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2019年12月 8日 (日)

光の量子論13

※「光の量子論12」からの続きです。

(※余談):昨日(12/7(土))は,1学年年下ですが,全員69歳の障害者

友達2人に誘われて昼から都営新宿線住吉駅から健康な足で

徒歩4分(私は徒歩10分くらい)の「ティアラ江東」で開かれた江東区

の「第39回障害者福祉大会」というイベントに行ってきました。

(私,1985年から1994年まで塩浜や豊洲付近の運河のそばの

分譲マンション10階に9年間住んでいて,巣鴨に住む前は江東区民

だったので江東区に全く無縁というワケではありませんが。。)

最近は,近くの買い物と月1の病院以外は,ほぼ寝た切りに近い

ので現地まで行って3時間程度のイベントを見るだけなのですが,

身体がたえられるか少し心配でしたが,まあ,身体障害要介護2でも

なぜか要支援認定らしい「林家こん平」師匠よりは,ましな程度に

動けると思うので鑑賞だけなら大丈夫だろうということで,一応,

アフリカの太鼓とか歌や踊りとかを見て楽しめました。

ただ,39回も福祉をやっている割には会場も,まわりも階段が多く,

来年はパラリンピックもある,といいながら1995年のサリン事件

以来,警備,セキュリティに重きを置きすぎてるのか,来年に備えて

工事中段階とはいえ都内の駅には,ゴミ箱もベンチも少なく,足が

不自由な身にはバリアが多いのが気になりました。

「向こう3軒両隣り」とか「渡る世間に鬼はない」とかよりも

「ヒトを見たらドロボーと思え」「敷居またげば適ばかり」の

都会的思考の方が上にきて,99匹の健康な子羊を守るため,

迷える1匹の子羊などは,ほったらかしの,弱者にやさしくない

街つくりに向かっているようです。

オリンピックというと,多くの外国客への見栄で,ホームレス隠し

や,一時的に臭いモノにはフタをする,という,北京五輪や上海

万博時の中国や前の東京五輪時のわが国でもあった恥ずかしい

行為が,今回の東京オリ・パラでもあるカモしれない,と心配して

います。

最近の私は,自分は,スグにいなくなる世界なので関係ないクセに,

環境回復して,地球というか生命体の滅亡を遅らせるに役立つだろう

「人工光合成」や「プラスチックの分解,無害化」のバクテリアに興味

を持って調べています。(余談終わり※)

 

さて,本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.10

(放射減衰を伴なうRabi振動)の項の残りの部分を記述

して終わりました。

今回はその続き次の節からです。

  • 2.11衝突広がり

さて,§2.8,§2.9で論じた放射広がりと飽和広がりは,入射光

ビームで励起された原子遷移にとって避けられない性質でした。

それ以外の線幅を広げる機構の重要性は,原子気体の物理的

条件に左右されます。

このうち,原子の運動に起因する主要な効果は「衝突広がり」と,

「ドプラー(Doppler)広がり」の機構です。これらを本節と次節で

論じます。

まず,ここでは「衝突広がり」の機構を説明しますが.完全という

わけではなく,どうにか間に合う程度の詳しさで,そのプロセスを

考察します。原子気体における原子間衝突の発生は.一種の

確率過程(stochastic process)です。

「気体運動論」によると,原子が時刻τから,時刻τ+dτまでの

間に自由飛行を継続する確率はdτに比例し,それは,p(τ)dτ

=(1/τ0)exp(-τ/τ0)dτ.(2.131)で与えられると考えられます。

ただし,τ0は衝突なしで飛行する平均自由飛行時間で,これは

1/τ0=(4d2N/V){π/(βM)}1/2.(2,132)なる式で与えられる

ことがわかっています。(1/τ0)は衝突頻度(単位時間当りの衝突回数)

ここで,dは衝突する2原子の中心間距離(=衝突径数)であり.M

は気体の1原子の質量です。βはTを絶対温度kをBoltzmann定数

して,β=1/kTを意味します。

※(注13-1):これらの根拠を説明します。

まず,時刻:に自由飛行していた1個の原子が時刻τ+dτに衝突

せずに自由飛行で残っている確率は,(1-dτ/τ0)倍となります。

そこで,時刻τに自由運動している原子の個数をN^(τ)とすると,

その変化は,dN^=N^(τ+dτ)-N^(τ)=-(dτ/τ0)N^(τ)を

満足します。そこで,これを積分するとN^(τ)=N^(0)exp(-τ/τ0)

です。

気体原子総数をNとして,時刻τに衝突せず残っている確率p(τ)は,

p(τ)=N^(τ)/Nで与えられ,∫0N^(τ)dτ=N,or ∫0p(τ)dτ

=1となる規格化条件により,指数分布:p(τ)=(1/τ0)exp(-τ/τ0)

が得られ,飛行時間τの平均は,確かに,<τ>=­∫τp(τ)dτ=τ0

となります。そして,次に.この平均自由飛行時間τ0を評価します。

対象の気体を構成する気体原子(分子)の数密度をn=N/Vとする

とき,ある1原子(分子)が自由直線運動で長さLを通過する間に,

それと衝突することが可能な距離が衝突径数dであり,これを半径

として長さがLの体積:πd2Lの円筒内にあるの原子(分子)数は

nπd2Lなので,この1原子の,この間の衝突回数がnπd2Lに等しい

ことになります。

この原子(分子)の平均速度を<v>とすると,その飛行時間がτなら,

平均飛行距離は,L=<v>τです。

そこで,平均衝突回数:nπd2L=nπd2<v>τが丁度1となる

飛行時間をτ=τ0と定義すれば,τ0=1/(nπd2<v>),または,

1/τ0=nπd2<v>が成立します。

このとき,L0=<v>τ0とすると,これは1原子(分子)が全く衝突

せずに飛行できる平均距離を示しているので平均自由行程と

呼ばれます。ところが.希薄な気体分子(原子)は.Maxwellの速度

分布:f()d3={M/(2πkT)}3/2exp(―M2/2kT)d3に従う

ことがわかっているため,平均速度の大きさ<v>は,f()が速度

空間で球対称故,>=∫0vf()v2dv/∫0vf()v2dvなる計算式

から得ることができます、このf()に,上のMaxwell分布式を代入

すれば,結局,<v>=(8kT/πM)1/2={(8/(πβM)}1/2

が得られます。

ただし,厳密には同じ質量Mの原子の2体衝突なので,1個の質量M

ではなく,これを相対運動の換算質量M=M/2に置換する必要

があり,>={8/(πβM)}1/2=4/(πβM)1/2が正しい評価式です。

これによって1/τ0=nπd2<v>=4d2n/{π/(βM)}1/2(n=N/V)

という求める表式が得られました。

以下では,上の計算で実際に<>={8/(πβM)}1/2

=4/(πβM)1/2が得られる,数学的根拠を示しておきます。

まず,速度ベクトルの極座標表示を(v,θ,φ)(v=||)として

に対する確率密度が,p()=Cf(v,θ,φ)で与えられる場合を

考えます。確率密度の満たすべき条件:∫p()d3=1により,

規格化定数:Cは,C=1/[∫f(v,θ,φ)v2dv(sinθ)dθdφ]で

与えられます。特にfが球対称でf(v,θ,φ)=f(v)と表わせる場合,

規格化定数は,C-1=∫f(v,θ,φ)sinθv2dvdθdφ

=4π∫0f(v)v2dvで決まります。

この場合,速度の大きさ:v=||の平均値は,

<v>=<||>=∫vp(v)d3vで与えられますが,

これは,<v>=C∫vf(r,θ,φ)v2dv(sinθ)dθdφ

=4π∫0{vf(v)}v2dv/{4π∫0f(v)v2dv}

=∫03f(v)dr/{∫02f(r)dr}

で得られることになります。

そこで,f(v)=Cexp(-αv2)と表わされる場合には,

<v>=∫03exp(-αv2)dv/∫02exp(-αv2)dvと

なります。後は分子,分母の指数関数を含む積分の評価だけです。

まず.I(α)=∫0exp(-αx2)dxと置くと,Gauss分布の積分

公式から,I(α)=(1/2)(π/α)1/2です。

これから,-dI/dα=∫02exp(-αx2)dx=(1/4)π1/2α-3/2

を得ます。

一方,J(α)=∫0xexp(-αx2)dxとして,これを求めます。

u=αx2と変数置換すると,du=αxdxより,

J(α)=∫0xexp(-αx2)dx

=(1/2)α-10exp(-u)du=(1/2)α-1となります。

そこで,I(α)の場合と同じく両辺をαで微分すると,

-dJ/dα=∫03exp(-αx2)dx=(1/2)α-2を得ます。

以上から,<v>=∫03exp(-αv2)dv

/{∫02exp(-αv2)dv=(1/2)α-2/{(1/4)π1/2α-3/2}

=2(πα)-1/2となることがわかりました。

これに,Maxwell速度分布:f()d3={M/(2πkT)}3/2

exp(―M2/2kT)d3を適用するために,

(v)=exp(-αv2),α=M/(2kT),(M=M/2)を

代入することから,<v>=2(πα)-1/2=(8kT/πM)1/2

=4/(πβM)1/2が得られました。

したがって,結局,自由飛行時間τ0の求める表式,

1/τ0=nπd2<v>=4d2n/{π/(βM)}1/2が得られました。

(注13-1終わり※)

 

さて,原子のエネルギー準位と波動関数に及ぼす衝突の

効果は甚だ複雑です。

衝突する2原子の相互作用によって,エネルギー準位が衝突期間

中にシフトし,波動関数は非摂動原子の波動関数の,ある1次結合

になります。衝突している期間が十分短かいなら,その期間内の

光の吸収,放出は無視できます。そこで,以下では,衝突期間は

平均自由飛行時間τ0に比較して,極く短かいと仮定します。

衝突には,「非弾性衝突」i.e.原子の状態があるエネルギー

準位から,他のエネル.ギー準位に変化するものがあります。

この効果は,原子占位数の減衰の速さを,もう1つ補うこと

で表わされ.光学Bloch方程式には,放射による減衰速度γの

他に,衝突による減衰速度を適当に加えた形で現われるもの

があります。

一方,「弾性衝突」では,原子は前と同じエネルギー準位に

留まり,その効果は原子波動関数の位相(phase)を変える

だけです。これはフェイズシフト(phase-shift)と呼ばれます。

 

波動関数:Ψ(,t)=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)

の係数:C1とC2の位相が変われば,原子密度行列:ρij=Cij

のρ12=C12とρ21=C21は変化しますが,対角要素である

ρ11=C11=|C1|2と,ρ22=C22=|C2|2は変化しません。

かくして,弾性的位相遮断衝突で(2.115)の,dρ12/dt

=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12には,減衰

速度が余分に入り込みますが,対角要素の方程式(2.114)の,

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22,の方は不変です。

これらは,広範囲の物理的状況に対して線幅を広げる際だった

効果を及ぼし,また,第3章の時間に依存する光の性質の議論では

非常に便利なモデルを提供してくれます。

ここで,弾性衝突による非対角要素の減衰効果をγcollと記すこと

にします。この量は,明らかに衝突頻度:1/τ0に比例し,§3.3で,

実際にγcoll=1/τ0.(2.133)となることを示しますが,これと類似の

関係:2γ=A21=1/τ0.(2.102)との間には因子2の違いがあること

には注意が必要です。

なお,以下では,衝突広がりの話は弾性衝突に限ることにします。

すると,光学Bloch方程式:(2.115)は,次のように修正されます。

つまり,dρ12/dt=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)

-γ^ρ12.(2.134)です。γ^=γ+γcoll..(2.135)です。

この結果,以前「光の量子論11」で求めた定常状態の式

(2.119)のρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2},

および,(2.120)のρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ^2+|Ω|2/2}

は,ρ22={(γ^/γ)|Ω|2/4}

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}.(2.136),および,

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}[(Ω/2)ω0-ω-iγ^)

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}(2.137)に一般化

されます。

 

※(注13-2);上記を証明します。

[証明]:前の(注11-1)での(2.119)(2.120)の証明と同じく,

ρ1221を,ρ~12=exp{i(ω0-ω)t}ρ12,

ρ~21=]exp{-i(ω0-ω)t}ρ21と置換して振動型因子を消去

した3方程式系から出発します。前は.

dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ~12+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22.

dρ~12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ~12-i(ω0-ω)ρ~12,

dρ~21/dt=(-iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ~21+i(ω0-ω)ρ~21

でしたが,これらが下の2つでは,γをγ^に変更した方程式系:

ρ22/dt=(-iΩ/2)ρ~12+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22,

dρ~12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γ^ρ~12-i(ω0-ω)ρ~12,

dρ~21/dt=(-iΩ/2)(1-2ρ22)-γ^ρ~21+i(ω0-ω)ρ~21

に修正されます。

定常状態では.これら3方程式の左辺の変化速度を全てゼロと置き,

前の(注11-1)の証明と同じ道をたどって,修正しようと思います。

まず,dρ22/dt=0から,ρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~21}

(実数)を得ます。これは前と同じです。

一方,dρ~12/dt=0,または,ρ~21/dt=0より

(-Ω/2)(1-2ρ22)=(ω0-ω-iγ^)ρ~21

(Ω/2)(1-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ^)ρ~12,

または,(|Ω|2/2)(1-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ^)Ωρ~12

です。

ここで,Ωρ~12=a+ib(a,bは実数)と置くと,

(|Ω|2/2)(1-2ρ22)=-a(ω0-ω)+bγ^,かつ,

0=-b(ω0-ω)―aγ^を得るため,

a=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[(ω0-ω)/{(ω0-ω)2+γ^2}],

かつ,b=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[-γ/{(ω0-ω)2+γ^2}],

です。これから,前には,いくつかの計算手続きの結果として,.

Ωρ~12-Ωρ~12=2ib=i|Ω|2(1-2ρ22)

×[γ/{(ω0-ω)2+γ2}],を得ましたが,今回の修正では,

これが,Ωρ~12-Ωρ~12=2ib

=i|Ω|2(1-2ρ22)[γ^/{(ω0-ω)2+γ^2}]に変わります。

これを最初の式:ρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~12}

に代入すれば,4iγρ22=iγ^|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ^2}

-2iγ^ρ22|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ^2}となるため,

4iγρ22{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}/{(ω0-ω)2+γ^2}

=iγ^|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ^2}を得ます。

それ故,ρ22={(γ^/γ)|Ω|2/4}

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}が得られます。

よって,1-2ρ22

={(ω0-ω)2+γ^2}/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}

ですから,Ωρ~12=(-|Ω|2/2)(1-2ρ22)

×[(ω0-ω-iγ^)/{(ω0-ω)2+γ^2}]

=(-|Ω|2/2)(ω0-ω-iγ^)

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}です。

故に,ρ~12=(-Ω/2)(ω0-ω-iγ^)

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}ですから,

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}[(Ω/2)(ω0-ω-iγ^)

/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}も得られます。

[証明終わり] (注13-2終わり※)

 

ここまでくれば,感受率χを導出し直すのは簡単であり,

(2.122)のχ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}]

の一般化は,χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ^)/{(ω0-ω)2+γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}]

(2.138) になることがわかります。

こうして,放射,飽和,衝突による広がりを含む原子遷移の

線幅は,(2.123)の2(γ2+|Ω|2/2)1/2を一般化した表式:,

2{γ^2+(γ^/γ)|Ω|2/2}1/2.(2.139)となります。

 

今後のほとんどでは.飽和広がりが無視できて,上の(2.139)

が.2γ^=2γ+2γcoll.(2.140)に帰着するような,かなり弱い

ビームについてのみ議論します。

 この場合,吸収線の形はLorentz型であり,幅は放射による寄与

と衝突による寄与を単に加えることで得られます。

衝突時間τ0の典型的な値は室温で10 5 Pascalの圧力に相当する

気体密において,τ0 ~3×10 -11s.(2.141) です。

この値に対する衝突による線幅:2γcoll=τ0-1×2 ~ 6.7×10 10 s-1

は,(2.57)の角周波数の線幅:2γ=A21 ~ 6×10 8-1のAの大きさ

から導かれる周波数の自然線幅:Δf=Δω/(2π)~10 8 Hzという,

放射による線幅の,約100倍で与えられます。

 

  • 2.12 Doppler(ドプラー)広がり

気体内の原子の速度には,ある広がりがあるので,原子が吸収,

放出できる光の周波数にはドプラー効果を通じて,それに対応

したある分布が生じます。当面は,線幅を広げる他の原因を全て

無視し,z軸に平行に伝播する角周波数ωの光の吸収を考察します。

 低い準位E1にある原子の速度が1であるとき,光:hcωを吸収

して高い準位:E2に上がります。を,大きさがk=ω/cでzに

向かうベクトルとすると.その光の運動量は=hcであり,E2

おける原子の速度はv2となります。

原子質量をMとすると,M1+hc=M2.(2.142).かつ,

1+(1/2)M12+hcω=E2+(1/2)M22.(2.143)です。

特に,v1=0,2=0のケースの光子周波数をω0とすると,

cω0=E2-E1.(2.144)です。.

故に,hcω0=hcω+(M/2)(1222)です。

一方,(2.142)から21+(hc/M)なので,

22={1+(hc/M)}212+hc22/M2+2hc1/M

なので,すぐ前の式に代入すると2が消去されて,

cω0=hcω-hc1-hc22/(2M).(2.145)となります。

ところが,kはz軸に平行でk=||=ω/cなので,

1=v1(ω/c)であり,hc22=hc2ω2/c2です。

したがって,ω0=ω-(v1z/c)ω-hcω2/(2Mc2)

(2.146)を得ます。

この右辺の量の代表的な大きさのオーダーは,v1z/c

~10 -5より,hcω/(2Mc2)~10 -9.(2.147)ですから,

ωとω0の差は僅かで,右辺最後の項は無視できるため,

ω=ω0/{1-(v1z/c)}~ ω0{1+(v1z/c)}.(2.148)

という形になります。

(※ つまり,v1z ~c(ω-ω0)/ω0です。)

すなわち,この光は周波数ωが原子の初速に応じた

ドプラー・シフトだけ,ω0からずれている場合に限り,吸収可能

であることを示しています。

したがって,気体内の全原子の吸収する光の周波数ωの分布は,

まず,原子速度のz成分がvとv+dvの間にある相対確率

が,絶対温度がTのとき,Maxwellの速度分布則により,

exp{-Mv2/(2kT)}dvとなるため,これにv=c(ω-ω0)

を代入することによってexp{-Mc2(ω-ω0)2/(2ω02T)}

×(c/ω0)dω.(2.149)で与えられることがわかります。

 

この吸収光の周波数分布はGauss型曲線として知られています。

Gauss曲線のピークはω=ω0にありますが,この曲線では,

exp{-Mc2(ω-ω0)2/(2ω02T)}=1/2.(2.150)を満たす

周波数のところ,つまり,ω=ω0±ω0{2kTln2/(Mc2)}1/2

のとき,強度が最大値の半分になります。。

 よって,この半値幅:2Δがドプラー広がりの全幅ですが,これ

は,2Δ=2ω0{2kTln2/(Mc2)}1/2.(2.151)と表わされます。

この幅は,一般のGauss分布の平均2乗幅:δを用いて表わす

こともできます。すなわち,δとΔの関係が,同じオーダーで

δ=ω0{2kT/(Mc2)}1/2=Δ/(2ln2)1/2~Δ/1.18.(2.152)と

表わせます。

すぐ前の衝突広がりの節では,幅が2γcollで,これを衝突頻度

で,γcoll=τ0-1と表わすとき,2.141)のτ0 ~3×10 -11sを得た

のと同じく,ドプラー広がりの幅のパラメータもΔ=τ0-1として

評価した場合,ドプラー幅は,ほぼ,衝突幅に等しいと評価されます。

Gauss曲線は,F(ω)=(2πδ2)-1/2exp{-(ω-ω0)2/(2δ2)}

(2.153)で定義されますが,このとき,∫-∞(ω)dω=1(2.154)

が満足されます。

これに対して,前の放射広がりや衝突広がりで現われた周波数

分布の形状のLorentz型曲線は,F(ω)=(γ/π)/{(ω-ω0)2+γ2}

で定義されますが,これも∫-∞(ω)dω=1の条件を満たすよう

に係数が決められています。

 

今回も§2.12がここで終わるので,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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