光の量子論14
「光の量子論13」からの続きです。
(※余談):私の両親は父が明石市,母が和歌山市出身の
関西人ですが,私は岡山県倉敷市の出身です。
もっとも,東京に来たのが1977年で,故郷で暮らして
いた一浪までの18年は,はるか昔になりました。
昔から「岡山県人は腹が黒い」とか,岩井志麻子のおかげ
で「岡山の男はヤギとセックスする。」とか悪口のたぐいが
多いようです。実際,隣の広島県人は芸能界でも甲子園でも
プロ野球でも大活躍で,男なら熱血漢と称される方が多い
ようですが,岡山県人は私もそうですが,何かに成功しても
失敗しても,「本気で,一所懸命に努力していると思われる
のが恥ずかしい。」などという,イヤミで屈折したところが
有る人多いような気がします。バカですネ。
とはいえ,渋野日向子チャンは岡山弁もかわいいと思います。
私は昔から市毛良枝さんが好きですが,2人は顔がよく似て
いるな?と思いました。最近,岡山は千鳥とかブルゾンとか
売れた芸人もいます。
スポーツなら,昔は星野,辰吉とかアブナイ選手,監督
がいたし,女子は有森以来,長距離強く天満屋もハンパない
ですね。(余談終わり※)
さて本題です。
前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.12
(ドプラー広がり)の項を記述して終わりました。
今回はその続きで,次の節からです。
- 2.13 合成吸収線の形状,
衝突広がりの(2.132):1/τ0=(4d2N/V){π/(βM)}1/2
,γcoll=1/τ0,β=1/(kBT)と,ドプラー幅を与える(2.151)
の2Δ=2ω0{2kBTln2/(Mc2)}1/2の両式を見ると,これらは,
実験的パラメータを調節すれば,衝突幅もドプラー幅もいくら
でも小さくできることが,明瞭に示されています。
これらの幅は,共に温度の平方根に比例し,衝突幅の方は
気体の密度,または,それと等価な気体圧にも比例しています。
こういうわけで,衝突広がりを圧力による広がり,と呼ぶ
こともあります。
それ故,十分低温に保たれた気体放電を利用することにより,
原理的には放射による不可避な線幅しか持たない吸収線を観測
することが可能となります。気体圧力の調節によりドプラー幅
や放射幅に比して,衝突幅を相対的に変化させることができます。
線幅におけるドプラー効果,原子衝突と恐らくは放射も同程度
の寄与をする場合には,これら3つの過程から生じた合成曲線
の形を決めることが必要になります。
(※ ただし.入射ビームは弱く,飽和広がりは無視できると仮定
します。)
さて,規格化された曲線形関数F1(ω)とF2(ω)を別々に生じる
ような線の広がりを起こす2つの機構を合成することを考えます。
合成された曲線形は,F(ω)=∫F1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν
(2.155)と書けます。これは,「合成積」.または「たたみ込み積分:
と呼ばれるものです。ただし,ω0は2つの分布に共通する中心の
周波数です。
すなわち,減衰γ1があって波動関数がexp(-γ1t-iω0t)に
比例するような波動の寄与:f1(t)~∫F1(ω)exp(±iωt)dω
と,減衰γ2があって波動関数がexp(-γ2t-iω0t)に比例する
ような波動の寄与:f2(t)~∫F2(ω)exp(±iωt)dωの掛け算
として合成され,振動部分exp(-iω0t)は変わらず,減衰が和:
(γ1+γ2)となる波動:exp{-(γ1+γ2)t-iω0t}に比例する
ものの寄与が,f1(t)×f2(t)exp(iω0t)
~∫F(ω)exp(±iωt)dωとなることを意味します。
※(注14-1):上記を説明します。
xの関数f(x)が,f(x)=∫―∞∞F(k)exp(ikx)dk
なるFourier(フーリエ)積分で表わせる場合,その逆変換として
関数F(k)はF(k)=(2π)-1∫―∞∞f(x)exp(-ikx)dxと
表わせます。このような相互変換をFourier変換と呼びます。
双方の表現の対称性を保つために,
f(x)=(2π)-1/2∫―∞∞F(k)exp(ikx)dk
⇔F(k)=(2π)-1/2∫―∞∞f(x)exp(-ikx)dxとして,
定係数を同じにするFourier変換の定義もあります。
以下の議論では,どちらでもいいのですが,便宜上前者の定義
を採用します。そして,この変換を示す汎関数を(関数の関数):
Fとして,関数F=F[f]が,関数fのFourier変換である,と
表記すれば便利です。
それでは,F=F[f]:
つまり,F(k)=(2π)-1∫―∞∞f(x)exp(-ikx)dx,G=F[g]
つまり,G(k)=(2π)-1∫―∞∞g(x)exp(-ikx)dxのとき,
積:F(k)×G(k)はどのような関数のFourier変換でしょうか?
単純にF(k)×G(k)=(2π)-2{∫―∞∞f(x)exp(-ikx)dx}
×{∫―∞∞g(y)exp(-iky)dy}と書けば,これの右辺
=(2π)-2∫―∞∞dx∫―∞∞dy[f(x)g(y)exp{-ik(x+y)}]
です。xはそのままで,yの積分でyをu=x+y ⇔ y=u―xと
変数置換すると,dy=duであり,
与式=(2π)-2∫―∞∞du∫―∞∞dx[f(x)g(u-x)exp(-iku)]
と書けます。
そこで,h(u)=(2π)-1∫―∞∞f(x)g(u-x)dxと置けば,
F(k)×G(k)=(2π)-1∫―∞∞h(u)exp(-iku)duを得ます。
したがって, (F・G)(k)=F(k)×G(k)と定義すると,
これはF・G=F[h]を意味します。
uをxに置き換えたh(x)=(2π)-1∫―∞∞f(y)g(x-y)dy
なるxの関数hを(f*g)と表わして,fとgの「合成積」,または,
「たたみ込み積分」と呼びます。
これは、逆変換として,(f*g)(x)
=∫―∞∞{F(k)G(k)}exp(ikx)dkと書けることをも
意味します。
ここで,x→t,k→ -ωと変数置換して,Fourier変換を,
f(t)=∫―∞∞F(ω)exp(-iωt)dω,および,F[f]
=F(ω)=(2π)-1∫―∞∞f(t)exp(iωt)dtと定義すれば,
合成積は(f*g)(t)=∫―∞∞f(τ)g(t-τ)dτ,および,,
(F*G)(ω)=∫―∞∞F(ν)g(ω-ν)dνとなり,
f(t)×g(t)=∫―∞∞(F*G)(ω)exp(-iωt)dω,
F(ω)×G(ω)=(2π)-1∫―∞∞(f*g)(t)exp(iωt)dt
が成立することになります。
以上から,F(ω)=∫―∞∞F1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν
=(F1*F2)(ω+ω0)であり,これは,F1とF2の合成積:
(F1*F2)の引数が(ω+ω0)の値を意味します。
なお,これらはexp(iωt)を,exp(-iωt),cos(ωt)
または,sin(ωt)に変更しても,そのまま成立します。
ところで,以前の「光の量子論10」では,単一の気体原子
の電気双極子モーメントd(t)が,d(t)
=-e{C1*C2X12exp(-iω0t)+C2*C1X21exp(iω0t)}
=-e[ρ21(t)X12exp(-iω0t)+ρ12(t)X21exp(iω0t)}
で,理論的に与えられることを記述しました。
それ故,前記事でドプラー広がりを除く最も一般的ケースで
得た光学Bloch方程式の解;(2.137)のtの関数としての密度
行列:ρ12(t)=-exp{-i(ω0-ω)t}
[(Ω/2)(ω0-ω-iγ^)/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2},
および,ρ21(t)=ρ12*(t)を,上のd(t)の右辺に代入すると,
d(t)={e2|X12|2E0/(2hc)}
[{(ω0-ω+iγ^)exp(-iωt)+(ω0-ω-iγ^)exp(iωt)}
/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2} なる表式を得ます。
そして,対象とする気体の分極Pは,体積V,原子数Nに対し,
P(t)=Nd(t)/V
=(1/2)ε0E0{χ(ω)exp(-iωt)+χ*(ω)exp(iωt)]
と書けます。ここに,χ(ω)は感受率で,χ(ω)
=χ’(ω)+iχ”(ω)
={Ne2|D12|2/(3ε0hcV)}(ω0-ω+iγ^)
/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2} です。
特に,|Ω|<<γで,飽和広がりを無視し,γ^~γなら,
放射減衰γだけの寄与となり
d(t)={Ne2|D12|2/(3ε0hcV)}
[{(ω0-ω+iγ)exp(-iωt)+(ω0-ω-iγ)exp(iωt)}
/{(ω0-ω)2+γ2}となります。
再び,感受率をχ(ω)=χ’(ω)+iχ”(ω)と書くと,
χ”(ω)={πNe2|D12|2/(3ε0hcV)}
×(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}であり,この場合,吸収係数は,
K(ω)=2ω/(cη)χ"(ω)
~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0hccV)}FL(ω),ただし,
FL(ω)=(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}(FLはLorentz型曲線)
と書けます。
つまり,分極P(t)=(1/2)ε0E0
×[χ(ω)exp(-iωt)+χ*(ω)exp(iωt)]の虚部は,
(-i/2)ε0E0{χ”(ω)(exp(-iωt)-exp(iωt)]
=ε0E0χ”(ω)sin(ωt)で,これはFL(ω)sin(ωt)に
比例します。
したがって,d(t)={e2|X12|2E0/(2hc)}f(t)で,
f(t)=∫―∞∞F(ω)exp(-iωt)dωと表わせる場合
には,P(t)の虚部はF(ω)sin(ωt)に比例することに
なります。
そこで,d1(t)={e2|X12|2E0/(2hc)}f1(t),および,
d2(t)={e2|X12|2E0/(2hc)}f2(t)なる形であるとき,
f1(t),f2(t)の周波数分布が,それぞれ,
f1(t)=∫―∞∞F1(ω)exp(-iωt)dω,
f2(t)=∫―∞∞F2(ω)exp(-iωt)dωと書ける
場合,その積はf1(t)×f2(t)
=∫―∞∞[(F1*F2)(ω)exp(-iωt)]dω
=∫―∞∞[(F1*F2)(ω+ω0)exp{-i(ω+ω0)t}]dω
=[∫―∞∞F(ω)exp(-iωt)dω]exp(-iω0t)
で与えられます。
したがって,f1(t)×f2(t)exp(iω0t)
=∫―∞∞F(ω)exp(-iωt)dωとなること,
ただし,F(ω)=∫―∞∞F1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν
=(F1*F2)(ω+ω0)であること,が得られました。
(注14-1終わり※)
言い換えると,積分F(ω)は,曲線形F1の各周波数成分
に,曲線形F2を生じる機構に特有な分布の広がりを付与
するものです。
明らかに,線幅を広げる機構がいくつあっても,(2.155):
F(ω)=∫―∞∞F1(ν)F2(ω+ω0-ν)dνを反復適用
することによって,それらを合成できます。
最終の曲線形はそれらの寄与を合成する順序に無関係で
あり,(2.155)の積分値もF1とF2を交換しても不変である
ことに注意すべきです。
実際,広がりの2つの原因が,それぞれ,幅2γ1と2γ2を
持ったLorentz曲線形を生じるのであれば,それらを合成した
曲線もL0rentz型で,その幅は2γ=2γ2+2γ2.(2.156)と
なります。
前回記事の§2.11(衝突広がり)の最後の計算で,放射,飽和,
衝突による広がりを含む原子遷移の線幅は2(γ2+|Ω|2/2)1/2
を一般化した式:2{γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}1/2.(2.139)となり,
飽和広がりが無視できるなら(2.139)が.2γ^=2γ+2γcoll.
(2.140)に帰着する,と書きましたが,これは,一般的結果:
(2.156)の特別な場合と考えられます。
※(注14-2):上記の合成積が2γ=2γ2+2γ2.のLorentz
曲線になるという(2.156)の結果を直接計算で証明します。
[証明]:まず,G(ω)=∫―∞∞dν(γ1/π)(γ2/π)
/[{(ω1-ν)2+γ12}{(ω+ω2-ν)2+γ22}]を計算します。
証明対象の式であるF1(ω)=(γ1/π)/{(ω0-ω)2+γ12},
および,F2(ω)=(γ2/π)/{(ω0-ω)2+γ22}とした合成積:
F(ω)=∫―∞∞F1(ν)F2(ω+ω0-ν)dνは,
F(ω)=∫―∞∞∫―∞∞dν(γ1/π)(γ2/π)
/[{(ω0-ν)2+γ12}{(ω0-ω-ω0+ν)2+γ22}]
=∫―∞∞∫―∞∞dν(γ1/π)(γ2/π)
/[{(ω0-ν)2+γ12}{(ω-ν)2+γ22}]となり,これは
G(ω)において,ω1=ω0,ω2=0としたものに相当します。
さて,G(ω)を計算するため,2変数のFeynman積分公式:
1/(AB)=∫01dα/{Aα+B(1-α)}2を利用します。
すなわち,{π2/(γ1γ2)}G(ω)=∫01dα∫―∞∞dν
/{(ω1-ν)2α+γ12α+(ω+ω2-ν)2(1-α)+γ22(1-α)}2
=∫01dα∫―∞∞dν/[ν2-2{ω1α+(ω+ω2)(1-α)}ν
+(ω12+γ12)α+{(ω+ω2)2+γ22}(1-α)]2
です。
ここで,∫―∞∞dx/(x2+a2)2
=∫―π/2π/2(asec2θ/a4sec4θ)dθ
=1/(2a3)∫―π/2π/2よ{1+cos(2θ)}dθ=π/(2a3)
より,b>a2の前提で,∫―∞∞dx/(x2-2ax+b)2
=∫―∞∞dx/{(x-a)2+b-a2}2=π/(2(b-a2)3/2
を得ます。
それ故,積分変数をxからνに置換して,
a=ω1α+(ω+ω2)(1-α),および.
b=(ω12+γ12)α+|(ω+ω2)2+γ22}(1-α)と
置くと,b-a2=ω12α(1-α)+(ω+ω2)2α(1-α)
-2α(1-α)ω1(ω+ω2)+(γ12-γ22)α+γ22
=(ω1-ω2―ω)2α(1-α)+(γ12-γ22)α+γ22
となるので,Ω^=ω1-ω2-ωと置けば,b-a2
=Ω^2α(1-α)+(γ12-γ22)α+γ22となります。,
そこで,先の公式から、{π2/(γ1γ2)}G(ω)
=(π/2)∫01dα{Ω^2α(1-α)+(γ12-γ22)α+γ22}-3/2
=(πΩ^-3/2)∫01dα
[γ22/Ω^2+{(Ω^2+γ12-γ22)/Ω^2}α-α2]-3/2
を得ます。
次に,この積分を具体的に計算するために,
P=∫01dα(C+Bα-α2)-3/2として,これを求めます。
こういうのは公式集でも見れば,スグわかるのですが,
どうしても初等的に導出不可能な場合を除き,そうした
公式もできるだけ自力で求めるという,学生時代からの
頑固なポリシイがあるので,やってみます。
「過去の知見をチェックせず信用してスルーして新しい
ことに向かわないからオマエは研究者向きでないのだ。」
と当時の先輩,同僚,教師たちから忠告されたこと多々
ありました。
しかし,大袈裟ですが,私は未だに「殺されても変えられ
ないことがある。」とか,「エゴ(自己利益)だけじゃ動かない。」
とかいう意固地貧乏な性格のまま人生終わりそうです。
さて,P=∫01dα(C+Bα-α2)-3/2
=∫01dα{(B2/4+C)-(α-B/2)2}-3/2ですから,
α-B/2=(B2/4+C)1/2sinθと置くと,
dα=(B2/4+C)1/2cosθdθです。
故に,P=(B2/4+C)-1∫θ1θ2sec2θdθ
=(B2/4+C)-1(tanθ2-tanθ1)となります。
ただし,sinθ1=(-B/2)/(B2/4+C)1/2,,
sinθ2=(1-B/2)/(B2/4+C)1/2,です。
tanθ=±sinθ/(1-sin2θ)1/2より,符号が正の分枝
を採用すると,tanθ1=(―B/2)/C1/2,かつ,,
tanθ2=(1-B/2)/(C+B-1)1/2の分枝なのでP
=(B2/4+C)-1{(1-B/2)/(C+B-1)1/2+(B/2)/C1/2}
です。これにC=γ22/Ω^2,B=(Ω^2+γ12-γ22)/Ω^2を
代入して、C1/2=γ2/Ω^,(C+B-1)1/2=γ1/Ω^ですから
P=(B2/4+C)-1[(γ1+γ2)/(2Ω^γ1γ2){Ω^2+(γ1-γ2)2}
以下,詳細を略して,最終的に,
P={2Ω^3(γ1+γ2)/(γ1γ2)}/{Ω^2+(γ1+γ2)2}を
得ますが,{π2/(γ1γ2)}G(ω)=(πΩ^-3/2)Pなので,,
G(ω}={(γ1+γ2)/π}/{(ω1-ω2-ω)2+(γ1+γ2)2}
です。前述したように,F(ω)はG(ω)でω1=ω0,ω2=0
としたものですから,結局,F(ω)
={(γ1+γ2)/π}/{(ω0-ω)2+(γ1+γ2)2}を得ました。
[証明終わり] (注14-2終わり※)
次に,線幅をGauss型曲線に広げる機構が2つある場合には,,
合成された曲線がやはり,Gauss型となり,元の2つの曲線の
半値幅が2Δ1,2Δ2のとき,Δ2=Δ12+Δ22で与えられる半値幅:
2Δを持ちます。
※(注14-3):上記を証明します。
[証明]:前記事で書いたように,気体内で運動する全原子は,
ドプラー効果により吸収する光の周波数ωの分布は,Gauss分布
exp{-Mc2(ω-ω0)2/(2ω02kBT)}(c/ω0)dω.(2.149)で
与えられ,これの半値幅(全線幅)を2Δとすると,
2Δ=2ω0{2kBTln2/(Mc2)}1/2(2.151)と表わされます。
Gauss曲線:FGは,
FG(ω)=(2π)-1(2δ2)-1/2exp{-(ω-ω0)2/(2δ2)}で定義され
∫-∞∞FG(ω)dω=1が満たされますが,上記ドプラ-・
シフトの曲線形は,これの,δ=ω0{2kBT/(Mc2)}1/2
=Δ/(2ln2)1/2~Δ/1.18.(2.152)と置いたものに相当します。
そこで,Fj(ω)=(2πδj2)-1/2exp{-(ω-ω0)2/(2δj2)}
(j=1,2)として,F(ω)=∫―∞∞F1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν
を計算します。
F(ω)=(2π)-1(δ12δ22)-1/2∫―∞∞[exp{-(ν-ω0)2/(2δ12)}
×exp{-(ω-ν)2/(2δ22)}dν
-(ν-ω0)2/(2δ12)-(ω-ν)2/(2δ22)
=-(1/2){(1/δ12+1/δ22)ν2-2(ω0/δ12+ω/δ22)ν
+(ω02/δ12+ω2/δ22)}
=-{1/(2δ12δ22)}[(δ12+δ22)ν2-2(ω0δ22+ωδ12)ν
+(ω02δ22+ω2δ12)}=-A(ν-B)2+Cと書けば,
A=(δ12+δ22)/(2δ12δ22)},
B=(ω0δ22+ωδ12)/(δ12+δ22)
C={(ω0δ22+ωδ12)2-(ω02δ22+ω2δ12)(δ12+δ22)}
/[(2δ12δ22)(δ12+δ22)]
=-(ω0-ω)2/(2δ12+2δ22) です。
そこで,∫―∞∞exp{-A(ν-B)2+C}dν=(π/A)1/2exp(C)
={(2πδ12δ22)/(δ12+δ22)}1/2exp{-(ω0-ω)2/(2δ12+2δ22)}
ですから,F(ω)=[1/(2πδ1δ2)]
∫―∞∞exp{-A(ν-B)2+C}dν={2π(δ12+δ22)}-1/2
×exp{-(ω0-ω)2/(2δ12+2δ22)}を得ます。[証明終わり]
(注14-3終わり※)
1つの曲線形がLorentz型で,他方がGauss型の場合は,
より複雑な積分:F(ω)={γ/(2π3δ)1/2}
∫―∞∞[exp{-(ω-ν)2/(2δ2)}/{(ω0-ν)2+γ2}]dν
=[1/{(2π)1/2δ}]Re[W{(ω0-ω+iγ)/(2/2δ)]].(2.158)
となります。ただし,Wはある複素誤差関数の1種です。
この形はVolgt二地なんだ命名がなされています。
これは,δ→ 0の極限であるLorentz型とγ→ 0の極限で
あるGauss型の中間の形と言えます。
線幅を広げる過程は2つの広い範疇に分けることができて,
それらは相異なる定性的性質で特徴付けられ,また,2つの
基本的曲線形とも関連しています。その1つは遷移周波数を
定めるパラメータの値に統計的分布があるために,いくつか
違った周波数で,それぞれの原子が光を吸収,放出するような
線幅の広がりの原因を持つものです。このような線幅の広がる
過程は一般にGauss曲線形になります。
ドプラー広がりは,この範疇に属し,原子の速度が,それに
関連する統計的パラメータです。他の例は,局所的ひずみに
よるゆらぎが原子の遷移周波数のシフトを引き起こすような
結晶に埋もれた原子による発光のときに現われます。
これらの効果は不均一な広がりの機構の範疇に属します。
一方,Lorentz曲線形は,光を吸収,放出する原子が,いずれも
残りの原子と同一である,均一な広がりの機構に現われます。
例えば,放射や衝突による広がりの過程では.原理的に,ある
周波数の光を一群の特定原子に付随させる実験方法が存在する
ことはない,と言えます。
この場合の幅Δωは,原子放射が乱されない有限の平均時間
Δtが存在する結果として現われるものです。量子力学の
不確定性原理,or Fourier変換の性質によると,ΔωΔt≧1.
(2.159)であり,放射過程,衝突過程に対する陽な結果も,これと
一致します。
今回も本節がここで終わるので,ここまでにします。(つづく)
(参考文献):Rodney Loudon 著
(小島忠宣・小島和子 共訳)
「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)
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