« くりこみ理論(次元正則化)(14) | トップページ | くりこみ理論(次元正則化)16) »

2020年6月 7日 (日)

くりこみ理論(次元正則化)(15)

くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

「くりこみ理論(次元正則化)(10)」の最後の方

から始まった,「ゲージ理論のくりこみ可能性」

を証明するという課題は,記事(11),(12),(13)を

経て前回の記事(14)でやっと完了しました。

6月に入りました。

今回は第7章の新しい節である:

§7-5:(質量に依らない対称なくりこみ)からです。

以下,本論です。

前節のゲージ理論のくりこみ可能性の議論

では,「対称性の自発的破れ」がないと仮定し,

大局的ゲージ不変性の要請を,多くのところで

用いました。しかしながら,対称性が自発的に

破れて,Higgs現象が起きているような場合でも

ゲージ理論は依然として,くりこみ可能である

ことを示すことができます。

実際,前節では,既に対称性が自発的に破れて

いる場合も含めて考えていました。

つまり,対称性を陽に破るパラメータ:fi

含む一般線形ゲージの場合を論じたのでスカラー

場:φiは真空期待値:viを持ち,自発的破れのある

場合と本質的に同値な状況を既に考えたことになる,

わけです。

すなわち,対称性の自発的破れがある場合には,

スカラー場:φiはtreeレベルでゼロでない真空

期待値:vi(0)を持つのですが,そのパラメータvi(0)

(≠0)をゲージ固定項のパラメータ:fiと同様,

大局的ゲージ変換の下で,その添字に応じて変換

する共変量と見なすことにすれば,依然として

大局的ゲージ不変性の要求を満たす理論に対する

場合と同じ議論が可能となります。

そうすれば,前節の議論で大局的ゲージ不変性を

用いたところで,新たにvi(0)がφiと同じ変換をする

次元1の量として加わるという点のみを考え直せば

結局,前と同じく,くりこみ因子Zや真空期待値vi

をシフトすることによって発散を全てくりこむこと

ができます。

本節では,これを陽に行なうことはせず,むしろ

対称性が自発的に破れた理論のくりこみを,自発的

破れを起こしていない対称な理論のくりこみに帰着

させる,という方法について述べます。

この方法の基本的考え方は次の通りです。

摂動論の範囲内では,対称性の自発的破れを

起こしている場合と破れを起こしていない場合

の違いは,単にスカラー場:φの質量項:-μ2|φ|2

のμ2の符号の違いだけです。

※(注15-1):質量項を-μ2|φ|2とすると,

有効ポテンシャルVは,

V[φ~]-(λ/2)|φ~|4-μ2|φ~|2

=-(λ/2)(|φ~|2+μ2/λ)2-μ4/(2λ)

であり,{φ~{2≧0なので,普通にμ2>0なら

Vの最小値を与えるφの期待値φ~は確かに

φ~=0であり,そのときVmin=0ですから,

この場合は対称性は破れていません。

しかし,もしも質量が,異常なμ2<0の

パラメータなら,V[φ~]=-(λ/2)|φ~|4

-|μ2||φ~|2=-(λ/2)(|φ~|2-|μ|2/λ)2

+μ4/(2λ)なので,Vが最小になるのは|φ~|2

=|μ|2/λ=-μ2/λ>0のときであり,この

とき,Vmin=μ4/(2λ)>0ですから,対称性が

破れています。

これは,第6章「対称性の自発的破れ」で紹介

した単純なGoldstone模型です。

(注15-1終わり※)

ところが,くりこみの一般論の第7章の命題

からもわかるように,このような次元2の質量項

の違いはゲージ理論のくりこみの本質的な部分

である次元が4,または3の演算子(発散部分)の

くりこみには影響しません。

このことを反映して,実際,任意の理論において

そこに現われる場の質量パラメータに依存しない

形で,くりこみができること,それ故,質量

パラメータを変数とする(連続無限個の)理論の組

が一度に有限となることを示すことができます。

このくりこみの方法を「質量に依らないくりこみ

(mass-independent renormalization)」と呼びます。

これを利用して,対称な理論で一たび,くりこみが

できる,ことがわかれば,(ゲージ理論であれ何であれ)

理論は質量パラメータμ2の値の如何に依らず一挙に

有限にできることになるので,このLagrangianでμ2<0

の対称性の自発的に破れた理論も有限であるといえます。

さて,※(質量に依らないくりこみ)の項の本論です。

このくりこみ法は,元々はt’HooftとWeinberg

によって提唱されたのですが,ここではCallanに従って

最も簡単なスカラー理論の場合で説明します。

例として,O(N)対称性を持つλφ4理論を採用すれば

その摂動の第0次のLagrangian密度は,スカラー場を

φ=φ12,..φ)として,=(∂μφ)2

-(m2/2)φ2-(λ/8)(φ2)2.(1)で与えられます。

ここで,φ2=Σj=1Nφj2であり,m2は質量の2乗

パラメータですが,これは非負とは限らないとします。

(※通常のスカラー粒子の2乗質量に用いるμ2は後

でくりこみ点に用いる予定なので,ここでは使わずに,

残しておきます。)

この(1)のLに対する有効作用:Γを有限にする

ためには,2次発散する2点頂点関数Γ(2)と対数

発散する4点頂点関数Γ(4)を考えれば十分です。

これらに対して,適切なくりこみ条件の本質的な

点は,n点頂点関数Γ(n)を質量をパラメータm2

関数と見て有限化することです。

それ故,m2をΓ(n)の運動量変数:の2乗:2など

と同等に扱います。

例えば,次のようなくりこみ条件を設定します。

すなわち,Γ(2)ij(P2=0,m2,λ;μ2)|m2==0=0.(2),

(∂/∂m2(2)ij(P2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2=-δij(3),

(∂/∂p2(2)ij(P2,m2,λ;μ2)|P2=0,m2=μ2=+δij.

(4)です。

そして,Γ(4)ijkl(P2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2

=-λδij.kl(5)です。

ただし,は,一般のn点関数のとき,

=(p1,p2。..pn-1)|pn=-(p1+p2+..pn-1)

表わし,また,δij,,kl=δijδkl+δikδjl+δilδjk

(6)です

2点関数ではΓ(2)は2次発散なので(次元2の)引数:

2,および,P2でTaylot展開すれば発散次元は2

ずつ下がり,初項が2次発散し.次の1階微分の2項

(∂Γ(2)/∂m2)と(∂Γ(2)/∂p2)が対数発散します。

そして,それ以降は収束ということになります。

上記の(2),(3),(4)のくりこみ条件は,この発散

する初めの3項に対する条件で,(2)は質量

パラメータm2がゼロのときは,粒子が本当に零質量

なるべし.(3).(4)は,m2があるべき項μ2(>0)のとき

2がゼロでのΓ(2)の(p2-m2)に関する数係数が,

treeレベルのΓ(2)=δij(p2-m2)の満たす値から

ずれてはならない。という要請です。

これに対して,4点関数:Γ(4)は対数発散なので.

(m2,p2)平面のどこか1点の値を指定すればいい

です。(5)の条件は,m22のとき,p=0のΓ(4)

がtreeレベルの-λδij.klから,ずれないという

条件です。

(2)の条件がm2=0で与えられているのに対し

(3)~,(5)の条件がm2=μ2>0で与えられている

のは,(3)~(5)の量は対数発散なので,mもpも皆,

ゼロにすると赤外発散の困難に遭うからです。

(※理解しやすいように,Paulli-Villersの正則化

で見ると,対数発散量は切断パラメータをΛ2として

lnΛ2に比例して発散することを意味しますが,Λ2

次元を持っており,これの対数関数というのは物理的

には有り得ず,必ず,無次元量として,ln{Λ2/(ap2+bm2)}

の形で現われるため,p2=0としたとき,m2=0とすると

赤外発散を生じるからです。)

くりこみ条件を与えたm2の値:μ2

「くりこみ点(renormalization point)」と呼びます。

このことから,くりこまれたΓ(n)

くりこみ点:μ2にも依存するようになるので,

(2)~(5)でΓ(2)(4)の引数としてμ2を陽に書いた

のでした。

こうした,くりこみ条件を実現するためには

次の相殺項が必要となります。

すなわち,count=(A/2)(∂μφ)2-(B/2)m2φ2

+(1/2)δm2φ2-(Cλ/8)(φ2)2.(7)です。

つまり,摂動論(例えばhc展開)の各オーダーごとに

相殺項の係数:A,B,δm2,Cを決めてゆきます。

くりこみ条件の(2)はδm2の,(3)はBの,(4)はAの,

(5)はCの,自由度を用いて,それぞれが満たされるように

できます。この相殺項を加えるということは,系の裸の

Lagrangian:00=(1/2)(∂μφ0)2

-(1/2)(m02-δm0202-(λ0/8)(φ02)2count(8)

と書けることを意味し,φ0=Zφ1/2φ,より,1+A=Zφ.(9),

02=Z2,δm02=Zφ-1δm2より,1+B=Zφ.(10),

λ0=Zλλより,1+C=Zλφ2.(11)を満たす係数A,B,

δm2,Cを持つ相殺項:countを採ればいいことを意味します。

与えられた1つの質量の理論をくりこむ通常の場合と少し

異なっているのは,裸の質量が,(m02-δm02)のように2つ

に分離しているところです。

今の場合,m2はp2と同様な変数であり,(10)を導いた式:

{(1+B)m2-δm22/2=(m02-δm0202/2

=(Zφ2-δm22/2から,わかるようにm02はm2

比例する線形項ですが,δm02はm2に依らない定数項に対応

しています。

(※なお,Dirac Fermionの場合は,同様にmに

比例する部分:m0=Zmと,定数部分δm0

分けると.実は,δm0は自動的にゼロになります。

これは,カイラル対称性のせいで,くりこまれた質量

(treeレベルの質量)がゼロであると裸の質量も

ゼロになるからです。(※※つまりカイラル対称性

を持つは質量項のないDirac粒子の場合です。

そこで,くりこんだ結果:δmψ~ψ=0なら

裸の質量:m0-δm0におけるδmに関わる

部分のδm0=0なのです。)

スカラー理論でも,次元正則化を用いるなら定数部分

δm02は自動的にゼロとなります。)

いずれにしろ,以上のくりこみ手続きでΓ(2)(4),それ故

Γ(n)が,摂動の各次数ごとに運動量pと質量パラメータm2

の関数として有限にできるということがわかりました。

このとき,対数発散項の相殺にあずかる因子:

φ,Z,Zλは,くりこみ条件(3)~(5)がm2=μ2

ところで与えられているので,切断パラメータをΛ

として,Zi=Zi0,Λ/μ) (i=φ,m,λ).(12)

の形で決まります。

こうしてZiは,変数としての質量パラメータm2

には依存していないということが重要な点で,

「質量に依らないくりこみ」という名称は,これ

に由来しています。

もう1つの重要な注目点は,裸のLagrangian

(故に裸の有効作用)に現われるδm02が,m2にも

δm2にも依存しないという事実です。

すなわち,δm02=Λ200)(13)と書けます。

このことは,過去記事;「くりこみ理論(6)」で

与えた関係式を,μ2をm2に置き換え,くりこみ

点を表示して書き直した,

Γ(n)(,m2,λ;μ2)

=Zφn/2Γ0(n)(,m0202),(14)

を思い出せば,裸の,Γ0(n)は,くりこまれた

それ:Γ(n)と比例関係にあることから,

Γ(2)に対するくりこみ条件(2)を裸の

Γ0(2)に対するように書き換えると,

Γ0(2)ij(p2=0,m02=0,δm020;Λ2)=0.

(15)となることがわかります。

これはδm02を決める関係式になっており,

ゼロでなくて次元を持つ量は,δm02の他には

Λ2のみを含んでいます。

そこで,次元解析を利用して(14)の解:δm02

が,δm02=Λ200)(13)の形に書けることが

わかります。この形式は,後に斉次くりこみ群

方程式を導くときに重要になります。

これを得るためには質量に依らないくりこみ

では,くりこみ条件(2)は必要不可欠です。

しかし,他の条件(3)~(5)は,いろいろとある

中の1つの選択肢で,他の条件も有り得ます。

例えば,(3),(5)を,それぞれ,

Γ(2)ij(p2=μ2,m2=μ2,λ:μ2)=0.(16-1),

Γ(4)ijkl(p,m2=μ2,λ:μ2)|pipj=(1-δij)/2

=-λδij,kl.(16-2)に置き換えてもいいです。

 

ここで,t’Hooftにより始められた,次元正則化

に基づく,質量に依らないくりこみ法について少し

コメントします。

この方法も本質的には上記のPaulli-Villers

正則化のそれと同じですが,ゲージ不変性を尊重

するという点で便利です。

まず,時空d次元では,dimφ=(d-2)/2,

dim()=dですから,裸の結合定数λ0が(4-d)

の次元を持ちます。しかし,くりこまれた結合定数

λ,および,くりこみ定数:Zλが常に無次元になる

ように.(11)のλ0=Zλλ,の代わりに,

λ0=Zλ(λμ(4--d))

=(1+hcλ(1)+hc2λ(2)+..)(λμ(4-d))(17)

の形でくりこみを行ないます。

ただし,μはくりこみ点に相当する次元1の

パラメータです。

こうすれば,次元正則化による摂動計算において,

結合定数は常に(λμ(4-d))の形で出てきます。

したがって,loop積分結果のd=4の極の近傍の

展開に現われる対数関数は,ln{(p2+m2)/μ2}の

ように,常に正しく引数が無次元の量となります。

次元正則化のこの方法では次元を持つ切断

パラメータΛは導入されないので.先の2次発散

のΓ(2)に対する,くりこみ条件(2):

Γ(2)ij(p2=0,m2,λ;μ2)|m2=0=0.は,自動的に

満たされます。(μ2はd→4では対数の引数には

出てきません。)

よって,条件(2)が陽に言及されることはないです。

 

他の対数発散部分に対してはは(17)の

λ0=Zλ(λμ(4--d))

=(1+hcλ(1)+hc2λ(2)+..)(λμ(4-d))

および,m02=Z20=Zφ1/2φとして,

例えば,先の条件(3),(4),(5)(ただし(5)では

右辺のλをλμ(4-d)に置換)のくりこみ条件:

つまり

(∂/∂m2(2)ij(p2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2

=-δij(3),

(∂/∂p2(2)ij(p2,m2,λ;μ2)|p2=0,m2=μ2

=δij.(4),Γ(4)ijkl(p2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2

=-λμ(4-d)δij.kl(.(5)’

を設定して,くりこみを実施します。

または,くりこみ条件に言及せず,

単に1/(d-4)の極の部分ε~-1だけを除きます。

そうすれば,次元をもたないZi(i=φ,m.λ)は,

(Λが存在しないので)μに陽には依存せず,

Zi(λ,d)=1+a1(λ)/(d-4)+a2(λ)/(d-4)2

+..の形になり,明白な質量に依らないくりこみと

なります。

このとき,Ziのくりこみ点:μへの依存性は

くりこまれた結合定数λを通してのみ依存します。

くりこまれたλは裸のλ0がμに独立なので,(17)から

μ依存性が決まります。

※(注15-2):「くりこみ理論(4)」,または,その

「要約(4)」の必要部分の再掲載を兼ねた,本論

の補足説明を注釈します。

まず,系の裸のLagrangianを0count

するとき,裸の質量がμ0のBosonの2点Green

関数(Feynman伝播関数)iΔF’(p2)への

1粒子既約な自己エネルギーグラフの寄与

が裸の量で-iΠ0(p2)であるとすると,

その2点Green関数は

Fij(p2)=iδij{p2-μ02-Π0(p2)}-1

=i[Γ0(2)(p2)]-1 で与えられます。

そして,iΔF’(p2)を,くり込んだものを

F~(p2)と書き,iΔF’(p2)

=i/{p2-μ02-Π0(p2)}=iZ3/(p-μ2)

=Z3iΔF~(p2)になると考えると,

Π0(p2)=(Z3-1)(p2-μ2)+δμ2を得ます。

ただし,δμ2=μ2-μ02としています。

系の裸のLagrangianが0cont

表わされるのに倣って,裸のΠ0もくりこまれた

Πと相殺項:Πcountの和として,

Π0(p2)=Π(p2)+Πcount(p2)と書くと

Π(p2)+Πcount(p2)=(Z3-1)(p2-μ2)

+δμ2です。

特に,最低次のオーダーでは,

Π(1-loop1)(p2)+Πcount(1)(p2)=Z3(1)(2-μ2)

+(δμ2)(1)となるべきことを意味します。

このくりこみの結果,μが実際に観測される

物理的質量という意味を持つための条件として

2=μ2の近傍では,Δ~F(p2)ij=δij/(p2-μ2),

または,Γ~(2)(p2)=p2-μ2となることが要求

されます。

くりこみ条件(2)はp=0,μ=0でΓ(2)=0

でした。

この条件はΠ(p2)+Πconht(p2)

=(Z3-1)(2-μ2)+δμ2の上では,p=0,

μ=0で,Π(0)+Πcount(1)(0)=(δμ2 なること

に相当しています。

これらは,質量をパラメータ:mとしてくりこみ

点を,m2=μ2とした頂点関数Γで考えるとp2=m2

=μ2の近傍では,Γ(2)(p2)=p2-m2となるべき

ことを意味します。

そして,これは,Γ(p2,m2)=Γ(0,0)+p2(∂Γ/∂p2)

+m2(∂Γ/∂m2)+..のベキ展開においては,

Γ(0,0)=0,(2) (∂Γ/∂p2)=1,(3),(∂Γ/∂m)=-1.

(4)の3条件です。

そして特に,最低次のオーダーでは,Π(1-loop1)(p2)

+Πcount(1)(p2)=Z3(1)(2-μ2)+(δμ2)(1)です。

そこで,Π(1-loop1)(p2,m2)+Πconht(1)(p2,m2)

=Z3(1)(2-m2)+(δm2)(1)であり,条件(2)は,

最低次ではΠ(1-loop1)(0,0)+Πcount(1)(p2)

=(δm2)(1)です。

さてBoson質量をμに戻して,くりこまれた量で

最低次の1粒子既約の自己エネルギーを計算すれば,

-iδijΠ(1-loop)(p2)

=∫ddk(2π)-4(-)Tr[(―igτi)i(-mF)-1

(-igτj)i{(k-)-mF}-1]+∫ddk(2π)-4

(-iλ/8)4×3+8)δiji/(k2-μ2)-iΠcount(1)(p2)

となります。ただし,mFはBosonが真空偏極する

グラフでloop積分すべき内線運動量を持った

仮想Fermionの質量です。

次元正則化で,最後にd→4の極限をとる前の

自己エネルギー部分の計算結果は,

-iΠ(1-loop)(p2)

={(-i)2・4g2/(16π2)}[(3ε~-1+1)

×(mF2-p2/6)-3∫01dx{mF2-x(1-x)p2

×ln{mF2-x(1-x)p2}]

+{-5λ/(32π2)}μ2{-ε~-1-1+ln(μ2)}

となります。

ただし,ε~-1は,d→4で発散する部分で,

ε-1=2/(4-d)および,ε~-1=ε-1-γ+ln(4π)

で定義されています。

それ故,-iΠ(1-loop)(p2)の発散部分は,

ε~-1を含む部分だけで,これを含む相殺項を.

-iΠcount(1)(p2)として,差し引くことで,有限

にする操作が,次元正則化のくりこみ手続きです。

したがって,1PIの自己エネルギーグラフの

最低次のくりこまれたネットの寄与は,

Π(1-loop)(p2)+Πcount(1)(p2)ですが,これが,

p=0,μ=0で(δμ2)(1)に一致するべし,と

いうのが,最低次でのくりこみ条件(2)の

意味するところです。

それ故,Π(1-loop)(0)|p2=0,μ2=0

={g2/(2π2)}{(3ε~-1+1)mF2-3mF2ln(mF2)}

を得ますが,相殺項:Πcount(1)(0)をε~-1を因子と

する発散部分:{3g2/(2π2)}ε~-1に有限限部分

の一部を加えて(-)符号を付けたものとして

これに加えると,(δμ2)(1)が(有限部分)

+Π(1-loop)(0)|p2=0.μ2=0で与えられることがくりこみ

条件(2)が満たされることに同値となります。

すなわち,Paulli-Villersの場合なら∫d

が∫d4kで,自己エネルギー部分の計算結果は,

-iδijΠ(1-loop)(p2)

=∫d4k(2π)-4(-)Tr[(―igτi)i(-mF)-1

(-igτj)i{(k-)-mF}-1]

+∫d4k(2π)-4(-iλ/8)4×3+8)δiji/(k2-μ2)

となり,被積分関数はkの(-2)次で,積分が∫d4

の4次であること,および,(mF22,2)の次元2を

持った量で展開すると,発散の次数が2ずつ下がること

から,これを理解できます。

いずれにしろ,Π(1-loop)(p2)は,外線運動量:p2の関数

として,p2の0次と1次の項しか含まず,それ故,丁度,

相殺項:-iΠcount(1)(p2)=i{Z3(1)(p2-μ2)+δμ2(1)}

で相殺できる形になります。

つまり,Paulli-Villers正則化では,δμ2(1)

=Π(1-loop)(p2=μ2)=(有限定数)

+{5λ/(16π2)-3g222ln2

+[{3g2/(2π2)}(mF2-μ2/6)-5λμ2/(32π2)]

×ln(Λ22)(発散量),

かつ,Z3(1)=[∂Π(-loop1)/∂p2]p2=μ2

=(有限定数)+{g2/(4π2)}ln(Λ22)(発散量)

と置き,一方,次元正則化では,

δμ2(1)=Π(1-loop)(p2=μ2)

=(有限定数)

+[{3g2/(2π2)(mF2-μ2/6)-5λμ2/(32π2)}ε~-1

(発散量),かつ,Z3(1)=[∂Π(-loop1)/∂p2]p2=μ2

=(有限定数)+{g2/(4π2)}ε~-1(発散量)と置くと

いずれの正則化でも,Π(1-loop1)+Πcount(1)は有限になり

(p2-μ2)の2次以上の項はなくなって,

伝播関数はp2=μ2の近傍では,iΔj(p2)ij

=iδij/(p2-μ2)の形になり,μがBosonの物理的

質量である,という要請が確かに満足されます。

(再掲部分関連終了※)

質量に依らないくりこみでは,裸の2乗質量

がμ02ではなくて,(m02-δm02),くりこまれた

質量がμ2でなくm2なので,上のδμ2=μ2-μ02

に相当するのは,m2-(m02-δm02)=δm2+δm02

です。先に述べたようにδm02はm2に依存しない

定数ですから,このパラメータはどう取ろうが自由

です。

自己エネルギーについては.

Π(p2)+Πcount(1)(p2)={Z3-1)(p2-m2)

+(δm2-+δm02)が満たされるべき条件です。

故に,くりこみ条件(2)はΠ(0)+Πcount(1)(2)

=δm2-+δm02ですが,δm02が何でもよい

なら;この条件は不要だと思うのですが。

(注15-2終わり※)

途中すが長くなったので今回はここで終わります。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

 

 

|

« くりこみ理論(次元正則化)(14) | トップページ | くりこみ理論(次元正則化)16) »

114 . 場理論・QED」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« くりこみ理論(次元正則化)(14) | トップページ | くりこみ理論(次元正則化)16) »