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2020年7月20日 (月)

物理学の哲学(止まると死ぬ)(1)

 物理学といいうのは不思議なもので,

吉本の間寛平チャンとか.マグロ回遊のように

「止まると死ぬー」というようなモノだといえます。

量子論には「Heisenberguの不確定性原理」という

根本原理があって,位置と速度を同時に確定したもの

として観測することができません。

この不確定性原理は,式で書くと,ΔxΔp~h

となります。ただし,h­=h/(2π)でhは作用量子

(Planck定数)と呼ばれる定数です。このhは,作用

=(エネルギー)×(時間)という単位を持つ非常に

小さい数ですが,ともかく,Δx=0,かつ,Δp=0と

すると.この原理に矛盾します。

そこで,mを物体の質量,vを速度の大きさとする

とp∝mvなので,上述のことは位置xと速度vが,

同時には確定できない,ことを意味しています。

それ故,例えば,どこかに静止している,つまり

v=0とvが確定している物体なら,それが存在する

どこかの位置座標xは確定してはいけない,のですから

モノが静止している,ことも,物理的に矛盾する現象

なのです。でも,常識では,私たち自身も,多くの物体も

確かに止まります。

しかし,実は止まれないのは,理想化された質点の

ような確実な点物体の話で,大きさがあればその限り

でないと考えられます。すなわち,1点に止まるのが

不可能なのは,厳密に大きさのない点と見なせるモノ

に対する話で,我々の体や野球のボールのような体積

があるものは,既にかなりΔxが大きく,存在位置が

ぼやけているので,全体(慣性中心)としてv=0に

確定していてもいい,というわけせす。

量子論,特に素粒子論の場理論では.様々な無限大

への発散現象に遭遇し,それらの発散を処理して解釈

する方法はあっても;数学の理論のように本質的な意味

で,それを納得できるか?というと,必ずしもそうでは

ないと,昔から思っていて今もスッキリとしていません。

そうした諸悪の根源は「零点エネルギー」というものに

あると考えられます。

例えば,先端に質量mの重りがついたバネが振動する

現象は1次元調和振動と呼ばれるものですが,その力学的

エネルギー:E=mv2/2+kx2/2は,弾性定数(バネ定数)

をk=mω2と置くと,kはゼロでないのでω≠0であり

E=E=(n+1/2)hcω(n=0,1,2..)という離散値

しか取り得ず,結果,最低エネルギーはゼロではなく

ω/2という正の値になりるとわかります。

ここで,座標変数xは平衡点からの距離を意味し速度は

v=dx/dtです。

そこで,先述したように止まること,つまり,v=0,かつ,

x=0が許されず,このバネは永久に振動して止まることが

できないことが理論的にも示されます。

ただし,これは粘性=摩擦がない理想的ケースですから,

粘性抵抗のある現実の世界では振動は減衰して,やがては

止まります。

では,止まれないのは,理想的状況が作れない技術的な

精度の限界のためか?というと,そうでもなく如何に

精度を上げても不可能な,本質的問題である,というのが

不確定性原理のミソです。

量子場の理論では,最低エネルギーの状態(基底状態)

を真空と呼び,それを|0>で記述します。,

そして,自然単位:c=1で対象とする物質場が光子

の場=電磁場:Aμ(x)=[φ(x),(x)]であれば,

古典的には,(x)=-∇φ-(∂/∂t)が電場,

(x)=∇×が磁場を与えます、

量子論では,これを無限個の1次元調和振動子の

集まりとして量子化します。すなわち,共変ゲージ:

μμ=0では,電磁場はAμ(x)=∫d3

[aμ()exp(-ikx)]+aμ*()exp(ikx)]

と陽に積分表現されます。

ただし,exp(±ikx)のkxは,kx=k0t-kx

であり,k0=ω={|.です。

展開係数:aμ()は光で言うと偏光ベクトルで

あり,kμμ(k)=0を満たします。(共変ゲージ)

この係数:aμ(i),aν*()を量子化して規格化

したものを,a^μ().a^ν+()と記し,それらが

交換関係:[a^μ().a^ν+(~)]=gμνδkk~

を満たす演算子である,とするのが電磁場Aμの

(第2)量子化です。

ここで,便宜上,先のバネと重りの1次元調和振動子の

問題をより深く掘り下げて考察します。

実は,これらは丁度,1976年の春,私が北大に大学院

の博士課程の受験にいったとき,思いもかけず,数問の

ペーパ-テストをやられた際の第1問目の問題そのもの

です。この問題は,興味深い量子論の根本的課題で,悪い

癖で,つい夢中になり「私はこんなことも満足に理解できて

ないのか?」と受験していることも忘れ集中したのに満足

できる解答に到達できず帰ったのを,克明に覚えています。

まあ,余談はさておき,まず,この問題の系を古典論で

考えます。

系の運動エネルギーをT=mv2/2,位置エネルギー

(ポテンシャル)をV(x)=kx2/2と書くと

系の.Laglangian:Lは,L=T-Vで与えられ,共役運動量

は,p=∂L/∂v=mvで与えられます。

そこで,系のHamiltonian:Hは,H=pv-L=mv2/2

+kx2/2=T+Vとなります

解析力学では,Hamiltomian:Hは,xとpの関数で

表現されるべきなので書き直して,k=mω2と置くと

H=p2/(2m+mω22/2 なる式を得ます。

ところで,物体に働く外力が物体の位置xのみで

決まり,ポテンシャルV(x)によってF=-∇V,と

表わせる場合,,Newtonの運動方程式がd(mv)/dt

=F=-∇Vから,(d/dt){mv2/2+V}=0となり,

力学的エネルギー:E=T+Vが,時間的に一定と

なって保存だれます。

この場合,Fは保存力で,系は保存力の系であると

いわれます。

これは,1次元なら,F=-∇Vが,F=-dV/dxで,

1次元調和振動子ならF=-kx=-d(kx2/2)/dx

なので,この系は,ポテンシャルがV=kx2/2の保存力

の系です。

そこで,先のH=p2/(2m)+mω22/2は,

H=T+V=Eであり,このHは,時間的に一定

(tに依らない)力学的エネルギーEをpとxの関数で

表わしたものです。

ここから,量子論に移行するには,変数:pとxを,

量子状態|ψ>に働く,量子条件:[p^,x^]=-ih

を満たす演算子:p^とx^に,読み換えるだけです。

(※実は,[p^,x^]=-ihがHeisenbergの

不確定性原理:ΔxΔp~hcを生じる根本的原因

です。)

もしも座標演算子x^の固有値xに属する固有

状態::|x>を,x^|x>=x|z>を満たす|x>

(ただし,|x>≠0)で定義してx表示の波動関数

というモノを,ψ(x)=<x|ψ>で定義すれば,

まず,明らかに,<x|[p^,x^]|ψ>

=-ih<x|ψ>=-ihcψ(x)です。

ここで,Diracに従って<x|d^|ψ>

=(d/dx)<x|ψ>=dψ/dxを満たす座標x

の平行移動演算子d^を定義すれば

,<x|x^d|ψ>=x(dψ/dx)であり,また

<x|d^x^|ψ>=(d/dx){xψ(x)}

=d(xψ)/dxです。

そこで,<x|[d^,x]|ψ>=ψ(x)となるため,

<x|[-ihc^,x^]=-ihψ(x) を得ます。

以上から,任意の|ψ>に対する|x>での展開要素

が常に,<x|[p^+ihc,x^]|ψ>=0を満足する

ことになり,演算子として,[p^+ihc,x^]=0 で

ある,と結論されます。,

それ故,f(x^)をx^の任意関数,つまり演算子x^

と交換する任意の演算子,とすれば,p^=-ihc^

+f(x^)と,書くことができます。

ここで,特にf=0として,p^=-ihc^とする

選択の表現を,Schroedinger表現と呼びます。

 ところで,1次元調和振動子の系の量子論での

目的は,H^=p^2/(2m+mω2x^/2に対して,

H^|E=E|E>という固有値問題を解いて,

(エネルギー)固有値Eと,固有ベクトル|E>を

具体的に求めることです。

そこで,もしもSchroedinger表現を採用する

なら,H^はH^=-{hc2/(2m)}(d2/dx2)

+mω22/2となります。

それ故,x^の固有ベクトルの系:{{x>}が,

<x|y>=δxyと正規直交規格化され,しかも,

Σ|x><x|=1なる完全性条件を満たせば,

|E>は,|E>=Σy|y><y|E>と級数展開

されるので,固有値方程式:H^|E>=E|E>は,

Σ<x|H^|y><y|E>

=E[Σ<x|y><y|E>=E<x|E>

と書き直せます。

したがって,H^の行列要素が,<x|H^|y>

=[-{h2/(2m)}(d2/dx^2)+mω2x^2/2]δxy

のように対角行列化されていれば,固有値方程式は,,

[-{hc2/(2m)}(d2/dx^2)+mω2x^2/2]<x|E>

=E<x|E> となります。

それ故,x表示でSchroedinger表現のHamiltonian

演算子を,H^(x,p)=-{}hc2/(2m)(d2/dx2)

+mω22/2と表わし,Hの固有値がEの固有波動関数:

<x|E>をψE(x)と表記すれば,固有値方程式は,

さらに,H^(p,x)ψE(x)

=[-{hc2/(2m)}(d2/dx2)+mω2x^/2)ψE(x)

=EψE(x) となり,定常状態のSchroedingerの

波動方程式に帰着します。

※(注1-1):上記では,簡単のため,x^の固有ベクトル:

|x>を,離散的状態とする表現を使用しましたが,

ここで総和Σの代わりに積分:∫dxを用いる

連続的表現でも記述しておきます。

このときには正規直交規格化条件は,<x|y>

=δ(x-y)であり,完全性条件は∫{x><x|dx

=1となります。

そして,固有摘方程式:H^|E=E|E>は,

∫<x|H^|y><y|E>dy

=E{∫<x|y><y|E>dy}=E<x|E>

を意味し,H^の行列要素が,<x|H^|y>

=[-d2/dx^2/(2m+mω2x^/2]δ(x-y)と

対角化されていれば,結局,先の離散的手続きと同様,

定常状態のSchroedingr方程式:H^(p,x)ψE(x)

=[-]hc2/(2m)}(d2/dx2)+mω22/2)

ψE(x)=EψE(x) に帰着します。

さらに,x^の固有ベクトルとして時刻tに依存する

x^|x,t>=x|x,t>を満たす|x,t>を採用して

波動関数を俯瞰に依存するψ(x,t)=<xt|ψ>の

形で定義すると,定常状態の波動方程式は,

H^ψE(xt)=EψE(x,t)(ψE(xt)=<x,t|E>)

となりますが,p^=-ihc∇に対応した時間平行移動の

表現:H^=ihc∂/∂tを採用して,時間を含む非定常

の微分方程式ihc∂ψ/∂t=H^ψを想定します。

これのt依存部分とx依存部分の変数分離解ψ(x,t)

=ψE(xt、)は定常方程式H^ψE(x=EψE(x)を満たす

ψE(x)によって ψE(x,t)=exp(-iEt)ψE(x)となる

ので一般解は,ψ(x,t)=ΣEc(E)exp(iEt))ψE(x)

となります。

こうしてSchroedingerの定常波動方程式が非定常方程式:

ihc∂ψ/∂t=H^ψに拡張されることがわかります。

 このH^の表現では,[H^,t]=ihから不確定性原理

として,ΔEΔt~hcが追加されますが,これは観測時間

Δtの間のエネルギーEが不確定と解釈されます。

(注1-1終わり※)

まだ,長くなりそうなので一旦終わります。(つづく※)

 

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