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2019年8月 1日 (木)

再掲記事'5):ボーズ・アインシュタイン凝縮 関連

「電気伝導まとめ」では,本文内で出現した説明抜き

の専門用語で,後で詳述すると約束していたモノの

1つの「ボーズ・アインシュタイン凝縮」についても

本ブログの2006年の過去記事にあったので、それを

再掲載し,さらに追加の注釈を加えて説明とします。

 

残るは,「ボルツマンの(輸送)方程式」と緩和時間の

関係だけですね。

 

※以下は2006年10/11にアップした過去記事です。

表題 「ボーズ・アインシュタイン凝縮とゼータ関数」

 今日はボーズ・アインシュタイン凝縮

(Bose-Einstein condensation)

その評価式で現われるゼータ関数:ζとの少しの関係などに

ついて述べてみます。

非常に多数個=N個のスピンが整数のボーズ (Bose)粒子

(Boson)のみから成る系が絶対温度Tの状態rに存在する粒子

の個数:nは,量子統計力学によれば,ボーズ・アインシュタイン統計

にしたがって,=1/[exp(ε-μ)/(kT)-1] という分布式で

与えられます。

系の最低のエネルギー状態(基底状態)は,ε=0 準位ですから,

が負になるという有り得ない状況にならないためには,分母の

exp{-μ/(kT)}は.常に1より小さくはならない。という必要性

から,ボーズ粒子の場合には化学ポテンシャル:μは,正(非負)で

ある必要があります

※(追注1):ちなみにスピンが半奇数のフェルミ(Fermi)粒子

(Fermion),例えば,スピンが1/2の電子のようなDirac粒子

では,「同じ1つの状態には1個のFermi粒子だけしか入ることが

許されない。」という「パウリ(Pauli)の排他原理」(禁制原理)が

あり,状態:r にあるFermi粒子の個数は n=0,または,n=1の

いずれかです。

統計分布もスピンが整数:0,1,2..のボーズ・アインシュタイン統計

とは異なり,フェルミ・ディラック(Fermi-Dirac)統計:

=1/[exp(ε-μ)/(kT)+1] に従います。

 

ただし,実際にはスピン1/2の電子には,1つのエネルギー・運動量

固有状態には,スピン成分がアップ(+1/2)とダウン(1/2)の2つの

異なる状態(2自由度)があるため,電子2個まで入れます。

(注1終わり※)

 さて,多数のボーズ粒子の系に戻りますが,形の状態の

エネルギー準位密度をg(ε).つまり,εとε+dεの間の

エネルギー準位区間にある状態数がg(ε)dεであるとすれば,

これの化学ポテンシャルμは,総個数がNの条件:

0[{exp(ε-μ)/(kT)-1}-1g(ε)dε=Nから

決まることになります。

そして系の全体積をV,プランク(Planck定数) をhとすると,座標で

積分した後の半径がpの運動量空間のp~p+Δpの球殻の

位相体積要素は4πVp2dpです。

量子統計力学の意味では,位置座標qも含めた位相体積:

ΔqxΔqyΔqzΔpxΔpyΔpz=h3 当りに1つの割合で状態

が存在するため,状態密度は4π(V/h3)p2dpで

与えられますすが,自由粒子で考えるとき,

ε=p2/(2m),or p2=2mε なので.

2dp=(2mε)1/2mdε ですから,結局,

g(ε)=2πV(2m/h2)3/2ε1/2 を得ます。

それ故,(2πV/h3)(2mkT)3/2によって,定数:αが決定される

ことになります。

ただし,α=-μ/(kT)と置きました。

これは,μ≦0なのでα≧ 0 です。

ここで,1/{exp(x+α)-1}

=exp{-(x+α)}/[1-exp{-(x+α)}]

=∑n=1exp{-n(x+α)} なる展開公式

利用して積分を実行すると,

0dx[x1/2/{exp(x+α)-1}]=(π1/2/2)F[exp(-α)]

=(π1/2/2)∑(e-nα/n3/2)となります。

ただし,Fは,F(x)=∑(x-n/n3/2)で定義される関数です。

何故なら,∫x1/2exp(-nx)dx=-(d/dn)(π/n) 1/2

1/2/2)(1/n3/2) となるからです。

そして,F(e)が最大になるのは,明らかにα=0のときです。

すなわちF[1]=∑(1/n3/2)=∑(1/n3/2)です。

ここで,定義によって∑(1/n3/2)がゼータ関数のお値:ζ(3/2)

に一致することを用いました。 

そこで,先のαを決めるための条件式は

(2πmkT/h2)3/2F[exp(-α)]=(N/V) となります。

 そこで温度Tを下げていくとF[exp(-α)]が増加するしかない

ので,αは正の値からゼロに近づていくわけです。

しかし,これがゼロを超えて負になることはできないので,

その極限でのα=0のときの温度Tを臨界温度と呼んでT

書くと.(N/V)=(2πmk/h2)3/2ζ(3/2)

≒2.612(2πmkc/h2)3/2 なる関係式が得られます。

それ故,このTcよりも温度Tが低くなれば,もはや,

(2πmkT/h2)3/2F(e)=(N/V)からは物理的に意味の

ある化学ポテンシャルは見つからないことになりますね。

しかし,実は化学ポテンシャルμが負の値からゼロにをn0

すると,0=1/[exp{-μ/(kT)}-1]であり.これは無限大

になるといえます。

これは,実は粒子の総数がΣn=Nであるという式の総和∑を,

積分∫dεに置換したため,準位密度を与える

(ε)2πV(2/2)3/2ε1/2ε=0 ではゼロとなり,正味では

発散項であるはずの,ε~0の

(ε)[exp{ε/(kT)}-1] ~ (const)ε-1/2が,積分の結果

として消えてしまうので,現実には限りなく大きくなるゼロ状態の

粒子数の項が切り捨てられたためであろう,と考えられます。

そこで,ゼロ状態の項だけを∑nから抜き出し,残りを積分で

置き換えるという操作をやれば,結局,

n0+(2πmkT/h2)3/2F[exp(-α)]=(N/V)=Nとなり,

これが,αを決める真の式であると考えます。

ところで,n0 が大きくなって無祖できず,Nと比較できるオーダーに

なるのは,0=1/(expα-1) ~ Nのときですから,これは

α ~ |/Nのときです。

このときF[exp(-α)]~F[1]=ζ(3/2)≒2.612という

関係式から,n0 +V(2πmkT/h2)3/2F[exp(-α)] 

=Nは,0=N[1-(T/T)3/2] となります。

 

例えば「ボーズ気体」などでは,臨界温度Tc から

下では多くの粒子が,なだれ的にゼロ状態へと落ち込んで

ゆくことになりますが」、これを

「理想ボーズ・アインシュタイン凝縮」と呼びます。

例えば,液体ヘリウム4Heでは,この理論での計算値

のTcは2.13Kですが,これは実際の「超流動」や

「超伝導」が起きる転移温度:2.19Kと,とても近い値です。

実際,超流動や超伝導の主因は

ボーズ・アインシュタイン凝縮である,

とされています。

 

先にも追記したように電子のようなスピン半奇数の

フェルミ粒子では粒子数分布はフェルミ・ディラック分布

に従うため,こうした凝縮は起きないはずですが,実際の物質

中では,陽イオンの格子振動などによるフォノンの交換に

よって電子同士に引力が働くため,くーぱー対という電子の

対が構成され.これが対粒子としてボーズ粒子となるので

低温でボーズ・アインシュタイン凝縮を起こして,そのため

電気的には超伝導が起こる主因になるとされています。   

これは有名な「BCS理論」の核心ですね。

(参考文献):中村伝 著「統計力学」(岩波全書)

(以上,再掲記事終わり※)

※(追注2):極低温では液体ヘリウム4Heが,まるで生きて

てるかのように,容器の壁を上るなどの不思議な

超流動現象がありますが,ゼロ状態の凝縮による大量粒子

は巨視的には,粘性がゼロの流体となり,Landauにより提議

された2流体モデルでは十普通の粘性がある常流体部分と

粘性ゼロの超流体部分が独立に流体運動方程式に従って

運動する結果,そうした奇妙なことが起こることも

説明可能らしいです。

また,極低温でフォノン引力によって電子のクーパー

対が形勢され.この粒子対はボーズ粒子なので,結果,

低温凝縮を起こし巨視的には非回転的流体,つまり,粘性

ゼロの超流動状態の流体=超流体になって,電気的には

抵抗がゼロの超伝導体になるということが主のBCS理論

があると,先に述べましたが、南部陽一論先生はこの理論

だけでは満足せず,BCS理論はゲージ(位相)変換不変で

なくて変換で電流が生じることに着目しました。

元々はゲージ対称性の存在していた系が自発的に破れ、

その結果,出現するエネルギーゼロの

「南部-Goldstoneモード」が電子のクーパー対の状態

である,というような南部理論を提議されたということ

です。

 南部さんは最近,亡くなられましたが,この物性理論での

対称性の自発的破れの概念を,素粒子論にも適用して

大きな業績を挙げられ。後にノーベル賞を受けたこと

は記憶に新しいですね。

対称性の自発的破れ自体は.物性では,よくある現象で,

 例えば,低温では強い磁性を示す物体の,磁気モーメントの

主因となる電子のスピンが,常温では全く勝手な方向の

(無秩序な)状態=(エントロピー最大の平衡状態)にある

結果,空間的に等方的という対称性を持つ故に,磁性は

ゼロ(または反磁性)ですが,その系を次第に低温に冷やして

いくと,ある温度=臨界温度で急にスピンが,ある特殊な

方向に揃う(対称でなくなる),という「対称性の自発的破れ」

が生じて強い磁性を示すようになるという,相転移の

メカニズムとして物性理論では,比較的よく知られて 

いた性質らしいですね。

なお,これらの話の参考文献はネットも含めいろいろ,

寄せ集めです。(注2終わり※)

※PS2:2006年の昔,office2000かXPで作った

古いバージョンのワード文章を少し修正したモノを

上げたとはいえ,あまりにも改行化け,順序デタラメ

がひどく読めるようにするのに苦労しました。

イヤ,まだダメかな?

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