くりこみ理論(次元正則化)(12)
「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。
前回は,第7章BPHZくりこみで,
(対称性とくりこみ)の項において,大局的
ゲージ不変性を有する理論が,その対称性
を保持したまま,次元正則化で,くりこみ
可能であることを示すことを目的に考察
しました。
そのため,系のLagrangianに外場を付加
した作用積分Sとその有効作用Γを裸の場で
構成した裸の作用:S0と裸の有効作用Γ0に
おける.裸の場をくりこんだ場とくりこみ定数
Zとviで表わしたものを代入して置き換える,
という操作で,これらが,くりこまれた有限なS
とΓに帰着する.ことを摂動論的に証明するため
に導入したPoisson括弧に類似した演算*を
用いて,有効作用ΓからBaとc~aへの自明な
依存性を除いた部分:Γ~が満足すべき基本的
WT方程式が.Γ~*Γ~=0.(34)という式の形
で与えられることを見たところで,記事を
終えました。
今回は,その続きです。
前回で準備が整ったので,以下,本題の
有効作用Γ(実は,裸のΓ0 に同じ)のhcによる
摂動ベキ展開:Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+hc2Γ(2)+.
(25)の各項:hcnΓ(n)が有限になる,ということ
を,先のWT恒等式:Γ~*Γ~=0(34)に基づいて,
帰納法で証明します。
(ⅰ)まず,n=0のtreeレベルでの有効作用
Γ(0)ですが,これは,Planck定数hcを含む量子
効果が全くない古典的な作用積分の
S(0)=S[Φ~,K;g,f,α]=S.(24)に等しく,
それ故,明らかに有限です。
しかも,ΓとΓ~の違いは,(27)のΓ=Γ~
+∫d4x[BafaIΦI+(α/2)BaBa]という
Γ~の定義式にあるように,treeレベルの寄与を
与える項のみですから,初項Γ(0)ではΓ~をΓ
の代わりに用いて論じてもよいということに
なります。さらに,Γ(0)=S(0)=S,Γ~(0)=S~
より,Γ-Γ~=Γ(0)-Γ~(0)=S-S~であり,
この差はtreeレベルと考えられるので.n≧1
のloop積分を含む項ではΓ~(n)=Γ(n)です。
(ⅱ)次に,n≧1のhcnのオーダーまで,
くりこみ定数Z,および,viを,それらをベキ
展開した.(Z)n=1+hcZ(1)+hc2Z(2) +..
+hcnZ(n),および,(vi)n=0+hcvi(1)+
hc2vi(2) +..+hcnvi(n).(35)に置き換えて
Γ(0),Γ(1),Γ(2),..Γ(n)が全て有限にできた,
と仮定します。そこで.Zやviに,上記の(35)
式,つまり,((n+1)次以降のZ(n+k),vi(n+k)
(k≧1)を全てゼロとしたもの.に置換して
(23)のS0=S[Φ0~,K0;g0,f0,α0]
=S[Z31/2Aaμ,..,Z~31/2Kaμ;Z1Z3-3/2g,..]
に,Zとして(Z)nを.viとして(vi)nを代入
した作用積分:(S0)n=S[(Z3)n1/Aaμ,....,
(Z~3)n1/2Kaμ;(Z1)n(Z3)n-3/2g,.]
=S(0)+hcS(1)+..+hcnS(n)
+hc(n+1)(S(n+1))n+hc(n+2)(S((n+2))n
+… (36)に基づき,hc(n+1)のオーダーの
有効作用Γ(n+1)を計算します。
(※上記の(36)の展開において,hcの(n次以下
のS(m)(m≦n)を.(S(m))nとしなかった理由
は,Zやviの(n+1)次以降の値:Z(n+k)や
vi(n+k)(k≧1)を,どう取っても,それらに影響
しないからです。※)
一方,(n+1)次以降のS(n+k)(k≧1)は,
それらZ(n+k),vi(n+k)(k≧1)に依存します。
しかし,(S(n+k))n(k≧1)の方は,Z(n+k)=0,
vi(n+k)=0(k≧1)と取ったときの相殺項に相当
するものです。
特に,(S(n+1))nはhcのn次以下のZ(m),vi(m)
(m≦n)の積で表わされる,hcの(n+1)次の相殺項
となるもの.を意味します。
(※例えば,Aμの4次項:-(1/4)g02(A0μ×A0ν)2
=-(1/4)Z12Z3-1g2(Aμ×Aν)2からは,
Z1(m)Zi(k)(Z3(l))p(ただし,m+k+pl
=n+1,0≦m,k,l,p≦n)の係数を持つ,,,
(n+1)次の相殺項が現われます。
何故なら,例えばZ3-1=(1+hcZ3(1)+hc2Z3(2)
+..)-1=1-hcZ3(1)+(hc2/2)Z3(2)-.etc.
です。※)
さて,Γ(n+1)の計算は,帰納法の仮定により,
Γ(m)(m≦n)が全て有限ですから,それらに効く
各々のFeynmanグラフにおいて全ての内部グラフ
は既に有限になっており,出現する可能な発散は,
最後の一番外側のloop積分を実行したとき初めて
現われるもの,つまり,「overallの発散」のみで
ある,と,考えられます。
そして,hc(n+1)のオーダーでoverallの発散
が現われるグラフは,もちろん,loop積分が1個
以上はあるので,その内部にはn次以下の相殺項
のS(m)(m≦n)しか,含むことはできず,そこで
Zやviの(n+1)次以上の項;Z(n+k)やvi(n+k)
(k≧1)の取り方には依存しません。
それ故,このoverallの寄与の総和を
Γoverall(n+1)[Σm=0nS(m)]と記すことにすれば,
n次の作用積分:(S0)n=S[(Z3)n1/Aaμ,
....,(Z~3)n1/2Kaμ;(Z1)n(Z3)n-3/2g,.]
に基づく(n+1)次のΓ(n+1)項の発散部分
は,Γdiv(n+1)= Γoverall(n+1)[Σm=0nS(m)]
+(S(n+1))n(37)と表わせます。
ただし,右辺の(S(n+1))nは,n次以下の,
Z(m),vi(m)(m≦n)の積のみで作られる
(n+1)次の相殺項です。
ここで,重要な点はoverallの発散:
Γdiv(n+1)は,以前「BPHZくりこみ」の
項で述べたように,外線運動量に関して有限次
までで,場の次元数を数えると,4次以下の局所
的項しか現われない。ということです。
※(注12-1):過去記事「くりこみ理論(7)では,
クラフ:Γの見掛けの発散次数ω(Γ)を与える
公式:ω(Γ)=4-EB-(3/2)EF+Σniδi(7)
により,ω(Γ)≧0となって発散するグラフΓ
は,EB+(3/2)EF(外線場の次元)≦4.(8)の
場合のみです。と記述しました。
それ故,今のdim(Liint)≦4の場合にω(Γ)≧0
で発散する条件は,EB+(3/2)EF≦4です。
(注12-1終わり※)
さて,(37)の(S(n+1))nも,もちろん相殺項で
発散項ですから,系の裸のLagrangianの作用積分:
S0と同様,上記の性質を持つので,(37)のΓdiv(n+1)
も次元4以下の局所的項のみから成っています。
このような局所的項の積分形で与えられる
汎関数を一般に,局所的汎関数と呼びます。
一方,WT恒等式:Γ~*Γ~=0 (34)は,hcの値
に依らず(Zやviの値にも依らず)成立する式です。
つまり,これはhcについての恒等式ですから,Γ~を
hcのベキで摂動展開して,左辺のΓ~*Γ~に代入し
hc(n+1)の項を取り出すとき,その係数はゼロです。
つまり,Γ~(0)*Γ~(n+1)+Γ~(1)*Γ~(n)
+Γ~(2)*Γ~(n-1)+..=0.(38) が成立します。
先述のようにΓ~(m)=Γ(m)(m≧1)であり,
そして,左辺の第2項以下は,帰納法の仮定により
有限です。したがって,この式の発散部分のみを
取り出せば,それは左辺のΓ~(0)*Γdiv(n+1)であり
右辺の0の中には,もちろん発散部分はありません。
(※この発散部分は,今の次元正則化の場合,
時空の次元をdとすると,(d-4)-k(k≧1)の形
の極の項であり,1つのloop積分で1/(d-4)の
特異性は1次ずつしか出ないのでΓ(n+1)の特異性
は1/(d-4),1/(d-4)2,..1/(d-4)(n+1)まで
です。※)
そして,Γ~(0)=S~(0)=S~ですから,結局,
S~*Γdiv(n+1)=0.(39)なる式を得ます。
この式は,Γ(n+1)にどのような発散が現われ
得るか?を規定する方程式であり,一般に,
「くりこみ方程式(renormalization equation)」
と呼ばれています。
このくりこみ方程式に対しては,次の命題が
成立することを証明できます。
※[命題]:「大局的ゲージ不変でFPゴースト数が
ゼロ,次元が4以下の局所項から成る,ΦI,ca,K~I,
Kcaの汎関数:Xがくりこみ方程式:S~*X=0.
(40)を満たすとする。このときXは,(23) の裸の
作用積分:S0=S[Z31/2Aaμ,..,Z~31/2Kaμ;
Z1Z3-3/2g,..]で,Zやviをずらせて得られる
変化分;ΔS=δZ(ΔzS)+δvi(ΔviS)
=δZ[∂S/∂Z] Z=1Vi=0+δvi[∂S/∂vi]Z=1Vi=0
(41)の形で与えられる。
ただし,SとS~の差はtreeレベルで,その
差は,Zやviには依らないので上記の(41)では
SをS~に置き換えて同一視してもよい。」
そして,仮に,この命題が証明されたとすると
今のXが,S~*Γdiv(n+1)=0を満たすΓdiv(n+1)
である場合,これがΓdiv(n+1)=αZ(n+1)(ΔzS)
+βi(n+1)(ΔviS)の形に書けることを意味します。
ところが,この形の発散項は,Zやviを(35)
のn次までの(Z)nや,(vi)nから次に定義する値:
(Z)n+1=(Z)n+hc(n+1)Z(n+1),および,(vi)n+1
=(vi)n,+hc(n+1)vi(n+1).(42)へとずらした
ときに生じるhc(n+1)のオーダーの新たな相殺項:
S(n+1)-(S(n+1))n=Z(n+1)(ΔZS)
+vi(n+1)(ΔviS)(43)により,Z(n+1)=-αZ(n+1),
かつ,vi(n+1)=-βi(n+1)と選べば,丁度. Γdiv(n+1)
が吸収されます。
それ故,(42)の(Z)n+1,および,(vi)n+1を(23)
の作用:S0に代入した作用:(S0)n+1に基づいた
有効作用Γは,hc(n+1)のオーダーのΓ(n+1)まで
有限となり,帰納法によるくりこみ可能性の証明
が完結したことになります。
では,以下,実際に[命題の証明]です。
[証明]:結局,くりこみ可能性の証明は
くりこみ方程式:S~*X=0(40)の一般解X
が,X=δZ(ΔzS)+δvi(ΔviS)(41),
の形で与えられる,という純粋に代数的な命題
の証明に帰着することがわかりました。
くりこみ方程式:S~*X=0の解Xに関しては.
次元が4以下,大局的ゲージ不変という制限の
ない,次の定理が成立することが知られています。
[定理] 「ΦI,ca,K~I,KcaのFPゴースト数
がゼロの局所多項式から成る汎関数Xで,くりこみ
方程式S~*X=0.(40)を満たすものは,必ず,
X=Fゲージ不変[ΦI+S~*M[ΦI,ca,K~I,Kca]
(44)の形に書ける。
ここで,Fゲージ不変はΦI=(Aaμ,φi)のみで書かれた
ゲージ不変な関数で,MはFPゴースト数が(-1)
の任意の汎関数である。
(44)の形で書かれる汎関数Xがくりこみ方程式:
S~*X=0を満たすこと(解の十分条件)は,S~の
BRS不変性,S~*S~=0,および,Jacobi恒等式
から従う,演算:(S~*)のベキ零性:つまり,
∀Xに対しS~*(S~*X)=-((1/2)X*(S~*S^)
=0.(45)から,自明です。
すなわち,∀F,GについてF*G~
=(-)(|F|+1)G*Fという*演算の対称性から,
GがFに等しいならF*F=-F*Fとなり,,
F*F=0が成立するので,S~*S~=0は自明
です。
一方,Jacobi恒等式から,S~*(S~*X)
+(-)|X|S~(X*S~)
+(-)2(|X|+1)X*(S~*S~)=0ですが,
S~はGrassmann偶なので,X*S~=-S~*Xであり,
XはFPゴースト数-1)でGrassman奇ですから,
2S~*(S~*X)=-X*(S~*S~)=0
が得られます。
それ故,特にS~*(S~*M)=0です。
また,FがΦIのみの関数であれば,
S~*F=(δS~/δK~I)(δF/δΦI)
+(δS~/δKca)(δF/δca)
+(-)|S~|{(δF/δK~I)(δS~/δΦI)
+(δF/δKca)(δS~/δca)}
=(δBΦI)(δF/δΦI)=δBFです。
そこで,Fがゲージ不変な関数:Fゲージ不変
なら,それは,BRS不変なので右辺はゼロです。
つまり,S~*Fゲージ不変=0です。
したがって,X=Fゲージ不変+S~*Mの形なら,
S~*X=S~*Fゲージ不変+S~*(S~*M)=0
となります。
以上から,(44)の形のXがくりこみ方程式
S~*X=0の解となるための十分条件を満たす
ことが証明されました。
しかし,証明が自明でない,のは逆の解となる
ための必要条件の方です。
この定理は過去記事「ゲージ場の理論(33)」
で記述した,第5章の§5-10で述べた観測可能量
の一般形に関する定理:§5-10(23)を,外場項:K~I,
Kcaを含む場合に拡張したものに相当し,大変有用
なものですが,一般的証明はかなり面倒なので,この
必要性の詳細証明は,観測可能量の定理の場合と同様,
既存の文献に譲って,ここでの記述は割愛します。
(※(注12-2):載)過去記事「ゲージ場の量子論(33)」
から,必要参照部分を抜粋して再掲します。
(※再掲開始)[定理]:「Heisenberg場の多項式で
与えられる局所的観測可能量=BRS不変な局所
演算子:Aは次の形を持つ。
(ⅰ)Aの持つFPゴースト数:NFPが負ならば,
Aは零演算子である。すなわち,このとき,ある
演算子Mにより.A=[QB,M]と書ける。
(ⅱ)Aの持つFPゴースト数がゼロならば,
A=Fゲージ不変(Aaμ, φi)+[QB,M]と書ける。
ただし,Fゲージ不変は,ゲージ場;Aaμと物質場:φi
のみから成る局所ゲージ不変な多項式である。
(ⅲ)Aの持つ.FPゴースト数が正ならば,
A=P[Ii(c);Fゲージ不変[Aaμ, φi]+[QB,M]
と書ける。ただし,Pは.局所ゲージ不変関数:
Fゲージ不変を係数とするIi(c)の多項式である。
そして,Ii(c)は同一時空点上のゴースト場:
caのみの,微分を含まない,カラー1重項の多項式
であり,各時空点ごとに有限個しかない。」
という,今の有効作用:Γdiv(n++1)=Xの一般形に
関する定理に,類似した観測可能量:Aの一般形に
課する定理が.証明抜きで与えられています。
(再掲終了子※)(注12-2終わり※)
さて,途中ですが,長くなったので今回は,ここで
一旦終わります。
(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」
(培風館)
くりこみ理論(次元正則化)(12)
「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。
前回は,第7章BPHZくりこみで,
(対称性とくりこみ)の項において,大局的
ゲージ不変性を有する理論が,その対称性
を保持したまま,次元正則化で,くりこみ
可能であることを示すことを目的に考察
しました。
そのため,系のLagrangianに外場を付加
した作用積分Sとその有効作用Γを裸の場で
構成した裸の作用:S0と裸の有効作用Γ0に
おける.裸の場をくりこんだ場とくりこみ定数
Z,vで表わしたものを代入して置き換える,
という操作で,これらが,くりこまれた有限なS
とΓに帰着する.ことを摂動論的に証明するため
に導入したPoisson括弧に類似した演算*を
用いて,有効作用ΓからBaとc~aへの自明な
依存性を除いた部分:Γ~が満足すべき基本的
WT方程式が.Γ~*Γ~=0.(34)という式の形
で与えられることを見たところで,記事を
終えました。
今回は,その続きです。
前回で準備が整ったので,以下,本題の
有効作用Γ(実は,裸のΓ0 に同じ)のhcによる
摂動ベキ展開:Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+hc2Γ(2)+.
(25)の各項:hcnΓ(n)が有限になる,ということ
を,先のWT恒等式:Γ~*Γ~=0(34)に基づいて,
帰納法で証明します。
(ⅰ)まず,n=0のtreeレベルでの有効作用
Γ(0)ですが,これは,Planck定数hcを含む量子
効果が全くない古典的な作用積分の
S(0)=S[Φ~,K;g,f,α]=S.(24)に等しく,
それ故,明らかに有限です。
しかも,ΓとΓ~の違いは,(27)のΓ=Γ~
+∫d4x[BafaIΦI+(α/2)BaBa]という
Γ~の定義式にあるように,treeレベルの寄与を
与える項のみですから,初項Γ(0)ではΓ~をΓ
の代わりに用いて論じてもよいということに
なります。さらに,Γ(0)=S(0)=S,Γ~(0)=S~
より,Γ-Γ~=Γ(0)-Γ~(0)=S-S~であり,
この差はtreeレベルと考えられるので.n≧1
のloop積分を含む項ではΓ~(n)=Γ(n)です。
(ⅱ)次に,n≧1のhcnのオーダーまで,
くりこみ定数Z,および,viを,それらをベキ
展開した.(Z)n=1+hcZ(1)+hc2Z(2) +..
+hcnZ(n),および,(vi)n=0+hcvi(1)+
hc2vi(2) +..+hcnvi(n).(35)に置き換えて
Γ(0),Γ(1),Γ(2),..Γ(n)が全て有限にできた,
と仮定します。そこで.Zやviに,上記の(35)
式,つまり,((n+1)次以降のZ(n+k),vi(n+k)
(k≧1)を全てゼロとしたもの.に置換して
(23)のS0=S[Φ0~,K0;g0,f0,α0]
=S[Z31/2Aaμ,..,Z~31/2Kaμ;Z1Z3-3/2g,..]
に,Zとして(Z)nを.viとして(vi)nを代入
した作用積分:(S0)n=S[(Z3)n1/Aaμ,....,
(Z~3)n1/2Kaμ;(Z1)n(Z3)n-3/2g,.]
=S(0)+hcS(1)+..+hcnS(n)
+hc(n+1)(S(n+1))n+hc(n+2)(S((n+2))n
+… (36)に基づき,hc(n+1)のオーダーの
有効作用Γ(n+1)を計算します。
(※上記の(36)の展開において,hcの(n次以下
のS(m)(m≦n)を.(S(m))nとしなかった理由
は,Zやviの(n+1)次以降の値:Z(n+k)や
vi(n+k)(k≧1)を,どう取っても,それらに影響
しないからです。※)
一方,(n+1)次以降のS(n+k)(k≧1)は,
それらZ(n+k),vi(n+k)(k≧1)に依存します。
しかし,(S(n+k))n(k≧1)の方は,Z(n+k)=0,
vi(n+k)=0(k≧1)と取ったときの相殺項に相当
するものです。
特に,(S(n+1))nはhcのn次以下のZ(m),vi(m)
(m≦n)の積で表わされる,hcの(n+1)次の相殺項
となるもの.を意味します。
(※例えば,Aμの4次項:-(1/4)g02(A0μ×A0ν)2
=-(1/4)Z12Z3-1g2(Aμ×Aν)2からは,
Z1(m)Zi(k)(Z3(l))p(ただし,m+k+pl
=n+1,0≦m,k,l,p≦n)の係数を持つ,,,
(n+1)次の相殺項が現われます。
何故なら,例えばZ3-1=(1+hcZ3(1)+hc2Z3(2)
+..)-1=1-hcZ3(1)+(hc2/2)Z3(2)-.etc.
です。※)
さて,Γ(n+1)の計算は,帰納法の仮定により,
Γ(m)(m≦n)が全て有限ですから,それらに効く
各々のFeynmanグラフにおいて全ての内部グラフ
は既に有限になっており,出現する可能な発散は,
最後の一番外側のloop積分を実行したとき初めて
現われるもの,つまり,「overallの発散」のみで
ある,と,考えられます。
そして,hc(n+1)のオーダーでoverallの発散
が現われるグラフは,もちろん,loop積分が1個
以上はあるので,その内部にはn次以下の相殺項
のS(m)(m≦n)しか,含むことはできず,そこで
Zやviの(n+1)次以上の項;Z(n+k)やvi(n+k)
(k≧1)の取り方には依存しません。
それ故,このoverallの寄与の総和を
Γoverall(n+1)[Σm=0nS(m)]と記すことにすれば,
n次の作用積分:(S0)n=S[(Z3)n1/Aaμ,
....,(Z~3)n1/2Kaμ;(Z1)n(Z3)n-3/2g,.]
に基づく(n+1)次のΓ(n+1)項の発散部分
は,Γdiv(n+1)= Γoverall(n+1)[Σm=0nS(m)]
+(S(n+1))n(37)と表わせます。
ただし,右辺の(S(n+1))nは,n次以下の,
Z(m),vi(m)(m≦n)の積のみで作られる
(n+1)次の相殺項です。
ここで,重要な点はoverallの発散:
Γdiv(n+1)は,以前「BPHZくりこみ」の
項で述べたように,外線運動量に関して有限次
までで,場の次元数を数えると,4次以下の局所
的項しか現われない。ということです。
※(注12-1):過去記事「くりこみ理論(7)では,
クラフ:Γの見掛けの発散次数ω(Γ)を与える
公式:ω(Γ)=4-EB-(3/2)EF+Σniδi(7)
により,ω(Γ)≧0となって発散するグラフΓ
は,EB+(3/2)EF(外線場の次元)≦4.(8)の
場合のみです。と記述しました。
それ故,今のdim(Liint)≦4の場合にω(Γ)≧0
で発散する条件は,EB+(3/2)EF≦4です。
(注12-1終わり※)
さて,(37)の(S(n+1))nも,もちろん相殺項で
発散項ですから,系の裸のLagrangianの作用積分:
S0と同様,上記の性質を持つので,(37)のΓdiv(n+1)
も次元4以下の局所的項のみから成っています。
このような局所的項の積分形で与えられる
汎関数を一般に,局所的汎関数と呼びます。
一方,WT恒等式:Γ~*Γ~=0 (34)は,hcの値
に依らず(Zやviの値にも依らず)成立する式です。
つまり,これはhcについての恒等式ですから,Γ~を
hcのベキで摂動展開して,左辺のΓ~*Γ~に代入し
hc(n+1)の項を取り出すとき,その係数はゼロです。
つまり,Γ~(0)*Γ~(n+1)+Γ~(1)*Γ~(n)
+Γ~(2)*Γ~(n-1)+..=0.(38) が成立します。
先述のようにΓ~(m)=Γ(m)(m≧1)であり,
そして,左辺の第2項以下は,帰納法の仮定により
有限です。したがって,この式の発散部分のみを
取り出せば,それは左辺のΓ~(0)*Γdiv(n+1)であり
右辺の0の中には,もちろん発散部分はありません。
(※この発散部分は,今の次元正則化の場合,
時空の次元をdとすると,(d-4)-k(k≧1)の形
の極の項であり,1つのloop積分で1/(d-4)の
特異性は1次ずつしか出ないのでΓ(n+1)の特異性
は1/(d-4),1/(d-4)2,..1/(d-4)(n+1)まで
です。※)
そして,Γ~(0)=S~(0)=S~ですから,結局,
S~*Γdiv(n+1)=0.(39)なる式を得ます。
この式は,Γ(n+1)にどのような発散が現われ
得るか?を規定する方程式であり,一般に,
「くりこみ方程式(renormalization equation)」
と呼ばれています。
このくりこみ方程式に対しては,次の命題が
成立することを証明できます。
※[命題]:「大局的ゲージ不変でFPゴースト数が
ゼロ,次元が4以下の局所項から成る,ΦI,ca,K~I,
Kcaの汎関数:Xがくりこみ方程式:S~*X=0.
(40)を満たすとする。このときXは,(23) の裸の
作用積分:S0=S[Z31/2Aaμ,..,Z~31/2Kaμ;
Z1Z3-3/2g,..]で,Zやviをずらせて得られる
変化分;ΔS=δZ(ΔzS)+δvi(ΔviS)
=δZ[∂S/∂Z] Z=1Vi=0+δvi[∂S/∂vi]Z=1Vi=0
(41)の形で与えられる。
ただし,SとS~の差はtreeレベルで,その
差は,Zやviには依らないので上記の(41)では
SをS~に置き換えて同一視してもよい。」
そして,仮に,この命題が証明されたとすると
今のXが,S~*Γdiv(n+1)=0を満たすΓdiv(n+1)
である場合,これがΓdiv(n+1)=αZ(n+1)(ΔzS)
+βi(n+1)(ΔviS)の形に書けることを意味します。
ところが,この形の発散項は,Zやviを(35)
のn次までの(Z)nや,(vi)nから次に定義する値:
(Z)n+1=(Z)n+hc(n+1)Z(n+1),および,(vi)n+1
=(vi)n,+hc(n+1)vi(n+1).(42)へとずらした
ときに生じるhc(n+1)のオーダーの新たな相殺項:
S(n+1)-(S(n+1))n=Z(n+1)(ΔZS)
+vi(n+1)(ΔviS)(43)により,Z(n+1)=-αZ(n+1),
かつ,vi(n+1)=-βi(n+1)と選べば,丁度. Γdiv(n+1)
が吸収されます。
それ故,(42)の(Z)n+1,および,(vi)n+1を(23)
の作用:S0に代入した作用:(S0)n+1に基づいた
有効作用Γは,hc(n+1)のオーダーのΓ(n+1)まで
有限となり,帰納法によるくりこみ可能性の証明
が完結したことになります。
では,以下,実際に[命題の証明]です。
[証明]:結局,くりこみ可能性の証明は
くりこみ方程式:S~*X=0(40)の一般解X
が,X=δZ(ΔzS)+δvi(ΔviS)(41),
の形で与えられる,という純粋に代数的な命題
の証明に帰着することがわかりました。
くりこみ方程式:S~*X=0の解Xに関しては.
次元が4以下,大局的ゲージ不変という制限の
ない,次の定理が成立することが知られています。
[定理] 「ΦI,ca,K~I,KcaのFPゴースト数
がゼロの局所多項式から成る汎関数Xで,くりこみ
方程式S~*X=0.(40)を満たすものは,必ず,
X=Fゲージ不変[ΦI+S~*M[ΦI,ca,K~I,Kca]
(44)の形に書ける。
ここで,Fゲージ不変はΦI=(Aaμ,φi)のみで書かれた
ゲージ不変な関数で,MはFPゴースト数が(-1)
の任意の汎関数である。
(44)の形で書かれる汎関数Xがくりこみ方程式:
S~*X=0を満たすこと(解の十分条件)は,S~の
BRS不変性,S~*S~=0,および,Jacobi恒等式
から従う,演算:(S~*)のベキ零性:つまり,
∀Xに対しS~*(S~*X)=-((1/2)X*(S~*S^)
=0.(45)から,自明です。
すなわち,∀F,GについてF*G~
=(-)(|F|+1)G*Fという*演算の対称性から,
GがFに等しいならF*F=-F*Fとなり,,
F*F=0が成立するので,S~*S~=0は自明
です。
一方,Jacobi恒等式から,S~*(S~*X)
+(-)|X|S~(X*S~)
+(-)2(|X|+1)X*(S~*S~)=0ですが,
S~はGrassmann偶なので,X*S~=-S~*Xであり,
XはFPゴースト数-1)でGrassman奇ですから,
2S~*(S~*X)=-X*(S~*S~)=0
が得られます。
それ故,特にS~*(S~*M)=0です。
また,FがΦIのみの関数であれば,
S~*F=(δS~/δK~I)(δF/δΦI)
+(δS~/δKca)(δF/δca)
+(-)|S~|{(δF/δK~I)(δS~/δΦI)
+(δF/δKca)(δS~/δca)}
=(δBΦI)(δF/δΦI)=δBFです。
そこで,Fがゲージ不変な関数:Fゲージ不変
なら,それは,BRS不変なので右辺はゼロです。
つまり,S~*Fゲージ不変=0です。
したがって,X=Fゲージ不変+S~*Mの形なら,
S~*X=S~*Fゲージ不変+S~*(S~*M)=0
となります。
以上から,(44)の形のXがくりこみ方程式
S~*X=0の解となるための十分条件を満たす
ことが証明されました。
しかし,証明が自明でない,のは逆の解となる
ための必要条件の方です。
この定理は過去記事「ゲージ場の理論(33)」
で記述した,第5章の§5-10で述べた観測可能量
の一般形に関する定理:§5-10(23)を,外場項:K~I,
Kcaを含む場合に拡張したものに相当し,大変有用
なものですが,一般的証明はかなり面倒なので,この
必要性の詳細証明は,観測可能量の定理の場合と同様,
既存の文献に譲って,ここでの記述は割愛します。
(※(注12-2):載)過去記事「ゲージ場の量子論(33)」
から,必要参照部分を抜粋して再掲します。
(※再掲開始)[定理]:「Heisenberg場の多項式で
与えられる局所的観測可能量=BRS不変な局所
演算子:Aは次の形を持つ。
(ⅰ)Aの持つFPゴースト数:NFPが負ならば,
Aは零演算子である。すなわち,このとき,ある
演算子Mにより.A=[QB,M]と書ける。
(ⅱ)Aの持つFPゴースト数がゼロならば,
A=Fゲージ不変(Aaμ, φi)+[QB,M]と書ける。
ただし,Fゲージ不変は,ゲージ場;Aaμと物質場:φi
のみから成る局所ゲージ不変な多項式である。
(ⅲ)Aの持つ.FPゴースト数が正ならば,
A=P[Ii(c);Fゲージ不変[Aaμ, φi]+[QB,M]
と書ける。ただし,Pは.局所ゲージ不変関数:
Fゲージ不変を係数とするIi(c)の多項式である。
そして,Ii(c)は同一時空点上のゴースト場:
caのみの,微分を含まない,カラー1重項の多項式
であり,各時空点ごとに有限個しかない。」
という,今の有効作用:Γdiv(n++1)=Xの一般形に
関する定理に,類似した観測可能量:Aの一般形に
課する定理が.証明抜きで与えられています。
(再掲終了子※)(注12-2終わり※)
さて,途中ですが,長くなったので今回は,ここで
一旦終わります。
(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」
(培風館)
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