最近,子供のころ疑問に思っていた科学的事象を,今70歳
近くになるまでに知り得た多少の知見,薀蓄で,まとめたもの
をブログ記事に書き留めておこうと思うに到りました。
こうした疑問への詳細な回答は,最近はネットにアクセスして
直接質問したり,他人の質問への回答を見たりWikiなどを参照
するなど,いくらでも答を得る手段があるので,今更という感
もありますが,他人を啓蒙しようとする「上から目線」の意図
というより,ある意味自己満足の日記的覚え書きです。
さて,今回は冷房,暖房を司るヒートポンプの仕組みに関わる
熱交換器や冷媒についての薀蓄を書こうと思い,それの導入
として,まず,10年以上前にブログを開始して半年くらいの
2006年8/6にアップした記事「接触による2物体の温度交換」
を再掲載するところから始めようと思います。
- 以下は,まず上記の過去記事の丸写し再掲です。を訂正し,途中計算を略してわかりにくいと思った部分を 温度がそれぞれTA,TBであったとし,これらを接触させて放置 にあったと記憶していたものを参考にしています。まず,一連の手順を5つの工程に分けて行います。これらの物体を
- 取り囲む環境は断熱で,熱は逃げたり入ったりしないと仮定します。
-
- これは,どこだったか覚えていませんが,ある大学入試の過去問
- するだけで,AとBの温度を交換する方法を考えてみます。
- ※同じ質量Mで同じ物質から成る2つの物体(固体:A,Bの
- 詳細に補足しておきました。
- ただし,現在読み直して気づいた当時の若干の誤記,間違い
- AとBをそれぞれ半分の質量(M/2)の2つの物体:A1,A2,質量が同じですから「熱量保存の法則」により,これらの温度は,
- TA1=TB1=(TA+TB)/2 となるはずです。
- および,B1,B2に分割します。そしてA1とB1とを接触放置します。
- 次にA1とB2とを接触放置します。となるはずです。
-
- 温度はTA1=TB2={(TA+TB)/2+TB}/2=(1/4)TA+(3/4)TB
- 次にA2とB1とを接触放置します、となるはずです。
-
- 温度はTA2=TB1={TA+(TA+TB)/2}/2=(3/4)TA+(1/4)TB
- さらにA2とB2とを接触放置します。
- 温度はTA2=TB2=(TA+TB)/2 となるはずです。
- 最後に、分割していたA1とA2,および,B1とB2を, TA’=(TA1+TA2)/2=(3/8)TA+(5/8)TB,かつ,=(1/2)[{(3/4)TA+(1/4)TB}+(TA+TB)/2]と変わっているはずです。これら一連の手順で,結局,Bの温度はTBからTB’=(5/8)TA+(3/8)TBに当然のことながら,質量が同じで同じ物質なので, であったとすれば,この手順の結果として,TA’=272℃,かつ, すなわち,(1)まず,AとBをそれぞれ4分の1の質量(M/4)します。(2)まず,A1,A2とB1,B2に先の手順を施行します。A,Bの代わりの質量(M/2)の2物体として.上の操作をします。4分割直後の時点ではA1,A2,A3,A4,の温度は全てTAであり,①~⑤を実行して最後に接着したときには,となるはずです。
- TA1+A2=(3/8)TA+(5/8)TB,TB1*B2=(5/8)TA+(3/8)TB
- B1,B2,B3,B4の温度は全てTBで結果は質量に無関係ですから,
-
- つまり,まず,(A1+A2)と(B1+B2)を上記の質量Mの2物体
-
- の4つの物体:A1,A2,A3,A4,および,B1,B2,B3,B4に分割
- ではこのプロセスをもう1段階増やすとどうなるでしょう。
- TB’=240℃となり,温度の高低は逆転することになります。
- ちなみに,最初Aの温度がTA=192℃,Bの温度がTB=320℃
- TA’+TB’=TA+TBが成立しています。
- 変わることになります。
- Aの温度はTAからTA’=(3/8)TA+(5/8)TBに,
-
- =(5/8)TA+(3/8)TB
- TB’= (TB1+TB2)/2
- =(1/2)[{(1/4)TA+(3/4)TB}+(TA+TB)/2]
- 最後に戻したA,Bの温度は,このとき
- それぞれ接着して元のAとBに戻します。
(3)続いて,先の操作をさらにA1,A2とB3,B4に施すと
TA1+A2’=(3/8)TA1+A2+(5/8)TB,かつ,
TB3+B4’=(5/8)TA1+A2+(3/8)TBとなります。
(4)さらにA3, A4とB1, B2で実行すると,
TA3+A4’=(3/8)TA+(5/8)TB1*B2,かつ,
TB1*B2’=(5/8)TA+(3/8)TB1*B2 です。
(5) さらにA3,A4とB3,B4で実施すると
TA3+A4”=(3/8)TA3+A4’+(5/8)TB3+B4’,かつ,
TB3+B4”=(5/8)TA3+A4’+(3/8)TB3+B4’です。
(6)そして最後にA1,A2,A3,A4を全て接触,接着,
および,B1,B2,B3,B4を全て接触,接着させて
このステップは終わりです。
この結果,A,Bの最終温度:TA~,TB~は,
TA~=(TA1+A2’+TA3+A4”)/2
={(3/8)2+(3/8)(5/8)2}TA
+{1-(3/8)2-(3/8)(5/8)2}TB,
および,
TB~=(TA+TB)-TA~
={1-(3/8)2-(3/8)(5/8)2}TA
+{(3/8)2+(3/8)(5/8)2}TB
となります。
※(注):上式を証明します。
[証明]:簡単のためにa=3/8,b=1-a=5/8とします。
すると,(2)はTA1+A2=aTA+bTB,TB1*B2=bTA+aTB
(3)はTA1+A2’=aTA1+A2+bTB=a2TA+(ab+b)TB,
TB3+B4’=bTA1+A2+aTB=abTA+(b2+a)TB
(4)はTA3+A4’=aTA+bTB1*B2=(a+b2)TA+abTB,
TB1*B2’=bTA+aTB1*B2=(b+ab)TA+a2TBです。
故に(5)は,TA3+A4”=aTA3+A4’+bTB3+B4’
=(a2+ab2)TA+a2bTB+ab2TA+(b3+ab)TB,
=(a2+2ab2)TA+(a2b+b3+ab)TB,かつ,
TB3+B4”=bTA3+A4’+aTB3+B4’
=(ab+b3)TA+ab2TB+a2bTA+(ab2+a2)TB
=(a2b+b3+ab)TA+(a2+2ab2)TBとなります。
したがって.TA1+A2’+ TA3+A4”
=2(a2+ab2)TA+(a2b+b3+2a+b)TB,
です。ところが,b=1-aなので,
a2b+b3+2ab+b=b(a2+b2+2a+1)
=b(2-2ab+2a)=2(1-a)(1-ab+a)
=2(1-ab+a-a+a2b-a2)
=2(1-ab+a2b-a2)=2(1-a2-ab2)
です。
それ故, TA1+A2’+ TA3+A4”
=2(a2+ab2)TA+2(1-a2-ab)TB より
TA~=(TA1+A2’+ TA3+A4”)/2
=(a2+ab2)TA+(1-a2-ab)TB
が得られます。
そして,TB~=(TB1+B2’+ TB3+B4”)/2ですが
TA~+TB~=TA+TBを用いれば
TB~=(TA+TB)-TA~~
=(1-a2-ab)TA+(1-a2-ab)TA
を得ます。[証明終わり] (注終わり※)
では,このプロセスをn回繰り返して2n個まで分割
し,最後にはn→∞の無限分割まで際限なく繰り返した
場合.極限では,どうなるのでしょうか?
便宜上,n段階の操作後のAの温度をTnとしておきます。
すると,ここまでの話から,明らかに,T1=aTA+bTB,
T2=(a2+ab2)TA+(1-a2-ab2)TBですから
一般に,Tn=anTA+bnTBと置くと,bn=1-anであり,
an+1=an2+anbn2=an2+an (1-an)2
=an(an2-an+1),bn+1=1-an+1と漸化式で書けます。
しかし,an+1=an(an2-an+1)(a1=3/8)は線形な関係式
ではないし,この数列の一般項を陽に導くのは試行しましたが
できませんでした。
それでも,an+1/an=an2-an+1=(an-1/2) 2+3/4>3/4
であり,また,an+1/an-1=an2-an=-an(1-an)です。
そこで0<an<1なので, 0 <(an+1/an)<1であり,
一般に0<r<1なる定数rが存在して0<(an+1/an)<r
が成立するため,n→∞に対してan=rn-1a1→ 0 となること
がわかります。したがって,もちろん.limn→∞bn → 1です。
かくして無限分割の施行では「マクスウェルの悪魔」という
わけではないですが,無限回の接触操作によってAとBの温度
を完全に交換して入れかえることが原理的には可能になります。
(過去記事再掲載終了)※
※ここからは今回の新しい記述です。
上述の同一質量Mの固体物質A,Bの同じ単位質量当たり
同一の熱容量=比熱をcとし,TA,TBを絶対温度と考えると,
A,Bの熱量=熱エネルギー:QA,QBは.QA=∫TAcMdT,
QB=∫TBcMdTで与えられるため,上記では温度交換と
称していますが実は,熱交換でもあります。
比熱cは固体金属の塊りなどでは,常温では剛体と同じく
運動の自由度は6で,振動の自由度や量子効果を無視すれば
古典統計力学の「エネルギー等分配の法則」により1モル
の比熱は,cmol=(R/2)×6=3R~(8.31×3)J/(mol・K)
~(25/4.19)cal/(mol・K)です。例えば鉄(Fe)なら標準の鉄
の分子量は56なので,c~0.11cal/(g・K)です。
これは固体比熱のデュロン・プティ(Dulong-Petit)の法則と
して知られています。
さて,上の記事を書いた約13年前にも着目したことですが,
「(何もしなければ)熱は高温部から低温部に向かって移動し,
その逆向きに流れることはない。」という熱力学第2法則に
上記事実は反しているようにも見えますが,実は分解して接触
させるという力学的操作が加えられており「何もしなければ」
とか,「ひとりでに(自然に)」という条件が満足されていない
ので,低温から高温に熱が流れていても,別にこの法則を破って
いるわけではありません。
ヒートポンプ(エアコン)や冷蔵庫などでは電気エネルギー
でモーターを回すことで,こうした操作が施行されています。
こうした常温の空気を冷やしたり暖めたりする機器には
熱交換器が使用されています。
一般に熱交換器とは性質の異なる2流体が流れている容器
接触させて高温流体から低温流体へと熱を移動させます。
2つの物体を接触させて放置しておくとやがて熱平衡と
呼ばれる平衡状態に到ります。
この熱的平衡にあるかどうか?の指標が温度(経験温度)です。
AとBが熱平衡にあることをA~Bと表わすと,これは一種
の同値関係A~B,B~CならA~Cという推移律が
熱力学第0法則と呼ばれています。
そこでBを温度計とみなせば,AとCを接触させなくても
それらの熱平衡の度合いが測れるわけです。
熱交換器の2流体として,一方は普通の水,他方は冷媒と
呼ばれ,常温では既に沸点を超えて気体として存在するもの
を,低温の液体状態にして使用します。
元々は,フッ素(F),塩素(Cl).臭素(Br)などのハロゲンを
含むガス状態ではフロンガスと呼ばれるものを冷媒として
多用していましたが,近年,フロンはオゾン層を破壊して
光化学スモッグを発生させたり,有害な紫外線など太陽
から地球に注ぐ放射線(宇宙線)を貫通させて皮膚ガン
を誘発させるなど,さらに温室効果ガスでもあるという
ことで世界的に規制され,何か代替物に取って代かわら
れているらしいです。
要するに,常温の温水管が冷媒管に接触する普通に温水
が冷やされ,液体冷媒は水から気化熱を奪って気体(ガス)
になります。
これだけではやがて熱平衡になって冷却という作用は
終わってしまsいますから,通常,熱機関というのはサイクル
と呼ばれるシステムで元の状態に戻し熱の流れを継続する
必要があります。
(何もしないでもサイクルとなる永久機関は無いのです。)
気化熱をもらってガスとなった冷媒を再び圧縮して液体に
戻し断熱圧縮で発生する熱は内ではなく外に逃がします。
冷蔵庫ではコンプレッサーで圧縮して放熱板で外に逃がし.
ヒートポンプでは室外機です。
具体的には圧縮して熱を持った冷媒を室外で空冷式にファン
で冷却して室内に戻します。
日本の都会の夏は,ほとんど全ての建物で冷房が行われ,室内
の熱:トータルでは莫大な熱を屋外に捨てているので,屋外の
気温を上昇させる効果があります。
これはヒートアイランド現象とも呼ばれ,田舎に比べ都会は,
地球温暖化による異常気象のほかに,過剰な冷房のためにも
屋外気温が昔より高くなっています。
一方,暖房は冷房と逆のプロセスです。冷媒ガスを圧縮して
際の発生熱を室内に与えて空気を暖めます。圧縮で液体と
なった冷媒を室外で冬の冷気からさらに気化熱を奪ってガス
に戻すわけです。いずれにしろ,全体で熱交換機です。
※さて余談ですが万有引力により地球に束縛されている空気中の
酸素:O2は太陽光を吸収してO2+hν→O+Oと分解され,この
酸素原子をO2+O→O3なる反応で吸収してオゾン:O3ができると
考えられていますが,O3は酸素:O2よりエネルギー的に不安定で,
短絡的に書くと,逆反応:O3→O2+O+hνで光を放出して酸素
に戻ります。
これらの反応が平衡してオゾン層を形成していれば,太陽から
地上まで直線的に降り注ぐ光の中でも,特に高エネルギーで人体
にも有害な放射線が,この層で一旦吸収されて放出される際には
向きを変えるという意味での散乱により緩和されます。
ところが空気中のPAN(ポリアセチルナイトレート)やフロンが
増えると.こうしたものの介在で反応のバランスが崩れ,O3が
分解されてO2に戻るという反応の方が過剰になるというのが
オゾン層破壊のシステムと考えられています。
日本では,昔,よく晴れた日には光化学スモッグが発生して目が
痛くなったりするということが問題となった時代がありました。
オゾンの平衡が崩れたのが原因ということで対策がなされて
いました。その後,そうした話を聞かなくなったので,今はどう
なっているのかは知らないのですが,これは丁度,私が20,30代
で,まだ環境アセスメントの会社の社員であった頃に,門前小僧
で得た薀蓄です。
また,特に南極大陸上空のオゾン層が破壊され,南極に近い南半球
のオーストラリア南部で,メラがニン色素の少ない肌の白人を中心
に日光による赤焼けなど危険で,オゾン層破壊が皮膚ガン増加
に寄与していると聞いています。
(※ 2006年7/12の本ブログ過去記事「オゾンホール」,および,
7/27の「オゾンホール(訂正)」も参照されたい。※)
一方,温室効果ガスですが,これは,そもそも太陽から地球表面に
注ぐ総エネルギーからStefan-Boltzmannの法則(T4則)で単純
計算すると地球上平均温度は,ー18℃くらいであるという評価を
過去記事で書きました。
(※2006年11/21の記事:
「地球の平均気温とステファン・ボルツマンの法則」参照※)
実際の地球平均気温が約15℃であるのは,吸収された熱が地上
から放射されて単純に全て宇宙空間に逃げるという計算では
なく,水蒸気の雲などにより反射し返されて実質上地球が温室
の様になるという意味で,これらの気体を温室効果ガスと呼ぶ
わけでです。
最大の温室効果ガスは水(水蒸気)ですが米副大統領ゴア氏の
「不都合な真実」以来,二酸化炭素が増えると,さらに温暖化
するとされて温室効果ガスは危険視されており,フロンもこれ
に寄与するらしいです。
PS:2月のリニューアル以後,ブログ書きがむずかしくなり,
コピペもうまくできません。
オリジナル発想の遺稿をアップするまでがんばろうと思って
いましたがモチベーションが下がりました。
2006年からぷ愛用していたブログのテノウレートが
リニューアル前のように戻らないなら,もう科学ブログは
やめて,後わずかなとき訪れるだろう永眠に備えようか?
という気になりました。(※実際,上記本文でもワードで
書いた草稿をコピペ゚でアップしただけで改行不具合発生,
文章順不同で訂正する気にもなりません。)
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