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2020年8月13日 (木)

物理学の哲学(止まると死ぬ)(6)

「物理学の哲学の続きです。

コロナじゃなく慢性心不全(肺水腫)です

が,血中酸素濃度が低くなり,8/6から,

また酸素吸入をしています。

治療は利尿剤を増やすだけで,いつ命が

終わるかも,わからないので,この回顧

ブログも急いでいます。(余談終わり※)

さて,ここでQED(量子電磁力学)における

基本的なW-T恒等式(Ward-Takahashi恒等式:

(p-p~)μΓμ(p,p~)

=S~-1(p)-S~-1(p~) を,伝統的な

正準定式化の摂動論でのT積(T-product;

時間順序積)の真空期待値で定義される

Green関数から,グラフ的考察に頼らず,

電磁ベクトルカレント密度の保存式:

μμ=0を用いて,導いてみます・

※(証明):

<0|T{ψ(x)ψ~(y)jμ(z)|0>を考えます。

これは,場の演算子のT積の部分を陽に書き下す

と,T{ψ(x)ψ~(y)jμ(z)}

=θ(x0-y0)θ(y0-z0)ψ(x)ψ~(y)jμ(z)

+θ(x0-z0)θ(z0-y0)ψ(x)jμ(z)ψ~(y)

-θ(y0-x0)θ(x0-z0)ψ~(y)ψ(x)jμ(z)

-θ(y0-z0)θ(z0-x0)ψ~(y)jμ(z)ψ(x)

+θ(z0-x0)θ(x0-y0)jμ(z)ψ(x)ψ~(y)

-θ(z0-y0)θ(y0-x0)jμ(z)ψ~(y)ψ(x)

となります。

この両辺の左から∂μ=(∂/∂zμ)を作用させる

と,∂zμ[T{ψ(x)ψ~(y)jμ(z)}

=T{ψ(x)ψ~(y)∂μμ(z)}

-θ(x0-y0)δ(y0-z0)ψ(x)ψ~(y)j0(z)

-δ(x0-z0)θ(z0-y0)ψ(x)j0(z)ψ~(y)

+θ(x0-z0)δ(z0-y0)ψ(x)j0(z)ψ~(y)

+θ(y0-x0)δ(x0-z0)ψ~(y)ψ(x)j0(z)

+δ(y0-z0)θ(z0-x0)ψ~(y)j0(z)ψ(x)

-θ(y0-z0)δ(z0-x0)ψ~(y)j0(z)ψ(x)

+δ(z0-x0)θ(x0-y0)j0(z)ψ(x)ψ~(y)

-δ(z0-y0)θ(y0-x0)j0(z)ψ~(y)ψ(x)

です。これを見ると,右辺第1講は∂μμ=0に

よって消えます。次に,まず,

-θ(x0-y0)δ(y0-z0)ψ(x)ψ~(y)j0(z)

+θ(x0-z0)δ(z0-y0)ψ(x)j0(z)ψ~(y)

=-θ(x0-y0)δ(y0-z0)ψ(x)

×[ψ~(y),j0(z)]y0=z0 です。

ここで,[A,BC]={A,B}C-B{A,C}

より,y0=z0では,[ψ~(y),j0(z)]

=[ψ~(y),ψ(z)ψ(z)]

=-ψ(z){ψ~(y)ψ(z)}

=-δ3(y-z)ψ~(z)ですから,

与式=θ(x0-y04(y-z)ψ(x)ψ~(z)

を得ます。そして,次に,

θ(y0-x0)δ(x0-z0)ψ~(y)ψ(x)j0(z)

-θ(y0-z0)δ(z0-x0)ψ~(y)j0(z)ψ(x)

=θ(y0-x0)δ(x0-z0)ψ~(y)

×[ψ(x),j0(z)]x0=z0

=-θ(y0-x04(x―z)ψ~(y)ψ(z)

です。これらの和を取ると,

-δ4(x-z)T{ψ(z)ψ~(y)}となること

がわかります。さらに,

-δ(x0-z0)θ(z0-y0)ψ(x)j0(z)ψ~(y)

+δ(z0-x0)θ(x0-y0)j0(z)ψ(x)ψ~(y)

=-δ(x0-z0)θ(z0-y0)

×[ψ(x),j0(z)]x0=z0ψ~(y)

=θ(z0-y04(x-z)ψ(z)ψ~(y),および,

θ(y0-z0)δ(z0-x0)ψ~(y)j0(z)ψ(x)

-δ(z0-y0)θ(y0-x0)j0(z)ψ~(y)ψ(x)

=-δ(z0-y0)θ(z0-x0)

×[ψ~(y),j0(z)]ψ(x)

=-θ(z0-x04(y-z)ψ~(z)ψ(x)

ですから,これらの和を取ると,

δ4(y-z)T{ψ(x)ψ~(x)}です。

したがって,結局

zμ<0{T{ψ(x)ψ~(y)jμ(z)}|0>

=δ4(y-z)<0|T{ψ(z)ψ~(x)}|0>

-δ4(x-z)<0|T{ψ(z)ψ~(y)}|0>

が得られます。

ただしカレントが保存されない場合:

μμ≠0なら,右辺第1項が消えない

ので,zμ<0{T{ψ(x)ψ~(y)jμ(z)}|0>

=<0{T{ψ(x)ψ~(y)∂μμ(z)}|0>

=δ4(y-z)<0|T{ψ(z)ψ~(x)}|0>

-δ4(x-z)<0|T{ψ(z)ψ~(y)}|0>

となります。 

ところで,QEDの3点Green関数:

(3)μ(x,y,z)

=<0|T{ψ(x)ψ~(y)Aμ(z)}|0>

に,□z=(∂zμ)を作用させると,

まず,∂z<0|T{ψ(x)ψ~(y)Aμ(z)}|0>

=<0|T{ψ(x)ψ~(y)∂μμ(z)}|0>

+(ψとA0の交換子に比例する項)

=<0|T{ψ(x)ψ~(y)∂μμ(z)}|0>

よなるので,□Aμ=jμにより,

z<0|T{ψ(x)ψ~(y)Aμ(z)}|0>

=<0|T{ψ(x)ψ~(y)□Aμ(z)}|0>

=<0|T{ψ(x)ψ~(y)jμ(z)}|0>

を得ます。

3点Green関数に□を掛けて光子の

質量核上:k2=0とおくことは,光子外線を

除くという意味があります。

運動量表示で考察するために

(3)μ(x,y,z)

=<0|T{ψ(x)ψ~(y)Aμ(z)}|0>

を,Fourier変換してGreen関数の運動量

表示を(2π)12δ4(p-p~-k)

×G(3)μ(p,p~,k)

=∫d4xd4yd4

[exp{i(px-p~y-kz)}

×<0|T{ψ(x)ψ~(y)Aμ(z)}|0>]

とします。すると,□(3)μ(x,y,z)

=<0|T{ψ(x)ψ~(y)jμ(z)}|0>を,

さらにzで微分したモノ,

μ(3)μ(x,y,z)が,先の

μ<0|T{ψ(x)ψ~(y)jμ(z)}|0>

に一致しますが,これの運動量表示は,

(2π)12δ4(p-p~-k)

×(ikμ)(―k2)G(3)μ(p,p~,k)

=(2π)12δ4(p-p~-k)i(p-p~)μ

×(―k2)G(3)μ(p,p~,k)|k=p-p~

となります。

一方,このT積の真空期待値の微分を

書き下して得た等式の右辺の運動量表示は,

∫d4xd4yd4

[exp{i(px-p~y-kz)}

4(y-z)<0|T{ψ(z)ψ~(x)}|0>

-δ4(x-z)<0|T{ψ(z)ψ~(y)}|0>]

=∫dxexp{i(p-p~-k)x}

×[∫d4y[expi(k-p~)(y―x)]

<0|T{ψ(y)ψ~(x)}|0>

-∫d4y[expi(k-p)(y―x)]

<0|T{ψ(y)ψ~(x)}|0>]

=(2π)12δ4(p-p~-k)

[iS~(k-p)-iS~(k-p~)

=(2π)8δ4(p-p~-k)

×{iS~(p~)-iS~(p)}となります。

以上から,

 (p-p~)μ(-k2)G(3)μ(p,p~,k)k=p-p~

=S~(p~)-S~(p)を得ます。

ところが,3点Green関数の運動量表示

は,頂点関数Γμにより,G(3)μ(p,p~,k)

=S~(p~)Γμ(p,p~)S~(p~)D~(k)

と書けます。そして,iD~(k)=(-i)/k2

です。それ故,

(p-p~)μS~(p)Γμ(p,p~)S~(p~)

=S~(p~)-S~(p)を得ます。

そこで左からS~-1(p),右からS~-1(p~)

を掛けると,確かに,WT恒等式

(p-p~)μΓμ(p,p~)

=S~-1(p~)-S~-1(p)が得られます。 

(証明終わり※)

私にとっては自明と思っていたことを,いざ,

改めてウン十年ぶりに証明してみると,老いた

頭には意外と面倒で煩雑になりました。

さて,ベクトルカレント(極性ベクトルカレント)

の密度:jμでなく,裸の質量m0を持つ粒子ψの軸性

ベクトルカレント(Axial-vector current):の密度

(x)=ψ~(x)γμγ5ψ(x)を考えると,

まず,これは部分的保存則(PCAC)と言われる

μ=2im05を満たします。ただし,

5(x)=ψ~(x)γ5ψ(x)です。

そこで質量m0がゼロでない限り,軸性カレント

は保存されません。

それ故,これに対するWT恒等式は:

(p-p~)μΓ(p,p~)=2m0Γ5(p,p~)

+S~-1(p)γ5+γ5S~-1(p~)

となることがわかります。

軸性の頂点を,Γ=γ5γμ+Λ,および,

Γ5=γ5+Λ5と,対数発散部分を切り離して

表わせば,WT恒等式として,別の表現:

(p-p~)μΛ(p,p~)

=2m0Λ5(p,p~)-Σ(p)γ5-γ5Σ(p~)

を得ます。

しかし,頂点への寄与をグラフ的に考察すると;

通常の純粋にQEDのWT恒等式では頂点関数の

loop積分が,高々対数発散なので積分内で変数

をシフトしても不変という性質を用いること

ができて,WT恒等式に破れは,生じなかったの

ですが,VVA三角グラフの寄与では1次発散

するloop積分なので,変数のシフトが許されず,

その差が余分な項となって,WT恒等式に破れ

が生じることになります。 

これが,前から述べていたVVA三角ブラフ

の量子子アノマリーです。

本ブログの過去記事「摂動論のアノマリー)」

の(5)(6)(7)を参照すると,アノマリーを与える

三角グラフの寄与はRosenbergによって得られた

表現と呼ばれる,次式で評価されます。

すなわち,(-ie02)(2π)-4σρμ

=2∫d4r(2π)-4(-1)Tr[{i/(1-m0)}

(-ie0γσ){i/(-m0)}(-ie0γρ)]

×{i/(2-m0)}(γμγ5)].です。

これは見かけ上1次発散しますが,ベクトル

カレントの保存の要請から,光子場の強さの電場,

または,磁場のテンソル:(k2ξε2ρ-k2ρε2ξ),

(k1ηε2σ-k2σε1η)を通してcoupleすること

を考慮すると,運動量の2つのベキが,その因子

に費やされるため,有効発散次数はDeff=-1と

なって収束する積分となります。,

ここで,Rosenbergの表現:

(-ie02)(2π)-4μσρの右辺の被積分関数の

最後の因子:(γμγ5)を,(2m0γ5)に置き換えた

モノを,(-ie02)(2π)-42m0σρと定義します。

もしも上で,場理論から理論的に得た軸性

カレントのWT恒等式:(p-p~)μΛ(p,p~)

=2m0Λ5(p,p~)-Σ(p)γ5-γ5Σ(p~)

が三角グラフの摂動計算においても正しいなら,

(p-p~)μ=-(k1+k2)μとなるはずで,そこで

―(k1+k2)μσρμ=2m0σρとなるべきなの

ですが,実際に計算を実行すると,

-(k1+k2)μσρμ=2m0σρ

+8π21ξ2τεξτσρとなり,三角グラフの場合

には,軸性カレントのWT恒等式は成立せず,,

破れ(アノマリー)が存在する,ことがわかります。

過去記事「摂動論のアノマリー(8)」によれば,

一般の場合の軸性ベクトルカレントのWT恒等式

は,軸性ベクトルカレントに対するPCAC

(部分的保存)の式:μ(x)=2im05(x)

を, ∂μ5μ(x)=2im05(x)

+{α0/(4π)}Fξσ(x)Fτρ(x)εξστρ

に置き換えることによって,得られ,これは

,5,および,{α0/(4π)}Fξστρεξστρ

対するグラフのFeynman規則を用いれば,

容易に証明できます。

そして,このアノマリーは単純な切断や引き算等

では除去できない本質的な項であることがわかります。

 

ここで,また,中断して次回にまわします。(つづく)

 

 

 

 

 

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115. 素粒子論」カテゴリの記事

コメント

『クォーク不要論 反粒子は何が反対なのか』
https://note.com/abikonobuhiro666/n/n342a9db627e6

読むだけ読んでみてください。

投稿: 安孫子伸洋 | 2020年8月25日 (火) 23時47分

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