くりこみ理論(次元正則化)(14)
「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。
前々回まででは,大局的ゲージ不変性と
いう対称性を持った系の有効作用Γを示す
Feynmanグラフがくりこみ可能であること
を証明するために,この有効作用Γ(orΓ~)
を,Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+..+hcnΓ(n)
+hc(n+1)Γ(n+1)+,,と摂動展開し,初項
Γ(0)は作用S(orS~)に等しく有限なので
続くΓ(1),Γ(2).Γ(n)がくりこみで全て有限
にできたと仮定してΓ(n+1)も有限になると
いうことを示す,という帰納法に頼りました。
結局,この証明はΓ(n+1)の発散部分Γdiv(n+1)
を取り出すと,それが謂わゆるくりこみ方程式:
S~*Γdiv(n+1)=0を満たすことを示すことに
帰着することが導かれました。
そして,このくりこみ方程式に対しては,次の
命題が成立します。
これは,「大局が的ゲージ不変でFPゴースト
数ゼロ,次元が4以下の局所項から成る,ΦI,ca,
K~I,Kcaの汎関数:Xがくりこみ方程式:
S~*X=0を満たすとする。このとき解Xは
裸の作用積分:S0=S[Z31/2Aaμ,.,Z~31/2Kaμ;
Z1Z3-3/2g,..]において,Zやviをずらせて
得られる変化分:ΔS
=δZ(ΔzS)+δvi(ΔviS)
=δZ[∂S~/∂Z] Z=1Vi=0+δvi[∂S/∂vi]Z=1Vi=0
(41)の形で与えられる。」 という命題です。
これが証明されればΓ(n+1)が有限になること
を示すことができて帰納法の証明が完結します。
そこで,この命題証明すればいいのですが,
これに関して.次の定理の成立が知られています。
[定理]:「ΦI,ca,K~I,KcaのFPゴースト数
がゼロの局所多項式から成る汎関数Xでくりこみ
方程式S~*X=0.を満たすものは,必ず,
X=Fゲージ不変[ΦI+S~*M[ΦI,ca,K~I,Kca]
の形に書ける。
ここで.Fゲージ不変はΦI=(Aaμ,φi)のみで
書かれたゲージ不変な関数であり,一方,Mは
FPゴースト数が(-1)の任意の汎関数である。」
という定理です。
そして,この形で書かれる汎関数Xが.くりこみ
方程式:S~*X=0を満たすこと(解の十分性)の
成立はほぼ自明で,実際,容易に証明できました。
しかし,証明が自明でないのは,逆の解となる
ための必要性の方でした。
このXがS~*X=0の解となるための必要性
の一般的証明は,かなり面倒なので割愛する,と
述べました。ここまでが前々回の記事です。
前回は,当面必要なXが,次元4以下の局所項
から成る大局的ゲージ不変という特別な場合に
限れば必要性が証明できるというので,これを示す
途中での中断でした。結局,くりこみ方程式:
S~*X=0の解XはX=∫d4x[fゲージ不変(ΦI)
+βA{K~I(δBΦI)+Kca(δBca)}
+(βA-γA){Aaμ(∂LGI/∂Aaμ)
-K~aμ(∂μca)}
+γφ(da)ijfaj{∂(LGI+K~iδBφi)/∂φj}].
(63)と書けます。ただし,次元が4以下である
という条件からfゲージ不変(ΦI)の一般形は,
fゲージ不変(ΦI)
=αA{(-1/4)FaμνFaμν}
+αφ{(Dμφi)+Dμφi}-αm(μ2φi+φi)
-αλ{(λ/2)(φi+φi)2}.(62)なる形で
与えられます。と書いたところで,前回記事
を終えました。
さて,今回はその続きです。
既述のように,作用S~は,(47)で与えた
S~=∫d4x[LGI(ΦI)+K~I(δBΦI)
+Kca(δBca)].の形をしています。
ただし,δBΦI=DaIcaであり,
δBca=(g/2)(c×c)aです。
また,*演算は定義(31)によれば任意
のΦI,ca,K~I,Kcaの汎関数:F.Gに
対して,F*G=(δF/δΦI)(δG/δK~I)
+(δF/δca)(δG/δKca)
+(-)|F|{(δF/δK~I)(δG/δΦI)
+(δF/δKca)(δG/δca)
ですから,S~*(K~aμAaμ)
=(δS~/δAaμ)Aaμ+(δBAaμ)K~aμ
=(Aaμ(∂LGI/∂Aμ)
+K~aμ{∂(Dμca)/∂Aaμ}
+(Dμca)K~aμです。
故に,証明に必要な第1式:
S~*(K~aμAaμ)=Aaμ(∂LGI/∂Aμ)
-Kaμ(∂μca).(64)を得ます。
次に,S~*(Kcaca)
=(δS~/δca)ca+(δBca)Kca
=-ca(δS~/δca) +Kca(δS~/δKca)
(65)です。
ところが,場(粒子)のFPゴースト数をNFP
とすると,S~はNFP=0,cはNFP=1,K~Iは
NFP=-1,KcaはNFP=-2のゴースト数を
持つため.{ca(δ/δca)-K~I(δ/δK~I)
-2Kca(δ/δKca)}S~=0(.66)
が成立します。
※(注14-1):何故なら,まず,S~をca,K~I
Kcaの関数と見て,ベキ級数展開したもの
を,S~=Σν1,v2,ν3{a(ν1,ν2,ν3)
×cν1(K~I)ν2×(Kca)ν3}と表わすと,
{ca(δ/δca)-K~I(δ/δK~I)
-2Kca(δ/δKca)}S~
=Σν1,v2,ν3{(ν1-ν2-2ν3)a(ν1,ν2,ν3)
×cν1(K~I)ν2(Kca)ν3} となります。
元のS~の展開の各項のベキ次数ν1,ν2,ν3
は,それぞれ,ゴースト場ca;外場K~I,Kca
に対応する粒子の個数を示しています。
故に,(ν1-ν2-2ν3)は項のFPゴースト
数を意味します。
一方,左辺のS~のゴースト数はNFP=0
ですが,これは右辺の展開の各項で満たされる
べきと考えられるので,全ての項において
ν1-ν2-2ν3=0が成立すべきで,その結果
としてl{ca(δ/δca)-K~I(δ/δK~I)
-2Kca(δ/δKca)}S~=0が得られます。
(注14-1終わり※)
したがって,(65)のS~*(Kcaca)
-ca(δS~/δca) +Kca(δS~/δKca)
は,S~*(Kcaca)=-K~I(δS~/δK~I)
-Kca(δS~/δKca) と書き直せます。
故に,必要な第2式として,
S~*(Kcaca)
=-K~I(δBΦI) -Kca(δBca).(67)
を得ました。
最後に,S~*K~i=δS~/δφi
=δ{(LGI+K~j(δBφj))/δφiです。
以上から,再掲(63)式:
X=∫d4x[fゲージ不変(ΦI)
+βA【K~I(δBΦI)+Kca(δBca)}
+(βA-γA){Aaμ(∂LGI/∂Aaμ)
-K~aμ(∂μca)}+γφ(da)ijfaj
{δ(LGI+K~jδBφj)/δφj}](63)
の被積分関数は,fゲージ不変(ΦI)
-βAS~*(Kcaca)+
(βA-γA)S~*KaμAaμ)
+γφ(da)ijfajS~*K~j]と書けます。
すなわち,Xは,X=∫d1x[fゲージ不変(ΦI)
+S~*{(βA-γA)KaμAaμ -βAKcaca
+γφ(da)ijfajK~j}].(68)の形となり,
これは,定理が主張する(44)の形の解:
X=Fゲージ不変[ΦI+S~*M[ΦI,ca,K~I,Kca]
に合致する,ことがわかり定理の必要性が証明
されました。つまり,これで.次元4以下で大局的
ゲージ不変な場合に,先の定理が証明されたわけ
です。(※大局的ゲージ不変性について,S~の
K~i(δBφi),XのK~i(δ~Bφi)の部分は疑問
ですが,これは議論の本質には無関係のようです。
要するに,追加の外場K~iの問題なので?※)
さて,まだ,直接,必要とされる先の命題の
結論となる形に書けること,つまり,解Xが作用
積分:S0=S[Z31/2Aaμ,..Z~31/2Kaμ;
Z1Z3-3/2g,..]で,Zやviをずらせて得られる
変化分:δZ(ΔzS)+δvi(ΔviS)(41)の形
で与えられる。ということを透明する仕事が
残っています。
これを証明するにはXの表式:(63)(再々掲)
X=∫d4x[fゲージ不変(ΦI)
+βA{K~I(δBΦI)+Kca(δBca)}
+(βA-γA){Aaμ(∂LGI/∂Aaμ)
-K~aμ(∂μca)}
+γφ(da)ijfaj{∂(LGI+K~iδBφi)/∂φj}].
を出発点とする方が早道です。
まず,唐突ですが,次式:
{Aaμ(∂/∂Aaμ)-g(∂/∂g)}LGI(ΦI)
=2{(-1/4)Faμν2}.(69)が成立することに
注意します。(※ただし,(-1/4)FaμνFaμν
を,(-1/4)Faμν2と略記しました。※)
これは,LGI(ΦI)で(gAaμ)をAaμに
変数変換すれば,物質場:ΦIのLagrangianの部分
は,gに依らなくなる。ということから従います。
※(注14-2):実際,(gAaμ)の1次の項は,
Aaμ(∂/∂Aaμ)の作用で(gAaμ)となり,
g(∂/∂g)に対しても同じ(gAaμ)になる
ため,これに比例した項は演算の結果として
消えます。すなわち,
{Aaμ(∂/∂Aaμ)-g(∂/∂g)}LGI(ΦI)
{(g,Aに独立な比例係数)(gAaμ)}=0です
。残るのはFaμν内の(gfabcAbμAcν)
のように,Aaμの2次以上の項の場合で,
{Aaμ(∂/∂Aaμ)-g(∂/∂g)}
(gfabcAbμAcν)
=gfabcAbμAcν ですから.Faμν2
への演算の場合,この項から因子2が出ます。
gを含まないAのみの項ではAaμ(∂/∂Aaμ)
の作用は,各項で時空微分に関係なく元の項の
Aの次数倍を与えるので,(∂μAaν-∂νAaμ)2
に作用させると,2((∂μAaν-∂νAaμ)2です。
結局,{Aaμ(∂/∂Aaμ)-g(∂/∂g)}
(Faμν2)=2Faμν2)が得られます。
(注14-2終わり※)
次に,K~I(δBΦI)+Kca(δBca)では,
K~I(δBΦI)=(Dμca)の中の項:
K~aμ(∂μca)が,gの0次項である以外,
全てgの1次の項ばかりなので,
{g(∂/∂g)-1}{K~I(δBΦI)+Kca(δBca)}
=-K~aμ(∂μca).(70)となります。
これと先の(69)の
{Aaμ(∂/∂Aaμ)-g(∂/∂g)}LGI(ΦI)
=2{(-1/4)Faμν2}から
∫d4x{Aaμ(∂LGI/∂Aaμ)-K~aμ(∂μca)}
=gδS~/δg)+∫d4x[2{(-1/4)Faμν2}
-{K~I(δBΦI)+Kca(δBca)}].(71)です。
そこで,これらを(63)に代入します。fゲージ不変(ΦI)
については,(62)の具体的で陽な表式を代入すると,,
X=∫d4x[(αA+2βA-2γA){(-1/4)Faμν2}
+αφ|Dμφi|2-αmμ2|φi|2-αλ{(λ/2)|φi|4}
+γA{K~I(δBΦI)+Kca(δBca)}]
+γφ(da)ijfaj(δS~/δφj)
+(βA-γA)g(δS~/δg)].(72)という
解Xの表式を得ます。
一方,作用積分S~の引数の物質場,外場に,
A0aμ=Z31/2Aaμ,φ0i=Zi1/2(φi,+vi)
=Zi1/2φ~i,(c0a,c0~a)=Z~31/2(ca,c~a)
(15),K0aμ=Z3-1/2Kaμ,
K0i=(Z~31/2Z31/2/Zi1/2)Ki(18)
K0ca=Z31/2Kca(19),g0=ZiZ3-3/2g.(20)
で指定されるZ,やviを含んだ裸の量:Φ0II,K0I,
K0ca,g0を入れたものを求めると,次のように
なります。
S~[Z31/2Aaμ,..Z3-1/2Kaμ,..ZiZ3-3/2g...]
=∫d4x[Z3(-1/4){∂μAaν-∂νAaμ
-Z1Z3-1g(Aμ×Aν)}2
+Zi|∂μφ~i+Z1Z3-1g(Ta)ijAaμφ~j|2
-ZmZiμ2|φi|2-ZλZi2(λ/2)|φ~i|4
+Z~3Kaμ{∂μca-Z1Z-1g(Aμ×c)a}
-Z3K~iiZZ3-1g(Ta)ijcaφ~j
+Z~3Kca(ZiZ3-1g/2)(c×c)a].(73)
ただしZmとZλは,今,陽に考えている物質場
の質量と,λφ4相互作用の結合定数λのくりこみ
因子として定義されています。
つまり,μ02=Zmμ2,λ0=Zλλ.(74)です。
さて,Z因子やvをずらしたときのS~の
変化分は,(73)のS~の表式を微分して,
ΔS~=δZ(ΔZS~)+δvi(ΔvS~)
=∫d4x[(-1/4){δZ3(F~μν(0))2
-Z3(0)(2δg~)(Aμ×Aν)Fμν(0)
+δZi|D~μφ~i(0)|2
+Zi(0)(2iδg~)(Ta)ijAaμφ~jD~μφ~i(0)
+2(δvi)Zi(0)(ig(0))(Ta)ijAaμD~μφ~i(0)
-{(δZm)Zi(0)+Zm0)(δZi)}μ2|φ~i|2
-Zm(0)Zi(0)(δvi)(∂/∂φ~i)(λμ2|φ~i|2)
-{(δZλ)Zi(0)2+Zλ0)(2δZi)}(λ/2)|φ~i|4
-Zλ(0)Zi(0)2(δvi)(∂/∂φ~i)(λ|φ~i|4/2)
+K~aμ{(δZ~3)(Dμca(0))}
+Z~3(0)(δg~)(Aμ×c)a}
-{(δZ~3)g~(0)+Z~3(0)(δg~)}
×K~ii(Ta)ijcaφ~j(0)
-Z~3(0)K~iig~(0)(Ta)ijca(δvl)
+(i/2)Kca{(δZ~3)g~(0)+Z~3(0)(δg~)}
(c×c)a] と書けます。
ただし,0次近似では,Z(0)は全て1,vi(0),
vj(0)は.全て0,g~(0)=gとします。
また,F~μμ=∂μAν-∂νAμ
-Z1Z3-1(Aμ×Aν),g~=Z1Z3-1g,
D~μφ~i=∂μφ~i-ig~(Ta)ijAaμφ~j.
D~μc=∂μc-g~(Aμ×c)としています。
そして,δZ,δvはZ(0)=1,v(0)=0から
の変化分と考えます。
それ故,結局,δZ(ΔZS~)+δvi(ΔvS~)
=∫d4x[δZ3{(-1.4)Fμν2}+δZi|Dμφi|2
-(δZm+δZi)μ2|φi|2
-(δZm+δZλ)(λ/2)|φi|4
+δZ~3{K~I(δBΦI)+Kca(δBca)}]
+δvi(δS~/δφi)
+(δZ1-δZ3)g(δS~/δg)(75)
となります。
この形は,丁度,(72)で与えたくりこみ方程式
の一般解:Xの表式にピッタリ一致します。
すなわち,くりこみ因子のずれ:δZ,δvは
(72)のパラメータ:α,β,γから次のように
決まります。
δZ3=-(αA+2βA-2γA),δZ~3=γA,
δZi=-αφ,δZm=-αm+αφ,
δZλ=-αλ+2αφ,δvi=γφ(da)ijfaj,
δZ1=-(αA+3βA-3γA).(76)です。
(※符号が逆になっているのが多いのは,Xの
表式をΓの発散項としたとき,それがS~の
変化分で相殺されると考えるからです。※)
以上で,命題の証明,すなわち,ゲージ理論
のくりこみ可能性の証明が完了しました。
※(注14-3):ここまで,一貫して,大局的ゲージ
不変な理論がくりこみ可能であることを示して
きたわけですが,そもそも局所ゲージ不変理論
(第2種のゲージ変換)に対して不)な理論)なら,
時空点ごとに異なるゲージ変換のパラメータ
(位相)を,全ての時空点で同じ定数とした特別
な場合でも不変性は維持されるので,局所的
ゲージ不変なら,必ず,大局的ゲージ不変
(第1種ゲージ変換に対して不変)なので,
局所ゲージ不変な理論もくりこみ可能で
あることが示されたわけです。
逆の大局的ゲージ不変なら局所ゲージ不変
というのは必ずしも成り立ちませんがね。
(注14-3終わり※)
- 7-4の目的であったゲージ理論のくりこみ
可能性の証明問題が完了して一段落です。
今日,これのアップは2020年5/31ですが,実際に
この原稿をつj作ったのは10日くらい前で,既に
新しい項の原稿(15)を書いている途中です。
米印参照ノートは「ゲージ場の量子論(5)」と題名
の付いたノートで,日付けがあるのは1ページ目の
(通算467ページ目)の1997年3/20(47歳)と最後
の通算573ページ目の1999年5/24(49歳)のみで
今日の原稿の内容を書いたのは,その間であろう
としか,わかりません。
そして,この題名のノートの全ては,今部屋の
どこにあるのかは真剣に探してみないと不明
ですが,確か,「ゲージ場の量子論(6)」が最後
で,2000年2/1(50歳)の前には読了して終了
したはずです。※
いずれにしろ,今回はここで終わります。
(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」
(培風館)
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