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2019年10月 4日 (金)

光の量子論7

※第2章 原子・放射相互作用の量子力学

の続きです。

余談抜きで本論に入ります。

  • 2.3 遷移速度

前の記事で,(2.13),(2.14)の方程式が,

2 exp(-iω0t)I12=i(dC1/dt),

1 exp(iω0t)I12=i(dC2/dt)

と簡単になる,と書きましたが,

これに,さらに,I12=Ωcos(ωt)を代入

すれば,それぞれの式から,

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)(2.31),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)(2.32)

を得ます。

※(注7-1):|C1|2+|C2{2が時間的に一定不変であり,

(2.31),(2.32)が規格化条件と矛盾しない,ことを証明

します。

(証明):(d/dt){|C1|2+|C2{2}

=C1(dC1*/dt)+(dC1/dt)C1

+C2(dC2*/dt)+(dC2/dt)C2

です。

これに,上記の(2.31),(2.32)を代入すると,

(d/dt){|C1|2+|C2{2}

=iC1*cos(ωt)exp(iω0t)C2}

+(-i){Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2}C1

+iC2{Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C1}

+(-i){Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1}C2

=0 が得られました。(証明終わり)

(注7-1終わり※)

 

※(注7-2):原子に作用する電場が時間的に一定

である特別な場合,つまりω=0の場合,について

(2.31).(2.32)を解き,まず,解のC2が,

22/dt2-iω0(dC2/dt)+|Ω|22=0

(2.33)を満たすことを示します。

そして,これから,ω=0では,

|C2|2={4|Ω|2/(ω02+4|Ω|2)}

×sin2{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}(2.34)

となることを証明します。

そして,|C1|2は,規格化条件|C1|2+|C2|2=1

から決まります。

(証明);ω=0では,(2.31),()2.32)の

Ωcosωtexp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)と

Ωcosωtexp(iω0t)C1=i(dC2/dt)は,

dC1/dt=(-i)Ωexp(-iω0t)C2,および,

dC2/dt=(-i)Ωexp(iω0t)C1です。

2番目の式をtで微分すれば,

22/dt2=(-i)Ωexp(iω0t)(dC1/dt)

+ω0Ωexp(iω0t)C1となります。

右辺の(dC1/dt)に(-i)Ωexp(-iω0t)C2

を,Ωexp(iω0t)C1に{i(dC2/dt)}を代入

すると,d22/dt2=-ΩΩC2+iω0dC2/dt

となります。よって,

22/dt2-iω0dC2/dt+|Ω|22=0

が得られました。

これは定数係数の2階線形常微分方程式です。

特性方程式は,λ2-iω0λ+|Ω|2λ=0で

解として,λ={iω0±(-ω02-4|Ω|2)1/2}/2

=(i/2){ω0±(ω02+4|Ω|2)1/}を得ます。

λ±=(1/2){ω0±(ω02+4|Ω|2)1/}(複号同順)

と置けば,C2=Aexp(iλt)+Bexp(iλt)}

ですが,t=0でC2=0ですからB=-Aです。

故に,C2=2Aexp(iω0t/2)

×sin{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t},となります。

これを,dC2/dt=(-i)Ωexp(iω0t)C1

に代入します。

(-i)Ωexp(iω0t)C1=2Aexp(iω0t/2)

×[(iω0/2)sin{(ω02+4|Ω|2)1/t/2}

+(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/

2cos{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}]より,

1=iA(Ω)-1exp(-iω0t/2)

×[iω0sin{(ω02+4|Ω|2)1/2t/2}

+(ω02+4|Ω|2)1/2cos{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}]

ですが,t=0でC1=1なので,

iA(Ω)-102+4|Ω|2)1/2=1より.

Ω=iA(ω02+4|Ω|2)1/2 を得ます。

故に,A=(-i)Ω/(ω02+4|Ω|2)1/2

です。

結局,C2=(-i){2Ω/(ω02+4|Ω|2)1/2}

exp(iω0t/2)×sin{(ω02+4|Ω|2)1/t/2},

となります。

したがって,|C2|2=4|Ω|2/(ω02+4|Ω|2)

×sin2{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/t}が得られました。

(証明終わり)  (注7-2終わり※)

 

アインシュタインB係数の計算は,原理的に上

の(注)のω=0の例題に似ていますが,この場合は

ω0に近いωに対する(2.31),(2.32)の解を求める

必要があります。

解の満たすべき初期条件は,やはりC1(0)=1,

2(0)=0.(2.35)です。

この場合も,|C2(t)|2が,時刻tにψ2に原子

を見出す確率であり,|C2(t)|2/tが量子力学的

遷移速度と定義されるものを与えます。

これをアインシュタイン理論のB12の定義と比較

すると,B12W(ω)={C2(t){2/t(2.36)が成立

すべきである,ことがわかります。

しかし,(2.31),(2.32)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)

は,形は簡単ですが,これを一般のωに対して解く

のは,かなり困難なので.とりあえず,近似解を探す

必要があります。

ところで,前記事の最後では,「大抵の光ビーム

では,Ω<<<ω0.(2.30)が成立しています。」

と書きました。そこで,Ω<<<ω0を想定すると,

これはC1,C2をΩのベキ級数として求めるのが

有効ではないか?ということを示唆しています。

そこで,このベキ展開を次のように,逐次近似の

反復法で試行してみます。すまわち,まず,

初期値:C1=1,C2=0を,(2.31),(2.32)の.

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)

の左辺に代入すると,dC1/dt=0.,および,

dC2/dt=(-i)Ωcos(ωt)exp(iω0t)

=(-i/2)Ω

×[exp{i(ω+ω0)t}+exp{i(ω-ω0)t}]

を得ます。そこで第1近似値として.

1(t)=1,および,C2(t)

=(-Ω/2)[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

+(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)

(2.37)が得られました。

次に.これを,さらに,(2.31)の左辺に代入します。

すると,dC1/dt

=(i|Ω|2/2)cos(ωt)exp(-iω0t)

×[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

+(i|Ω|2/2)cos(ωt)exp(-iω0t)

×[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0) です。

ここで,cos(ωt)exp(-iω0t)

=(1/2)[exp{i(ω-ω0)t}+exp{-i(ω+ω0)t}]

を代入すれば,

右辺=(i|Ω|2/4)[exp{i(ω-ω0)t}-exp(2iωt)

+exp{-i(ω+ω0)t}+1]/(ω+ω0)

+(i|Ω|2/4)[exp{i(ω-ω0)t}+exp{-2i(ω-ω0)t}]

+exp{-i(ω+ω0)t}-exp(-2iω0t}]/(ω-ω0)

となります。

したがって,長い式ですが,C1の第2近似値

として,C1(t)=∫01(dC1/dt)+C1(0)

=1+(|Ω|2/4)

×[-exp{i(ω-ω0)t}/(ω2-ω02)

+exp(2iωt)/{2ω(ω+ω0)}

+exp{-i(ω+ω0)t}/(ω+ω0)2+1/(ω+ω0)

-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)2

+exp{-2i(ω-ω0)t}/{2(ω-ω0)2}

+exp{-i(ω+ω0)t}/(ω2-ω02)

-exp(-2iω0t}{2ω0(ω-ω0)}が得られます。

つまり,C1(t)=+(|Ω|2/4)×(tの関数)

(2.38)の形の第2近似値を得ます。

第3近似値も同様に求めることができて,

以下,同様に反復するわけです。

そして,

dC2/dt=(―i)Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1

であり,C2(t)=∫01(dC2/dt)ですから,C1

|Ω|の偶数ベキ,C2はΩ,またはΩの奇数ベキに

展開されることはわかります。

Ωは,Ω=eE012/hc.(2.23)と定義されていた

ことを思い出すと,これら2つの級数は電場の強さ:

0のベキに展開したものと見なすこともできます。

 

 さて,前章で既に論じたことですが,電磁波の電場

が.E(,t)0cos(kr-ωt),磁場がB(,t)

0cos(kr-ωt)と表わされる場合,1サイクル

の周期はT=2π/ωですから,cos2(kr-ωt)の

サイクル平均は,<cos2(kr-ωt)>

=(1/T)∫0cos2(kr-ωt)=1/2です。

それ故,電磁場のエネルギー:

(1/2)∫(ε02+μ0-12)dVのサイクル平均が,

<(1/2)∫(ε02+μ0-12)dV>

=(1/4)∫(ε002+μ0-102)dVで与えられます。

 

ところが,Maxwellの方程式:∇×E=-∂B/∂t

より,k×E0=ωB0であり,kの向きをz軸正の向き

に取り,E0がxの正の向き,B0がyの正の向きに偏光

しているとして,kE0=ωB0を得ます。

そして,真空(自由空間)中では(k/ω)=c-1

=(ε0μ0)1/2ですから,結局,μ0-102=ε002が成立

します。したがって,この電磁波の総エネルギーの

サイクル平均は,(1/2)∫(ε02+μ0-12)dV>

=(1/2)∫ε002dVとなり,サイクル平均のエネルギー

密度は,(1/2)ε002で与えられることがわかります。

すなわち.周波数ωの光のサイクル平均の

エネルギー密度がW(ω)の定義ですから,

結局,W(ω)=(1/2)ε002です。

これは,第1章の(1.34)で与えた∫0W(ω)dω

={1/(2V)}∫ε0|(,t)|2dVに似ていますが.

今のW(ω)=(1/2)ε002の式では,既に,体積積分

が実行済みです。

Ωが小さいのでC2(t)の表式を,E0,または,Ω

or Ωの1次までのオーダーまで取り,(2.36)の等式

12W(ω)={C2(t){2/tの両辺のE0のベキを比較

すればBが求められるはずです。

アインシュタインB係数を計算すべき周波数

ω~ω0においては,(2.37)の第1近似解:C2(t)

=(-Ω/2)[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

+(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)は,

既に,この比較の目的にかなっています。

元々,アインシュタイン理論では,E0の高次

の項が重要という状況には対応していません。

ω~ω0の光を考えると,Ω<<<ω0より,

ω>>Ωであり,Ωの1次までとるのが良い近似です。

そして,(2.37)のC2(t)の第2項は第1項より

はるかに大きいことがわかります。

ω → ω0の極限では,C2(t)の第1項は,

(-Ω/2)[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

→ {-Ω/(4ω0)}{1-exp(2iω0t)}

={iΩ/(2ω0)}exp{(iω0t)sin(ω0t)

となり,他方,第2項は,

(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)

→ (iΩ/2)(ω-ω0)t/(ω-ω0)

=(iΩ/2)t となります。

したがって,ω~ω0では,C2(t)

~ (iΩ/2ω0)[exp{(iω0t)sin(ω0t)+ω0t}

を得ます。

後述するように,原子遷移が起こる特有の時間

間隔tは10-7sec程度か,それよりやや長いくらい

ですが,(2.65)より.ω0は1015Hz程度なので,

こうした対象では,ω0t>>1.(2.41)が極めて良く

成立しています。

それ故,(2.37)の第1項を無視するのが良い近似

になると考えられます。

そこで,ω→ω0とする前の元の式で第1項を無視

すれば,C2(t)~(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}

/(ω-ω0)=(iΩ)exp{i(ω-ω0)t/2}

×sin{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0) であり,

|C2(t)|2~|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2

(2.42)なる近似を得ます。

そこで,ω~ω0のときは,

|C2(t)|2~(1/4)|Ω|22(2.43)が得られます。

これは,時間tの2乗に比例して増加しますが,(2.42)

からわかるようにωがω0と少しでも異なるなら時間的

に振動します。

このように,(2.37)の第1項を無視する近似は,

回転波近似と呼ばれています。

 

さて,これまでは遷移周波数ω0を厳密な数値を持った

確定値と見なしてきました。これは,ω0の数値には常に

若干の不安定さが伴なう,という実際の実験の際の事情

には合致しません。

如何なる分光器でも測定スペクトル線が,あるΔωと

いう量だけ,ぼやけているような有限の分解能を持ちます。

もしも,完全な周波数分解能を備えた理想的な実験装置

を目論んだとしても,スペクトル線の本来の幅には,より

根本的な限界が存在します。(※ ちまり,量子力学の基礎

を成す,Heisenbergの不確定性原理に根ざす限界です。)

ω0の不確定さを考慮に入れるには,|C2(t)|2の表式

をωのある範囲にわたって積分すればいいだけです。

そこで,ω0を遷移周波数の中心とすると,

|C2(t)|2=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2は.

Ω­=eE012/hcと,(1/2)ε002=∫W(ω)dωを

利用して,|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)}

ω0-Δω/2ω0+Δω/2[W(ω)sin2{(ω-ω0)t/2}

/(ω-ω0)2]dω.(2.44)とすれば得られます。

ここで,原子は広帯域の照射を受けているという

アインシュタイ理論の基礎となる仮定を採用し,Δω

の範囲にわたって放射エネルギー密度が一定値:W(ω0)

であるとします。

このとき,(2.44)は,|C2(t)|2

={2e2|X12|2/(ε0c2)} W(ω)(Int)(2.45)

と書けます。

ただし,Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2].(2.46)です。

 

この積分:Intは2つの極限で解析的に表わすこと

ができます。まず,tΔω<<1のときは,

Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2].

~[sin2{(Δωt/4}/(Δω/2)2]Δω,

つまり,Int~(1/4)t2Δω.(2.47)となります。

一方,tΔω>>」1なら,∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

~∫-∞dω11=ω-ω0) ですから,

公式:∫0[sin2(ax)/x2dx=πa/2より,

-∞[sin2(ax)/x2dx=πa なので,

Int~∫-∞dω1[sin21t/2)/ω12]=πt/2

(2.48)を得ます。

アインシュタインB係数は(2.36)のB12W(ω)

=|C2(t)|2/tにより,原子遷移確率が経過時間t

に比例する理論と結びついています。

そこで,|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)}

×W(ω)(Int)(2.45)なる式にtΔω>>1のとき

の近似値Int=πt/2(2.48)を代入した式:

|C2(t)|2=πe2|X12|2W(ω)t/(ε0c2)(2.49)

から,B12=|C2(t)|2/{W(ω)t}(2.36)によって,

12=πe2|X12|2/(ε0c2)が得られます。

 

(2.49)の近似は規格化条件:|C1|2+|C2|2=1に

反するような|C2(t)|2が1を超える大きいtに

対しては破綻します。しかし,一旦,Bの大きさが計算

されると,原子の励起度の長時間挙動は,先の記事:

「光の量子論3」の第1章(§1.9原子励起)の

項で与えた,(1.70)のN2の評価式:

2={NBW/(A+2BW)}

×[1-exp{-(A+2BW)t}]において,

(A+2BW)t>>1.(1.73)

の長時間が過ぎると,定常状態の値:

2=NBW/(A+2BW)(1.74)に近づく,

と述べた方法で,決定することはできます。

今回はここまでにします。(つづく)

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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