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2020年9月11日 (金)

物理学の哲学(8)(アノマリー)

物理学の哲学」の続きです。

余談は省略で,さっそく本題の続きに入ります。

 前回は,QED以外に,部分的保存(PCAC)を満たす

場理論のσ模型を導入して,π中間子の崩壊振幅

πを,次式で定義しました。

すなわち,<π(q)|j|0>

=(2q0)-1/2(-iqμ2)(π/√2.)です。

ここで,μはπ中間子の質量です。

アイソベクトル場:πを含むσ模型では,πもj

も中性成分だけでなく荷電成分を持つため,fπ

丁度,荷電π中間子の弱い崩壊振幅に等しいもので

あることがわかります。

特に,中性のπ0に対する先の「不完全版」の

σ模型の中性軸性べクトルカレントj(x)は,アイソ

軸性ベクトルカレントj(x)の,アイソ第3成分です

から,それを5μ(3)(x)と記し.中性カレントでの表現:

<π(q)|j|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)fπ/√2.

を,<π0(q)|5μ(3)|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)fπ/√2.

と書き直します。

荷電π中間子の場の演算子は,π=(π1-iπ2)√2,

および,π=(π1+iπ2)/√2,ですが,,一方,粒子の

状態ベクトルとしては,|π>=|π1+iπ2>/√2,

および,{π>=|π1-iπ2>/√2でしたから,

πの崩壊:π→ μ+νμ~, π→ e+νe~

おける行列要素:<α|π>の向きを逆転させた

要素:<π{α>は,<π{α>=<α|π

なるはずです。これは,つまり,Bra:,|π

=|π1-iπ2>/√2に対し,Ket<π|=<π1+iπ2|/√2

が対応することを示している,と考えられます。

そこで,軸性ベクトルカレントの第3成分は,

5μ(3)Ψ~γμγ5τ3Ψ+σ(∂μπ3)-π3(∂μσ)

+g0-1(∂μπ3)なる演算子で与えられますが,これを

アイソ回転して得られるアイソカレントの+成分は

第3成分:j5μ(3)τ3ではなく,τを対応

せたj5μ(+)=(1/2)Ψ~γμγ5τΨ+σ(∂μπ)

-π(∂μσ)+g0-1(∂μπ),(τ=(τ1-iτ2)/√2,

π=(π1―iπ2)/√2.)となるはずです。

それ故,<π(q)|j5μ(+)|0>

=<π12)(q)|(j5μ(1)ij5μ(2))|0>/2

(2q0)-1/2(-iqμ2)(fπ/√2) となります。

ここで,k=1,2,3の各々のπはkが同じカレント

5μ(k)のみ相互作用することができて,kに関わらず,

<π|j5μ(k)|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)(fπ/√2.)

になるという対称性を仮定しました。

そして,<π(q)|j|0>

=(2q0)-1/2(-iqμ2)fπ/√2の4次元発散を

取り,∂μ=(μ12/g0)(Z3π)1/2πrを代入して,

<π(q)|(π(q)>=(2q0)-1/2を用いると次式

を得ます。すなわち,(μ12/g0)(Z3π)1/2=fπ/√2

です。

そこで,∂μ=(μ12/g0)(Z3π)1/2πrのくり込み

定数は除去されて,このPGAG方程式を完全に物理量

だけで書き表わせます。

結局,重要なPCAC関係式として,

μ=(fπ/√2)πなる結果が得られました。

と書いたところで前回記事は終わりました。

※さて,ここからが,今回追加の記事内容です。

先に与えたfπが,丁度,荷電π中間子の弱い相互作用

による崩壊振幅に等しいことを,検証します。

そのため,本ブログでPCACの意味とπの意味に

ついて,「(岩波講座)現代物理学の基礎(11)素粒子論」

という古い本を参照して書いた過去記事を再掲載します。

40年以上前に買ったこの本を,昔,読んだときの覚え

書きで,今では解釈が間違っているかもも知れません。

※以下は再掲記事です。

さて,π中間子の運動量がqの1粒子状態は,

(q)>=|π>|π>|π(q)>

+ΣNN~|NN~><NN~|π(q)>と,完全系に展開

できる,とします。

崩壊:π→μ+νμ~は,第1項の振幅と見ても,

第2項以下の振幅で見ても同じであると仮定します。

つまり,|π(q)>=|π>|π>|π(q)>,

であり,かつ, |π(q)>

=ΣNN~|NN~><NN~|π(q)>でもある

というわけですから,|π->の{μν~>への崩壊は

|NN~>の中間状態を通してのみ可能な反応である

と考えるわけです。

ということは,実は,展開の第1項と第2項以下は,

同じモノで,どちらかの項はゼロロとして消していい

ということになります。

そこで,展開の右辺第1項,または第2項以下を評価

すればいいのですが,これは現象論的弱い相互作用:

π(∂μπ){μ~γμ(1-γ5)ν}による,

摂動Hamiltonian:π→μνの1次の崩壊振幅で

あり,

<Hπ→μν>=(G/√2)∫d4x<0|∂μπ(x)>

×{μ~(x)γμ(1-γ5)ν(x)}なる計算式で

与えられます。ここで,<0|∂μπ(x)>

=(2π)-3/2(20)-1(iqμ)aπ で,現象論的な

Fermiのカレント-カレント相互作用の弱い結合係数:

Gに対する中間子πのカレントに相当する(∂μπ)の寄与

の比率係数πを定義しておきます。

この現象論的弱い相互作用での最低次近似による

π→μ+νe~の崩壊率,1/τπ→μνの計算」結果と

その実験値を比較すると,

(1/τの計算値)={G2π2/(8πμ)}(mμ/μ)2であり

(1/τの実験地)~3.84×107sec-1です。

(※μは,πの質量,mμは,μ粒子の質量です。)

この比較によれば,aπの大きさは|aπ|~0.97μ

と評価されます。(※本ブログの2016年3/21の過去

記事:「弱い相互作用の旧理論(Fermi理論)(12)」で,

荷電π中間子の崩壊について記述しましたが,そこ

では,今のaπを単にaと記し,|a|~ 0.87μ,または,

|a|~ 0.93μと評価されましたが,これらは上記の

|aπ|~0.97μと,誤差の範囲内で一致していると

見えます。そして,この|a|は,核子1個当たりのπ中間子

の雲の存在確率振幅を意味すると解釈されていました。※)

レプトンの軸性カレントの因子:{μ~γμ(1-γ5)ν}を

L^μと表わせば,π→μ+νμ~の崩壊振幅は,

<μν~|L^μ{0><0|(Gaπ/√2)(∂μπ)|π

×<π(q)> と表わされます。

他方,これが,|π(q)>=|π>|π>|π(q)>

+ΣNN~|NN~><NN~|π(q)>における右辺の

第1項のみ,または,第2項以下の強い相互作用を仮定

したNの中間状態の寄与の総和:ΣNN~<μν~|L^μ{0>

<0|(Gaπ/√2)(∂μπ)|NN~><NN~|π(q)>

=<μν~|L^μ{0>

<0|(g/g)(Gaπ/√2)j(x)|π(q)>

の両者が一致して,いずれかが象論的Fermiも弱い

相互作用に寄与なるというのが,過去記事の

内容でした。

 πの方のカレント相互作用の因子:(G/√2)(aπμπ)

が,レプトンのV-Aカレント因子のA(軸性ベクトルカレント)

の部分:(G/√2)aπ(g/g)j(x)のみと作用すると

見るのは.π-が擬スカラー粒子なので相互作用因子aπμπ

は,Fermi粒子のNやレプトンのV-Aの弱カレントのうちの,

Aのみと相互作用する,軸性ベクトルカレントに相当する

と考えられるからです。

それ故,第1項=第2項Vいう同一視の仮定が満足

されるためには,V-AカレントのVに対するAの比率を

=g/gとして,aπ<0|∂μπ(q)>

=r<0|j(x)|π(q)> が成立することが必要

かつ,十分です。

そして,この式の両辺の4次元発散を取れば,

<0|∂μ(x){π(q)>

=aπ<0|□π(q)>=-aπμ2<0|π(q)>

を得ます。ここで,1粒子の実π中間子は,自由なπ中間子

の運動方程式であるKlein-Gordon方程式::(□+μ2=0

を満たすはずなので,□π=-μ2πと書けることを

用いました。それ故,fπ/√2=aπμ2/r,

(r=g/g)と置けば,状態ベクトルを外した演算子

方程式として,∂μ=(fπ√2)πなる式を得ます。

アイソスピン対称性から,これが荷電π中間子に対する

だけでなく,中性のπ0中間子に対しても成立するなら,

μ5μ=(fπ/√2)π0ですから,先のPCAC関係式と一致

するため,fπは確かに荷電π中間子の崩壊率に比例する

量であること,がわかります。

ただし,ここでのπについての場の演算子:π^および

π0は,既に,輻射補正されて,くりこまれた場:π―r,

および,π0rであると解釈しています。再掲載終了※)

今回は,キリもいいのでここまでにします。(つづく)

 

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