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2020年6月13日 (土)

くりこみ理論(次元正則化)16)

「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

§7-5:(質量に依らない対称なくりこみ)

の続きからです。以下,本論です。

※(有効作用のくりこみ)の項です。

前記事の「質量に依らないくりこみ」

により得られる有効作用Γ[φ~,m2,λ;μ2]

を考えます。(※φi~はスカラー場:φi

期待値を表わしています。)

今は,φの脚のない真空泡グラフは,考慮

していないので,Γ(0)については,省くと

,Γ[φ~,m2,λ;μ2]

=Σn=2(1/n!)∫(2π)-441.∫(2π)-44n

(n)i1i2..in(,m2,λ;μ2)(2π)4δ(Σj)

×φi1~(-p1i2~(-p2)..φin~(-pn)].(18)

と展開され,係数としてのn点頂点関数:Γ(n)

が,Pと2の有限な関数として計算されます。

展開:(18)は,φi~=0の対称な真空のまわり

の展開ですから,各頂点関数Γ(n)は,対称な

真空の上の頂点関数に対応しています。

しかしながら,上記くりこみ操作を各Γ(n)

個々の頂点関数のくりこみと,摂動論的に考える

ことなく,むしろ有効作用Γ[φ~,m2,λ;μ2]

という1つの量に対するくりこみと見なすこと

もできます。

この観点を取れば,Γ自体は,Γ(0)=Sがλφ4

の項を含むため,4次発散の量ですが,それを次元

1を持つ引数φi~(p)で展開すれば,発散が1次

ずつ下がるので,展開で考えるとΓ(0)(2)(4)

までが発散し,これらはそれぞれ,4次,2次,対数

の発散量となりますが,真空泡グラフの寄与Γ(0)

は考慮する必要がないので,無視します。

さらに,Γ(2)(4)を引数p2とm2で展開し,

その初めの展開でΓ(2)の定数項:Γ(2)|p2=m2=0,

2の係数:(∂Γ(2)/∂p2)|p2=0.2m2=μ2,

(m2-μ2)の係数:(∂Γ(2)/∂m2)|p2=0,m2=μ2.

Γ(4)の定数項Γ(4)|p2=0,m2=μ2.(19)の4つの

量だけが発散するので,これらに対して.先の

(2)~(5)のくりこみ条件下で指定される引き算

操作をしたものが,有効作用Γのくりこみ操作

であると,考えることができます。

こうした立場では,有効作用Γを,φi~の汎関数,

かつ,m2の関数として丸ごと有限化したのであり.

展開:(18)のように,対称な真空:φi~=0 の上の

n点頂点関数:Γ(n)のそれぞれを有限にしたもの

ではない,という点が重要です。

つまり,Γを有限にするのに,そのφi~による,

φi~=0のまわりのTaylor展開で,初めの発散する

係数を持つ4項だけを(19)の指定により,引き算操作

しただけであり,決して,それ以降の収束する項まで,

φi~=0のまわりのTaylor展開と見る必要はない,

ということです。

このことは,通常のBPHZくりこみにおいて

発散するFeynman積分の被積分関数に対して,その

外線運動量pに関してTaylor展開した初めの数項

を引き算した手続きと丁度,同じで,その場合も.

決して,被積分関数をp=0のまわりに無限次まで

展開したわけではなく,初めの数項を引き算した

残りの積分は,展開などせず,単に有限な関数である

としたのと同様な見方ができます。

それ故,(19)の4項を引き算することで,有効作用

Γは,φ~の有限な汎関数,かつm2の有限な関数と

なるわけです。

このような単に見かけの違いに過ぎないような

「有効作用のくりこみ]という立場を強調する

のは。次の理由からです。

実際のところ,対称性が自発的に破れる場合,

特に,質量パラメータm2がある負の値(-M2)を

取る場合に興味があります。

この場合にはφ~i=0の対称な真空は不安定で

あり,Feynman伝播関数にタキオン(tachyon)の極

(p2<0の領域の極)が出てくるので,φ~=0のまわり

の展開(18)の係数で与えられる真空上のn点頂点関数

Γ(n)は無矛盾(well-defined)な量でなくなります。

(※つまり,この不合理なタキオンの極をどのように

避けるのか?がまだ指定されていません。)

しかし,Γ[φ~,m2,λ;μ2]自体は,m2<0の

領域でも無矛盾です。

2=-M2<0の場合には,まず,有効作用Γの

引数:φi~(x)を定数φi~(※これは運動量表示の

φi~(p)では,φi~(p)=∫d4xexp(ipx)φi~(x)

なので,φi~の(2π)4δ4(p)倍に相当)に置いて

得た有効ポテンシャル:V[φi~,-M2,λ;μ2]

=Γ[φi~(x)=φi~,-M2,λ:μ2]/∫d4x.

(20)の停留条件:∂V/∂φi~=0を満たす安定な

真空解:Φi~=viを求めます。

次に,有効作用Γをφi~(p)=vi(2π)4δ4(p)

のまわりで,汎関数Taylor展開を実施すれば.

Γ[φi~,-M2,λ:μ2]

=Σ(1/n!)∫(2π)-441.∫(2π)-44n

v(n)i1i2..in(,m2,λ;μ2)(2π)4δ(Σj)

×φi1^(-p1i2^(-p2)..φin^(-pn)].

ただし,φi^(p)=φi~(p)-vi(2π)4δ4(p)

(21)と書けます。

このとき,係数Γv(n)が,その安定な真空上の

期待値:vi=<φi~(ⅹ)>上でのn点頂点関数

を与えます。この場合,もちろん,φi~=viには

タキオンはなくΓv(n)はWell-definedです。

この手続きでは,(20)の有効ポテンシャルVも

(21)の有効作用Γも同じく,既に有限になっている

量と見ることができて,m2を負の値に取ったから

といって,新たにくりこみをやり直す必要など

ないとわかります。

結局,m2=-M2<0の対称性の自発的破れのある

理論も「対称な理論の相殺項」でもって,くりこむ

ことができるわけです。

何故なら,ここで用いた有効作用に対する引き算

項は(19)に与えた4項で,それらは質量パラメータ

2がゼロ,または.μ2>0の対称な理論の相殺項

であったからです(※もう少し正確には対称な理論

のくりこみ因子Zと言うべきです。実際の相殺項は

m2φ2のようにm2に陽に依存しています。)

※(注16-1):私的解釈では,有効作用Γを複素数m2

の複素関数と見て,m2=0,m22の物理的領域から

2が負の領域まで特異点を避けて解析接続できる

とすれば,実際には発散する関数という解析関数

としては有り得ない量を考察しているという点で,

数学的には問題あり,ですが,これを除けば物理的

には理解できます。(Diracの超関数の例なと同様)

発散する裸の量でなく相殺項を引いて,くりこんだ

Γを質量m2について解析接続するなら数学的にも

題ないことに後で気づきました。 

(注16-1終わり※),

このような「有効作用のくりこみ」という観点

に立ち,質量に依らないくりこみ処法を用いて,対称性

が破れている理論,を対称な理論の相殺項でくりこむ

方法を「質量に依らない対称なくりこみ」

(Symmetric mass-independent renormalization)

略して,「SMIくりこみ」と呼びます。

以上のことから前節のゲージ理論のスカラー場の

部分に,このSMIくりこみを適用すれば,対称性が

自発的に破れてHiggs現象が起こっているような

場合でも,くりこみ可能であることが,対称な場合

のくりこみ可能性から従うことが理解されます。

さて,次は,※(ゲージ場の質量項による赤外正則化)

の項です。

ここで,少し話題が変わりますが,質量に依らない

くりこみの1つの応用として,ゲージ場の質量項

(1/2)m2Aμ2を付加することにより,対称性の自発的

破れのないゲージ理論における赤外発散を正則化する

方法について考察してみます。

赤外発散は,例えばQCD(quantum chrono-dynamics

量子色力学)において,零質量のグルオンというゲージ

粒子のみが回るloop積分:∫(2π)-44lで,被積分

関数が,運動量lに関して4次以下であれば外線運動量

を全てゼロにしたとき,l~0の赤外側で,積分が発散

するという問題のことです。

したがって,これは外線運動量:p=0のまわりでの

Taylor展開で紫外発散を引くという元々のBPHZ

くりこみをゲージ理論に適用しようとするときにも,

起こる問題であり,零質量粒子のみから成るloopの

グラフの対数発散項は赤外でも発散し元のBPHZ

の手続きが使えなくなります。

もちろん,外線運動量pをゼロ以外の点におけば

積分は問題ないのですが,pはLorentzスカラーでは

ないので,p=0以外の点を選ぶと,かなり面倒なこと

になります。

そこで,ゲージ場に.仮にゼロでないし質量mを与え,

p=0でも赤外発散が生じないようにするのが,この

赤外正則化の方法です。,

実際に求めたいものは,m=0の理論ですが,まず,

ゲージ場が一般の質量mを持つ場合に枠を広げた後

に「質量に依らないくりこみ法」を適用してm2

あるくりこみ点:μ2(>0)の(p=0でも赤外発散の

ない)ところでの相殺項によって任意のmを持つ理論

を全て有限にするわけです。

ゲージ理論のBRS不変なLagrangianにゲージ場

の質量項:(1/2)m2μ2を付け加えても(他の次元2

のスカラー場の質量項が少し変化を受ける点以外

には)そのまま,くりこみ可能であることは以前の

命題1とSymmanzikの定理から,ほぼ明らかです。

しかし,今の場合,線形でもなくBRS対称性を

破る項を付加する点や,対数発散の相殺項は全て

BRS不変でないm2=μ2の理論のものを用いる

点から,若干,不安をおぼえるかもしれないので,

念のため,以前のWT恒等式を用いた議論を質量項:

2μ2/2がある場合に拡張して,これらのこと

を,以下で直接証明することにします。

まず,ゲージ場の質量項:m2μ2/2がある場合の

WT恒等式を導きます。

前節で与えたBRS不変な作用積分Sに.この質量項

と,BRS変換の外場項を加えた作用積分をIとします。

すなわち,I=S+∫d4x{m2μ2/2+Mδ(Aμ2/2)}

(22)です。

(※S=∫d4x{L(ΦI)+KIΦI})

+K(δc)}です。)

ここで,δ(Aμ2/2)=Aμ(Dμ)

=Aμμa (23)です。

また,外場:Mは次元が1,FPゴースト数が

FP=-1の量です。

系の作用積分Iに対応する有効作用Γに

対するWT恒等式は,前の§5-6と同様にして,

(δΓ/δΦI)(δΓ/δKI)

+(δΓ/δc)(δΓ/δK)

+i(δΓ/δc~)B=m2(δΓ/δM).(24)

となります。

※(注16-2):上記(24)を第5章のBRS対称性

を持つ系のWT恒等式の基本に戻って証明します。

[証明]:作用積分を,引数を陽に書いてI[Φ,K,M]

とすれば,連結Green関数の生成汎関数:

W(J,K,M)=I(Φ,K,M)+J・Φは.

exp{iW(J,K,M)}

=∫DΦ[expi{I(Φ,K,M)+J・Φ},

なる等式を満たします。ただし,J・Φ

=∫d4x{JIΦI+J~c+Jc~+JB})

です。

この式で,汎関数積分(配位空間経路積分)

の内部にBRS変換を行なえば,BRS不変で

ないのはIの中の(m2μ2/2)項とJ・Φのみ

であり,一方,真空はBRS不変:Q|0>=0

なので,左辺=exp(iW)=exp{i(I+J・Φ)}

のBRS変換

=<0|[iQ,Texpi(I+J・Φ)}|0>=0

という恒等式が成立します。

そこで∫DΦ [m2{(δ(Aμ2/2)+JI(δΦI)

-J ~ c~(δ)-iJa}exp(iW(J,K,M)]

=0, つまり,[m2(δ/δM)+JI(δ/δKI)

-J~c~(δ/δKc)-iJ(δ/δJ)]

×W(J,K.M)=0 なる恒等式を得ます。

そこで,Legendre変換:Γ[Φ,K,M]

=W[J,K,M]-J・φによって,有効作用:Γ

を定義すれば,-(-)|I|I=(δΓ/δΦI),であり

,WのK,Mによる左微分は,Γのそれに等しいので.

左微分:(δ/δKI)W=(δ/δKI)Γ,および,

(δ/δM)W=(δ/δ)Γを,それぞれ,単に

δΓ/δKI,および,δΓ/δMと書けば,

WT恒等式として,

2(δΓ/δM)-((δΓ/δΦI))(δΓ/δKI)

-(δΓ/δc)(δΓ/δKc)

-i(δΓ/δc~)B=0(24)が得られます。

[証明終わり] (注16-2終わり※)

他のNL場,反ゴースト場の運動方程式

から従う§7-4で論じた後2つのWT恒等式:

δΓ/δB=fIΦI+w+αB.および,

I(δΓ/δKI)+i(δΓ/δc~)=0は,

ゲージ場の質量項の付加で変更を受けません。

そこで,以前の§7-4でやったように作用I

と有効作用ΓからB依存部分を除いた,I~,

Γ~を定義し,また,外場KIの代わりに,変数

K~=KI+ic~Iを用いれば,c~への

依存性も消えます。

こうすれば,後の2つのWT恒等式は不要

となり,残るWT恒等式:(24)は*演算を用いて

Γ~*Γ~=m2(δΓ~/δM).(25)と,書き直す

ことができます。

この恒等式(24),方程式(25)は,実は元々,

ΦI0,K~I0,M0等の裸の量を引数とする,裸の

有効作用Γ~0に対して成立している裸の式

ですが,これをくりこんでも同じ形になる

ように§7-4の(15):A0μ=Z31/2μ,

φ0i=Zi1/2i,+vi)=Zi1/2φ~i,

(c0,c0~)=Z~31/2(c,c~),(18):

0μ=Z3-1/2μ,および,

0i=(Z~31/231/2/Zi1/2)Ki,

さらに,(19):K0c=Z31/2,

そして,(20):g0=Zi3-3/2g.を

考慮します。

そして,ゲージ場Aμの2乗質量m02

外場:M0についても,m02=Z2,

0=Z31/2Z~31/2M.(26)として,

くりこみを行ないます。

すると,(24)は元々,Γ~0を含め全ての量

に添字0を付けた裸の量で成立する恒等式

ですが,これが,くりこんだ量:Γ~と,ΦI,K~I,

,K.m2,Mで書かれた恒等式となり,

共通因数の(Z31/2Z~31/2)をはずすと,裸の式と

同じ形になります。

ゲージ場の2乗質量m2に関しては,

「質量に依らないくりこみ」をしていますが,

(26)のm02=Z2で,ゲージ場の裸の質量

はm2に比例する部分しかない,と暗に述べて

います。これはゲージ対称性(BRS対称性)に

より,m2=0なら,裸の2乗質量は,(m02-δm02)

ではなくて,m02であり,これもゼロであることが

保証されているからです。

前と同様,数学的帰納法により,hcのオーダー

まで有限にくりこめた,と仮定すると,hc(n+1)の

オーダーで現われる発散Γdiv(n+1)は,WT恒等式

(24)を書き直した(25)Γ~*Γ~=m2(δΓ~/δM)

より,Γ~(0)=I~であり,

I~*Γdiv(n+1)=m2(δΓdiv(n+1)/δM)なる

方程式を満たすことが従います。

それ故,今度の場合は前のS~*X=0と

違って,I~*X=m2(δX/δM.(27)という

くりこみ方程式の解:Xの一般形を求めればよい,

ということになります。

まず,Xは次元が4以下であるとして,次元2

を担うm2の高々1次関数として,X=X0+m21

(28)(X0,X1はm2に独立な量)と書いてよい

ことになります。

(※次元4のm4の項は場によらないので,今の

真空泡グラフを考えない場合,落とします。)

また,作用積分:I~でも,m2部分を分離して

I~=I~0+m2I~1.(29)とします。

このとき,I~0=S~+∫d4x{M(Aμμ)},

1=∫d4x(m2Aμ2/2)+MAaμ (30)です。

すると,(27)のI~*X=m2(δX/δM)は,

(I~0+m2I~1)*(X0+m21)=m2(∂X0/δM)

+m4(δX1/δM)となり,これはm2の多項式と

して恒等式なので,両辺の同じm2べきの係数

を等置して,方程式:I~0*X0=0.(31),

I~1*X0-(δX0/δM)=-I~0*X1.(32)

I~1*X1-(δX1/δM)=0.(33)を得ます。

これを,(33),(32),(31)の順に解きます

そこで,まず,I~1-(δX1/δM)=0ですが,

X=X0+m21より,X1は次元2以下の量です。

これが,大局的ゲージ不変性とFPゴースト数

FP=0を満たす,という要求を考慮すると,

その一般形は次式で与えられることが

わかります。

すなわち,X1=∫d4x{aAaμ2/2+b|φi|2}

(34)(a,bは定数)です。

ゲージ群がU(1),またはU(1)因子群を含む

場合は,Mcの項も要求を満たすように見えます

が,c(―x)→ ―c(x),M(―x)→ M(x)

なので.CPT不変性からこの項は(34)から排除

されます。とにかく,cの奇数次の項などは存在

し得ません。

一方,I~1=∫d4x{Aμ2/2}(30)なる陽な

表式と.§7-4の演算*の定義から,任意のXに

対して.I~1*X=Aμ(δX/δK~μ).(35)

です。そこで,(34)のX1は,任意のa,bについて,

1*X1-(δX1/δM)=0.(33)の方程式を満たす

ことがわかります。

(※何故なら,δX1/δK~μ=0,かつ,δX1/δM=0

であるからです。)

この(33)の解である(34)のX1を,(32)の方程式

I~1*X0-(δX0/δM)=-I~0*X1の右辺に

代入すると.{Aμ(δ/δK~μ)-(δ/δM)}X0

=-aAμ(∂μ).(36) を得ます。

(※何故なら.I~0*X1においては,φiに関わる

項:(δI~0/δKi)(δX1/δφ)

と(δI~0/δKi)(δX1/δφ)が,相殺して

消えて,Aμに関する項だけが寄与するからです。)

ここで.X0=aMAaμ∂(∂μ)が(36)の特解

になるのは,明らかです。

斉次(同次)方程式:{Aμ(δ/δK~μ)

-(δ/δM)}X0=0の一般解を求めるため,

K^μ­=K~μ+MAμ.(37)と置けば,

δX0/δK~aμ=δX0/δK^μ,および,

δX0/δM=Aμ(δX0/δK^μ)

(※X0はK^aμを通してのみMに依存)

となります。

故に,同次方程式は左辺=δX0/δK^μ

=0,つまり,これの一般解はK^μに独立な

任意の汎関数です。

よって,このX0の同次解をX~0と書けば,

(36)の一般解は,X0=X~0

+∫d4x{aMAaμ(∂μ)}(38)と書けます。

以後,変数として,Φ,c,K~i,Kの他に

(37)のK^μを採ることにすれば,X~0はK^μ

独立なので,Mに依存しない汎関数です。

最後に,方程式:(31)I~0*X0=0に.

上の(38)のX0を代入します。

すると,I~0=S~+∫d4x{M(Aμμ)}

ですから,S~*X~0

+M∫d4x[∂μ(δ/δK^μ)

-Aμμ(δ/δK)]X~0=0.(39)

が得られます。

※(注16-3):何故なら,まず,S~*{MAμ(∂μ)}

=(δS~/δK^μ)(δ/δAμ){MAμ(∂μ)}

=(δμ)(δ/δAμ){(δ(-MAμ2/2)}

δ(-MAμ2/2)]=0を用いると,

S~*X0=S~*X~0が導かれます。

Mの項は,[∫d4x{M(Aμμ)}*X~0

=M∫d4x(∂μ)(δX~0/δK^μ),

-MAμμ(δX~0/δK)です。

そして,M2の項は同じものの*積なのでゼロ

です。つまり,[∫d4x{M(Aμμ)}*

[∫d4y{M(Aμμ)}]=0 です。 

(注16-3終わり※)

そして,(39)の第1項はMに依存しないので,

第1項と第2項は,それぞれ独立にゼロです。

すなわち,S~*X~0=0,かつ,

M∫d4x[∂μ(δ/δK^μ)

-Aμμ(δ/δK)]X~0=0. です。

ところが,S~*X~0=0の解は,前節で,

方程式:S~*X=0を解いた一般解Xと

同じ形で与えられます。

つまり,S~*X=0の一般解:Xは,

X=∫d4x[fゲージ不変I)

+β{K~I(δΦI)+K(δ)}

+(β-γ){Aμ(∂GI/∂Aμ)

-K~μ(∂μ)}

+γφ(d)ijj

{∂(GI+K~iδφi)/∂φj}].(63)

でしたが,この右辺の表式で,K~μを,

K^μ=K~μ+MAμに,置き換えたもの

が.今のS~*X~0=0の一般解:X~0

与えます。

特に,X~0の,K^μ,K依存部分を

X~0と書ヶば,X~0K=K^μ(∂μ)

-βg(μ×)}

+K(g/2)(×)}(40)である

ことがわかります。

ところが,このX~0Kは,(39)の第2項の

M∫d4x[(∂μ)(δ/δK^μ)

-Aμμ(δ/δK)]X~0=0を自動的

に満たします。(※証明は省略)

それ故,これ以外のK^μもKも含まない

部分を加えた全体のX~0をX0に置換しても,

これが満足され,結局,このX~0が(31):I~0*X~0=0

の一般解を与えることがわかります。

 以上から,解:X=X0+m21は(34),(38)により,

X={X~0-γMAaμ(∂μ)}

+∫d4x[(a0+γ)MAμ(∂μ)

+am2μ2/2+bm2|φi|2](41)

で与えられることになります。

このうち,|X~0-γMAaμ(∂μ)}は,

前節の(63)の一般式に一致し.既にBRS不変な

作用S~のZ因子やviをずらして得られる相殺項

で相殺できる,ことを示しました。

今度の作用積分Iで新たに加えられた部分:

(I~-S~)=∫d4x{m2μ2/2+M(Aμμ)}

において,くりこみ操作を実施すれば,

裸の,(I~-S~)0

=∫d4x{Z32μ2/2

+Z3mZ~3M(Aμμ)}(42)

となるため,Z因子をずらすと,Δ(I-S)

=∫d4x{(δZ+δZ3)m2μ2/2

+(δZ+δZ3m+δZ~3)M(Aμμ)}

(43)を得ます。

それ故,前節のδZ3=-(α+2β-2γ),

δZ~3=-γに加えて,a+δZ+δZ3=0,

(a0+γ)+δZ+δZ3+δZ~3=0δを

要請して.δZ=-a+(α+2β-2γ)(44)

とすると,(43)の2つの項が,丁度,(41)の第1項

と第2項を相殺します。

残る(41)の最後の項:(-bm2i|2)については,

(63)のμ2に比例する発散項(-αμ2i|2)と一緒

にして,スカラー場の裸の質量項を,

-(Zm1μ2+Zm2bm2)Zii|2.(45)と分離して

おけば,2つの相殺項を用意することができます。

以上で,ゲージ場の質量項を加えても,スカラー場

の質量項が少しの変更を受けるだけで,ゲージ理論は,

くりこみ可能に留まるという予想を証明すること

ができました。

しかし,これは,あくまで,赤外正則化の暫定的

方法であることに注意すべきです。

何故なら,そもそもゲージ場の質量がゼロでない

理論は,有限にはできても,BRS不変性を持たず,

故にBRS電荷:Qは保存されないし,ベキ零性

δ2=0も成立しないから,物理的解釈のできる

理論とはならないからです。

例えば,Paulli-Villers正則化では,ゲージ粒子

の作るloop積分の対数発散部分はln(Λ2/m2)の

形となり,Λ2→∞で紫外発散,m2→0で赤外発散

しますが,とりあえず両者とも相殺項で有限に

できることは示しました。

そこで赤外発散については正則化の後にm2→0

の極限を取ったとき,無矛盾に留まればいいです。

(※QEDでは、エネルギーがゼロの無数の実光子の

寄与が,無数の仮想光子の寄与で相殺される,という

方法で赤外破局(Infrared catastrophe)は解決され

ました。)

 これで,第7章が終わったので,ここで,この記事

シリーズを一旦,終わります。

(「くりこみ理論(第2部)」につづく)

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

 

 

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