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2019年12月20日 (金)

光の量子論14

「光の量子論13」からの続きです。

(※余談):私の両親は父が明石市,母が和歌山市出身の

関西人ですが,私は岡山県倉敷市の出身です。

もっとも,東京に来たのが1977年で,故郷で暮らして

いた一浪までの18年は,はるか昔になりました。

 昔から「岡山県人は腹が黒い」とか,岩井志麻子のおかげ

で「岡山の男はヤギとセックスする。」とか悪口のたぐいが

多いようです。実際,隣の広島県人は芸能界でも甲子園でも

プロ野球でも大活躍で,男なら熱血漢と称される方が多い

ようですが,岡山県人は私もそうですが,何かに成功しても

失敗しても,「本気で,一所懸命に努力していると思われる

のが恥ずかしい。」などという,イヤミで屈折したところが

有る人多いような気がします。バカですネ。

とはいえ,渋野日向子チャンは岡山弁もかわいいと思います。

私は昔から市毛良枝さんが好きですが,2人は顔がよく似て

いるな?と思いました。最近,岡山は千鳥とかブルゾンとか

売れた芸人もいます。

スポーツなら,昔は星野,辰吉とかアブナイ選手,監督

がいたし,女子は有森以来,長距離強く天満屋もハンパない

ですね。(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.12

(ドプラー広がり)の項を記述して終わりました。

今回はその続きで,次の節からです。

 

  • 2.13 合成吸収線の形状,

衝突広がりの(2.132):1/τ0=(4d2N/V){π/(βM)}1/2

coll=1/τ0,β=1/(kT)と,ドプラー幅を与える(2.151)

の2Δ=2ω0{2kTln2/(Mc2)}1/2の両式を見ると,これらは,

実験的パラメータを調節すれば,衝突幅もドプラー幅もいくら

でも小さくできることが,明瞭に示されています。

これらの幅は,共に温度の平方根に比例し,衝突幅の方は

気体の密度,または,それと等価な気体圧にも比例しています。

こういうわけで,衝突広がりを圧力による広がり,と呼ぶ

こともあります。

 それ故,十分低温に保たれた気体放電を利用することにより,

原理的には放射による不可避な線幅しか持たない吸収線を観測

することが可能となります。気体圧力の調節によりドプラー幅

や放射幅に比して,衝突幅を相対的に変化させることができます。

線幅におけるドプラー効果,原子衝突と恐らくは放射も同程度

の寄与をする場合には,これら3つの過程から生じた合成曲線

の形を決めることが必要になります。

(※ ただし.入射ビームは弱く,飽和広がりは無視できると仮定

します。)

さて,規格化された曲線形関数F1(ω)とF2(ω)を別々に生じる

ような線の広がりを起こす2つの機構を合成することを考えます。

合成された曲線形は,F(ω)=∫F1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν

(2.155)と書けます。これは,「合成積」.または「たたみ込み積分:

と呼ばれるものです。ただし,ω0は2つの分布に共通する中心の

周波数です。

すなわち,減衰γ1があって波動関数がexp(-γ1t-iω0t)に

比例するような波動の寄与:f1(t)~∫F1(ω)exp(±iωt)dω

と,減衰γ2があって波動関数がexp(-γ2t-iω0t)に比例する

ような波動の寄与:f2(t)~∫F2(ω)exp(±iωt)dωの掛け算

として合成され,振動部分exp(-iω0t)は変わらず,減衰が和:

1+γ2)となる波動:exp{-(γ1+γ2)t-iω0t}に比例する

ものの寄与が,f1(t)×f2(t)exp(iω0t)

~∫F(ω)exp(±iωt)dωとなることを意味します。

※(注14-1):上記を説明します。

xの関数f(x)が,f(x)=∫―∞F(k)exp(ikx)dk

なるFourier(フーリエ)積分で表わせる場合,その逆変換として

関数F(k)はF(k)=(2π)-1―∞f(x)exp(-ikx)dxと

表わせます。このような相互変換をFourier変換と呼びます。

双方の表現の対称性を保つために,

f(x)=(2π)-1/2―∞F(k)exp(ikx)dk

⇔F(k)=(2π)-1/2―∞f(x)exp(-ikx)dxとして,

定係数を同じにするFourier変換の定義もあります。

以下の議論では,どちらでもいいのですが,便宜上前者の定義

を採用します。そして,この変換を示す汎関数を(関数の関数):

として,関数F=[f]が,関数fのFourier変換である,と

表記すれば便利です。

それでは,F=[f]:

つまり,F(k)=(2π)-1―∞f(x)exp(-ikx)dx,G=[g]

つまり,G(k)=(2π)-1―∞g(x)exp(-ikx)dxのとき,

積:F(k)×G(k)はどのような関数のFourier変換でしょうか?

単純にF(k)×G(k)=(2π)-2{∫―∞f(x)exp(-ikx)dx}

×{∫―∞g(y)exp(-iky)dy}と書けば,これの右辺

=(2π)-2―∞dx∫―∞dy[f(x)g(y)exp{-ik(x+y)}]

です。xはそのままで,yの積分でyをu=x+y ⇔ y=u―xと

変数置換すると,dy=duであり,

与式=(2π)-2―∞du∫―∞dx[f(x)g(u-x)exp(-iku)]

と書けます。

そこで,h(u)=(2π)-1―∞f(x)g(u-x)dxと置けば,

F(k)×G(k)=(2π)-1―∞h(u)exp(-iku)duを得ます。

したがって, (F・G)(k)=F(k)×G(k)と定義すると,

これはF・G=[h]を意味します。

uをxに置き換えたh(x)=(2π)-1―∞f(y)g(x-y)dy

なるxの関数hを(f*g)と表わして,fとgの「合成積」,または,

「たたみ込み積分」と呼びます。

これは、逆変換として,(f*g)(x)

=∫―∞{F(k)G(k)}exp(ikx)dkと書けることをも

意味します。

ここで,x→t,k→ -ωと変数置換して,Fourier変換を,

f(t)=∫―∞F(ω)exp(-iωt)dω,および,[f]

=F(ω)=(2π)-1―∞f(t)exp(iωt)dtと定義すれば,

合成積は(f*g)(t)=∫―∞f(τ)g(t-τ)dτ,および,,

(F*G)(ω)=∫―∞F(ν)g(ω-ν)dνとなり,

f(t)×g(t)=∫―∞(F*G)(ω)exp(-iωt)dω,

F(ω)×G(ω)=(2π)-1―∞(f*g)(t)exp(iωt)dt

が成立することになります。

以上から,F(ω)=∫―∞1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν

=(F1*F2)(ω+ω0)であり,これは,F1とF2の合成積:

(F1*F2)の引数が(ω+ω0)の値を意味します。

なお,これらはexp(iωt)を,exp(-iωt),cos(ωt)

または,sin(ωt)に変更しても,そのまま成立します。

ところで,以前の「光の量子論10」では,単一の気体原子

の電気双極子モーメントd(t)が,d(t)

=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

=-e[ρ21(t)X12exp(-iω0t)+ρ12(t)X21exp(iω0t)}

で,理論的に与えられることを記述しました。

それ故,前記事でドプラー広がりを除く最も一般的ケースで

得た光学Bloch方程式の解;(2.137)のtの関数としての密度

行列:ρ12(t)=-exp{-i(ω0-ω)t}

[(Ω/2)(ω0-ω-iγ^)/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2},

および,ρ21(t)=ρ12(t)を,上のd(t)の右辺に代入すると,

(t)={e2|X12|20/(2hc)}

[{(ω0-ω+iγ^)exp(-iωt)+(ω0-ω-iγ^)exp(iωt)}

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2} なる表式を得ます。

そして,対象とする気体の分極Pは,体積V,原子数Nに対し,

(t)=N(t)/V

=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(ω)exp(iωt)]

と書けます。ここに,χ(ω)は感受率で,χ(ω)

=χ’(ω)+iχ”(ω)

={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}(ω0-ω+iγ^)

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2} です。

特に,|Ω|<<γで,飽和広がりを無視し,γ^~γなら,

放射減衰γだけの寄与となり

d(t)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

[{(ω0-ω+iγ)exp(-iωt)+(ω0-ω-iγ)exp(iωt)}

/{(ω0-ω)2+γ2}となります。

再び,感受率をχ(ω)=χ’(ω)+iχ”(ω)と書くと,

χ”(ω)={πNe2|D12|2/(3ε0cV)}

×(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}であり,この場合,吸収係数は,

K(ω)=2ω/(cη)χ"(ω)

~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}F(ω),ただし,

(ω)=(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}(FLはLorentz型曲線)

と書けます。

つまり,分極P(t)=(1/2)ε00

×[χ(ω)exp(-iωt)+χ(ω)exp(iωt)]の虚部は,

(-i/2)ε00{χ”(ω)(exp(-iωt)-exp(iωt)]

=ε00χ”(ω)sin(ωt)で,これはF(ω)sin(ωt)に

比例します。

したがって,d(t)={e2|X12|20/(2hc)}f(t)で,

f(t)=∫―∞F(ω)exp(-iωt)dωと表わせる場合

には,P(t)の虚部はF(ω)sin(ωt)に比例することに

なります。

そこで,d1(t)={e2|X12|20/(2hc)}f1(t),および,

2(t)={e2|X12|20/(2hc)}f2(t)なる形であるとき,

1(t),f2(t)の周波数分布が,それぞれ,

1(t)=∫―∞1(ω)exp(-iωt)dω,

2(t)=∫―∞2(ω)exp(-iωt)dωと書ける

場合,その積はf1(t)×f2(t)

=∫―∞[(F1*F2)(ω)exp(-iωt)]dω

=∫―∞[(F1*F2)(ω+ω0)exp{-i(ω+ω0)t}]dω

=[∫―∞F(ω)exp(-iωt)dω]exp(-iω0t)

で与えられます。

したがって,f1(t)×f2(t)exp(iω0t)

=∫―∞F(ω)exp(-iωt)dωとなること,

ただし,F(ω)=∫―∞1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν

=(F1*F2)(ω+ω0)であること,が得られました。

(注14-1終わり※)

 言い換えると,積分F(ω)は,曲線形F1の各周波数成分

に,曲線形F2を生じる機構に特有な分布の広がりを付与

するものです。

明らかに,線幅を広げる機構がいくつあっても,(2.155):

F(ω)=∫―∞1(ν)F2(ω+ω0-ν)dνを反復適用

することによって,それらを合成できます。

最終の曲線形はそれらの寄与を合成する順序に無関係で

あり,(2.155)の積分値もF1とF2を交換しても不変である

ことに注意すべきです。

 実際,広がりの2つの原因が,それぞれ,幅2γ1と2γ2

持ったLorentz曲線形を生じるのであれば,それらを合成した

曲線もL0rentz型で,その幅は2γ=2γ2+2γ2.(2.156)と

なります。

前回記事の§2.11(衝突広がり)の最後の計算で,放射,飽和,

衝突による広がりを含む原子遷移の線幅は2(γ2+|Ω|2/2)1/2

を一般化した式:2{γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}1/2.(2.139)となり,

飽和広がりが無視できるなら(2.139)が.2γ^=2γ+2γcoll.

(2.140)に帰着する,と書きましたが,これは,一般的結果:

(2.156)の特別な場合と考えられます。

※(注14-2):上記の合成積が2γ=2γ2+2γ2.のLorentz

曲線になるという(2.156)の結果を直接計算で証明します。

[証明]:まず,G(ω)=∫―∞dν(γ1/π)(γ2/π)

/[{(ω1-ν)2+γ12}{(ω+ω2-ν)2+γ22}]を計算します。

証明対象の式であるF1(ω)=(γ1/π)/{(ω0-ω)2+γ12},

および,F2(ω)=(γ2/π)/{(ω0-ω)2+γ22}とした合成積:

F(ω)=∫―∞1(ν)F2(ω+ω0-ν)dνは,

F(ω)=∫―∞―∞dν(γ1/π)(γ2/π)

/[{(ω0-ν)2+γ12}{(ω0-ω-ω0+ν)2+γ22}]

=∫―∞―∞dν(γ1/π)(γ2/π)

/[{(ω0-ν)2+γ12}{(ω-ν)2+γ22}]となり,これは

G(ω)において,ω1=ω02=0としたものに相当します。

 さて,G(ω)を計算するため,2変数のFeynman積分公式:

1/(AB)=∫01dα/{Aα+B(1-α)}2を利用します。

すなわち,{π2/(γ1γ2)}G(ω)=∫01dα∫―∞dν

/{(ω1-ν)2α+γ12α+(ω+ω2-ν)2(1-α)+γ22(1-α)}2

=∫01dα∫―∞dν/[ν2-2{ω1α+(ω+ω2)(1-α)}ν

+(ω12+γ12)α+{(ω+ω2)2+γ22}(1-α)]2

です。

ここで,∫―∞dx/(x2+a2)2

=∫―π/2π/2(asec2θ/a4sec4θ)dθ

=1/(2a3)∫―π/2π/2よ{1+cos(2θ)}dθ=π/(2a3)

より,b>a2の前提で,∫―∞dx/(x2-2ax+b)2

=∫―∞dx/{(x-a)2+b-a2}2=π/(2(b-a2)3/2

を得ます。

それ故,積分変数をxからνに置換して,

a=ω1α+(ω+ω2)(1-α),および.

b=(ω12+γ12)α+|(ω+ω2)2+γ22}(1-α)と

置くと,b-a2=ω12α(1-α)+(ω+ω2)2α(1-α)

-2α(1-α)ω1(ω+ω2)+(γ12-γ22)α+γ22

=(ω1-ω2―ω)2α(1-α)+(γ12-γ22)α+γ22

となるので,Ω^=ω1-ω2-ωと置けば,b-a2

=Ω^2α(1-α)+(γ12-γ22)α+γ22となります。,

そこで,先の公式から、{π2/(γ1γ2)}G(ω)

=(π/2)∫01dα{Ω^2α(1-α)+(γ12-γ22)α+γ22}-3/2

=(πΩ^-3/2)∫01dα

22/Ω^2+{(Ω^2+γ12-γ22)/Ω^2}α-α2]-3/2

を得ます。

次に,この積分を具体的に計算するために,

P=∫01dα(C+Bα-α2)-3/2として,これを求めます。

こういうのは公式集でも見れば,スグわかるのですが,

どうしても初等的に導出不可能な場合を除き,そうした

公式もできるだけ自力で求めるという,学生時代からの

頑固なポリシイがあるので,やってみます。

「過去の知見をチェックせず信用してスルーして新しい

ことに向かわないからオマエは研究者向きでないのだ。」

と当時の先輩,同僚,教師たちから忠告されたこと多々

ありました。

しかし,大袈裟ですが,私は未だに「殺されても変えられ

ないことがある。」とか,「エゴ(自己利益)だけじゃ動かない。」

とかいう意固地貧乏な性格のまま人生終わりそうです。

さて,P=∫01dα(C+Bα-α2)-3/2

=∫01dα{(B2/4+C)-(α-B/2)2}-3/2ですから,

α-B/2=(B2/4+C)1/2sinθと置くと,

dα=(B2/4+C)1/2cosθdθです。

故に,P=(B2/4+C)-1θ1θ2sec2θdθ

=(B2/4+C)-1(tanθ2-tanθ1)となります。

ただし,sinθ1=(-B/2)/(B2/4+C)1/2,,

sinθ2=(1-B/2)/(B2/4+C)1/2,です。

tanθ=±sinθ/(1-sin2θ)1/2より,符号が正の分枝

を採用すると,tanθ1=(―B/2)/C1/2,かつ,,

tanθ2=(1-B/2)/(C+B-1)1/2の分枝なのでP

=(B2/4+C)-1{(1-B/2)/(C+B-1)1/2+(B/2)/C1/2}

です。これにC=γ22/Ω^2,B=(Ω^2+γ12-γ22)/Ω^2

代入して、C1/2=γ2/Ω^,(C+B-1)1/2=γ1/Ω^ですから

P=(B2/4+C)-1[(γ1+γ2)/(2Ω^γ1γ2){Ω^2+(γ1-γ2)2}

以下,詳細を略して,最終的に,

P={2Ω^31+γ2)/(γ1γ2)}/{Ω^2+(γ1+γ2)2}を

得ますが,{π2/(γ1γ2)}G(ω)=(πΩ^-3/2)Pなので,,

G(ω}={(γ1+γ2)/π}/{(ω1-ω2-ω)2+(γ1+γ2)2}

です。前述したように,F(ω)はG(ω)でω1=ω02=0

としたものですから,結局,F(ω)

={(γ1+γ2)/π}/{(ω0-ω)2+(γ1+γ2)2}を得ました。

[証明終わり]   (注14-2終わり※)

 次に,線幅をGauss型曲線に広げる機構が2つある場合には,,

合成された曲線がやはり,Gauss型となり,元の2つの曲線の

半値幅が2Δ1,2Δ2のとき,Δ2=Δ12+Δ22で与えられる半値幅:

2Δを持ちます。

※(注14-3):上記を証明します。

[証明]:前記事で書いたように,気体内で運動する全原子は,

ドプラー効果により吸収する光の周波数ωの分布は,Gauss分布

exp{-Mc2(ω-ω0)2/(2ω02T)}(c/ω0)dω.(2.149)で

与えられ,これの半値幅(全線幅)を2Δとすると,

2Δ=2ω0{2kTln2/(Mc2)}1/2(2.151)と表わされます。

Gauss曲線:Fは,

(ω)=(2π)-1(2δ2)-1/2exp{-(ω-ω0)2/(2δ2)}で定義され

-∞(ω)dω=1が満たされますが,上記ドプラ-・

シフトの曲線形は,これの,δ=ω0{2kT/(Mc2)}1/2

=Δ/(2ln2)1/2~Δ/1.18.(2.152)と置いたものに相当します。

そこで,Fj(ω)=(2πδj2)-1/2exp{-(ω-ω0)2/(2δj2)}

(j=1,2)として,F(ω)=∫―∞1(ν)F2(ω+ω0-ν)dν

を計算します。

F(ω)=(2π)-12δ22)-1/2―∞[exp{-(ν-ω0)2/(2δ12)}

×exp{-(ω-ν)2/(2δ22)}dν

-(ν-ω0)2/(2δ12)-(ω-ν)2/(2δ22)

=-(1/2){(1/δ12+1/δ222-2(ω012+ω/δ22

+(ω0212+ω222)}

=-{1/(2δ12δ22)}[(δ12+δ222-2(ω0δ22+ωδ12

+(ω02δ22+ω2δ12)}=-A(ν-B)2+Cと書けば,

A=(δ12+δ22)/(2δ12δ22)},

B=(ω0δ22+ωδ12)/(δ12+δ22)

C={(ω0δ22+ωδ12)2-(ω02δ22+ω2δ12)(δ12+δ22)}

/[(2δ12δ22)(δ12+δ22)]

=-(ω0-ω)2/(2δ12+2δ22) です。

そこで,∫―∞exp{-A(ν-B)2+C}dν=(π/A)1/2exp(C)

={(2πδ12δ22)/(δ12+δ22)}1/2exp{-(ω0-ω)2/(2δ12+2δ22)}

ですから,F(ω)=[1/(2πδ1δ2)]

―∞exp{-A(ν-B)2+C}dν={2π(δ12+δ22)}-1/2

×exp{-(ω0-ω)2/(2δ12+2δ22)}を得ます。[証明終わり]

(注14-3終わり※)

1つの曲線形がLorentz型で,他方がGauss型の場合は,

より複雑な積分:F(ω)={γ/(2π3δ)1/2}

―∞[exp{-(ω-ν)2/(2δ2)}/{(ω0-ν)2+γ2}]dν

=[1/{(2π)1/2δ}]Re[W{(ω0-ω+iγ)/(2/2δ)]].(2.158)

となります。ただし,Wはある複素誤差関数の1種です。

この形はVolgt二地なんだ命名がなされています。

これは,δ→ 0の極限であるLorentz型とγ→ 0の極限で

あるGauss型の中間の形と言えます。

線幅を広げる過程は2つの広い範疇に分けることができて,

それらは相異なる定性的性質で特徴付けられ,また,2つの

基本的曲線形とも関連しています。その1つは遷移周波数を

定めるパラメータの値に統計的分布があるために,いくつか

違った周波数で,それぞれの原子が光を吸収,放出するような

線幅の広がりの原因を持つものです。このような線幅の広がる

過程は一般にGauss曲線形になります。

ドプラー広がりは,この範疇に属し,原子の速度が,それに

関連する統計的パラメータです。他の例は,局所的ひずみに

よるゆらぎが原子の遷移周波数のシフトを引き起こすような

結晶に埋もれた原子による発光のときに現われます。

これらの効果は不均一な広がりの機構の範疇に属します。

 一方,Lorentz曲線形は,光を吸収,放出する原子が,いずれも

残りの原子と同一である,均一な広がりの機構に現われます。

 例えば,放射や衝突による広がりの過程では.原理的に,ある

周波数の光を一群の特定原子に付随させる実験方法が存在する

ことはない,と言えます。

この場合の幅Δωは,原子放射が乱されない有限の平均時間

Δtが存在する結果として現われるものです。量子力学の

不確定性原理,or Fourier変換の性質によると,ΔωΔt≧1.

(2.159)であり,放射過程,衝突過程に対する陽な結果も,これと

一致します。

 

今回も本節がここで終わるので,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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