くりこみ理論(次元正則化)(3)
「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。
※ブログ草稿を書いていて思ったのですが,外国語の
テキストなら,直訳的翻訳でも自分のオリジナルな文章
を書いている,という思いを感じますが,今回のように
九後さんの日本語のテキストを自分で学習した履歴の
ノートを,写経していると,もはや弱視力のため種本の
詳しい参照もむずかしいのですが,自分なりに行間を
埋めた箇所を除けば,参考の文献とは書きながら,実は
丸写しに近いというような感が否めません。
例の理研のOさんの博士論文での一部盗用疑惑事件。。
昔なら文章を丸々コピペする技術など困難で,マニュアル
で写し取るのも大変でしたから,多少の違いは自然に生じ
ますから単に引用であると主張できます。
もっとも参考文献であるとして引用先を明示しておけば
丸写しでも盗用じゃなく引用でしょうが。。。
まあブログ草稿書きは2度目の写経のようなものです。
「門前の小僧,習わぬ経を覚える。」というようなもので
私にとってこの勉強法は確認作業です。
オリジナルな発見,発明以外は如何に高邁なものでも所詮
パクりですからと開き直り。。
「三つ子の魂百まで」ではないが,10代の後半に受けた物理学
の洗礼。。幸か不幸か?プロの教師でも研究者でもないのに
70歳にならんとするまで取り憑かれているのです。
スポーツじゃないから肉体的障害あっても体力は関係ないし実験
じゃないからお金もかからない道楽ですね。余談でした。※
※さて本題です。,先の第4章摂動論の記事注釈で見たように,
一般にn点Green関数G(n)は1PIのm点頂点関数Γ(m)(m=n)
で表わされるので,全ての Γ(n)を有限にすることができれば
G(n)は有限になるはずです。
それ故.今後くりこみの議論においては,もっぱら1粒子既約
(1PI)な頂点関数Γ(n)のみを考察することにします。
特に,2点関数:Γ(2)のtreeグラフ以外の寄与を一般に自己
エネルギー(self-energy)部分と呼びます。
Fermionの自己エネルギー部分(-iΣ(p))に寄与するグラフ
は今の湯川相互作用のみの場合,先の図7.1で与えられるので,
ここで,その最初のグラフに対応する最低次loop)の寄与:
-iΣ(1-loop)p(p)=∫d4k(2π)-4(-igτi){i/(k-m)}
(-igτj)[iδij/{(p-k)2-μ2}]..(3) です。
この1-loop∫積分は被積分関数がkの(-3)次で積分d4kが
kの4次なので,明らかに(4-3)=1次発散量になります。
(※実際には,すぐ後でわかる運動学的理由から1次
下がった対数発散となります。※)
そして,Feynmanパラメータ公式:
1/(ab)=∫01dx[1/{ax-b(1-x)}2] より
-iΣ(1-loop)(p)=3g2∫01dx∫dnk(2π)-n
[(k+m)/{k2-2x(pk)+x(p2-μ2)-(1-x)m2}2]
となるため,結局,
-iΣ(1-loop)(p)=(-1)1/23g2Γ(2-n/2)(4π)-n∫01dx
[(xp+m)/{(1-x)m2+xμ2-x(1-x)p2}2-n/2]
が得られます。
※(注3-1):何故なら,「くりこみ理論(次元正則化)(1)」
の最後で得た公式(13):
={(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}
において,両辺をpμで微分すると
(-α)∫dnk(2π)-n[-kμ/(k2-2kp-m2+iε)α+1]
=(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}
×(-2pμ)(p2+m2)-(α-n/2+1) となります。故に,
∫dnk(2π)-n[kμ/(k2-2kp-m2+iε)α+1]
={(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α+1)}
×(2pμ)/(p2+m2)(α-n/2+1)です。
そこで,p→(xp),m2 → (1-x)m2-x(p2-μ2)
α→2 という置き換えを実行すれば,
∫dnk(2π)-n
[k/{k2-2x(pk)+x(p2-μ2)-(1-x)m2}2]
={(-1)1/2(4π)-n/2Γ(2-n/2)/Γ(3)}(xp)
/{(1-x)m2+xμ2-x(1-x)p2}2-n/2]です。
また,∫dnk(2π)-n
[m/{k2-2x(pk)+x(p2-μ2)-(1-x)m2}2]
={(-1)+1/2(4π)-n/2Γ(2-n/2)/Γ(2)}
となるからです。 (注3-1終わり※)
一方,∫dnk(2π)-n[1/(k2-2kp-m2+iε)α]
={(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}
×(p2+m2)-(α-n/2) ..(13)なる一般式は,
={(-i)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}
×(m2-iε)-(α-n/2) …(8)において,
k→(k-p),m2→(m2+p2)と置換したものです。
Γ(ε)=1/ε-γ+O(ε)から,
∫dnk(2π)-n[1/(k2-2kp-m2+iε)α]
={(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}
×(p2+m2)-(α-n/2)
[2/(4-n)-γ+ln(4π)-ln(p2+m2)+O(4-n)]
={(-1)α+1/2(4π)-2[ε~-1-ln(p2+m2)]+O(4-n)
となることが前々記事で導かれました。
ただし,ε~-1=2/(4-n)-γ+ln(4π)は,無限大部分です。
同様な手順で,-iΣ(1-loop)(p)から,n=4の極部分を
分離すると,次式を得ます。
すなわち,
-iΣ(1-loop)(p)={(-1)1/23g2/(16π2)}ε~-1{(1/2)p+m}
-iΣ(有限)(1-loop)(p)+O(4-n).(6-1):ただし,
-iΣ(有限)(1-loop)(p)]={-(-1)1/23g2/(16π2)}∫01dx
[(xp+m)ln{(1-x)m2+xμ2-x(1-x)p2}].(6-2)
です。
もしも次元正則化の代わりに,Pauli-Villers正則化を用いて,
時空次元は4のままで,φの伝播関数:iδij(k2-μ2)-1を,
iδij{(k2-μ2)-1-(k2-Λ2)-1]としたとすれば,
その答は上記の(6)でμ2→Λ2としたものを(6)から引く
だけで得られます。
結果的に極のε~-1に比例した無限大部分は次のように
置き換えられます。,
すなわち.{(-1)1/23g2/(16π2)}ε~-1{(1/2)p+m}
[(xp+m)ln{(1-x)m2+xΛ2-x(1-x)p2}
×{m(lnΛ2-1)+(p/2)(lnΛ2-1/2)}
+O[p2/Λ2-(m2/Λ2)ln(m2/Λ2)]..(7)
(※実際の地道なPauli-Villers正則化計算結果との比較
から係数:(-1)1/2はiと同定できます。※)
前にも述べたと思いますが,このΛ→∞のとき発散する部分
である(7)式には切断:Λの1次以上の発散項は出現せず,
lnΛ2に比例する対数発散項しかありいません。
その理由は,loop積分の結果が必ず(次元1を持つ)pやm
に比例した形になるため,結果的に次元が1だけ下がる
からです。
少なくとも1つ含むのは,m=0の場合には,カイラル対称性
が存在すべきで,そうした(単位行列1に比例した)項は出現
しないからです。
一般に1-loopでなくてもFermionの自己エネルギー部分は
b~(p2)=a(p2)+b(p2)…(8) の形をとります。
a(p2),b(p2),b~(p2)はp2の関数であり,これらを
p2=m2のまわりでTaylor展開すれば,,
+(p2-m2){(p-m)a’(p2)+mb~’(p2)}
(ただし,a=a(p2=m2),b~=b~(p2=m2))…(9)
と書き換えることができます。
前述のΣ(1-loop)の計算では,次元正則化による式(6)
または,Pauli-Villers正則化による式(7)で,
Σ(p)=(p-m)a+mb~
+(p2-m2){(p-m)a’(p2)+mb~’(p2)}
の展開の係数a,b~にのみ発散量が出現します。
すなわち,
a(1)={3g2/(16π2)}(1/2)ε~-1+(有限定数) ,or
a(1)={3g2/(16π2)}(1/2)lnΛ2+(有限定数)
b~(1)={3g2/(16π2)}(3/2)ε~-1+(有限定数) ,or
b~(1)={3g2/(16π2)}(3/2)lnΛ2+(有限定数)…(10)
です。
そして,残りのa’(p2),b~’(p2)は有限なp2の関数である
ことが示されます。この点は特に重要です。
この事実は.このオーダーでは当然で,そもそも1-loop積分を
行なう前の式;(3):-iΣ(1-loop)(p)=∫d4k(2π)-4
(-igτi){i/(k-}(-igτj)[iδij/{(p-k)2-μ2}]
において,被積分関数を次元1を持つ外線運動量:pμに関して
Taylor展開すれば,pμの次数が上がるごとに,1次ずつkの
loop積分の収束性が良くなるからです。
(※Σ(p)=(p-m)a(p2)+mb~(p2)のようにΣ(p)
を不変振幅:a(p2),b~(p2)に分解して,p2の関数として
Taylor展開すれば収束性は2次ずつ良くなります。※)
問題はa.b~に現われる無限大をどう処理するか?です。
a,b~の物理的意味を見るため,以前の式:
iSF’(p)=i{p-m-Σ(p)}-1=i{Γψ(2)(p)}-1.に
戻って考えます。
=i(1-a)-1[p-m{1+b~/(1-a)}]-1..(11)
となります。
これは相互作用の効果によって,b~<<1のとき,
Fermionの質量がmから,m{1+b~/(1-a)}にずれる
こと.および,場:ψの規格化因子:Z2が1から(1-a)-1
に変化することを表わしています。
現状の摂動論では,a,b~は無限大に計算されるので,
b~<<1などの条件には程遠いのですが,たとえ発散する
理論の場合でも,「相互作用が存在すれば質量:mと規格化
因子:Z2をずらす効果を有する。」ということが重要です。
そこで,この効果を予め考慮して,出発点の裸のLagrangian
L0の自由項部分は元の(1)L=(1/2)(∂μφ∂μφ-μ2φ2)
+ψ~(γμ∂μ-m-gφτ)ψ-(λ/8)(φ2)2のそれとは異なり,
L0free=ψ0~(γμ∂μ-m0)ψ0+(1/2)(∂μφ0∂μφ0-μ02φ02)
(12)であるとします。
相互作用の効果を全て取り込んだ後の正しく規格化された場
を改めてψ,φとし,正しい質量をm,μと呼び,(これらが12)
に現われる裸の量と,ψ0=Z21/2ψ,φ0=Z31/2φ,.(13).および,
m0=m-δm,μ02=μ2-δμ2..(14)なる関係でつながって
いるものとします。
そうすれば,L0free=Lfree+Lcountfree..(15)
Lfree=ψ~(γμ∂μ-m)ψ+(1/2)(∂μφ∂μφ-μ2φ2)(16)
Lcountfree=(Z2-1)ψ~(γμ∂μ-m)ψ+Z2δmψ~ψ
+(1/2)(Z3-1)(∂μφ∂μφ-μ2φ2)+(1/2)Z3δμ2 (17)
のように,L0freeは2つの部分:Lfree,Lcountfree.に分けられます。
そして,前者のLfreeが先のLの摂動第0次の自由場部分
であったと考えます。
先述したように,添字:0のついたψ0,φ0を裸の場,m0,μ0を
裸の質量と呼び,対応するψ,φをくりこまれた場,m,μ
をくりこまれた質量(または,観測される物理的質量)と呼びます。
また,Lcountfree.の各項は相殺項(couter-term)と呼ばれますが,
その理由は次のようにしてわかります。
Z3=1+hcZ3(1)+hc2Z3(2)+..
Z3δμ2=01+hcδμ2(1)+hc2δμ2(2)+..(18)
と,Plank定数:hc=n/(2π)のベキで摂動展開され,
それ故,Lcountfreeが存在すればFermionの自己エネルギー
に対して.hcの1次では,既に評価した:Σ(1-loop)以外に
Σcount=-Z2(1)(o-m)-δm(1),,(19)の寄与がある
ことになります。
を相互作用項として用いた図7.3のグラフの寄与です。
この寄与を加えれば式(9)で定義したa,b~は
1-loop:O(hc)のオーダーまでの近似で,
a=a(1)-Z2(1),mb~=mb~(1)-δm(1) (20)
となります。(※a(1),b~(1)は先の1-loop計算:Σ(1-loop)から
の寄与です。)
ところが,ψが正しく規格化された場,mが物理的質量になる
よう,予め波動関数(場),質量にくりこみを行ったのですから
a.b~はくりこまれて,ゼロでなければなりません。
実際,a=b~=0であれば.(11)の表式:
=i(1-a)-1[p-m{1+b~/(1-a)}]-1によって,
iSF’(p)=i/(p-m)となり,
ψの2点関数(伝播関数)はp=mに極を持ち留数は正しく
iになります。
したがって,Z2(1),δm(1)は,Z2(1)=a(1),δm(1)=mb~(1)
(21)ととるべきであることがわかります。
すなわち,この操作でΣ(p)の1-loopの計算に現われた発散:
a(1),b~(1はLcountfreeの2(1),δm(1)の寄与で相殺される必要
があるのです。
途中ですが今回はこれで終わります。
※参考文献:九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」(培風館)
PS:また,桜の開花が近づいています。
私はいつまで生きられるのだろう。映像じゃなく満開の桜を
見に行きたいものです。
なぜか,誤嚥性の隠れ肺炎のような状態で,ときどきセキと痰
が止まらず,酒の席でも他人に迷惑かかりそうで,なかなか,
そうした場に一人で外出できません。
花見宴会ばかりではなく,桜に囲まれると花イキレというか?
異様な高揚感があったことがあるのを記憶しています。
坂口安吾の「桜の森の満開の下」で背中にしがみついた女妖怪
や,梶井基次郎の「桜の木の下には屍体が埋まっている」という
ような妖しい想像など思い出されます。
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