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2019年11月

2019年11月21日 (木)

光の量子論12

※「光の量子論11」からの続きです。

(※余談):いとしのエリカ様,薬物疑惑で逮捕ですか?

真実だとしても誰かを傷つけたワケじゃなくカワイイもんです。

またも,政権スキャンダルと偶然?一致のタイミングですか。

(※ 氾文雀以来のカワイサ,。。草冠のハンが出てこない。)

まあ,昔,タオルで顔隠してヘルメットにゲバ棒でパクられて

ウソの情報聞かされながら聴取されたりした身には,マスコミと

いう名で無節操に垂れ流す,大方の世論に迎合しないとモノが

売れないスポンサー様イノチの「大本営発表」,逆らえば仕事

も干される方々のフェイクか否かも判断せず,本音に歯にキヌ

着せたコメントなどは,鵜呑みにできないタチのヘソマガリて,

命は残り少ないが,映画同様,最後は抹殺される運命の

アウトサイダーを気取っても,何の力もないクソジジイ

の無駄な抵抗故,ハナも引っかけられない遠吠えですが。

(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.10

(放射減衰を伴なうRabi振動)の項で,自発放出の減衰項を

加えた光学Bloch方程式から,まず,ビーム照射の長時間

極限の定常状態について考察し論じました。

その後,逆にビーム照射時間が短かい場合,一般解が

複雑なので.解の特徴を見るため,特殊な2つの例のみ扱い,

まず,(ⅰ)ω=ω0で初期条件がρ22=ρ12=0 で,|Ω|>γ

の場合のρ22(t)=|C2(t)|2の解として,(2.126)の

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

(ただし,λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2.(2.127))を導出したところ

で終わりました。

 

今回はその続きです。

放射減衰がない(γ=0)のときには,上記の式(2.126)は,

ρ22(t)=(1/2)[1-cos(|Ω|2t)}=sin2(|Ω|t)となり,

これば,純粋な原子の2準位間の振動=Rabi振動の表式

ρ22(t)=(|Ω|212)sin2(|Ω|t)(2.87);ただし,Ω1

={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2の,離調{ω0-ω)がゼロの場合

に一致します。

他方,γ≠0の場合は,(2.126)はtが大きくなると

(2.119)のρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}の

離調がゼロの定常極限値:ρ22=(|Ω|2/4)/(γ2+|Ω|2/2)

に近づきます。

この場合,因子:exp(-3γt/2)があるので,γの増加と

共に振動の減衰が急速になり,γ=|Ω|/3では極大が1つ

しか残りません。

※(注12-1):(2.126)式を,.

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

-{(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}exp(-3γt/2)

×{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}

(λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2)と書いて,tで微分すると,

dρ22/dt={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}exp(-3γt/2)

×[(3γ/2){cos(λt)+(3γ/2)(1/λ)sin(λt)}

+λsin(λt)-(3γ/2)cos(λt)}

={|Ω|2/(2λ)}{(λ2+9γ2/4)/(2γ2+|Ω|2)}sin(λt)

×exp(-3γt/2)={|Ω|2/(2λ)}sin(λt)exp(-3γt/2)

です。

それ故,dρ22/dt=0となるのはsin(λt)=0の

とき,つまり,t=nπ/λ(n=0,1,2,..),のときです。

このとき,対応して,cos(λt)=cos(nπ)=(-1)

なります。

したがって,t=0では確かにρ22(t)=0ですが,

t=nπ/λ(n=1.2…)では,nが奇数なら,

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}[1+exp{-3nπ/(2λ)}]

で,これらは極大値となり,他方,nが偶数なら,

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}[1-exp{-3nπ/(2λ)}]

で,「これらは極小値です。

そもそもγ>2|Ω{(|Ω|<γ/2)ならλ<0なのでλは虚数

になるので三角関数で表わされる振動解ではないです。

γ<2|Ω|で特にγ=|Ω|/3,ではλ=(11/12)1/2|Ω|,

(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}=9/22, exp{-3γt/2)=exp(-|Ω|t/2)

となり,t=π/λで最大で,それ以後減少しますが,極大値が1つだけ

残るという意味は不明です。??? 

nが奇数の極大値:ρ22={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1+exp{-3nπ/(2λ)}]が,n>1では,飽和値の1/2を

越えてしまうのかな? (注12-1終わり※)

 

さて,こういうわけで,占位数に顕著な振動が現われるため

には,|Ω|が3γより,ずっと大きくなければなりません。

こうした原子の振動的挙動は「光章動」と呼ばれています。

章動周波数は,一般に,Rabi周波数:|Ω|,離調:ω0-ω,

および,放射減衰;γに依存します。

(2.84)のΩ1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2と,(2.127)の

λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2は,それぞれ,γ=0とω0-ω=0の場合の

章動周波数に相当しますが,一般の場合のそれに対する簡単な

解析的表式はありません。

※(注12.2):つまり,γ=0の放射減衰が考慮されないときは,

「光の量子論9」の§2.7(Rabi振動)の項でha,初期条件

が,ρ22=ρ12=0の場合の光学Bloch方程式のρ22の解が,

次の(2.87);ρ22(t)=(|Ω|212)sin21t/2)

1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2)で与えられ,続く「光の量子論10」

では特に,離調;ω0-ωがゼロ,つまり,ω=ω0の特別な場合

には,Ω12=|Ω|2となるため,解はρ22=sin2(|Ω|t/2)(2.89),

と簡単になり,この場合,原子は基底状態1と励起状態2

との間を対称的に振動しますが,これをRabi振動と呼び,,|Ω|

をRabi周波数と呼ぶ,と書きました。(※ 離調;ω0-ωがゼロで

ないならΩ1がRabi周波数ですね。)

そして,本記事ではγ≠0で放射減衰があるとき,離調;ω0-ωが

ゼロなら,初期条件がρ22=ρ12=0 で,|Ω|>γの場合のρ22の解

は(2.126)のρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

(λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2))で与えられる:Rabi周波数はλになる,

ことを述べましたが離調がゼロでない一般の場合の解は,未だ不明

です。(注12-2終わり※)

しかし,実情としては|Ω|がγより,ずっと大きくないなら目立った

振動は見られません。それ故,光章動を観測するためには,レーザー

光源が用いられています。

そこで,次に,ビームが強い場合,原子励起度が光の励起ビームに

及ぼす効果を考えます。

原子が初め基底状態にある場合は,初めのうちはエネルギーが

原子に移るにつれてビームは減衰してゆきます。

 しかし,ビームが十分強いため,|Ω|が離調ω0-ωより大きく,

減衰γよりずっと大きい場合は,原子波動関数の励起状態の成分が

いつかは基底状態の成分を上回るので,原子のエネルギーの一部

は放射によって光ビームに戻り,ビーム強度が最初の値より大きく

なります。

したがって,原子の光章動に伴なって,それに対応した透過強度の

振動が現われます。実際の実験での透過光の時間依存性の詳しい理論

では,光学的振幅への他の寄与も考慮すべきですが,基本的には,この

現象は原子励起の示す振動的挙動の1つの結果と考えられます。

 

さて,Bloch方程式が容易に解ける第2の特別な場合は,(ⅱ)|Ω|が放射

減衰のγより,ずっと小さい場合,つまり,入射ビームが弱い場合です。

結論から言うと,C1については修正せず,C2については自然放出

の項を付加して修正した方程式:Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2

=i(dC2/dt)を,密度行列の式:dρij/dt=Ci(dCj/dt)

+Cj(dCi/dt)に代入した後,cos(ωt)を指数関数表示して,

ω0~ωの回転波近似を施した方程式:(2.114),(2.115)

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22.

dρ12/dt=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12(

の,|Ω|<<γの極限での|Ω|について最低次のρ22の解は,

前の例(ⅰ)と同じ初期条件のρ22=ρ12=0の下で,

に対して,ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)](2.128)

となります。

※(注12-2);上記を証明します。

[証明]:ρ~12=exp{i(ω0-ω)t}ρ12,

ρ~21=exp{-i(ω0-ω)t}ρ21,とおくと,

dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ~12+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22.,

dρ~12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ~12-i(ω0-ω)ρ~12,

となります。

dρ~21/dtは,これの複素共役で与えられ,dρ~21/dt

=(-iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ~21+i(ω0-ω)ρ~21.と

なります。

そこで,x=ρ22,y=(-iΩ/2)ρ~12,y=(iΩ/2)ρ~21,

と置くと,これらは,dx/dt=y+y-2γx,

dy/dt=(|Ω|2/4)(1-2x)+{-γ+i(ω0-ω)}y

dy/dt=(|Ω|2/4)(1-2x)+{-γ-i(ω0-ω)}y

と書けます。

整理すると,dx/dt=-2γx+y+y,

dy/dt=-(|Ω|2/2)x+{-γ+i(ω0-ω)}y+|Ω|2/4,

dy/dt=-(|Ω|2/2)x+{-γ-i(ω0-ω)}y+|Ω|2/4

です。そこで,これを3次元の列ベクトル:=[x,y,y]

に対する線形非同次の行列方程式の形で3×3係数行列を^

として,d/dt=^,と書きます。

ただし,定数項=[0,|Ω|2/4.|Ω|2/4]です。

これの初期条件がt=0で0の解は,既に何度か示した

ように,(t)={exp(^t)-1}^-1で与えられます。

逆行列:A^-1は,その要素が,

(det^)(^-1)11=γ2+i(ω0-ω)2

(det^)(^-1)12=-{-γ-i(ω0-ω)},

(det^)(^-1)13=-{-γ+i(ω0-ω)}

(det^)(^-1)21=-(|Ω|2/2),

(det^)(^-1)22=-2γ{-γ-i(ω0-ω)}+|Ω|2/2,

(det^)(^-1)23=-(|Ω|2/2),

(det^)(^-1)31=(|Ω|2/2){-γ-i(ω0-ω)},

(det^)(^-1)32=-|Ω|2/2,

(det^)(^-1)33=―2γ{-γ+i(ω0-ω)}+|Ω|2/2,

で与えられます。

ただし,det^=-2γ{γ2+i(ω0-ω)2}

-(|Ω|2/2){γ-i(ω0-ω)}-(|Ω|2/2){γ+i(ω0-ω)}

=-2γ{γ2+i(ω0-ω)2+|Ω|2/2}です。

また,^=α(0)を満たす固有値αを求める

方程式は,det(^-α^)=0ですが,これは,

(-2γ-α){(-γ-α)2+(ω0-ω)2}

-(|Ω|2/2){(-γ-α)-i(ω0-ω)}

-(|Ω|2/2){(-γ-α)+i(ω0-ω)}=0となります。

つまり,(-2γ-α){(-γ-α)2+(ω0-ω)2}

-|Ω|2{(-γ-α)=0です。

さらに,書き下すと,α3+{γ2+(ω0-ω)2-|Ω|2

+2γ{γ2+(ω0-ω)2+(|Ω|2/2)}=0 です。

しかし,今は|Ω|の最低次近似を求めればいいので,

因子:|Ω|2を含む講を無視する近似では,

固有値方程式は(α+2γ){(α+γ)2+(ω0-ω)2}=0

となり,異なる3つの固有値として,α0=-2γ,

α±=-γ±i((ω0-ω)(複号同順)を得ます。

それ故,特に,α+α=-2γ=α0,および,

αα=γ2+(ω0-ω)2なる関係が成立します。

そして,この近似で,α0に属する固有ベクトル

を,それぞれ,Y0,Yと書けば,定数倍の任意性を除き,

0=[1,0,0],Y=[-α-1,1,0],=[-α-1,0,1]

と書けることがわかります。

これらを3列に並べた行列を^=(0,,)と書いて

定義し,その逆行列^-1^-1=(0,,)と表わすと,

det(^)=1なので,Z0=[1,0,0],Z=[α-1,1,0],

=[α-10,1]となります。

こうすると,対角要素が固有値:α0の対角行列

Λ^は,Λ^=P^-1^^で与えられます。

そこで,exp(Λ^t)=P^-1exp(A^t)^が成立します。

それ故,前に与えた初期値が0のd/dt=A^X

の解:(t)={exp(^t)-1}^-1において,|Ω|の最低

次近似の解としての(t)は,左からP^-1を掛けて,

P^-1(t)={exp(Λ^t)-1}P^-1^-1bを満たします。

これから,結局.X(t)=P^{exp(Λ^t)-1}P^-1^-1

が得られます。

ところで,A^の逆行列^-1の要素の近似を書き下すと,

1行目は変更無しで,(det^)(^-1)11=αα,

(det^)(^-1)12=-α,(det^)(^-1)13=-αです。

また,2行目の近似は,(^-1)21=(^-1)23=0,および,

(det^)(^-1)22=-2γ{-γ-i(ω0-ω)}=α0αです。

3行目は,(^-1)31=(^-1)32=0,(det^)(^-1)33

=-2γ{-γ+i(ω0-ω)} =α0αとなります。

さらに,det^=-2γ{γ2+i(ω0-ω)2}=α0αα

と書けます。

それ故,=[0,|Ω|2/4.|Ω|2/4]=(|Ω|2/4)[0,1,1]

に対して^-1={|Ω|2/(4αα)}[-(α+α)/α0]

={|Ω|2/(4αα)}[-1,α]です。

( ※については,|Ω|2を無視するとゼロとなって無意味なので,

|Ω|2を因子として残します。)

さらに,左から^-1=(0,,),Z0=[1,0,0],

=[α-1,1,0],=[α-1,0,1]を掛けると.

P^-1^-1={|Ω|2/(4αα)}=[1,α]

ですから,P^-1(t)={exp(Λ^t)-1}^-1^-1

{|Ω|2/(4αα)}

[exp(α0t)-1{exp(αt)―1},α{exp(αt)-1}]T 

を得ます。

最後に,両辺の左からP^=(Y0,Y,),

0=[1,0,0],Y=[-α-1,1,0],Y[-α-11,0]

を掛けて,近似解:X(t)=[(t),y(t),y(t)]の成分

x(t)を求めます。

第1成分は,x(t)={|Ω|2/(4αα)}

×[exp(α0t)-1-exp(αt)+1-exp(αt)+1}

={|Ω|2/(4αα)}

[1+exp(α0t)-exp(αt)-exp(αt)}]

={(|Ω|2/(4αα)}

×[1-exp(-2γt)-exp{i(ω0-ω)t}exp(-γt)

-exp{ーi(ω0-ω)t}exp(-γt)}]となりますから,

結局,ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]

が得られます。[証明終わり] (注12-2終わり※)

(※ うーん。1つの証明が長過ぎるね。こりゃ疲れるわ。)

 

この(2.128)の,ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]の結果

は,放射減衰:γがゼロの極限で,ω~ω0の場合,ω0t>>1の

遷移時間tに対する「光の量子論7」のρ22(t)=|C2(t)|2

=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2.(2.42)に一致します。

|Ω|t<<1におけるρ22のtに対する曲線は,いずれも

時間tの2次の時間依存性を示します。この性質は,光学Bloch

方程式の解を時間について展開すれば証明できます。

すなわち,(2.114),(2.115)の解の|Ω|の最低次の項は,

|Ω|t<<1,および,t=0での初期条件:ρ22=ρ12=0に対し,

離調:ω0-ω,や減衰γに無関係に,ρ22=(1/4)|Ω|22(2.129)

となります。

※(注12-3):上記を証明します。

[証明];t<<1,|Ω|<<1.γt<<1で,(2.128)は,

ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]

~[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+(1-2γt+2γ22)

-2(1-(ω0-ω)22/2)(1-γt+γ22/2)

=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]{(ω0-ω)22+γ22}

=(1/4)|Ω|22を得ます。[証明終わり] (注12-3終わり※)

この,初めのうちは,励起度が時間tの2乗に比例して増加

するという挙動は,「光の量子論7」で述べたような,

tΔω>>1を満たす広帯域の入射光に対し,(2.49)で

与えたρ22(t)=|C2(t)|2=πe2|X12|2W(ω)t/(ε0.c2)

の,励起度が時間tに比例する,という挙動とは対照的です。

しかし,放射広がりがある場合は,単色の式(2.128)を吸収線

のωの広がりにわたって積分することで,広帯域の場合の結果を

復元することができます。つまり,簡単な複素平面上の外周積分

により,∫ρ22dω={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}(2.130)

が得られ,γt<<1では,{1-exp(-2γt)} ~2γtより左辺

はtに比例します。

※(注12-4):上記(2.130)を証明します。

[証明] ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]

∫ρ22(t)dω=(|Ω|2/4)[∫dω/{(ω0-ω)2+γ2}]

{1+exp(-2γt)}-(|Ω|2/4)[∫dω[2cos{(ω0-ω)t}

/{(ω0-ω)2+γ2)}]×exp(-γt) です。

ところが,まず,∫-∞dω/{(ω0-ω)2+γ2}

=(1/γ)[Tan-1{(ω0-ω)/γ]] -∞=π/γです。

一方,∫dω[2cos{(ω0-ω)t}/{(ω0-ω)2+γ2)}

=∫-∞dω([exp{i(ω0-ω)t}+exp{-i(ω0-ω)t}]

/[{(ω0-ω)-iγ}{(ω0-ω)+iγ}])です。

ここで,次の公式が成立することを利用します。すなわち,

-∞dω[exp(±iωt)/{(ω-iγ)(ω+iγ)}]

=(π/γ)exp(-γt)です。

何故なら,複素ω平面でωを半径がRの大円:

つまり,ω=Rexp(iθ)=R(dosθ+isinθ)とすると,

dω=iRexp(iθ)dθでありR~∞では,

exp(±iωt) /{(ω-iγ)(ω+iγ)}

=exp(±itcosθ)exp{±(-tRsinθ)

/[{Rexp(iθ)-iγ}{Rexp(iθ)-iγ]

~exp{±(-Rsinθ)/R2ですから,分子がexp(iωt)

なら,θが0→πの反時計回りの上半円周,分子がexp(-iωt)

なら,θが0→(-π)の時計回りの下半円周を取れば,tが正

では,共に,半円周上の寄与はゼロとなり,積分の極は上半円周

ではω=iγ,下半円周ではω=-iγ,なので留数は,

±2πi/(±2iγ)exp(-γt)ですから,

-∞dω[exp(±iωt) /{(ω-iγ)(ω+iγ)}]

=(π/γ)exp(-γt)を得ます。

以上から,∫dω[2cos{(ω0-ω)t}/{(ω0-ω)2+γ2)}

=∫-∞dω([exp{i(ω0-ω)t}+exp{-i(ω0-ω)t}]

/[{(ω0-ω)-iγ}{(ω0-ω)+iγ}])

=(2π/γ)exp(-γt)です。

したがって,∫ρ22(t)dω=(|Ω|2/4)

[(π/γ){1+exp(-2γt)}

-(2π/γ)exp(-γt)exp(-γt)]

={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}が得られました。

[証明終わり] (注12-4終わり※)

この(2.130)の表式:

∫ρ22dω={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}には,

t→∞の極限の定常状態で∫ρ22dω={π|Ω|2/(4γ)}

になるという(2.124)の結果が,既に含まれています。

他方,(2.130)は,(2.125)の,∫BWdω=|Ω|2/2,

および,A=2γをも援用すると,π∫(BW/A)dω

=∫ρ22dω={π(∫BWdω)/A}{1-exp(-At)}

となり,第1章で,吸収と放出のアインシュタインの理論

で導かれ広帯域の結果(1.70):N2={NBW/(A+2BW)}

[1-exp{-(A+2BW)t}]の弱ビーム:BW<<Aの極限

のケースの表式と正確に一致することがわかります。

ただし,本節で導いた明快な結果はゼロ離調と弱ビームの

極限における励起度:ρ22=N2/Nの時間依存性を表わしている

に過ぎません。

より一般的ケースの解を求めるには光学Bloch方程式を数値

積分するのが,最も便利で有効な道です。

 

今回は,本節がここで終わるので,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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2019年11月13日 (水)

光の量子論11

※「光の量子論10」からの続きです。

(※ 余談):最近IEでは,コピペが,うまくできなく

なったので,Firefoxで開いて試してみると,できた

ので,以後,また,図なども挿入できそうです。

しかし,Win7のサポートが来年早々終わるそうです。

昔,Win10に無料のときにノートをバージョンアップ?した

けど,嫌いになってWin7に戻したのにね。

そのうち新しいソフトなどに対応できなくなったりして

くるのも困るので,イヤイヤ,安価のWin10をバンドルした

NECか富士通当たりの中古デスクトップを購入予定。。

OSやソフトのバージョンアップで利益を得ようとする

MSと縁切りたいけど,無理です。まあ,棺桶両足も近いし。

デスクトップは,確か,2016年だったか?に同じ理由で,

まだ使えるXPマシンから中古のWin7マシンに変えたけど,

3年持ったから,ま,いっか?今の時代,PCを持ち運ばずとも

サーバーを使えばいいし,私ほぼ寝たきりなのでので,画質

が悪く古い液晶ノートも持ってはいるけど.入院用です。

(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.8

の周波数ωの自発放出に伴なう不可避の放射広がりの項

の説明で終わりました。

 

今回は,それ以外の周波数の広がりからです。

 

  • 2.9飽和広がり

前項で得た感受率の表式:

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}.(2.108)は,

入射光ビームの電場に線形応答する原子気体に対して,

双極子モーメント:X12,または,D12について2次まで

正しい結果です。

より高次の項を含む結果については,光学Bloch方程式

を解けば得られます。この高次解を得るためには,最初

から,密度行列に対して,ω~ω0と考えて,

exp{±i(ω0-ω)t}の項だけを残してexp{±i(ω0+ω)t}

の項を無視する回転波近似の方程式,つまり「光の量子論9」

で論じた,dρ22/dt=-dρ11/dt

=(-i/2)Ωexp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}ρ21.(2.78)

および,dρ12/dt=dρ21/dt

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)(2.79)

についての解を求めればいい,ことになります。

しかし,この段階では自発放出の効果が入ってないので,

これを考慮に入れて,この方程式を修正・一般化する必要が

あります。

前に戻り,密度行列の定義:ρij=Cij;i,j=1,2)から,

dρij/dt=Ci(dCj/dt)+Cj(dCi/dt)ですが,

これに,C1については(2.31)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)を採用し,

2については前回,(2.32)に自然放出の項を付加

して修正した(2.99)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)

を代入して,近似抜きの方程式系を得た後に,

cos(ωt)=(1/2){exp(-iωt)+exp(iωt)}として,

ω~ω0と仮定し,exp{±i(ω0-ω)t}の項だけ残し,

exp{±i(ω0+ω)t}の項を無視する近似を適用すれば,

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22.(2.114),

および,dρ12/dt

=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12(2.115)

を得ます。

本当は(2.31)のC1の時間発展方程式の方にも,自然放出

による修正を加えるべきですから,単にγを導入したこれら

の手法が完全に厳密でないのは明らかです。

しかし,修正光学Bloch方程式:(2.114),(2.115)は,実は,

より厳密な計算から得られるものと同一です。

 

 さて,減衰項が存在するので解は完全な振動型ではなく,

十分長い時間が経過すれば定常状態になります。

定常状態の解を求めるには,まず,ρ1221

ρ~12=exp{i(ω0-ω)t}ρ12.(2.116a),

ρ~21=exp{-i(ω0-ω)t}ρ21(2.116b)

と置き換えて,(2.114),(2.115)から振動型因子を消去

します。すると,dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ~12

+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22.(2.117),および,dρ~12/dt

=(iΩ/2)(ρ11-ρ22)-γρ~12-i(ω0-ω)ρ~12.(2.118),

となります。

dρ~21/dtは(2.118)の複素共役で与えられて,

dρ~21/dt=(-iΩ/2)(ρ11-ρ22)-γρ~21

+i(ω0-ω)ρ~21.となります。

これら.3つの方程式の左辺の変化速度を全てゼロと置き,

ρ11+ρ22=1を用いると,定常状態の解が求まります。

ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}(2.119)

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

(2.120)となります、

※(注11-1):上式を証明します。

[証明](2.117)でdρ22/dt=0より,

ρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~21}(実数)を得ます。

一方,(2.118)でdρ12/dt=0,ρ11=1-ρ22より,

(-Ω/2)(11-2ρ22)=(ω0-ω-iγ)ρ~21なので

(Ω/2)(1-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ)ρ~12,または,

(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ)Ωρ~12

を得ます。ここで,Ωρ~12=a+ib(a,bは実数)

と置くと,(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-a(ω0-ω)+bγ,

かつ,0=-b(ω0-ω)―aγです。

b­=-aγ/(ω0-ω)でbを消去して

(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-a(ω0-ω)-aγ2/(ω0-ω)

=-a{(ω0-ω)2+γ2}/(ω0-ω)より,

a=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[(ω0-ω)/{(ω0-ω)2+γ2}],

b=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[-γ/{(ω0-ω)2+γ2}],

それ故,Ωρ~12=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)

[(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}]となります。

故に, Ωρ~12-Ωρ~12=2ib

=i|Ω|2(1-2ρ22)[γ/{(ω0-ω)2+γ2}],

ですが,これを先のρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~12}

に代入すれば,4iγρ22=iγ|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2}

-2iγρ22|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2},なので,

4iγρ22{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}/{(ω0-ω)2+γ2}

=iγ|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2}となります。

したがって,ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

が得られました。

これから,1-2ρ22

={(ω0-ω)2+γ2}/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

ですから,Ωρ~12=(-|Ω|2/2)(1-2ρ22)

×[(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}]

=(-|Ω|2/2)(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

です。

故に,ρ~12=(-Ω/2)(ω0-ω-iγ)

/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}です。それ故.

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

も得られました。[証明終わり](注11-1終わり※)

 

次に,これら定常状態のときの式が感受率に及ぼす

効果を考えます。

前記事の放射広がりの項で与えた,1原子の双極子

モーメントdの表式(2.96)

d(t)=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

より,d(t)=-e{ρ1212exp(-iω0t)+ρ1221exp(iω0t)}

で,X12=∫ψiXψ2dV,eo(2.121)と書けます。

これに対し,気体の分極は(t)=N(t)/V

=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(ω)exp(iωt)}ですから,

(1/2)ε00χ(ω)=-eρ1212exp{-i(ω0-ω)t}(N/V)です。

 

故に,χ(ω)={-2eρ12NX12/(ε00V)}exp{-i(ω0-ω)t}

を得ます。ただし,Ω=eE012/hcであり,|X12{2を配向角平均の

<|X12{2>=(1/3) |D12{2で置き換えます。

すると,Ω=eE012/hcより,Ω*12=eE0|X12|2/hc

~eE0|D12|2/(3hc)となります。

そして,ρ12=-exp{i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}より,

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}](2.122)

を得ます。

|Ω|2=e202|X12|2で,これが分母に含まれていますから

この表式は,もはや電場の1次の感受率ではありません。

そして,この(2.122)の感受率χ(ω)は,先に放射広がの項

で得た(2.108)の感受率;χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}の回転波近似:

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}と,分母の/|Ω|22

を除けば同じです。したがって,その虚部もχ”(ω)

={Ne2|D12|2γ/(ε0cV)}/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

であり,先のχ”(ω)={Ne2|D12|2γ/(ε0cV)}

/{(ω0-ω)2+γ2}と分母の/|Ω|22を除いて同じです。

(2.122)の中には|Ω|22の項が入っており|D12|2∝|Ω|

なので,第1章で考察したのと同様,飽和効果が生じます。

(※入射光ビームが大きくなると,|Ω|2→大ですが,励起原子

の数はN2→(N/2)と,飽和状態に近づき,遷移が減衰します。)

これが入射光の吸収速度,つまり減衰速度を減少させる

のは明らかです。

吸収係数はK(ω)={ω/(cη)}χ” (ω)です。

これは電場の1次の感受率では,ω~ω0,η~1で

K(ω)~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}

×[(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}](2.111)で与えられましたが,

これも,K(ω)~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}

×[(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ+|Ω|2/2}]になります。

そこでK(ω)が最大のω=ω0のときの半分の値:

K(ω0)/2をとるωは,前はω=ω0±γでしたが,これも,,

ω=ω0±(γ2++|Ω|2/2)1/2に変わります。

すなわち,線幅は,2γから2(γ2++|Ω|2/2)1/2.(2.123)に

増加します。この付加的寄与は「飽和による広がり」と

呼ばれます。

 

  • 2.10 放射減衰を伴なうRabi振動

前節で導いた感受率は定常状態の非対角密度行列要素に

支配されることがわかりました。他方,対角密度行列要素は

2つのエネルギー準位の原子占有数を与えます。

単色光の照射によって生じた定常状態の励起状態占有数

に対する減衰を伴なう光学Bloch方程式(2.119)の解:

|C2|2=ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}の結果

は,前の記事「光の量子論3」で,広帯域の光を照射したとき

の,(A+2BW)t>>1の長時間が過ぎると励起状態占有数

が定常状態の値:N2=NBW/(A+2BW)=|C2|2Nに近づく,

という(1.74)の結果と比較することができます。

(※ただし,A=A21,B=B21=B12です。)

これら,2つの表式(2.119),(1.74)は細かい点では違いが

ありますが,共通のより重要な特徴を備えています。

(2.119)は,|Ω|が,自発減衰γ,or離調:ω0-ωより,ずっと

大きくなると,|C2|2=ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

が極限値:1/2に近づくことを示していますが,これは,BW<<1

なら,(1.74)の|C2|2=BW/(A+2BW)が極限値:1/2に飽和して

ゆく様子と,一致しています。

そして,(2.119)をωで積分すると,|Ω|<<γのときには,

∫ρ22dω=π|Ω|2/(4γ).(2.124)を得ます。

※(注11-2):何故なら,∫-∞(x2+a2)-1dx

=[aTan-1(x/a)] -∞=πa/2-(-πa/2)=πaですから

|Ω|<<γなら,∫-∞({(ω0-ω)2++γ2+|Ω|2/2}-1dω

=π(γ2+|Ω|2/2)1/2~πγ です。(注11-2終わり※)

これは,つまり,入射光ビームが弱い極限では,広帯域の励起

原子の数は,光のエネルギー密度に比例することを意味します。

Ωの定義は,Ω=eE012/hcであり,原子内の電子の配向平均

では,<|X12|2>=(1/3)|D12|2です。

また,ビームの平均エネルギー密度は,サイクル平均で,

(1/2)ε02=∫W(ω)dωです。そこで,2.55)の,B12

=πe2|D12|2/(3ε0c2)=π|Ω|2/(ε002)の表式からわかる

ように,∫BWdω=π|Ω|2/2.(2.125)が成立します。

したがって,2γ=A21=1/τ(2.102)を援用すれば,

BW<<Aの弱ビーム極限で∫(BW/A+2BW)dω

~π|Ω|2/(4γ)であり,(1.74)の(A+2BW)=|C2|2の積分

結果が,広帯域の(2.119)の吸収線のωにわたる積分で得る

(2.124)の∫ρ22dω=π|Ω|2/(4γ)のの結果と,正確に一致

します。

定常状態における(2.119)の原子の励起状態占有数は,その

初期値に依存しません。

 

しかし,長時間極限の定常状態ではなく,照射時間が短かいとき

の原子占位数は,本記事最初の光学Bloch方程式(2.114),(2.115)

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22,および,

dρ12/dt

=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12

を初期条件を入れて,もっと一般的に解く必要があります。

ですが,残念なことに,この一般解はあまり明快な形に書けない

ことがわかっています。

そこで解の例として2つの特別な場合を考えます。

まず,(ⅰ)離調:(ω0-ω)がゼロ.を仮定した場合,

次に,(ⅱ)光ビームが弱く,|Ω|<<γの場合の2つ

を考察します。

(ⅰ)光学Bloch方程式(2.114),(2.115)の解はω=ω0でt=0

の初期条件がρ22=0,ρ12=0のときには,ρ22について,

ρ22 (t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

(2.126)となります。

ただし,λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2.(2.127)です。

※(注11-3):上記を証明します。

[証明] ω=ω0では,(2.114)は,

dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ12+(iΩ/2)ρ21-2γρ22,

(2.115)は,dρ12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ12となり,

書けます。そして,ρ21=ρ1222=ρ22です。

この方程式系は,線形変換で,

dρ22/dt=(-i/2)(Ωρ12-Ωρ21*)-2γρ22,

および,Ω(dρ12/dt)-Ω(dρ12/dt)

=(i|Ω|2)(1-2ρ22)-γ(Ωρ12-Ωρ12*)に変換されます。

そこで,f­=ρ22,g=(-i/2)(Ωρ12-Ωρ21*)と置くと,

f,gは共に実数値関数で,df/dt=-2γf+g,かつ,

dg/dt=-|Ω|2f-γg+|Ω|2/2となります。

これは,=[f,g],=[0,|Ω|2/2]なる縦ベクトルに

対して2×2係数行列を^としてd/dt=^です。

ところが,前回の(注10-1)では,線形非同次方程式:

df/dt=af+g(t)の解は,

f(t)=exp(at)[∫0{exp(-at)g(t)}dt]

+f(0)で与えられる,ことを示しました。

そこで,同様に,d/dt=^の解も,記号的に,

(t)=exp(^t)[∫0{exp(-^t)}dt]+(0)

=exp(^t)[-exp(-^t)^-1]0(0)

で与えられるはずです。

ただし,初期条件がρ22(0)=ρ12(0)=0の場合は,(0)=0

です。exp(^t),exp(-^t)は,それぞれ次式で定義されます。

すなわち,exp(^t)=Σn=0{(^t)/n!}であり,かつ,

exp(-^t)=Σn=0{(-^t)/n!} です。

故に,(t)=exp(^t){^-1-exp(-^t)^-1}

が,初期条件を満たす解です。

必要かどうか?は不明ですが,P^の逆行列:^-1の要素

も求めておきます。det(^)=|Ω|2+2γ2であって,

det(^)(^-1)11^22=-γ,det(^)(^-1)12=-^12

=-1,det(^)(^-1)21=-^21=|Ω|2, det(^)(^-1)22

^11=-2γです。

 さて,唐突ですが,=α(≠0)という,行列P^

の固有値αと,その固有ベクトルを求める固有値問題

を考えます。

線形代数学から固有値αは^を単位行列として,

det(^-α^)=0という方程式の解で得られます。

この方程式は,(-2γ-α)(-γ-α)+|Ω|2=0,

つまり,αの2次代数方程式:α2+3γα+2γ2+|Ω|2

=0 を意味します。そこで,解の公式から,解αは

α=-3γ/2±i(|Ω|2-γ2/4)1/2です。ここで,

ビームの電場0が十分大きくて,|Ω|2≧(γ2/4)であると

仮定しました。それ故,実数λをλ=(|Ω|2-γ2/4)1/2

置くと,2つの固有値は,α=α±=-3γ/2±iλ(複号同順)

と書けます。故に.γ+α±=-γ/2±iλです。

そして,α±に属する固有ベクトルを,±(複号同順)とします。

つまり,^x=α,^x=α (x±≠0)です。

これら固有ベクトルの成分:x1,x2は,係数が逆行列を持たぬ

連立方程式:-2γx1+x2=α±1,-|Ω|21-γx2=α±2

から,(γ/2±iλ)x1=x2, or (-γ/2±iλ)x2=-|Ω|21

となるので,例えば.x2=1と置くと,x1=-(-γ/2±iλ)/|Ω|2

を得ます。したがって,定数倍の不定性を除いて,

=[(γ/2-iλ)/|Ω|2,1],==[(γ/2+iλ)/|Ω|2,1]

書けます。

ここで,行列:^を^=(+,)と,定義すると,

^^=^()=(α)が成立します,

右辺は,^=(+,)に,対角要素がαで非対角要素

がゼロの対角行列を掛けたものに等しいです。

そこで,この対角行列を,Λ^とすれば,これて^^=^Λ^

を意味します。そして.^=(+,)には逆行列:^-1が存在

するため, ^^=^Λ^から,Λ^=^-1^^を得ます。

これから,Λ^^-1^^となりますから,結局,

exp(Λ^t)=^-1exp(^t)^を得ます。

逆に,exp(^t)=^exp(Λ^t)^-1です。

同様に,exp(-Λ^t)=^-1exp(-^t)^,かつ,

exp(-P^t) =Q^exp(-Λ^t)Q^-1です。

先に,=[f,g],=[0,|Ω|2/2]に対する

/dt=^の,記号的なものとして得た解:

(t)=exp(^t){^-1-exp(-^t)^-1}は,

^-1(t)=exp(Λ^t)

×{Λ^-1Q^-1-exp(-Λ^t)Λ^-1Q^-1}となります。

exp(±Λ^t)は対角成分が,exp(±αt),exp(±αt)

の対角行列となりますから,具体的解を得るには,後は^-1

求めればいい,だけです。

Q^=(+,)の行列要素は列ベクトルの成分で,

=[(γ/2-iλ)/|Ω|2,1][-(γ+α)/|Ω|2,1],

=[(γ/2+iλ)/|Ω|2,1]=[-(γ+α)/|Ω|2,1]

と表わされます。

^の逆行列^-1の行列要素は,det^(^-1)11^22=1,

det^(^-1)12=-^12=-(γ/2+iλ)/|Ω|2

=(γ+α)/|Ω|2,det^(^-1)21=-^21=-1,

det^(^-1)22^11=(γ/2-iλ)/|Ω|2=-(γ+α)/|Ω|2,

および,det(^)=-2iλ/|Ω|2,or{det(^)}-1=i|Ω|2/(2λ)

で表現されます。

すなわち,逆行列^-1も列ベクトル1,2によって,

^-1=(1.2),ただし,1={i|Ω|2/(2λ)}[1,-1],

2={i/(2λ)}[-(γ/2+iλ),(γ/2-iλ)] 

{i/(2λ)}[(γ+α),-(γ+α)] と表わせます

よって,=[0,|Ω|2/2]に対して,^-1

=[(-i(γ/2+iλ)|Ω|2/(4λ),i(γ/2-iλ)|Ω|2/(4λ)] 

={i|Ω|2/(4λ)}[(γ+α),-(γ+α)]

それ故,Λ^-1Q^-1

{i|Ω|2/(4λ)}[(γ+α)/α.-(γ+α)/α]です。

そこで,先に書いた対角化された方程式の解::

^-1(t)=exp(Λ^t)

×{Λ^-1-1-exp(-Λ^t)Λ^-1-1}の左辺の

列ベクトルを,^-1(t)=[f~,g~]と成分表示すれば,,

f~={i|Ω|2/(4λ)}{(γ+α)/α}{exp(αt)―1}

および,

g~=-{i|Ω|2/(4λ )}{(γ+α)/α}{exp(αt)-1}

となります。

それ故,-(γ+α)f~/|Ω|2-(γ+α)g~/|Ω|2

=-i|Ω|2/(4λα)}{exp(αt)―1},

+i|Ω|2/(4λα)}{exp(αt)-1},

=|Ω|2/|2(2γ2+|Ω|2)}-{i|Ω|2/(4λαα)}

×{αexp(αt)-αexp(αt)}

を得ます。

(※ (γ+α)(γ+α)=γ2/4+λ2=|Ω|2, αα

=(9/4)γ2+λ2=2γ2+|Ω|2です。)

  ところが,y(t)=[f,g]Q^[f~,g~]

ですが,^=(+,)で,

=[-(γ+α)/|Ω|2,1],

=[-(γ+α)/|Ω|2,1]T ですから,

f=―(γ+α)f~/|Ω|2-(γ+α)g~/|Ω|2

=(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)-i{|Ω|2/(4λ)}/(2γ2+|Ω|2)}

×{αexp(αt)-αexp(αt)}をえます。

α±=-3γ/2±iλより,

exp(αt)=exp(-3γt/2)exp(iλt)

exp(αt)=exp(-3γt/2)exp(-iλt)なので

(-i){αexp(αt)-αexp(αt)}

=[(3iγ/2){exp(iλt)-exp(-iλt)}

-λ{exp(iλt)+exp(-iλt)}]

×exp(-3γt/2)

={-2λcos(λt)-3γsin(λt)}exp(-3γt/2)

したがって,f=ρ22=(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)

[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

が証明されました。[証明終わり] (注11-3終わり※)

 

今回は,最後で過去ノートの13年前の計算にケアレスミス

があるのを発見しました。証明なので,何とか結論までたどり

ついてはいましたが,チェックの再計算に老齢のせいか3昼夜

もかかりました。例によって夢中になると寝食を忘れる偏執質

なので何度か低血糖でフラフラになりました。

インスリンを打たなくても長い考え事で,よく低血糖になり,糖分

ある場所まで這っていくほど動けなくなります。眠くなるけど

寝てしまうとアウトですね。 高血糖は長期的,慢性型なので

急性で脳死植物状態になる危険性はないのですがね。

でも,結局,正解を得たので,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

 

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2019年11月 6日 (水)

光の量子論10

※「光の量子論9」からの続きです。

※(余談):今回,この草稿は11/5(火)の早朝にはアップ

できるところまで完成したのですが,直後に月1回の大学病院

での循環器内科と形成外科の外来診察に出かけるためPending

にしました。

最近は食欲がなく,病院では毎度のように待ってるうち低血糖

や貧血などを起こして苦しんだりしてますが,幸い病院なので

誰かが助けてくれます。一応16時前には帰宅し一休みしている

うちに眠ってしまい,起きてTVを見るとプレミア12という野球

放送があり,それを見終えてからアップしました。

今だに,夜零時を過ぎると,なぜか元気になり行動のモチベーション

が上がって,眠くなくなるという不健康な性分は変わりません。

関係ないけど,絶世の美女だったらしい白拍子の静御前の歌

「しづや,しづ,しづのおだまき,繰り返し昔を今になすよしもがな

(成吉思汗?)」(高木彬光 著「ジンギスカンの秘密」から)

など昔の女子の歌が最近また気になってます。

額田王(ぬかだのおおきみ)の,「あかねさす紫のゆき,しめのゆき

野守りは見ずや,君が袖振る」とか小野小町の「花の色は移りに

けりな,いたづらに.わが身世に経る詠め(降る長雨)せし間に」とか

も気になります。

 誰とも縁がなくとも生来の女好き,スケベは,死ぬまで不治の病

です。

与謝野晶子の「柔肌の熱き血潮に触れ揉も見で寂しからずや

道を説く君」などは,まだまだ新しい方ですね。

高校生時代は,なぜか国語だけが田舎の成績でトップクラス

だったので,万葉集から新古今和歌集など和歌は,いろいろ

記憶してます。(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.7

のRabi振動の項で,最後に(注9.4)で密度行列ρ^に

対する光学Bloch方程式の特殊な初期条件の解を求めた

ところで中断でした。

今回は,まず,これまでの道筋を少し要約します。

 

原子密度行列:ρ^=(ρij)の4つの行列要素

ρijは,ρ11=|C1|2=N1/N,ρ22=|C2|2=N2/N,

ρ12=C1221=C21で定義されます。

ここで,C1,C2は,時間に依存する波動関数を2準位原子

の状態:1,2の固有波動関数の重ね合わせとして,次のように

表わしたときの係数です。すなわち,

Ψ(,t)=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)です。

密度行列が従う方程式は,Ci(t)が従う方程式から,

dρij/dt=Ci(dCj/dt)+Cj(dCi/dt)

によって導かれます。

故に,dρ22/dt=-dρ11/dt

=-icos(ωt){Ωexp(iω0t)ρ12

+iΩexp(-iω0t)ρ21},および.

dρ12/dt=-dρ21/dt

=iΩcos(ωt)exp(-iω0t)(ρ11-ρ22)です。

 

これに,cos(ωt)=(1/2){exp(iωt)+exp(-iωt)}

を代入し,ω~ω0において,exp{±i(ω0-ω)t}の項だけ

残し,exp{±i(ω0+ω)t}の項を無視する回転波近似を

すると,dρ22/dt=-dρ11/dt

=(-i/2)Ωexp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}ρ21,および,

dρ12/dt=dρ21/dt

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)を得ます。

これを「光学Bloch方程式」と呼びます。

それは振動磁場内のスピンの運動を記述するために

Blochが導出したものと同類のものであるからです。

ここで考察中の2準位原子の量子力学は,形の上では

同じ自由度が2のスピン:1/2の系のそれに全く等しい,

からです。

そして,前記事では(注9-4)で回転波近似をした密度行列

に対する光学Bloch方程式の解が.初期条件がρ22=0,ρ12=0

(C2=0)の場合に,ρ22=(|Ω|212)sin21t/2).(2.87),

および,ρ12=exp{-i(ω0-ω)t}

×{-(ω0-ω)sin(Ω1t/2)+iΩ1cos(Ω1t/2)}.(2.88)

(ただし,Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2で,Ωは複素数ですが

Ω1は実数)で与えられることを示したところで終わりました。

 さて,この解で入射光の周波数ωと原子遷移の周波数ω0

の離調;ω0-ωがゼロ,つまり,ω=ω0の特別な場合には,,

Ω12=|Ω|2となるため,解はρ22=sin2(|Ω|t/2).(2.89),

および,ρ12=(iΩ/|Ω{2)sin(|Ω|t/2)cos(|Ω|t/2)}

(2.90)と簡単になります。

そこで,この場合,原子は基底状態1と励起状態2との間を

対称的に振動します。これはRabi振動として知られ,|Ω|

はRabi周波数と呼ばれます。

これは,Bloch方程式の場合と同じく振動磁場内のスピン

という類似の問題に対して,Rabiにより初めて得られたもの

です。

さて,光学Bloch方程式は回転波近似が施されている近似

方程式であるため,その解である(2.87),(2.88)は(ω0-ω)

が(ω0+ω)に比べて,はるかに小さいときしか,密度行列の

解の正しい近似とはならず,適切な解として成立しないこと

を強調すべきです。

それ故,(2.87)のρ22=(|Ω|212)sin21t/2)でω=0

12=ω02+|Ω|2と置いても,前々回の記事「光の量子論7」

の(注7.2)でのゼロ周波数静電場ω=0の厳密解|C2|2

={4|Ω|2/(ω02+4|Ω|2)}sin2{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}(2.34)

は得られません。

(2.87),(2.88)は,単一の周波数ωを持つ厳密に単色の入射光

ビームに対する解ですが,実際にはρ22とρ12の正弦関数的挙動

が経験的に観測されるのは,周波数ωが遷移周波数ω0の周りに

あって,その遷移周波数の分布の幅に比べ,周波数ωの広がりが

小さい入射光を用いた場合だけです。

しかし,原子放射過程に広がりを与える過程はまた,光学

Bloch方程式に修正をもたらし,その結果,ρ時間依存性が

変わります。こうした問題については,この第2章の後の方で

論じる予定で,Rabi振動の発生に関する立ち入った考察も,

  • 2.10までPendingです。

 

一方,広帯域の入射ビームという逆の極端な場合は,本章の

初めと第1章で扱ったアインシュタイン理論の領域です。

アインシュタインのB係数の導出に用いた(2.42)の表式:

|C(t)|2­=|Ω|2sin2{(/2ω0-ω)t/2}/(ω0-ω)2は,(2.87)

のρ22(t)=(|Ω|212)sin21t/2)で,(2.84)で定義した

Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2から|Ω|2を省き,Ω12=(ω0-ω)2

とすれば得られる,解(2.87)の特別な場合に相当しています。

|Ω|2が十分小さければ,

|C(t)|2­=|Ω|2sin2{(/2ω0-ω)t/2}/(ω0-ω)2から

(2.55)のB12=πe2|D12|2/(3ε0c2)なる結果を導出するに

至った以前の手順が,そのまま,成立します。

つまり,原子の核を原点とする束縛電子jの位置ベクトル

jとすると,=Σjjによる全電気双極子モーメントが

=-e(e>0)で与えられるため,振動電場E=0cos(ωt)

存在する場合の摂動の双極子近似の相互作用Hamiltonianは,

=-PE=eDE=eDE0cos(ωt)で与えられます。

定義によって,D12=∫ψ1ψ2dVですが,ベクトルDをD

=(X,Y,Z)と成分表示して,そのx成分X=Dcosθについても,

12=∫ψ1Xψ2dVとすれば,X12=D12cosθであって角度平均

では,<|X12|2>=(1/3)D122となります。

そして,一般には複素数のΩは,(2.23)でΩ=eE012/hにより

定義され,単色光の場合の遷移確率:N2/N=|C2(t)|2を示す(2.42)

の|C2(t)|2=(1/2)|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2は,振動

電場E=0cos(ωt)のビーム周波数ωがω0の周りに平均の

エネルギー密度W(ω)の分布を持って幅Δωで広がっているときは,

これは(1/2)|Ω|2に,(1/2)e2|E|02|X12|2/h2を代入し,電磁場

平均エネルギーの,∫W(ω)dω=|1/(2V)∫(ε0|E0|2)dV

=<(1/2)ε0|E0|2>なる対応から.(1/2)|Ω|2

=(1/2)e2|E0|2|X12|2/h2の因子(1/2)|E0|2を,時間平均:

<(1/2)|E0|2>=∫(W(ω)/ε0)dωに置換することで,

準位1→2の広帯域の遷移確率は,

|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)} W(ω)(Int)

で与えられる,とします。

ただし,積分因子(Int)は:Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

×[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2]で定義される量です。

このIntが(tΔω)→∞の極限で,Int=(1/2)πtとなる

ことから,<W(ω)>=∫W(ω)dωについてのB係数を,

12<W(ω)>=<|C(t)|2>={2e2<|X12|2>/(ε0c2)}

×W(ω)(Int)で与え,<W(ω)>=W(ω)(Int)であると

考えると,<|X12|2>=(1/3)D12を代入することで,

12=πe2|D12|2/(3ε0c2)なる計算結果を導いたのでした。

ここで用いた長時間極限:Int=(1/2)πtは,tΔω>>1の

条件下で得たのですが,これは,|Ω|が小さくて,その付帯条件:

|Ω|t<<1(2.91)が満たされていれば,やはり良い近似として

成立します。

この付帯条件は,要するに,入射光が原子遷移を飽和させる

ほどには強くないこと:つまり,アインシュタイン理論で仮定

した「原子遷移と入射エネルギー密度の比例性」を壊すほど

には強くないこと,を保証しています。

なお,光学Bloch方程式の解に含まれている飽和効果に

ついては,§2.9で論じる予定です。

 

  • 2.8 放射広がり

吸収と放出の基礎理論には線幅を広げる1つの機構が既

に含まれています。その広がりは,自発放出のプロセスから

生じるので,「放射による広がり」と呼ばれています。

自発放出の効果を2準位原子気体の感受率の量子力学的

導出の中に取り入れます。このとき,感受率と吸収係数の

関係から,放射によって広がった吸収線の形状に対する表式

が得られます。

 

さて,Z個の電子を持つ原子の気体が,原子の遷移周波数

ω0に近い周波数ωの電磁波から振動効果を受けている場合

を考えます。

前と同様,単一原子が電磁波とH=eDE0cos(ωt)で

記述される相互作用HamiltonianHが作用している場合を

扱います。この単一原子の結果を適当に平均して,乱雑な配向

をした原子(分子)の気体に対する類似の結果を求めます。

まず,印加電場:0cos(ωt)を,

(t)=(1/2)0{exp(-iωt)+exp(iωt)}(2.92)

と書きます。これが,気体に作用すると,(1.79)の=ε0χ

のような分極を生じます。

このχが1次の感受率と呼ばれる量です。

しかし,(2.92)の(t)のような電場では,感受率が周波数

ωに依存するとして,χ(ω)とする必要があり,(1.79)の静場

対する分極の式:=ε0χの代わりに,

(t)=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(-ω)exp(iωt)}

(2.93)と一般化されます。

この時間に依存する分極:(t)を量子力学的に計算し,それで

得た表式を,上の(2.93)の表式と比較することから感受率χ(ω)を

決めることにします。

 そのため,まず,代表的な1個の原子の分極が気体の分極に

与える寄与を調べます。前と同じく原子の核を原点とするZ個の

電子の位置ベクトルの総和:=Σj=1jを考え,そのx成分をXと

します。電気双極子モーメントのxに平行な成分は,-eX

=-eΣj=1jの期待値で与えられます。

よって,原子波動関数をΨ~(t)と書けば,電気双極子モーメントの

x成分dは,d(t)=∫Ψ~*(t)XΨ~(t)dV(2.94)で与えられます。

ただし,dV積分はZ個の電子全ての座標について取ります。

(※ つまり,(2.94)のd(t)=∫Ψ~*(t)XΨ~(t)dVは.電子:j

の波動関数をΨj(,t)(j=12,。。,Z)とするとき,

d(t)=Σj=1∫Ψj*(j,t)xjΨj(l,t)d3jと表わす表式

の記号的表現とかんがえられます。)

cω0=E2-E1を満たす遷移周波数をω0とすると,原子波動関数

Ψ^は,Ψ^(t)=C1(t)ψ1exp(-iE1t)+C2(t)ψ2exp(-iE2t)

(2.95)となりますから,これを(2.94)に代入すると,

d(t)=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

(2.96)が得られます。ただしXij=∫ψiXψjdV(i,j=1,2)

です。被積分関数:ψi()Xψj()は空間座標軸を反転すると,

ψi(-r)(-X)ψj(-r)となるので,空間波動関数のパリティに

依らず,i=jjなら,ψi()Xψj()はの奇関数になるため,

11=X22=0(2.97)となる,という性質を用いました。

また,定義からX21=X12(2.98)ですから,電気双極子

モーメントd(t)は,予期される通り実数量という表式になって

います。

必要な係数:C1(t),C2(t)は「光の量子論7」の

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)(2.31),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)(2.32)

を解けば得られます。

しかし,前述したように,これらの運動方程式から解が導ける

のは,電磁場の印加が無いΩ=0のときの定常状態の

波動関数だけであり,その解はC1,C2の初期値のままの定数

に過ぎません。

 

これは印加電磁場が無くても,励起原子は自発放出によって,

究極的には基底状態にへと減衰するはずである,という(1.77)

2=N20exp(-A21t)という挙動に相反します。

しかし,こうした事情は上記の(2.32)に自発放出を表わす項

付け加えることで,修正されます。

すなわち,Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)

(2.99)なる修正方程式を採用します。これから,もしも,Ω=0

ならdC2/dt)=-γC2により,C2(t)=C2(0)exp(-γt).(2.100)

が得られます。

N個の同じ原子から成る気体では,t=0ではN20個が励起

されているとき,時刻tで励起されている原子の数は,

2(t)=N|C2(t)|2より,N2(t)=N20exp(-2γt).(2.101)である

と評価されます。

これを,(1.77)のN2(t)=N20exp(-A21t)と比較すれば,

2γ=A21=1/τ.(2.102)(※τは蛍光寿命)と書けます。

そして,こうであるなら(2.99)のように,(2.32)に項:

-iγC2=-iA212/2を追加して,

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)とすること

で,蛍光の減衰が正しく与えられます。

他方,(2.31)のC1の発展方程式の方は,以下では使用しない

ので,ここで修正することはしません。

 

さて,アインシュタインのB係数の導出のときと同様,C1,C2

をΩ(Ω*)の1次まで計算します

Ω,or 電場E0は弱い,としているので,方程式(2.99)の

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)の左辺で,

1=1と近似し,また,Ω≠0とします。

そうして,C1=1とした(2.99)の近似をdC2/dt=-γC2

+(-iΩ/2)[exp{i(ω0+ω)t}+exp{i(ω0-ω)t}]

と書き,これを積分すると.

2(t)=(-Ω/2)[exp{i(ω0+ω)t}/(ω0+ω-iγ)

+exp{i(ω0-ω)t}/(ω0-ω-iγ)].(2.103)を得ます。

 

※[注10-1]:線形非同次方程式:df/dt=-af+g(t)

の解を求めるには,定係数線形同次方程式:

df/dt=-afの解:f=bexp(-at)から,定係数bをtの関数

b(t)にする定数変化法を用いれば可能です。

そこで,df/dt=-af+(db/dt)exp(-at)

=-af+g(t)から,db/dt=exp(at)g(t)なので,

b(t)=∫{exp(at)g(t)}より,

f(t)=[∫{exp(at)g(t)}dt]exp(-at)が得られる,という

話を,今から50年くらい前の大学1年のときに習った?こと

思い出しました。(注10-1終わり※)

 

(2.103)のC2(t)の解から,|C2(t)}2は|Ω|2のオーダーの

大きさであるとわかり,規格化条件:|C1(t)}2+|C2(t)}2=1

(2.104)により,|C1(t)}2=1-|C2(t)}2=1+O(|Ω|2)です

から,C1(t)は,1と|Ω|2のオーダーだけ異なるとわかります。

それ故,Ωの1次までの近似では,C1(t)=1(2.105)と置く

ことが正当化されます。

よって,単一原子の電気双極子モーメント:d(t)は(2.96)の

d(t)=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

に,上記のC2=(-Ω/2)[exp{i(ω0+ω)t}/(ω0+ω-iγ)

+exp{i(ω0-ω)t}/(ω0-ω-iγ)].とC1=1を代入すれば

Ωの1次近似までの式として得られます。

ただし,X12=∫ψ1Xψ2dVで.X21=X12.Ω=eE012/hc

ですから,これらも代入すると,d(t)={e2|X12|20/(2hc)}

×[{exp(iωt)/(ω0+ω-iγ)+exp(-iωt)/(ω0-ω-iγ)}

+exp(-iωt)/(ω0+ω-iγ)+exp(iωt)/(ω0-ω-iγ)}]

(2.106)を得ます。

この単一原子の双極子モーメントを,N根の同種原子の

気体分極:Pに結び付ける必要があります。

このとき,乱雑な配向の電子を持つ原子の平均として,|X12|2

に|X12|2=|D12|2/3を代入します。こうすれば,d(t)はtに

おける気体の1原子あたりの平均双極子モ^メントとなり,

気体分極:P(t)は,P(t)=Nd(t)/V.(2.107)で与えられる

ため,これに(2.106)のd(t)={e2|X12|20/(2hc)}

×[{exp(iωt)/(ω0+ω-iγ)+exp(-iωt)/(ω0-ω-iγ)}

+exp(-iωt)/(ω0+ω+iγ)+exp(iωt)/(ω0-ω+iγ)}]

と,|X12|2=|D12|2/3を代入したものを作り,(2.93)の,

(t)=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(-ω)exp(iωt)}

と比較することで,χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}.(2.108),

かつ,χ(-ω)=χ(ω)(2.109)を得ます。

ここで,第1章で求めた2ηκ=χ“(1.84)とK=2ωκ/c

(1.91)によれば,ωに依存した原子の吸収係数K(ω)は,

感受率をχ(ω)=χ’(ω) +iχ”(ω)と書いたときの虚部

χ”(ω)と,K(ω)={ω/(ηc)}χ”(ω)(2.110)によって

関係付けられます。

※(注10-2):以前の記事「光の量子論3」では.感受率

χを複素数に拡張して,χ=χ’+iχ”(χ’,χ”は実数)と

表わしました。

ところで,原子気体に分極がある場合,これを誘電体

と見なして,その誘電率をεとすると,感受率χは=χε0

定義され,D=ε0なので,ε=(1+χ)ε0です。

周波数ω,波数kで時間的,空間的に変動するz軸の正の

向きに進行する平面波:exp{-i(ωt-kx)}を仮想すると,

誘電体内の位相速度:ω/k=(εμ0)-1/2は,自由空間(真空)

中の光速:c=(ε0μ0)-1/2の(1+χ)-1/2倍に相当するので,

(ck/ω)2=1+χと書けますが,これの平方根も複素数です

から,ck/ω=η+iκ(η,κは実数)と書きます。

(※こう定義すると,光学においては,ηが屈折率,κが吸収係数

に相当する,ことがわかります。)

これを,(ck/ω)2=(1+χ’)+iχ”に代入すれば,

η2-κ2=1+χ’.および,2ηκ=χ“.を得ます。

ここで,単位時間に単位面積を通過する場のエネルギー

として定義される,電場,磁場の電磁波の強度:

そのPoyntingベクトルで,××0と定義

して,ベクトルIの大きさのサイクル平均を取り,<I>

書けば,<I>=(1/2)ε0cη|(r,t)|2なる式を得ます。

ただし,E(r,t)は,空間的,時間的に変動する電磁波の

電場であり,これはz軸向きの進行波の形の(r,t)

0exp{i(kz-ωt)}

0exp{iω(ηz/c-t)-ωκz/c}

を想定しています。

サイクル平均強度:<I>はzの関数となるので,改めて

<I>をI=I(z)と書き.I0をz=0におけるサイクル平均強度

すれば,I(z)=I0exp(-Kz)と書けます。

ただし,K=2ωκ/cです。

と書きました。

そこで,2ηκ=χ“を用いると,K={ω/(ηc)}χ”

が得られます。(注10-2終わり※)

さて,ck/ω=(1+χ)1/2=η+iκであって,2ηκ=χ“

を与える実数ηは,光学では屈折率を示しますが,これも

χ“=χ“(ω)と表わしたときはωの関数で,η=η(ω)と

書けます。しかし,この屈折れは,あらゆる周波数ωで1に

近い値であることが知られています。

そして,十分希薄な気体を考えると,ω~ω0で,γ<<ω0

とき,には,χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}.(2.108)の

{ }内では,明らかに,(第1項)>>(第2項です。

そこで,回転波近似を適用して第2項を無視します。

すると,(2.110)の,K(ω)={ω/(ηc)}χ”(ω)は,

η~1として,K(ω)~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}

×[(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}].(2.111)となります。

この吸収係数Kの周波数依存性:F1(ω)

=(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}(2.112)は,Lorentz型曲線

(Lorentz関数曲線)として知られています。

「ローレンツ型分布」の画像検索結果

これは∫F1(ω)dω=1.(2.113)と規格化されるように

係数因子(1/π)を付けています。

そして,F1(ω)の曲線はω=ω0で最大値;1/(πγ)を

取りますが,この1/2の高さ1/(2πγ)に相当するωは,

ω=ω0±γであり,その間のωの全幅は丁度2γです。

こうして,(2.102)の2γ=A21=1/τ(※τは蛍光寿命)

より,このωのω0の周りの放射広がり=2γが,その遷移に

関する自発放出のA係数に等しい幅を生じる.と述べる

ことができます。

 水素の2p状態が自発放出によって1s状態に減衰する

場合は,前々回の記事「光の量子論8」で詳細に計算し,

21~ 6.7×108-1(2.57)なる評価式を得ました。

そこで,この場合,放射広がりは,2γ~ 6.7×10 8-1

大きさです。よって,この遷移に対応する吸収線は,自発放出

のため,角周波数Δωでなく,周波数Δν=Δω/(2π)の意味で,

約10 8Hzの幅を持つことになります。

しかし,これは極端に狭い値であり,大抵の実験で観測される

原子吸収線の幅は,他の機構:例えば後述する予定のドプラー

(Doppler)効果か,または,原子の衝突が原因と考えられます。

ところが.これら別の付加的広がりについては,原理的には,

何らかの方法,例えば気体の冷却とか,気圧を下げるとか,

で減少させることができます。

一方,放射広がりの方は自発放出が原因なので,これを減少

させることは不可能であり,A21はΔωとして到達可能な最小

幅です。

この意味で,この自発放出による線幅を「スペクトル線の固有値」

と呼ばれます。

この放射による線幅は,アインシュタインのB係数の量子論的

表式を導くために「光の量子論7」で決めた|C2(t)|2の(2.44)

の表式|C2(t)|2={2e2{X12|2/(ε0c2)}

ω0-Δω/2ω0+Δω/2[W(ω)sin2{(ω-ω0)t/2}

/(ω-ω0)2]dω.で用いた入射光の周波数幅:Δωに,その最小値

として2γ=A21=1/τを提供します。

この(2.44)は,|C2(t)|2

={2e2|X12|2/(ε0c2)}W(ω)(Int)(2.45),

Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2]

(2.46)と表わされ,tΔω>>1なら,Int=πt/2((2.48)を

得ます。と書きましたが,この誘導放出のB係数を与える

遷移確率の因子Int=πt/2によるtへの直線的依存性は,結局,

自発放出の蛍光寿命よりはるかに大きい長時間,t>>τ

対してしか成立しない,と言えます。

 

今回は,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

 

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