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2019年12月

2019年12月22日 (日)

温暖化ガス・原子力・ITなど諸刃の剣

まずは,私のブログの過去記事から,

2014年7/13の過去記事「雑感」で当時の脱法ハーブによる運転

事故についての感想を,長年ウツ病だった自分の身に置き換えて

人間のクスリに頼る精神の危うさと関連して書いたあと,最後に,

※まあ,私が心配しているのは,国益よりも,地球益の方です。

恐らくは霊長類の所業のせいでしょうが,異常気象や地殻変動

による天災の頻発。。

領土問題,経済問題などよりも,そもそも地球生命がもたない。。

私の生きているあと数年くらいは大丈夫でしょうし,私には子も

孫もいないけど,国境を越えて,砂漠化したところに植林でもして

ムダかもしれない抵抗をするしかないか。。

そういえば,市川海老蔵さんが奥様の勧めで植林活動をされてる

らしい。

 シリアスなことを言うのは私らしくないけど,今や自分の世話

ついてはどうしようもない状況で,ほぼ,自暴自棄になっている

ためか?逆に,他人の世話だとシリアスになるのが最近の自分の

傾向かもネ。

イツモのように自分の手は汚さない,無責任な感想・雑感です。

あまりシリアスに批判しないでね。(^^:)

と書きました。

その次は,2016年の2016年6/26の過去記事

「最近のニュース・雑感,(英国のEU脱退」について感想を書いた

では,追記として

※PS:6/28です。

久しぶりに市川海老蔵が植林活動をしいぇいるというニュースを

見ました。前にも彼が新妻の勧めでそれを始めたというニュース

を見たときにも書きましたが,私独自の見解では地球の異常気象

を見るに付け,もはや手遅れ,無駄な抵抗かも知れないのですが。。

 地球上で二酸化炭素を吸って酸素を出しているのは葉緑体を

持つ植物だけなのですから,今は伐採などやめて,みんなでセッセ

と植林,灌漑などをして砂漠を蘇らせるほどのことをするべき

なんです。共食いの戦争などしている場合じゃないと感じます。

自分を守らなければ攻撃され死んでしまう。という人々にとっては

戦うことは仕方ないとはいえますが。。

などと書きました。

小林麻央さんが34歳で亡くなられたのは,それから約1年後の

2017年6/22のことでした。2014年や2016年の麻央さんが

亡くなる前の市川海老蔵さんについて書いたのですが,現在は

市川団十郎さん,になったのかな。

というわけで,今スウェーデンの女子高生が世界に警告して

化石賞をもらっているような目先の経済的国益の方を重視して

いて,既に手遅れの状態を自覚もしていない米国と日本を見る

につけ,いろいろと,思っているわけです。

数年前,行方不明の子供を発見し英雄視された,

スーパーボランティアの方も彼女の行動に注目し,九州の海の方

でプラスチックゴミの回収をされているらしいですが,年齢に関係

なく,やはり目のつけどころが違う天才的感覚ですね。

こんなことを言うと,上から目線の自分も天才だと自画自賛している

ようにも見えますが,それはさておき,

2019年10/8の記事でも書きましたが.

年間800万トンの割合で世界の海に投棄されている,といわれる

プラスチックについて,2019年4/16のBBCニュースで

「プラスチックを消化分解する酵素,研究室で偶然作成

・米英チーム」というのがありました。

プラスチックを食べるバクテリアがあるというトピックです。

これは,元々日本で発見された自然環境に存在する細菌の研究

から偶然見つけたらしいです。

 実用化はもっと先でしょうが,日本ではヘドロや富栄養価などで

汚染された海や湖,河川などの水を浄化して復活させる技術が

前から実用化されています。

リチウム電池もそうですが,こういうのに着目して研究するのは

日本の科学の得意分野じゃないでしょうかかネ。

私は,森林や海草の光合成に頼らず,人工で光合成をさせる

という技術があることにも着目しています。

植林やプラスチックのゴミを拾うのでは焼け石に水だ,というなら,

「毒」をもって「毒」を制すしかない。つまり,

「科学=毒」でもあり,「クスリ=副作用」の諸刃の剣

(もろはのつるぎ)です。

既にプラスチックの買い物袋やストローなどを義務的に禁止

して違反には罰がある国が多い中で,禁止じゃなく有料化程度

使用しないことを推奨するに留まっている危機意識の乏しい

化石国が,わが日本です。

化石燃料を廃止することよりも経済活動を重視し,近未来よりも

目先の利益のみに投資する,消費税や年金の話もそうですが,

税の是非はともかく,制度の根本的見直しをせず,当座の借金が

増えても,今さえ乗り切ればと,何でもどんどん先送りして,自分

らが死後の若い世代に丸投げするという無責任な人々。

金も力もなく,他人の世話に頼らなきゃ生きられない死に損ない

オレはもう知らないヨ。

トランプがバカだとかウワサし,日本は先進国だとか,日本礼賛の

TV番組だとか,浮かれてる人多いけど,五十歩百歩。

ダイナマイトを発見して莫大な利益を得たノーベルが,その後の

兵器への利用拡大を,後悔してノーベル[賞を設立したこと。

ユダヤ人迫害で米国に逃れ,原爆開発でオッペンハイマーらと

協力したアインシュタインも後に後悔して,平和活動に邁進した

とか,枚挙に暇がないが,文明の利器は全て諸刃の剣です。

最初の利器である火は危ないが,何とか火事を起こさず

コントロールできるまでになりました。電気やガスも人が

コントロールできるようです。

しかし,トイレのないマンションと言われる原子力,これはいずれ

人類がコントロールできたとしても,100年早いです。

今の社会,もはやオーガニックに生活することは不可能で人の

労力以外のエネルギーは不可欠ですが,風力,太陽光などで

まかなう方向しかないだろうと思っています。

常温超伝導で電気を保存する道など,環境にやさしく100%

賄えるような方向の研究に,予算をかけるのはムダではない

と思うのですが。。

また,占星術と対して変わらないと思う,ただのデータの蓄積

であるに過ぎないAIなどへの過度の信仰も心配です。

占いよりもデータ蓄積能力が莫大で統計分析の演算スピードも

極端に速く学習能力もプログラムされてはいますが,ITも進化が

速すぎてコントロールが追いついてないという気がします。

1995年のWindows95でインターネットが盛んになってから,

まだ25年程度ですが,とてもアブナイ,オモチャだと感じます。

テレビであれば,日本じゃ1960年ころから,冷蔵庫や洗濯機,

電気釜,エアコンなど電化製品やエレベーター,エスカレーター

も60年くらいゆっくり進化して,人間がほぼコントロール

できています。

しかし,古いマンガですが,鉄人28号は「悪人」に操縦機を

取られると悪魔の兵器と化しました。

このIT技術も,ターミネーターじゃないですが,原子力と同じく

捨てるには惜しいモノですが危険極わりない,モノです。

40年以上前,大型コンピュータでのプログラマーもやる技術屋

として,上京し,就職した自分が言うのも何ですけどネ。

キャッシュレスだとか監視カメラとか浮かれていると.昔のナチス

のゲシュタポの密告,警察国家がレジスタンスを取り締まるという例

が適切かはわからないけど,プライバシーまで監視されて為政者

と,それと利権的にwinwinでグルであろう大企業などに,気づかぬ

うちに,あらゆる情報を握られると,為政者(本当の民主主義なら

国民自身だが)が,プラトンのいう「哲人」でないなら,便利さと

引き換えに自由を失なうことになりますヨ。

既に,顔認識とか位置情報とかを,どんどん収集され,大量の

監視カメラ(2億個?)がある,といわれている中国じゃ,便利さの

方が自由より上という価値観らしいから,既にそうなってるんじゃ

ないかな。まあ,大都市に住む支配的金余り,バク買い

漢民族ならそうでしょう。セキュリテイが必要なのは,金持ち,有

産階級ダケなのですから。。

江戸時代後期に,日本に無理やり黒船が開国を迫った

ような内政干渉ではありますが,今や国を超えて難民が避難

して来る今の時代。ジョンレノンがイマジンで言うように,

国境という概念を捨てり去れば,香港やウィグルが天安門

二の舞にならないかと,心配です。

。。

 

 

 

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2019年12月20日 (金)

光の量子論14

「光の量子論13」からの続きです。

(※余談):私の両親は父が明石市,母が和歌山市出身の

関西人ですが,私は岡山県倉敷市の出身です。

もっとも,東京に来たのが1977年で,故郷で暮らして

いた一浪までの18年は,はるか昔になりました。

 昔から「岡山県人は腹が黒い」とか,岩井志麻子のおかげ

で「岡山の男はヤギとセックスする。」とか悪口のたぐいが

多いようです。実際,隣の広島県人は芸能界でも甲子園でも

プロ野球でも大活躍で,男なら熱血漢と称される方が多い

ようですが,岡山県人は私もそうですが,何かに成功しても

失敗しても,「本気で,一所懸命に努力していると思われる

のが恥ずかしい。」などという,イヤミで屈折したところが

有る人多いような気がします。バカですネ。

とはいえ,渋野日向子チャンは岡山弁もかわいいと思います。

私は昔から市毛良枝さんが好きですが,2人は顔がよく似て

いるな?と思いました。最近,岡山は千鳥とかブルゾンとか

売れた芸人もいます。

スポーツなら,昔は星野,辰吉とかアブナイ選手,監督

がいたし,女子は有森以来,長距離強く天満屋もハンパない

ですね。(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.12

(ドプラー広がり)の項を記述して終わりました。

今回はその続きで,次の節からです。

 

  • 2.13 合成吸収線の形状,

衝突広がりの(2.132):1/τ0=(4d2N/V){π/(βM)}1/2

coll=1/τ0,β=1/(kT)と,ドプラー幅を与える(2.151)

の2Δ=2ω0{2kTln2/(Mc2)}1/2の両式を見ると,これらは,

実験的パラメータを調節すれば,衝突幅もドプラー幅もいくら

でも小さくできることが,明瞭に示されています。

これらの幅は,共に温度の平方根に比例し,衝突幅の方は

気体の密度,または,それと等価な気体圧にも比例しています。

こういうわけで,衝突広がりを圧力による広がり,と呼ぶ

こともあります。

 それ故,十分低温に保たれた気体放電を利用することにより,

原理的には放射による不可避な線幅しか持たない吸収線を観測

することが可能となります。気体圧力の調節によりドプラー幅

や放射幅に比して,衝突幅を相対的に変化させることができます。

線幅におけるドプラー効果,原子衝突と恐らくは放射も同程度

の寄与をする場合には,これら3つの過程から生じた合成曲線

の形を決めることが必要になります。

(※ ただし.入射ビームは弱く,飽和広がりは無視できると仮定

します。)

さて,規格化された曲線形関数F1(ω)とF2(ω)を別々に生じる

ような線の広がりを起こす2つの機構を合成することを考えます。

合成された曲線形は,F(ω)=∫F1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν

(2.155)と書けます。これは,「合成積」.または「たたみ込み積分:

と呼ばれるものです。ただし,ω0は2つの分布に共通する中心の

周波数です。

すなわち,減衰γ1があって波動関数がexp(-γ1t-iω0t)に

比例するような波動の寄与:f1(t)~∫F1(ω)exp(±iωt)dω

と,減衰γ2があって波動関数がexp(-γ2t-iω0t)に比例する

ような波動の寄与:f2(t)~∫F2(ω)exp(±iωt)dωの掛け算

として合成され,振動部分exp(-iω0t)は変わらず,減衰が和:

1+γ2)となる波動:exp{-(γ1+γ2)t-iω0t}に比例する

ものの寄与が,f1(t)×f2(t)exp(iω0t)

~∫F(ω)exp(±iωt)dωとなることを意味します。

※(注14-1):上記を説明します。

xの関数f(x)が,f(x)=∫―∞F(k)exp(ikx)dk

なるFourier(フーリエ)積分で表わせる場合,その逆変換として

関数F(k)はF(k)=(2π)-1―∞f(x)exp(-ikx)dxと

表わせます。このような相互変換をFourier変換と呼びます。

双方の表現の対称性を保つために,

f(x)=(2π)-1/2―∞F(k)exp(ikx)dk

⇔F(k)=(2π)-1/2―∞f(x)exp(-ikx)dxとして,

定係数を同じにするFourier変換の定義もあります。

以下の議論では,どちらでもいいのですが,便宜上前者の定義

を採用します。そして,この変換を示す汎関数を(関数の関数):

として,関数F=[f]が,関数fのFourier変換である,と

表記すれば便利です。

それでは,F=[f]:

つまり,F(k)=(2π)-1―∞f(x)exp(-ikx)dx,G=[g]

つまり,G(k)=(2π)-1―∞g(x)exp(-ikx)dxのとき,

積:F(k)×G(k)はどのような関数のFourier変換でしょうか?

単純にF(k)×G(k)=(2π)-2{∫―∞f(x)exp(-ikx)dx}

×{∫―∞g(y)exp(-iky)dy}と書けば,これの右辺

=(2π)-2―∞dx∫―∞dy[f(x)g(y)exp{-ik(x+y)}]

です。xはそのままで,yの積分でyをu=x+y ⇔ y=u―xと

変数置換すると,dy=duであり,

与式=(2π)-2―∞du∫―∞dx[f(x)g(u-x)exp(-iku)]

と書けます。

そこで,h(u)=(2π)-1―∞f(x)g(u-x)dxと置けば,

F(k)×G(k)=(2π)-1―∞h(u)exp(-iku)duを得ます。

したがって, (F・G)(k)=F(k)×G(k)と定義すると,

これはF・G=[h]を意味します。

uをxに置き換えたh(x)=(2π)-1―∞f(y)g(x-y)dy

なるxの関数hを(f*g)と表わして,fとgの「合成積」,または,

「たたみ込み積分」と呼びます。

これは、逆変換として,(f*g)(x)

=∫―∞{F(k)G(k)}exp(ikx)dkと書けることをも

意味します。

ここで,x→t,k→ -ωと変数置換して,Fourier変換を,

f(t)=∫―∞F(ω)exp(-iωt)dω,および,[f]

=F(ω)=(2π)-1―∞f(t)exp(iωt)dtと定義すれば,

合成積は(f*g)(t)=∫―∞f(τ)g(t-τ)dτ,および,,

(F*G)(ω)=∫―∞F(ν)g(ω-ν)dνとなり,

f(t)×g(t)=∫―∞(F*G)(ω)exp(-iωt)dω,

F(ω)×G(ω)=(2π)-1―∞(f*g)(t)exp(iωt)dt

が成立することになります。

以上から,F(ω)=∫―∞1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν

=(F1*F2)(ω+ω0)であり,これは,F1とF2の合成積:

(F1*F2)の引数が(ω+ω0)の値を意味します。

なお,これらはexp(iωt)を,exp(-iωt),cos(ωt)

または,sin(ωt)に変更しても,そのまま成立します。

ところで,以前の「光の量子論10」では,単一の気体原子

の電気双極子モーメントd(t)が,d(t)

=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

=-e[ρ21(t)X12exp(-iω0t)+ρ12(t)X21exp(iω0t)}

で,理論的に与えられることを記述しました。

それ故,前記事でドプラー広がりを除く最も一般的ケースで

得た光学Bloch方程式の解;(2.137)のtの関数としての密度

行列:ρ12(t)=-exp{-i(ω0-ω)t}

[(Ω/2)(ω0-ω-iγ^)/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2},

および,ρ21(t)=ρ12(t)を,上のd(t)の右辺に代入すると,

(t)={e2|X12|20/(2hc)}

[{(ω0-ω+iγ^)exp(-iωt)+(ω0-ω-iγ^)exp(iωt)}

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2} なる表式を得ます。

そして,対象とする気体の分極Pは,体積V,原子数Nに対し,

(t)=N(t)/V

=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(ω)exp(iωt)]

と書けます。ここに,χ(ω)は感受率で,χ(ω)

=χ’(ω)+iχ”(ω)

={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}(ω0-ω+iγ^)

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2} です。

特に,|Ω|<<γで,飽和広がりを無視し,γ^~γなら,

放射減衰γだけの寄与となり

d(t)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

[{(ω0-ω+iγ)exp(-iωt)+(ω0-ω-iγ)exp(iωt)}

/{(ω0-ω)2+γ2}となります。

再び,感受率をχ(ω)=χ’(ω)+iχ”(ω)と書くと,

χ”(ω)={πNe2|D12|2/(3ε0cV)}

×(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}であり,この場合,吸収係数は,

K(ω)=2ω/(cη)χ"(ω)

~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}F(ω),ただし,

(ω)=(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}(FLはLorentz型曲線)

と書けます。

つまり,分極P(t)=(1/2)ε00

×[χ(ω)exp(-iωt)+χ(ω)exp(iωt)]の虚部は,

(-i/2)ε00{χ”(ω)(exp(-iωt)-exp(iωt)]

=ε00χ”(ω)sin(ωt)で,これはF(ω)sin(ωt)に

比例します。

したがって,d(t)={e2|X12|20/(2hc)}f(t)で,

f(t)=∫―∞F(ω)exp(-iωt)dωと表わせる場合

には,P(t)の虚部はF(ω)sin(ωt)に比例することに

なります。

そこで,d1(t)={e2|X12|20/(2hc)}f1(t),および,

2(t)={e2|X12|20/(2hc)}f2(t)なる形であるとき,

1(t),f2(t)の周波数分布が,それぞれ,

1(t)=∫―∞1(ω)exp(-iωt)dω,

2(t)=∫―∞2(ω)exp(-iωt)dωと書ける

場合,その積はf1(t)×f2(t)

=∫―∞[(F1*F2)(ω)exp(-iωt)]dω

=∫―∞[(F1*F2)(ω+ω0)exp{-i(ω+ω0)t}]dω

=[∫―∞F(ω)exp(-iωt)dω]exp(-iω0t)

で与えられます。

したがって,f1(t)×f2(t)exp(iω0t)

=∫―∞F(ω)exp(-iωt)dωとなること,

ただし,F(ω)=∫―∞1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν

=(F1*F2)(ω+ω0)であること,が得られました。

(注14-1終わり※)

 言い換えると,積分F(ω)は,曲線形F1の各周波数成分

に,曲線形F2を生じる機構に特有な分布の広がりを付与

するものです。

明らかに,線幅を広げる機構がいくつあっても,(2.155):

F(ω)=∫―∞1(ν)F2(ω+ω0-ν)dνを反復適用

することによって,それらを合成できます。

最終の曲線形はそれらの寄与を合成する順序に無関係で

あり,(2.155)の積分値もF1とF2を交換しても不変である

ことに注意すべきです。

 実際,広がりの2つの原因が,それぞれ,幅2γ1と2γ2

持ったLorentz曲線形を生じるのであれば,それらを合成した

曲線もL0rentz型で,その幅は2γ=2γ2+2γ2.(2.156)と

なります。

前回記事の§2.11(衝突広がり)の最後の計算で,放射,飽和,

衝突による広がりを含む原子遷移の線幅は2(γ2+|Ω|2/2)1/2

を一般化した式:2{γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}1/2.(2.139)となり,

飽和広がりが無視できるなら(2.139)が.2γ^=2γ+2γcoll.

(2.140)に帰着する,と書きましたが,これは,一般的結果:

(2.156)の特別な場合と考えられます。

※(注14-2):上記の合成積が2γ=2γ2+2γ2.のLorentz

曲線になるという(2.156)の結果を直接計算で証明します。

[証明]:まず,G(ω)=∫―∞dν(γ1/π)(γ2/π)

/[{(ω1-ν)2+γ12}{(ω+ω2-ν)2+γ22}]を計算します。

証明対象の式であるF1(ω)=(γ1/π)/{(ω0-ω)2+γ12},

および,F2(ω)=(γ2/π)/{(ω0-ω)2+γ22}とした合成積:

F(ω)=∫―∞1(ν)F2(ω+ω0-ν)dνは,

F(ω)=∫―∞―∞dν(γ1/π)(γ2/π)

/[{(ω0-ν)2+γ12}{(ω0-ω-ω0+ν)2+γ22}]

=∫―∞―∞dν(γ1/π)(γ2/π)

/[{(ω0-ν)2+γ12}{(ω-ν)2+γ22}]となり,これは

G(ω)において,ω1=ω02=0としたものに相当します。

 さて,G(ω)を計算するため,2変数のFeynman積分公式:

1/(AB)=∫01dα/{Aα+B(1-α)}2を利用します。

すなわち,{π2/(γ1γ2)}G(ω)=∫01dα∫―∞dν

/{(ω1-ν)2α+γ12α+(ω+ω2-ν)2(1-α)+γ22(1-α)}2

=∫01dα∫―∞dν/[ν2-2{ω1α+(ω+ω2)(1-α)}ν

+(ω12+γ12)α+{(ω+ω2)2+γ22}(1-α)]2

です。

ここで,∫―∞dx/(x2+a2)2

=∫―π/2π/2(asec2θ/a4sec4θ)dθ

=1/(2a3)∫―π/2π/2よ{1+cos(2θ)}dθ=π/(2a3)

より,b>a2の前提で,∫―∞dx/(x2-2ax+b)2

=∫―∞dx/{(x-a)2+b-a2}2=π/(2(b-a2)3/2

を得ます。

それ故,積分変数をxからνに置換して,

a=ω1α+(ω+ω2)(1-α),および.

b=(ω12+γ12)α+|(ω+ω2)2+γ22}(1-α)と

置くと,b-a2=ω12α(1-α)+(ω+ω2)2α(1-α)

-2α(1-α)ω1(ω+ω2)+(γ12-γ22)α+γ22

=(ω1-ω2―ω)2α(1-α)+(γ12-γ22)α+γ22

となるので,Ω^=ω1-ω2-ωと置けば,b-a2

=Ω^2α(1-α)+(γ12-γ22)α+γ22となります。,

そこで,先の公式から、{π2/(γ1γ2)}G(ω)

=(π/2)∫01dα{Ω^2α(1-α)+(γ12-γ22)α+γ22}-3/2

=(πΩ^-3/2)∫01dα

22/Ω^2+{(Ω^2+γ12-γ22)/Ω^2}α-α2]-3/2

を得ます。

次に,この積分を具体的に計算するために,

P=∫01dα(C+Bα-α2)-3/2として,これを求めます。

こういうのは公式集でも見れば,スグわかるのですが,

どうしても初等的に導出不可能な場合を除き,そうした

公式もできるだけ自力で求めるという,学生時代からの

頑固なポリシイがあるので,やってみます。

「過去の知見をチェックせず信用してスルーして新しい

ことに向かわないからオマエは研究者向きでないのだ。」

と当時の先輩,同僚,教師たちから忠告されたこと多々

ありました。

しかし,大袈裟ですが,私は未だに「殺されても変えられ

ないことがある。」とか,「エゴ(自己利益)だけじゃ動かない。」

とかいう意固地貧乏な性格のまま人生終わりそうです。

さて,P=∫01dα(C+Bα-α2)-3/2

=∫01dα{(B2/4+C)-(α-B/2)2}-3/2ですから,

α-B/2=(B2/4+C)1/2sinθと置くと,

dα=(B2/4+C)1/2cosθdθです。

故に,P=(B2/4+C)-1θ1θ2sec2θdθ

=(B2/4+C)-1(tanθ2-tanθ1)となります。

ただし,sinθ1=(-B/2)/(B2/4+C)1/2,,

sinθ2=(1-B/2)/(B2/4+C)1/2,です。

tanθ=±sinθ/(1-sin2θ)1/2より,符号が正の分枝

を採用すると,tanθ1=(―B/2)/C1/2,かつ,,

tanθ2=(1-B/2)/(C+B-1)1/2の分枝なのでP

=(B2/4+C)-1{(1-B/2)/(C+B-1)1/2+(B/2)/C1/2}

です。これにC=γ22/Ω^2,B=(Ω^2+γ12-γ22)/Ω^2

代入して、C1/2=γ2/Ω^,(C+B-1)1/2=γ1/Ω^ですから

P=(B2/4+C)-1[(γ1+γ2)/(2Ω^γ1γ2){Ω^2+(γ1-γ2)2}

以下,詳細を略して,最終的に,

P={2Ω^31+γ2)/(γ1γ2)}/{Ω^2+(γ1+γ2)2}を

得ますが,{π2/(γ1γ2)}G(ω)=(πΩ^-3/2)Pなので,,

G(ω}={(γ1+γ2)/π}/{(ω1-ω2-ω)2+(γ1+γ2)2}

です。前述したように,F(ω)はG(ω)でω1=ω02=0

としたものですから,結局,F(ω)

={(γ1+γ2)/π}/{(ω0-ω)2+(γ1+γ2)2}を得ました。

[証明終わり]   (注14-2終わり※)

 次に,線幅をGauss型曲線に広げる機構が2つある場合には,,

合成された曲線がやはり,Gauss型となり,元の2つの曲線の

半値幅が2Δ1,2Δ2のとき,Δ2=Δ12+Δ22で与えられる半値幅:

2Δを持ちます。

※(注14-3):上記を証明します。

[証明]:前記事で書いたように,気体内で運動する全原子は,

ドプラー効果により吸収する光の周波数ωの分布は,Gauss分布

exp{-Mc2(ω-ω0)2/(2ω02T)}(c/ω0)dω.(2.149)で

与えられ,これの半値幅(全線幅)を2Δとすると,

2Δ=2ω0{2kTln2/(Mc2)}1/2(2.151)と表わされます。

Gauss曲線:Fは,

(ω)=(2π)-1(2δ2)-1/2exp{-(ω-ω0)2/(2δ2)}で定義され

-∞(ω)dω=1が満たされますが,上記ドプラ-・

シフトの曲線形は,これの,δ=ω0{2kT/(Mc2)}1/2

=Δ/(2ln2)1/2~Δ/1.18.(2.152)と置いたものに相当します。

そこで,Fj(ω)=(2πδj2)-1/2exp{-(ω-ω0)2/(2δj2)}

(j=1,2)として,F(ω)=∫―∞1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν

を計算します。

F(ω)=(2π)-12δ22)-1/2―∞[exp{-(ν-ω0)2/(2δ12)}

×exp{-(ω-ν)2/(2δ22)}dν

-(ν-ω0)2/(2δ12)-(ω-ν)2/(2δ22)

=-(1/2){(1/δ12+1/δ222-2(ω012+ω/δ22

+(ω0212+ω222)}

=-{1/(2δ12δ22)}[(δ12+δ222-2(ω0δ22+ωδ12

+(ω02δ22+ω2δ12)}=-A(ν-B)2+Cと書けば,

A=(δ12+δ22)/(2δ12δ22)},

B=(ω0δ22+ωδ12)/(δ12+δ22)

C={(ω0δ22+ωδ12)2-(ω02δ22+ω2δ12)(δ12+δ22)}

/[(2δ12δ22)(δ12+δ22)]

=-(ω0-ω)2/(2δ12+2δ22) です。

そこで,∫―∞exp{-A(ν-B)2+C}dν=(π/A)1/2exp(C)

={(2πδ12δ22)/(δ12+δ22)}1/2exp{-(ω0-ω)2/(2δ12+2δ22)}

ですから,F(ω)=[1/(2πδ1δ2)]

―∞exp{-A(ν-B)2+C}dν={2π(δ12+δ22)}-1/2

×exp{-(ω0-ω)2/(2δ12+2δ22)}を得ます。[証明終わり]

(注14-3終わり※)

1つの曲線形がLorentz型で,他方がGauss型の場合は,

より複雑な積分:F(ω)={γ/(2π3δ)1/2}

―∞[exp{-(ω-ν)2/(2δ2)}/{(ω0-ν)2+γ2}]dν

=[1/{(2π)1/2δ}]Re[W{(ω0-ω+iγ)/(2/2δ)]].(2.158)

となります。ただし,Wはある複素誤差関数の1種です。

この形はVolgt二地なんだ命名がなされています。

これは,δ→ 0の極限であるLorentz型とγ→ 0の極限で

あるGauss型の中間の形と言えます。

線幅を広げる過程は2つの広い範疇に分けることができて,

それらは相異なる定性的性質で特徴付けられ,また,2つの

基本的曲線形とも関連しています。その1つは遷移周波数を

定めるパラメータの値に統計的分布があるために,いくつか

違った周波数で,それぞれの原子が光を吸収,放出するような

線幅の広がりの原因を持つものです。このような線幅の広がる

過程は一般にGauss曲線形になります。

ドプラー広がりは,この範疇に属し,原子の速度が,それに

関連する統計的パラメータです。他の例は,局所的ひずみに

よるゆらぎが原子の遷移周波数のシフトを引き起こすような

結晶に埋もれた原子による発光のときに現われます。

これらの効果は不均一な広がりの機構の範疇に属します。

 一方,Lorentz曲線形は,光を吸収,放出する原子が,いずれも

残りの原子と同一である,均一な広がりの機構に現われます。

 例えば,放射や衝突による広がりの過程では.原理的に,ある

周波数の光を一群の特定原子に付随させる実験方法が存在する

ことはない,と言えます。

この場合の幅Δωは,原子放射が乱されない有限の平均時間

Δtが存在する結果として現われるものです。量子力学の

不確定性原理,or Fourier変換の性質によると,ΔωΔt≧1.

(2.159)であり,放射過程,衝突過程に対する陽な結果も,これと

一致します。

 

今回も本節がここで終わるので,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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2019年12月 8日 (日)

光の量子論13

※「光の量子論12」からの続きです。

(※余談):昨日(12/7(土))は,1学年年下ですが,全員69歳の障害者

友達2人に誘われて昼から都営新宿線住吉駅から健康な足で

徒歩4分(私は徒歩10分くらい)の「ティアラ江東」で開かれた江東区

の「第39回障害者福祉大会」というイベントに行ってきました。

(私,1985年から1994年まで塩浜や豊洲付近の運河のそばの

分譲マンション10階に9年間住んでいて,巣鴨に住む前は江東区民

だったので江東区に全く無縁というワケではありませんが。。)

最近は,近くの買い物と月1の病院以外は,ほぼ寝た切りに近い

ので現地まで行って3時間程度のイベントを見るだけなのですが,

身体がたえられるか少し心配でしたが,まあ,身体障害要介護2でも

なぜか要支援認定らしい「林家こん平」師匠よりは,ましな程度に

動けると思うので鑑賞だけなら大丈夫だろうということで,一応,

アフリカの太鼓とか歌や踊りとかを見て楽しめました。

ただ,39回も福祉をやっている割には会場も,まわりも階段が多く,

来年はパラリンピックもある,といいながら1995年のサリン事件

以来,警備,セキュリティに重きを置きすぎてるのか,来年に備えて

工事中段階とはいえ都内の駅には,ゴミ箱もベンチも少なく,足が

不自由な身にはバリアが多いのが気になりました。

「向こう3軒両隣り」とか「渡る世間に鬼はない」とかよりも

「ヒトを見たらドロボーと思え」「敷居またげば適ばかり」の

都会的思考の方が上にきて,99匹の健康な子羊を守るため,

迷える1匹の子羊などは,ほったらかしの,弱者にやさしくない

街つくりに向かっているようです。

オリンピックというと,多くの外国客への見栄で,ホームレス隠し

や,一時的に臭いモノにはフタをする,という,北京五輪や上海

万博時の中国や前の東京五輪時のわが国でもあった恥ずかしい

行為が,今回の東京オリ・パラでもあるカモしれない,と心配して

います。

最近の私は,自分は,スグにいなくなる世界なので関係ないクセに,

環境回復して,地球というか生命体の滅亡を遅らせるに役立つだろう

「人工光合成」や「プラスチックの分解,無害化」のバクテリアに興味

を持って調べています。(余談終わり※)

 

さて,本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.10

(放射減衰を伴なうRabi振動)の項の残りの部分を記述

して終わりました。

今回はその続き次の節からです。

  • 2.11衝突広がり

さて,§2.8,§2.9で論じた放射広がりと飽和広がりは,入射光

ビームで励起された原子遷移にとって避けられない性質でした。

それ以外の線幅を広げる機構の重要性は,原子気体の物理的

条件に左右されます。

このうち,原子の運動に起因する主要な効果は「衝突広がり」と,

「ドプラー(Doppler)広がり」の機構です。これらを本節と次節で

論じます。

まず,ここでは「衝突広がり」の機構を説明しますが.完全という

わけではなく,どうにか間に合う程度の詳しさで,そのプロセスを

考察します。原子気体における原子間衝突の発生は.一種の

確率過程(stochastic process)です。

「気体運動論」によると,原子が時刻τから,時刻τ+dτまでの

間に自由飛行を継続する確率はdτに比例し,それは,p(τ)dτ

=(1/τ0)exp(-τ/τ0)dτ.(2.131)で与えられると考えられます。

ただし,τ0は衝突なしで飛行する平均自由飛行時間で,これは

1/τ0=(4d2N/V){π/(βM)}1/2.(2,132)なる式で与えられる

ことがわかっています。(1/τ0)は衝突頻度(単位時間当りの衝突回数)

ここで,dは衝突する2原子の中心間距離(=衝突径数)であり.M

は気体の1原子の質量です。βはTを絶対温度kをBoltzmann定数

して,β=1/kTを意味します。

※(注13-1):これらの根拠を説明します。

まず,時刻:に自由飛行していた1個の原子が時刻τ+dτに衝突

せずに自由飛行で残っている確率は,(1-dτ/τ0)倍となります。

そこで,時刻τに自由運動している原子の個数をN^(τ)とすると,

その変化は,dN^=N^(τ+dτ)-N^(τ)=-(dτ/τ0)N^(τ)を

満足します。そこで,これを積分するとN^(τ)=N^(0)exp(-τ/τ0)

です。

気体原子総数をNとして,時刻τに衝突せず残っている確率p(τ)は,

p(τ)=N^(τ)/Nで与えられ,∫0N^(τ)dτ=N,or ∫0p(τ)dτ

=1となる規格化条件により,指数分布:p(τ)=(1/τ0)exp(-τ/τ0)

が得られ,飛行時間τの平均は,確かに,<τ>=­∫τp(τ)dτ=τ0

となります。そして,次に.この平均自由飛行時間τ0を評価します。

対象の気体を構成する気体原子(分子)の数密度をn=N/Vとする

とき,ある1原子(分子)が自由直線運動で長さLを通過する間に,

それと衝突することが可能な距離が衝突径数dであり,これを半径

として長さがLの体積:πd2Lの円筒内にあるの原子(分子)数は

nπd2Lなので,この1原子の,この間の衝突回数がnπd2Lに等しい

ことになります。

この原子(分子)の平均速度を<v>とすると,その飛行時間がτなら,

平均飛行距離は,L=<v>τです。

そこで,平均衝突回数:nπd2L=nπd2<v>τが丁度1となる

飛行時間をτ=τ0と定義すれば,τ0=1/(nπd2<v>),または,

1/τ0=nπd2<v>が成立します。

このとき,L0=<v>τ0とすると,これは1原子(分子)が全く衝突

せずに飛行できる平均距離を示しているので平均自由行程と

呼ばれます。ところが.希薄な気体分子(原子)は.Maxwellの速度

分布:f()d3={M/(2πkT)}3/2exp(―M2/2kT)d3に従う

ことがわかっているため,平均速度の大きさ<v>は,f()が速度

空間で球対称故,>=∫0vf()v2dv/∫0vf()v2dvなる計算式

から得ることができます、このf()に,上のMaxwell分布式を代入

すれば,結局,<v>=(8kT/πM)1/2={(8/(πβM)}1/2

が得られます。

ただし,厳密には同じ質量Mの原子の2体衝突なので,1個の質量M

ではなく,これを相対運動の換算質量M=M/2に置換する必要

があり,>={8/(πβM)}1/2=4/(πβM)1/2が正しい評価式です。

これによって1/τ0=nπd2<v>=4d2n/{π/(βM)}1/2(n=N/V)

という求める表式が得られました。

以下では,上の計算で実際に<>={8/(πβM)}1/2

=4/(πβM)1/2が得られる,数学的根拠を示しておきます。

まず,速度ベクトルの極座標表示を(v,θ,φ)(v=||)として

に対する確率密度が,p()=Cf(v,θ,φ)で与えられる場合を

考えます。確率密度の満たすべき条件:∫p()d3=1により,

規格化定数:Cは,C=1/[∫f(v,θ,φ)v2dv(sinθ)dθdφ]で

与えられます。特にfが球対称でf(v,θ,φ)=f(v)と表わせる場合,

規格化定数は,C-1=∫f(v,θ,φ)sinθv2dvdθdφ

=4π∫0f(v)v2dvで決まります。

この場合,速度の大きさ:v=||の平均値は,

<v>=<||>=∫vp(v)d3vで与えられますが,

これは,<v>=C∫vf(r,θ,φ)v2dv(sinθ)dθdφ

=4π∫0{vf(v)}v2dv/{4π∫0f(v)v2dv}

=∫03f(v)dr/{∫02f(r)dr}

で得られることになります。

そこで,f(v)=Cexp(-αv2)と表わされる場合には,

<v>=∫03exp(-αv2)dv/∫02exp(-αv2)dvと

なります。後は分子,分母の指数関数を含む積分の評価だけです。

まず.I(α)=∫0exp(-αx2)dxと置くと,Gauss分布の積分

公式から,I(α)=(1/2)(π/α)1/2です。

これから,-dI/dα=∫02exp(-αx2)dx=(1/4)π1/2α-3/2

を得ます。

一方,J(α)=∫0xexp(-αx2)dxとして,これを求めます。

u=αx2と変数置換すると,du=αxdxより,

J(α)=∫0xexp(-αx2)dx

=(1/2)α-10exp(-u)du=(1/2)α-1となります。

そこで,I(α)の場合と同じく両辺をαで微分すると,

-dJ/dα=∫03exp(-αx2)dx=(1/2)α-2を得ます。

以上から,<v>=∫03exp(-αv2)dv

/{∫02exp(-αv2)dv=(1/2)α-2/{(1/4)π1/2α-3/2}

=2(πα)-1/2となることがわかりました。

これに,Maxwell速度分布:f()d3={M/(2πkT)}3/2

exp(―M2/2kT)d3を適用するために,

(v)=exp(-αv2),α=M/(2kT),(M=M/2)を

代入することから,<v>=2(πα)-1/2=(8kT/πM)1/2

=4/(πβM)1/2が得られました。

したがって,結局,自由飛行時間τ0の求める表式,

1/τ0=nπd2<v>=4d2n/{π/(βM)}1/2が得られました。

(注13-1終わり※)

 

さて,原子のエネルギー準位と波動関数に及ぼす衝突の

効果は甚だ複雑です。

衝突する2原子の相互作用によって,エネルギー準位が衝突期間

中にシフトし,波動関数は非摂動原子の波動関数の,ある1次結合

になります。衝突している期間が十分短かいなら,その期間内の

光の吸収,放出は無視できます。そこで,以下では,衝突期間は

平均自由飛行時間τ0に比較して,極く短かいと仮定します。

衝突には,「非弾性衝突」i.e.原子の状態があるエネルギー

準位から,他のエネル.ギー準位に変化するものがあります。

この効果は,原子占位数の減衰の速さを,もう1つ補うこと

で表わされ.光学Bloch方程式には,放射による減衰速度γの

他に,衝突による減衰速度を適当に加えた形で現われるもの

があります。

一方,「弾性衝突」では,原子は前と同じエネルギー準位に

留まり,その効果は原子波動関数の位相(phase)を変える

だけです。これはフェイズシフト(phase-shift)と呼ばれます。

 

波動関数:Ψ(,t)=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)

の係数:C1とC2の位相が変われば,原子密度行列:ρij=Cij

のρ12=C12とρ21=C21は変化しますが,対角要素である

ρ11=C11=|C1|2と,ρ22=C22=|C2|2は変化しません。

かくして,弾性的位相遮断衝突で(2.115)の,dρ12/dt

=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12には,減衰

速度が余分に入り込みますが,対角要素の方程式(2.114)の,

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22,の方は不変です。

これらは,広範囲の物理的状況に対して線幅を広げる際だった

効果を及ぼし,また,第3章の時間に依存する光の性質の議論では

非常に便利なモデルを提供してくれます。

ここで,弾性衝突による非対角要素の減衰効果をγcollと記すこと

にします。この量は,明らかに衝突頻度:1/τ0に比例し,§3.3で,

実際にγcoll=1/τ0.(2.133)となることを示しますが,これと類似の

関係:2γ=A21=1/τ0.(2.102)との間には因子2の違いがあること

には注意が必要です。

なお,以下では,衝突広がりの話は弾性衝突に限ることにします。

すると,光学Bloch方程式:(2.115)は,次のように修正されます。

つまり,dρ12/dt=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)

-γ^ρ12.(2.134)です。γ^=γ+γcoll..(2.135)です。

この結果,以前「光の量子論11」で求めた定常状態の式

(2.119)のρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2},

および,(2.120)のρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ^2+|Ω|2/2}

は,ρ22={(γ^/γ)|Ω|2/4}

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}.(2.136),および,

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}[(Ω/2)ω0-ω-iγ^)

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}(2.137)に一般化

されます。

 

※(注13-2);上記を証明します。

[証明]:前の(注11-1)での(2.119)(2.120)の証明と同じく,

ρ1221を,ρ~12=exp{i(ω0-ω)t}ρ12,

ρ~21=]exp{-i(ω0-ω)t}ρ21と置換して振動型因子を消去

した3方程式系から出発します。前は.

dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ~12+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22.

dρ~12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ~12-i(ω0-ω)ρ~12,

dρ~21/dt=(-iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ~21+i(ω0-ω)ρ~21

でしたが,これらが下の2つでは,γをγ^に変更した方程式系:

ρ22/dt=(-iΩ/2)ρ~12+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22,

dρ~12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γ^ρ~12-i(ω0-ω)ρ~12,

dρ~21/dt=(-iΩ/2)(1-2ρ22)-γ^ρ~21+i(ω0-ω)ρ~21

に修正されます。

定常状態では.これら3方程式の左辺の変化速度を全てゼロと置き,

前の(注11-1)の証明と同じ道をたどって,修正しようと思います。

まず,dρ22/dt=0から,ρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~21}

(実数)を得ます。これは前と同じです。

一方,dρ~12/dt=0,または,ρ~21/dt=0より

(-Ω/2)(1-2ρ22)=(ω0-ω-iγ^)ρ~21

(Ω/2)(1-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ^)ρ~12,

または,(|Ω|2/2)(1-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ^)Ωρ~12

です。

ここで,Ωρ~12=a+ib(a,bは実数)と置くと,

(|Ω|2/2)(1-2ρ22)=-a(ω0-ω)+bγ^,かつ,

0=-b(ω0-ω)―aγ^を得るため,

a=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[(ω0-ω)/{(ω0-ω)2+γ^2}],

かつ,b=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[-γ/{(ω0-ω)2+γ^2}],

です。これから,前には,いくつかの計算手続きの結果として,.

Ωρ~12-Ωρ~12=2ib=i|Ω|2(1-2ρ22)

×[γ/{(ω0-ω)2+γ2}],を得ましたが,今回の修正では,

これが,Ωρ~12-Ωρ~12=2ib

=i|Ω|2(1-2ρ22)[γ^/{(ω0-ω)2+γ^2}]に変わります。

これを最初の式:ρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~12}

に代入すれば,4iγρ22=iγ^|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ^2}

-2iγ^ρ22|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ^2}となるため,

4iγρ22{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}/{(ω0-ω)2+γ^2}

=iγ^|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ^2}を得ます。

それ故,ρ22={(γ^/γ)|Ω|2/4}

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}が得られます。

よって,1-2ρ22

={(ω0-ω)2+γ^2}/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}

ですから,Ωρ~12=(-|Ω|2/2)(1-2ρ22)

×[(ω0-ω-iγ^)/{(ω0-ω)2+γ^2}]

=(-|Ω|2/2)(ω0-ω-iγ^)

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}です。

故に,ρ~12=(-Ω/2)(ω0-ω-iγ^)

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}ですから,

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}[(Ω/2)(ω0-ω-iγ^)

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}も得られます。

[証明終わり] (注13-2終わり※)

 

ここまでくれば,感受率χを導出し直すのは簡単であり,

(2.122)のχ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}]

の一般化は,χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ^)/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}]

(2.138) になることがわかります。

こうして,放射,飽和,衝突による広がりを含む原子遷移の

線幅は,(2.123)の2(γ2+|Ω|2/2)1/2を一般化した表式:,

2{γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}1/2.(2.139)となります。

 

今後のほとんどでは.飽和広がりが無視できて,上の(2.139)

が.2γ^=2γ+2γcoll.(2.140)に帰着するような,かなり弱い

ビームについてのみ議論します。

 この場合,吸収線の形はLorentz型であり,幅は放射による寄与

と衝突による寄与を単に加えることで得られます。

衝突時間τ0の典型的な値は室温で10 5 Pascalの圧力に相当する

気体密において,τ0 ~3×10 -11s.(2.141) です。

この値に対する衝突による線幅:2γcoll=τ0-1×2 ~ 6.7×10 10 s-1

は,(2.57)の角周波数の線幅:2γ=A21 ~ 6×10 8-1のAの大きさ

から導かれる周波数の自然線幅:Δf=Δω/(2π)~10 8 Hzという,

放射による線幅の,約100倍で与えられます。

 

  • 2.12 Doppler(ドプラー)広がり

気体内の原子の速度には,ある広がりがあるので,原子が吸収,

放出できる光の周波数にはドプラー効果を通じて,それに対応

したある分布が生じます。当面は,線幅を広げる他の原因を全て

無視し,z軸に平行に伝播する角周波数ωの光の吸収を考察します。

 低い準位E1にある原子の速度が1であるとき,光:hcωを吸収

して高い準位:E2に上がります。を,大きさがk=ω/cでzに

向かうベクトルとすると.その光の運動量は=hcであり,E2

おける原子の速度はv2となります。

原子質量をMとすると,M1+hc=M2.(2.142).かつ,

1+(1/2)M12+hcω=E2+(1/2)M22.(2.143)です。

特に,v1=0,2=0のケースの光子周波数をω0とすると,

cω0=E2-E1.(2.144)です。.

故に,hcω0=hcω+(M/2)(1222)です。

一方,(2.142)から21+(hc/M)なので,

22={1+(hc/M)}212+hc22/M2+2hc1/M

なので,すぐ前の式に代入すると2が消去されて,

cω0=hcω-hc1-hc22/(2M).(2.145)となります。

ところが,kはz軸に平行でk=||=ω/cなので,

1=v1(ω/c)であり,hc22=hc2ω2/c2です。

したがって,ω0=ω-(v1z/c)ω-hcω2/(2Mc2)

(2.146)を得ます。

この右辺の量の代表的な大きさのオーダーは,v1z/c

~10 -5より,hcω/(2Mc2)~10 -9.(2.147)ですから,

ωとω0の差は僅かで,右辺最後の項は無視できるため,

ω=ω0/{1-(v1z/c)}~ ω0{1+(v1z/c)}.(2.148)

という形になります。

(※ つまり,v1z ~c(ω-ω0)/ω0です。)

すなわち,この光は周波数ωが原子の初速に応じた

ドプラー・シフトだけ,ω0からずれている場合に限り,吸収可能

であることを示しています。

したがって,気体内の全原子の吸収する光の周波数ωの分布は,

まず,原子速度のz成分がvとv+dvの間にある相対確率

が,絶対温度がTのとき,Maxwellの速度分布則により,

exp{-Mv2/(2kT)}dvとなるため,これにv=c(ω-ω0)

を代入することによってexp{-Mc2(ω-ω0)2/(2ω02T)}

×(c/ω0)dω.(2.149)で与えられることがわかります。

 

この吸収光の周波数分布はGauss型曲線として知られています。

Gauss曲線のピークはω=ω0にありますが,この曲線では,

exp{-Mc2(ω-ω0)2/(2ω02T)}=1/2.(2.150)を満たす

周波数のところ,つまり,ω=ω0±ω0{2kTln2/(Mc2)}1/2

のとき,強度が最大値の半分になります。。

 よって,この半値幅:2Δがドプラー広がりの全幅ですが,これ

は,2Δ=2ω0{2kTln2/(Mc2)}1/2.(2.151)と表わされます。

この幅は,一般のGauss分布の平均2乗幅:δを用いて表わす

こともできます。すなわち,δとΔの関係が,同じオーダーで

δ=ω0{2kT/(Mc2)}1/2=Δ/(2ln2)1/2~Δ/1.18.(2.152)と

表わせます。

すぐ前の衝突広がりの節では,幅が2γcollで,これを衝突頻度

で,γcoll=τ0-1と表わすとき,2.141)のτ0 ~3×10 -11sを得た

のと同じく,ドプラー広がりの幅のパラメータもΔ=τ0-1として

評価した場合,ドプラー幅は,ほぼ,衝突幅に等しいと評価されます。

Gauss曲線は,F(ω)=(2πδ2)-1/2exp{-(ω-ω0)2/(2δ2)}

(2.153)で定義されますが,このとき,∫-∞(ω)dω=1(2.154)

が満足されます。

これに対して,前の放射広がりや衝突広がりで現われた周波数

分布の形状のLorentz型曲線は,F(ω)=(γ/π)/{(ω-ω0)2+γ2}

で定義されますが,これも∫-∞(ω)dω=1の条件を満たすよう

に係数が決められています。

 

今回も§2.12がここで終わるので,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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