« 物理学の哲学(9)(アノマリー) | トップページ | 物留学の哲学(11)(アノマリー) »

2020年9月18日 (金)

物理学の哲学(10)(アノマリー)

「物理学の哲学」の続きです。

(※余談):今日は9月18日(金)です。

先日,私と同学年の岸部シローさんが亡くなられた

ようです。元GSのタイガースのメンバーで岸部一徳

さんの弟,時代劇では関西弁のキャラで面白かったの

ですが。。今年に入って,コロナで,志村けんさんも

亡くなられました。昨年は,ショ-ケン(萩原健一さん

,ちょっと前には,関西のやしきたかじんさんと,

1949/4~1950/3生まれの私と同学年の芸能人が

次々と病死されています。

有名人じゃなくても,ここ数年,同年代の身近な飲み

友達など,数人がガンなどの病気で他界しました。

皆,70歳以上で,諸行無常とはいえ,さみしいことです。

ところで,時代劇といえば,つい先日,専門チャンネル

を視ていると,昭和30年代,テレビを見始めた頃に映画

やTVで活躍されていた嵐寛寿郎さん(アラカン)と,

上原謙さんが「必殺」に出ていて,私,つい涙が出そうに

なりました。近衛十四郎さんもいたら完璧でしたがね。

結局,無名の馬の骨,有象無象の私だけが70歳にして

まだ,何とか,生きています。

「憎まれっ子,夜(ヨル)にハバカリ」とかね。。。

その昔,池袋の専門学校の講義で,このオヤジギャグ

をカマしても「ハバカリって何?」ということで全く

ウケませんでした。

ハバカリとは,便所,ご不浄,お手洗い,化粧室,雪隠

(セッチン),川屋(カワヤ),トイレ、W.C.(water-closet,

orウンコとシッコ)でんがな。。。(以上,余談終わり※)

 

※さて,本題です。

崩壊:π0→2γの崩壊率を求める問題は,今,初めて

考察してブログ記事を作っているのじゃなく,本ブログ

の過去に書いた記事を,ストーリーに従って並べ直して

いるだけです。

昔の記事をコピペしては,修正しながらアップして

いるうち,自分でも混乱してきたので,ここで,これまで

の記事の経過を,詳細を省いて主な結論だけを要約して

頭の中にあるストーリーを,整理してみました。

※ブログサイトの改編や,セキュリティ強化で図や写真

も入れたいけど,昔ほど簡単には挿入できず,文章ばかり

の内容なのも,混迷と退屈の原因カモね。)

さて,まず,裸の質量がm0,で,スピンが1/2の電子eや

陽子pなどのスピノル場:ψ(x)で記述されるFermionの

荷電粒子の場と電磁場(光子の場)Aμが共存する系で,

ψによる軸性ベクトルカレントの演算子:

(x)=ψ~(x)γμγ5ψ(x)を考えると,もしもm0=0

(質量がゼロ)なら,カイラルゲージ変換に対する系の

不変性が成立して,∂μ」」=0と,その軸性ルカレント

の4次元発散がゼロとなって,カレントの保存が成立

するのですが,一般には,m0≠0なので,∂μ

=2im05≠0であり,このカレントは,時間的に保存

される物理量ではありません。ただし,」5(x)

=ψ~(x)γ5ψ(x)です。この式はPCAC(部分的保存)

の関係式と呼ばれます。

ところが,電磁場の存在の下で頂点関数に対して成立

するはずのWard-高橋の恒等式(WT恒等式)を考察する

ために,カイラルの軸性頂点γμγを含むVVA三角ブラフ

(vector-vwctor-Axialvsctor diagram)の寄与を調べると

純粋にQEDの計算だけから得られた関係に,余分な項

アノマリー項(量子異常項)が存在することがわかり

ます。そして,これは簡単には除去できない本質的意味

がある項であることがわかります。

このWT恒等式のアノマリーは,実は.軸性カレント

のPCAC式に,アノマリー項が存在することに由来して

います。すなわち,∂μ=2im05

+{α0/(4π)}Fξστρεξστρなる関係式に起因

しています。

これら両辺の各項は,摂動論のFeynmanグラフの計算

では,対数発散し,有意な量とみるには正規化して補正

する必要がありますが,それはアノマリー項だけに効く

ので,補正率をCとすると,∂μ=2im05

+(1+C){α0/(4π)}Fξστρεξστρ と修正されます。

これがπ0→ 2γ崩壊率に如何に関係するか?を見るため

そのS行列要素:Sfi=<f;out|i;in>

=<γ(k11),γ(k22);out|π0;in>を考えると,

LSZの公式からSfi=i∫d4xfq(x)(□+μ2)

<γ(k11),γ(k22):in|π0r(x)|0>なる表式を

得ます。ただし,π0r(x)は,π0r(x)=(Z3π)1/2π0(x)

で定義される,π0中間子の(裸の)場:π0(x)のくりこまれた

であり,μは,π0の質量を意味します。

一方,後の便宜のため,∂μ=2im05

+(1+C){α0/(4π)}Fξστρεξστρ の両辺の各項

を,<γ(k11),γ(k22);in>|と,真空:|0>で

挟んだ行列要素を考えます。

これらは全てk1ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρに比例する

と考えられるので,それぞれ,

<γ(k11)γ(k2,ε2)|:in|μ|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρF(k12)

<γ(1,ε1)γ(k2,ε2);in|2im05|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρG(k12)

<γ(k11)γ(k22):in|

{α0/(4π)}Fξστρεξστρ|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρH(k12) と置きます。

すると,先の軸性ベクトルカレントのPCAC関係式

は,F(k12)=G(k12)+(1+C)H(k12)

に帰着します。

そして,F(k12)∝(k12)なる性質があるので,

2光子の4元運動量k1,k2が,k1~0,k2~0.である

ような低エネルギー極限では,F(0)=0であり,その

領域では補正Cは無視できるので

0=F(0)=G(0)+H(0),または,G(0)=-H(0)を

得ます。アノマリー項の低エネルギーでの寄与:

H(0)は,VVA三角グラフで,具体的に計算できて,

H(0)=2α0/πであり,故にG()=-2α0/πです。

しかし,実際にはF,G,Hは対数発散するので

切断Λを入れて正則化した量をFΛ,GΛ,HΛとして

これらのくり込まれた量をF~,G~,H~とします。

つまり,F~(k12)=limkΛ→∞Λ(k12).etc.です。

すると,k1~0.k2 ~0の低エネルギー極限では,

F~(0)=0,H~(0)=2α/πであり,G~(0)=-2α/π

になる,という定理を得ます。

これがQEDの軸性ベクトルカレントのPCACとVVA

アノマリーに関する「低エネルギー定理」です。

これらQEDのVVA三角アノマリーと「低エネルギー定理」

の結果を,π0中間子の崩壊と関連付けるため,一般化して,

場の理論のアイソスピン対称性を持つσ模型を導入します。

その系のLagrangian密度:のカイラル変換に対応する

Noetherカレント:jμ(x)=-δ)は軸性カレント

なので,これをj(x)と書くと,QEDの軸性カレントの

PCAC式と同じ形のカレントの4次元発散に対する関係式:

μ=(μ12/g0)πを得ます。(※ここでは5μπ

アイソスピンが1の,アイソベクトルです。)

さらに,π中間子の(裸の)場:πのくりこまれた場:πrと,

くりこみ定数Z3πを,,πr(x)=(Z3π)1/2π(x)で定義すると,

μ=(μ12/g0)(Z3π)-1/2πrとなります。

次に,π中間子の崩壊振幅:fπを次式で定義します。

すなわち,<π(q)|j|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)

×(fπ/√2.)とします。そして,これの4次元発散を

取り <π-(q)|πr|0>=(2q0-1/2因子をはずして

演算子式として,先の∂μ=(μ12/g0)(Z3π)-1/2πr

と右辺を比較すると,(μ12/g0)(Z3π)-1/2=fπ/√2

なる等式を得ます。

そこで,∂μ=(μ12/g0)(Z3π)-1/2πrのくり込み

定数が除去されて,物理量だけで書き表わしたPCAC

の関係式が得られて,∂μ=(fπ/√2)π

書けます。

ところが,中性子のβ崩壊:n→p+e+ν~に代表

される,弱い相互作用の現象論的Fermi理論では,荷電

π中間子の崩壊:π→μ+ν~の崩壊率を求めるには,

現象論的相互作用Hamiltonian:Hπ→μνの1次の効果で

ある,<Hπ→μν>=(G/√2)∫d4

<0|∂μπ(x)>{μ~(x)γμ(1-γ5)ν(x)}

という計算式を用いて行います。

(※ν~はニュートリノ:νの反粒子を意味します。)

しかし,π→μ+ν~に寄与するのは,V-Aカレントの

うち,Aの部分のみで,レプトン因子のA=軸性カレント

を,L^μ(x)=μ~(x)γμγ5ν(x)と表わせば,

崩壊振幅への実際の寄与は,(G/√2)∫d4

<0|∂μπ(x)>L^μ(x)となります。

そして,πの4元運動量がqμの粒子状態

への寄与を<0|∂μπ(x)>

=(2π)-3/2(20)-1(iqμ)(aπ)として,π中間子の雲

の振幅:aπを定義すると,崩壊:π→μ+ν~の振幅は,

<μν~|L^μ{0>

<0|(Gaπ/√2)(∂μπ)|π><π(q)>

と表現されます。そして,これによって崩壊率:1/τを

計算すると,1/τ={G2π2/(8πμ)}(mμ/μ)2 となり

ますが,これが実験値 1/τ ~3.84×107sec-1と合致する

には,,|aπ|=0.87μ~.97μである,ことが必要である,

と評価されています。

一方,擬スカラー場:πから作られる軸性ベクトル

μπの弱軸性カレントjに相当する寄与率:r

=g/gを考慮して,これから上述の崩壊振幅を

得るには,r<0|j(x)|π(q)>

=aπ<0|∂μπ(q)>となることが必要十分

です。この式の左辺で4次元発散を取れば,

r<0|∂μ(x)|π(q)>=aπ<0|□π(q)>

=-aπμ2<0|π(q)>となりますから,fπ/√2

=-aπμ2/rとすれば,∂μ=(fπ√2)πを得ます。

この式の右辺のπ中間子の場:π(x)を,くりこまれた場

π-r(x)である,と解釈するなら,これは,∂μ

=(fπ√2)π-r となります。

他方.σ模型のPCAC関係式はアイソベクトルπについて,

μj5μ=(μ12/g0)(3π)-1/2πrでしたから,両者の関係式

が一致することを要請すれば,再び,(μ12/g0)(Z3π)-1/2

=fπ/√2が成立するはずです。

このPCAC式が,荷電π中間子πだけでなく,中性の

π0中間子でも成立するなら,∂μ=(fπ/√2)π0rです。

そこで,中性のπ0中間子においても,係数fπは荷電π

中間子の崩壊率に比例する量であるとが証明されました。

結局,QEDではないσ模型でも,三角グラフを通して

2光子と相互作用する電気的に中性な軸性ベクトルカレント

がPCACの条件を満足するとき,その4次元発散:

μが,πの場に比例するという結果を得ました。

(※ここまでが,これまでの記事の要約です。)

今回は,これ以上進むと長くなるので,(9)までの

要約のみでした。(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

|

« 物理学の哲学(9)(アノマリー) | トップページ | 物留学の哲学(11)(アノマリー) »

115. 素粒子論」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。