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2019年11月21日 (木)

光の量子論12

※「光の量子論11」からの続きです。

(※余談):いとしのエリカ様,薬物疑惑で逮捕ですか?

真実だとしても誰かを傷つけたワケじゃなくカワイイもんです。

またも,政権スキャンダルと偶然?一致のタイミングですか。

(※ 氾文雀以来のカワイサ,。。草冠のハンが出てこない。)

まあ,昔,タオルで顔隠してヘルメットにゲバ棒でパクられて

ウソの情報聞かされながら聴取されたりした身には,マスコミと

いう名で無節操に垂れ流す,大方の世論に迎合しないとモノが

売れないスポンサー様イノチの「大本営発表」,逆らえば仕事

も干される方々のフェイクか否かも判断せず,本音に歯にキヌ

着せたコメントなどは,鵜呑みにできないタチのヘソマガリて,

命は残り少ないが,映画同様,最後は抹殺される運命の

アウトサイダーを気取っても,何の力もないクソジジイ

の無駄な抵抗故,ハナも引っかけられない遠吠えですが。

(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.10

(放射減衰を伴なうRabi振動)の項で,自発放出の減衰項を

加えた光学Bloch方程式から,まず,ビーム照射の長時間

極限の定常状態について考察し論じました。

その後,逆にビーム照射時間が短かい場合,一般解が

複雑なので.解の特徴を見るため,特殊な2つの例のみ扱い,

まず,(ⅰ)ω=ω0で初期条件がρ22=ρ12=0 で,|Ω|>γ

の場合のρ22(t)=|C2(t)|2の解として,(2.126)の

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

(ただし,λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2.(2.127))を導出したところ

で終わりました。

 

今回はその続きです。

放射減衰がない(γ=0)のときには,上記の式(2.126)は,

ρ22(t)=(1/2)[1-cos(|Ω|2t)}=sin2(|Ω|t)となり,

これば,純粋な原子の2準位間の振動=Rabi振動の表式

ρ22(t)=(|Ω|212)sin2(|Ω|t)(2.87);ただし,Ω1

={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2の,離調{ω0-ω)がゼロの場合

に一致します。

他方,γ≠0の場合は,(2.126)はtが大きくなると

(2.119)のρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}の

離調がゼロの定常極限値:ρ22=(|Ω|2/4)/(γ2+|Ω|2/2)

に近づきます。

この場合,因子:exp(-3γt/2)があるので,γの増加と

共に振動の減衰が急速になり,γ=|Ω|/3では極大が1つ

しか残りません。

※(注12-1):(2.126)式を,.

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

-{(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}exp(-3γt/2)

×{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}

(λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2)と書いて,tで微分すると,

dρ22/dt={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}exp(-3γt/2)

×[(3γ/2){cos(λt)+(3γ/2)(1/λ)sin(λt)}

+λsin(λt)-(3γ/2)cos(λt)}

={|Ω|2/(2λ)}{(λ2+9γ2/4)/(2γ2+|Ω|2)}sin(λt)

×exp(-3γt/2)={|Ω|2/(2λ)}sin(λt)exp(-3γt/2)

です。

それ故,dρ22/dt=0となるのはsin(λt)=0の

とき,つまり,t=nπ/λ(n=0,1,2,..),のときです。

このとき,対応して,cos(λt)=cos(nπ)=(-1)

なります。

したがって,t=0では確かにρ22(t)=0ですが,

t=nπ/λ(n=1.2…)では,nが奇数なら,

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}[1+exp{-3nπ/(2λ)}]

で,これらは極大値となり,他方,nが偶数なら,

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}[1-exp{-3nπ/(2λ)}]

で,「これらは極小値です。

そもそもγ>2|Ω{(|Ω|<γ/2)ならλ<0なのでλは虚数

になるので三角関数で表わされる振動解ではないです。

γ<2|Ω|で特にγ=|Ω|/3,ではλ=(11/12)1/2|Ω|,

(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}=9/22, exp{-3γt/2)=exp(-|Ω|t/2)

となり,t=π/λで最大で,それ以後減少しますが,極大値が1つだけ

残るという意味は不明です。??? 

nが奇数の極大値:ρ22={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1+exp{-3nπ/(2λ)}]が,n>1では,飽和値の1/2を

越えてしまうのかな? (注12-1終わり※)

 

さて,こういうわけで,占位数に顕著な振動が現われるため

には,|Ω|が3γより,ずっと大きくなければなりません。

こうした原子の振動的挙動は「光章動」と呼ばれています。

章動周波数は,一般に,Rabi周波数:|Ω|,離調:ω0-ω,

および,放射減衰;γに依存します。

(2.84)のΩ1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2と,(2.127)の

λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2は,それぞれ,γ=0とω0-ω=0の場合の

章動周波数に相当しますが,一般の場合のそれに対する簡単な

解析的表式はありません。

※(注12.2):つまり,γ=0の放射減衰が考慮されないときは,

「光の量子論9」の§2.7(Rabi振動)の項でha,初期条件

が,ρ22=ρ12=0の場合の光学Bloch方程式のρ22の解が,

次の(2.87);ρ22(t)=(|Ω|212)sin21t/2)

1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2)で与えられ,続く「光の量子論10」

では特に,離調;ω0-ωがゼロ,つまり,ω=ω0の特別な場合

には,Ω12=|Ω|2となるため,解はρ22=sin2(|Ω|t/2)(2.89),

と簡単になり,この場合,原子は基底状態1と励起状態2

との間を対称的に振動しますが,これをRabi振動と呼び,,|Ω|

をRabi周波数と呼ぶ,と書きました。(※ 離調;ω0-ωがゼロで

ないならΩ1がRabi周波数ですね。)

そして,本記事ではγ≠0で放射減衰があるとき,離調;ω0-ωが

ゼロなら,初期条件がρ22=ρ12=0 で,|Ω|>γの場合のρ22の解

は(2.126)のρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

(λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2))で与えられる:Rabi周波数はλになる,

ことを述べましたが離調がゼロでない一般の場合の解は,未だ不明

です。(注12-2終わり※)

しかし,実情としては|Ω|がγより,ずっと大きくないなら目立った

振動は見られません。それ故,光章動を観測するためには,レーザー

光源が用いられています。

そこで,次に,ビームが強い場合,原子励起度が光の励起ビームに

及ぼす効果を考えます。

原子が初め基底状態にある場合は,初めのうちはエネルギーが

原子に移るにつれてビームは減衰してゆきます。

 しかし,ビームが十分強いため,|Ω|が離調ω0-ωより大きく,

減衰γよりずっと大きい場合は,原子波動関数の励起状態の成分が

いつかは基底状態の成分を上回るので,原子のエネルギーの一部

は放射によって光ビームに戻り,ビーム強度が最初の値より大きく

なります。

したがって,原子の光章動に伴なって,それに対応した透過強度の

振動が現われます。実際の実験での透過光の時間依存性の詳しい理論

では,光学的振幅への他の寄与も考慮すべきですが,基本的には,この

現象は原子励起の示す振動的挙動の1つの結果と考えられます。

 

さて,Bloch方程式が容易に解ける第2の特別な場合は,(ⅱ)|Ω|が放射

減衰のγより,ずっと小さい場合,つまり,入射ビームが弱い場合です。

結論から言うと,C1については修正せず,C2については自然放出

の項を付加して修正した方程式:Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2

=i(dC2/dt)を,密度行列の式:dρij/dt=Ci(dCj/dt)

+Cj(dCi/dt)に代入した後,cos(ωt)を指数関数表示して,

ω0~ωの回転波近似を施した方程式:(2.114),(2.115)

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22.

dρ12/dt=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12(

の,|Ω|<<γの極限での|Ω|について最低次のρ22の解は,

前の例(ⅰ)と同じ初期条件のρ22=ρ12=0の下で,

に対して,ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)](2.128)

となります。

※(注12-2);上記を証明します。

[証明]:ρ~12=exp{i(ω0-ω)t}ρ12,

ρ~21=exp{-i(ω0-ω)t}ρ21,とおくと,

dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ~12+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22.,

dρ~12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ~12-i(ω0-ω)ρ~12,

となります。

dρ~21/dtは,これの複素共役で与えられ,dρ~21/dt

=(-iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ~21+i(ω0-ω)ρ~21.と

なります。

そこで,x=ρ22,y=(-iΩ/2)ρ~12,y=(iΩ/2)ρ~21,

と置くと,これらは,dx/dt=y+y-2γx,

dy/dt=(|Ω|2/4)(1-2x)+{-γ+i(ω0-ω)}y

dy/dt=(|Ω|2/4)(1-2x)+{-γ-i(ω0-ω)}y

と書けます。

整理すると,dx/dt=-2γx+y+y,

dy/dt=-(|Ω|2/2)x+{-γ+i(ω0-ω)}y+|Ω|2/4,

dy/dt=-(|Ω|2/2)x+{-γ-i(ω0-ω)}y+|Ω|2/4

です。そこで,これを3次元の列ベクトル:=[x,y,y]

に対する線形非同次の行列方程式の形で3×3係数行列を^

として,d/dt=^,と書きます。

ただし,定数項=[0,|Ω|2/4.|Ω|2/4]です。

これの初期条件がt=0で0の解は,既に何度か示した

ように,(t)={exp(^t)-1}^-1で与えられます。

逆行列:A^-1は,その要素が,

(det^)(^-1)11=γ2+i(ω0-ω)2

(det^)(^-1)12=-{-γ-i(ω0-ω)},

(det^)(^-1)13=-{-γ+i(ω0-ω)}

(det^)(^-1)21=-(|Ω|2/2),

(det^)(^-1)22=-2γ{-γ-i(ω0-ω)}+|Ω|2/2,

(det^)(^-1)23=-(|Ω|2/2),

(det^)(^-1)31=(|Ω|2/2){-γ-i(ω0-ω)},

(det^)(^-1)32=-|Ω|2/2,

(det^)(^-1)33=―2γ{-γ+i(ω0-ω)}+|Ω|2/2,

で与えられます。

ただし,det^=-2γ{γ2+i(ω0-ω)2}

-(|Ω|2/2){γ-i(ω0-ω)}-(|Ω|2/2){γ+i(ω0-ω)}

=-2γ{γ2+i(ω0-ω)2+|Ω|2/2}です。

また,^=α(0)を満たす固有値αを求める

方程式は,det(^-α^)=0ですが,これは,

(-2γ-α){(-γ-α)2+(ω0-ω)2}

-(|Ω|2/2){(-γ-α)-i(ω0-ω)}

-(|Ω|2/2){(-γ-α)+i(ω0-ω)}=0となります。

つまり,(-2γ-α){(-γ-α)2+(ω0-ω)2}

-|Ω|2{(-γ-α)=0です。

さらに,書き下すと,α3+{γ2+(ω0-ω)2-|Ω|2

+2γ{γ2+(ω0-ω)2+(|Ω|2/2)}=0 です。

しかし,今は|Ω|の最低次近似を求めればいいので,

因子:|Ω|2を含む講を無視する近似では,

固有値方程式は(α+2γ){(α+γ)2+(ω0-ω)2}=0

となり,異なる3つの固有値として,α0=-2γ,

α±=-γ±i((ω0-ω)(複号同順)を得ます。

それ故,特に,α+α=-2γ=α0,および,

αα=γ2+(ω0-ω)2なる関係が成立します。

そして,この近似で,α0に属する固有ベクトル

を,それぞれ,Y0,Yと書けば,定数倍の任意性を除き,

0=[1,0,0],Y=[-α-1,1,0],=[-α-1,0,1]

と書けることがわかります。

これらを3列に並べた行列を^=(0,,)と書いて

定義し,その逆行列^-1^-1=(0,,)と表わすと,

det(^)=1なので,Z0=[1,0,0],Z=[α-1,1,0],

=[α-10,1]となります。

こうすると,対角要素が固有値:α0の対角行列

Λ^は,Λ^=P^-1^^で与えられます。

そこで,exp(Λ^t)=P^-1exp(A^t)^が成立します。

それ故,前に与えた初期値が0のd/dt=A^X

の解:(t)={exp(^t)-1}^-1において,|Ω|の最低

次近似の解としての(t)は,左からP^-1を掛けて,

P^-1(t)={exp(Λ^t)-1}P^-1^-1bを満たします。

これから,結局.X(t)=P^{exp(Λ^t)-1}P^-1^-1

が得られます。

ところで,A^の逆行列^-1の要素の近似を書き下すと,

1行目は変更無しで,(det^)(^-1)11=αα,

(det^)(^-1)12=-α,(det^)(^-1)13=-αです。

また,2行目の近似は,(^-1)21=(^-1)23=0,および,

(det^)(^-1)22=-2γ{-γ-i(ω0-ω)}=α0αです。

3行目は,(^-1)31=(^-1)32=0,(det^)(^-1)33

=-2γ{-γ+i(ω0-ω)} =α0αとなります。

さらに,det^=-2γ{γ2+i(ω0-ω)2}=α0αα

と書けます。

それ故,=[0,|Ω|2/4.|Ω|2/4]=(|Ω|2/4)[0,1,1]

に対して^-1={|Ω|2/(4αα)}[-(α+α)/α0]

={|Ω|2/(4αα)}[-1,α]です。

( ※については,|Ω|2を無視するとゼロとなって無意味なので,

|Ω|2を因子として残します。)

さらに,左から^-1=(0,,),Z0=[1,0,0],

=[α-1,1,0],=[α-1,0,1]を掛けると.

P^-1^-1={|Ω|2/(4αα)}=[1,α]

ですから,P^-1(t)={exp(Λ^t)-1}^-1^-1

{|Ω|2/(4αα)}

[exp(α0t)-1{exp(αt)―1},α{exp(αt)-1}]T 

を得ます。

最後に,両辺の左からP^=(Y0,Y,),

0=[1,0,0],Y=[-α-1,1,0],Y[-α-11,0]

を掛けて,近似解:X(t)=[(t),y(t),y(t)]の成分

x(t)を求めます。

第1成分は,x(t)={|Ω|2/(4αα)}

×[exp(α0t)-1-exp(αt)+1-exp(αt)+1}

={|Ω|2/(4αα)}

[1+exp(α0t)-exp(αt)-exp(αt)}]

={(|Ω|2/(4αα)}

×[1-exp(-2γt)-exp{i(ω0-ω)t}exp(-γt)

-exp{ーi(ω0-ω)t}exp(-γt)}]となりますから,

結局,ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]

が得られます。[証明終わり] (注12-2終わり※)

(※ うーん。1つの証明が長過ぎるね。こりゃ疲れるわ。)

 

この(2.128)の,ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]の結果

は,放射減衰:γがゼロの極限で,ω~ω0の場合,ω0t>>1の

遷移時間tに対する「光の量子論7」のρ22(t)=|C2(t)|2

=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2.(2.42)に一致します。

|Ω|t<<1におけるρ22のtに対する曲線は,いずれも

時間tの2次の時間依存性を示します。この性質は,光学Bloch

方程式の解を時間について展開すれば証明できます。

すなわち,(2.114),(2.115)の解の|Ω|の最低次の項は,

|Ω|t<<1,および,t=0での初期条件:ρ22=ρ12=0に対し,

離調:ω0-ω,や減衰γに無関係に,ρ22=(1/4)|Ω|22(2.129)

となります。

※(注12-3):上記を証明します。

[証明];t<<1,|Ω|<<1.γt<<1で,(2.128)は,

ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]

~[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+(1-2γt+2γ22)

-2(1-(ω0-ω)22/2)(1-γt+γ22/2)

=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]{(ω0-ω)22+γ22}

=(1/4)|Ω|22を得ます。[証明終わり] (注12-3終わり※)

この,初めのうちは,励起度が時間tの2乗に比例して増加

するという挙動は,「光の量子論7」で述べたような,

tΔω>>1を満たす広帯域の入射光に対し,(2.49)で

与えたρ22(t)=|C2(t)|2=πe2|X12|2W(ω)t/(ε0.c2)

の,励起度が時間tに比例する,という挙動とは対照的です。

しかし,放射広がりがある場合は,単色の式(2.128)を吸収線

のωの広がりにわたって積分することで,広帯域の場合の結果を

復元することができます。つまり,簡単な複素平面上の外周積分

により,∫ρ22dω={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}(2.130)

が得られ,γt<<1では,{1-exp(-2γt)} ~2γtより左辺

はtに比例します。

※(注12-4):上記(2.130)を証明します。

[証明] ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]

∫ρ22(t)dω=(|Ω|2/4)[∫dω/{(ω0-ω)2+γ2}]

{1+exp(-2γt)}-(|Ω|2/4)[∫dω[2cos{(ω0-ω)t}

/{(ω0-ω)2+γ2)}]×exp(-γt) です。

ところが,まず,∫-∞dω/{(ω0-ω)2+γ2}

=(1/γ)[Tan-1{(ω0-ω)/γ]] -∞=π/γです。

一方,∫dω[2cos{(ω0-ω)t}/{(ω0-ω)2+γ2)}

=∫-∞dω([exp{i(ω0-ω)t}+exp{-i(ω0-ω)t}]

/[{(ω0-ω)-iγ}{(ω0-ω)+iγ}])です。

ここで,次の公式が成立することを利用します。すなわち,

-∞dω[exp(±iωt)/{(ω-iγ)(ω+iγ)}]

=(π/γ)exp(-γt)です。

何故なら,複素ω平面でωを半径がRの大円:

つまり,ω=Rexp(iθ)=R(dosθ+isinθ)とすると,

dω=iRexp(iθ)dθでありR~∞では,

exp(±iωt) /{(ω-iγ)(ω+iγ)}

=exp(±itcosθ)exp{±(-tRsinθ)

/[{Rexp(iθ)-iγ}{Rexp(iθ)-iγ]

~exp{±(-Rsinθ)/R2ですから,分子がexp(iωt)

なら,θが0→πの反時計回りの上半円周,分子がexp(-iωt)

なら,θが0→(-π)の時計回りの下半円周を取れば,tが正

では,共に,半円周上の寄与はゼロとなり,積分の極は上半円周

ではω=iγ,下半円周ではω=-iγ,なので留数は,

±2πi/(±2iγ)exp(-γt)ですから,

-∞dω[exp(±iωt) /{(ω-iγ)(ω+iγ)}]

=(π/γ)exp(-γt)を得ます。

以上から,∫dω[2cos{(ω0-ω)t}/{(ω0-ω)2+γ2)}

=∫-∞dω([exp{i(ω0-ω)t}+exp{-i(ω0-ω)t}]

/[{(ω0-ω)-iγ}{(ω0-ω)+iγ}])

=(2π/γ)exp(-γt)です。

したがって,∫ρ22(t)dω=(|Ω|2/4)

[(π/γ){1+exp(-2γt)}

-(2π/γ)exp(-γt)exp(-γt)]

={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}が得られました。

[証明終わり] (注12-4終わり※)

この(2.130)の表式:

∫ρ22dω={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}には,

t→∞の極限の定常状態で∫ρ22dω={π|Ω|2/(4γ)}

になるという(2.124)の結果が,既に含まれています。

他方,(2.130)は,(2.125)の,∫BWdω=|Ω|2/2,

および,A=2γをも援用すると,π∫(BW/A)dω

=∫ρ22dω={π(∫BWdω)/A}{1-exp(-At)}

となり,第1章で,吸収と放出のアインシュタインの理論

で導かれ広帯域の結果(1.70):N2={NBW/(A+2BW)}

[1-exp{-(A+2BW)t}]の弱ビーム:BW<<Aの極限

のケースの表式と正確に一致することがわかります。

ただし,本節で導いた明快な結果はゼロ離調と弱ビームの

極限における励起度:ρ22=N2/Nの時間依存性を表わしている

に過ぎません。

より一般的ケースの解を求めるには光学Bloch方程式を数値

積分するのが,最も便利で有効な道です。

 

今回は,本節がここで終わるので,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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103. 電磁気学・光学」カテゴリの記事

コメント

思うところがあって、ヤングの実験についてQEDでどのように扱うかを知りたいと思い、貴ブログに至りました。
 よろしくお願い遺体増す

 さて、
「ホイヘンスの原理の正当性」
http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/huygens_8c9a.html
のところで、

最後の表示式でn'を-n'に変更した後,…

ψ(x,t)={A/(4π)}∫SdS'[{(x'n')/r'2+(Rn')/R2}
+(iω/c){(x'n')/r'+(Rn')/R}]
×(1/Rr')exp[-iω{t-(r'+R)/c}]

となっていますが、

∇’ψ(x',t')=∇’(A/r')exp{-iω(t'-r'/c}
=(Ax'/r')(-1/r'+iω/c)exp{-iω(t'-r'/c}

なので、+(Rn')/R → -(Rn')/R

ではないでしょうか?

ψ(x,t)={A/(4π)}∫SdS'[{(x'n')/r'2+(Rn')/R2}
+(iω/c){(x'n')/r'-(Rn')/R}]
×(1/Rr')exp[-iω{t-(r'+R)/c}]

この式は「ヤングの干渉実験(1)(古典論)」
http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/young1_b95b.html
でも使われています。

投稿: バク | 2019年12月 2日 (月) 04時32分

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