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2019年9月21日 (土)

光の量子論2

※光の量子論の第1章の続きをアップします。

そもそも,蛍光灯やLEDの原理などを説明を

しようとしたのが原因で,この過去ノートの

読み返しを想起したのですが,大体ミイラ取り

でイツモ脱線して舟が山にノボリます。

 

※(余談)

さて,第1章の続きを,2006年の6/5完了

までのノートから.ブログ草稿として”写経”

するだけで8/26から9/20まで約1ヶ月,

ワード文章として34ページにもなりました。

 

眼が悪くて,身体も入院続きで弱って首など

もスグ疲れるので,若かった昔から見ると非常

に遅筆なんですね。

まあ,誰かにせかされたりして締切りがある

ような急ぐ旅でもなく,突然,事故で末筆未了

となろうが,それはそれでかまわない,と思って

いるようなものですから,休み休み,やったり

やらなかったりで,ある意味気楽なもんです。

そこで,この間はツイツイ草稿書きに夢中で

ブログアップの方はお休みでした。

いつもながら,写経のようなブログ草稿書き

は過去に納得して綴ったモノの反芻作業なので,

またまた,あの世まで持っていくだけで何の役

にも立たない自己満足薀蓄を,温故知新で再発見

があったり,懐かしく思い出しながら賽の河原に

でも積み上げる,というようなものです。

 

私には,あれば幸せだろうと想像するだけの

保護してあげるべき伴侶や子供なども知己も

ないですが,そうした愛すべき家族があったり

または,自分が生きるための日々の糧を得るため

に頑張っておられる方々には申し訳ないけれど,

貧乏人の金のかからない死ぬまでの「ヒマツブシ」

という意味では,それでも,ただ寝て起きて

食って,というだけで未来の希望はトックに

諦めた老醜の生活にライフワークというには

オコガましいけれど,僅かな生きる動機を

くれています。(自ら死ぬという勇気はない。)

写経とはいえ,ときどきノートからは理解

できない場合,元本をルーペなどで判読すると

式はともかく文章部分が「てにおは」から

「こそあど」まで丸写しであったりすると

自己満足の覚え書き日記で,参照文献を明示

しているので盗作じゃないとはいえ,汗顔の

至りですね。

 歳と慢性病のせいで,たとえリハビリしても

もはや,普通人ならできることが,ダメで

できなくなったことが増えてきてますが,

それらは既に回復をあきらめています。

 人生いつでもやり直しがきく,という歌の文句

ありますが若いとき,若い心身でなければ

できないことは老人じゃやり直せません。

 今は生きていくために不可欠な病気治療

には金銭的補助が出ていますが,

 例えばもはや子をなす必要もない老人の

ED治療などには補助はでないでしょうね。

 私は他の機能回復はともかく.遠く

は見えなくても好きな本さえ読めれば

まだ生きていたいという意欲が大いに

わいてくると思うのですが視力回復

手術などは病気治療ではないので

自腹でしょうから無理ですね。うーん

(余談終わり※)

 

※さて,第1章の残り34ページをイッペンに

アップするのも何ですから,4つに分けて連載

します。以下は第1弾です。

 

  • 1.4 光子数のゆらぎ

光子の吸収,放出が起こると,空洞内の放射場

の各モードにおける光子数のゆらぎが生じます。

このゆらぎは,ある特定の時間スケールで

起きます。(※第3章で詳述)

 

ここで,長時間平均と集団平均が同等である。

という次の定理を利用します。

[統計力学のエルゴード定理(Ergodic theorem)]

ある系における時間平均は,一定の状態に

保たれた,その系と厳密に相似な多数の系全体

についての平均と同等である。

 

この定理で現われる相似な系の仮想的集団は,

「アンサンブル」と呼ばれます。

空洞内のある特定のモードにある光子の場合

には,多数の相似な空洞内のそれと同じ場のモード

から成るアンサンブルを考える必要があります。

 

アンサンブルの中の空洞モードは,それぞれ,

ある一定の個数の光子を持ちます。

 そして,n個の光子を持つ空洞モードの比率は,

先の,P=(1-U)U=exp{-nhcω/(kT)}

×[1-exp{-hcω/(kT)}](1.26)で与えられる

によって決まります。

 

そこで,平均光子数<n>は,既にやった(1.27)

の<n>=Σn(nPn)の計算と同じ計算で得られ,

その結果として得た(1.28)の<n>=U/(1-U)

=1/[exp{hcω/(kT)}-1]は

は,アンサンブル平均であると見てもいいです

が,同時に,エルゴード定理から,

「現実の1つの空洞モードにある光子数の時間平均」

と見なすこともできます。

この時間平均をとる期間は特性時間スケール

と比べて長くなければなりません。

 

は<n>のまわりの「ゆらぎ」の程度

を決めるのにも利用できます。

まず,<n>=U/(1-U)より,

U=<n>/(1+<n>),1-U=1/(1+<n>)

(1.35)が成立します。そこで,空洞の光子数が

nの確率(=アンサンブル中で光子数がnの空洞

モードの比率):Pは,P=(1 -U)Uより,

=<<n>/(1+<n>)(n+1).(1.36)

と書けます。

 

さて,ここで,任意の正の定数(整数)r

について,「r次の階乗モーメント」を,

<n(n-1)(n-2)..(n-r+1)>

=Σn(n-1)(n-2)...(n-r+1)P.

(1.37)で定義します。

すると,r=1の1次階乗は平均:<n>

と同じです。

 

※[注2-1]:Planckの確率分布:(1.26).

または(1.36)のr次階乗モーメントは,

<n(n-1)(n-2)..(n-r+1)>

=r!<n>.(1.38) に等しい。ことを

証明します。

[証明]:定義によって,

<n(n-1)(n-2)..(n-r+1)>

=Σn(n-1)(n-2)..(n-r+1)P

です。

これに(1.26)式のP=(1-U)U

=exp{-nhcω/(kT)}

×[1-exp{-hcω/(kT)}]を代入

すると,右辺

=Σn(n-1)(n-2)..(n-r+1)

×(1-U)U

=(1-U)U[(∂/∂U)n)]

=(1-U)U[(∂/∂U)(1-U)-1]

=(1-U)Ur!(1-U)-(r+1)

=r!{U/(1-U)}となります。

そこで,(1.28)の<n>=U/(1-U)より,

結局,<n(n-1)(n-2)..(n-r+1)>

=r!<n>r が得られました。

(証明終わり).(注2-1終わり※)

 

さて,光子数のゆらぎの大きさは,

分布の分散の平方根=平均からの偏差

の2乗平均の平方根=標準偏差:Δnで

特徴付けられます。

 

すなわち,(Δn)2=Σn(n-<n>)2

=Σn2-<n>2=<n2>-<n>2

です。ところが,先の注2-1から,

<n(n-1)>=<n2>-<n>=2<n>2

より, <n2>=2<n>2+<n>です。

故に,(Δn)2=<n2>+<n>,であり,

光子数nのゆらぎの式として,

Δn={<n>2+<n>}1/2.(1.41)

が得られます。

 

それ故,nのゆらぎは,常に<n>よりも

大きいことになります。そして,<n>>>1

と平均数<n>が大きいと,ゆらぎは,

Δn~ <n>+1/2.(1.42)と近似されます。

 

  • 1.5 EinsteinのA係数とB係数

※空洞内の光子数変化の機構

空洞壁の原子や分子により,光子の吸収,

放出が生じるため,空洞内の光子数は変化

します。

さて,以下で述べる

「Einstein(アインシュタイン)の理論」は,

吸収,散乱,光子ビームの増幅を定性的に理解

するのに.役立ちます。

放射と空洞壁原子との相互作用よりも,放射と

空洞内にある原子(分子)との相互作用を考える

方が簡単です。

 

N個の同じ原子から成る気体が空洞内にあり

各原子は,エネルギーがE1とE2である1対の

束縛状態を持ち,hcω=E2-E1.(1.43)とします。

この2つの原子準位は,縮退度g1,g2を持つ

多重項であるとし,簡単のため,それら以外の準位

は無視します。

そして,空洞内でエネルギー:E1,E2,を持つ原子

の数は,それらの準位を占める占位数ですが,これを

1,N2で表わすことにします。

 

例えば,周波数ωのビームに空洞を通過させて

空洞内で失うビーム強度の比率を測定するとします。

標準的実験では,周波数ωの放射のサイクル平均

を取ったエネルギー密度は.外部電磁波源からの寄与:

(ω)だけ,元のW(ω)より大きいはずです。

そこで,全エネルギー密度をW(ω)と

すると,W(ω)=W(ω)+W(ω).(1.44)

です。一般には,W(ω)は位置の関数ですが,

差し当たり,それは無視します。

しかし,アインシュタイン理論が成功するため

には,原子遷移周波数近傍で全エネルギー密度:

W(ω)がωと共に緩やかに変動する関数である

ことが不可欠です。

 

※光子の吸収と放出の確率

状態2にある1つの原子が「自発的に」状態1

に落ちて,エネルギー:hcωの光子を放出する,

単位時間当りの有限確率(遷移速度)があるとして,

それをA21とします。状態1にある原子は周波数

がωの放射が存在しないなら状態2に移り得る道

はありません。

しかし,エネルギー密度:W(ω)の放射が存在

すれば,hcωの吸収によって遷移:1→2が起こる。

この遷移速度はW(ω)に比例するとして,その係数

をB12とします。W(ω)の放の存在は遷移:2→1

の遷移速度も増加させます。この過程の遷移速度

をB21W(ω)と書いておきます。

この第3の放射過程は「誘導放出」,または,

「刺激放出」と呼ばれます。これらの3つの係数:

21,B12,B21はW(ω)には無関係であるように

定義されています。

 

そうするとN1,N2の変化速度は

dN1/dt=-dN2/dt

=N221-N112W(ω)+N221W(ω)

(1.45)と書けます。

 

  • 1.6 熱平衡の場合

熱平衡のときには,N1,N2は時間的に一定

ですから.N221-N112W(ω)+N221W(ω)

=0.(1.46)です。

そして,外部の放射が空洞に侵入してこない

場合:W(ω)=W(ω)です。よって,このW

対する(1.46)の解は,

(ω)=A21/{(N1/N2)B12-B21}(1.47)です。

ところが,熱平衡では,N1,N2はBoltzmannの

法則(=大正準分布)によって,N1/N2

=g1exp{-E1/(kT)}/g2exp{-E2/(kT)}

=(g1/g2)exp{hcω/(kT)}.(1.48)ですから,

これを代入して,W(ω)

=A21/[(g1/g2)exp{hcω/(kT)}B12-B21]

(1.49)が得られます。

 

この結果は先の(1.29)のPlanckの法則:

(ω)

={hcω3/(π23)}/[exp{hcω/(kT)}-1]

と矛盾してはなりませんが,これらが一致する

のは,(g1/g2)B12=B21.(1.50),かつ,

21={hcω3/(π23)}B21(1.51)が成立する

場合に限られます。

それ故,ある1対の準位間の遷移速度は全て,

どれか1つの係数が決まれば全て決まることに

なります。

 

Planckの法則は(1.29)の

(ω)={hcω3/(π23)}

/[exp{hcω/(kT)}-1]ですが,

これと,(1.28)の<n>=U/(1-U)

=1/[exp{hcω/(kT)}-1] により,

(ω)={hcω3/(π23)}<n>

が成立します。

それ故,(1.51)A21={hcω3/(π23)}B21

から,W(ω)=(A21/B21)<n>,つまり,

21(ω)=A21<n>.(1.52)を得ます。

故に,2→1の2種類の遷移速度=放出速度

の和は,B21(ω)+A21=A21(<n>+1)

(1.53)となります。

 

2種類の放出速度の大きさを光子の周波数

ωの関数として比較するのは興味深いことです。

(自発放出)/(誘導放出)=A21/{B21(ω)}

=1/<n>=exp{hcω/(kT)}-1.(1.54)

ですから,

室温(T~300K)で,hcω/(kT)~1となる

のは,遠赤外領域:ω/(2π)=f~6×1012Hzに

相当して波長がλ~50μm.(1.55)の場合です。

 

よって,より波長の長いマイクロ波や無線慮域

に対応する放射では,hcω<<(kT)であり,

21<<B21(ω).(1.56)です。

これに対し.近赤外.可視.紫外,orX線領域

では.hcω>>(kT)であり,

21>>B21(ω)(1.57) です。

 

※次にPの別の表わし方を示します。

U=exp{-hcω/(kT)},

U=<n>/(1+<n>),および,

1/N2=(g1/g2)exp{hcω/(kT)}

から,<n>/(1+<n>)=g12/(g21)

(1.58)です。

故に<n>=g12/(g21-g12).(1.59)

と書けます。

そこで,(1.36)のP=<<n>/(1+<n>)(n+1)

は,P={g12/(g21)}{1-g12/(g21)}

(1.60)となります。

こうして.熱平衡の分布は,量子のエネルギー

準位に関係した量だけで表わせます。

 

  • 1.7 簡単な光学過程の理論

※多種多様な放射プロセスは,レート方程式:

(1.45),つまり,dN1/dt=-dN2/dt

=N221-N112W(ω)+N221W(ω)を解き,

そのN1,N2の解にアインシュタイン係数A,B

の関係式(1.50),(1.51)の(g1/g2)B12=B21.

21={hcω3/(π23)}B21を使用して扱う

ことができます。

ここでのテーマは,近赤外,可視,紫外領域の

電磁放射を用いた光学実験です。

室温ではW(ω)は非常に小さく,既に(1.57)

で述べたように,近赤外,可視,紫外領域のωでは,

cω>>(kT)であり,A21>>B21(ω)

なので,自然放出(自発放射)の速さは熱的な放射,

吸収の速さより,はるかに大きくなります。

 

それ故,周波数がω~1013Hz程度かそれ以上

の場合は,熱エネルギー密度:W(ω)を無視

するのが,非常に良い近似になります。

このとき,全エネルギー密度:W(ω)は,(1.44)

のW(ω)=W(ω)+W(ω)より,外部光源

からの寄与:W(ω)のみで近似されます。

そこで,以下ではWの添字Eを省きます。

 

そして,今,テーマとして興味ある放射過程では,

外部光源と結びついた吸収と誘導放出が関わります。

対象の光周波数の領域にある原子の励起状態は,

室温では無視できる程度の熱的な占位数しか持ち

ません。

今,単一の低い状態=原子の基底状態と,多数

の光励起状態を持つ原子を考えます。

低い方の準位を基底状態にとると熱平衡では

1=Nです。そして,ある特定の励起準位E2

への選択的励起は,しばしば,周波数ωの単一の原子

遷移への共鳴条件:hcω=E2-E1を満たす外部光源

からの光で原子を照射することで達成されます。

このとき,系は事実上2準位原子として挙動する

ため,占位数はN1+N2=N.(1.61)を満たします。

 

2準位の場合は特に簡単で,どちらの準位も縮退

していない:g1=g2=1とすれば,(1.50)式の

(g1/g2)B12=B21によって,2つのB係数:

12とB21は等しくなり,さらに簡単に

なります。

そこで,A21とB12=B21の下添字を省略する

と,(1.45)のdN1/dt=-dN2/dt

=N221-N112W(ω)+N221W(ω)は

dN1/dt=-dN2/dt

=N2A+(N2-N1)BW.(1.62)となります。

 

※[注2-2]: N1+N2=Nの条件下で,

dN1/dt=-dN2/dt

=N2A+(N2-N1)BWの解は,

1={N10-N(A+BW)/(A+2BW)}

×exp{-(A+2BW)t}

+N(A+BW)/(A+2BW).(1.63)となる

ことを証します。ただし,N10はt=0に

おけるN1の初期値です。

2はN2=N-N1より導かれます。

(証明):dN1/dt=N2A+(N2-N1)BWの

右辺にN2=N-N1を代入すると,

dN1/dt=NA-N1A+(N-2N1)BW

=N(A+BW)-N1(A+2BW)です。

故に,dN1/{N1(A+2BW)-N(A+BW)}

=-dtです。

両辺を0からtまで積分すれば,

ln{N1-N(A+BW)/(A+2BW)}

-ln{N10-N(A+BW)/(A+2BW)}

=-(A+2BW)tとなります。

したがって,

1={N10-N(A+BW)/(A+2BW)}

×exp{-(A+2BW)t}

+N(A+BW)/(A+2BW)

が得られます。(証明終わり)(注2-2終わり※)

今回はここまでです。(つづく)

 

(参考文献):Rodney.Loudon著

(小島忠宣・小島和子共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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