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2019年11月13日 (水)

光の量子論11

※「光の量子論10」からの続きです。

(※ 余談):最近IEでは,コピペが,うまくできなく

なったので,Firefoxで開いて試してみると,できた

ので,以後,また,図なども挿入できそうです。

しかし,Win7のサポートが来年早々終わるそうです。

昔,Win10に無料のときにノートをバージョンアップ?した

けど,嫌いになってWin7に戻したのにね。

そのうち新しいソフトなどに対応できなくなったりして

くるのも困るので,イヤイヤ,安価のWin10をバンドルした

NECか富士通当たりの中古デスクトップを購入予定。。

OSやソフトのバージョンアップで利益を得ようとする

MSと縁切りたいけど,無理です。まあ,棺桶両足も近いし。

デスクトップは,確か,2016年だったか?に同じ理由で,

まだ使えるXPマシンから中古のWin7マシンに変えたけど,

3年持ったから,ま,いっか?今の時代,PCを持ち運ばずとも

サーバーを使えばいいし,私ほぼ寝たきりなのでので,画質

が悪く古い液晶ノートも持ってはいるけど.入院用です。

(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.8

の周波数ωの自発放出に伴なう不可避の放射広がりの項

の説明で終わりました。

 

今回は,それ以外の周波数の広がりからです。

 

  • 2.9飽和広がり

前項で得た感受率の表式:

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}.(2.108)は,

入射光ビームの電場に線形応答する原子気体に対して,

双極子モーメント:X12,または,D12について2次まで

正しい結果です。

より高次の項を含む結果については,光学Bloch方程式

を解けば得られます。この高次解を得るためには,最初

から,密度行列に対して,ω~ω0と考えて,

exp{±i(ω0-ω)t}の項だけを残してexp{±i(ω0+ω)t}

の項を無視する回転波近似の方程式,つまり「光の量子論9」

で論じた,dρ22/dt=-dρ11/dt

=(-i/2)Ωexp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}ρ21.(2.78)

および,dρ12/dt=dρ21/dt

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)(2.79)

についての解を求めればいい,ことになります。

しかし,この段階では自発放出の効果が入ってないので,

これを考慮に入れて,この方程式を修正・一般化する必要が

あります。

前に戻り,密度行列の定義:ρij=Cij;i,j=1,2)から,

dρij/dt=Ci(dCj/dt)+Cj(dCi/dt)ですが,

これに,C1については(2.31)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)を採用し,

2については前回,(2.32)に自然放出の項を付加

して修正した(2.99)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)

を代入して,近似抜きの方程式系を得た後に,

cos(ωt)=(1/2){exp(-iωt)+exp(iωt)}として,

ω~ω0と仮定し,exp{±i(ω0-ω)t}の項だけ残し,

exp{±i(ω0+ω)t}の項を無視する近似を適用すれば,

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22.(2.114),

および,dρ12/dt

=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12(2.115)

を得ます。

本当は(2.31)のC1の時間発展方程式の方にも,自然放出

による修正を加えるべきですから,単にγを導入したこれら

の手法が完全に厳密でないのは明らかです。

しかし,修正光学Bloch方程式:(2.114),(2.115)は,実は,

より厳密な計算から得られるものと同一です。

 

 さて,減衰項が存在するので解は完全な振動型ではなく,

十分長い時間が経過すれば定常状態になります。

定常状態の解を求めるには,まず,ρ1221

ρ~12=exp{i(ω0-ω)t}ρ12.(2.116a),

ρ~21=exp{-i(ω0-ω)t}ρ21(2.116b)

と置き換えて,(2.114),(2.115)から振動型因子を消去

します。すると,dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ~12

+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22.(2.117),および,dρ~12/dt

=(iΩ/2)(ρ11-ρ22)-γρ~12-i(ω0-ω)ρ~12.(2.118),

となります。

dρ~21/dtは(2.118)の複素共役で与えられて,

dρ~21/dt=(-iΩ/2)(ρ11-ρ22)-γρ~21

+i(ω0-ω)ρ~21.となります。

これら.3つの方程式の左辺の変化速度を全てゼロと置き,

ρ11+ρ22=1を用いると,定常状態の解が求まります。

ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}(2.119)

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

(2.120)となります、

※(注11-1):上式を証明します。

[証明](2.117)でdρ22/dt=0より,

ρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~21}(実数)を得ます。

一方,(2.118)でdρ12/dt=0,ρ11=1-ρ22より,

(-Ω/2)(11-2ρ22)=(ω0-ω-iγ)ρ~21なので

(Ω/2)(1-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ)ρ~12,または,

(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ)Ωρ~12

を得ます。ここで,Ωρ~12=a+ib(a,bは実数)

と置くと,(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-a(ω0-ω)+bγ,

かつ,0=-b(ω0-ω)―aγです。

b­=-aγ/(ω0-ω)でbを消去して

(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-a(ω0-ω)-aγ2/(ω0-ω)

=-a{(ω0-ω)2+γ2}/(ω0-ω)より,

a=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[(ω0-ω)/{(ω0-ω)2+γ2}],

b=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[-γ/{(ω0-ω)2+γ2}],

それ故,Ωρ~12=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)

[(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}]となります。

故に, Ωρ~12-Ωρ~12=2ib

=i|Ω|2(1-2ρ22)[γ/{(ω0-ω)2+γ2}],

ですが,これを先のρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~12}

に代入すれば,4iγρ22=iγ|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2}

-2iγρ22|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2},なので,

4iγρ22{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}/{(ω0-ω)2+γ2}

=iγ|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2}となります。

したがって,ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

が得られました。

これから,1-2ρ22

={(ω0-ω)2+γ2}/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

ですから,Ωρ~12=(-|Ω|2/2)(1-2ρ22)

×[(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}]

=(-|Ω|2/2)(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

です。

故に,ρ~12=(-Ω/2)(ω0-ω-iγ)

/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}です。それ故.

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

も得られました。[証明終わり](注11-1終わり※)

 

次に,これら定常状態のときの式が感受率に及ぼす

効果を考えます。

前記事の放射広がりの項で与えた,1原子の双極子

モーメントdの表式(2.96)

d(t)=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

より,d(t)=-e{ρ1212exp(-iω0t)+ρ1221exp(iω0t)}

で,X12=∫ψiXψ2dV,eo(2.121)と書けます。

これに対し,気体の分極は(t)=N(t)/V

=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(ω)exp(iωt)}ですから,

(1/2)ε00χ(ω)=-eρ1212exp{-i(ω0-ω)t}(N/V)です。

 

故に,χ(ω)={-2eρ12NX12/(ε00V)}exp{-i(ω0-ω)t}

を得ます。ただし,Ω=eE012/hcであり,|X12{2を配向角平均の

<|X12{2>=(1/3) |D12{2で置き換えます。

すると,Ω=eE012/hcより,Ω*12=eE0|X12|2/hc

~eE0|D12|2/(3hc)となります。

そして,ρ12=-exp{i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}より,

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}](2.122)

を得ます。

|Ω|2=e202|X12|2で,これが分母に含まれていますから

この表式は,もはや電場の1次の感受率ではありません。

そして,この(2.122)の感受率χ(ω)は,先に放射広がの項

で得た(2.108)の感受率;χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}の回転波近似:

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}と,分母の/|Ω|22

を除けば同じです。したがって,その虚部もχ”(ω)

={Ne2|D12|2γ/(ε0cV)}/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

であり,先のχ”(ω)={Ne2|D12|2γ/(ε0cV)}

/{(ω0-ω)2+γ2}と分母の/|Ω|22を除いて同じです。

(2.122)の中には|Ω|22の項が入っており|D12|2∝|Ω|

なので,第1章で考察したのと同様,飽和効果が生じます。

(※入射光ビームが大きくなると,|Ω|2→大ですが,励起原子

の数はN2→(N/2)と,飽和状態に近づき,遷移が減衰します。)

これが入射光の吸収速度,つまり減衰速度を減少させる

のは明らかです。

吸収係数はK(ω)={ω/(cη)}χ” (ω)です。

これは電場の1次の感受率では,ω~ω0,η~1で

K(ω)~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}

×[(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}](2.111)で与えられましたが,

これも,K(ω)~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}

×[(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ+|Ω|2/2}]になります。

そこでK(ω)が最大のω=ω0のときの半分の値:

K(ω0)/2をとるωは,前はω=ω0±γでしたが,これも,,

ω=ω0±(γ2++|Ω|2/2)1/2に変わります。

すなわち,線幅は,2γから2(γ2++|Ω|2/2)1/2.(2.123)に

増加します。この付加的寄与は「飽和による広がり」と

呼ばれます。

 

  • 2.10 放射減衰を伴なうRabi振動

前節で導いた感受率は定常状態の非対角密度行列要素に

支配されることがわかりました。他方,対角密度行列要素は

2つのエネルギー準位の原子占有数を与えます。

単色光の照射によって生じた定常状態の励起状態占有数

に対する減衰を伴なう光学Bloch方程式(2.119)の解:

|C2|2=ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}の結果

は,前の記事「光の量子論3」で,広帯域の光を照射したとき

の,(A+2BW)t>>1の長時間が過ぎると励起状態占有数

が定常状態の値:N2=NBW/(A+2BW)=|C2|2Nに近づく,

という(1.74)の結果と比較することができます。

(※ただし,A=A21,B=B21=B12です。)

これら,2つの表式(2.119),(1.74)は細かい点では違いが

ありますが,共通のより重要な特徴を備えています。

(2.119)は,|Ω|が,自発減衰γ,or離調:ω0-ωより,ずっと

大きくなると,|C2|2=ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

が極限値:1/2に近づくことを示していますが,これは,BW<<1

なら,(1.74)の|C2|2=BW/(A+2BW)が極限値:1/2に飽和して

ゆく様子と,一致しています。

そして,(2.119)をωで積分すると,|Ω|<<γのときには,

∫ρ22dω=π|Ω|2/(4γ).(2.124)を得ます。

※(注11-2):何故なら,∫-∞(x2+a2)-1dx

=[aTan-1(x/a)] -∞=πa/2-(-πa/2)=πaですから

|Ω|<<γなら,∫-∞({(ω0-ω)2++γ2+|Ω|2/2}-1dω

=π(γ2+|Ω|2/2)1/2~πγ です。(注11-2終わり※)

これは,つまり,入射光ビームが弱い極限では,広帯域の励起

原子の数は,光のエネルギー密度に比例することを意味します。

Ωの定義は,Ω=eE012/hcであり,原子内の電子の配向平均

では,<|X12|2>=(1/3)|D12|2です。

また,ビームの平均エネルギー密度は,サイクル平均で,

(1/2)ε02=∫W(ω)dωです。そこで,2.55)の,B12

=πe2|D12|2/(3ε0c2)=π|Ω|2/(ε002)の表式からわかる

ように,∫BWdω=π|Ω|2/2.(2.125)が成立します。

したがって,2γ=A21=1/τ(2.102)を援用すれば,

BW<<Aの弱ビーム極限で∫(BW/A+2BW)dω

~π|Ω|2/(4γ)であり,(1.74)の(A+2BW)=|C2|2の積分

結果が,広帯域の(2.119)の吸収線のωにわたる積分で得る

(2.124)の∫ρ22dω=π|Ω|2/(4γ)のの結果と,正確に一致

します。

定常状態における(2.119)の原子の励起状態占有数は,その

初期値に依存しません。

 

しかし,長時間極限の定常状態ではなく,照射時間が短かいとき

の原子占位数は,本記事最初の光学Bloch方程式(2.114),(2.115)

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22,および,

dρ12/dt

=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12

を初期条件を入れて,もっと一般的に解く必要があります。

ですが,残念なことに,この一般解はあまり明快な形に書けない

ことがわかっています。

そこで解の例として2つの特別な場合を考えます。

まず,(ⅰ)離調:(ω0-ω)がゼロ.を仮定した場合,

次に,(ⅱ)光ビームが弱く,|Ω|<<γの場合の2つ

を考察します。

(ⅰ)光学Bloch方程式(2.114),(2.115)の解はω=ω0でt=0

の初期条件がρ22=0,ρ12=0のときには,ρ22について,

ρ22 (t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

(2.126)となります。

ただし,λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2.(2.127)です。

※(注11-3):上記を証明します。

[証明] ω=ω0では,(2.114)は,

dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ12+(iΩ/2)ρ21-2γρ22,

(2.115)は,dρ12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ12となり,

書けます。そして,ρ21=ρ1222=ρ22です。

この方程式系は,線形変換で,

dρ22/dt=(-i/2)(Ωρ12-Ωρ21*)-2γρ22,

および,Ω(dρ12/dt)-Ω(dρ12/dt)

=(i|Ω|2)(1-2ρ22)-γ(Ωρ12-Ωρ12*)に変換されます。

そこで,f­=ρ22,g=(-i/2)(Ωρ12-Ωρ21*)と置くと,

f,gは共に実数値関数で,df/dt=-2γf+g,かつ,

dg/dt=-|Ω|2f-γg+|Ω|2/2となります。

これは,=[f,g],=[0,|Ω|2/2]なる縦ベクトルに

対して2×2係数行列を^としてd/dt=^です。

ところが,前回の(注10-1)では,線形非同次方程式:

df/dt=af+g(t)の解は,

f(t)=exp(at)[∫0{exp(-at)g(t)}dt]

+f(0)で与えられる,ことを示しました。

そこで,同様に,d/dt=^の解も,記号的に,

(t)=exp(^t)[∫0{exp(-^t)}dt]+(0)

=exp(^t)[-exp(-^t)^-1]0(0)

で与えられるはずです。

ただし,初期条件がρ22(0)=ρ12(0)=0の場合は,(0)=0

です。exp(^t),exp(-^t)は,それぞれ次式で定義されます。

すなわち,exp(^t)=Σn=0{(^t)/n!}であり,かつ,

exp(-^t)=Σn=0{(-^t)/n!} です。

故に,(t)=exp(^t){^-1-exp(-^t)^-1}

が,初期条件を満たす解です。

必要かどうか?は不明ですが,P^の逆行列:^-1の要素

も求めておきます。det(^)=|Ω|2+2γ2であって,

det(^)(^-1)11^22=-γ,det(^)(^-1)12=-^12

=-1,det(^)(^-1)21=-^21=|Ω|2, det(^)(^-1)22

^11=-2γです。

 さて,唐突ですが,=α(≠0)という,行列P^

の固有値αと,その固有ベクトルを求める固有値問題

を考えます。

線形代数学から固有値αは^を単位行列として,

det(^-α^)=0という方程式の解で得られます。

この方程式は,(-2γ-α)(-γ-α)+|Ω|2=0,

つまり,αの2次代数方程式:α2+3γα+2γ2+|Ω|2

=0 を意味します。そこで,解の公式から,解αは

α=-3γ/2±i(|Ω|2-γ2/4)1/2です。ここで,

ビームの電場0が十分大きくて,|Ω|2≧(γ2/4)であると

仮定しました。それ故,実数λをλ=(|Ω|2-γ2/4)1/2

置くと,2つの固有値は,α=α±=-3γ/2±iλ(複号同順)

と書けます。故に.γ+α±=-γ/2±iλです。

そして,α±に属する固有ベクトルを,±(複号同順)とします。

つまり,^x=α,^x=α (x±≠0)です。

これら固有ベクトルの成分:x1,x2は,係数が逆行列を持たぬ

連立方程式:-2γx1+x2=α±1,-|Ω|21-γx2=α±2

から,(γ/2±iλ)x1=x2, or (-γ/2±iλ)x2=-|Ω|21

となるので,例えば.x2=1と置くと,x1=-(-γ/2±iλ)/|Ω|2

を得ます。したがって,定数倍の不定性を除いて,

=[(γ/2-iλ)/|Ω|2,1],==[(γ/2+iλ)/|Ω|2,1]

書けます。

ここで,行列:^を^=(+,)と,定義すると,

^^=^()=(α)が成立します,

右辺は,^=(+,)に,対角要素がαで非対角要素

がゼロの対角行列を掛けたものに等しいです。

そこで,この対角行列を,Λ^とすれば,これて^^=^Λ^

を意味します。そして.^=(+,)には逆行列:^-1が存在

するため, ^^=^Λ^から,Λ^=^-1^^を得ます。

これから,Λ^^-1^^となりますから,結局,

exp(Λ^t)=^-1exp(^t)^を得ます。

逆に,exp(^t)=^exp(Λ^t)^-1です。

同様に,exp(-Λ^t)=^-1exp(-^t)^,かつ,

exp(-P^t) =Q^exp(-Λ^t)Q^-1です。

先に,=[f,g],=[0,|Ω|2/2]に対する

/dt=^の,記号的なものとして得た解:

(t)=exp(^t){^-1-exp(-^t)^-1}は,

^-1(t)=exp(Λ^t)

×{Λ^-1Q^-1-exp(-Λ^t)Λ^-1Q^-1}となります。

exp(±Λ^t)は対角成分が,exp(±αt),exp(±αt)

の対角行列となりますから,具体的解を得るには,後は^-1

求めればいい,だけです。

Q^=(+,)の行列要素は列ベクトルの成分で,

=[(γ/2-iλ)/|Ω|2,1][-(γ+α)/|Ω|2,1],

=[(γ/2+iλ)/|Ω|2,1]=[-(γ+α)/|Ω|2,1]

と表わされます。

^の逆行列^-1の行列要素は,det^(^-1)11^22=1,

det^(^-1)12=-^12=-(γ/2+iλ)/|Ω|2

=(γ+α)/|Ω|2,det^(^-1)21=-^21=-1,

det^(^-1)22^11=(γ/2-iλ)/|Ω|2=-(γ+α)/|Ω|2,

および,det(^)=-2iλ/|Ω|2,or{det(^)}-1=i|Ω|2/(2λ)

で表現されます。

すなわち,逆行列^-1も列ベクトル1,2によって,

^-1=(1.2),ただし,1={i|Ω|2/(2λ)}[1,-1],

2={i/(2λ)}[-(γ/2+iλ),(γ/2-iλ)] 

{i/(2λ)}[(γ+α),-(γ+α)] と表わせます

よって,=[0,|Ω|2/2]に対して,^-1

=[(-i(γ/2+iλ)|Ω|2/(4λ),i(γ/2-iλ)|Ω|2/(4λ)] 

={i|Ω|2/(4λ)}[(γ+α),-(γ+α)]

それ故,Λ^-1Q^-1

{i|Ω|2/(4λ)}[(γ+α)/α.-(γ+α)/α]です。

そこで,先に書いた対角化された方程式の解::

^-1(t)=exp(Λ^t)

×{Λ^-1-1-exp(-Λ^t)Λ^-1-1}の左辺の

列ベクトルを,^-1(t)=[f~,g~]と成分表示すれば,,

f~={i|Ω|2/(4λ)}{(γ+α)/α}{exp(αt)―1}

および,

g~=-{i|Ω|2/(4λ )}{(γ+α)/α}{exp(αt)-1}

となります。

それ故,-(γ+α)f~/|Ω|2-(γ+α)g~/|Ω|2

=-i|Ω|2/(4λα)}{exp(αt)―1},

+i|Ω|2/(4λα)}{exp(αt)-1},

=|Ω|2/|2(2γ2+|Ω|2)}-{i|Ω|2/(4λαα)}

×{αexp(αt)-αexp(αt)}

を得ます。

(※ (γ+α)(γ+α)=γ2/4+λ2=|Ω|2, αα

=(9/4)γ2+λ2=2γ2+|Ω|2です。)

  ところが,y(t)=[f,g]Q^[f~,g~]

ですが,^=(+,)で,

=[-(γ+α)/|Ω|2,1],

=[-(γ+α)/|Ω|2,1]T ですから,

f=―(γ+α)f~/|Ω|2-(γ+α)g~/|Ω|2

=(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)-i{|Ω|2/(4λ)}/(2γ2+|Ω|2)}

×{αexp(αt)-αexp(αt)}をえます。

α±=-3γ/2±iλより,

exp(αt)=exp(-3γt/2)exp(iλt)

exp(αt)=exp(-3γt/2)exp(-iλt)なので

(-i){αexp(αt)-αexp(αt)}

=[(3iγ/2){exp(iλt)-exp(-iλt)}

-λ{exp(iλt)+exp(-iλt)}]

×exp(-3γt/2)

={-2λcos(λt)-3γsin(λt)}exp(-3γt/2)

したがって,f=ρ22=(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)

[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

が証明されました。[証明終わり] (注11-3終わり※)

 

今回は,最後で過去ノートの13年前の計算にケアレスミス

があるのを発見しました。証明なので,何とか結論までたどり

ついてはいましたが,チェックの再計算に老齢のせいか3昼夜

もかかりました。例によって夢中になると寝食を忘れる偏執質

なので何度か低血糖でフラフラになりました。

インスリンを打たなくても長い考え事で,よく低血糖になり,糖分

ある場所まで這っていくほど動けなくなります。眠くなるけど

寝てしまうとアウトですね。 高血糖は長期的,慢性型なので

急性で脳死植物状態になる危険性はないのですがね。

でも,結局,正解を得たので,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

 

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