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2019年7月25日 (木)

電気伝導まとめ(1)

前回記事では素朴な疑問としてエアコン,冷蔵庫など

の仕組みに関わる話をしました。

 

今回,最初は,世間ではエジソンが創ったと思われて

いるかもしれないが,実際には最初に発明したのはスワン

という人物でエジソンはフィラメントとして適切な物質

の竹などを用いて実用化しただけ,という電灯・白熱電球

から始めて蛍光管からLED(発光ダイオード)まで,電流

によって発生する光(可視周波数帯の電磁波)の原理など

を考察して記事にする予定でした。

(※上記文章は後の記事で再び前書きに使用する予定)

 

しかし,そのために引用できる本ブログの過去記事を

検索してチェックしているうち,電気伝導に関する記事だけ

でも,自分でも,読み返すに堪えるものがかなりあると感じ

たので,まず,2006年6月中旬に連続してアップした記事を

まとめて,ほぼ丸写し,少し修正で再掲載します。

,

まずは.2006年6/15の「電気伝導(オームの法則)」,

6/17の記事:「電気伝導(つづき1)(ジュール熱)」,

そして6/19の記事:「電気伝導(つづき2)衝突の正体)」

(内容はバンド理論とフォノン)を再掲載します。

 

※2006年6/15「電気伝導(オームの法則)」

@niftyの物理フォーラム,と化学の広場の専用会議室:

「中高生の理科質問箱」で電気伝導について泥試合的

な論争が続いているのを傍観していますが,そもそも

初学的知識の子供に解説するだけなら,以下の程度の

説明で十分かな。。と思います。

 

まず,電流の定義ですが,

「電流とは電荷を運ぶキャリア(Career)という実体

(電子とか正孔とかイオンとか)によらず,単位時間

に断面積を通過する電荷量のこと」です。,

そして,通常,その単位はA(アンペア)=C/sec

(クーロン/秒)で与えられます。

 

普通の家庭で流れている電流は数アンペア程度で,

このとき,電荷たちの平均の移動速さは数mm/s

程度に過ぎません。

 

それなのに,遠くでスイッチを入れても,すぐ近くで

電灯が点くのは要するにトコロテン式で,遠くの端で

電荷が押されると次から次へと”押しくらまんじゅう”

のように押されて,近くでもすぐに遠くの端と同じ速さ

で電荷が移動するようになるからですね。

 

電池などの起電力を持ったポンプを閉じた回路につなぐ

と,金属でできた導線の中にも電場が生じます。電場

があると,大きさeの電荷があると.力:=eを受ける

ことになります。

 

それ故,質量がmの電荷が速度vで運動するとき,その

運動はそれが電場Eの他に何の力も受けていなければ,

Newtonの運動方程式:d(m)/dt=eを満足する

ことになるはずです。

 

ところが,普通,金属の内部を移動する電荷というのは,

金属原子からの束縛をはずれたと見なしてよい自由電子

と想定されます。

 

電子の電荷eは負の数で,金属の中では自由電子と

いう名前は付いていますが,実はそれほど自由というわけ

ではなく.(後で詳述する予定ですが)金属原子の格子振動

(量子論的にはフォノンと呼ばれるもの)や,不純物により

散乱を受けます。

 

素朴な古典論のドゥルーデ(Drude)のモデルでは。この

散乱はイオン芯(原子から自由電子を差し引いた残り)との

衝突を意味します。もちろん,電子同士の衝突などは無視

できます。

,

これら散乱を受ける電子の平均の衝突までの時間

=(緩和時間)をτ(sec)と書くと,これは1個の電子が

単位時間(1秒間)に衝突する確率が1/τであることを

意味します。

 

 1個の電子が散乱を受けると,それはどの方向に散乱を

受ける確率もほぼ同じなので,ある向きに進んでいた1個

の電子に着目すると,その向きに走る電子に関しては急に

消えたのと同じになります。

 

故に,現在の時刻をtとして時刻(t+Δt)に消えずに

残っている確率は(1-Δt/τ)です。そこで電子の速度を

(t)とすると先のNewtonの運動法則は次のように変更

されなければなりません。

つまり, m(t+Δt)=(1-Δt/τ)×

{m(t)+eΔt+O(Δt2)} です。

 

そして,この両辺をΔtで割ってΔt→0の極限を取る

と.上式右辺のΔtの2次以上の項は消えるために.

d(m)/dt=e-m/τと書いてよい,ことに

なりますね。

 

そして,十分長い時間の後には(といってもすぐですが)

平衡に達すると,左辺の加速度項はゼロとなって,速度は

一定になる。としてよいはずです。

 

このときの多くの電子の平均の速度も,やはりと書く

ことにします。そうすると,0=e-m

⇒e=m/τより=eEτ/mです。

 

単位体積当りの自由電子の個数をnとすると,電流密度

(単位時間当りに単位面積を通過する電荷量):は,

=neですから,結局,=(ne2τ/m)となり,

電流密度は電場に比例し,その向きも電場と同じ,

ということになります。

 

この関係式:=σ;ただしσ=ne2τ/mは電気伝導度

という形でも既にオームの法則(Ohm‘s law)と呼びますが,

より身近な形に直しておきましょう。

 

電荷が流れている場所の金属線(抵抗)の断面積をS,長さを

Lとします。そして,正電荷qが一様電場Eに抵抗して距離L

だけ,反対向きに移動するのに要する仕事=位置エネルギー

はqELとなりますが,これをe=qLと書いて

のことは電圧,または電位差と呼びます、

※この電圧の単位は,V(ボルト)=J/C(ジュール/クーロン)

です。

 

電流は電流密度×断面積;Sですから,

先の=σという形の式は=σS=(σS/L),

あるいは逆に,{L/(σS)}という形になります。

 

そこで,抵抗RをR=L/(σS)で定義すればよく知られた

形のオームの法則:Rが得られます。

(※過去記事(1)終わり)

 

※再掲過去記事第2弾です。 

※2006年6/17「電気伝導(つづき1)(ジュール熱)」

「オーム@の法則」を述べたついでに,

「電気が熱に変わるのは何故か?」というジュール熱

の問題も微視的に考察してみましょう。

 

 1つの電荷eに対する運動方程式を与えるために,

位置xにおける電位をV()とすると,これは単位電荷

当りのポテンシャルです。一様電場の向きをx軸に

取って,問題を1次元化,つまり,x座標だけで考えると

E=-dV/dxと書けます。

 

したがって,電場Eがあって何の抵抗もないとき

運動方程式は,電荷の質量をmv速度をvとすると

d(mv)/dt=―e(dV/dx)となります。

つまり,抵抗がないと電流を与える電荷の速度は

一定ではなくて加速されるのですね。

 

そして,この運動方程式の両辺にv=dx/dtを

掛けて,v(dv/dt)=d(v2/2)/dt,および,

v(dV/dx)=(dx/dt)(dV/dx)=dV/dt

なる式を用いると,d(mv2/2)/dt=-edV/dt,

 

つまり,(d/dt){(mv2/2)+eV}=0となり,,

保存力場に対する通常の力学的エネルギー保存則が

得られます。

 

左辺の(d/dt){(mv2/2)+eV}は,もちろん,

力学的エネルギーの単位時間当りの増加分ですが,これ

がゼロということは,抵抗がないときには,熱などの形

でのエネルギーの散逸(ロス)がないことを意味している

と考えられます。

 

しかし,実際は前記事で書いたように金属線にはゼロで

ない抵抗があり,自由電子の衝突の緩和時間をτ(sec)と

して,運動方程式は,d(mv)/dt=eE-mv/τ,

つまり,d(mv)/dt=―e(dV/dx)-mv/τです。

 

受ける力を表わす右辺は,位置xで決まるだけでなく

速度vに比例するマイナスの項,いわゆる抵抗力の項

を含んでいます。

 

力学的エネルギーの変化率の方は,やはり両辺に

v=dx/dtを掛けて求めるわけですが,今度は

(d/dt){(mv2/2)+eV}=-mv2/τと

なりますから,平衡状態,つまり加速度がゼロで

dv/dt=0の電荷速度vが一定,または電流が

一定の状態になると,d(eV)/dt=-mv2

となります。,

 

すなわち,回路に電流スイッチが入ってから十分

な時間が経過した後にvが一定で,v{d(mv)/dt

=d(mv2/2)/dt=0 より,運動エネルギーが一定

に保たれる平衡状態になっても,位置エネルギーは,

右辺の(-mv2/τ)のような形で,いわゆる熱として

散逸して(逃げて)いくわけです。

 

つまり,緩和時間τで特徴付けられる材質の抵抗が

あれば,それを流れる電流を構成する電子が受ける外力

は保存力どころか位置だけの関数でさえなくて,何ら

かの原因で自由電子はデタラメな方向へ散乱され,散乱

された電子の運動エネルギーの総和という形で,力学的

エネルギーが損失をこうむることになります。

 

 このエネルギー損失は,速度に比例する抵抗という形

で表現され,これが巨視的には「ジュール熱」と呼ばれる

ものとして現われるというわけです。

 

そこで,力学的エネルギーの他に,「熱エネルギー」

という形のエネルギーの存在をも考慮するなら,先の

方程式:すなわち,抵抗がないときには,

(d/dt){(mv2/2)+eV}=0によって,

エネルギーの保存を示し,抵抗があるときには,

(d/dt){(mv2/2)+eV}=-mv2/τの

形となる発展方程式は,結局,

「単位時間当りの力学的エネルギーの減少分(増加分

が熱エネルギーの増加分(減少分)に等しい.]

という「全エネルギーの保存法則(熱力学第一法則)」

を表現しているといえます。

 

具体的には,Eが一定のときの電位は

V(x)=-Ex+(定数)と書くことができて

d(eV)/dt=-eEvと書けます。

 

したがって,大きさがeの1つの電荷の単位時間

のエネルギー損失の式:d(eV)/dt=-mv2

は-eEv=-mv2/τとなります。

一方,抵抗物体の単位体積当りの電荷eの個数を

nとすると,電流密度はJ=nevです。

 

それ故,単位時間,単位体積当りの損失は,nmv2

=neEv=JEとなり,断面積がS,長さがLの抵抗

なら,その体積SLを掛けてJSLE=nSLmv2

です。,

 

さらに,電流の定義:I=JSと電圧の定義:V=ELを

用いると,これは,IV=Nmv2/τという表式です。

ただし,NはN=nSLで抵抗中の電荷eの総数です。

 

そこで,抵抗内の全電荷:Q=Neを用いるなら,

「(全体積中のN個の電荷による単位時間当り全エネルギー

損失)=(ジュール熱)がIV=Nmv2/τとして与えられる。」

という表現は「(ジュール熱,または消費電力)が

IV=Qmv2/(eτ)で与えられる。」という形にも

表わされます。両辺の単位は,ワット(W)=J/secです。

(※過去記事829終了)

※なお,参考文献は,いずれもアシュクロフト・マーミン著

「固体物理学の基礎」(吉岡書店)です。

 

長くなったので一旦ここで終わります。

 

※PS:昨今というか,2012年以降は,超弦理論,ゲージ場.

量子アノマリ-,くりこみ理論とか科学記事は素粒子論

関係の記事ばかりに集中してましたが,それは,その頃

から自分で図を書いたり画像をコピーして貼り付けたり

するスキルを手に入れたからでした。

これらのトピックは,例えばFeynman図など描く必要が

あり,図抜きで済ますのは困難でしたからね。。

 

その点,ブログを開始した2006年ころはテキストベース,

,文字だけで表わせるようなものだけの記述に集中した

結果,素粒子理論関連は避けて,より広汎なトピックを

論じる傾向がありました。もちろん,それでも簡単な図

があった方が理解しやすいのは当然ですから,これら

にも後付けでは図を追加したりしてましたが大量に

あるので追いつかないうち,ネットの著作権意識向上

やリニューアルなどもあって,自分で撮影した写真や

自分で作成した図でさえ,挿入するのが昔より急に

むずかしくなってモチベーションも低下してます。

 

もっとも,当初から,数式の入った科学トピックを

書きたいならブログじゃ無理で,PDFなどにしたら。

などの多くの忠告を無視してたものでしたから,

今更文句を言っても仕方ないですが。

 

しかし,幸いここのココログだとかなり数式に融通

が効きました。しかも無料のココログフリーなので

急に認知症になったり,この世から消えて記事が途絶

えても当分は残っているでしょう。

 

それに科学記事は当初からオンライン直接書きでは

なく,ほとんどワードで原稿を作り保存してあるので

ホームぺージからコピーし直さなくても過去記事を

修正して再アップなどはできます。

 

 

 

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