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2020年5月23日 (土)

くりこみ理論要約(3)

 

次に「くりこみ理論(次元正則化)(3)」

の内容要約です。

※先の要約(2)の「第4章摂動論」の記事

注釈で見たように,一般にn点Green関数

(n)は1PI(1粒子既約な)m点頂点関数

Γ(m)(m=n)で表わされるので,全ての Γ(n)

を有限にすることができればG(n)は有限になる

はずです。

それ故.今後くりこみの議論においては,もっぱら

1粒子既約な(1PI)頂点関数Γ(n)のみを考察すること

にします。

そして,特に,2点関数:Γ(2)のtreeグラフ以外

の寄与を一般に自己エネルギー(self-energy)部分

と呼びます。

Fermionの自己エネルギー部分(-iΣ(p))に寄与

するグラフは今の湯川相互作用のみの場合,先の

図7.1で与えられるので,ここで,その最初のグラフ

に対応する最低次loop)の寄与:(-iΣ(1-loop)(p)を

評価してみます。

-iΣ(1-loop)(p)

=∫d4k(2π)-4(-igτi){i/(-m)}

(-igτj)[iδij/{(p-k)2-μ2}].です。

この1-loop積分は被積分関数がkの(-3)次

で積分d4kがkの4次なので,明らかに(4-3)

=1次発散量になります。

(※しかし,実際には,すぐ後でわかる運動学的理由

から1次下がった対数発散になります。※)

 

そして,Feynmanパラメータ公式:

1/(ab)=∫01dx[1/{ax-b(1-x)}2]

により,-iΣ(1-loop)(p)

=3g201dx∫dk(2π)-

[(+m)/{k2-2x(pk)+x(p2-μ2)

-(1-x)m2}2]となるため,結局,

-iΣ(1-loop)(p)=(-1)1/23g2Γ(2-n/2)

(4π)-n01dx

[(x+m)/{(1-x)m2+xμ2-x(1-x)p2}2-n/2]

が得られます。

(何故なら,「くりこみ理論要約(1)」の最後で得た

公式:∫dnk(2π)-n[1/(k2-2kp-m2+iε)α]

={(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)} 

×(p2+m2)-(α-n/2)において,両辺を,

μで微分すると,(-α)∫dk(2π)-

[-kμ/(k2-2kp-m2+iε)α+1]

={(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}

×(-2pμ)(p2+m2)-(α-n/2+1)となり,故に,

∫dk(2π)-[kμ/(k2-2kp-m2+iε)α+1]

={(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α+1)} 

×(2pμ)/(p2+m2)(α-n/2+1) を得ますが,

そこで,p→(xp),m2→ (1-x)m2-x(p2-μ2),

α→2なる置換を実行すれば,

∫dk(2π)-

[/{2-2x(pk)+x(p2-μ2)-(1-x)m2}2]

={(-1)1/2(4π)-n/2Γ(2-n/2)/Γ(3)}(x) 

/{(1-x)m2+xμ2-x(1-x)p2}2-n/2] となり,

また,∫dnk(2π)-n

[m/{k2-2x(pk)+x(p2-μ2)-(1-x)m2}2]

={(-1)+1/2(4π)-n/2Γ(2-n/2)/Γ(2)}

となるからです。 

一方,∫dnk(2π)-n[1/(k2-2kp-m2+iε)α]

={(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)} 

×(p2+m2)-(α-n/2) なる一般式は,

I=∫dnk(2π)-n[1/(k2-m2+iε)α]

={(-i)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)}

×(m2-iε)-(α-n/2) において,

k→(k-p),m2→(m2+p2)と置換した

ものです。α=2,ε=(4-n)/2=α-n/2

と置くとΓ(ε)=1/ε-γ+O(ε)ですから,

∫dnk(2π)-n[1/(k2-2kp-m2+iε)α]

={(-1)α+1/2(4π)-n/2Γ(α-n/2)/Γ(α)} 

×(p2+m2)-(α-n/2)

={(-1)α+1/2(4π)-2

[2/(4-n)-γ+ln(4π)-ln(p2+m2)+O(4-n)]

={(-1)α+1/2(4π)-2[ε~-1-ln(p2+m2)]+O(4-n)

と書けることも前記事で導きました。

ただし,ε~-1=2/(4-n)-γ+ln(4π)であり,

これは「無限大部分」を意味する記号です。

 

同様な手順で,-iΣ(1-loop)(p)から,n=4の極部分

を分離すると,次式を得ます。

すなわち,-iΣ(1-loop)(p)

={(-1)1/23g2/(16π2)}ε~-1{(1/2)+m}

および,-iΣ(有限)(1-loop)(p)+O(4-n)です。

ただし,-iΣ(有限)(1-loop)(p)]

={-(-1)1/23g2/(16π2)}∫01dx

[(x+m)ln{(1-x)m2+xμ2-x(1-x)p2}]

(6)です。

 

もしも次元正則化の代わりに,Pauli-Villers正則化

を用いて,時空次元は4のままで,φの伝播関数:

ij(k2-μ2)-1を,切断regulatorを用いて

ij{(k2-μ2)-1-(k2-Λ2)-1]に置換したとすれば,

その答は上記式(6)でμ2→Λ2としたものを(6)から

引くだけで得られます。

結果的に極のε~-1に比例した無限大部分は次のように

置き換えられます。,

すなわち.(6)の{(-1)1/23g2/(16π2)}ε~-1{(1/2)+m}

から,{(-1)1/23g2/(16π2)}∫01dx

[(x+m)ln{(1-x)m2+xΛ2-x(1-x)p2}

={(-1)1/232/(16π2)}

×{m(lnΛ2-1)+(/2)(lnΛ2-1/2)}

+O[p22-(m22)ln(m22)].(7)

に変わります。

(※実際の地道なPauli-Villers正則化計算結果

との比較から係数:(-1)1/2はiと同定できます。※)

前にも述べたと思いますが,このΛ→∞のとき発散

部分である(7)式には切断:Λの1次以上の発散項は

出現せず,lnΛ2に比例する対数発散項しかありません。

その理由は,loop積分の結果が必ず(次元1を持つ)

やmに比例した形になるため,結果的に次元が1だけ

下がるからです。

γμには比例せず,単位行列1に比例した部分が

因子:mを少なくとも1つ含むのは,m=0の場合には,

カイラル対称性が存在すべきで,そうした単位行列1

に比例した項は,出現しないべきであったからです。

一般に1-loopでなくてもFermionの自己エネルギー

部分は,Σ(p)=a(p2)+mb(p2)

=(-m)a(p2)+mb~(p2)で,

b~(p2)=a(p2)+b(p2)のような形をとります。

ここで,a(p2),b(p2),b~(p2)はp2の関数

であり,これらをp2=m2のまわりでTaylor展開

すれば,,自己エネルギーは.Σ(p)=(-m)a+mb~

+(p2-m2){(-m)a’(p2)+mb~’(p2)}(9)

(ただし,a=a(p2=m2),b~=b~(p2=m2))

と書き換えることができます。

前述のΣ(1-loop)の計算では,次元正則化による式(6),

または,Pauli-Villers正則化による式(7)でΣ(p)

=(-m)a+mb~

+(p2-m2){(-m)a’(p2)+mb~’(p2)}

の展開の係数a,b~にのみ発散量が出現します。

すなわち,a(1)(p)={3g2/(16π2)}(1/2)ε~-1

+(有限定数),または a(1)={3g2/(16π2)}(1/2)lnΛ2

+(有限定数),および,b~(1={3g2/(16π2)}(3/2)ε~-1

+(有限定数),または,b~(1={3g2/(16π2)}(3/2)lnΛ2

+(有限定数)です。

そして残りのa’(p2),b~’(p2)は有限なp2の関数

であることが示されます。この点は特に重要です。

この事実は.このオーダーでは当然で,そもそも1-loop

積分を行なう前の式;-iΣ(1-loop)(p)=∫d4k(2π)-4

(-igτi){i/(-}(-igτj)[iδij/{(p-k)2-μ2}]

において,被積分関数を次元1を持つ外線運動量:pμ

関してTaylor展開すれば,pμの次数が上がるごとに,

1次ずつkのloop積分の収束性が良くなるからです。

(※Σ(p)=(-m)a(p2)+mb~(p2)のようにΣ(p)

を不変振幅:a(p2),b~(p2)に分解して,p2の関数として

Taylor展開すれば収束性は2次ずつ良くなります。※)

 

問題はa.b~に現われる無限大をどう処理するか?です。

a,b~の物理的意味を見るため,以前の式:

iSF’(p)=i{-m-Σ(p)}-1=i{Γψ(2)(p)}-1.に戻って

考えます。これにΣ(p)=(-m)a+mb~を代入すると,

iSF’(p)=i{-m-(-m)a-mb~}-1

=i(1-a)-1[-m{1+b~/(1-a)}]-1となります。

これは相互作用の効果によって,b~<<1のとき,

Fermionの質量がmから,m{1+b~/(1-a)}にずれる

こと.および,場:ψの規格化因子:Z2が1から(1-a)-1

に変化することを意味しています。

現状の摂動論適用では,a,b~は無限大に計算される

ので,b~<<1などの条件の満足には程遠いのですが,

たとえ1よりはるかに小さいはずの量が,発散する理論

の場合でも,「相互作用が存在しさえすれば質量:mと

規格化因子:Z2をずらす効果を有する。」という事実に

のみ着目します。

 

この効果を予め考慮して,出発点の裸のLagrangian:0

の自由項部分は元の,=(1/2)(∂μφμφ-μ2φ2)

ψ~(γμμ-m-gφτ)ψ-(λ/8)(φ2)2(12)

のそれではなく,0freeψ0~(γμμ-m00

+(1/2)(∂μφ0μφ0-μ02φ02)(12)であるとします。

相互作用の効果を全て取り込んだ後の,正しく規格化

された場を改めてψ,φとし,正しい質量をm,μとし,,

これらが(12)に現われる裸の量と,

0=Z21/2ψ,φ0=Z31/2φ,および,m0=m-δm,

μ02=μ2-δμ2なる関係でつながっているとします。

そうすれば,0freefreecountfree.

freeψ~(γμμ-m+(1/2)(∂μφμφ-μ2φ2),

countfree=(Z2-1)ψ~(γμμ-m+Z2δmψ~ψ

+(1/2)(Z3-1)(∂μφμφ-μ2φ2)+(1/2)Z3δμ2

のように,0freeは2つの部分:free,countfree

分けられます。

そして,前者のfreeが,先のの摂動第0次の自由場

部分であったと考えます。

先述したように,添字:0のついたψ0,φ0を裸の場,

00を裸の質量と予備呼び,対応するψ,φを,

くりこまれた場,m,μをくりこまれた質量(または

観測される物理的質量)と呼びます。

また,countfree.の各項は相殺項(couter-term)と

呼びますが,その理由は次のようにしてわかります。

 

 一般に,Z2,Z3やZ2δm,Z3δμ2

2=1+hc2(1)c22(2)+..,

3=1+hc3(1)c23(2)+..,

2δm=0+hcδm(1)c2δm2(2)+..

3δμ2=0+hcδμ2(1)c2δμ2(2)+..と,

Plank定数:hc=n/(2π)のベキで摂動展開され,

それ故,countfreeが存在すればFermionの自己

エネルギーに対して.hcの1次では,既に評価した:

Σ(1-loop)以外にΣcount=-Z2(1)(-m)-δm(1)の寄与

があることになります。

つまり,countfreeのhcの1次の項:

2(1)ψ~(γμμ-mと,

δm(1)ψ~ψを相互作用項として用いた図7.3

のグラフの寄与です。この寄与を加えれば式(9)

で定義したa,b~は1-loop:O(hc)のオーダーまで

の近似で,a=a(1)-Z2(1),mb~=mb~(1)-δm(1)

となります。

(※a(1),b~(1)は先の1-loop計算:Σ(1-loop)からの寄与

です。)

ところが,ψが正しく規格化された場,mが物理的質量

になるよう,予め波動関数(場),質量にくりこみを行った

のですからa.b~はくりこまれた結果,ゼロでなければ

なりません。実際,a=b~=0であれば.(11)の表式:

iSF’(p)=i{-m-(-m)a-mb~}-1

=i(1-a)-1[-m{1+b~/(1-a)}]-1によって,

iSF’(p)=i/(-m)となりψの2点関数(伝播関数)

=mに極を持ち留数は正しくiになります。

したがって,Z2(1),δm(1)は,Z2(1)(1),δm(1)

=mb~(1)ととるべきであることがわかります。

 

すなわち,この操作でΣ(p)の1-loopの計算に現われた

発散:a(1),b~(1countfreeのZ2(1),δm(1)の寄与で相殺

される必要があるのです。

※以上,「くりこみ理論(次元正則化)(3))

の要約は終わりです。

(参考文献:九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

 

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