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2019年7月

2019年7月29日 (月)

再掲記事「黒体輻射記事の補足」

 前再掲記事の短かい数学的補足で,2006年7/22の

「黒体輻射(空洞輻射)と空洞の形状」を追加します。

※ 以下再掲記事です。

以前の記事で「空洞輻射の波数の分布が空洞の形状

には依らない。」と述べたことがありましたが,このこと

を証明してみようと思います。

 

一般に,自由電磁波の電場Eに着目すると,それは横波

であり,真空中のマクスウェル(Maxwell)方程式」を満足

します。

 

そして,まずは空洞を導体と考えて,その形が一辺がL

の立方体である,と理想化しておきます。

 

その境界条件は,境界での接線成分が 0 である必要

がありますから電場=(Exyz)は,sinやcos関数

を用いてEx=Ex(t)cos(kxx)sin(kyy)sin(kzz) etc.

と表わされ,波数ベクトル:=((kx ky kz)の成分は,

x=mπ/L,ky=nπ/L,kz=pπ/L

(m,n,p=0,1,2,3...) となります。

 

つまり波数ベクトルkは(π/L)を格子定数とする

格子点のみを許容値とするので,そのkの分布と

しては負でない整数m,n,pのみをとる8分球を

とり,kを連続化して横波の2つの自由度を考慮

すると,半径kとk+dkの間の波数kの個数が,

(1/8){(4πk2dk)/(π/L)3}×2

=(πk2dk)(V/π3) となります。

 

そして,この最終形では立方体であったという仮定

は必要なく,容積Vが有限でありさえすればいいと

いう形になっています。しかし,本当に立方体という

形状は関係ないのでしょうか?

 

簡単のために,3次元でなく2次元の空洞なるもの

を仮定し立方体を正方形に変更しても同様であると

すると,kx=mπ/L,ky=nπ/L(m,n=0,1,2,.)

であり,半径kとk+dkの間の波数kの個数は.

(1/4){(2πkdk)/(π/L)2}×2

=(πkdk)(S/π2)と体積Vの代わりに面積Sで

表わした形になります。

 

そうして,正方形ではなくて一般の単連結な閉曲線

で囲まれた任意の領域を“空洞”と考え,その面積がS

の場合も,波数の分布がやはり,(πkdk)(S/π2)と

なることを証明したい,と考えるわけです。

 

まず.この閉曲線を(f(t).g(t))(0 ≦t≦1)

(f(0),g(0)=(f(1),g(1))で定義します。

f,gは微分可能でtによる微分係数を,

f’=df/dt、g’=dg/dtとすると,

これらはtの連続関数であるとします。

 

この閉曲線を,

「一辺Lの正方形を反時計回りに1回転する閉曲線」

に変換する写像を汎関数:F,Gによって.

(u,v)=(F(f,g ),G(f,g ))とします。

 

微小変換はF,Gのヤコービ行列を,

J=(∂(F,G)/∂(f,g)) とすれば

(du,dv)=J(df,dg )となりますから,

外微分を使って,dS=df∧dg

=(1/|J|)du∧dvを得ます。

(※|J|はJの行列式です。)

 

電場の波数ベクトルkの境界条件はの閉曲線上

の接線成分がゼロ,=kxdf+kdg=0

ですから,これは(kx,ky)(df,dg)= 0 と

書けます。

したがって,(kx,ky)J-1(du,dv)=0 である

ことから,(kx’,ky’)=(kx,ky)J-1とおけば.

(kx’,ky’)は一辺Lの正方形のu-v空間の波数

ベクトル:k’の分布をするので.先の考察によって,

dkx’∧ dky’=(π/L)2dm∧dnの分布形

となるはずです。dm,dnは個数空間の微分で

dm∧dnを1つの格子,つまり1と同一視します。

 

よって,dkx∧dky=|J|dkx’∧ dky

=|J|(π/L)2dm∧dnです。

(kx’,ky’)の空間は格子間隔(π/L)のu-v

空間の逆格子空間としてよいわけで.この式は(kx,ky)

の空間が,f-g空間の逆格子空間でその格子定数の

平方が(π/L)2|J|=π2/(L2|J|-1) である

と考えるべきことを示しています。

ところでL2=∫du∧dvであり,

∫|J|-1du∧dv=∫df∧dg=Sですから

Lの任意性を考慮して,

dkx∧dky=(π2/S)dm∧dn,

 

すなわち,半径kとk+dkの間の波数kの個数は

(πkdk)(S/π2)となって,Sだけに依存し形状には

依らない形になります。

 

このように,黒体輻射,あるいは,空洞輻射では,

空洞の「壁面の形状の多様性や面の乱雑さ」などが

あれば,無限に多様な乱反射のモードを持つであろう

という予測は誤りであり,そのモードの個数分布は

空洞の体積のみで決まり,それが離散的であるのは,

大きさ=体積が有限であるためであるということが

確かに云える,ことが証明できたと考える次第で

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再掲記事の続き「黒体輻射とキルヒホッフの法則」

再掲のつづきで2006年6/20の「黒体輻射(キルヒホッフの法則)」

を追加します。

※ 以下,過去記事丸写しと追加の(注)です。これも電球,電灯の原理説明に必要

※ ブログネタが枯渇してるので物理ネタばかりで恐縮

ですが,今日は黒体輻射関連の話題について書きます。

 

「プランク(Planck)の黒体輻射の法則」は,

「レーリー・ジーンズ(Raileigh-Jeans)の法則」と

「ウィーン(Wien)の法則」の両方を説明するものと

して与えられ,ここに作用量子hの概念が導入されて

量子力学の曙が訪れることになったのは有名な話です。

 

プランクの法則のは.絶対温度Tの下での黒体からの

輻射エネルギ-密度uの波長λに対する関係を,波長λ

と温度Tの関数:u(λ,T)とした表現したもので,その

グラフはをTの値ごとに,縦軸uの横軸λに対するu-λ

曲線の族として与えることができます。

 

 ところで,黒体(black body)とは何か?というと,これ

は完全放射体とも呼ばれ.入ってくる全ての波長の電磁波

を反射することなく完全に吸収する理想的な物体のこと

を意味します。

 

それ故,上記の黒体輻射の法則とは,この理想的な物体

の吸収と放射がバランスして熱平衡になり絶対温度一定

となったときに,この黒体から放射(輻射)される電磁波

のエネルギーの周波数分布を与える法則です。

 

※(注1):(2019年追記):この記事を書いた2006年の

頃は.まだブログ上で細かい数式を記述するスキルが

乏しかったので.陽な式による表現を避けて文章だけ

の説明が中心だったのでした。

 

そこで,量子論の歴史的背景なども書かれている参考書:

「量子物理学入門」(東京電機大学出版局)や,(岩波講座:

現代物理学物理学の基礎)の「量子力学Ⅰ」などから得た

式などを,注として追記しておくこよにします。

 

 

これらによると,ν(/sec)を電磁波の周波数(振動数),

c(m/sec)を光速(電磁波の速さ)とするとき黒体輻射

で.νとν+dνの間にある輻射電磁波のエネルギー:

U(ν,T)dνを与える輻射エネルギ-密度:U(ν,T)

に対し,Raileigh-Jeans)の法則のスペクトル分布は,

U(ν,T)=8πν2T/c3 で与えられます。

 

これは,内部が真空の有限体積Vの空洞輻射を1辺

Lの立方体の箱内での輻射とし,x座標だけの1次元

だけで考えると,平面波:exp{i(kx-ωt)}の周波数

ν,or 波長λの満たすべき条件として,箱の端点x=0

x=Lが壁であり波が閉じ込められて出られないこと

を.上記平面波のxでの周期がLであること.つまり.

kLが2πの倍数であること(周期的境界条件)で表現

して要求することから得られます。

 

すなわち.まず,kL=2πN,または, k=2πN/L

(N=0,1,2,)となることを要求します。これは電磁波

が壁で反射されるか.途切れて定在波になるという条件

で物理的にも理にかなった境界条件です。

 

3次元に移行すると,V=L3であり波数ベクトルは,

=(kz)=(2π/L)(Nx y z)=(2π/L)

になると考えられるので,波数ベクトルの空間の体積

は,モードベクトル=(Nx y z)の空間の体積の

{(2π)3/V}倍ですが,実は,この関係は体積Vの空洞なら

その形が立方体か否か?などには無関係であることが

わかります。

 

そこで,この波の単位体積当りのモード数をn=N/V

として,3次元で考えると,空間の体積要素の関係では,

3=(2π)--33 なる式で書けます。

 

ところで,この波(電磁波)の位相速度は光速cであり,

これから,c=ω/k=2πν/k,かつ,c=νλなので

k=2π/λ=2πν/cと表わせます。

このため,d3=(2π)--33はd3=(2π)-33

=c-33ν なる関係に同等です。

 

それ故,半径がνで厚さdνの周波数の球殻:4πν2dν

には(4πν2/c3)dν個の波のモードがあることになり

ますが,電磁波は横波であり偏光の自由度2があるので

総自由度としては(8πν2/c3)dνです。

 

ここで,古典統計力学の「エネルギー等分配の法則」;,

「絶対温度がTのとき,熱平衡系を構成する1粒子の平均

エネルギーは1自由度につき(kT/2)である。」という

法則を用います。

 

電磁波は偏光として2つの独立な向きに振動し各々を

自由度2の1次元調和振動子と見なすことができて,調和

振動子にはエネルギー(kT)が割り当てられるため,

結局,電磁波の古典的描像ではありますが,

U(ν,T)dν={8πν2T/c3}dνなる関係を得ます。

これが輻射のRayleigh-Jeansの法則です。

(※独立な振動の2自由度は既に偏光として組み込み済み)

 

また,Wienは,実験データから(ν/T)の関数として

U(ν,T)=f(ν/T)=(α/c3)exp(-βν/T)

なるスペクトル分布式(Wienの分布則)を19世紀末頃に

発見しました。(※ただし,これらの法則で両辺の単位

はいずれも(W(ワット)/m2)です。※)

 

, 一方,Plankは,後にPlanck定数と呼ばれる作用量子

hを導入して.次のスペクトル分布を見出しました。

U(ν,T)=(8πhν3/c3) /[exp{hν/(kT)}-1]

(Planckの法則)です。

 

Wienの経験式:U(ν,T)=(α/c3)exp(-βν/T)で,

α=8πhν3,β=h/kを代入すれば,これは丁度,

Planckの分布式で,νが大きいときに,分母の

[exp{hν/(kT)}-1]の1を無視した式に一致

します。また,νが小さいときには,指数関数を近似

して,exp{hν/(kT)}-1 ~ hν/(kT)と

すると.Rayleigh^Jeansの式:

U(ν,T)={8πν2T/c3}に一致します。

 

こうしてPlankの法則は,両者を見事につなぐ式

となっています。

 

さらに,Plankの式をc=νλを用いて波長

λの式に変換します。

uとUは,u(λ,T)dλ=-u(λ,T)ν-2dν

=U(ν,T)dνで対応すると考えられます。

符号の違いは積分の向きで相殺されるので(-)を

はずして.U(ν,T)=cu(λ,T)ν-2

または,u(ν,T)=U(ν,T)ν2/c です。

 

したがって,u(λ,T)

=(8πhc/λ5)/[exp{(hc/λ)/(kT)-1]

が得られます。 (注1終わり※)

 

しかし,例えば,太陽などは黒体ではないし,しかも内部

に熱源を持っていて正確には熱平衡状態にはないですが

その場合でも,放射される主な光の波長(色)が物体の温度

に依存して決まる,という「色温度」の概念があります。

 

太陽の場合は,その表面温度がT=6500Kくらいで輻射

される電磁波のエネルギーが分布曲線上でピークになる

放射スペクトルの波長域が可視光線域に一致しています。

 

(※,むしろ,可視光(見える光)というのは,地球上の生物

(動物)の光を感じる器官(眼)の方が,太陽からの電磁波の

強度が最大の波長域を感知するような器官として創造され

ていると考えた方が合理的かも?※)

 

そして,そうした太陽のようなものでも,温度Tと放出光

の周波数(振動数)ν(or波長λ)の対応関係が上述の,

「熱平衡でのPlanck分布(黒体輻射分布)における絶対温度

とその温度での輻射エネルギー強度uが最大になる周波数の

関係」:すなわち,「Wienの変位則」と大してずれることなく

近似的に成り立つことが,よく知られています。

 

※(注2): Wienの変位則とは温度がTのときに電磁波の

輻射エネルギー強度が最大になる波長をλmaxとすると,

λmaxT ~ b(一定)になるという法則です。ただし,

b=hc/(5k) ~ 2.87×10-3(mK)=0.287(cmK)

です。

 

これを導くには,再掲.Plank分布式:

u(λ,T)=(8πhcλ-5)/[exp{(hc/λ)/(kT)-1]

が,λ=λmaxで∂u/∂λ=0を満たすことを使います。

 

,上記のu=u(λ,T)に対して,∂u/∂λ= 0は

-(40πhcλ-6)/[exp{(hc/λ)/(kT)-1]

+(8πhcλ-5){(hcλ-2)/(kT)}

×exp{(hc/λ)/(kT)}

/[exp{(hc/λ)/(kT)-1]2=0 となります。

 

これから,5λ[exp{(hc/λ)/(kT)-1]

-(hc)/(kT)}exp{(hc/λ)/(kT)}=0,

ですから,λ=λmaxとして,

λmax=|(hc)/(5kT)}exp{(hc/λmax)/(kT)}

/[exp{(hc/λmax)/(kT)-1]2 ~(hc)/(5kT)

あるいは,λmaxT ~(hc)/(5k) を得ます。

これがWienの変位則です。

そこで,h=6.6×10-34(Jsec),

c=3.0×108(m/sec),k=1.38×10-23(J/K)を

用いれば,λmaxT ~hc/(5k)~2.87×10-3(mK)

です。※ちなみに太陽表面のT=6500Kならその色

の波長はλmax~ 4.57×10-7m=457nm程度です。

可視光の波長は360nm~830nmくらいらしい

ですが,これは別に温度が太陽表面ほどの数千度K

もなければ可視光は放出されない,というわけでは

なく,これが強度がピークになる温度というだけで

どんな温度でも,多かれ少なかれ,あらゆる波長の

電磁波が放射されるのは言うまでもないことです。

(注2終わり※)

 

このように,輻射平衡のエネルギー分布が物質に依らない

ことは,実は19世紀にキルヒホッフ(Kirchhoff)が発見

したことです。以下では,この法則を説明します。

 

さて,温度Tで空洞の壁に向かって単位時間,単位面積当り

に投射される周波数がνとν+dνの間にある電磁波(光)

の輻射エネルギーをI(T,ν)dνとします。

 

そして,ある物質から構成された空洞の吸収率をa(T,ν)とし

同じ壁の表面から,単位時間,単位面積当り放出される温度T,

周波数νの輻射エネルギーをe(T,ν)dνとします。

 

Kirchhoffは.平衡状態では吸収と放出のバランスによって,

I(T,ν)a(T,ν)dν=e(T,ν)dνが成立するはずで

ある,という発想から「比:e(T,ν)/a(T,ν)=I(T,ν)

が物質の種類によらず,温度Tとνだけの関数である。」こと

を発見したのです。

 

そして,特に吸収率が100%,つまり,a(T,ν)=1が全ての

T,νについて成立する理想的な物体を黒体と呼ぶわけです。

一般の物体は黒体ではないのでa(T,ν)<1ですが,それでも

a(T,ν)がT,νに依らず一定であることが多いので輻射強度

e(T,ν)=I(T,ν)a(T,ν)は,Planckの黒体輻射の分布式

で与えられるI(T,ν)=U(ν,T)にほぼ比例します。

 

それ故,物体が黒体でなくても,色と温度の関係,つまり,最大

エネルギー:umaxをe与える色(波長λ,周波数ν)の関係はその

まま成立すると考えてよいわけです。

 

太陽とか生存中の人体のように発熱源があるとき,必ずしも

熱平衡でがない場合もありますが,それでも近似的に色温度の

関係は成立しているようです。   (再掲記事終わり※)

 

※PS:本ブログの科学記事では私のオリジナルというの

はほとんどなく,大抵は何らかの参考書で読んだのを一応

ノートにまとめ,それからブログ原稿を書いてアップして

おり,その場合,参考にした書物,文献を書くのが常ですが,

12.13年前のブログ初期の頃は参考文献を書いてないもの

もあります。

(※私の場合はブルーバックスのような啓蒙書ではなく曲がり

なりにも専門書を参考にしていることが多いです.※)

 

もっとも,蓄積した記憶。知識と計算力だけで書いたもの

も少しはあり,まあ恐らくは誰かのマネ,パクリでしょうが

参考書不明なので,それらは参考文献がブランクです。

 

この「キルヒホッフの法則」の記事も,追加の注を除き参考

文献を書いてませんが,これが記憶だけで書けるワケもなく

何を参考にしたのだとうか?と探しましたが不明でした。

 

数行でしたが,中村伝著「統計力学」(岩波全書)にほぼ同じ

記号を用いた記述があったのでこれかなぁ?

 

統計力学は初学者には敷居が高く,良書というか,私の認識

能力でも理解可能なモノを求めて10冊以上,遍歴し購入した

はずなのですが部屋には数冊しか残ってません。

最近10年くらいは食べるカネにも不自由で,また視力劣化で

読めなくて持ち腐れになり本当は惜しい気持はあるけれど

古書店経由で私の胃袋に消えたモノ多々あり,探しても,

「アレは何でないの?」というの多いですね。※

 

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2019年7月28日 (日)

夢はユメ。,現はウツツ

夢とは本来非現実なことですが,今は目標とか理想という意味でも使われること多いようです。

偉い人の名言に水を指すワケじゃないが。。

「ユメは想い続けていれば.いつかかなう。」とか,

「成功は99%の努力と1%の才能や運」とか。。

これ1%のユメがかなった成功者が述べてるダケでしょう。

 ↑ 単なるヒガミです。^^;

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2019年7月26日 (金)

電気伝導まとめ(2)

電気伝導関係の再掲載過去記事の続きです。

 

すぐ前の「電気伝導まとめ(1)」では,2006年6月

中旬の電気伝導の記事を再掲載すると書きました。

しかし.最初の2つの記事で長くなり,もう1つは

単独でもかなり長いので分割しました。

 

今回は第3弾で,衝突の正体という名目でバンド理論

とフォノンを紹介する記事です。

 

※以下,再掲記事本文です。

※(2006年6/19アップ,ただし後半少し修正)

「電気伝導(つづき2)(衝突の正体)」

@nify物理フォーラムで私と一緒にサブシスを

やっている高校の先生で友人と思っている,かんねん

さんから,次のような質問を受けました。

 

「電子が金属の原子から抵抗を受ける(=衝突する)

ことが抵抗の正体である。と本には書いてありますが

この陽イオンと電子の衝突って,どんな感じなので

しょうか?というのは,衝突による斥力的イメージ

ではなく,異符号ゆえの引力的な力を想像してしまい

ます。これをどう理解したらいいのでしょうか?」

という質問でしたが,

それに対する私の回答があまりにも不親切だったので

そのフォーラムでの回答の内容を大幅に修正したもの

を以下に記述します。

 

まず,量子論で電場などの外力がない場合に,固体の

中の電子は,自由電子近似をするとしても.実は弱い

イオンの引力によって,体積Vの中に閉じ込められて

おり,Vが有限であるために1つの電子の運動量

(速度)は,どんな値でも取れるわけではなく,ある

離散的な値しか取れません。

 

そして,これら1つ1つの準位に「パウリ(Pauli)

の(排他)原理」と,スピン自由度によって下から順に

2つずつ電子を詰めてゆき,丁度,その固体中の電子

が全て収まったときの,最大のエネルギーをフェルミ

(Ferm)エネルギーと呼び,この最高準位をFermi準位

と呼びます。

 

そうして,この電子準位の全体を運動量ベクトル,

または,それをPlank定数:hで割った波数ベクトル

の集まった3次元空間で考えると1つの球になります

が,これをFermi球と呼びます。

 

そして,球ですから球対称であるが故に電場のない

状態では平均の運動量はゼロです。

つまり,電場がなければ自由電子の平均速度もゼロ

なので電流もゼロである。ということができます。

 

しかしながら,固体の中の電子を自由電子で近似する

のには無理があり,格子構造を持った束縛電子で遮蔽

された周期的な陽イオンの引力ポテンシャルを受ける

電子波であることを考慮する必要があります。

 

周期的引力ポテンシャルの摂動を受けるため,電子

が取るエネルギー準位は,その値を取ることができる

「許容帯」と呼ばれるエネルギ-のバンド領域と,

その値を取ることは不可能な「禁止帯」と呼ばれる

小さなギャップ領域の繰り返し,という形態を取る

ことになります。

 

そうした自由電子に代わる固体の結晶格子中の電子

を,それを発見した人の名を取って「ブロッホ(Bloch)

電子」と呼び.その理論を「バンド理論」といいます

 

バンド理論では,固体中のBloch電子を下の準位から

順にFermi準位に達するまで,幾つかの許容帯の中に

詰めてゆきます。

 

そうすると1つのケースとしては,幾つかのエネルギー

バンドは完全に占有され,他の全ては空になるような形

になることがあります。

 

このとき,許容帯のうち全てが電子で占有されたバンド

を「充満帯」または「価電子帯」と呼びます。そして,

この全充満帯の頂点と,電子が全く空の非占有許容バンド

までの禁止帯領域の幅をエネルギーの「バンドギャップ」

と呼びます。

 

Fermi準位付近の電子のエネルギー値は絶対温度Tに

ボルツマン(Boltzmann)係数kBを掛けた値:(kT)程度

なので,このギャップが(kT)に比べて大きい場合には,

すぐ上の空の許容帯である,占有可能な空きのある許容帯

(=伝導帯)までジャンプすることはできませんから,この

固体は「絶縁体」となります。

 

一方,バンドギャップが小さい場合,ある温度では充満帯

から空の許容帯へとジャンプして,その電子は伝導可能と

なり,他方,充満帯の方ではジャンプして欠けた電子の穴が

「正孔」という正電荷のキャリアになる,などのために,

この固体は「(真性)半導体」となります。

 

もう1つのケースは,Fermi準位が許容帯の途中になる場合

で,このときは,その許容帯の中の全部の準位が占有されて

いるわけではなく,部分的に占有されていることになります。

そこで,その中では,その準位付近の電子は自由に動けるので

いわゆる「電気伝導」が可能になります。

 

このとき,部分的に占有されている許容帯を伝導体と呼びます。

そして,こうしたケースの固体を「導体」と呼びます。

金属はこれに属しています。

 

バンド理論によると,電子の占有を許された準位の数は,どの

許容帯でも同一で,(固体中の格子の総数)=(構成原子の全個数)

をNとすると,スピンの2つの自由度のため,結局,1許容帯当り

で占有可能な準位数は2Nという偶数になります。

 

一方,1個の原子当りの価電子の個数が偶数の元素では,それ

を2nとすると,価電子の数は全体で2nNとなり,この総電子数

を許容帯の占有可能な準位数2Nで割り算すると商がnとなって

余りがゼロですから,許容帯には電子が充満し充満帯となり,空き

準位がないため身動きできません。

 

しかも,その上には禁止帯というエネルギーギャップがあるので,

絶縁体になるか,半導体になるかのいずれかで,これらの固体は

非金属です。

 

しかし,奇数の価電子を持つ元素の場合,これは一般に金属です

が.この場合は総電子数を2Nで割ったとき余りがあり一番上

のエネルギーではバンドが充満しないで,ほぼ半数の空き準位

がある,という部分的占有状態の伝導帯となり,自由に動ける

Bloch伝導電子となって金属導体になるというわけです。

 

このとき,エネルギー領域のバンド化による自由電子

からBloch電子への変化は,一見したところ,電子の質量

がmから有効質量と呼ばれるmに変わる効果だけで表現

可能で,実は周期的クーロン(Coulomb)ポテンシャルが全く

規則的に並んでいて,しかも止まっているだけという状況

ですが,これでは散乱や衝突などは全く起きない。

と考えられます。

 

つまり,それだけでは依然として緩和時間が∞のまま

なので,素朴な古典論で考えたような電子がイオン芯と

衝突して散乱されるという描像は量子論的には誤り

ということです。

 

すなわち,あるエネルギーを持ったBloch電子というのは

自由電子とは異なり運動量固有状態ではありませんから

空間的には一定速度で運動しているわけではありません

が,とにかく定常状態であるということが重要です。

 

それ故,古典的に意味のある運動量や速度の「期待値」

は時間的に一定である,というわけです。つまり,自由電子

と同じように,古典的描像ではBloch電子も一定速度で運動

しているわけですから,古典的Drudeの理論のように,イオン

または,その引力ポテンシャルで散乱されるわけではない,

ということになるのです。

 

そして電子質量をmとするとき,自由電子ではエネルギー

がE=p2/(2m)なので,これを運動量pで2回偏微分すると

(1/m)になりますが,Bloch電子でも(本当は自由粒子では

ないですが),そのエネルギーを運動量pで2回偏微分した

ものを(1/m)として mを有効質量と定義します。

 

すると,電場Eがあるときの運動方程式は散乱がない

なら,d(m)/dt=eとなり,有効質量m

「電子の慣性質量」と同じ役割を果たすという意味が

あります。

 

したがって,例えば電気伝導度(抵抗率の逆数)が

自由電子近似の古典的理論値:σ=ne2τ/mから

σ=ne2τ/mに変更を受ける意味があります。

 

そして電場Eがかかると,Fermi球の原点がずれて

波数について球対称でなくなるので,電流がゼロで

なくなりますが,それは電子の電荷をeとするとΔt

の後に運動量としてeΔtだけずれる,ということ

です。

 

eは負ですからと反対向きにずれるのですが,それ

だけでは時間tと共に電子の速度は増加しますから

一様速度にはならず,次第に加速されてゆきます。

やはり,平衡に達して一様速度になるためには何らか

の衝突,散乱が必要です。

 

衝突が起こるというのは,量子論では電子は波であり

電子波束が一方向に進行している状態ではなくなって

その方向に影響をこうむることを意味します。

 

これは

「並んでいる陽イオンが熱などにより振動する。

つまり,格子振動する。(逆に振動こそが熱かも。。)」,

あるいは「格子欠陥がある=不純物効果がある。」

というような不規則な変化がある場合です。

これがないとBloch電子が散乱されて一様速度の

方向が変わるようなことはないはずです。

 

量子論的には,電子波が主に「陽イオンの

格子振動=フォノン(phonon;音子)と衝突する

のが散乱の原因でとされます。

結局,結晶格子にある陽イオンが単に並んで止まって

いるだけでなく時間的に変動することによりイオン

の位置が規則的配列からずれ,その振動により電子

がその進路を曲げられると見るわけです。

 

ただし,その効果が質問にあった,引力のためで

あるか?それとも斥力のためであるか?

については私にも確かなことは言えません。

 

ただ,電気的に中性のフォトン(光子;photon)

と電子が衝突するCompton効果のアナロジーで

 

電磁場を調和振動子の集まりとして量子化した

フォトン(光子)と同じように,固体内の格子振動

と呼ばれる陽イオンの振動(波動)を量子化した

フォノン(音子)が,電子と衝突する散乱という

くらいの参考書で見たか,誰かに教わったかの

漠然と認識があるだけです。

(※もっとも電子とフォノンの衝突はCompton

散乱のような弾性散乱ではなくエネルギー・

運動量が保存されない非弾性散乱のはずですが。。)

 

例えば極低温で電子と電子が引き付けあって

クーパー(Cooper)対という対を作り,結果,

電子対共鳴としてスピンが整数のBose粒子となり

「Bose-Einstein凝縮」を起こして超伝導体を構成

するという「BCS理論」という理論がありますが,

元々,電子間には本来,電気的なCoulomb斥力が働く

はずですから引力で対を作るというのは不思議です:

 

一方,現在では電気力:静電Coulomb相互作用は

量子論的には荷電粒子間で仮想フォトン(スカラー

光子)を交換する結果で生じる.というのが

量子電磁力学の理論からの帰結ですが,

これのアナロジーで固体の結晶格子内の電子間の

引力,斥力はフォノンの交換により生じるとされて

います。

 

特に,固体内で低温ではフォトン交換による電気的

なCoulomb斥力を,フォノン交換による引力が上回る

ようになる結果,Cooper対という電子対ができると

考えられています。

 

言いかえると,Coulombポテンシャルが格子の

フォノンによって遮蔽されて斥力から引力へと

変わったという描像です。

 

このようにフォノン(格子振動波)をフォトン(電磁波)

のように粒子性を持った量子として吸収,放出したり

散乱されたりするもとして扱うのです。

 

 こうして,とにかく電子の衝突,散乱があれば古典論

のDrude理論のイオン芯との衝突でなくても有限な

緩和時間τを定義することができますね。

 

実際には,この緩和時間は,運動量や温度の関数であり,

詳しくは「Boltzmannの輸送方程式」という偏微分

方程式の1つの項で,緩和時間という量を挿入,定義

することに従って決まります。

 

私も,まだアシュクロフト・マーミン著(吉岡書店)

「固体物理学の基礎」の全4巻のうちの2巻目の途中

まで読んだところで中断していて,把握できてない知見

が多々あり,今はこの程度の説明が限界です。

(※過去記事(3)再掲載終わり)

 

なお,本文に,出てきた「ボルツマン(輸送)方程式」

と緩和時間の関係や「ボーズ・アインシュタイン凝縮」

については,さらに過去記事のチェックも含め詳細説明

を追加する予定です。

 

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電気伝導まとめ(2)

電気伝導関係の再掲載過去記事の続きです。

 

すぐ前の「電気伝導まとめ(1)」では,2006年6月

中旬の電気伝導の記事を再掲載すると書きました。

しかし.最初の2つの記事で長くなり,もう1つは

単独でもかなり長いので分割しました。

 

今回は第3弾で,衝突の正体という名目でバンド理論

とフォノンを紹介する記事です。

 

※以下,再掲記事本文です。

※(2006年6/19アップ,ただし後半少し修正)

「電気伝導(つづき2)(衝突の正体)」

@nify物理フォーラムで私と一緒にサブシスを

やっている高校の先生で友人と思っている,かんねん

さんから,次のような質問を受けました。

 

「電子が金属の原子から抵抗を受ける(=衝突する)

ことが抵抗の正体である。と本には書いてありますが

この陽イオンと電子の衝突って,どんな感じなので

しょうか?というのは,衝突による斥力的イメージ

ではなく,異符号ゆえの引力的な力を想像してしまい

ます。これをどう理解したらいいのでしょうか?」

という質問でしたが,

それに対する私の回答があまりにも不親切だったので

そのフォーラムでの回答の内容を大幅に修正したもの

を以下に記述します。

 

まず,量子論で電場などの外力がない場合に,固体の

中の電子は,自由電子近似をするとしても.実は弱い

イオンの引力によって,体積Vの中に閉じ込められて

おり,Vが有限であるために1つの電子の運動量

(速度)は,どんな値でも取れるわけではなく,ある

離散的な値しか取れません。

 

そして,これら1つ1つの準位に「パウリ(Pauli)

の(排他)原理」と,スピン自由度によって下から順に

2つずつ電子を詰めてゆき,丁度,その固体中の電子

が全て収まったときの,最大のエネルギーをフェルミ

(Ferm)エネルギーと呼び,この最高準位をFermi準位

と呼びます。

 

そうして,この電子準位の全体を運動量ベクトル,

または,それをPlank定数:hで割った波数ベクトル

の集まった3次元空間で考えると1つの球になります

が,これをFermi球と呼びます。

 

そして,球ですから球対称であるが故に電場のない

状態では平均の運動量はゼロです。

つまり,電場がなければ自由電子の平均速度もゼロ

なので電流もゼロである。ということができます。

 

しかしながら,固体の中の電子を自由電子で近似する

のには無理があり,格子構造を持った束縛電子で遮蔽

された周期的な陽イオンの引力ポテンシャルを受ける

電子波であることを考慮する必要があります。

 

周期的引力ポテンシャルの摂動を受けるため,電子

が取るエネルギー準位は,その値を取ることができる

「許容帯」と呼ばれるエネルギ-のバンド領域と,

その値を取ることは不可能な「禁止帯」と呼ばれる

小さなギャップ領域の繰り返し,という形態を取る

ことになります。

 

そうした自由電子に代わる固体の結晶格子中の電子

を,それを発見した人の名を取って「ブロッホ(Bloch)

電子」と呼び.その理論を「バンド理論」といいます

 

バンド理論では,固体中のBloch電子を下の準位から

順にFermi準位に達するまで,幾つかの許容帯の中に

詰めてゆきます。

 

そうすると1つのケースとしては,幾つかのエネルギー

バンドは完全に占有され,他の全ては空になるような形

になることがあります。

 

このとき,許容帯のうち全てが電子で占有されたバンド

を「充満帯」または「価電子帯」と呼びます。そして,

この全充満帯の頂点と,電子が全く空の非占有許容バンド

までの禁止帯領域の幅をエネルギーの「バンドギャップ」

と呼びます。

 

Fermi準位付近の電子のエネルギー値は絶対温度Tに

ボルツマン(Boltzmann)係数kBを掛けた値:(kT)程度

なので,このギャップが(kT)に比べて大きい場合には,

すぐ上の空の許容帯である,占有可能な空きのある許容帯

(=伝導帯)までジャンプすることはできませんから,この

固体は「絶縁体」となります。

 

一方,バンドギャップが小さい場合,ある温度では充満帯

から空の許容帯へとジャンプして,その電子は伝導可能と

なり,他方,充満帯の方ではジャンプして欠けた電子の穴が

「正孔」という正電荷のキャリアになる,などのために,

この固体は「(真性)半導体」となります。

 

もう1つのケースは,Fermi準位が許容帯の途中になる場合

で,このときは,その許容帯の中の全部の準位が占有されて

いるわけではなく,部分的に占有されていることになります。

そこで,その中では,その準位付近の電子は自由に動けるので

いわゆる「電気伝導」が可能になります。

 

このとき,部分的に占有されている許容帯を伝導体と呼びます。

そして,こうしたケースの固体を「導体」と呼びます。

金属はこれに属しています。

 

バンド理論によると,電子の占有を許された準位の数は,どの

許容帯でも同一で,(固体中の格子の総数)=(構成原子の全個数)

をNとすると,スピンの2つの自由度のため,結局,1許容帯当り

で占有可能な準位数は2Nという偶数になります。

 

一方,1個の原子当りの価電子の個数が偶数の元素では,それ

を2nとすると,価電子の数は全体で2nNとなり,この総電子数

を許容帯の占有可能な準位数2Nで割り算すると商がnとなって

余りがゼロですから,許容帯には電子が充満し充満帯となり,空き

準位がないため身動きできません。

 

しかも,その上には禁止帯というエネルギーギャップがあるので,

絶縁体になるか,半導体になるかのいずれかで,これらの固体は

非金属です。

 

しかし,奇数の価電子を持つ元素の場合,これは一般に金属です

が.この場合は総電子数を2Nで割ったとき余りがあり一番上

のエネルギーではバンドが充満しないで,ほぼ半数の空き準位

がある,という部分的占有状態の伝導帯となり,自由に動ける

Bloch伝導電子となって金属導体になるというわけです。

 

このとき,エネルギー領域のバンド化による自由電子

からBloch電子への変化は,一見したところ,電子の質量

がmから有効質量と呼ばれるmに変わる効果だけで表現

可能で,実は周期的クーロン(Coulomb)ポテンシャルが全く

規則的に並んでいて,しかも止まっているだけという状況

ですが,これでは散乱や衝突などは全く起きない。

と考えられます。

 

つまり,それだけでは依然として緩和時間が∞のまま

なので,素朴な古典論で考えたような電子がイオン芯と

衝突して散乱されるという描像は量子論的には誤り

ということです。

 

すなわち,あるエネルギーを持ったBloch電子というのは

自由電子とは異なり運動量固有状態ではありませんから

空間的には一定速度で運動しているわけではありません

が,とにかく定常状態であるということが重要です。

 

それ故,古典的に意味のある運動量や速度の「期待値」

は時間的に一定である,というわけです。つまり,自由電子

と同じように,古典的描像ではBloch電子も一定速度で運動

しているわけですから,古典的Drudeの理論のように,イオン

または,その引力ポテンシャルで散乱されるわけではない,

ということになるのです。

 

そして電子質量をmとするとき,自由電子ではエネルギー

がE=p2/(2m)なので,これを運動量pで2回偏微分すると

(1/m)になりますが,Bloch電子でも(本当は自由粒子では

ないですが),そのエネルギーを運動量pで2回偏微分した

ものを(1/m)として mを有効質量と定義します。

 

すると,電場Eがあるときの運動方程式は散乱がない

なら,d(m)/dt=eとなり,有効質量m

「電子の慣性質量」と同じ役割を果たすという意味が

あります。

 

したがって,例えば電気伝導度(抵抗率の逆数)が

自由電子近似の古典的理論値:σ=ne2τ/mから

σ=ne2τ/mに変更を受ける意味があります。

 

そして電場Eがかかると,Fermi球の原点がずれて

波数について球対称でなくなるので,電流がゼロで

なくなりますが,それは電子の電荷をeとするとΔt

の後に運動量としてeΔtだけずれる,ということ

です。

 

eは負ですからと反対向きにずれるのですが,それ

だけでは時間tと共に電子の速度は増加しますから

一様速度にはならず,次第に加速されてゆきます。

やはり,平衡に達して一様速度になるためには何らか

の衝突,散乱が必要です。

 

衝突が起こるというのは,量子論では電子は波であり

電子波束が一方向に進行している状態ではなくなって

その方向に影響をこうむることを意味します。

 

これは

「並んでいる陽イオンが熱などにより振動する。

つまり,格子振動する。(逆に振動こそが熱かも。。)」,

あるいは「格子欠陥がある=不純物効果がある。」

というような不規則な変化がある場合です。

これがないとBloch電子が散乱されて一様速度の

方向が変わるようなことはないはずです。

 

量子論的には,電子波が主に「陽イオンの

格子振動=フォノン(phonon;音子)と衝突する

のが散乱の原因でとされます。

結局,結晶格子にある陽イオンが単に並んで止まって

いるだけでなく時間的に変動することによりイオン

の位置が規則的配列からずれ,その振動により電子

がその進路を曲げられると見るわけです。

 

ただし,その効果が質問にあった,引力のためで

あるか?それとも斥力のためであるか?

については私にも確かなことは言えません。

 

ただ,電気的に中性のフォトン(光子;photon)

と電子が衝突するCompton効果のアナロジーで

 

電磁場を調和振動子の集まりとして量子化した

フォトン(光子)と同じように,固体内の格子振動

と呼ばれる陽イオンの振動(波動)を量子化した

フォノン(音子)が,電子と衝突する散乱という

くらいの参考書で見たか,誰かに教わったかの

漠然と認識があるだけです。

(※もっとも電子とフォノンの衝突はCompton

散乱のような弾性散乱ではなくエネルギー・

運動量が保存されない非弾性散乱のはずですが。。)

 

例えば極低温で電子と電子が引き付けあって

クーパー(Cooper=対という対を作り,結果,

電子対共鳴としてスピンが整数のBose粒子となり

「Bose-Einstein凝縮」を起こして超伝導体を構成

するという「BCS理論」という理論がありますが,

元々,電子間にはdrん来て器なCoulomb斥力が働く

はずですから引力で対を作るというのは不思議です:

 

一方,現在では電気力:静電Coulomb相互作用は

量子論的には荷電粒子間で仮想フォトン(スカラー

光子)を交換する結果で生じる.というのが

量子電磁力学の理論からの帰結ですが,

これのアナロジーで固体の結晶格子内の電子間の

引力,斥力はフォノンの交換により生じるとされて

います。

 

特に,固体内で低温ではフォトン交換による電気的

なCoulomb斥力を,フォノン交換による引力が上回る

ようになる結果,Cooper対という電子対ができると

考えられています。

 

言いかえると,Coulombポテンシャルが格子の

フォノンによって遮蔽されて斥力から引力へと

変わったという描像です。

 

このようにフォノン(格子振動波)をフォトン(電磁波)

のように粒子性を持った量子として吸収,放出したり

散乱されたりするもとして扱うのです。

 

 こうして,とにかく電子の衝突,散乱があれば古典論

のDrude理論のイオン芯との衝突でなくても有限な

緩和時間τを定義することができますね。

 

実際には,この緩和時間は,運動量や温度の関数であり,

詳しくは「Boltzmannの輸送方程式」という偏微分

方程式の1つの項で,緩和時間という量を挿入,定義

することに従って決まります。

 

私も,まだアシュクロフト・マーミン著(吉岡書店)

「固体物理学の基礎」の全4巻のうちの2巻目の途中

まで読んだところで中断していて,把握できてない知見

が多々あり,今はこの程度の説明が限界です。

(※過去記事(3)再掲載終わり)

 

なお,本文に,出てきた「ボルツマン(輸送)方程式」

と緩和時間の関係や「ボーズ・アインシュタイン凝縮」

については,さらに過去記事のチェックも含め詳細説明

を追加する予定です。

 

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2019年7月25日 (木)

電気伝導まとめ(1)

前回記事では素朴な疑問としてエアコン,冷蔵庫など

の仕組みに関わる話をしました。

 

今回,最初は,世間ではエジソンが創ったと思われて

いるかもしれないが,実際には最初に発明したのはスワン

という人物でエジソンはフィラメントとして適切な物質

の竹などを用いて実用化しただけ,という電灯・白熱電球

から始めて蛍光管からLED(発光ダイオード)まで,電流

によって発生する光(可視周波数帯の電磁波)の原理など

を考察して記事にする予定でした。

(※上記文章は後の記事で再び前書きに使用する予定)

 

しかし,そのために引用できる本ブログの過去記事を

検索してチェックしているうち,電気伝導に関する記事だけ

でも,自分でも,読み返すに堪えるものがかなりあると感じ

たので,まず,2006年6月中旬に連続してアップした記事を

まとめて,ほぼ丸写し,少し修正で再掲載します。

,

まずは.2006年6/15の「電気伝導(オームの法則)」,

6/17の記事:「電気伝導(つづき1)(ジュール熱)」,

そして6/19の記事:「電気伝導(つづき2)衝突の正体)」

(内容はバンド理論とフォノン)を再掲載します。

 

※2006年6/15「電気伝導(オームの法則)」

@niftyの物理フォーラム,と化学の広場の専用会議室:

「中高生の理科質問箱」で電気伝導について泥試合的

な論争が続いているのを傍観していますが,そもそも

初学的知識の子供に解説するだけなら,以下の程度の

説明で十分かな。。と思います。

 

まず,電流の定義ですが,

「電流とは電荷を運ぶキャリア(Career)という実体

(電子とか正孔とかイオンとか)によらず,単位時間

に断面積を通過する電荷量のこと」です。,

そして,通常,その単位はA(アンペア)=C/sec

(クーロン/秒)で与えられます。

 

普通の家庭で流れている電流は数アンペア程度で,

このとき,電荷たちの平均の移動速さは数mm/s

程度に過ぎません。

 

それなのに,遠くでスイッチを入れても,すぐ近くで

電灯が点くのは要するにトコロテン式で,遠くの端で

電荷が押されると次から次へと”押しくらまんじゅう”

のように押されて,近くでもすぐに遠くの端と同じ速さ

で電荷が移動するようになるからですね。

 

電池などの起電力を持ったポンプを閉じた回路につなぐ

と,金属でできた導線の中にも電場が生じます。電場

があると,大きさeの電荷があると.力:=eを受ける

ことになります。

 

それ故,質量がmの電荷が速度vで運動するとき,その

運動はそれが電場Eの他に何の力も受けていなければ,

Newtonの運動方程式:d(m)/dt=eを満足する

ことになるはずです。

 

ところが,普通,金属の内部を移動する電荷というのは,

金属原子からの束縛をはずれたと見なしてよい自由電子

と想定されます。

 

電子の電荷eは負の数で,金属の中では自由電子と

いう名前は付いていますが,実はそれほど自由というわけ

ではなく.(後で詳述する予定ですが)金属原子の格子振動

(量子論的にはフォノンと呼ばれるもの)や,不純物により

散乱を受けます。

 

素朴な古典論のドゥルーデ(Drude)のモデルでは。この

散乱はイオン芯(原子から自由電子を差し引いた残り)との

衝突を意味します。もちろん,電子同士の衝突などは無視

できます。

,

これら散乱を受ける電子の平均の衝突までの時間

=(緩和時間)をτ(sec)と書くと,これは1個の電子が

単位時間(1秒間)に衝突する確率が1/τであることを

意味します。

 

 1個の電子が散乱を受けると,それはどの方向に散乱を

受ける確率もほぼ同じなので,ある向きに進んでいた1個

の電子に着目すると,その向きに走る電子に関しては急に

消えたのと同じになります。

 

故に,現在の時刻をtとして時刻(t+Δt)に消えずに

残っている確率は(1-Δt/τ)です。そこで電子の速度を

(t)とすると先のNewtonの運動法則は次のように変更

されなければなりません。

つまり, m(t+Δt)=(1-Δt/τ)×

{m(t)+eΔt+O(Δt2)} です。

 

そして,この両辺をΔtで割ってΔt→0の極限を取る

と.上式右辺のΔtの2次以上の項は消えるために.

d(m)/dt=e-m/τと書いてよい,ことに

なりますね。

 

そして,十分長い時間の後には(といってもすぐですが)

平衡に達すると,左辺の加速度項はゼロとなって,速度は

一定になる。としてよいはずです。

 

このときの多くの電子の平均の速度も,やはりと書く

ことにします。そうすると,0=e-m

⇒e=m/τより=eEτ/mです。

 

単位体積当りの自由電子の個数をnとすると,電流密度

(単位時間当りに単位面積を通過する電荷量):は,

=neですから,結局,=(ne2τ/m)となり,

電流密度は電場に比例し,その向きも電場と同じ,

ということになります。

 

この関係式:=σ;ただしσ=ne2τ/mは電気伝導度

という形でも既にオームの法則(Ohm‘s law)と呼びますが,

より身近な形に直しておきましょう。

 

電荷が流れている場所の金属線(抵抗)の断面積をS,長さを

Lとします。そして,正電荷qが一様電場Eに抵抗して距離L

だけ,反対向きに移動するのに要する仕事=位置エネルギー

はqELとなりますが,これをe=qLと書いて

のことは電圧,または電位差と呼びます、

※この電圧の単位は,V(ボルト)=J/C(ジュール/クーロン)

です。

 

電流は電流密度×断面積;Sですから,

先の=σという形の式は=σS=(σS/L),

あるいは逆に,{L/(σS)}という形になります。

 

そこで,抵抗RをR=L/(σS)で定義すればよく知られた

形のオームの法則:Rが得られます。

(※過去記事(1)終わり)

 

※再掲過去記事第2弾です。 

※2006年6/17「電気伝導(つづき1)(ジュール熱)」

「オーム@の法則」を述べたついでに,

「電気が熱に変わるのは何故か?」というジュール熱

の問題も微視的に考察してみましょう。

 

 1つの電荷eに対する運動方程式を与えるために,

位置xにおける電位をV()とすると,これは単位電荷

当りのポテンシャルです。一様電場の向きをx軸に

取って,問題を1次元化,つまり,x座標だけで考えると

E=-dV/dxと書けます。

 

したがって,電場Eがあって何の抵抗もないとき

運動方程式は,電荷の質量をmv速度をvとすると

d(mv)/dt=―e(dV/dx)となります。

つまり,抵抗がないと電流を与える電荷の速度は

一定ではなくて加速されるのですね。

 

そして,この運動方程式の両辺にv=dx/dtを

掛けて,v(dv/dt)=d(v2/2)/dt,および,

v(dV/dx)=(dx/dt)(dV/dx)=dV/dt

なる式を用いると,d(mv2/2)/dt=-edV/dt,

 

つまり,(d/dt){(mv2/2)+eV}=0となり,,

保存力場に対する通常の力学的エネルギー保存則が

得られます。

 

左辺の(d/dt){(mv2/2)+eV}は,もちろん,

力学的エネルギーの単位時間当りの増加分ですが,これ

がゼロということは,抵抗がないときには,熱などの形

でのエネルギーの散逸(ロス)がないことを意味している

と考えられます。

 

しかし,実際は前記事で書いたように金属線にはゼロで

ない抵抗があり,自由電子の衝突の緩和時間をτ(sec)と

して,運動方程式は,d(mv)/dt=eE-mv/τ,

つまり,d(mv)/dt=―e(dV/dx)-mv/τです。

 

受ける力を表わす右辺は,位置xで決まるだけでなく

速度vに比例するマイナスの項,いわゆる抵抗力の項

を含んでいます。

 

力学的エネルギーの変化率の方は,やはり両辺に

v=dx/dtを掛けて求めるわけですが,今度は

(d/dt){(mv2/2)+eV}=-mv2/τと

なりますから,平衡状態,つまり加速度がゼロで

dv/dt=0の電荷速度vが一定,または電流が

一定の状態になると,d(eV)/dt=-mv2

となります。,

 

すなわち,回路に電流スイッチが入ってから十分

な時間が経過した後にvが一定で,v{d(mv)/dt

=d(mv2/2)/dt=0 より,運動エネルギーが一定

に保たれる平衡状態になっても,位置エネルギーは,

右辺の(-mv2/τ)のような形で,いわゆる熱として

散逸して(逃げて)いくわけです。

 

つまり,緩和時間τで特徴付けられる材質の抵抗が

あれば,それを流れる電流を構成する電子が受ける外力

は保存力どころか位置だけの関数でさえなくて,何ら

かの原因で自由電子はデタラメな方向へ散乱され,散乱

された電子の運動エネルギーの総和という形で,力学的

エネルギーが損失をこうむることになります。

 

 このエネルギー損失は,速度に比例する抵抗という形

で表現され,これが巨視的には「ジュール熱」と呼ばれる

ものとして現われるというわけです。

 

そこで,力学的エネルギーの他に,「熱エネルギー」

という形のエネルギーの存在をも考慮するなら,先の

方程式:すなわち,抵抗がないときには,

(d/dt){(mv2/2)+eV}=0によって,

エネルギーの保存を示し,抵抗があるときには,

(d/dt){(mv2/2)+eV}=-mv2/τの

形となる発展方程式は,結局,

「単位時間当りの力学的エネルギーの減少分(増加分

が熱エネルギーの増加分(減少分)に等しい.]

という「全エネルギーの保存法則(熱力学第一法則)」

を表現しているといえます。

 

具体的には,Eが一定のときの電位は

V(x)=-Ex+(定数)と書くことができて

d(eV)/dt=-eEvと書けます。

 

したがって,大きさがeの1つの電荷の単位時間

のエネルギー損失の式:d(eV)/dt=-mv2

は-eEv=-mv2/τとなります。

一方,抵抗物体の単位体積当りの電荷eの個数を

nとすると,電流密度はJ=nevです。

 

それ故,単位時間,単位体積当りの損失は,nmv2

=neEv=JEとなり,断面積がS,長さがLの抵抗

なら,その体積SLを掛けてJSLE=nSLmv2

です。,

 

さらに,電流の定義:I=JSと電圧の定義:V=ELを

用いると,これは,IV=Nmv2/τという表式です。

ただし,NはN=nSLで抵抗中の電荷eの総数です。

 

そこで,抵抗内の全電荷:Q=Neを用いるなら,

「(全体積中のN個の電荷による単位時間当り全エネルギー

損失)=(ジュール熱)がIV=Nmv2/τとして与えられる。」

という表現は「(ジュール熱,または消費電力)が

IV=Qmv2/(eτ)で与えられる。」という形にも

表わされます。両辺の単位は,ワット(W)=J/secです。

(※過去記事829終了)

※なお,参考文献は,いずれもアシュクロフト・マーミン著

「固体物理学の基礎」(吉岡書店)です。

 

長くなったので一旦ここで終わります。

 

※PS:昨今というか,2012年以降は,超弦理論,ゲージ場.

量子アノマリ-,くりこみ理論とか科学記事は素粒子論

関係の記事ばかりに集中してましたが,それは,その頃

から自分で図を書いたり画像をコピーして貼り付けたり

するスキルを手に入れたからでした。

これらのトピックは,例えばFeynman図など描く必要が

あり,図抜きで済ますのは困難でしたからね。。

 

その点,ブログを開始した2006年ころはテキストベース,

,文字だけで表わせるようなものだけの記述に集中した

結果,素粒子理論関連は避けて,より広汎なトピックを

論じる傾向がありました。もちろん,それでも簡単な図

があった方が理解しやすいのは当然ですから,これら

にも後付けでは図を追加したりしてましたが大量に

あるので追いつかないうち,ネットの著作権意識向上

やリニューアルなどもあって,自分で撮影した写真や

自分で作成した図でさえ,挿入するのが昔より急に

むずかしくなってモチベーションも低下してます。

 

もっとも,当初から,数式の入った科学トピックを

書きたいならブログじゃ無理で,PDFなどにしたら。

などの多くの忠告を無視してたものでしたから,

今更文句を言っても仕方ないですが。

 

しかし,幸いここのココログだとかなり数式に融通

が効きました。しかも無料のココログフリーなので

急に認知症になったり,この世から消えて記事が途絶

えても当分は残っているでしょう。

 

それに科学記事は当初からオンライン直接書きでは

なく,ほとんどワードで原稿を作り保存してあるので

ホームぺージからコピーし直さなくても過去記事を

修正して再アップなどはできます。

 

 

 

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2019年7月24日 (水)

東京パラ・オリまであと1年

2020大会まで365日で,イベントをやったりしてるらしい。。

浮かれてんじゃねえよ!! 飽食日本。。

スポーツ観戦のおかげで元気をもらってることもある自分が言うことじゃないが

五輪やワールドカップ,世界選手権どころじゃないヒトビトもイッパイいる。。

何ゴトも衣食足りてこそ。。

平成は戦争がなくてよかった??

何が?? 世界は戦争だらけだよ。。

今年は今のところ涼しいけど来年は熱波で死人が出るかも。。

今さらだが昔のように10月開催でよかったのに。。

猛暑対策の予算を使うなら,むしろ,パラのほうを中心にして

「バリアフリー理想都市」などを目ざせば?

イエメン.ロヒンギャ etc.。。虐げられ飢えたる人々に援助を。。

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2019年7月13日 (土)

室井ちゃん。。がんばって

私が有名人の中でも特にかわいいと思って大好きなヒト

室井祐月さん。

(※AKBの大家志津香ちゃん,みいちゃんも好きですが。。)

このたび乳ガンで手術するらしいです。陰ながら応援します。。

がんばってください。

 

 

 

 

 

 

 

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2019年7月12日 (金)

-熱交換器・ヒートポンプなど

最近,子供のころ疑問に思っていた科学的事象を,今70歳

近くになるまでに知り得た多少の知見,薀蓄で,まとめたもの

をブログ記事に書き留めておこうと思うに到りました。

 

こうした疑問への詳細な回答は,最近はネットにアクセスして

直接質問したり,他人の質問への回答を見たりWikiなどを参照

するなど,いくらでも答を得る手段があるので,今更という感

もありますが,他人を啓蒙しようとする「上から目線」の意図

というより,ある意味自己満足の日記的覚え書きです。

 

さて,今回は冷房,暖房を司るヒートポンプの仕組みに関わる

熱交換器や冷媒についての薀蓄を書こうと思い,それの導入

として,まず,10年以上前にブログを開始して半年くらいの

2006年8/6にアップした記事「接触による2物体の温度交換」

を再掲載するところから始めようと思います。

 

  • 以下は,まず上記の過去記事の丸写し再掲です。を訂正し,途中計算を略してわかりにくいと思った部分を 温度がそれぞれTA,TBであったとし,これらを接触させて放置 にあったと記憶していたものを参考にしています。まず,一連の手順を5つの工程に分けて行います。これらの物体を 
  • 取り囲む環境は断熱で,熱は逃げたり入ったりしないと仮定します。
  •  
  • これは,どこだったか覚えていませんが,ある大学入試の過去問
  • するだけで,AとBの温度を交換する方法を考えてみます。
  • ※同じ質量Mで同じ物質から成る2つの物体(固体:A,Bの
  • 詳細に補足しておきました。
  • ただし,現在読み直して気づいた当時の若干の誤記,間違い
  1. AとBをそれぞれ半分の質量(M/2)の2つの物体:A1,A2,質量が同じですから「熱量保存の法則」により,これらの温度は, 
  2. A1=TB1=(TA+TB)/2 となるはずです。
  3. および,B1,B2に分割します。そしてA1とB1とを接触放置します。
  4. 次にA1とB2とを接触放置します。となるはずです。
  5.  
  6. 温度はTA1=TB2={(TA+TB)/2+TB}/2=(1/4)TA+(3/4)TB
  7. 次にA2とB1とを接触放置します、となるはずです。
  8.  
  9. 温度はTA2=TB1={TA+(TA+TB)/2}/2=(3/4)TA+(1/4)TB
  10. さらにA2とBとを接触放置します。 
  11. 温度はTA2=TB2=(TA+TB)/2 となるはずです。
  12. 最後に、分割していたA1とA2,および,B1とB2を, TA’=(TA1+TA2)/2=(3/8)TA+(5/8)TB,かつ,=(1/2)[{(3/4)TA+(1/4)TB}+(TA+TB)/2]と変わっているはずです。これら一連の手順で,結局,Bの温度はTBからTB’=(5/8)TA+(3/8)TBに当然のことながら,質量が同じで同じ物質なので, であったとすれば,この手順の結果として,TA’=272℃,かつ, すなわち,(1)まず,AとBをそれぞれ4分の1の質量(M/4)します。(2)まず,A1,A2とB1,B2に先の手順を施行します。A,Bの代わりの質量(M/2)の2物体として.上の操作をします。4分割直後の時点ではA1,A2,A3,A4,の温度は全てTAであり,①~⑤を実行して最後に接着したときには,となるはずです。
  13. A1+A2=(3/8)TA+(5/8)TB,B1*B2=(5/8)TA+(3/8)TB
  14. 1,B2,3,B4の温度は全てTBで結果は質量に無関係ですから,
  15.  
  16. つまり,まず,(A1+A2)と(B1+B2)を上記の質量Mの2物体
  17.  
  18. の4つの物体:A1,A2,A3,A4,および,B1,B2,3,B4に分割
  19. ではこのプロセスをもう1段階増やすとどうなるでしょう。
  20. B’=240℃となり,温度の高低は逆転することになります。
  21. ちなみに,最初Aの温度がTA=192℃,Bの温度がTB=320℃
  22. A’+TB’=TA+TBが成立しています。
  23. 変わることになります。
  24. Aの温度はTAからTA’=(3/8)TA+(5/8)TBに,
  25.  
  26. =(5/8)TA+(3/8)TB 
  27. B’= (TB1+TB2)/2
  28. =(1/2)[{(1/4)TA+(3/4)TB}+(TA+TB)/2]
  29. 最後に戻したA,Bの温度は,このとき
  30. それぞれ接着して元のAとBに戻します。

 

(3)続いて,先の操作をさらにA1,A2とB3,B4に施すと

A1+A2=(3/8)TA1+A2+(5/8)TB,かつ,

B3+B4=(5/8)TA1+A2+(3/8)TBとなります。

 

(4)さらにA3, A4とB1, B2で実行すると,

A3+A4=(3/8)TA+(5/8)TB1*B2,かつ,

B1*B2=(5/8)TA+(3/8)TB1*B2 です。

 

(5) さらにA3,A4とB3,B4で実施すると

A3+A4”=(3/8)TA3+A4’+(5/8)TB3+B4,かつ,

B3+B4=(5/8)TA3+A4’+(3/8)TB3+B4です。

 

(6)そして最後にA1,A2,A3,A4を全て接触,接着,

および,B1,B2,3,B4を全て接触,接着させて

このステップは終わりです。

 

この結果,A,Bの最終温度:TA~,TB~は,

A~=(TA1+A2+TA3+A4”)/2

={(3/8)2+(3/8)(5/8)2}TA

+{1-(3/8)2-(3/8)(5/8)2}TB,

および,

B~=(TA+TB)-TA~

={1-(3/8)2-(3/8)(5/8)2}TA

+{(3/8)2+(3/8)(5/8)2}TB

となります。

 

※(注):上式を証明します。

[証明]:簡単のためにa=3/8,b=1-a=5/8とします。

すると,(2)はTA1+A2=aTA+bTB,B1*B2=bTA+aTB

(3)はTA1+A2=aTA1+A2+bTB=a2A+(ab+b)TB,

B3+B4=bTA1+A2+aTB=abTA+(b2+a)TB

(4)はTA3+A4=aTA+bTB1*B2=(a+b2)TA+abTB,

B1*B2=bTA+aTB1*B2=(b+ab)TA+a2Bです。

 

故に(5)は,TA3+A4”=aTA3+A4’+bTB3+B4

=(a2+ab2)TA+a2bTB+ab2A+(b3+ab)TB,

=(a2+2ab2)TA+(a2b+b3+ab)TB,かつ,

B3+B4=bTA3+A4’+aTB3+B4

=(ab+b3)TA+ab2B+a2bTA+(ab2+a2)TB

=(a2b+b3+ab)TA+(a2+2ab2)TBとなります。

 

したがって.TA1+A2+ TA3+A4”

=2(a2+ab2)TA+(a2b+b3+2a+b)TB,

です。ところが,b=1-aなので,

2b+b3+2ab+b=b(a2+b2+2a+1)

=b(2-2ab+2a)=2(1-a)(1-ab+a)

=2(1-ab+a-a+a2b-a2)

=2(1-ab+a2b-a2)=2(1-a2-ab2)

です。

それ故, TA1+A2+ TA3+A4”

=2(a2+ab2)TA+2(1-a2-ab)TB より

A~=(TA1+A2+ TA3+A4”)/2

=(a2+ab2)TA+(1-a2-ab)TB

が得られます。

 

そして,TB~=(TB1+B2+ TB3+B4”)/2ですが

A~+TB~=TA+TBを用いれば

B~=(TA+TB)-TA~~

=(1-a2-ab)TA+(1-a2-ab)TA

を得ます。[証明終わり]  (注終わり※)

 

では,このプロセスをn回繰り返して2個まで分割

し,最後にはn→∞の無限分割まで際限なく繰り返した

場合.極限では,どうなるのでしょうか?

便宜上,n段階の操作後のAの温度をTnとしておきます。

 

すると,ここまでの話から,明らかに,T1=aTA+bTB,

2=(a2+ab2)TA+(1-a2-ab2)TBですから

一般に,Tn=anA+bnBと置くと,bn=1-anであり,

n+1=an2+ann2=an2+an (1-an)2

=an(an2-an+1),bn+1=1-an+1と漸化式で書けます。

 

しかし,an+1=an(an2-an+1)(a1=3/8)は線形な関係式

ではないし,この数列の一般項を陽に導くのは試行しましたが

できませんでした。

 

それでも,an+1/an=an2-an+1=(an-1/2) 2+3/4>3/4

であり,また,an+1/an-1=an2-an=-an(1-an)です。

 

そこで0<an<1なので, 0 <(an+1/an)<1であり,

一般に0<r<1なる定数rが存在して0<(an+1/an)<r

が成立するため,n→∞に対してan=rn-11→ 0 となること

がわかります。したがって,もちろん.limn→∞n → 1です。

 

かくして無限分割の施行では「マクスウェルの悪魔」という

わけではないですが,無限回の接触操作によってAとBの温度

を完全に交換して入れかえることが原理的には可能になります。

(過去記事再掲載終了)※

 

※ここからは今回の新しい記述です。

上述の同一質量Mの固体物質A,Bの同じ単位質量当たり

同一の熱容量=比熱をcとし,TA,TBを絶対温度と考えると,

A,Bの熱量=熱エネルギー:QA,QBは.QA=∫TAcMdT,

B=∫TBcMdTで与えられるため,上記では温度交換と

称していますが実は,熱交換でもあります。

 

比熱cは固体金属の塊りなどでは,常温では剛体と同じく

運動の自由度は6で,振動の自由度や量子効果を無視すれば

古典統計力学の「エネルギー等分配の法則」により1モル

の比熱は,cmol=(R/2)×6=3R~(8.31×3)J/(mol・K)

~(25/4.19)cal/(mol・K)です。例えば鉄(Fe)なら標準の鉄

の分子量は56なので,c~0.11cal/(g・K)です。

これは固体比熱のデュロン・プティ(Dulong-Petit)の法則と

して知られています。

 

さて,上の記事を書いた約13年前にも着目したことですが,

「(何もしなければ)熱は高温部から低温部に向かって移動し,

その逆向きに流れることはない。」という熱力学第2法則に

上記事実は反しているようにも見えますが,実は分解して接触

させるという力学的操作が加えられており「何もしなければ」

とか,「ひとりでに(自然に)」という条件が満足されていない

ので,低温から高温に熱が流れていても,別にこの法則を破って

いるわけではありません。

 

ヒートポンプ(エアコン)や冷蔵庫などでは電気エネルギー

でモーターを回すことで,こうした操作が施行されています。

 

こうした常温の空気を冷やしたり暖めたりする機器には

熱交換器が使用されています。

一般に熱交換器とは性質の異なる2流体が流れている容器

接触させて高温流体から低温流体へと熱を移動させます。

2つの物体を接触させて放置しておくとやがて熱平衡と

呼ばれる平衡状態に到ります。

この熱的平衡にあるかどうか?の指標が温度(経験温度)です。

 

AとBが熱平衡にあることをA~Bと表わすと,これは一種

の同値関係A~B,B~CならA~Cという推移律が

熱力学第0法則と呼ばれています。

そこでBを温度計とみなせば,AとCを接触させなくても

それらの熱平衡の度合いが測れるわけです。

 

熱交換器の2流体として,一方は普通の水,他方は冷媒と

呼ばれ,常温では既に沸点を超えて気体として存在するもの

を,低温の液体状態にして使用します。

元々は,フッ素(F),塩素(Cl).臭素(Br)などのハロゲンを

含むガス状態ではフロンガスと呼ばれるものを冷媒として

多用していましたが,近年,フロンはオゾン層を破壊して

光化学スモッグを発生させたり,有害な紫外線など太陽

から地球に注ぐ放射線(宇宙線)を貫通させて皮膚ガン

を誘発させるなど,さらに温室効果ガスでもあるという

ことで世界的に規制され,何か代替物に取って代かわら

れているらしいです。

 

要するに,常温の温水管が冷媒管に接触する普通に温水

が冷やされ,液体冷媒は水から気化熱を奪って気体(ガス)

になります。

これだけではやがて熱平衡になって冷却という作用は

終わってしまsいますから,通常,熱機関というのはサイクル

と呼ばれるシステムで元の状態に戻し熱の流れを継続する

必要があります。

(何もしないでもサイクルとなる永久機関は無いのです。)

 

気化熱をもらってガスとなった冷媒を再び圧縮して液体に

戻し断熱圧縮で発生する熱は内ではなく外に逃がします。

 

冷蔵庫ではコンプレッサーで圧縮して放熱板で外に逃がし.

ヒートポンプでは室外機です。

具体的には圧縮して熱を持った冷媒を室外で空冷式にファン

で冷却して室内に戻します。

 

日本の都会の夏は,ほとんど全ての建物で冷房が行われ,室内

の熱:トータルでは莫大な熱を屋外に捨てているので,屋外の

気温を上昇させる効果があります。

 

これはヒートアイランド現象とも呼ばれ,田舎に比べ都会は,

地球温暖化による異常気象のほかに,過剰な冷房のためにも

屋外気温が昔より高くなっています。

 

一方,暖房は冷房と逆のプロセスです。冷媒ガスを圧縮して

際の発生熱を室内に与えて空気を暖めます。圧縮で液体と

なった冷媒を室外で冬の冷気からさらに気化熱を奪ってガス

に戻すわけです。いずれにしろ,全体で熱交換機です。

※さて余談ですが万有引力により地球に束縛されている空気中の

酸素:O2は太陽光を吸収してO2+hν→O+Oと分解され,この

酸素原子をO2+O→O3なる反応で吸収してオゾン:O3ができると

考えられていますが,O3は酸素:O2よりエネルギー的に不安定で,

短絡的に書くと,逆反応:O3→O2+O+hνで光を放出して酸素

に戻ります。

 

これらの反応が平衡してオゾン層を形成していれば,太陽から

地上まで直線的に降り注ぐ光の中でも,特に高エネルギーで人体

にも有害な放射線が,この層で一旦吸収されて放出される際には

向きを変えるという意味での散乱により緩和されます。

 

ところが空気中のPAN(ポリアセチルナイトレート)やフロンが

増えると.こうしたものの介在で反応のバランスが崩れ,O3

分解されてO2に戻るという反応の方が過剰になるというのが

オゾン層破壊のシステムと考えられています。

 

日本では,昔,よく晴れた日には光化学スモッグが発生して目が

痛くなったりするということが問題となった時代がありました。

オゾンの平衡が崩れたのが原因ということで対策がなされて

いました。その後,そうした話を聞かなくなったので,今はどう

なっているのかは知らないのですが,これは丁度,私が20,30代

で,まだ環境アセスメントの会社の社員であった頃に,門前小僧

で得た薀蓄です。

 

また,特に南極大陸上空のオゾン層が破壊され,南極に近い南半球

のオーストラリア南部で,メラがニン色素の少ない肌の白人を中心

に日光による赤焼けなど危険で,オゾン層破壊が皮膚ガン増加

に寄与していると聞いています。

(※ 2006年7/12の本ブログ過去記事「オゾンホール」,および,

7/27の「オゾンホール(訂正)」も参照されたい。※)

 

一方,温室効果ガスですが,これは,そもそも太陽から地球表面に

注ぐ総エネルギーからStefan-Boltzmannの法則(T4則)で単純

計算すると地球上平均温度は,ー18℃くらいであるという評価を

過去記事で書きました。

(※2006年11/21の記事:

「地球の平均気温とステファン・ボルツマンの法則」参照※)

実際の地球平均気温が約15℃であるのは,吸収された熱が地上

から放射されて単純に全て宇宙空間に逃げるという計算では

なく,水蒸気の雲などにより反射し返されて実質上地球が温室

の様になるという意味で,これらの気体を温室効果ガスと呼ぶ

わけでです。

 

最大の温室効果ガスは水(水蒸気)ですが米副大統領ゴア氏の

「不都合な真実」以来,二酸化炭素が増えると,さらに温暖化

するとされて温室効果ガスは危険視されており,フロンもこれ

に寄与するらしいです。

 

PS:2月のリニューアル以後,ブログ書きがむずかしくなり,

コピペもうまくできません。

オリジナル発想の遺稿をアップするまでがんばろうと思って

いましたがモチベーションが下がりました。

2006年からぷ愛用していたブログのテノウレートが

リニューアル前のように戻らないなら,もう科学ブログは

やめて,後わずかなとき訪れるだろう永眠に備えようか?

という気になりました。(※実際,上記本文でもワードで

書いた草稿をコピペ゚でアップしただけで改行不具合発生,

文章順不同で訂正する気にもなりません。)

 

 

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