物留学の哲学(11)(アノマリー)
「物理学の哲学」の続きです。
(※余談):今日は9月25日(金)です。
けさはゴミ出しに行くともう肌寒かったです。
温暖化で日本も亜熱帯気候に近くなり,日本
にはいないはずの動植物やデング熱,マラリア
などの細菌やウィルスもいて驚きます。
今年も秋は短かく,すぐに冬がくるのでしょうね。
今度は,時代劇で笠置シズ子が出てるのを見て
泣けました。時代劇チャンネルは,昭和の今は亡き
出演者が多くて,まだ,若くて元気なのかと勘違い
しますね。懐かしいですが。(余談終わり※)
※さて本題です。前回の記事では,このシリーズ
で書いてきた内容を,自分の中で改めて整理する
ために長い要約を書き記しました。
今回は,その続きとして,まず,要約記事の直前の
前々回の記事を思い出し,その最後の部分を再掲載
して,そこから話の続きを進めたいと思います。
- 以下は,まず再掲載記事の部分です。
前々回の記事「物理学の哲学(9)」の最後では,
中性のπ0中間子の崩壊:π0→2γにおいて,入射
する,または静止状態のπ0中間子の運動量がqμ
の場合の,崩壊のS行列要素Sfiを書き下した式
を考察しました。これはLSZの公式により,
Sfi=<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);out|π0;in>
=i∫d4xfq(x)(□x+μ2)
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|π0r|0>という
式で与えられますが,これはx表示ではincoming
漸近状態のπ0中間子の平面波の基本波動関数:
fq(x)=(2π)-3/2(2q0)-1/2exp(-iqx),および
崩壊して出てゆく2光子のincomingの状態関数:
(2π)-3(4k10k20)-1/2ε1σ*ε2ρ*
×exp{i(k1+k2)x}によって,
Sfi=i∫d4x[(2π)-9/2exp{-i(q-k1-k2)}
(2q0)-1/2(4k10k20)-1/2ε1σ*ε2ρ*Sσρ(k1,k2,q)]
と書けるはずです。
ただし,Sσρ(k1,k2:q)は,3粒子の運動量k1,k2
qに依存する部分の指数関数以外の因子です。
そこで,(2π)-1/2(2q0)-1/2(4k10k20)-1/2ε1σ*ε2ρ*
Sσρ(k1,k2,q)は,上記Sfiの積分表示の被積分関数:
ifq(x)<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|□+μ2)π0r|0>
のFourier変換の形になっています。
それ故,(2π)(4k10k20)-1/2ε1σ*ε2ρ*Sσρ(k1,k2,q)
は,fq(x)<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|(□+μ2)π0r|0>
から,,π0の波動関数fq(x)をはずした2光子の状態
の振幅:<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|(□+μ2)π0r|0>
のFourier変換(運動量表示であると考えられます。
他方,<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2):in|(□+μ2)π0r|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*εξτσρFπ(k1k2)
によって関数Fπ(k1k2)を定義します。
すると,2種類のSfiの積分表示の比較から,
(2π)SσΡ(k1,k2,:q)=k1ξk2τεξτσρFπ(k1k2)
なる等式の成立がわかります。
と書いたところて記事は終わりました。
(※以上,再掲記事終わり※)
ここからが,今回の続きの記事です。
さて,これまでは電磁場の存在しない場合の
σ模型を論じてきましたが,これに電磁場:Aμ(x)
を含めるには,元のσ模型のLagrangian密度:L
に,-(1/4)FμνFμνと,-e0ψ~pγμψpAμの
2項を加えるだけです。
すると,三角グラフの存在のために,PCACの素朴
な方程式:∂μj5μ=(fπ/√2)πrは,次のように
アノマリーを持ち形に修正されます。
すなわち,∂μj5μ=(fπ/√2)πr
+(1/2){α0/(4π)}FξσFτρεξστρ です。
ただし,右辺最後のアノマリー項の因子:(1/2)
は,単にσ模型の軸性カレントの具体的な表式:
j5μ=(1/2)ψ~γμγ5ψ+σ(∂μπ)-π(∂μσ)
+g0-1(∂μπ)の最初の核子項に現われる因子
の(1/2)を反映したものです。
そこで,適切に正規化された(くり込まれた)Feynman
規則を導入し,QEDでの論旨を同様に実行することに
より,これが電磁相互作用と強い相互作用の両方の
摂動論の全ての次数まで正しいことを示せます。
つまり,三角グラフへの如何なる仮想光子,仮想中間子
の輻射補正もアノマリー項とそのの係数を変えること
はないわけです。
上述の考察の全ては,先のσ模型では,アイソスピン
対称性変換群のSU(2)群の基本表現の核子(p,n)系を
想定していましたが,これを,ハドロンのクォークの
フレイバーSU(3)群の基本表現(p,n,λ)系への一般化
に持ち込むことができます。
(※ 現在では(u,d,s,c,t,b)の6種の存在が
認められているクォークは,過去の記事で参照した論文
出版時の1970年当時には,)u,d,sの,3種だけと
考えられていて,(p,n,λ)と記すのが慣習でした。)
(p,n,λ)を基底とするSU(3)のケースなら,Ψは
3成分でψ=(ψ1,ψ2,ψ3)Tに置き換えられ,スカラー
中間子σと:擬スカラー中間子πは9重項の中間子
(1重項+8重項)に置き換えられるため,軸性ベクトル
カレントは,8成分のカレントJ5μとなり,π0に対応
するのは,その第3成分:J5μ(3)になります。
それ故,π0に対してのアノマリーを持つPCAC方程式
は,∂μJ5μ(3)=(fπ/√2)π0r+S{α0/(4π)}FξσFτρ
×εξστρ と書けます。
ただし,係数Sは,S=ΣigiQi2で定義されています。
ここにQiはJ5μ(3)の中に素粒子場として現われる
i番目のFermion(クォ―ク) の電荷であり,giは,
その結合定数です。つまり,J5μ(3)=Σigiψ~iγμγ5ψj
+(中間子項)という表式でのgiを意味します。
これも摂動論の全ての有限次まで正しい式です。
Sに対する表現:S=ΣigiQi2の解釈はアノマリー
へのトータルの寄与は,個々の素Fermi粒子を全て
巻き込む,各々の三角グラフの寄与の総和による
と考えるからです。
PCACB関係式:∂μJ 5μ(3)=(fπ/√2)π0r
+S{α0/(4π)}FξσFτρεξστρ は,素朴な4次元
発散が,乗法的くり込み可能な任意のくり込まれた
場の理論において,正しいと予測されます。
したがって,正しいPCAC式は,∂μJ 5μ(3)
=(fπ/√2)π0r+S{α0/(4π)}FξσFτρεξστρ.
よなりますが,これはσ模型のような特殊な場理論
の模型でなく,一般的なクラスの模型でも成立する.
正確な方程式である,と考えられます。
そして,次は「摂動論のアノマリー(20)」の
「π0 崩壊の低エネルギー定理」という項目
から引用した議論です。
アノマリーを持つ4次元発散の真空から2光子への
行列要素としての正確な「低エネルギー定理」を考える
ため,まず,∂μJ5μ(3)=(fπ/√2)π0r
+S{α0/(4π)}FξσFτρεξστρ.における素朴な
4次元発散の値:(fπ/√2)π0rがπ0中間子の場
であることに着目します。
この場合「低エネルギー定理」は,π0中間子の質量
がゼロでのoff-shellに外挿されたπ0 → 2γの振幅に
ついての命題が得られます。
π0 → 2γの振幅:Fπ(k1k2)の標準定義は,
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2):in|(□+μ2)π0r|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
×εξτσρFπ(k1k2)であったことを思い起こします。
そして,くり返しになりますが,別の過去記事では,
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2):in|∂μj5μ|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
×εξτσρF(k1k2),
<γ(k1,ε)γ(k2,ε2);in|2im0j5|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
×εξτσρG(k1k2),
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2):in|{α0^/(4π)}
(Fξσ+FRξσ)(Fτρ+FRτρ)εξστρ|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
×εξτσρH(k1k2)
として,(k1k2)の関数:F,G,Hを定義し,これら
は実は対数発散するので,切断Λを入れて正規化した
FΛ,GΛ,HΛのくり込まれた量であるF~,G~,H~,
つまり,F~(k1k2)=limΛ→∞FΛ(k1k2) etc.
に対して,F~(0)=0,G~(0)=-H~(0)=-2α/π
が成立する。という「低エネルギー定理」
を得ています。今の場合はアノマリー項の因子Sを
含めるように,係数Hを定義し直すとH~(0)=2αS/π
となるので,G~(0)=-H^(0)=-2αS/πです。
そしてF(k1k2),G(k1k2),H(k1k2)の
定義式を,Fπ(k1k2)の定義式:
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)in|(□+μ2)π0r|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
εξτσρ×Fπ(k1k2)と比較して,(k1k2)=0の場合を
考えると,上記の「低エネルギー定理」
は,G~(0)=-2αS/π=(μ-2fπ/√2)Fπ(0)
となります。
すなわち,π0崩壊のSg等列要素の真空から2光子
への因子:Fπに対しては,正確な「低エネルギー定理」
は,Fπ(0)=-(2√2μ2αS)/(πfπ)を意味する
ことがわかります。
何故なら,π0の運動量:qμ=k1μ+k2において.
q2=(k1+k2)2=0,つまり,(k1k2)=0の
低エネルギーは.質量がゼロのoff-Shel(質量殻外に
ある仮想π中間子状態意味しますが,このときには,
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|(□+μ2)π0r|0>
={-(k1+k2)2+μ2)}
×<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)|π0r|0>
=μ2<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)|π0r|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ
×Fπ(0)となります。
ところが,π0を含むPCAC関係式:∂μJ 5μ(3)
=(fπ/√2)π0r+S{α0/(4π)}FξσFτρ
×εξστρ.によれば,
μ2π0r=(√2μ2/fπ)∂μJ 5μ(3)
-(√2μ2S/fπ){α0/(4π)}FξσFτρεξστρ.
です。
それ故.μ2<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|π0r|0>
=(√2μ2/fπ)
×<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);ih|∂μJ5μ(3)|0>
-(√2μ2S/fπ){α0/(4π)}
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|FξσFτρεξστρ|0>
と書けます。
そして,この式の両辺の各項から,共通因子
の(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
×εξτσρを除けば,Fπ(0)=(√2μ2/fπ)F(0)
-(√2μ2/fπ)H(0)を得ますが,これはくりこんだ
量では,Fπ(0)=(√2μ2/fπ)F~(0)-(√2μ2/fπ)
×H~(0)となります。そして,この右辺第1項の
F ~(0)は,<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|∂μJ5μ(3)|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
×εξτσρF(k1k2)の係数Fをくりこんだ量
ですが,これは,低エネルギーのq2=(k1+k2)2
=0ではF(k1k2)=F(0)=0,であり,
F~(0)=0です。
したがって,結局,Fπ(0)=-(√2μ2fπ)H~(0)
を得ます、
ここで先の「低エネルギー定理」によれば,
0=F~(0)=G~(0)+H~(0)であって
H~(0)=2αS/πより,G~(0)=-H~(0)
=-2αS/πなので,Fπ(0)=(√2μ2/fπ)G~(0)
=-(2√2μ2αS)/(πfπ)が得られます。
ところで,
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|(□+μ2)π0r|0>
={-(k1+k2)2+μ2}
×<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)|π0r|0>
ですから,(k1+k2)2=μ2の(on-shell;
量殻上)にあるときは,(k1k2)=μ2/2
なのですが, このと両辺がゼロで,左辺は
Fπ(k1k2)=Fπ(μ2/2)に比例する量なので,
Fπ(μ2/2)=0となりそうですが,実際には,
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)|π0r|0>が,(k1+k2)2=μ2
に極を持つ,と考えられるので、この質量殻上での
Fπ,(μ2/2)は。一般にゼロにはなりません。
しかし,<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)|π0r|0>は,
質量殻外の(k1+k2)2=0 には、極を持たない
ので.(k1+k2)2=0 のとき,
(k1+k2)2<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)|π0r|0>
=(4k10k20)-1/2k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
×εξτσρG~(k1k2)(k1+k2)2は,ゼロです。
またまた,くり返しになりますが,π0 → 2γ
の崩壊行列要素は,Sfi
=<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|(□+μ2)π0r(x)|0>
=i∫d4x(2π)-4 exp{-i(q-k1-k2)x}
(2π)-3/2(2q0)-1/2
×<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)|(□+μ2)π0r|0>
で与えられますが,他方,
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)|(□+μ2)π0r|0>
=(4k10k20)-1/2ったので,
k1ξk2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ
×Fπ(k1k2)であFπ(0)
=-(2√2μ2αS)/(πfπ)は,低エネルギー
でのπ0 → 2γの振幅が,直接:∂μJ 5μ(3)
=(fπ/√2)π0r+S{α0/(4π)}FξσFτρ
×εξστρ.のアノマリー項に比例することを
示しています。
この項はSに依存します。そして,Sは
素Fermi粒子の電荷Qと,その軸性カレント
での結合定数gからS=ΣjgjQj2 によって
決まります。
さて,求めるべき,π0の崩壊率:1/τ(τは崩壊寿命)
については,次の公式があります。
すなわち,1/τ=(μ3/64π)|Fπ(μ2/2)|2..です。
これは,崩壊の反応体積をV,時間をTとすると,
単位体積当たりの遷移速度は,|Sfi|2/(VT)
=(2π)4δ4(q-k1-k2)(2π)-9(8k10k20Eq)
|Fπ(μ2/2)|2
[Σε1,ε2|k1ξk2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ|2]
で与えられます。ただし,E0=q0で,これは
π0中間子のエネルギーです。
※(注):何故なら,まず,Sfiは4元運動量保存の因子:
(2π)4δ4(q-k1-k2)を含み,VT=(2π)4δ4(0)
と同定されるので.|Sfi|2/(VT)は,因子:
(2π)4δ4(q-k1-k2)を1個含みます。
π0 →2γ反応では,Sfiが規格化因子:
(2π)-3/2(2k10)-1/2(2π)-3/2(2k20)-1/2
(2π)-3/2(2E0)-1/2を持つため,これは
|Sfi|2(VT)には(2π)-9(8k10k20Eq)-1
の寄与をします。
そして,(k1+k2)2=μ2 のときk12=k22=0
より,(k1k2)=μ2/2なので,係数:Fπ(k1k2)
の寄与はFπ(μ2/2)です。
そして,π0の静止系を想定するとqμ=(Eq,q)
=(μ,0)です。そこで,k1=-k2=kとおくと,
k=|k|=μ/2ですから,k10=k20=k=μ/2です。
よってkの向きを3軸(z軸)に取ってk=ke3と
すると,k1ξk2τで.ゼロでないのは,ξ=0,τ=3か,
ξ=3,τ=0のみです。
さらに,k1ξk2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ=2k2ε0 3σρ
においてε1,ε2は横波を示すので,ε1k1=ε2k2=0,
より,ゼロでないのは,(σ,ρ)=(1,2),(2,1)のみで,
このとき,ε1σ*ε2ρ*=1です。
結局,Σε1,ε2|k1ξk2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ|2
=|2k2ε0 312|2+|2k2ε0 321|2=8k4 を
得ます。全空間Vに1個のπ0が存在する,という
規格化を考慮してπ0の1個当たりの崩壊確率を
求めると,1/τ=(1/2!)∫d3k1d3k2{V|Sfi|2
/(VT)}=(μ3/64π)|Fπ(μ2/2)|2が得られます。
因子:(1/2!)は,2光子の区別不可能性による因子
です。こうして得られた評価式1/τ-1
=(μ3/64π)|Fπ(μ2/2)|2において,Fπ(μ2/2)
をFπ(0)=-(2√2μ2αS)/(πfπ)で近似すると,
結局,π0崩壊の崩壊率の近似計算値が,
1/τ=(μ3/64π)|8μ4α2S2/(π2fπ2)
=S2μ7α2/(8π3fπ2)で与えられることが
わかりました。
これに,具体的な物理定数の近似値:α~1/137,
μ~135 MeV,および,fπ~√2aπμ2/rA,に
aπ=0.87μ~0.97μを代入,過去記事「弱い相互
作用の旧理論(7)」からの引用でrA~1.21の代入
から得られるfπ=1.02μ3 ~1.13μ3をも,1/τを
与える式に代入すれば,崩壊率の近似計算値として
,1/τ=22.74S2eV~30.21S2eVを得ます。
一方,Rosenfeldによって引用されたπ0崩壊の
崩壊率の実験値は,
1/τexp=(1.12±0.22)×1016sec-1
=(7.37±1.5)eVです。(※つまり,π0の
崩壊寿命は,τ~10-16sec程度です。また,現在
でのより正確な実験値は,1/τexp=(7.48±0.32)eV
です。)
そこで,仮にS2=1/4であれば,計算値が,
1/τ=5.68 eV~7.55eVと予測されます。
この結果からは,S2=1/4のときに実験値との
著しい一致を見ることになります。
ところが,π0が関わる軸性ベクトルカレント
では,クォークの基本3粒子の場:Ψ=(ψ1,ψ2,ψ3)T
=(p,n,λ)Tの結合定数について,ストレンジ粒子
λは無関係で(g1,g2,g3)=(1/2,-1/2,0) です。
そして電磁カレントの[Uスピン不変性]から,
基本粒子の(p,n,λ)の電荷は,(Q1,Q2,Q3)
=(Q,Q-1,Q-1)というパターンを持ち,
Q=2/3とすると(Q1,Q2,Q3)=(2/3,-1/3.-1/3)
なのでS=ΣjgjQj2=1/6となります。
しかし,現在の見地では,クォークにはフレイバー
自由度とは独立に,カラー自由度が存在して,カラー
SU(3)対称性を持つことが知られており,この自由度
3により,S=(1/6)×3=1/2となるため,確かに
S2=1/4を満たします。。
現在,ハドロンを構成する基本粒子のクォーク
はフレイバー自由度も3個ではなく6個の
(u,d,s,c,t,b)=(up,down,strange,charm,
top,bottom)が存在すると,されていますが,
1970年当時は,そのうちの3個(p,n,λ)
=(u,d,s)の3種だけで基本クォークが
構成されると予想されていました。しかし
π中間子と関わるカレントのクォーク成分は
(u,d)=(p,n)だけなので,全体のフレイバー
自由度が3から6に増加しても,カラーを考量
したS=1/2という値には変わりなく実験値との
矛盾はないことになります。
荷電π中間子π±の平均寿命が,τ~2.6×10-8sec
と観測されているのに対し,中性のπ0中間子の
平均寿命は,τ~10-16 sec程度と,はるかに短かく
π0→2γの崩壊は,π→μ+ν~の崩壊とは異なる作用
で,アノマリー項の寄与によるものと考えられると
いうのが,最終結論です。
そもそも,π中間子は,カイラルゲージ対称性を持つ
系の対称性の自発的破れで「南部-oldstonの定理」に
従って出現したゼロ質量の粒子(NG粒子)が,ゲージ
対称性の破れという特殊性で,Higgsメカニズムに
よって質量を獲得した粒子と解釈されています。
それ故,元々質量は大きくなく,もしも本当にゼロ質量
なら中性π0の場合,理論上崩壊は禁止されるので,実際に
崩壊が生じるのはアノマリー存在のためと考えられます。
アノマリーは,ゴーストや仮想粒子のように,存在しても
実在として観測されないモノではなく,現実に観測され,
崩壊寿命の計算などに必要なモノです。
ここで,キリもいいので今回はここまでです。(つづく)
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