光の量子論16
※「光の量子論15」からの続きで,第3章
に入ります。
(※余談)この「光の量子論」シリーズを書き始めた動機
は,昨年秋頃,そもそも.意外と知らずに使っている身の
まわりの電気製品のメカニズムを自分の認識能力内で
簡単カツ明瞭に書いてみたい,という欲望が起きたこと
からです。
まずは,熱交換機,冷媒,ペルチエ効果で冷暖房用の
エアコン(ヒートポンプ)や冷蔵庫,冷温蔵庫などの
説明を書き,次に,電灯の話に移り,白熱電球,蛍光灯,LED
の説明に移り,電球の話で,つい,20世紀末の昔,物理
フォーラムで,サブシスをていた時代に,話題となった
電流理論,電気回路理論に深入りし。高校でも習うオーム
の法則や,ジュール熱に,その熱エネルギーが,どうして光
に変わるのか?ということで,固体内電子のバンド理論
からフォノンの話まで.どんどん脱線しました。
とりあえず,蛍光灯の話に移り.水銀蒸気に陰極からの
熱電子が衝突して発生した紫外線が蛍光管壁の物質に
衝突して発生する蛍光を利用するという程度で,次のLED
に進めばいいのに,生来の偏執質な性格で,蛍光は誘導放出
じゃなく自然放出だったよな?とか燐光との違いは?とか
気になり,これもウィキの解説程度でお茶濁しておけばいい
のに,そういえば10年くらい前に光学と量子論など詳しく
勉強したことを思い出したのがウンノツキて,1から記憶を
取り戻す気になったのがこのシリーズのきっかけでした。
しかし,蛍光灯の話なら,第2章までで十分で,ここで
このテーマのブログを中断して,元の蛍光灯システムの
具体的説明に移ろうかな?と一瞬思いました。
ですが,第3章の「カオス光のゆらぎの性質」
なども,確かに,昔,コヒーレンズ(可干渉性)が気になり,
位相が無相関の相関係数ゼロに近い普通の部屋の中を
照らしているようなカオス光じゃ,現実に反して部屋の
中が真っ暗になってしまう。などと,いうようなバカな
誤解釈をワザワザ,掲示板に投稿して失笑を買ったこと
もあります、イヤ,真っ暗になるのは相関係数がゼロの
ときじゃなく,丁度,-1の逆相関の干渉性によるのが
真実である。と自分で訂正したというエピソードも,
思い出したのでした。
というわけで,一旦始めたシリーズは,白熱灯に続き,
蛍光灯の仕組みを簡単に説明したいだけ,という元の
動機も忘れて,もう少し惰性的に続けよう,と保守的で
安易な選択をする気になりました。(余談終わり※)
さて,本題に戻ります。
第3章 カオス光のゆらぎの性質
※参照ノートの第3章開始の日付は第2章終了と同日の
2006年の8/9となっています。
本章では励起原子の放射遷移により発生した放出光の
特性を考察します。この特性は,原理的に2種類の異なる
実験によって測定できます。
まず,通常の分光法では,光の周波数分布が測定され,
2章で略述した理論によって,これから光源の線幅を広げる
過程の性質と強度に関する情報が得られます。
本章での主な関心事は第2の種類の実験であり,その
実験では,光ビームの振幅,i.e,強度の時間依存性を測定
します。光源の線幅を広げる過程はまた,ビームの電場と
強度に,その周波数の広がりに反比例する時間スケールで
平均値のまわりのゆらぎを引き起こすことが示されます。
これらの時間的ゆらぎと周波数の広がりとは,光源を構成
する放射原子が持つ同じ物理的性質の現われですが,光学
実験の全領域を説明するには,どちらの側面も欠かせません。
光源には2つの型があり,それらを区別することが大切です。
普通の分光器は,光源は気体放電ランプであり,そこでは個々
の原子が放電によって励起され,相互に無関係に光を放射して
います。発光線の形は,原子の速度の統計的広がりと不規則に
起こる衝突によって決定されます。広く用いられている,この
種の光源を「カオス光源」と呼びます。
熱空洞とフィラメントランプは,他のカオス光源の例です。
如何なる種類のカオス光源から出た光ビームでも,同じ
ような統計的特徴を持っていて,ただ,統計的分布のパラメータ
だけが,カオス光ビームごとに異なっています。
第2の型の光源は「レーザー光」であり,これは全く別の
統計的性質を持っています。
レーザー光の性質は,本章では,ごく簡単に述べるに
留め,詳しい議論は,後の第7章まで保留することに
します。以下で行う計算では,光ビームの古典的記述を
用います。古典的モデルは,ゆらぎの効果の本質を正しく
認識するのに役立つばかりでなく,6章で示すように
カオス光に関しては,古典論も量子論も同じ予測を与える
ことがわかります。
2つの理論が異なる可能性のある,他の種類の光に
関しては,量子論予測の重要性は,それに対応した
古典論を背景にしたとき,一層,明快に理解できるはず
です。
- 3.1 ゆらぎのある光ビームのスペクトル
光ビームが通過する固定した観測点で,その電場の時間
依存性を測定する実験を考えます。
本章では主として,光源の性質からビームの電場と強度
のゆらぎの性質が決定される過程を扱います。
観測点での光の周波数ウペクトルは,
E(ω)=(2π)-1∫-∞∞E(t)exp(iωt)dt.(3.1)
で定義される電場のFourier成分によって決まります。
周波数がωの光のサイクル平均強度は.
|E(ω)|2=(4π2)-1∫-∞∞dt∫-∞∞dt’
[E*(t)E(t’)exp{iω(t-t’)}
=(4π2)-1∫-∞∞dt∫-∞∞dτ
[E*(t)E(t+τ)exp(iωτ)}.(3.2),
ただし,τ=t’-t.(3.3)で与えられます。
- 3.4で示す予定ですが,ある種の光学干渉実験
で,(3.2)の右辺のtについての積分が必然的に実行
されているものがあります。積分がカバーする時間
は,現実の実験では,当然,無限大では有り得ません
から,大きいが有限な時間Tを∞に置き換える,こと
にします。
そして,1次の電場相関関数を,
<E*(t)E(t+τ)>
=(1/T)∫T[E*(t)E(t+τ)]dt.(3.4)
で定義します。これは,時刻tの電場がt+τで取り
得る種々の値の確率に影響する様子を記述します。
その形は,光源の作り出したゆらぎの種類によって
決まります。
光源の性質が「定常的」,つまり,ゆらぎの統計を
支配する要因が時間的に不変であれば,Tが,ゆらぎ
の特性時間スケールと比べて大きい場合に限って,
(3.4)の平均値は,特定の出発時刻に無関係になります。
このとき,(3.4)の平均値は時間平均操作によって,
光源の統計的性質が許容する,あらゆる電場の値を,
それぞれ,適当な相対確率で標本抽出できます。
そして,その結果はTの大きさに依存しません。
,例えば,実験的に相関係数を決定するには,(3.4)の
右辺のような時間平均を取ればいいのに対し,この関数
は,tとt+τにおける場のあらゆる値にわたる統計平均
を取ることによって計算されます。
そうして,この結果はもちろんtに依存しません。
すなわち,相関はτだけの関数で,こうした平均化の
処理は§1.4で触れた「エルゴード定理」に合致して
います。このとき,周波数ωでの強度のサイクル平均:
(3.2)の|E(ω)|2=(4π2)-1∫-∞∞dt∫-∞∞dτ
[E*(t)E(t+τ)exp(iωτ)},は,
|E(ω)|2={T/(4π2)}
∫-∞∞[<E*(t)E(t+τ)>exp(iωτ)]dτ.(3.5)
となります。
ここで,(2.64)のデルタ関数の公式:δ(ω0-ω)
=(2π)-1∫-∞∞exp{i(ω0-ω)t}dtより,
∫-∞∞exp{i(iωτ)dω=(2π)δ(τ)を用いれば.
∫-∞∞|E(ω)|2dω={T/(2π)}<E*(t)E(t)>
(3.6)です。
そこで,規格化された光スペクトル分布関数Fを,
F(ω)=|E(ω)|2/∫-∞∞|E(ω)|2dωと定義して,
F(ω)=(2π)-1∫-∞∞g(1)(τ)exp(iωτ)dτ,(3.7)
の形に書き,g(1)(τ)なる量を導入すれば,
このg(1)(τ)は,g(1)(τ)==<E*(t)E(t+τ)>
/<E*(t)E(t)>.(3.8)で与えられ,規格化された
1次相関関数と呼ばれます。
この量はまた,「光の1次時間コヒーレンス度」と
呼ばれています。光スペクトルと1次相関関数を結ぶ
(3.7)は,「Wiener-Khintchin(ウィーナー・ヒンチン)
の定理」の1つの形です。
(※つまり,ω空間の統計分布に時間空間のそれを対応
させるエルゴード性の表現の1つ.と考えられます。)
これは,分布実験の結果と,時間に依存する光のゆらぎ
の測定結果の間の形式的関係を与えています。
この関係は正のτのみの積分に直すことができます。
すなわち,(3.7)は,F(ω)
=(2π)-1∫-∞∞g(1)(τ)exp(iωτ)dτですから,
F(ω)=(2π)-1∫0∞g(1)(τ)exp(iωτ)dτ
+(2π)-1∫-∞∞g(1)(-τ)exp(-iωτ)dτ.(3.9)
と書けますが,相関関数の定義(3.4)の:
<E*(t)E(t+τ)>
=(1/T)∫T[E*(t)E(t+τ)]dtにより,
1次相関関数g(1)(τ)=<E*(t)E(t+τ)>
/<E*(t)E(t)>も,時刻tに依存しないので,
g(1)(-τ)=<E*(t)E(t-τ)>
/<E*(t)E(t)>
=<E*(t+τ)E(t)>
/<E*(t)E(t)>=g(1)*(τ)(3.10)
です。こうして,結局,
F(ω)=π-1Re∫0∞g(1)(τ)exp(iωτ)dτ
(3.11)を得ます。
- 3.2 衝突広がりのある原子のモデル
ゆらぎの一般論は,衝突広がりが優先する光源
から出た光にも容易に適用できます。
放射広がりとドプラー広がりを無視し,衝突は
原子状態を変えない弾性的位相中断型であると
します。そして,周波数ω0の光を放射する特定の
励起原子を考えます。
原子が衝突するまでの間,原子から定常的に
放射される電磁放射の波列を想定します。
衝突している間,光を放射する原子のエネルギー
準位は,衝突する2つの原子間相互作用の力によって
ずれます。
したがって,放射される波列は,衝突の間,中断する
ことになります。衝突後,再び,周波数ω0の波列を
取り戻すと,その特性は波の位相が衝突前の位相と
無関係になっている以外は,衝突前に持っていた
特性と同一です。
衝突の間,放出される放射については,周波数が
ω0からずれていますが,衝突時間が十分短かければ
その放射は無視できます。そのときは,衝突広がりの
効果は,各励起原子は常に周波数ω0で放射しますが,
放射された波の位相は衝突が起こる度に不規則に変わる
という模型(モデル)で表わすことができます。
放出光の周波数に見かけの幅が現われるのは,波が
有限の切片で分断されるので,Fourier成分がω0以外の
周波数を含むことが原因です。
τ0を(2.131)の,自由飛行平均時間とすると,その
代表的な値として,(2.141)のτ0 ~ 3×10-11sと,(1.65)
の周波数:ω~ 3×1015Hzの可視光周波数をω0に取ると,
ω0τ0~ 9×104.(3.12)が得られます。
これらの数値を使うと,1個の原子から放射された波列
は引き続く2回の衝突の間に平均で約15000周期の振動を
することになります。
こうした波の場の振幅は振動形で,
E(t)=E0exp{-iω0t+iφ(t)}.(3.13)と書いてよい
と考えられます。この位相:φ(t)は自由飛行時間中は一定
に保たれ,衝突のたびに突然変化します。
一方,ω0はどの期間でも同じです。
衝突広がりのある光源から出た波全体は各放射原子
において,1つずつある(3.13)の項の和で表わされます。
そうした原子がν個あるとすると,電場の全振幅は,
E(t)=E1(t)+E2(t)+..+Eν(t)..
=E0exp(-iω0t)
[exp{iφ1(t)}+exp{iφ2(t)}+。。+exp{iφν(t)}
=E0exp(-iω0t)a(t) exp{iψ(t)}.(3.14)
となります。
以下,簡単のため観測する光は一定の偏り(偏光)を
持っているとします。
すると,個々を代数的に加えることができます。
E(t)=E0exp(-iω0t)a(t) exp{iψ(t)}
から得られる電場Eは,不規則な振幅変調と位相
変調を受けた周波数ω0の搬送波より成り立って
います。
搬送波の周波数で起きているE(t)の振動を
Fourier分解することは,実際上不可能です。実験的
に,うまく分解できる時間は約10 -9s程度であり,
これは(1.65)の,ω ~3×1015Hzの振動を検出する
には6桁ほど長過ぎます。
したがって,実験と比較するには,理論の結果を
搬送波の振動のサイクルについて平均するのが適切
です。E(t)=E0exp(-iω0t)a(t) exp{iψ(t)}
から実電場ではω0のサイクルについて平均すると
ゼロとなります。
しかし,ここで,過去記事;「光の量子論3」を参照
すると,Iを光(電磁波)の強度としてI=E×B/μ0で
定義すると,光ビーム強度のサイクル平均は,(1.89)式
の<I>=(1/2)ε0cη|E(r,t)|2で与えられます・,
これによると,誘電体のない自由空間でのビーム強度
のサイクル平均は,η=1により,
<I(t)>=(1/2)ε0c|E(r,t)|2
=(1/2)ε0cE02{a(t)}2 (3.15)です。
左辺が時間平均なのに時間tの関数なのは
平均強度が,不規則な振幅変調a(t)のために,
なお,時間tに依存する因子を含んでいるからです。
各原子の位相の変動は,τからτ+dτの間で
衝突を受けない確率p(τ)dτが,(2.131)式の,指数
分布:p(τ)dτ=(1/τ0)exp(-τ/τ0)dτなる確率
法則に従う自由飛行時間τ0を有します。
<I(t)>,ψ(t)の時間スケールはτ0だけで
決まります。
時間τ0の間には,強度と位相に,かなりの変化が
生じることもありますが,Δt<<τ0のΔt内では,
これらの量は,ほぼ一定と見てよいことがわかります。
放射広がりとゴプラー広がりを含めると,上述の論旨
は,細かい点では修正されるでしょうが,しかし,強度と
ゆらぎは衝突広がりのみのものと同様です。
線幅を広げる,どのような機構の組み合わせにも衝突
広がりのτ0に類似した不規則なゆらぎの時間スケール
を決める,ある特有の時間が存在します。一般に,この
特有な時間スケールを光ビームのコヒーレンス時間と
いい,これをτcと表わします。この大きさは周波数の
広がりの逆数の程度です。
今後の全ての理論では,周波数の広がり:Δω~1/τ
が,ω0に比べて小さい,つまり,ω0τc ~(ω/Δω)が1
よりはるかに大きい光ビームに言及を限ることにします。
明らかなように,空洞の熱励起によって発生した光
(黒体輻射)は,平均周波数にほぼ等しい周波数の広がり
を持っているので,この範疇には入りません。
コヒーレント時間に関連する径路の長さλc=cτc.
(3.16)をコヒーレンス長といいます。
今考えてぃる光ビームでは,コヒーレンス長は,光の波長
よりずっと長いです。
- 3.3 1次コヒーレンスと周波数スペクトル
衝突広がりを持つ光源についてのモデルを用いて,光の
1次電場相関関数,1次コヒーレンス度,および,周波数
スペクトルが計算できます。
まず,(3.4)の,<E*(t)E(t+τ)>
=(1/T)∫T[E*(t)E(t+τ)]dtに,時間平均として
栄議した,種々の時刻tにおける電場の相関関数を考えます。
E(t)は,コヒーレンス時間よりずっと短かい期間では,
その変化はわずかですが,コヒーレンス時間よりはるかに
長い期間には大きな変化を生じます。
そのような長い期間を隔てた2つの時刻での電場間には
事実上,相関はないはずです。
サンプリング時間Tが多数のコヒーレンス時間に
またがっている場合,(3.4)は光の性質だけに依存し,
Tには依存しません。
検知器の分解時間はτcよりずっと短かく,またビーム
方向の寸法λcよりずっと小さくなければなりません。
これらは,(3.4)の相関関数の計算に「エルゴード定理」
が使えるための条件です。こうして,< >は統計平均とも
解釈され,求める相関関数は,
(3.14)の,E(t)=E0exp(-iω0t)
[exp{iφ1(t)}+exp{iφ2(t)}+..+exp{iφν(t)}]
なる表現を利用して,
<E*(t)E(t+τ)>=E02exp(-iω0t)
×<[exp{-iφ1(t)}+..+exp{-iφν(t)}]
×[exp{iφ1(t+τ)}+..+exp{iφν(t+τ)}]>.
(3.17)と書けます。
2つの大括弧[ ]をはずすと,別の原子から出た波列
の位相角は,それぞれ,ばらばらの値を取るので,交差項
の寄与は,平均を取ると消えてしまいます。
そして,放射原子は全て等価ですから残った項から,
<E*(t)E(t+τ)>=E02exp(-iω0t)
Σi=1ν<exp{i{φi(t+τ)-φi(t)}>
=ν<Ei*(t)Ei(t+τ)>.(3.18)を得ます。
このようにして,全体としての光ビームに対する相関
関数は.単一の原子の寄与によって決まります。
ところで,各波列の位相角は,その原子が衝突した後は,
勝手な値に跳ぶので,その次に平均を取ると寄与はゼロ
となります。
こうして,<E*(t)E(t+τ)>=E02exp(-iω0t)
Σi=1ν<exp{i{φi(t+τ)-φi(t)}>
=ν<Ei*(t)Ei(t+τ)>.の右辺の単一の原子の
相関関数は,その原子がτより長い自由飛行時間を持つ
確率に比例します。
τからτ+dτの間に衝突を受けない確率p(τ)dτ
が,p(τ)dτ=(1/τ0)exp(-τ/τ0)dτである
という,(2.131)を用いると,
<Ei*(t)Ei(t+τ)>=E02exp(-iω0t)
<exp{i{φi(t+τ)-φi(t)}>
=E02exp(-iω0τ)∫τ∞p(τ)dτ
=E02exp{-iω0τ-(τ/τ0)}.(3.19)
と置くことができます。
それ故,(3.18)は,
<E*(t)E(t+τ)>
=νE02exp{-iω0τ-(τ/τ0)}.(3.20)と
なります。よって,規格化された相関関数,つまり,
1次コヒーレンス度:(3.8)のg(1)(τ)
=<E*(t)E(t+τ)>/<E*(t)E(t)>は,
g(1)(τ)=exp{-iω0τ-(τ/τ0)}.(3.21)と
表わされます。
衝突広がりのある光のスペクトルは,(3.11)
のF(ω)=π-1Re∫0∞g(1)(τ)exp(iωτ)dτ
に従って積分計算すれば得られ,
F(ω)=(πτ0)-1/{(ω0-ω)2+(1/τ0)2}.(3.22)
となります。
これは.(2.112)と同様な規格化Lorentz曲線形です。
放射広がり:γを無視すると,(2.133)で説明無しに
仮定したように,γcoll=1/τ0.(3.23)であれば,線幅:
(2/τ0)は,(2.140)の2γ^=2γ+2γcollと一致すること
を示しています。
それ故,1次コヒーレンス度は,
g(1)(τ)=exp(-iω0τ-γcollτ).(3.24)と書けます。
衝突広がりと放射広がりが共存するときは,
1次コヒーレンス度とスペクトルは,光源のモデルを
一般化すれば計算できます。
その結果は,上記のγcollが,これに放射減衰γを加えた
(2.135)の全減衰:γ^=γ+γcollになるように拡張すれば
いいです。
こうして,相関関数と1次コヒーレンス度)は,
<E*(t)E(t+τ)>=νE02exp(-iω0τ-γ^τ).(3.25)
および,g(1)(τ)=exp(-iω0τ-γ^τ).(3.26)と一般化
されます。
スペクトルは半値幅が,2γ^=2γ+2γcollのLorentz型
ビームで,コヒーレンス時間は,τc=1/γ^.(2.137)です。
ドプラー広がりがコヒーレンス度に及ぼす効果については
後の§3.5で考察予定です。
如何なる種類nカオス光でもτがτcよりずっと長く
なれば相関が無くなります。
また,<E(t)>=0.(3.28)により,1次コヒーレンス度
は,τ>>τcなら,g(1)(τ)=0.(3.29)という極限値を持つ
ことを注意して終わります。
今回は,ここまでにします。(つづく)
(参考文献):Rodney Loudon 著
(小島忠宣・小島和子 共訳)
「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)
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