くりこみ理論(次元正則化)(5)
「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。
※平成最後かな?きわどい時期に女子陸上の
小出義雄監督が亡くなられましたが,
私は何とか,昭和,平成,令和の3代を生きられ
そうです。
※3点頂点関数
粒子の自己エネルギー,2点Green関数(伝播関数)
を評価したのに続いて,FermionとBosonの3点
頂点関数:Γψ~ψφ(3)を計算してみます。
これは,1-loopまでの近似で
Γjψ~ψφ(3)(p2.p1)=-gτj+Γjψ~ψφ(1-loop)(p2.p1)
+O(hc2)..(29) と書けます。
これの右辺第1項はtreeレベルの寄与であり,第2項
は,下図7.5の1-loppグラフの寄与です。
そして,この1-loopの寄与を書き下すと,
Γjψ~ψφ(1-loop)(p2.p1)
=∫dnk(2π)-n[(-igτj)i{(p2-k)-m}-1
(-igτi)i{(p1-k)-m}-1(-igτj)
i(k2-μ2)-1]..(30) となります。
これに,Feynmanパラメータ公式:1/(a1a2..an)
=(n-1)!∫01dx1∫01dx2..∫01dxn
δ(1-x1-x2-..-xn)
×[1/(a1x1+a2x2+..+anxn)n]
を適用します。
※(注5-1):
上記Feynmanパラメータ公式を証明します。
(証明):まず,1/A=∫0∞dxexo(-Ax)
が成立するので.明らかに,n項の積では,
1/(a1a2..an)=∫0∞dy1∫0∞dy2..∫0∞dyn
{exp(-a1y1-a2y2-..-anyn)} 書けます。
さらに,1=∫0∞dtδ(t-y1-y2-..-yn)を
挿入すると,1/(a1a2..an)
=∫0∞dt∫0∞dy1∫0∞dy2..∫0∞dyn
δ(t-y1-y2-..-yn)
×{exp({-(a1y1-a2y2-..-anyn)} です。
ここで,yj=txj(j=1,2,..,n)と積分変数を
置換すれば,1/(a1a2..an)
=∫0∞dt∫0∞dx1∫0∞dx2..∫0∞dxn
×δ(t(1-A)
tn{exp({-t(a1x1-a2x2-..-anxn)}
となります。
ただし,A=x1+x2+..+xn=Σi=1nxi
と置きました。:
さらに,B=ax1+ax2+..+anxn=Σi=1naixi
と置くと,1/(a1a2..an)
=∫0∞dx1∫0∞dx2..∫0∞dxn
×∫0∞dt[δ[t(1-A)]tnexp(-tB)]
です。
右辺の最後のt積分の因子のみ着目すれば,
∫0∞dt[δ[t(1-A)]tnexp(-tB)]
=δ(1-A)∫0∞dt[tn-1exp(-tB)]
=δ(1-A)Γ(n)B-n を得ます。
したがって,1/(a1a2..an)
=∫0∞dx1∫0∞dx2..∫0∞dxnδ(1-A)Γ(n)B-n,
つまり,1/(a1a2..an)
=∫01dx1∫01dx2..∫01dxn[(n-1)!
δ(1-x1-x2-..-xn)
×[1/(ax1+ax2+..+anxn)n]
が得られました。(証明終わり)
※※この公式は帰納法でも簡単に示せますが,演繹法
で証明した方が美しいですね。
なお,昔,nifty物理フォーラムで懐かしい,あもんさん
の「あもんノート」を見つけて参照させてもらいました。
(注5-1終わり※)
※(注5-2):
既に,前記事で,n=2の場合の公式:1/(ab)
=∫01dx1∫01dx2{δ(1-x1-x2)/(ax1+bx2)2]
=∫01dx[1/{ax+b(1-x)}2]を使用しています。
この両辺を,さらにパラメータaで微分すれば,
1/(a2b)=∫01dx(2x)/{ax+b(1-x)}3]
が得られます。
それ故,1/[{ax+b(1-x)}2c]
=∫01dy(2y)/[{ax+b(1-x)}y+c(1-y)]3]
より,1/(abc)=∫01dx∫01dy
(2y)/[{ax+b(1-x)}y+c(1-y)]3]
が成立することがいえます。
また,1/(ab)の表式をaで微分して得た上記,
1/(a2b)=∫01(2x)dx/{ax+b(1-x)}3]
を,さらにbで微分すると,1/(a2b2)
=∫01{6x(1-x)}dx/{ax+b(1-x)}4]
も得られます。
そこで,1/(aαbβ)
={Γ(α)Γ(β)/Γ(α+β)}∫01dx
{xα-1(1-x)β-1}/{ax+b(1-x)}(α+β)]
=Β(α,β)(α,β=1,2,..)なる一般公式
が帰納的に得られます。
ここで.係数:Β(α,β)はベータ関数で,
Β(α,β)=∫01dt{tα-1(1-t)β-1}
で定義されます。
これは,Gaussのガンマ関数によって,Β(α,β)
=Γ(α)Γ(β)/Γ(α+β)=Β(β,α)
とも表わされます。
:先に証明した,
一般的Feynmanパラメータ公式:
1/(a1a2..an)
=∫01dx1∫01dx2..∫01dxn
[(n-1)!δ(1-x1-x2-..-xn)
/(ax1+ax2+..+anxn)n] についても,
これをパラメータaiで複数回偏微分する
ことで,1/(a1α1a2α2..anαn)
に対する積分表式を得ることができます。
そして,1/[{ax+b(1-x)}2c]
=∫01dy(2y)
[1/{ax+b(1-x)}y+c(1-y)]3]
から,1/(abc)=∫01dx∫01dy
(2y)/[{ax+b(1-x)}y+c(1-y)]3]
を得たのと同様にして
一般化された別表現の公式:1/(a1a2..an)
=∫01dx1∫01dx2..∫01dxn-1
[(n-1)!x2x32..xn-1(n-2
)/{(a1-a2)x1x2..xn-1+(a2-a3)x2..xn-1
+..(an-1-an)xn+an}n]
をも示すことができます。(注5-2終わり※)
※(注5-3):余談ですがベータ関数:
Β(x,y)=∫01dt{tx-1(1-t)y-1}
=Β(y,x)を見るとき,
伝統的場理論では別のグラフとしてカウント
される散乱のsチャネルとtチャネルの過程;,
これは例えばQEDなら電子(e-)と陽電子(e+)
の電磁相互作用(光子の交換)による散乱グラフを,
sチャネルとすると,e-とe+が対消滅して光子
(γ)になり,再び対生成してe-とe+の対になる
過程が,tチャネルであり,これらはe-とe+の
散乱振幅には独立な和として寄与します。
ところが,ハドロンの強い相互作用による散乱
ではsチャネルとtチャネルの過程は実は同一の
過程で別扱いをして和の寄与があるとすると重複
でダブルカウントになる.という性質:双対性
(そうついせい:duality)が存在することが観測
されていました。そして,この性質を体現する
Venetsiano(ベネツィアノ)模型というものが提議
され,これは上記ベータ関数の性質を利用したもの
であった,という歴史的経緯を想起したわけです。
この模型はハドロン散乱でsとtの関数としての
散乱振幅Aが,A(s,t)
=Γ(-α(s))Γ(-α(t))/Γ(-α(s)-α(t))
=Β(-α(s)x,^-α(t)) の形である
というもので.こう仮定すれば,確かに双対性:
A(t,s)=A(s,t)が成立するわけです。
ただし,αはRegge軌跡における極の粒子の
角運動量を意味します。
そして,双対共鳴模型は強い相互作用では,あまり
評価されませんでしたが,これを強い相互作用で
なく素粒子の2次元のヒモ:超弦模型の基礎式と
して量子化すればBose弦のみ存在する場合は,
背景時空が26次元,Fermi弦の存在する場合は10
次元のときにのみ,負のノルム(負の確率)のゴースト
が出現しない。という,
弦理論では有名な「no-ghost定理」
が示されたことなども思い出されます。
(以上,余談終わり)(注5-3終わり※)
さて, 3点頂点関数:の(29)式
Γjψ~ψφ(3)(p2.p1)
=-gτj+Γjψ~ψφ(1-loop)(p2.p1)+O(hc2)
において,右辺第2項の1-loopの寄与:,,
Γjψ~ψφ(1-loop)(p2.p1)
=∫dnk(2π)-n[(-igτj)i{(p2-k)-m}-1
(-igτi)i{(p1-k)-m}-1
(-igτj)i(k2-μ2)-1]
を評価するという主題に戻ります。
n=3のFeynmanパラメータ公式;
1/(abc)=∫01dx∫01dy(2y)
/[{ax+b(1-x)}y+c(1-y)]3]
を用いることにより,
Γjψ~ψφ(1-loop)(p2.p1)
=-∫01dx∫01dy∫dnk(2π)-n(2y)
(g2(gτj){(p2-k)+m}{(p1-k)+m}
[k2-2y{(1-x)(p1k)+x(p2k)}
+y{(1-x)p12+xp22}-m2y-μ2(1-y)]-3
と書けます。
ここで,p~=(1-x)p1+xp2,かつ,
q=p2-p1と置くと,p~2=(1-x)2p12+
x2p22+2x(1-x)(p1p2),q2=p22+p12
-2(p1p2) なのでp~2+q2x(1-x)
=(1-x)p12+xp22より
k2-2y{(1-x)(p1k)+x(p2k)}
+y{(1-x)p12+xp22}-m2y-μ2(1-y)
=k2-2y(p~k)+y{p~2+q2x(1-x)}
-m2y-μ2(1-y) となります。
これから,D(x,y)
=(1-y)μ2+y{m2-q2(1-x)}
-y(1-y)p~2と置けば,
Γjψ~ψφ(1-loop)(p2.p1)
=∫01dx∫01dy
{2yg2(gτj)(4π)-n/2/Γ(3)}
{(p2+m)(p1+m)
-y{p~(p1+m)+(p1+m)p~}Γ(3-n/2)
D(x,y)-(3-n/2)+∫01dx∫01(2y)dy
[{g2(gτj)(4π)-n/2/Γ(2)}
×{Γ(3-n/2)p~2y3D(x,y)-(3-n/2)
-Γ(2-n/2)(n/2)yD(x,y)-(2-n/2)}]
を得ます。
時空の次元nが,n=4-2ε(ε=+0)の場合,
発散はΓ(2-n/2)(n/2)D(x,y)-(2-n/2)
=(1/ε-γ)(2-ε)(1-εlnD)
=2(1/ε-γ-lnD)-1のみから生じると
考えられます。
ε~-1=1/ε-γ+ln(4π).および,
∫01dx=1,∫01ydy=1/2を用いて
Γjψ~ψφ(1-loop)(p2.p1)
=-gτi{g2/(16π2)}
[-ε~-1+1/2+2∫01dx∫01ydylnD(x,y)
+∫01dx∫01dy
{(p2+m-yp~)(p1+m-yp~)D(x,y)-1}
…(31) が得られます。
※(注5-4):何故なら,前記事では
∫dnk(2π)-n[1/{k2-2(pk)-m2+iε}α]
=∫dnk(2π)-n[1/{(k-p)2-(p2+m2)}α]
={(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}
×{1/(p2+m2)(α-n/2) なる表式を得ました。
この被積分関数において,p→ (yp~),
m2 → y{m2-q2x(1-x)}-y(1-y)p~2
+μ2(1-y) という置き換えを実行すれば,
k2-2(pk)-m2=(k-p)2-(p2+m2)が
(k-2yp~)2-[y2p~2-y{m2-q2x(1-x)}
+y(1-y)p~2+μ2(1-y)]
=(k-yp~)2-D(x,y)
に置き換わまりす。ただし,Dは前に与えた関数
でD(x,y)=(1-y)μ2+y{m2-q2(1-x)}
-y(1-y)p~2 です。
それ故,∫dnk(2π)-n
{(k-p)2-(p2+m2)+iε}-α
={(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}
×(p2+m2)-(α-n/2) という表式から,
∫dnk(2π)-n[k2-2y{(1-x)(p1k)
+x(p2k)}+y{(1-x)p12+xp22}
-m2y-μ2(1-y)]-α
=∫dnk(2π)-n{(k-yp~)2-D(x,y)]-α
={(-1)1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}
D(xy)-(α-n/2) を得ます。
これを(∂/∂p~μ)で微分すると
∫dnk(2π)-n){(2kμ-2yp~μ)(-α)}
{(k-yp~)2-D(x,y)]-(α+1)
=(-1)1/2(4π)-n/2{Γ(α+1-n/2)/Γ(α)}
(-2y(1-y)p~μ)D(xy)-(α+1-n/2) です。
それ故,∫dnk(2π)-n
[kμ{(k-yp~)2-D(x,y)}-(α+1)]
=-(-1)1/2(4π)-n/
{Γ(α+1-n/2)/Γ(α+1)}
yp~μD(xy)-(α+1-n/2) です。
これを,さらに,(∂/∂p~ν)で微分すると.
-∫dnk(2π)-n)
{kμ(2kν-2ypν)(α+1)}
{(k-yp~)2-D(x,y)]-(α+2)
=(-1)1/2(4π)-n/2Γ(α+2-n/2)/Γ(α)}
(-yp~μ2y(1-y)p~ν)D(x,y)-(α+1-n/2)
-(-1)1/2(4π)-n/2Γ(α+1-n/2)/Γ(α)}
ygμνD(xy)-(α+1-n/2) なので,
∫dnk(2π)-n
[(kμkν){(k-yp~)2-D(x,y)}-(α-2)]
=(-1)1/2(4π)-n/2Γ(α+2-n/2)/Γ(α+2)}
(y2p~μp~ν)D(x,y)-(α+2-n/2)
-(-1)1/2(4π)-n/2Γ(α+1-n/2)/Γ(α+2)}
ygμνD(x.y)-(α+1-n/2) です。
したがって,iΓjψ~ψφ(1-loop)(p2.p1)
=-∫01dx∫01dy∫dnk(2π)-n
(2yg2(gτj){(p2-k)+m}{(p1-k)+m}
{(k-yp~)2-D(x,y)] -3
の右辺を,次のように書き下します。
,
まず.-∫01dx∫01dy{2yg2(gτj)}
∫dnk(2π)-n{(p2+m)(p1+m)}
{(k-yp~)2-D(x,y)] -3
=-∫01dx∫01dy{2yg2(gτj)}
(p2+m)(p1+m)(-1)1/2(4π)-n/2
{Γ(3-n/2)/Γ(3)}D(xy)-(3-n/2)
次に,+∫01dx∫01dy{2yg2(gτj)}
∫dnk(2π)-n(k(p1+m)+(p2+m)k)
{(k-yp~)2-D(x,y)] -3
=∫01dx∫01dy{2yg2(gτj)}
{yp~(p1+m)+(p2+m)yp~}(-1)1/2(4π)-n/2
{Γ(3-n/2)/Γ(2)}D(x,y)-(3-n/2)
さらに,∫01dx∫01dy{2yg2(gτj)}
-∫dnk(2π)-nk2{(k-yp~)2-D(x,y)] -3
=-∫01dx∫01dy{2yg2(gτj)}
(-1)1/2(4π)-n/2{[Γ(3-n/2)y2p~2D(xy)-(3-n/2)
-Γ(2-n/2) (n/2)yD(xy)-(2-n/2)]
と書けるからです。
ここでΓ(3)=2,Γ(2)=Γ(1)=1.を用いました。
(注5-4終わり※)
3点頂点関数を発散部分と有限部分の和で表わした
再表示(31)式:Γjψ~ψφ(1-loop)(p2.p1)
=-gτi{g2/(16π2)}
[-ε~-1+1/2+2∫01dx∫01ydylnD(x,y)
+∫01dx∫01dy
{(p2+m-yp~)(p1+m-yp~)D(x,y)-1}
は今の場合,
Γjψ~ψφ(1-loop)(p2.p1)
=∫dnk(2π)-n[(-igτj)i{(p2-k)-m}-1
(-igτi)i{(p1-k)-m}-1
(-igτj)i(k2-μ2)-1]
のdnk(n~4)積分をする被積分関数がkの(-4)
次なので対数発散であり,外線運動量p1かp2で微分
すると収束するので,発散はこれらに依存しない定数
項にのみ現われています。
一般に3点頂点関数の量子補正項:
Γjψ~ψφ(補正)(p2.p1)を,関与する3粒子の質量殻:
p1=p2=m,q2=(p2-p1)2=μ2のまわりで,展開
したとき,Γjψ~ψφ(補正)(p2.p1)
=τj[c+O(p1-m,p2-m,q2-μ2)]
の形をとります。
初項の定数項cがゼロでない値を取ったとすると,
これからΓjψ~ψφ,~ -(g-c)τjとなるため,
物理的な質量殻上のFermionとBosonの湯川結合定数
が量子補正で,gから(g-c)に変化することを意味
します。
物理的に観測される湯川結合定数はgでなく(g-c)
というのが真なのです。湯川結合定数に限らず,φ4
頂点の結合定数λなど,一般に結合定数は質量や場
の規格化定数と同様,相互作用の影響でずれます。
途中ですが長くなったので今回はここで終わります。
※参考文献:
九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」(培風館)
最近のコメント