「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。
「くりこみ理論(次元正則化)(10)」の最後の方
から始まった,「ゲージ理論のくりこみ可能性」
を証明するという課題は,記事(11),(12),(13)を
経て前回の記事(14)でやっと完了しました。
6月に入りました。
今回は第7章の新しい節である:
§7-5:(質量に依らない対称なくりこみ)からです。
以下,本論です。
前節のゲージ理論のくりこみ可能性の議論
では,「対称性の自発的破れ」がないと仮定し,
大局的ゲージ不変性の要請を,多くのところで
用いました。しかしながら,対称性が自発的に
破れて,Higgs現象が起きているような場合でも
ゲージ理論は依然として,くりこみ可能である
ことを示すことができます。
実際,前節では,既に対称性が自発的に破れて
いる場合も含めて考えていました。
つまり,対称性を陽に破るパラメータ:faiを
含む一般線形ゲージの場合を論じたのでスカラー
場:φiは真空期待値:viを持ち,自発的破れのある
場合と本質的に同値な状況を既に考えたことになる,
わけです。
すなわち,対称性の自発的破れがある場合には,
スカラー場:φiはtreeレベルでゼロでない真空
期待値:vi(0)を持つのですが,そのパラメータvi(0)
(≠0)をゲージ固定項のパラメータ:faiと同様,
大局的ゲージ変換の下で,その添字に応じて変換
する共変量と見なすことにすれば,依然として
大局的ゲージ不変性の要求を満たす理論に対する
場合と同じ議論が可能となります。
そうすれば,前節の議論で大局的ゲージ不変性を
用いたところで,新たにvi(0)がφiと同じ変換をする
次元1の量として加わるという点のみを考え直せば
結局,前と同じく,くりこみ因子Zや真空期待値vi
をシフトすることによって発散を全てくりこむこと
ができます。
本節では,これを陽に行なうことはせず,むしろ
対称性が自発的に破れた理論のくりこみを,自発的
破れを起こしていない対称な理論のくりこみに帰着
させる,という方法について述べます。
この方法の基本的考え方は次の通りです。
摂動論の範囲内では,対称性の自発的破れを
起こしている場合と破れを起こしていない場合
の違いは,単にスカラー場:φの質量項:-μ2|φ|2
のμ2の符号の違いだけです。
※(注15-1):質量項を-μ2|φ|2とすると,
有効ポテンシャルVは,
V[φ~]-(λ/2)|φ~|4-μ2|φ~|2
=-(λ/2)(|φ~|2+μ2/λ)2-μ4/(2λ)
であり,{φ~{2≧0なので,普通にμ2>0なら
Vの最小値を与えるφの期待値φ~は確かに
φ~=0であり,そのときVmin=0ですから,
この場合は対称性は破れていません。
しかし,もしも質量が,異常なμ2<0の
パラメータなら,V[φ~]=-(λ/2)|φ~|4
-|μ2||φ~|2=-(λ/2)(|φ~|2-|μ|2/λ)2
+μ4/(2λ)なので,Vが最小になるのは|φ~|2
=|μ|2/λ=-μ2/λ>0のときであり,この
とき,Vmin=μ4/(2λ)>0ですから,対称性が
破れています。
これは,第6章「対称性の自発的破れ」で紹介
した単純なGoldstone模型です。
(注15-1終わり※)
ところが,くりこみの一般論の第7章の命題
からもわかるように,このような次元2の質量項
の違いはゲージ理論のくりこみの本質的な部分
である次元が4,または3の演算子(発散部分)の
くりこみには影響しません。
このことを反映して,実際,任意の理論において
そこに現われる場の質量パラメータに依存しない
形で,くりこみができること,それ故,質量
パラメータを変数とする(連続無限個の)理論の組
が一度に有限となることを示すことができます。
このくりこみの方法を「質量に依らないくりこみ
(mass-independent renormalization)」と呼びます。
これを利用して,対称な理論で一たび,くりこみが
できる,ことがわかれば,(ゲージ理論であれ何であれ)
理論は質量パラメータμ2の値の如何に依らず一挙に
有限にできることになるので,このLagrangianでμ2<0
の対称性の自発的に破れた理論も有限であるといえます。
さて,※(質量に依らないくりこみ)の項の本論です。
このくりこみ法は,元々はt’HooftとWeinberg
によって提唱されたのですが,ここではCallanに従って
最も簡単なスカラー理論の場合で説明します。
例として,O(N)対称性を持つλφ4理論を採用すれば
その摂動の第0次のLagrangian密度は,スカラー場を
φ=φ1,φ2,..φN)として,L=(∂μφ)2
-(m2/2)φ2-(λ/8)(φ2)2.(1)で与えられます。
ここで,φ2=Σj=1Nφj2であり,m2は質量の2乗
パラメータですが,これは非負とは限らないとします。
(※通常のスカラー粒子の2乗質量に用いるμ2は後
でくりこみ点に用いる予定なので,ここでは使わずに,
残しておきます。)
この(1)のLに対する有効作用:Γを有限にする
ためには,2次発散する2点頂点関数Γ(2)と対数
発散する4点頂点関数Γ(4)を考えれば十分です。
これらに対して,適切なくりこみ条件の本質的な
点は,n点頂点関数Γ(n)を質量をパラメータm2の
関数と見て有限化することです。
それ故,m2をΓ(n)の運動量変数:pの2乗:p2など
と同等に扱います。
例えば,次のようなくりこみ条件を設定します。
すなわち,Γ(2)ij(P2=0,m2,λ;μ2)|m2==0=0.(2),
(∂/∂m2)Γ(2)ij(P2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2=-δij(3),
(∂/∂p2)Γ(2)ij(P2,m2,λ;μ2)|P2=0,m2=μ2=+δij.
(4)です。
そして,Γ(4)ijkl(P2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2
=-λδij.kl(5)です。
ただし,Pは,一般のn点関数のとき,
P=(p1,p2。..pn-1)|pn=-(p1+p2+..pn-1)を
表わし,また,δij,,kl=δijδkl+δikδjl+δilδjk
(6)です
2点関数ではΓ(2)は2次発散なので(次元2の)引数:
m2,および,P2でTaylot展開すれば発散次元は2
ずつ下がり,初項が2次発散し.次の1階微分の2項
(∂Γ(2)/∂m2)と(∂Γ(2)/∂p2)が対数発散します。
そして,それ以降は収束ということになります。
上記の(2),(3),(4)のくりこみ条件は,この発散
する初めの3項に対する条件で,(2)は質量
パラメータm2がゼロのときは,粒子が本当に零質量
なるべし.(3).(4)は,m2があるべき項μ2(>0)のとき
p2がゼロでのΓ(2)の(p2-m2)に関する数係数が,
treeレベルのΓ(2)=δij(p2-m2)の満たす値から
ずれてはならない。という要請です。
これに対して,4点関数:Γ(4)は対数発散なので.
(m2,p2)平面のどこか1点の値を指定すればいい
です。(5)の条件は,m2=μ2のとき,p=0のΓ(4)
がtreeレベルの-λδij.klから,ずれないという
条件です。
(2)の条件がm2=0で与えられているのに対し
(3)~,(5)の条件がm2=μ2>0で与えられている
のは,(3)~(5)の量は対数発散なので,mもpも皆,
ゼロにすると赤外発散の困難に遭うからです。
(※理解しやすいように,Paulli-Villersの正則化
で見ると,対数発散量は切断パラメータをΛ2として
lnΛ2に比例して発散することを意味しますが,Λ2は
次元を持っており,これの対数関数というのは物理的
には有り得ず,必ず,無次元量として,ln{Λ2/(ap2+bm2)}
の形で現われるため,p2=0としたとき,m2=0とすると
赤外発散を生じるからです。)
くりこみ条件を与えたm2の値:μ2を
「くりこみ点(renormalization point)」と呼びます。
このことから,くりこまれたΓ(n)は
くりこみ点:μ2にも依存するようになるので,
(2)~(5)でΓ(2),Γ(4)の引数としてμ2を陽に書いた
のでした。
こうした,くりこみ条件を実現するためには
次の相殺項が必要となります。
すなわち,Lcount=(A/2)(∂μφ)2-(B/2)m2φ2
+(1/2)δm2φ2-(Cλ/8)(φ2)2.(7)です。
つまり,摂動論(例えばhc展開)の各オーダーごとに
相殺項の係数:A,B,δm2,Cを決めてゆきます。
くりこみ条件の(2)はδm2の,(3)はBの,(4)はAの,
(5)はCの,自由度を用いて,それぞれが満たされるように
できます。この相殺項を加えるということは,系の裸の
Lagrangian:L0がL0=(1/2)(∂μφ0)2
-(1/2)(m02-δm02)φ02-(λ0/8)(φ02)2=L+Lcount(8)
と書けることを意味し,φ0=Zφ1/2φ,より,1+A=Zφ.(9),
m02=Zmm2,δm02=Zφ-1δm2より,1+B=ZmZφ.(10),
λ0=Zλλより,1+C=ZλZφ2.(11)を満たす係数A,B,
δm2,Cを持つ相殺項:Lcountを採ればいいことを意味します。
与えられた1つの質量の理論をくりこむ通常の場合と少し
異なっているのは,裸の質量が,(m02-δm02)のように2つ
に分離しているところです。
今の場合,m2はp2と同様な変数であり,(10)を導いた式:
{(1+B)m2-δm2}φ2/2=(m02-δm02)φ02/2
=(ZmZφm2-δm2)φ2/2から,わかるようにm02はm2に
比例する線形項ですが,δm02はm2に依らない定数項に対応
しています。
(※なお,Dirac Fermionの場合は,同様にmに
比例する部分:m0=Zmmと,定数部分δm0に
分けると.実は,δm0は自動的にゼロになります。
これは,カイラル対称性のせいで,くりこまれた質量
(treeレベルの質量)がゼロであると裸の質量も
ゼロになるからです。(※※つまりカイラル対称性
を持つは質量項のないDirac粒子の場合です。
そこで,くりこんだ結果:δmψ~ψ=0なら
裸の質量:m0-δm0におけるδmに関わる
部分のδm0=0なのです。)
スカラー理論でも,次元正則化を用いるなら定数部分
δm02は自動的にゼロとなります。)
いずれにしろ,以上のくりこみ手続きでΓ(2),Γ(4),それ故
Γ(n)が,摂動の各次数ごとに運動量pと質量パラメータm2
の関数として有限にできるということがわかりました。
このとき,対数発散項の相殺にあずかる因子:
Zφ,Zm,Zλは,くりこみ条件(3)~(5)がm2=μ2の
ところで与えられているので,切断パラメータをΛ
として,Zi=Zi(λ0,Λ/μ) (i=φ,m,λ).(12)
の形で決まります。
こうしてZiは,変数としての質量パラメータm2
には依存していないということが重要な点で,
「質量に依らないくりこみ」という名称は,これ
に由来しています。
もう1つの重要な注目点は,裸のLagrangian
(故に裸の有効作用)に現われるδm02が,m2にも
δm2にも依存しないという事実です。
すなわち,δm02=Λ2f0(λ0)(13)と書けます。
このことは,過去記事;「くりこみ理論(6)」で
与えた関係式を,μ2をm2に置き換え,くりこみ
点を表示して書き直した,
Γ(n)(p,m2,λ;μ2)
=Zφn/2Γ0(n)(o,m02,λ0;Λ2),(14)
を思い出せば,裸の,Γ0(n)は,くりこまれた
それ:Γ(n)と比例関係にあることから,
Γ(2)に対するくりこみ条件(2)を裸の
Γ0(2)に対するように書き換えると,
Γ0(2)ij(p2=0,m02=0,δm02,λ0;Λ2)=0.
(15)となることがわかります。
これはδm02を決める関係式になっており,
ゼロでなくて次元を持つ量は,δm02の他には
Λ2のみを含んでいます。
そこで,次元解析を利用して(14)の解:δm02
が,δm02=Λ2f0(λ0)(13)の形に書けることが
わかります。この形式は,後に斉次くりこみ群
方程式を導くときに重要になります。
これを得るためには質量に依らないくりこみ
では,くりこみ条件(2)は必要不可欠です。
しかし,他の条件(3)~(5)は,いろいろとある
中の1つの選択肢で,他の条件も有り得ます。
例えば,(3),(5)を,それぞれ,
Γ(2)ij(p2=μ2,m2=μ2,λ:μ2)=0.(16-1),
Γ(4)ijkl(p,m2=μ2,λ:μ2)|pipj=(1-δij)/2
=-λδij,kl.(16-2)に置き換えてもいいです。
ここで,t’Hooftにより始められた,次元正則化
に基づく,質量に依らないくりこみ法について少し
コメントします。
この方法も本質的には上記のPaulli-Villers
正則化のそれと同じですが,ゲージ不変性を尊重
するという点で便利です。
まず,時空d次元では,dimφ=(d-2)/2,
dim(L)=dですから,裸の結合定数λ0が(4-d)
の次元を持ちます。しかし,くりこまれた結合定数
λ,および,くりこみ定数:Zλが常に無次元になる
ように.(11)のλ0=Zλλ,の代わりに,
λ0=Zλ(λμ(4--d))
=(1+hcZλ(1)+hc2Zλ(2)+..)(λμ(4-d))(17)
の形でくりこみを行ないます。
ただし,μはくりこみ点に相当する次元1の
パラメータです。
こうすれば,次元正則化による摂動計算において,
結合定数は常に(λμ(4-d))の形で出てきます。
したがって,loop積分結果のd=4の極の近傍の
展開に現われる対数関数は,ln{(p2+m2)/μ2}の
ように,常に正しく引数が無次元の量となります。
次元正則化のこの方法では次元を持つ切断
パラメータΛは導入されないので.先の2次発散
のΓ(2)に対する,くりこみ条件(2):
Γ(2)ij(p2=0,m2,λ;μ2)|m2=0=0.は,自動的に
満たされます。(μ2はd→4では対数の引数には
出てきません。)
よって,条件(2)が陽に言及されることはないです。
他の対数発散部分に対してはは(17)の
λ0=Zλ(λμ(4--d))
=(1+hcZλ(1)+hc2Zλ(2)+..)(λμ(4-d))
および,m02=Zmm2,φ0=Zφ1/2φとして,
例えば,先の条件(3),(4),(5)(ただし(5)では
右辺のλをλμ(4-d)に置換)のくりこみ条件:
つまり
(∂/∂m2)Γ(2)ij(p2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2
=-δij(3),
(∂/∂p2)Γ(2)ij(p2,m2,λ;μ2)|p2=0,m2=μ2
=δij.(4),Γ(4)ijkl(p2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2
=-λμ(4-d)δij.kl(.(5)’
を設定して,くりこみを実施します。
または,くりこみ条件に言及せず,
単に1/(d-4)の極の部分ε~-1だけを除きます。
そうすれば,次元をもたないZi(i=φ,m.λ)は,
(Λが存在しないので)μに陽には依存せず,
Zi(λ,d)=1+a1(λ)/(d-4)+a2(λ)/(d-4)2
+..の形になり,明白な質量に依らないくりこみと
なります。
このとき,Ziのくりこみ点:μへの依存性は
くりこまれた結合定数λを通してのみ依存します。
くりこまれたλは裸のλ0がμに独立なので,(17)から
μ依存性が決まります。
※(注15-2):「くりこみ理論(4)」,または,その
「要約(4)」の必要部分の再掲載を兼ねた,本論
の補足説明を注釈します。
まず,系の裸のLagrangianをL0=L+Lcountと
するとき,裸の質量がμ0のBosonの2点Green
関数(Feynman伝播関数)iΔF’(p2)への
1粒子既約な自己エネルギーグラフの寄与
が裸の量で-iΠ0(p2)であるとすると,
その2点Green関数は
iΔF’ij(p2)=iδij{p2-μ02-Π0(p2)}-1
=i[Γ0(2)(p2)]-1 で与えられます。
そして,iΔF’(p2)を,くり込んだものを
iΔF~(p2)と書き,iΔF’(p2)
=i/{p2-μ02-Π0(p2)}=iZ3/(p2-μ2)
=Z3iΔF~(p2)になると考えると,
Π0(p2)=(Z3-1)(p2-μ2)+δμ2を得ます。
ただし,δμ2=μ2-μ02としています。
系の裸のLagrangianがL0=L+Lcontと
表わされるのに倣って,裸のΠ0もくりこまれた
Πと相殺項:Πcountの和として,
Π0(p2)=Π(p2)+Πcount(p2)と書くと
Π(p2)+Πcount(p2)=(Z3-1)(p2-μ2)
+δμ2です。
特に,最低次のオーダーでは,
Π(1-loop1)(p2)+Πcount(1)(p2)=Z3(1)(p2-μ2)
+(δμ2)(1)となるべきことを意味します。
このくりこみの結果,μが実際に観測される
物理的質量という意味を持つための条件として
p2=μ2の近傍では,Δ~F(p2)ij=δij/(p2-μ2),
または,Γ~(2)(p2)=p2-μ2となることが要求
されます。
くりこみ条件(2)はp=0,μ=0でΓ(2)=0
でした。
この条件はΠ(p2)+Πconht(p2)
=(Z3-1)(p2-μ2)+δμ2の上では,p=0,
μ=0で,Π(0)+Πcount(1)(0)=(δμ2 なること
に相当しています。
これらは,質量をパラメータ:mとしてくりこみ
点を,m2=μ2とした頂点関数Γで考えるとp2=m2
=μ2の近傍では,Γ(2)(p2)=p2-m2となるべき
ことを意味します。
そして,これは,Γ(p2,m2)=Γ(0,0)+p2(∂Γ/∂p2)
+m2(∂Γ/∂m2)+..のベキ展開においては,
Γ(0,0)=0,(2) (∂Γ/∂p2)=1,(3),(∂Γ/∂m)=-1.
(4)の3条件です。
そして特に,最低次のオーダーでは,Π(1-loop1)(p2)
+Πcount(1)(p2)=Z3(1)(p2-μ2)+(δμ2)(1)です。
そこで,Π(1-loop1)(p2,m2)+Πconht(1)(p2,m2)
=Z3(1)(p2-m2)+(δm2)(1)であり,条件(2)は,
最低次ではΠ(1-loop1)(0,0)+Πcount(1)(p2)
=(δm2)(1)です。
さてBoson質量をμに戻して,くりこまれた量で
最低次の1粒子既約の自己エネルギーを計算すれば,
-iδijΠ(1-loop)(p2)
=∫ddk(2π)-4(-)Tr[(―igτi)i(k-mF)-1
(-igτj)i{(k-p)-mF}-1]+∫ddk(2π)-4
(-iλ/8)4×3+8)δiji/(k2-μ2)-iΠcount(1)(p2)
となります。ただし,mFはBosonが真空偏極する
グラフでloop積分すべき内線運動量kを持った
仮想Fermionの質量です。
次元正則化で,最後にd→4の極限をとる前の
自己エネルギー部分の計算結果は,
-iΠ(1-loop)(p2)
={(-i)2・4g2/(16π2)}[(3ε~-1+1)
×(mF2-p2/6)-3∫01dx{mF2-x(1-x)p2
×ln{mF2-x(1-x)p2}]
+{-5λ/(32π2)}μ2{-ε~-1-1+ln(μ2)}
となります。
ただし,ε~-1は,d→4で発散する部分で,
ε-1=2/(4-d)および,ε~-1=ε-1-γ+ln(4π)
で定義されています。
それ故,-iΠ(1-loop)(p2)の発散部分は,
ε~-1を含む部分だけで,これを含む相殺項を.
-iΠcount(1)(p2)として,差し引くことで,有限
にする操作が,次元正則化のくりこみ手続きです。
したがって,1PIの自己エネルギーグラフの
最低次のくりこまれたネットの寄与は,
Π(1-loop)(p2)+Πcount(1)(p2)ですが,これが,
p=0,μ=0で(δμ2)(1)に一致するべし,と
いうのが,最低次でのくりこみ条件(2)の
意味するところです。
それ故,Π(1-loop)(0)|p2=0,μ2=0
={g2/(2π2)}{(3ε~-1+1)mF2-3mF2ln(mF2)}
を得ますが,相殺項:Πcount(1)(0)をε~-1を因子と
する発散部分:{3g2/(2π2)}ε~-1に有限限部分
の一部を加えて(-)符号を付けたものとして
これに加えると,(δμ2)(1)が(有限部分)
+Π(1-loop)(0)|p2=0.μ2=0で与えられることがくりこみ
条件(2)が満たされることに同値となります。
すなわち,Paulli-Villersの場合なら∫ddk
が∫d4kで,自己エネルギー部分の計算結果は,
-iδijΠ(1-loop)(p2)
=∫d4k(2π)-4(-)Tr[(―igτi)i(k-mF)-1
(-igτj)i{(k-p)-mF}-1]
+∫d4k(2π)-4(-iλ/8)4×3+8)δiji/(k2-μ2)
となり,被積分関数はkの(-2)次で,積分が∫d4k
の4次であること,および,(mF2,μ2,p2)の次元2を
持った量で展開すると,発散の次数が2ずつ下がること
から,これを理解できます。
いずれにしろ,Π(1-loop)(p2)は,外線運動量:p2の関数
として,p2の0次と1次の項しか含まず,それ故,丁度,
相殺項:-iΠcount(1)(p2)=i{Z3(1)(p2-μ2)+δμ2(1)}
で相殺できる形になります。
つまり,Paulli-Villers正則化では,δμ2(1)
=Π(1-loop)(p2=μ2)=(有限定数)
+{5λ/(16π2)-3g2/π2}Λ2ln2
+[{3g2/(2π2)}(mF2-μ2/6)-5λμ2/(32π2)]
×ln(Λ2/μ2)(発散量),
かつ,Z3(1)=[∂Π(-loop1)/∂p2]p2=μ2
=(有限定数)+{g2/(4π2)}ln(Λ2/μ2)(発散量)
と置き,一方,次元正則化では,
δμ2(1)=Π(1-loop)(p2=μ2)
=(有限定数)
+[{3g2/(2π2)(mF2-μ2/6)-5λμ2/(32π2)}ε~-1
(発散量),かつ,Z3(1)=[∂Π(-loop1)/∂p2]p2=μ2
=(有限定数)+{g2/(4π2)}ε~-1(発散量)と置くと
いずれの正則化でも,Π(1-loop1)+Πcount(1)は有限になり
(p2-μ2)の2次以上の項はなくなって,
伝播関数はp2=μ2の近傍では,iΔj(p2)ij
=iδij/(p2-μ2)の形になり,μがBosonの物理的
質量である,という要請が確かに満足されます。
(再掲部分関連終了※)
質量に依らないくりこみでは,裸の2乗質量
がμ02ではなくて,(m02-δm02),くりこまれた
質量がμ2でなくm2なので,上のδμ2=μ2-μ02
に相当するのは,m2-(m02-δm02)=δm2+δm02
です。先に述べたようにδm02はm2に依存しない
定数ですから,このパラメータはどう取ろうが自由
です。
自己エネルギーについては.
Π(p2)+Πcount(1)(p2)={Z3-1)(p2-m2)
+(δm2-+δm02)が満たされるべき条件です。
故に,くりこみ条件(2)はΠ(0)+Πcount(1)(2)
=δm2-+δm02ですが,δm02が何でもよい
なら;この条件は不要だと思うのですが。
(注15-2終わり※)
途中すが長くなったので今回はここで終わります。
(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」
(培風館)
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