力学の変分原理の問題と同じく,
<Ψ|Ψ>=1,<Ψ|φ(x)|Ψ>=φ~(x)の下で,<Ψ|H|Ψ>
を停留値にする停留解:|Ψ>を求める停留問題とみなすことが
できます。すなわち,この,H|Ψ>=E|Ψ>の解が,
|Ψ>=|0J>,E=w[J]を与えます。
したがって,場の理論で真空を探す問題では,予め並進不変性を
考慮して,E[φ(x)]のxに依存しないφ~の関数である有効
ポテンシャルV[φi~]の停留点を∂V[φ~]/∂φi~=0 から
求めればいいです。
結局,有効ポテンシャル:V[φ~]は,場φi(x)の期待値がφi~
(定数)である条件下での基底状態のエネルギー密度と解釈され
その最低の固有値に対応する状態が真空です。
※※
有効作用:Γ[φ~]が1粒子既約な頂点関数:Γ(n)の生成汎関数で
あったことから従う有効ポテンシャル:V[φ~]のもう1つの側面
に注意します。
頂点関数:Γ(n)の運動量表示Γ~(n)を運動量保存のδ関数を外して
定義します。
∫d4x1..d4xn exp{ip1x1+..+ipnxn}
Γ(n)i1/..in(x1,..,xn)
=Γ~(n) i1..in( (p1,..,pn)(2π)4δ4(p1+..+pn)
です。
Γ[φ]=Σn=0∞(1/n!)∫d4x1..d4xnφi1(x1)..φin(xn)
Γ(n)i1..in(x1,..xn)において,
φi(x)=φ~i(定数)とし,V[Φ]の定義式,および,
(2π)4δ4(p=0)=∫d4x exp(ipx)|p=0を考慮して
V[φ~]=-Σn=0∞(1/n!)φ~i1..φ~inΓ~(n)i1..in(0...,0)
を得ます。
すなわち,有効ポテンシャル:V[φ~]は運動量pi
が全てゼロのときのn点頂点関数の生成関数
という意味を持っています。
W[J]の経路積分表式:
Z[J]=exp(iW[J])=N∫Dφexp[i{S[φ]+Jφ}]
を,Γ[φ~]=W[J])-Jφ=に代入して,自然単位にPlanck定数:
hcを復活させると,
Γ[φ~]=(-ihc)ln[∫Dφexp{(i/hc){S[φ]+J(φ-φ~)}]
経路積分Dφの積分変数をφ → φ+φ~と変数置換し,
-Ji(x)=δΓ/δφiを代入すれば,Γ[φ~]
=(-ihc)ln[∫Dφexp{(i/hc){∫d4x
(L[φ+φ~]-(δΓ/δφ)φ)}] です。
ここで,L[φ+φ~]をc-数: φ~のまわりで量子場:φ(x)
で展開すると,L[φ+φ~]=L[φ~]+(∂L/∂φi)φi
+(1/2)φi|(iDF)-1φ~}ijφj+Lint[φ;φ~] です。
ここに,|(iDF)-1φ~}ijは,|(iDF)-1φ~}ij
=(∂2L[φ+φ~]/∂φi∂φj)|φ=0=(∂2L[φ~]/∂φ~i∂φ~j)
で与えられます。
これは場:φの期待値がφ~であるような真空の上でのFeynman
伝播関数の逆数であり,Lint[φ;φ~]はφについて3次以上の
φ~における相互作用項です。
このL[φ+φ~]の展開をΓ[φ~]の表式に代入すると,
Γ[φ~]=∫d4xL[φ~]+Γ~[φ~] :
Γ~[φ~]=(-ihc)ln∫Dφexp[(i/hc){∫d4x
[(1/2)φi|(iDF)-1φ~}ijφj+Lint[φ;φ~]-(δΓ/δφ)φ}]
です。
これで,うまい具合に有効作用Γ[φ~]から,古典的作用積分:
S[φ~]=∫d4xL[φ~]が分離されました。※※
(注3-1終わり※)
(以上再掲載終了※)(注2-1終わり※)
最初の予定外の過去記事を参照した注釈を書いたため,1記事
としては長くなり過ぎたので,ほとんど過去の再掲載ですが
今回はここまでにします。
※(参考文献)九後太一郎著「ゲージ場の量子論Ⅰ,Ⅱ」
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント