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2020年3月 9日 (月)

くりこみ理論要約(1)

「くりこみ理論(5)(次元正則化)」シリーズは2019年2月の(1)

から2019年7月の(5)をで,アップしたのち後,長い期間が経過

しました。

今回,久しぶりに,続きの(6)をアッたいと思いましたが

中断期間が半年以上と長いので,以前の履歴も薄れており,

その前に過去記事を整理するため,このシリーズ記事の

(1)~(5)を要約しておきます。

PS:Windows10にOS変更を余儀なくされ図など

のコピペアップも今のところうまくできません。

 

※今回は,まず,(1)の要約です。,

※(前書き)これまで「ゲージ場の量子論」の第6章

までを記事としてアップしました。

しかし,ここからは,第7章「くりこみ」の項目に

ついて,勉強した履歴の過去ノートから,回顧として

の記事を開始します。

このノートでの第7章の開始日は1997年3月20日

(47歳当時)となっています。

本文です。これまでは量子補正,すなわち,loopグラフ

の計算には踏み込まず,形式的に理論が整合的に存在する

ものとして,量子場の理論を相互作用項を摂動としてtree

グラフだけの計算で.議論を進めてきました。

しかし,具体的にloopグラフを計算すると,とたんに

紫外発散(ultraviolet-divergence)という問題が

生じます。つまり,loop運動量の大きいところでの積分

が発散するという困難に遭遇します。

 

この問題を処理するには,まず”無限大”というモノ

は直接扱うことができないので,正則化(regularization)

という手続きで,とにかくFeynmanグラフの積分が収束

して,理論がwell-defined(無矛盾)になるように工夫

します。その次には,諸量を物理的粒子の質量や結合定数

で書き直すという操作=くりこみ(renormarization)を

行ない,くりこんだ後の量が,初めの正則化という手段を

はずした極限でも,有限かつ無矛盾な量に留まることを

証明します。

 

まず,正則化の手続きとしては,歴史的にはQEDに

おいて「Paulli-Vllrasの正則化」と呼ばれる,大きい

運動量の切断(cut-off)の手法が導入されました。

これは被積分関数中の伝播関数を次のように置換する

ものです。

すなわち,質量がmのBose場(運動量はk)については,

伝播関数は,運動量表示では,i/(k2-m2+iε)で与えら

れますが,これを,i/(k2-m2+iε)-i/(k2-Λ2+iε)

=i(m2-Λ2)/{(k2-m2+iε)(k2-Λ2+iε)}に

置き換えます。ただし,Λ2は十分大きい実数です。

これを行なうと伝播関数は,k2>>Λ2では,1/k4

のように挙動し,元の 挙動:~1/k2よりも急激に

落ちるので,d4kのloop積分を実行した結果の収束性

が良くなります。

この,質量がΛで,負計量の寄与をする仮想的粒子の

伝播関数の意味を持つモノのをregulatorと呼びます。

この引き算操作でも,収束性が足りないときは,さらに

regulatorを入れて,k2→∞でもっと急激に落ちるように

します。BosonでなくFermionの粒子場の伝播関数に

ついても,切断質量Λの負軽量の関数を引いて,同様に

します。最後にΛ→∞の極限をとって正則化の痕跡

を消しても,理論が生き残ればこの手法は成功です。

これがPaulli-Vollers正則化ですがGuptaは,

これを改良して可換ゲージ理論の場合にも適用可能

にしました。

「Pauli-Viller-Gupta正則化」は,直観的で計算も

簡単でいいのですが,最大の難点は,一般の非可換ゲージ

理論でベクトル場に適用したとき,それがゲージ不変性

を壊すことにあります。

それでも最終的計算結果にゲージ不変の整合性が

有りさえすれば,計算途中で対称性が壊れていても

いいのですが,ここでは途中段階でもゲージ不変性の

保持が明確な,’tHooftとVolteraによって提案された

「次元正則化」という正則化を採用し説明することに

します。

次元正則化は,実際には4次元のこの時空の次元を

nと仮定し,解析接続によってnを複素数に拡張して

計算します。この正則化の最大の利点はゲージ不変性

が次元に依らず成立するため,ゲージ不変性を壊さない

ことです。しかも,被積分関数における伝播関数の数

を増やさず,一般的な積分公式が得られるので,具体的

計算法としても有用なものです。

 

さて,一般にFeynmanグラフの任意のloop積分は,

通常の相互作用の場合,loopで頂点(vertex)と伝播関数

の数は同じで,それぞれ,-(±i)とiが因子なので

(±1)が掛かりさらにFermionループなら全体と

して(-1)が掛かり,結局Feynmanパラメータ公式

を適用すれば,全て,∫dnk(2π)-n

[(kμ,kμν,..)/(k2-2kp-m2+iε)α]

(α>0)という形のモノに帰着させることができます。

 

そこで,まず,最も簡単な式である

I=∫dnk(2π)-n[1/k2-m2+iε)α]を評価する

ことから始めます。

まず,ガンマ関数の定義.

Γ(α)=∫0exp(-t)tα-1dt(Reα>0)から,1つ

の積分表示:Γ(α)s-α

=∫0exp(-st)tα-1dt(0<Reα<1)が得られ,

これは,さらに変形して,s-α

={iα/Γ(α)}∫0exp(-ist)tα-1dtと

書き直せます。この表式はIms<0,Reα>0の領域で

妥当な式となります。

そこでs=m2-k2-iεとおけば,Ims=-ε<0 の

条件が満たされるので,

I=∫dnk(2π)-n[1/(k2-m2+iε)α]

=∫dnk(2π)-n(-s)-α

={(-i)α/Γ(α)}∫0dt

[tα-1∫dnk(2π)-nexp{-i(m22-iε)t}]

なる表式を得ます。

経路積分の項で用いたGaiss-Fresnelの積分公式:

-∞dxexp(-iax2/2)={2π/(ia)}1/2から,

∫dk0exp(itk02)={π/(it)}1/2 ={π/(-it)}1/2

なので,∫dnk(2π)-nexp(itk2)

=(-1)1/2-n/2(4πi)-n/2です。

故に,I={(-i)α(-1)1/2(4πi)-n/2/Γ(α)}

×∫dt[t(α-n/2-1)exp{-i(m2-iε)}より,

結局,I={(-i)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}

×(m2-iε)-(α-n/2)なる式を得ます。

ただし,収束にはRe(α-n/2)>0が必要です。

しかし,一旦この表式が得られれば,これはnについて

の解析関数なので,任意の複素数次元nに拡張できる形

です。このとき元の運動量積分が発散していたという

事情が.この解析接続においては,次元nに関する極と

して表現されます。これが次元正則化の特徴です。

 

つまり,ガンマ関数:Γ(z)はz=0,-1,-2,..

に極を持ち,Γ(z)=Γ(z+1)/zを満たしますから,

γをEuler定数:γ~Γ0.5772..としてΓ(ε)

=1/ε-γ+O(ε)なる評価式が得られます。

例えば,I=∫dnk(2π)-n[1/k2-m2+iε)α]

が,α=2のときn=4の次元では対数発散するという

事情に対しては,

α=2なのですが時空の次元は,n=4-2δ,

δ=α-n/2>0である,と仮定すれば,

I={(-i)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}

×(m2-iε)-(α-n/2) において,

Γ(α)=Γ(2)=1であり,Γ(α-n/2)=Γ(δ)

=1/δ-γ+O(δ)=2/(4-n) -γ+O(4-n)

ですから,Γ(α-n/2)/Γ(α)=2/(4-n)-γ

+O(4-n)です。さらに,xε=exp(εlnx)

=1+εlnx+O(ε2)より,(m2-iε)-(α-n/2)

=(m2-iε)-δ=1+{(4-n)/2}ln(m2-iε)+O(δ2)

(4π)-n/2=(4π)-2(4π)-δ

=(4π)-2[1-{(4-n)/2}ln(4π)+O(δ2)}

と書けます。

それ故,これは

I=(-i)α+1/2(4π)-2{1/δ-γ+O(δ)}

{1-δln(4π)+O(δ2)}{1-δln(m2-iε)+O(δ2)

=(-i)α+1/2(4π)-2

×{1/δ-γ+ln(4π)-ln(m2-iε)+O(δ)}

を意味します。

結局,時空の次元がnで,α=2の場合には,

I=(-i)α+1/2(4π)-2

{2/(4-n)-γ+ln(4π)-ln(m2-ε)+O(n-4)}

なる評価式が得られました。

これは,I(n,α)が,n=4=2αに1/(4-n)の型の

極を持つことを示していますが,γやln(4π)の定数は

常に.この極の部分に付随して現われるため,

ε~-12/(4-n)-γ+ln(4π)と定義として,右辺

全体を「無限大部分」とみなすのが便利です。

以上はα=2を例として計算しただけの結果ですが,

くりこみ可能な積分式はゲージ対称性などを考慮する

と,結局,発散が高々対数発散である場合であることが

わかっているため,次元正則化で現われるおける無限大

は,全てこの形で出現します。

 

さて,I=∫dnk(2π)-n[1/(k2-m2+iε)α]

={(-i)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}

×(m2-iε)-(α-n/2) なる表式において,

積分変数kを(k-p)に置換し,かつ,m2

(p2+m2)に変更すると,(k2-m2+iε)が,

{(k-p)2-(p2+m2)+iε}

=(k2-2kp+m2+iε)になります。

したがって,伝播関数分母の無限小虚部

iεを略して

∫dnk(2π)-n[1/(k2-2kp-m2+iε)α]

={(-i)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}

(p2+m2)-(α-n/2)という,より一般的式が

得られます。

さらに,この両辺を,(∂/∂pμ)微分すること

により,∫dnk(2π)-n[(kμ,kμν,..)

/(k2-2kp-m2+iε)α]なる形の積分の公式

を全て得ることができます。

ここまでが(1)の内容の要約です。

※参考文献:

九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」(培風館)

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