光の量子論15
※「光の量子論14」からの続きです。
(※余談)阪神大震災から25年です。
1995年1月16日は私,まだ45歳で夜,新宿三丁目
でニフティのパソコン通信,の将棋フォーラムの新年会
に出ていました。元のゲームフォーラムが麻雀,囲碁,将棋
に分裂してできたのですがそのときは囲碁フォーラムと
合同の新年会でした。当時のニフエィ将棋名人の筆無精さん
に初めて会い,1992年11月にバブル崩壊の頃クビになって
いた就職2つ目の小さな会社の同僚1人と遭遇しました。
(この会社は阪大囲碁部出身の社員が多かった。)
ほぼ朝帰りで帰宅し,TV見たら,既に何千人も死亡とか。
「ナンジャこれは?」となり,まだ携帯無くて西宮在住の
姉に電話しても通じないので,岡山の母に電話すると西宮
の姉も大阪生野区の次兄も無事とのことで,ひとまず安堵
したのを覚えています。私は1985年に35歳で江東区木場
の運河沿いの10階立ての10階に25年ローンで3DKの
分譲マンションを購入(一応先にハコを用意して普通に結婚
できるかもと,。。他人には隠していたが23歳からの精神病
の負い目がなければ。。)その後,40歳で1つ目の会社を辞め,
43歳直前に2つ目の会社をクビになって,約半年間失業保険
で暮らし,それからオイルショックで不況な上40歳を超え
た独身であるためか仕事を選ばないのに,就職試験落ちまく
って,予備校,専門学校の非常勤講師などで食いつなぎ,1994
年には約2000万円で買って9年住んでいたマンションを約
3500万円で売り,差額で巣鴨の1200万円のワンルームを
買って移った頃です。家賃は管理費修繕積立金の他はない
ですが細々と暮らして,パソコン通信のほうがメインの生活
であった頃です。
将棋フォーラムでのリアル対局,兼チャットと,サイエンス
フォーラムから独立した物理フォーラムなどの掲示板で議論
していた頃です。
当時.OSがMS-DOSのPCを1991年から計算機だけでなく
通信手段として使用したのは,後Windows95からインターネット
文化が広がり,携帯,スマホの時代へと進んでいったことを
考えると,ヒョットして先見の明があったのかも知れないです
が,楽天,ライブドアなど商売道具に利用することまでは考えて
いませんでしたね。
今もユーチュ-バー・バブルなどあるカモですが,宝クジ
同様,やる気なしです。私は,このブログ発信程度です。
ユメはお金持ちになることじゃなく,衣食住が足りれば十分
ですから。というわけで,2月1日で70歳ですが,未だ,お金
にはならないであろうけれど,大きなユメの途中です。
イヤ,棺桶も近いけど。。
1999年49歳のクリスマスの頃,派遣会社から常駐仕事に
就けるまではフリーターでした。イヤ,生活レベル下げたく
なかったので,この夜勤の仕事以外にも複数のアルバイトも
していました。37歳頃から糖尿病でしたが,この病気は重病
化しないなら普通に働けます。そして7年後に急に心臓病で
倒れることになったのですね。(余談終わり※)
さて本題です。
前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の
- 2.13(合成吸収線の形状)の項を記述しました。
今回は,その続きで次の節からです。
- 2.14 Bloch方程式とレート方程式
光学Bloch方程式と,それより簡単な原子占位数に
対するレート方程式の関係をより詳しく論じます。
第1章で論じた2準位原子の基礎となるレート
方程式は,(1.45)の,dN1/dt=-dN2/dt
=N2A21-N1B12W(ω)+N2B21W(ω) です。
一方,本章で導出した光学Bloch方程式は,
(2.114),(2.115)の,
dρ22/dt=(-iΩ*/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12
+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22,
および,dρ12/dt=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}
(ρ11-ρ22)-γρ12の後者を,(2.134)の,
dρ12/dt=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)
-γ^ρ12.,(γ^=γ+γcoll)と修正した式において,
(2.116)と同様,ρ~12=exp{i(ω0-ω)t}ρ12,
ρ~21=]exp{-i(ω0-ω)t}ρ21.(2.160)として振動因子
を消した方程式(2.161)の,dρ22/dt=(-iΩ*/2)ρ~12
+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22.,および,(2.162)のdρ~12/dt
=(iΩ/2) (ρ11-ρ22)+{i(ω0-ω)-γ^}ρ~12 が最も
一般的なモノです。ここで,γは放射減衰速度,γ^は放射
減衰速度:γと,衝突減衰速度γcollの和:γ^=γ+γcollで
示される減衰定数です。
磁場内のスピンに対するBloch方程式のアナロジーで,
減衰定数を2γ=1/T1,γ^=1/T2.(2.163)と表わす
こともあります。T1,および,T2.は,それぞれ,縦,および,
横の緩和時間と呼ばれています。
レート方程式と光学Bloch方程式の関係を調べるのには,
|Ω|がγやγ^よりはるかに小さい,つまりビーム強度の
弱い極限が最も簡単です。
のときは,前に仮定したのと同じ初期条件:ρ22=ρ12=0
の場合,|Ω|の低次の(2.161),(2.162)の解を求めます。
以前,「光の量子論12」では,|Ω|<<γの極限での|Ω|
について最低次のρ22の解は,初期条件ρ22=ρ12=0の下で,
ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]
×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]
(2.128)となります。と書きました。
今のケースでのより一般的な解は,
ρ22(t)={(|Ω|2/4)
[(γ^/γ)/{(ω0-ω)2+γ^2}
+{(2γ-γ^)/γ}/{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}]
exp(-2γt)
-[2{(ω0-ω)2+γ^(2γ-γ^)}cos{(ω0-ω)t}
+4(ω0-ω)(γ^-γ)sin{(ω0-ω)t}]exp(-γ^t)
/[{(ω0-ω)2+γ^2}{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}].(2.164)
で与えられることがわかります。
※(注15-1):以下では今回の方程式の解:(2.164)を証明
するため,前に「光の量子論12」の(注12-2)で,(2.128)を
求めるために実施したのと同じ手順を修正して繰り返します。
[証明]:まず,ρ~12=exp{i(ω0-ω)t}ρ12,
ρ~21=exp{-i(ω0-ω)t}ρ21,とおくと,基本方程式は,
dρ22/dt=(-iΩ*/2)ρ~12+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22.
dρ~12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γ^ρ~12
-i(ω0-ω)ρ~12となります。
dρ~21/dtは,これの複素共役で与えられ,
dρ~21/dt=(-iΩ*/2)(1-2ρ22)-γ^ρ~21
+i(ω0-ω)ρ~21となります。
そこで,x=ρ22,y=(-iΩ*/2)ρ~12,y*=(iΩ/2)ρ~21
と置くと,これらは,dx/dt=y+y*-2γx,
dy/dt=(|Ω|2/4)(1-2x)+{-γ^+i(ω0-ω)}y
dy*/dt=(|Ω|2/4)(1-2x)+{-γ^-i(ω0-ω)}y*
と書けます。
整理すると,dx/dt=-2γx+y+y*,
dy/dt=-(|Ω|2/2)x+{-γ^+i(ω0-ω)}y+|Ω|2/4,
dy*/dt=-(|Ω|2/2)x+{-γ^-i(ω0-ω)}y*+|Ω|2/4
です。そこで,これを3次元の列ベクトル:X=[x,y,y*]T
に対する線形非同次の行列方程式の形で3×3係数行列をA^
として,dX/dt=A^X+b,と書きます。
ただし,定数項bはb=[0,|Ω|2/4.|Ω|2/4]Tです。
これの初期条件がt=0でX=0の解は,既に何度か示した
ように,X(t)={exp(A^t)-1}A^-1bで与えられます。
A^の逆行列:A^-1は,その要素が,
(detA^)(A^-1)11=γ^2+(ω0-ω)2
(detA^)(A^-1)12=-{-γ^-i(ω0-ω)},
(detA^)(A^-1)13=-{-γ^+i(ω0-ω)}
(detA^)(A^-1)21=-(|Ω|2/2),
(detA^)(A^-1)22=-2γ{-γ^-i(ω0-ω)}+|Ω|2/2,
(detA^)(A^-1)23=-(|Ω|2/2),
(detA^)(A^-1)31=(|Ω|2/2){-γ^-i(ω0-ω)},
(detA^)(A^-1)32=-|Ω|2/2,
(detA^)(A^-1)33=―2γ{-γ^+i(ω0-ω)}+|Ω|2/2,
で与えられます。
ただし,detA^=-2γ{γ^2+(ω0-ω)2}
-(|Ω|2/2){-γ^+i(ω0-ω)}
-(|Ω|2/2){γ^-i(ω0-ω)}
=-2γ{γ^2+i(ω0-ω)2+|Ω|2/2}です。
また,A^X=αX(X≠0)を満たす固有値αを求める
方程式は,det(A^-αI^)=0ですが,これは,
(-2γ-α){(-γ^-α)2+(ω0-ω)2}
-(|Ω|2/2){(-γ^-α)-i(ω0-ω)}
-(|Ω|2/2){(-γ^-α)+i(ω0-ω)}=0となります。
つまり,(-2γ-α){(-γ^-α)2+(ω0-ω)2}
-|Ω|2{(-γ^-α)=0です。
さらに,書き下すと,
α3+{γ^2+(ω0-ω)2-|Ω|2}α+2γ{γ^2+(ω0-ω)2
+(|Ω|2/2)}=0 です。
しかし,今は|Ω|の最低次近似を求めればいいので,
因子:|Ω|2を含む項を無視する近似では,
固有値方程式は,(α+2γ){(α+γ^)2+(ω0-ω)2}=0
となり,異なる3つの固有値として,α0=-2γ,
α±=-γ^±i(ω0-ω)(複号同順)なる近似値を得ます。
それ故,特に,α++α-=-2γ^,および,
α+α-=γ^2+(ω0-ω)2なる関係が成立します。
そして,この近似でα0,α+,α-に属する固有
ベクトルを,それぞれ,Y0,Y+Y-と書けば,定数倍
の任意性を除いて,
Y0=[1,0,0]T,Y+=[-(α0-α+)-1,1,0]T,
Y-=[-(α0-α -)-1,0,1]Tと書けること
がわかります。
何故なら,この近似で係数行列A^は第1行が[α0,1,1],
第2行が[0,α+,0].第3行が[0,0,α-]であるからです。
これら,Y0,Y+,Y-を3列に並べた行列を
P^=(Y0,Y+,Y-)と書いて定義し,その逆行列P^-1を,
P^-1=(Z0,Z+,Z-)と表わすと,
det(P^)=1なので,Z0=[1,0,0]T,Z+=[(α0-α+)-1,1,0]T,
Z-=[(α0-α-)-1,0,1]Tとなります。
こうすると,対角要素が固有値:α0,α+,α-の対角行列
Λ^は,Λ^=P^-1A^P^で与えられます。
そこで,exp(Λ^t)=P^-1exp(A^t)P^が成立します。
それ故,前に与えた初期値が0のdX/dt=A^X+b
の解:X(t)={exp(A^t)-1}A^-1bにおいて,|Ω|の最低
次近似の解としてのX(t)は,左からP^-1を掛けて,
P^-1X(t)={exp(Λ^t)-1}P^-1A^-1bを満たします。
これから,結局.X(t)=P^{exp(Λ^t)-1}P^-1A^-1b
が得られます。
ところで,A^の逆行列A^-1の要素の近似を書き下すと,
1行目は変更無しで,(detA^)(A^-1)11=α+α-,
(detA^)(A^-1)12=-α-,(detA^)(A^-1)13=-α+です。
また,2行目の近似は,(A^-1)21=(A^-1)23=0,および,
(detA^)(A^-1)22=-2γ{-γ^-i(ω0-ω)}=α0α-です。
3行目は,(A^-1)31=(A^-1)32=0,(detA^)(A^-1)33
=-2γ{-γ+i(ω0-ω)} =α0α+となります。
さらに,detA^=-2γ{γ^2+(ω0-ω)2}=α0α+α-
と書けます。
つまり,A^-1は1行目が[α0-1,-α0-1α+-1,-α0-1α--1 ],
2行目が[0,α+-1,0 ],3行目が[0,0,α--1 ]の行列です。
それ故,b==(|Ω|2/4)[0,1,1]Tに対して.
A^-1b={|Ω|2/(4α+α-)}
[-(α-+α+)/α0,α-,α+]Tです。
( ※bについては,|Ω|2を無視するとゼロとなって
無意味なので,|Ω|2を無視せず,因子として残します。)
さらに,左からP^-1=(Z0,Z+,Z-),Z0=[1,0,0]T,
Z+=[(α0-α+)-1,1,0]T,Z-=[(α0-α-)-1,0,1]T,
を掛けます。
つまり,1行目が,[1,(α0-α+)-1,(α0-α-)-1]
2行目が[0,1,0],3行目が[0,0,1]の行列を掛けます。
それ故,P^-1A^-1b={|Ω|2/(4α+α-)}
[-(α-+α+)/α0+α-/(α0-α+)+α+/(α0-α-)
,α-,α+]Tです。
故に,P^-1X(t)={exp(Λ^t)-1}P^-1A^-1b
={|Ω|2/(4α+α-)}
[{-(α-+α+)/α0+α-/(α0-α+)+α+/(α0-α-)}
{exp(α0t)-1},α-{exp(α+t)―1},α+{exp(α-t)―1}]T
となります。
最後に,両辺の左からP^=(Y0,Y+,Y-),Y0=[1,0,0]T,
Y+=[-(α0-α+)-1,1,0]T,Y-=[-(α0-α -)-1,0,1]T
つまり,1行目が,[1,-(α0-α+)-1,-(α0-α-)-1],
2行目が[0,1,0],3行目が[0,0,1]の行列P^を掛けて,
近似解:X(t)=[x(t),y(t),y*(t)]Tの成分を
求めます。
第1成分x(t)は,
x(t)={|Ω|2/(4α+α-)}[{-(α-+α+)/α0
+α-/(α0-α+)+α+/(α0-α-)}exp(α0t)
-{α-/(α0-α+)}exp(α+t)
-{α+/(α0-α-)}exp(α-t)
-(α-+α+)/α0 -α-/(α0-α+)-α+/(α0-α-)}
+α-/(α0-α+)+α+/(α0-α-) です。
故に,{|Ω|2/(4α+α-)}exp(α0t)
={|Ω|2/(4α+α-)}exp(-2γt)の係数は,
-(α-+α+)/α0+α-/(α0-α+)+α+/(α0-α-)
となります。
ところで,α+/(α0-α-)+α-/(α0-α+)
=[α0 (α++α-)-(α+2+α-2)}
/{(α0-α+)(α0-α-)}
=(α++α-)
×{α02-α0(α++α-)+2α0(α+α-)/(α++α-)}
/{α0(α0-α+)(α0-α-)}
=(α++α-)/α0+{2α0-(α++α-)}(α+α-)}
/{α0 (α0-α+)(α0-α-)}
=(α+α-)[(γ^/γ)/{(ω0-ω)2+γ^2}
+2{(2γ-γ^)/γ}/{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}です。
他方,α+/(α0-α-)-α-/(α0-α+)
=α0 (α+-α-)-(α+2-α-2)}
/{(α0-α+)(α0-α-)}
=(α+-α-){α02-α0 (α++α-)}
/{α0 (α0-α+)(α0-α-)}
=(α+-α-)/α0
-{(α+-α-)(α+α-)}/{α0 (α0-α+)(α0-α-)}
=(α+α-)[{i(ω0-ω)/γ}/{(ω0-ω)2+γ^2}
-{i(ω0-ω)/γ}/{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}です。
したがって,exp(α0t)=exp(-2γt)の項は,,
(|Ω|2/4)[{(2γ-γ^)/γ}/{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}]
exp(-2γt) と書けます。
定数項は,{|Ω|2/(4α+α-)}(α-+α+)/α0
=(|Ω|2/4)(γ^/γ)/{(ω0-ω)2+γ^2}です。
そこで,ρ22の非振動項は,
(|Ω|2/4)×[(γ^/γ)/{(ω0-ω)2+γ^2}
+{(2γ-γ^)/γ}/{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}
exp(-2γt)]となります。
また,振動項は,
-{|Ω|2/(4α+α-)}[{α-/(α0-α+)}exp(α+t)
+{α+/(α0-α-)}exp(α-t)
=-{|Ω|2/(4α+α-)}
[{α-/(α0-α+)}exp(-γt)exp{-i(ω0-ω)t}
+{α+/(α0-α-)}exp(-γt)exp{i(ω0-ω)t}]
ですが,exp{±i(ω0-ω)t}
=cos{(ω0-ω)t}±isin{(ω0-ω)t}です。
そこで,このexp(-γt)に比例する項は,
-(|Ω|2/4) exp(-γt)
[(γ^/γ)/{(ω0-ω)2+γ^2}
+2{(2γ-γ^)/γ}/{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}
cos{(ω0-ω)t}
-[{(ω0-ω)/γ}/{(ω0-ω)2+γ^2}
+{(ω0-ω)/γ}/{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}}
sin{(ω0-ω)t}
=-(|Ω|2/4)
×[2{(ω0-ω)2+γ^(2γ-γ^)}cos{(ω0-ω)t}
+{4(ω0-ω)(γ^-γ)sin{(ω0-ω)t}}exp(-γt)
/[{(ω0-ω)2+γ^2}{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}]
となります。
以上から,ρ22(t)=x(t)=(|Ω|2/4)
×[(γ^/γ)/{(ω0-ω)2+γ^2}
+{(2γ-γ^)/γ}/{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}
exp(-2γt)]-[2{(ω0-ω)2+γ^(2γ-γ^)}
cos{(ω0-ω)t}
+{4(ω0-ω)(γ^-γ)sin{(ω0-ω)t}}
×exp(-γt)
/[{(ω0-ω)2+γ^2}{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}]
の(2.164)の表式が得られました。[証明終わり]
ちなみに,第2成分y(t)は,
y(t)=(-iΩ*/2)ρ~12(t)
={|Ω|2/(4α+α-)}{α-{exp(α+t)―1}
=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ^2}]
{{-γ^-i(ω0-ω)}{exp(-γ^t+i(ω0-ω)t}
―1]となるので,ρ~12(t)
=exp{i(ω0-ω)t}ρ12(t)
=[(Ω/2)/{(ω0-ω)2+γ^2}]
[{(ω0-ω)-iγ^}{exp[{-γ^t+i(ω0-ω)t}-1]
です。
結局,ρ12(t)=(Ω/2)[exp(-γ^t)-exp{-i(ω0-ω)t}]
/{(ω0-ω)+iγ^}を得ます。 (注15-1終わり※)
さて,(2.164)は,衝突広がりγcollがないγ^=γの場合は,
前に得た(2.128)のρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]
×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]
に帰着します。
今の議論では,非対角行列要素ρ12は必要ないですが,
後の第8章での使用のために,初期条件の制限を多少緩
めてt=0でρ22(はゼロですが,ρ12は任意の初期値ρ12(0)
を持つときの|Ω|について最低次の解として,
ρ12(t)=[(iΩ/2)/{i(ω0-ω)-iγ^}]
×{exp(-γ^t)-exp{-i(ω0-ω)t}
+ρ12(0)exp(-γ^t).(2.165)
を与えておきます。
※(注15-2):上記を証明します。
(注15-1)では,dX/dt=A^X+b,
b=[0,|Ω|2/4.|Ω|2/4]Tですの初期条件が
X(0)=0の解は,
X(t)={exp(A^t)-1}A^-1bで与えられる,
と書きましたが.X(0)がゼロとは限らず,任意の
ベクトルの場合の解は,明らかに,
X(t)={exp(A^t)-1}A^-1b+exp(A^t)X(0)
となります。
ここで,P^-1A^P^=Λ^(対角行列)を満たすP^を
用いれば,X(t)=P^{exp(Λ^t)-1}P^-1A^-1b
+exp(Λ^t)X(0)です。
そこでX(0)=[0,y(0),0]Tの場合の第2成分は,
y(t)=(-iΩ*/2)ρ~12(t)
={|Ω|2/(4α+α-)}{α-{exp(α+t)―1}
+y(0)exp(α+t)=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ^2}]
[{{-γ^-i(ω0-ω)}exp{-γ^t+i(ω0-ω)t}―1]
+y(0)exp{-γ^t+i(ω0-ω)t}です。
したがって,結局,ρ12(t)=[(iΩ/2)/{i(ω0-ω)-iγ^}]
×{exp(-γ^t)-exp{-i(ω0-ω)t}+ρ12(0)exp(-γ^t)
が得られます。(注15-2終わり※)
さて,レート方程式から求めた励起状態の占位数の時間
依存性は,(1.70)の,
N2={NBW/(A+2BW)}[1-exp{-(A+2BW)t}]
から,入射ビームWが弱い場合には,
N2=(NBW/A){1-exp{-(At)}.(2.166)が得られます。
対角解(2.164)がこれと同等な時間依存性を持つ2通りの
異なる状況が存在します。第1の状況は周波数の広がりが
原子遷移の線幅2γ^より大きい広帯域入射光のある場合です。
(2.164)の複素周回積分を利用して,γ^が2γより大きくても,
小さくても,∫-∞∞ρ22dω={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}
(2.167)を示すことができます。
※(注15-3):上記を証明します。
[証明] まず,∫-∞∞dω[(γ^/γ)/{(ω0-ω)2+γ^2}]=π/γ,
かつ,∫-∞∞dω[{(2γ―γ^/γ)}/{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}]
=π/γです。
それ故,∫-∞∞dω(|Ω|2/4)[(γ^/γ)/{(ω0-ω)2+γ^2}
+{(2γ-γ^)/γ}/{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}
exp(-2γt)]={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}です。
一方,∫-∞∞dω[2{(ω0-ω)2+γ^(2γ-γ^)}
cos{(ω0-ω)t}+{4(ω0-ω)(γ^-γ)sin{(ω0-ω)t}}
exp(-γ^t)/[{(ω0-ω)2+γ^2}{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}]
を計算するために,まず,ν=ω-ω0と変数置換します。
ω0-ω=-νでdω=dνですから,
∫-∞∞dν [2{ν2+γ^(2γ-γ^)}cos(νt)
-{4ν(γ^-γ)sin(νt)}exp(-γt)
exp(-γ^t)/[(ν2+γ^2){ν2+(2γ-γ^)2}]です。
ここで,cos(νt)=(1/2){exp(iνt)+exp(-iνt)}
sin(νt)=(-i/2){exp(iνt)-exp(-iνt)} を
代入すれば,
∫-∞∞dν[{ν2+γ^(2γ-γ^)}cos(νt)
exp(-γ^t)/[(ν2+γ^2){ν2+(2γ-γ^)2}]
=∫-∞∞dν[{ν2+γ^(2γ-γ ^)}
{exp(iνt) +exp(-iνt)}]
exp(-γ^t)/[(ν2+γ^2){ν2+(2γ-γ^)2}]
であり,
-∫-∞∞dν{4ν(γ^-γ)sin(νt)}
exp(-γ^t)/[(ν2+γ^2){ν2+(2γ-γ^)2}]
=-∫-∞∞dν{-2iν(γ^-γ)}
{exp(iνt)-exp(-iνt)}
exp(-γ^t)/[(ν2+γ^2){ν2+(2γ-γ^)2}]
です。つまり,与式
=∫-∞∞dν[{ν2+γ^(2γ-γ ^)+2iν(γ^-γ)}
exp(iνt)exp(-γ^t)]/[(ν2+γ^2){ν2+(2γ-γ^)2}]
-∫-∞∞dν{{ν2+γ^(2γ-γ ^)-2iν(γ^-γ)}
exp(-iνt)exp(-γ^t)]
/[(ν2+γ^2){ν2+(2γ-γ^)2}]
=∫-∞∞dν [exp(iνt)/[(ν+iγ^){ν-i(2γ-γ^)2}]
-∫-∞∞dν [exp(-iνt)}/[(ν-iγ){ν+i(2γ-γ^)2}]
です。
これを求めるために,νを複素数として,複素平面上の実軸
に,半径が+∞の半円周を加えた閉路上の同じ被積分関数の
周回積分を考えます。
exp(iνt)に比例する項では,実軸に虚部が正の上半円
の周を加えた反時計周り(正)の外周C1を採用し,
exp(-iνt)に比例する項では,実軸に虚部が負の下半円
の周を加えた時計周り(負)の外周C2を採用すれば,共に,
元の実軸上の実積分に一致します。
C1上の積分では,これの内部の1位の極は2γ<γ^
なら,ν=-i(2γ-γ^)で,2γ>γ^ならなしです。|
そこで,Cauchyの留数定理から積分値は,2γ>γ^なら
ゼロですが,2γ<γ^,
なら(2πi)(-2iγ)-1exp{-(2γ-γ^)t})exp(-γ^t)
=-(π/γ)exp(-(2γt)となります。
一方,C2上の積分ではこれの内部の1位の極は2γ<γ^
ならν=i(2γ-γ^)で,2γ>γ^ならなしです。
そこで積分値は, 2γ>γ^ならゼロですが,2γ<γ^
なら-(-2πi)(2iγ)-1exp{-(2γ-γ^)t})
exp(-γ^t)=(π/γ)exp(-(2γt)です。
したがって,2γ<γ^でも2γ>γ^でも,これらの
積分の寄与の総和はゼロで,結局,∫-∞∞ρ22dω
={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}と結論されます。
(注15-3終わり※)
さて,第2の状況は,γ^>>2γと,衝突広がりが大きい
場合です。このとき,時間tが1/γと同程度であれば,
t>>1/γ^が成立するので,下に再掲載する(2.164)式の
ρ22(t)=(|Ω|2/4)×[(γ^/γ)/{(ω0-ω)2+γ^2}
+{(2γ-γ^)/γ}/{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}exp(-2γt)]
-[2{(ω0-ω)2+γ^(2γ-γ^)}cos{(ω0-ω)t}
+{4(ω0-ω)(γ^-γ)sin{(ω0-ω)t}}exp(-γt)
/[{(ω0-ω)2+γ^2}{(ω0-ω)2+(2γ-γ^)2}]
は,ρ22(t)={|Ω|2γ^/(4γ)}/{(ω0-ω)2+γ^2}
×{1-exp(-2γt)}.(2.168)に帰着します。
(※ 何故なら,(2γ-γ^)~(-γ^)より,
ρ22(t)~{|Ω|2γ^/(4γ)}
×[{1-exp(-2γt)}+exp(-γ^t){exp{i(ω0-ω)t}
+exp{-i(ω0-ω)t}]/{(ω0-ω)2+γ^2}ですが,
γ^t>>1より,exp(-γ^t)~ 0で最後の振動項は無視
できます。)
ここで,R=(|Ω|2γ^/2)/{(ω0-ω)2+γ^2}(2.169)
と定義すれば,
レート方程式:dρ22/dt=R-2γρ22 (2.170)の
解は,ρ22(t)={R/(2γ)}{1-exp(-2γt)}.(2.171)
となり,(2.168)に一致します。
これらの(2.168),(2.171)は基礎的レート方程式の解
N2=(NBW/A){1-exp{-(At)}.(2.166)と同一です。
γ^>>γの極限で光学Bloch方程式のと等価な(2.170)
のdρ22/dt=R-2γρ22,は,励起状態の占位数が,
励起速度Rと放射減衰速度A=2γとの競合によって
決まることを示しています。
R=(|Ω|2γ^/2)/{(ω0-ω)2+γ^2}により,励起速度
の入射周波数ωへの依存性は衝突によって広がった原子
遷移のLorentz型曲線形に従っています。
励起速度Rは§1.12のレーザー理論での準位3から
準位2へのポンピング速度と同様の意味を持ちます。
レート方程式が成り立つのは「(ⅰ)入射光のバンド幅
が原子遷移の線幅より広い。」か「(ⅱ)(衝突幅)+
(Doppler幅)を組み合わせた線幅が.遷移放射による線幅
よりずっと広い。」かのいずれか.の場合です。
今回は,ここで第2章が終わるので,ここまでにします
参照過去ノートの本章終了の日付けは,2006年8/9(木)
で長年の糖尿病の放置が原因で年末に心臓疾患になり,4月
に手術を受け,再びプータローになり,かつ,障害者になる
ことなどは予想もしていない56歳半ばの頃です。
(参考文献):Rodney Loudon 著
(小島忠宣・小島和子 共訳)
「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)
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