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2020年5月30日 (土)

くりこみ理論(次元正則化)(11)

「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

前回は,第7章の「BPHZくりこみ」

の(対称性とくりこみ)の項目に入り,まず,

BPHZくりこみと,その収束定理から

従ういくつかの重要な命題を与え説明しました。

 系のLagrangianは,種々の内部対称性を持って

いますが,通常の線形で「明白な」対称性は全て

BPHZ手続きの各段階で保持されます。

それらは対称性を満たす制限された相殺項を

追加することでくりこみ可能です。

対称性が自発的に破れた真空の上で摂動計算

を行なう場合は,場の変換が非線形になり

「明白な」対称性ではなくなりますが,非線形

の「明白でない」対称性であっても,多くの場合,

Lagrangianを対称性を満たすものに限っても,

くりこみ可能です。

ただし,それら非自明な個々の場合に,それぞれ

くりこみ可能なことを証明する必要があります。

ゲージ理論のくりこみの問題も,基本的なBRS

対称性が非線形であり,この範疇の問題の1つです。

一般的なゲージ理論の系で,ゲージ不変性を保持

したままでの,くりこみ可能性を示すことが当面の

目的です。

そのため,まず,ゲージ理論の系で,ゲージを固定

したLagrangianに外場Kを付加した作用Sと

有効作用Γについて,裸の場に対する議論を考察

しました。

裸の量は一般に発散量なので,これらが意味を

持つためには,何らかの正則化が必要です。

ゲージ不変な正則化が存在し,これが次元正則化

で満たされることを主張します。裸の量で書かれた

有効作用:Γ0を,くりこまれた量で書き直せば,有限

な汎関数:Γになる,という主張です。

裸の場や外場をくり込み因子=(Z1,Z3,Z~3,Zi),

および,場φのシフトvlを与えて,くりこまれた場に

より定義して,Zやviの値の選び方如何に依らず,

常に基本的なWard-高橋恒等式(WT恒等式)が,裸

の量だけでなく,くりこまれた量でも同じ形で成立

することを要求します。

結局,くりこみ可能性の主張である,

Γ0[Φ~0,K0;g0,00]=Γ[Φ~,K;g,f,α].

は,パラメータ:やviを「正しく選んだとき」,

くりこまれた有効作用:ΓがΦ~,K;g,f,αの

有限な汎関数になることを意味します。

それ故.これを示すのが目的です。などと書いた

ところて終わりました。

今回はその続きから始めます。

さて,実際に有効作用:Γを計算するには,loop

展開.つまり,自然単位なので1として意識して

いないですが,実はPlanck定数:hcのベキ展開に

よる摂動で行なうので,Zやviもh摂動でベキ

展開します。

すなわち,Z=1+hc(1)+hc2(2)+,,,(21),

および,vi=0+hci(1)+hc2i(2)+,,,.(22)

です。これらを,(9)の裸の作用積分:

0=S[Φ0~,K0]=∫d4

[0GI0(GF+FP)+KI0I0

+(g0/2)K0c(0×0)]に代入して,摂動ベキ

に展開します。

つまり,S0S[Φ0~,K0;g0,0,α0]

=S[Z31/2μ,..,Z~31/2aμ;Z13-3/2,..]

=S(0)+hcS(1)+hc2(2)+… (23)です。

ただし,初項のS(0)は.くりこまれた有限な作用

Sです。つまり,S(0)S[Φ~,K;g,,α]=S

(24)です。初項:S(0)Sを摂動の第0次の作用,

第2項以降のS(n)を(n≧1)相殺項として用いて

全ての1PIグラフを計算します。

そうすれば,有効作用Γも,hcの各次数で逐次

得られます。Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+hc2Γ(2)+… 

(25)です。

本節では,大局的ゲージ対称性が自発的に破れない

場合を考察することにしているので,(22)のvi

展開では,初項vi(0)は0であるとして,おきました。

(4)の一般的線形ゲージの場合,fiφiの項の

存在が大局的ゲージ不変性を破ることは,既に

述べました。しかし,係数fiを添字に応じて共変的

に変換する量と見なせば形式的に,この不変性は保持

される,と考えることができます。

以下,大局的ゲージ不変量というときには上記の

ことを了解済みのことしておきます。

※「くりこみ可能性の証明」

以下では,Zやviを摂動のhcのベキの各次数で

次々に適切に選んでゆけば,くりこまれたΓも展開

の任意の次数まで有限にできることを示します。

 まず,NL場:Baへの依存性は自明であることに

注意します。

すなわち,恒等式(12)の裸の式である(16)式の

δΓ00=∂μ0μ0iφ0i+w+α00.

または,くりこんだ量での(12)の表式,そのものの

δΓ/δ,=fIΦI+w+αB)においてw

をゼロとしたものから,ΓのBへの依存性が陽に

決まります。すなわち,(16)から,Γ=Γ~

+∫d4x[B0(f0iφi0+w)+(α0/2)B00]

(26)(裸の式でΓ=Γ0としたもの),および

Γ=Γ~+∫d4x[BΦ+(α/2)B](27)

です。ここで,残りの項として定義したΓ~はBには

全く依存しない量です。しかも,上記のくりこみ方法

から,裸の(26)と,くりこまれた(27)は全く等しいので,

Zやviを,以下でどのように決めようと,B依存部分

は,くりこんだ量で書いて有限な式になっています。

 

※(注11-1):何故なら,前記事で書いた通り,,

ΦIはΦI=(Aμi)のセットを意味します。

そして,A0μ=Z31/2μ0i=Zi1/2i+vi),

かつ,B0=Z3-1/2,f0i=Z31/2i-1/2i

とし,さらにα0=Z3α,w=-Z31/2ii

として裸の量を全てくりこんだ量で表わして

代入するのが我々のくりこみ手法です。

そこで,(26)の裸の被積分関数に,これらの

関係式を代入すると,B0(f0iφi0+w)

+(α0/2)B00=Z3-1/2[(Z31/2i-1/2i)

×{Zi1/2i+vi)-Z31/2ii,}

+(Z3α/2)Z3-1

=BΦ+(α/2)B]となって,

これは,(27)のくりこまれた式の被積分関数

に一致します。

くりこまれた場は有限と,仮定されているため

(26)のB0依存部分も,(27)のB依存部分と一致

して有限である,と結論されます。(注10-1終わり※)

 

したがって,以下ではBを忘れて,Γ~部分のみ

を考えればよい,ということになります。

さらに,反ゴースト場c~への依存性も,同様に,

ほとんど自明です。

すなわち,くりこまれたΓは,WT恒等式(13)

I(δΓ/δKI)+i(δΓ/δc~)=0を

満たします。

故に,Γ,または,Γ~のc~への依存は,

K~I=K+ic~aI,つまり,K~μ=Kμ

+c~μ,および,K~i=Ki+c~i(28)

と置くと,この変数K~を通じてのみ現われる

ことがわかります。

それ故,汎関数:Γ~[ΦI,c,c~;K]に

おいて,引数をΓ~[ΦI,c,c~;K~]の

ように,取り直せば,(13)のfI(δΓ/δKI)

+i(δΓ/δc~)=0は,

I(∂K~J/∂KI)(δΓ~/δK~J)c~

+i(δK~J/δc~)δΓ~/δK~J)c~

i(∂Γ/∂c~)K~=fI(δΓ~/δK~I)c~

-fIδ(δΓ~/δK~I)c~i(∂Γ~/∂c~)K~

=i(∂Γ~/∂c~)K~=0 となります。

そこで.Γ~[ΦI,c,c~;K~]は,c~

には依存しない,ことがわかります。

この点も,Zやviの値の具体的選び方には

依らないので,以下,KIの代わりに変数:K~I

を常に採用すれば,c~もB同様,忘れてよい,

ことになります。

以上から,結局,Γの代わりにΦI,c,;K~,

c(および,g,α)のみの汎関数,Γ~を,考えれば

いいです。

そして,残るWT恒等式(11)は,ΓをΓ~に

置き換えると,(δΓ~/δΦI)(δΓ~/δKI)

+(δΓ~/δc)(δΓ~/δK)

+(δΓ~/δc~)B=0 ですが,これは.

(δΓ~/δΦI)(δΓ~/δK~I)c~

+(δΓ~/δc)(δΓ~/δKc)=0.(30)

という式になります。

さて,ここでPoisson括弧に似た.次の演算を

定義します。

すなわち,F,Gを,任意のΦI,c,;K~,Kc

の,Grassman偶,または,奇の汎関数とするとき,,

演算*を,F*G=(δF/δΦI)(δG/δK~I)

+(δF/δc)(δG/δKc)

+(-)|F|{(δF/δK~I)(δG/δΦI)

+(δF/δKc)(δG/δc)}

=(δF/δQA)(δG/δPA)

+(-)|F|(δF/δPA)(δG/δQA).(31)

で定義します。

ここで.Qは座標類似変数,PAは運動量

類似変数と呼ばれるものです。

ここでは,Q=(ΦI,Kac)(32-1)としました

が,これはGrassman偶変数,また,P=(K~I,c)

(32-2)とし,こちらはGrassman奇変数です。

実際,(31)のF*Gは,Poisson括弧に似た性質

を持っています。

例えば,次の対称性や,Jacobi恒等式などが,成立

します。

すなわち,まず,F*G=-(-)F1G1G*F.(33-1)

です。ただし,∀Fに対し,F1=|F|+1)です。

そして,F*(G*H)+(-)F1(G1+H1)G*(H*F)

+(-)H1(F1+G1)H*(F*H)=0.(33-2)です。

(※以下,参照中の私の読書覚書きノートでは,

これらの性質の地道な証明が,延々と書いて

ありましたが,これらの性質が成立するという

証明は間違いなく完了した,という報告のみで,

内容は煩雑なので省略します。※)

さて、このPoisson括弧に似た演算記号*を

用いると,(30)のWT恒等式:

(δΓ~/δΦI)(δΓ~/δK~I)c~+(δΓ~/δc)

(δΓ/δKc)=0.は,とても,簡明な表式になり,

Γ~*Γ~=0.(34)と書けます。

途中ですが長くなったので,今回はここで終わります。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

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