物理学の哲学(10)(アノマリー)
「物理学の哲学」の続きです。
(※余談):今日は9月18日(金)です。
先日,私と同学年の岸部シローさんが亡くなられた
ようです。元GSのタイガースのメンバーで岸部一徳
さんの弟,時代劇では関西弁のキャラで面白かったの
ですが。。今年に入って,コロナで,志村けんさんも
亡くなられました。昨年は,ショ-ケン(萩原健一さん
,ちょっと前には,関西のやしきたかじんさんと,
1949/4~1950/3生まれの私と同学年の芸能人が
次々と病死されています。
有名人じゃなくても,ここ数年,同年代の身近な飲み
友達など,数人がガンなどの病気で他界しました。
皆,70歳以上で,諸行無常とはいえ,さみしいことです。
ところで,時代劇といえば,つい先日,専門チャンネル
を視ていると,昭和30年代,テレビを見始めた頃に映画
やTVで活躍されていた嵐寛寿郎さん(アラカン)と,
上原謙さんが「必殺」に出ていて,私,つい涙が出そうに
なりました。近衛十四郎さんもいたら完璧でしたがね。
結局,無名の馬の骨,有象無象の私だけが70歳にして
まだ,何とか,生きています。
「憎まれっ子,夜(ヨル)にハバカリ」とかね。。。
その昔,池袋の専門学校の講義で,このオヤジギャグ
をカマしても「ハバカリって何?」ということで全く
ウケませんでした。
ハバカリとは,便所,ご不浄,お手洗い,化粧室,雪隠
(セッチン),川屋(カワヤ),トイレ、W.C.(water-closet,
orウンコとシッコ)でんがな。。。(以上,余談終わり※)
※さて,本題です。
崩壊:π0→2γの崩壊率を求める問題は,今,初めて
考察してブログ記事を作っているのじゃなく,本ブログ
の過去に書いた記事を,ストーリーに従って並べ直して
いるだけです。
昔の記事をコピペしては,修正しながらアップして
いるうち,自分でも混乱してきたので,ここで,これまで
の記事の経過を,詳細を省いて主な結論だけを要約して
頭の中にあるストーリーを,整理してみました。
※ブログサイトの改編や,セキュリティ強化で図や写真
も入れたいけど,昔ほど簡単には挿入できず,文章ばかり
の内容なのも,混迷と退屈の原因カモね。)
さて,まず,裸の質量がm0,で,スピンが1/2の電子eや
陽子pなどのスピノル場:ψ(x)で記述されるFermionの
荷電粒子の場と電磁場(光子の場)Aμが共存する系で,
ψによる軸性ベクトルカレントの演算子:
」5μ(x)=ψ~(x)γμγ5ψ(x)を考えると,もしもm0=0
(質量がゼロ)なら,カイラルゲージ変換に対する系の
不変性が成立して,∂μ」」5μ=0と,その軸性ルカレント
の4次元発散がゼロとなって,カレントの保存が成立
するのですが,一般には,m0≠0なので,∂μ」5μ
=2im0j5≠0であり,このカレントは,時間的に保存
される物理量ではありません。ただし,」5(x)
=ψ~(x)γ5ψ(x)です。この式はPCAC(部分的保存)
の関係式と呼ばれます。
ところが,電磁場の存在の下で頂点関数に対して成立
するはずのWard-高橋の恒等式(WT恒等式)を考察する
ために,カイラルの軸性頂点γμγを含むVVA三角ブラフ
(vector-vwctor-Axialvsctor diagram)の寄与を調べると
純粋にQEDの計算だけから得られた関係に,余分な項
アノマリー項(量子異常項)が存在することがわかり
ます。そして,これは簡単には除去できない本質的意味
がある項であることがわかります。
このWT恒等式のアノマリーは,実は.軸性カレント
のPCAC式に,アノマリー項が存在することに由来して
います。すなわち,∂μ」5μ=2im0j5
+{α0/(4π)}FξσFτρεξστρなる関係式に起因
しています。
これら両辺の各項は,摂動論のFeynmanグラフの計算
では,対数発散し,有意な量とみるには正規化して補正
する必要がありますが,それはアノマリー項だけに効く
ので,補正率をCとすると,∂μ」5μ=2im0j5
+(1+C){α0/(4π)}FξσFτρεξστρ と修正されます。
これがπ0→ 2γ崩壊率に如何に関係するか?を見るため
そのS行列要素:Sfi=<f;out|i;in>
=<γ(k1,ε1),γ(k2,ε2);out|π0;in>を考えると,
LSZの公式からSfi=i∫d4xfq(x)(□x+μ2)
<γ(k1,ε1),γ(k2,ε2):in|π0r(x)|0>なる表式を
得ます。ただし,π0r(x)は,π0r(x)=(Z3π)1/2π0(x)
で定義される,π0中間子の(裸の)場:π0(x)のくりこまれた
場であり,μは,π0の質量を意味します。
一方,後の便宜のため,∂μ」5μ=2im0j5
+(1+C){α0/(4π)}FξσFτρεξστρ の両辺の各項
を,<γ(k1,ε1),γ(k2,ε2);in>|と,真空:|0>で
挟んだ行列要素を考えます。
これらは全てk1ξk2τε1σ*ε2ρ*εξτσρに比例する
と考えられるので,それぞれ,
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)|:in|∂μj5μ|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
×εξτσρF(k1k2)
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|2im0j5|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
×εξτσρG(k1k2)
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2):in|
{α0/(4π)}FξσFτρεξστρ|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
×εξτσρH(k1k2) と置きます。
すると,先の軸性ベクトルカレントのPCAC関係式
は,F(k1k2)=G(k1k2)+(1+C)H(k1k2)
に帰着します。
そして,F(k1k2)∝(k1k2)なる性質があるので,
2光子の4元運動量k1,k2が,k1~0,k2~0.である
ような低エネルギー極限では,F(0)=0であり,その
領域では補正Cは無視できるので
0=F(0)=G(0)+H(0),または,G(0)=-H(0)を
得ます。アノマリー項の低エネルギーでの寄与:
H(0)は,VVA三角グラフで,具体的に計算できて,
H(0)=2α0/πであり,故にG()=-2α0/πです。
しかし,実際にはF,G,Hは対数発散するので
切断Λを入れて正則化した量をFΛ,GΛ,HΛとして
これらのくり込まれた量をF~,G~,H~とします。
つまり,F~(k1k2)=limkΛ→∞FΛ(k1k2).etc.です。
すると,k1~0.k2 ~0の低エネルギー極限では,
F~(0)=0,H~(0)=2α/πであり,G~(0)=-2α/π
になる,という定理を得ます。
これがQEDの軸性ベクトルカレントのPCACとVVA
アノマリーに関する「低エネルギー定理」です。
これらQEDのVVA三角アノマリーと「低エネルギー定理」
の結果を,π0中間子の崩壊と関連付けるため,一般化して,
場の理論のアイソスピン対称性を持つσ模型を導入します。
その系のLagrangian密度:Lのカイラル変換に対応する
Noetherカレント:jμ(x)=-δL/δv)は軸性カレント
なので,これをj5μ(x)と書くと,QEDの軸性カレントの
PCAC式と同じ形のカレントの4次元発散に対する関係式:
∂μj5μ=(μ12/g0)πを得ます。(※ここではj5μもπも
アイソスピンが1の,アイソベクトルです。)
さらに,π中間子の(裸の)場:πのくりこまれた場:πrと,
くりこみ定数Z3πを,,πr(x)=(Z3π)1/2π(x)で定義すると,
∂μj5μ=(μ12/g0)(Z3π)-1/2πrとなります。
次に,π中間子の崩壊振幅:fπを次式で定義します。
すなわち,<π(q)|j5μ|0>=(2q0)-1/2(-iqμ/μ2)
×(fπ/√2.)とします。そして,これの4次元発散を
取り <π-(q)|πr|0>=(2q0)-1/2因子をはずして
演算子式として,先の∂μj5μ=(μ12/g0)(Z3π)-1/2πr
と右辺を比較すると,(μ12/g0)(Z3π)-1/2=fπ/√2
なる等式を得ます。
そこで,∂μj5μ=(μ12/g0)(Z3π)-1/2πrのくり込み
定数が除去されて,物理量だけで書き表わしたPCAC
の関係式が得られて,∂μj5μ=(fπ/√2)πrと
書けます。
ところが,中性子のβ崩壊:n→p+e+ν~に代表
される,弱い相互作用の現象論的Fermi理論では,荷電
π中間子の崩壊:π→μ+ν~の崩壊率を求めるには,
現象論的相互作用Hamiltonian:Hπ→μνの1次の効果で
ある,<Hπ→μν>=(G/√2)∫d4x
<0|∂μπー|π-(x)>{μ~(x)γμ(1-γ5)ν(x)}
という計算式を用いて行います。
(※ν~はニュートリノ:νの反粒子を意味します。)
しかし,π→μー+ν~に寄与するのは,V-Aカレントの
うち,Aの部分のみで,レプトン因子のA=軸性カレント
を,L^μ(x)=μ~(x)γμγ5ν(x)と表わせば,
崩壊振幅への実際の寄与は,(G/√2)∫d4x
<0|∂μπー|π-(x)>L^μ(x)となります。
そして,π-の4元運動量がqμの粒子状態
への寄与を<0|∂μπー|π-(x)>
=(2π)-3/2(2q0)-1(iqμ)(aπ)として,π中間子の雲
の振幅:aπを定義すると,崩壊:π→μ+ν~の振幅は,
<μν~|L^μ{0>
<0|(Gaπ/√2)(∂μπー)|π-><π-|π-(q)>
と表現されます。そして,これによって崩壊率:1/τを
計算すると,1/τ={G2aπ2/(8πμ)}(mμ/μ)2 となり
ますが,これが実験値 1/τ ~3.84×107sec-1と合致する
には,,|aπ|=0.87μ~.97μである,ことが必要である,
と評価されています。
一方,擬スカラー場:πから作られる軸性ベクトル
∂μπの弱軸性カレントj5μに相当する寄与率:rA
=gA/gVを考慮して,これから上述の崩壊振幅を
得るには,rA<0|j5μ(x)|π-(q)>
=aπ<0|∂μπ-|π-(q)>となることが必要十分
です。この式の左辺で4次元発散を取れば,
rA<0|∂μj5μ(x)|π-(q)>=aπ<0|□πー|π-(q)>
=-aπμ2<0|πー|π-(q)>となりますから,fπ/√2
=-aπμ2/rA とすれば,∂μj5μ=(fπ√2)π-を得ます。
この式の右辺のπ中間子の場:π-(x)を,くりこまれた場
π-r(x)である,と解釈するなら,これは,∂μj5μ
=(fπ√2)π-r となります。
他方.σ模型のPCAC関係式はアイソベクトルπについて,
∂μj5μ=(μ12/g0)(Z3π)-1/2πrでしたから,両者の関係式
が一致することを要請すれば,再び,(μ12/g0)(Z3π)-1/2
=fπ/√2が成立するはずです。
このPCAC式が,荷電π中間子π-だけでなく,中性の
π0中間子でも成立するなら,∂μj5μ=(fπ/√2)π0rです。
そこで,中性のπ0中間子においても,係数fπは荷電π
中間子の崩壊率に比例する量であるとが証明されました。
結局,QEDではないσ模型でも,三角グラフを通して
2光子と相互作用する電気的に中性な軸性ベクトルカレント
j5μがPCACの条件を満足するとき,その4次元発散:
∂μj5μが,πの場に比例するという結果を得ました。
(※ここまでが,これまでの記事の要約です。)
今回は,これ以上進むと長くなるので,(9)までの
要約のみでした。(つづく)
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